(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178819
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】認証システム、認証方法、船載装置、及び認証装置
(51)【国際特許分類】
G06F 21/44 20130101AFI20231211BHJP
G01S 19/14 20100101ALN20231211BHJP
【FI】
G06F21/44
G01S19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091739
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】山林 潤
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA11
5J062BB02
5J062CC07
(57)【要約】
【課題】セキュリティの向上を図ることが可能な認証システムを提供する。
【解決手段】認証システムは、船舶に搭載され、船舶の位置と、船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを生成し、通信装置を介して認証リクエストを通信衛星に送信する船載装置と、通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、認証リクエストに含まれる計測情報が、船舶の位置に基づいて算出される推測情報と対応する場合に、認証リクエストを承認する認証装置と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、前記船舶の位置と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを生成し、通信装置を介して前記認証リクエストを通信衛星に送信する船載装置と、
前記通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が、前記船舶の位置に基づいて算出される推測情報と対応する場合に、前記認証リクエストを承認する認証装置と、
を備える、認証システム。
【請求項2】
前記計測情報は、前記船舶と前記通信衛星の位置関係に基づいて一意に定まる情報である、
請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記計測情報は、前記通信装置に含まれるアンテナの仰角である、
請求項1に記載の認証システム。
【請求項4】
前記通信装置は、前記通信衛星に向けて前記アンテナの姿勢を調整する姿勢調整部を含む、
請求項3に記載の認証システム。
【請求項5】
前記認証装置は、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて前記アンテナの仰角を前記推測情報として推測し、前記認証リクエストに含まれる前記アンテナの仰角が前記推測された仰角に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
請求項3に記載の認証システム。
【請求項6】
前記計測情報は、前記船舶の周囲の環境の状態を表す環境情報であり、
前記認証装置は、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に対応する環境情報を前記推測情報として取得し、前記認証リクエストに含まれる前記環境情報が前記取得された環境情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
請求項1に記載の認証システム。
【請求項7】
前記認証リクエストは、前記船舶の速度をさらに含み、
前記認証装置は、さらに、前記通信装置からの電波のドップラーシフト量が、前記船舶の速度に基づいて推測されるドップラーシフト量に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
請求項1ないし6の何れかに記載の認証システム。
【請求項8】
船舶の位置を検出し、
前記船舶の位置で計測可能な計測情報を取得し、
前記船舶の位置と前記計測情報とを含む認証リクエストを前記船舶から通信衛星に送信し、
前記通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、
前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて推測情報を算出し、
前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が前記推測情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
認証方法。
【請求項9】
船舶の位置を取得する取得部と、
前記船舶の位置で計測可能な計測情報を取得する取得部と、
前記船舶の位置と前記計測情報とを含む認証リクエストを通信衛星に送信する通信処理部と、
を備える、船載装置。
【請求項10】
船舶の位置と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを取得する取得部と、
前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて推測情報を算出する算出部と、
前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が前記推測情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する認証部と、
を備える、認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証システム、認証方法、船載装置、及び認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衛星を追跡管制する地上装置と衛星とが予め複数の運用鍵を記憶し、複数の運用鍵の中から選択した所定の運用鍵を使用して暗号化したコマンドを、地上装置と衛星との間で通信する衛星通信システムのセキュリティ支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自律航行する自律船を遠隔監視又は遠隔操船するための技術が研究されている。このため、船舶と通信衛星の間の通信には、さらなるセキュリティの向上が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、セキュリティの向上を図ることが可能な認証システム、認証方法、船載装置、及び認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の認証システムは、船舶に搭載され、前記船舶の位置と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを生成し、通信装置を介して前記認証リクエストを通信衛星に送信する船載装置と、前記通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が、前記船舶の位置に基づいて算出される推測情報と対応する場合に、前記認証リクエストを承認する認証装置と、を備える。これによると、船舶の位置で計測可能な計測情報を用いることで、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記計測情報は、前記船舶と前記通信衛星の位置関係に基づいて一意に定まる情報であってもよい。これによると、船舶と通信衛星の位置関係に基づいて一意に定まる情報を用いて、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記計測情報は、前記通信装置に含まれるアンテナの仰角であってもよい。これによると、アンテナの仰角を用いて、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記通信装置は、前記通信衛星に向けて前記アンテナの姿勢を調整する姿勢調整部を含んでもよい。これによると、通信衛星に向けて姿勢が調整されるアンテナの仰角を用いて、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記認証装置は、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて前記アンテナの仰角を前記推測情報として推測し、前記認証リクエストに含まれる前記アンテナの仰角が前記推測された仰角に対応する場合に、前記認証リクエストを承認してもよい。これによると、アンテナの仰角を用いて、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記計測情報は、前記船舶の周囲の環境の状態を表す環境情報であり、前記認証装置は、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に対応する環境情報を前記推測情報として取得し、前記認証リクエストに含まれる前記環境情報が前記取得された環境情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認してもよい。これによると、環境情報を用いて、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記認証リクエストは、前記船舶の速度をさらに含み、前記認証装置は、さらに、前記通信装置からの電波のドップラーシフト量が、前記船舶の速度に基づいて推測されるドップラーシフト量に対応する場合に、前記認証リクエストを承認してもよい。これによると、ドップラーシフト量を用いて、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0013】
また、本発明の他の態様の認証方法は、船舶の位置を検出し、前記船舶の位置で計測可能な計測情報を取得し、前記船舶の位置と前記計測情報とを含む認証リクエストを前記船舶から通信衛星に送信し、前記通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて推測情報を算出し、前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が前記推測情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する。これによると、船舶の位置で計測可能な計測情報を用いることで、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の態様の船載装置は、船舶の位置を取得する取得部と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報を取得する取得部と、前記船舶の位置と前記計測情報とを含む認証リクエストを通信衛星に送信する通信処理部と、を備える。これによると、船舶の位置で計測可能な計測情報を用いることで、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様の認証装置は、船舶の位置と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを取得する取得部と、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて推測情報を算出する算出部と、前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が前記推測情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する認証部と、を備える。これによると、船舶の位置で計測可能な計測情報を用いることで、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、認証システム100の例を示す図である。同図は、海上を航行する船舶SH、通信衛星ST、及び陸上の管制CRを模式的に示している。船舶SHと管制CRは、通信衛星STを利用した衛星通信システムにより相互に通信が可能である。管制CRは、船舶上又は航空機上にあってもよい。通信衛星STは、例えば静止衛星である。通信衛星STは、陸上に設置された不図示の地上局によって制御・管理される。
【0019】
認証システム100は、船舶SHに搭載された船載装置1と、通信衛星STに搭載された認証装置2とを備えている。認証システム100は、衛星通信システムの一部である。認証装置2は、船載装置1の認証を行い、認証が成功した場合に、衛星通信システムの利用を許可する。以下、船載装置1が搭載された船舶SHを「自船」ともいう。
【0020】
なお、認証装置2は、通信衛星STに限らず、例えば通信衛星STを制御・管理する地上局に設置されてもよい。
【0021】
図2は、船載システム10の構成例を示すブロック図である。船載システム10は、船載装置1に加えて、レーダー3、AIS4、カメラ5、GNSS受信機6、GNSSコンパス7、通信装置8、及び操船制御部9を備えている。これらの機器は、LAN等のネットワークNに接続され、相互に通信可能である。
【0022】
レーダー3は、自船の周囲に電波を発するとともにその反射波を受信し、受信信号に基づいてエコーデータを生成する。エコーデータは、自船を基準とする各方位及び各距離のエコー強度値を含む。また、レーダー3は、エコーデータから物標を識別し、物標の位置及び速度を表すTTデータ(Target Tracking Data)を生成する。
【0023】
AIS(Automatic Identification System)4は、自船の周囲に存在する他船又は管制CRからAISデータを受信する。AISに限らず、VDES(VHF Data Exchange System)が用いられてもよい。AISデータは、他船の識別符号、船名、位置、針路、船速、船種、船体長、及び行き先などを含んでいる。
【0024】
カメラ5は、自船から外部を撮像して画像データを生成するデジタルカメラである。カメラ5は、パン・チルト・ズーム機能を有する、いわゆるPTZカメラであってもよい。また、カメラ5は、撮像した画像に含まれる他船等の物標の位置及び種別を物体検出モデルにより推定する画像認識部を含んでもよい。
【0025】
GNSS受信機6は、GNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した電波に基づいて自船の位置を検出する。GNSSコンパス7は、GNSSから受信した電波に基づいて自船の船首方位を検出する。GNSSコンパスに限らず、ジャイロコンパスが用いられてもよい。
【0026】
通信装置8は、衛星通信システムを利用した通信を実現する無線設備である。通信装置8の具体的な構成については後述する。
【0027】
操船制御部9は、自律航行を実現するための制御装置であり、自船の操舵機を制御する。操船制御部9は、自船の操舵機に加えて、自船のエンジンを制御してもよい。
【0028】
船載システム10は、管制CRによる船舶SHの遠隔監視及び遠隔操船を実現する。例えば、通信装置8がレーダー3、AIS4、カメラ5、GNSS受信機6、又はGNSSコンパス7等により検出される種々のデータを管制CRへ逐次送信することで、船舶SHの遠隔監視が実現する。また、通信装置8が管制CRからの操船指令を受信し、操船制御部9が操船指令に応じて自船の操舵機及びエンジンを制御することで、船舶SHの遠隔操船が実現する。
【0029】
なお、本実施形態において船載装置1は独立した装置であるが、これに限らず、船載装置1はレーダー3又は通信装置8等の他の装置と一体であってもよい。すなわち、船載装置1の機能部が他の装置で実現されてもよい。
【0030】
図3は、通信装置8の構成例を示すブロック図である。通信装置8は、通信制御部81及びアンテナユニット82を備えている。アンテナユニット82は、アンテナ85及び姿勢調整部86を備えている。
【0031】
姿勢調整部86は、アンテナ85の姿勢を調整する。具体的には、姿勢調整部86は、モータ等を含んでおり、通信制御部81からの指令に応じてアンテナ85の方位角及び仰角を調整する。θは、アンテナ85の仰角を表す。
【0032】
通信制御部81は、姿勢調整部86を駆動し、通信衛星STに向くようにアンテナ85の姿勢を制御する(いわゆる追尾制御)。すなわち、通信制御部81は、GNSS受信機6により検出された自船の位置と、メモリに記憶された若しくは外部から取得される通信衛星STの位置とに基づいて、通信衛星STの方向を特定し、その方向を向くようにアンテナ85の方位角及び仰角θを制御する。
【0033】
図4は、認証システム100に含まれる船載装置1及び認証装置2の構成例を示すブロック図である。同図は、認証に係る機能ブロックを示している。
【0034】
船載装置1の制御部30及び認証装置2の制御部40は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。CPUは、ROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。
【0035】
プログラムは、光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、インターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0036】
船載装置1の制御部30は、船舶位置取得部31、計測情報取得部32、及び通信処理部33を備えている。これらの機能部は、制御部30のCPUがプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0037】
認証装置2の制御部40は、要求取得部41、推測情報算出部42、及び認証部43を備えている。これらの機能部は、制御部40のCPUがプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0038】
船載装置1の船舶位置取得部31は、GNSS受信機6により検出された自船の位置を取得する。
【0039】
計測情報取得部32は、自船の位置で計測可能な計測情報を取得する。計測情報は、自船と通信衛星STの位置関係に基づいて一意に定まる情報である。例えば、計測情報は、通信装置8に含まれるアンテナ85の仰角である。
【0040】
通信処理部33は、船舶位置取得部31により検出された自船の位置と、計測情報取得部32により取得された計測情報とを含む認証リクエストを生成し、通信装置8を介して通信衛星STに送信する。
【0041】
認証装置2の要求取得部41は、船載装置1から通信衛星STに送信された認証リクエストを取得する。
【0042】
推測情報算出部42は、認証リクエストに含まれる船舶SHの位置に基づいて推測情報を算出する。推測情報は、船舶SHの位置に基づいて計測情報を推測した情報である。例えば、推測情報は、船舶SHの位置から推測されるアンテナ85の仰角である。
【0043】
認証部43は、認証リクエストに含まれる計測情報が推測情報に対応する場合に、認証リクエストを承認する。
【0044】
なお、認証装置2が地上局に設置される場合には、要求取得部41は、船載装置1から通信衛星STに送信された認証リクエストを、通信衛星STを経由して取得する。
【0045】
以下、船載装置1及び認証装置2によって実現される認証方法の具体例について説明する。
図5は、認証方法の手順例を示すフロー図である。
【0046】
まず、船載装置1の制御部30は、GNSS受信機6により検出された自船の位置を取得する(S11、船舶位置取得部31としての処理)。
【0047】
次に、制御部30は、通信装置8からアンテナ85の仰角θを取得する(S12、計測情報取得部32としての処理)。アンテナ85の仰角θは、自船の位置で計測可能な計測情報の例である。
【0048】
アンテナ85の仰角θは、自船と通信衛星STの位置関係に基づいて一意に定まる。言い換えると、自船と通信衛星STの位置と、アンテナ85の仰角θとは、一対一で対応する。
図6に示すように、地球ERの表面上において、通信衛星STに対して同一の仰角を持つ場所ECは円形に存在する。
【0049】
次に、制御部30は、自船の位置とアンテナ85の仰角とを含む認証リクエストを、通信装置8を介して通信衛星STに送信する(S13、通信処理部33としての処理)。認証リクエストは、例えばユーザ名及びパスワード等をさらに含んでもよい。
【0050】
認証装置2の制御部40は、船載装置1から通信衛星STに送信された認証リクエストを取得する(S21、要求取得部41としての処理)。
【0051】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれる船舶SHの位置に基づいて、船舶SHのアンテナ85の仰角θを推測する(S22、推測情報算出部42としての処理)。以下、船舶SHの位置に基づいて推測された仰角θを「推測仰角gθ」という。具体的には、制御部40は、認証リクエストに含まれる船舶SHの位置と、通信衛星STの軌道上の位置とに基づいて、推測仰角gθを算出する。
【0052】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが、上記S22で推測された推測仰角gθに対応するか否か判定する(S23、認証部43としての処理)。例えば、制御部40は、認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが、推測仰角gθを基準とする所定の角度範囲に含まれる場合に、推測仰角gθに対応すると判定する。
【0053】
認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが推測仰角gθに対応する場合(S23:YES)、制御部40は、認証リクエストを承認する(S24)。認証リクエストが承認されると、船載装置1は、衛星通信システムの利用が可能となる。
【0054】
一方、認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが推測仰角gθに対応しない場合(S23:NO)、制御部40は、認証リクエストを承認せずに、処理を終了する。なお、制御部40は、例えばユーザ名及びパスワード等を用いた認証の処理をさらに実行してもよい。
【0055】
図7に示すように、船舶SHが、自船の位置L1と仰角θ1を含む認証リクエストRQ(L1,θ1)を通信衛星STに送信すると、認証リクエストRQ(L1,θ1)に含まれる仰角θ1と、位置L1に基づいて推測される推測仰角gθとが対応するため、認証リクエストが承認される。
【0056】
一方、第三者FSが、認証リクエストに含める位置を船舶SHの位置L1に偽装したとしても、認証リクエストに含まれる仰角は、第三者FSの位置の仰角θ2となって、船舶SHの位置L1に基づいて推測される推測仰角gθ(=θ1)とは対応しないため、認証リクエストは承認されない。言い換えると、第三者FSは、船舶SHと仰角が同じになる位置まで移動しなければ、認証を突破することができない。
【0057】
このように、アンテナ85の仰角θを用いた認証を行うことによって、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0058】
以下、認証方法の変形例について説明する。
図8は、認証方法の第1変形例を示すフロー図である。上記実施形態と重複するステップは、詳細な説明を省略する。
【0059】
まず、船載装置1の制御部30は、GNSS受信機6により検出された自船の位置を取得する(S31、船舶位置取得部31としての処理)。
【0060】
次に、制御部30は、自船の周囲の環境の状態を表す環境情報を取得する(S32、計測情報取得部32としての処理)。環境情報は、自船の位置で計測可能な計測情報の例であり、例えば天気又は海況等である。例えば、制御部30は、学習済みモデルを用いて、カメラ5により撮像された画像から自船の周囲の環境の状態を判別することによって、環境情報を取得してもよい。
【0061】
次に、制御部30は、自船の位置と環境情報とを含む認証リクエストを、通信装置8を介して通信衛星STに送信する(S33、通信処理部33としての処理)。
【0062】
認証装置2の制御部40は、船載装置1から通信衛星STに送信された認証リクエストを取得する(S41、要求取得部41としての処理)。
【0063】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれる船舶SHの位置に対応する環境情報を環境情報DB(データベース)200から取得する(S42、推測情報算出部42としての処理)。環境情報DB200は、地球上の各位置における天気又は海況等の環境情報を記憶している。制御部40は、環境情報DB200は、例えば地上に設置されたデータベースである。
【0064】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれる環境情報が環境情報DB200から取得された環境情報に対応するか否か判定する(S43、認証部43としての処理)。
【0065】
認証リクエストに含まれる環境情報が環境情報DB200から取得された環境情報に対応する場合(S43:YES)、制御部40は、認証リクエストを承認する(S44)。
【0066】
一方、認証リクエストに含まれる環境情報が環境情報DB200から取得された環境情報に対応しない場合(S43:NO)、制御部40は、認証リクエストを承認せずに、処理を終了する。
【0067】
このように、自船の周囲の環境情報を用いた認証を行うことによっても、セキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0068】
図9は、認証方法の第2変形例を示す図である。上記実施形態と重複するステップは、詳細な説明を省略する。
【0069】
まず、船載装置1の制御部30は、GNSS受信機6により検出された自船の位置を取得する(S51、船舶位置取得部31としての処理)。
【0070】
次に、制御部30は、自船の速度を取得する(S52)。自船の速度は、自船の位置の時間変化に基づいて算出される。ここで、速度は、船速と方位を表すベクトル量である。
【0071】
次に、制御部30は、通信装置8からアンテナ85の仰角θを取得する(S53、計測情報取得部32としての処理)。
【0072】
次に、制御部30は、自船の位置、自船の速度、及びアンテナ85の仰角を含む認証リクエストを、通信装置8を介して通信衛星STに送信する(S54、通信処理部33としての処理)。
【0073】
認証装置2の制御部40は、船舶SHの通信装置8から通信衛星STに送信された電波のドップラーシフト量を検出する(S61)。すなわち、制御部40は、受信した電波の周波数と衛星通信に用いられる既定の周波数との差分を、ドップラーシフト量として算出する。
【0074】
次に、制御部40は、船載装置1から通信衛星STに送信された認証リクエストを取得する(S62、要求取得部41としての処理)。
【0075】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれる船舶SHの位置に基づいて、推測仰角gθを算出する(S63、推測情報算出部42としての処理)。
【0076】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれる船舶SHの速度に基づいて、ドップラーシフト量を推測する(S64)。
【0077】
次に、制御部40は、認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが、上記S63で推測された推測仰角gθに対応するか否か判定する(S65、認証部43としての処理)。
【0078】
また、制御部40は、上記S61で検出されたドップラーシフト量が上記S64で推測されたドップラーシフト量に対応するか否か判定する(S66、認証部43としての処理)。
【0079】
認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが推測仰角gθに対応し、さらに検出されたドップラーシフト量が推測されたドップラーシフト量に対応する場合(S65及びS66:YES)、制御部40は、認証リクエストを承認する(S67)。
【0080】
一方、認証リクエストに含まれるアンテナ85の仰角θが推測仰角gθに対応しない場合、又は検出されたドップラーシフト量が推測されたドップラーシフト量に対応しない場合(S65又はS66:NO)、制御部40は、認証リクエストを承認せずに、処理を終了する。
【0081】
このように、ドップラーシフト量をさらに組み合わせた用いた認証を行うことによって、セキュリティのさらなる向上を図ることが可能となる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0083】
以下、代表的な実施形態を列挙する。
【0084】
(1)
船舶に搭載され、前記船舶の位置と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを生成し、通信装置を介して前記認証リクエストを通信衛星に送信する船載装置と、
前記通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が、前記船舶の位置に基づいて算出される推測情報と対応する場合に、前記認証リクエストを承認する認証装置と、
を備える、認証システム。
【0085】
(2)
前記計測情報は、前記船舶と前記通信衛星の位置関係に基づいて一意に定まる情報である、
(1)に記載の認証システム。
【0086】
(3)
前記計測情報は、前記通信装置に含まれるアンテナの仰角である、
(1)または(2)に記載の認証システム。
【0087】
(4)
前記通信装置は、前記通信衛星に向けて前記アンテナの姿勢を調整する姿勢調整部を含む、
(1)ないし(3)の何れかに記載の認証システム。
【0088】
(5)
前記認証装置は、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて前記アンテナの仰角を前記推測情報として推測し、前記認証リクエストに含まれる前記アンテナの仰角が前記推測された仰角に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
(1)ないし(4)の何れかに記載の認証システム。
【0089】
(6)
前記計測情報は、前記船舶の周囲の環境の状態を表す環境情報であり、
前記認証装置は、前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に対応する環境情報を前記推測情報として取得し、前記認証リクエストに含まれる前記環境情報が前記取得された環境情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
(1)または(2)に記載の認証システム。
【0090】
(7)
前記認証リクエストは、前記船舶の速度をさらに含み、
前記認証装置は、さらに、前記通信装置からの電波のドップラーシフト量が、前記船舶の速度に基づいて推測されるドップラーシフト量に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
(1)ないし(6)の何れかに記載の認証システム。
【0091】
(8)
船舶の位置を検出し、
前記船舶の位置で計測可能な計測情報を取得し、
前記船舶の位置と前記計測情報とを含む認証リクエストを前記船舶から通信衛星に送信し、
前記通信衛星に送信された前記認証リクエストを取得し、
前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて推測情報を算出し、
前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が前記推測情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する、
認証方法。
【0092】
(9)
船舶の位置を取得する取得部と、
前記船舶の位置で計測可能な計測情報を取得する取得部と、
前記船舶の位置と前記計測情報とを含む認証リクエストを通信衛星に送信する通信処理部と、
を備える、船載装置。
【0093】
(10)
船舶の位置と、前記船舶の位置で計測可能な計測情報とを含む認証リクエストを取得する取得部と、
前記認証リクエストに含まれる前記船舶の位置に基づいて推測情報を算出する算出部と、
前記認証リクエストに含まれる前記計測情報が前記推測情報に対応する場合に、前記認証リクエストを承認する認証部と、
を備える、認証装置。
【符号の説明】
【0094】
1 船載装置、2 認証装置、3 レーダー、4 AIS、5 カメラ、6 GNSS受信機、7 GNSSコンパス、8 通信装置、9 操船制御部、30 制御部、31 船舶位置取得部、32 計測情報取得部、33 通信処理部、40 制御部、41 要求取得部、42 推測情報算出部、43 認証部、81 通信制御部、82 アンテナユニット、85 アンテナ、86 姿勢調整部、10 船載システム、100 認証システム