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特開2023-178821出荷管理システム、出荷管理方法、及び出荷管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178821
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】出荷管理システム、出荷管理方法、及び出荷管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20231211BHJP
   G06Q 50/28 20120101ALI20231211BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q50/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091742
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】西部 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 友裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄太郎
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 健一郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L049CC51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流通する物品の総量管理を行なえる、出荷管理システム、出荷管理方法及び出荷管理プログラムを提供する。
【解決手段】入荷した物品16に付された識別コード18を携帯端末装置12で読み取ることによって、物品16の出荷情報をサーバ12に登録するトレーサビリティシステム10は、携帯端末装置12が物品16に付された識別コードによって示される出荷情報の登録先を読み取り、物品16を分荷して出荷する出荷先及び出荷先毎の出荷量を含む出荷情報を、登録先であるサーバ14へ送信し、サーバ14は、受信した出荷情報を前記登録先に登録する。このトレーサビリティシステム10は、出荷量の総量が入荷した物品16の総量を超える登録は不可とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入荷した物品に付された識別コードを情報処理装置(12)で読み取ることによって、前記物品の出荷情報をサーバ(14)に登録する出荷管理システム(10)であって、
前記情報処理装置は、
前記物品に付された前記識別コードが示す前記出荷情報の登録先を読み取る読取部(26)と、
前記物品を分荷して出荷する出荷先及び前記出荷先毎の出荷量を含む前記出荷情報を、前記登録先である前記サーバへ送信する送信部(28)と、
を備え、
前記サーバは、
前記送信部から送信された前記出荷情報を受信する受信部(40)と、
前記受信部によって受信された前記出荷情報を前記登録先に登録する登録部(44)と、
を備え、
前記出荷量の総量が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とされる、
出荷管理システム。
【請求項2】
前記物品の出荷者が出荷先へ前記出荷情報の登録権限を与える、請求項1に記載の出荷管理システム。
【請求項3】
前記識別コードは、分荷して出荷する前記物品毎に前記出荷者によって付される、請求項2に記載の出荷管理システム。
【請求項4】
前記出荷情報には、物品の廃棄量が含まれ、
前記出荷量の総量と前記廃棄量との和が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とされる、
請求項1又は請求項2に記載の出荷管理システム。
【請求項5】
前記識別コードは、前記登録先がランダム値とされて記録される、請求項1又は請求項2に記載の出荷管理システム。
【請求項6】
前記出荷情報を登録可能な期間が定められる、請求項1又は請求項2に記載の出荷管理システム。
【請求項7】
前記識別コードが付された前記物品を入荷した小売店舗は、前記物品の産地証明を出力可能とする固有の店舗用識別コードが与えられ、
前記店舗用識別コードは、前記小売店舗が入荷した前記物品に付された前記識別コードが示す前記産地証明に必要とする前記物品の情報が紐づけられ、新たな前記物品が入荷する毎に前記物品の情報が更新される、請求項1又は請求項2に記載の出荷管理システム。
【請求項8】
入荷した物品に付された識別コードを情報処理装置で読み取ることによって、前記物品の出荷情報をサーバに登録する出荷管理方法であって、
前記情報処理装置が前記物品に付された前記識別コードから前記出荷情報の登録先を読み取る第1工程と、
前記物品を分荷して出荷する出荷先及び前記出荷先毎の出荷量を含む前記出荷情報を、前記情報処理装置から前記登録先である前記サーバへ送信する第2工程と、
前記情報処理装置から送信された前記出荷情報を前記サーバが受信する第3工程と、
前記サーバが受信した前記出荷情報を前記登録先に登録する第4工程と、
を有し、
前記出荷量の総量が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とする、
出荷管理方法。
【請求項9】
入荷した物品に付された識別コードを情報処理装置で読み取ることによって、前記物品の出荷情報をサーバに登録する出荷管理プログラムであって、
前記情報処理装置が備えるコンピュータに、
前記物品に付された前記識別コードが示す前記出荷情報の登録先を読み取る第1工程と、
前記物品を分荷して出荷する出荷先及び前記出荷先毎の出荷量を含む前記出荷情報を、前記登録先である前記サーバへ送信する第2工程と、
を実行させ、
前記サーバが備えるコンピュータに、
前記出荷情報を受信する第3工程と、
受信した前記出荷情報を前記登録先に登録する第4工程と、
を実行させ、
前記出荷量の総量が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とする、
出荷管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出荷管理システム、出荷管理方法、及び出荷管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作物や海産物等の物品の流通経路を流通業者及び第三者が確認可能とするトレーサビリティシステムの開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、生産者側端末を使用する生産者に対して、親コードに関する情報が含まれている親コード識別物が事前に支給され、加工業者側端末を使用する加工業者に対しては、子コードに関する情報が含まれている子コード識別物が事前に支給されるトレーサビリティシステムが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載のトレーサビリティシステムでは、生産者側端末が読み取った親コードに対して、原料情報を対応付けて管理サーバに送信する。管理サーバは、生産者側端末から送信されてきた親コードと原料情報と紐付けして記録する。加工業者側端末は、親コードと子コードとを対応付けて、管理サーバに送信する。管理サーバは、加工業者側端末から送信されてきた親コードと子コードとを紐付けして記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6850451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
仕入れ先から農作物や海産物等の物品が入荷されると、荷受者は入荷した物品を複数に分荷して出荷する場合がある。このような分荷の過程において不正が行われ、正規でない物品が混入して市場に流通する可能性がある。しかしながら、特許文献1に記載のトレーサビリティシステムでは、流通する物品の総量管理を行っていないため、正規の物品に対して不正な物品が混入することを防止できない。
【0007】
本発明は上記背景に鑑み、流通する物品の総量管理を行なえる、出荷管理システム、出荷管理方法、及び出荷管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために以下の技術的手段を採用する。特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
本発明の一態様の出荷管理システムは、入荷した物品に付された識別コードを情報処理装置(12)で読み取ることによって、前記物品の出荷情報をサーバ(14)に登録する出荷管理システム(10)であって、前記情報処理装置は、前記物品に付された前記識別コードが示す前記出荷情報の登録先を読み取る読取部(26)と、前記物品を分荷して出荷する出荷先及び前記出荷先毎の出荷量を含む前記出荷情報を、前記登録先である前記サーバへ送信する送信部(28)と、を備え、前記サーバは、前記送信部から送信された前記出荷情報を受信する受信部(40)と、前記受信部によって受信された前記出荷情報を前記登録先に登録する登録部(44)と、を備え、前記出荷量の総量が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とされる。
【0010】
本構成によれば、入荷した物品に付されている識別コードを情報処理装置が読み取って、物品を分荷して出荷する出荷先及び出荷先毎の出荷量を含む出荷情報をサーバに送信して登録する。このとき、出荷量の総量が入荷した物品の総量を超える登録は不可とされる。従って、本構成は流通する物品の総量管理を行うことができる。
【0011】
上記の出荷管理システムにおいて、前記物品の出荷者が出荷先へ前記出荷情報の登録権限を与えてもよい。本構成によれば、物品を流通させる毎に出荷情報を登録する事業者を決定でき、かつ物品の取引実態を取引の当事者以外に知られることを防止できる。
【0012】
上記の出荷管理システムにおいて、前記識別コードは、分荷して出荷する前記物品毎に前記出荷者によって付されてもよい。本構成によれば、物品を流通させる事業者が予め決定されていなくても、流通する物品に識別コードを付すことができる。
【0013】
上記の出荷管理システムにおいて、前記出荷情報には、物品の廃棄量が含まれ、前記出荷量の総量と前記廃棄量との和が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とされてもよい。本構成によれば、物品の廃棄量を含む物品の総量管理を行うことができる。
【0014】
上記の出荷管理システムにおいて、前記識別コードは、前記登録先がランダム値とされて記録されてもよい。本構成によれば、出荷情報への不正なアクセスを防止できる。
【0015】
上記の出荷管理システムにおいて、前記出荷情報を登録可能な期間が定められてもよい。本構成によれば、出荷情報のセキュリティ性を高めることができる。
【0016】
上記の出荷管理システムにおいて、前記識別コードが付された前記物品を入荷した小売店舗は、前記物品の産地証明を出力可能とする固有の店舗用識別コードが与えられ、前記店舗用識別コードは、前記小売店舗が入荷した前記物品に付された前記識別コードが示す前記産地証明に必要とする前記物品の情報が紐づけられ、新たな前記物品が入荷する毎に前記物品の情報が更新されてもよい。
【0017】
本構成によれば、店舗用識別コードを消費者に販売する物品と共に表示することで、消費者は店舗用識別コードを読み取って産地証明を確認できる。そして、店舗用識別コードに紐づけられる物品の情報は、新たに入荷した物品の識別コードを読み取る毎に更新されるので、小売店舗は物品が新たに入荷されても、新たな産地証明を消費者向けに発行する等が不要となる。
【0018】
本発明の一態様の出荷管理方法は、入荷した物品に付された識別コードを情報処理装置で読み取ることによって、前記物品の出荷情報をサーバに登録する出荷管理方法であって、前記情報処理装置が前記物品に付された前記識別コードから前記出荷情報の登録先を読み取る第1工程と、前記物品を分荷して出荷する出荷先及び前記出荷先毎の出荷量を含む前記出荷情報を、前記情報処理装置から前記登録先である前記サーバへ送信する第2工程と、前記情報処理装置から送信された前記出荷情報を前記サーバが受信する第3工程と、前記サーバが受信した前記出荷情報を前記登録先に登録する第4工程と、を有し、前記出荷量の総量が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とする。
【0019】
本発明の一態様の出荷管理プログラムは、入荷した物品に付された識別コードを情報処理装置で読み取ることによって、前記物品の出荷情報をサーバに登録する出荷管理プログラムであって、前記情報処理装置が備えるコンピュータに、前記物品に付された前記識別コードが示す前記出荷情報の登録先を読み取る第1工程と、前記物品を分荷して出荷する出荷先及び前記出荷先毎の出荷量を含む前記出荷情報を、前記登録先である前記サーバへ送信する第2工程と、を実行させ、前記サーバが備えるコンピュータに、前記出荷情報を受信する第3工程と、受信した前記出荷情報を前記登録先に登録する第4工程と、を実行させ、前記出荷量の総量が入荷した前記物品の総量を超える登録は不可とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流通する物品の総量管理を行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態のトレーサビリティシステムの概略構成図である。
図2】実施形態の流通過程を示す模式図である。
図3】実施形態の出荷情報を示す模式図である。
図4】実施形態の利用登録処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態のトレーサビリティシステムの機能ブロック図である。
図6】実施形態の出荷情報登録処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施形態の出荷情報登録処理の流れを示すフローチャートである。
図8】実施形態の産地証明を消費者が取得する流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0023】
図1は、本実施形態のトレーサビリティシステム10の概略構成図である。本実施形態のトレーサビリティシステム10は、入荷した物品16に付された識別コード18を携帯端末装置12で読み取ることによって、物品16の出荷情報をサーバ14に登録する。
【0024】
携帯端末装置12は、カメラ20(図5参照)及びタッチパネルディスプレイ等の表示部22を備えたスマートフォンやタブレット端末等の情報処理装置である。なお、携帯端末装置12は、これに限らず、物品16の識別コード18(一例としてQRコード(登録商標))を読み取り、サーバ14に出荷情報を登録可能な構成であれば専用機器でもよい。
【0025】
本実施形態の物品16は、一例として、農水産品とするが、これに限らず、入荷された物品16が事業者によって分荷して出荷されることで、市場を流通する物品16であれば農作物や工業製品等でもよい。
【0026】
識別コード18は、物品16に付される情報コードである。本実施形態の識別コード18は、一例としてQRコードであるが、これに限らず、他の2次元コードやバーコード等の1次元コードのような情報コードでもよい。識別コード18は、物品16の出荷情報の登録先が少なくとも記録されている。この登録先とは、サーバ14における出荷情報へのアクセス先である。識別コード18は、物品16に直接付されてもよいが、物品16を収めた容器、物品16を管理するタグ、納品書等に付されてもよい。また、識別コード18は、分荷して出荷する物品16毎に出荷者によって付される。
【0027】
携帯端末装置12は、カメラ20によって物品16に付された識別コード18を撮像し、識別コード18が示す出荷情報の登録先を読み取り、出荷先及び出荷先への出荷量を出荷情報としてサーバ14に登録する。本実施形態における識別コード18の読み取り及び出荷情報の登録は、一例として、携帯端末装置12にインストールされているアプリケーション(以下「出荷情報登録アプリ」という。)を操作することで行われる。
【0028】
なお、本実施形態の識別コード18には、サーバ14における登録先の他に、ステータス情報として生産者の名称、物品16の名称、物品16である農水産品の収穫日、生産者からの物品16の出荷日、物品16の直前の出荷者の名称、及び直前の出荷者からの出荷日等も記録されている。なお、ここでいう記録とは、識別コード18に直接記録されるだけでなく、識別コード18を読み取ることでアクセスするサーバ14に記憶されることも意味する。
【0029】
図2は、物品16の流通過程を示す模式図である。生産者又は生産組合から出荷される物品16は複数の流通事業者、換言するとサプライチェーン事業者によって市場に流通し、販売店(消費者)に至る。
【0030】
本実施形態のトレーサビリティシステム10では、市場に流通する物品16毎に識別コード18が付される。具体的には、流通事業者Aに出荷される物品16には、流通事業者Aが当該物品16を他の流通事業者へ出荷する場合における出荷情報の登録先を記録した識別コード18が付される。また、流通事業者Bに出荷される物品16には、流通事業者Bが当該物品16を他の流通事業者へ出荷する場合における出荷情報の登録先を記録した識別コード18が付される。識別コード18として記録される登録先は、出荷先となる流通事業者毎に異なっている。
【0031】
流通事業者は物品16を入荷又は集荷すると、物品16を複数に分荷したり、加工して他の流通事業者に出荷する。図2の例では、流通事業者Aは、入荷した物品16を流通事業者C,D,Eへ出荷するために分荷する。そして、分荷した物品16には流通事業者C,D,E毎に異なる出荷情報の登録先を記録した識別コード18が付される。同様に、図2の例では、流通事業者Cは、流通事業者F,G毎に異なる出荷情報の登録先を記録した識別コード18を付して分荷した物品16を出荷する。
【0032】
図3は、本実施形態の出荷情報を示す模式図である。図3は、図2における流通事業者Aが登録する出荷情報に対応している。すなわち、流通事業者Aである○×水産は、入荷した物品16に付された識別コード18から登録先を読み取り、読み取った登録先に出荷先及び出荷先毎の出荷量を登録する。なお、図3の例では、出荷量を物品16の重量としているが、これに限らず、出荷する物品16の数等、他の単位としてもよい。また、出荷情報には、出荷先への出荷日等が含まれてもよい。
【0033】
出荷情報における総量とは、入荷した物品16の総量である。出荷情報における廃棄量とは、入荷した物品16のうち腐敗等によって廃棄となった量、すなわち歩留り量に対応する。本実施形態のトレーサビリティシステム10では、出荷量の総量が入荷した物品16の総量を超える登録は不可とされる。また、物品16の出荷量の総量と廃棄量との和が入荷した物品16の総量を超える登録も不可とされる。
【0034】
図3の例では、流通事業者Aである○×水産は、流通事業者Cである△△商店へ30kg出荷し、流通事業者Dである△×水産へ30kg出荷し、流通事業者Eである○△水産へ30kg出荷する。一方で、廃棄量は10kgである。これら出荷先、出荷先毎の出荷量、及び廃棄量が出荷情報として登録され、これらの和は入荷した物品16に総量100kgと同じである。なお、登録を行う流通事業者は、出荷ID、ユーザ名、及び総量を変更することはできない。
【0035】
このように、本実施形態のトレーサビリティシステム10では、入荷した物品16の総量を超える出荷量を出荷情報として登録できないので、流通する物品16の総量管理が可能となる。
【0036】
また、本実施形態の出荷情報の出荷IDは、推測され難いランダム値とされ、このランダム値が識別コード18として記録される。もし、出荷IDを連続した番号とすると、ある出荷IDを知った者が他の出荷IDを推測する可能性がある。そこで、本実施形態の識別コード18は、出荷情報の登録先(出荷ID)をランダム値として記録することで、出荷情報のセキュリティ性を高めることができる。なお、これに限らず、出荷IDが連番とされ、連番とした出荷IDをハッシュ化したハッシュ値を識別コード18が記録してもよい。このハッシュ値も出荷IDに基づいて生成されるランダム値である。
【0037】
そして、本実施形態のトレーサビリティシステム10は、出荷情報に含まれる出荷先と出荷量とを次の出荷情報に紐づける。すなわち、次の出荷情報はユーザ名を出荷先とし、総量を出荷先への出荷量として新たに生成され、さらに次の出荷先と出荷先毎の出荷量とが登録される。これにより、本実施形態のトレーサビリティシステム10は、物品16の生産から消費に至るまでのトレーサビリティを可能とする。なお、以下の説明では、識別コード18を読み取り、出荷情報の登録を行うことを活性化ともいう。
【0038】
なお、本実施形態の流通事業者は、識別コード18を読み取ることで、出荷する物品16の登録先のみにアクセスできる。換言すると、流通事業者は、自身の登録先以外の出荷情報にはアクセスできない。これにより、サプライチェーンの取引実態を取引当事者以外の事業者が知ることはできない。
【0039】
ここで、例えば、日々の収穫量が変動し易い農水産物等の物品16にとっては、出荷先が変化し易いため、事前にサプライチェーン事業者を設定することが困難である。そこで、本実施形態のトレーサビリティシステム10は、物品16の出荷者が出荷先へ出荷情報の登録権限を与える。すなわち、物品16の出荷情報の登録権限は、出荷元から出荷先への招待制とされる。
【0040】
図4は、登録権限を与えるための利用登録処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
まず、ステップS100では、出荷元の流通事業者は、出荷先の流通事業者へ招待コードを送信する。招待コードの送信は、例えば、携帯端末装置12にインストールされた出荷情報登録アプリの招待機能によって行われる。出荷元の流通事業者は、出荷先の名称と出荷先のEメールアドレスを出荷情報登録アプリに入力して送信する。
【0042】
次のステップS102では、出荷先の流通事業者はEメールを介して招待通知を受け取り、当該招待通知に記載されているURL(Uniform Resource Locator)にアクセスすることで利用登録を行う。利用登録では、自社の名称とEメールアドレスを登録する。この登録内容は、サーバ14に送信される。サーバ14は、登録処理として当該流通事業者に特有のID(以下「企業ID」という。)を生成する。
【0043】
次のステップS104では、登録したEメールアドレスにサーバ14が企業IDを送信することで、出荷先の流通事業者に企業IDの発行が行われる。
【0044】
企業IDを受け取った流通事業者は、入荷した物品16に付された識別コード18を読み取って企業IDを入力することで、識別コード18を活性化して出荷情報の登録を行う。このため、出荷元の流通事業者は、物品16の出荷前に出荷先へ招待コードの送信を行わなければならない。また、出荷先の流通事業者は識別コード18を読み取って出荷情報の登録を行う前に、企業IDを取得しなければならない。なお、登録権限は、出荷元が出荷先へ物品16を出荷する毎に与えるものである。
【0045】
このように、本実施形態のトレーサビリティシステム10は、出荷元の流通事業者から指定された荷受者のみが識別コード18の活性化が可能となる。これにより、物品16を流通させる毎に出荷情報を登録する流通事業者を決定できるので、流通量が変動し易く流通事業者が変化し易い物品16であっても、漏れや不正の無い出荷情報の登録が可能となる。また、登録可能な流通事業者が事前に設定されないので、物品16の取引実態を取引の当事者以外に知られることを防止できる。
【0046】
また、本実施形態のトレーサビリティシステム10は、出荷情報を登録可能な期間(以下「登録可能期間」という。)が定められている。すなわち、登録可能期間が経過していると識別コード18を活性化することはできず、出荷情報の登録ができない。このような期限管理により、一定期間を過ぎた識別コード18は不活性化させることで、識別コード18の不正流用が防止される。なお、登録可能期間は、一例として、日単位で予め設定されており、その始期は例えば、識別コード18の生成日、識別コード18に対応する流通事業者が企業IDの発行を受けた日、又は識別コード18のステータスとして記録されている収穫日等である。
【0047】
また、本実施形態の出荷情報の登録に用いる出荷情報登録アプリは、産地証明の発行機能も有する。このため、出荷情報登録アプリを操作する流通事業者や販売業者は、自身が入荷した物品16の産地証明を適宜取得することができる。
【0048】
図5は、トレーサビリティシステム10を構成する携帯端末装置12及びサーバ14の機能ブロック図である。
【0049】
携帯端末装置12は、カメラ20及び表示部22と共に、記憶部24、読取部26、及び通信部28を備える。
【0050】
カメラ20は、撮像機能を有し、本実施形態では物品16に付属する識別コード18を撮像する。
【0051】
表示部22は、例えばタッチパネルディスプレイであり、各種データを表示したり、利用者による携帯端末装置12に対する操作を受け付ける。
【0052】
記憶部24は、識別コード18の読み取り及び出荷情報の登録に関する出荷情報登録アプリ等の各種プログラム及び各種データを記憶する。
【0053】
読取部26は、カメラ20で撮像された識別コード18(QRコード)が示す出荷情報の登録先を読み取るためのデコード処理を行う。
【0054】
通信部28は、サーバ14等の他の情報処理装置等との間で情報の送受信を行う。なお、本実施形態の通信部28は、サーバ14が備える通信部40を介してサーバ14との間で情報の送受信を行う。
【0055】
すなわち、携帯端末装置12の通信部28は、物品16を分荷して出荷する出荷先及び出荷先毎の出荷量を含む出荷情報を、登録先であるサーバ14へ送信する送信部として機能する。一方、サーバ14の通信部40は、通信部28から送信された出荷情報を受信する受信部として機能する。そして、サーバ14が備える記憶装置42に、物品16の出荷情報が記憶される。
【0056】
サーバ14は、通信部40及び記憶装置42と共に、利用登録部44、出荷情報登録部46、識別コード生成部48、及び産地証明管理部49を備える。
【0057】
利用登録部44は、流通事業者に特有の企業IDを生成し、当該企業IDを登録する。
【0058】
出荷情報登録部46は、通信部40によって受信した出荷情報を登録先に登録する。登録とは、出荷情報を記憶装置42に記憶させることである。なお、出荷情報登録部46は、出荷量の総量が入荷した物品16の総量を超える登録は不可とし、登録可能期間を超えた後の出荷情報の登録を不可とする。
【0059】
識別コード生成部48は、出荷情報が登録された場合に、出荷先に出荷する物品16に付すための識別コード18を生成する。生成された識別コード18は、上述のように出荷情報の登録先である出荷IDを示しており、この出荷IDには出荷先の流通事業者と出荷総量が予め紐づけられる。生成された識別コード18は、携帯端末装置12へ通信部40を介して送信され、流通事業者は出荷情報登録アプリから識別コード18の印刷等を行う。
【0060】
産地証明管理部49は、小売店舗に固有の店舗用識別コードを生成する。店舗用識別コードは、物品16の産地証明を出力可能とするものであり、小売店舗が入荷した物品16の産地証明に必要とする情報が紐づけられる。また、産地証明管理部49は、小売店舗に新たな物品16が入荷する毎に店舗用識別コードに紐づけられる物品16の情報を更新する。なお、小売店舗とは、物品16を商品として消費者に販売する事業者であり、例えば、スーパーマーケットやデーパート等である。
【0061】
図6,7は、本実施形態の携帯端末装置12及びサーバ14で行われる出荷情報登録処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態の出荷情報登録処理は、Webアプリである出荷情報登録アプリを流通事業者が操作することによって実行される。なお、これに限らず、出荷情報登録処理は、携帯端末装置12が備える記憶部24等の記録媒体に格納されたプログラムを流通事業者が操作することによって実行されてもよい。このWebアプリ又はプログラムが実行されることで、Webアプリ又はプログラムに対応する方法が実行される。
【0062】
図6を参照して携帯端末装置12で行われる処理を説明する。
【0063】
まず、ステップS200では、携帯端末装置12が出荷情報登録アプリを起動させる。
【0064】
次のステップS202では、出荷情報登録アプリを介して企業IDを入力する。企業IDが入力されると、企業IDがサーバ14へ送信され、利用登録部44によって認証が行われる。認証に成功すると次のステップS204へ移行する。
【0065】
次のステップS204では、携帯端末装置12がカメラ20によって物品16の識別コード18を撮像し、読取部26によって識別コード18の内容を読み取り、サーバ14にアクセスする。
【0066】
次のステップS206では、登録可能期間であるか否かをサーバ14の出荷情報登録部46が判定し、肯定判定の場合はステップS208へ移行する。一方、否定判定の場合は、識別コード18を活性化できないことを表示部22に表示して処理を終了する。
【0067】
ステップS208では、タッチパネルディスプレイである表示部22を介して、出荷先及び出荷先毎の出荷量等の出荷情報を入力する。
【0068】
次のステップS210では、出荷情報を登録するための操作、例えば登録ボタンのクリック等が行われる。
【0069】
次のステップS212では、入力された出荷情報を通信部28がサーバ14へ送信する。出荷情報がサーバ14へ送信されるとサーバ14は、後述する図7に示される処理を実行する。
【0070】
次のステップS214では、流通事業者が出荷情報登録アプリを介して識別コード18を取得する。流通事業者は、識別コード18を取得すると、印刷等して識別コード18を物品16に付して、物品16を出荷する。このように、識別コード18は、分荷して出荷する物品16毎に出荷者によって付される。従って、本実施形態のトレーサビリティシステム10は、物品16の流通事業者が予め決定されていなくても、流通する物品16に識別コード18を付すことができる。
【0071】
次に、図7を参照してサーバ14による処理を説明する。
【0072】
まず、ステップS300では、ステップS212において携帯端末装置12から送信された出荷情報を通信部40が受信する。
【0073】
次のステップS302では、出荷情報に示される出荷量の総量(以下「出荷総量」という。)と入荷している物品16の総量(以下「入荷総量」という。)とを出荷情報登録部46が比較する。なお、ここでいう出荷総量は、廃棄量も含めた総量である。
【0074】
次のステップS304では、出荷総量が入荷総量を超えるか否かを出荷情報登録部46が判定し、否定判定の場合はステップS306へ移行し、肯定判定の場合はステップS312へ移行する。
【0075】
ステップS306では、出荷総量が入荷総量を超えていないため、出荷情報登録部46が出荷情報を記憶装置42に記憶させることで、出荷情報の登録が行われる。
【0076】
ステップS308では、識別コード生成部48が、登録された出荷情報に基づいて出荷先毎の識別コード18を生成し、出荷情報登録アプリを介して流通事業者による取得を可能とする。
【0077】
次のステップS310では、出荷情報の登録が完了したことを、出荷情報登録部46が出荷情報登録アプリを介して流通事業者へ通知する。
【0078】
一方で、ステップS304で肯定判定となった場合、すなわち、出荷総量が入荷総量を超える入力が行われた場合にステップS312へ移行する。ステップS312では、出荷情報の登録が不可であることを、出荷情報登録部46が出荷情報登録アプリを介して流通事業者へ通知する。なお、この不可通知が行われた場合、流通事業者はステップS208へ戻り、出荷情報の再入力を行う。
【0079】
次に、図8を参照して、本実施形態のトレーサビリティシステム10による産地証明の発行について説明する。
【0080】
ここで、小売店舗は、商品である物品16が入荷する毎に当該物品16の産地証明を新たに印刷する等して、産地証明を消費者向けに発行することに手間を要する。
【0081】
そこで本実施形態のトレーサビリティシステム10は、小売店舗毎に固有の店舗用識別コード50を発行する。この店舗用識別コード50は、小売店舗が入荷した物品16に付された識別コード18が示す産地証明に必要とする物品16の情報(以下「産地情報」という。)が紐づけられる。なお、ここでいう物品16の産地情報とは、生産者の名称、物品16の名称、物品16である農水産品の収穫日又は物品16の生産者からの出荷日等であり、識別コード18にステータス情報として記録されている。
【0082】
このように、店舗用識別コード50には、物品16の産地情報が紐づけられており、この店舗用識別コード50を読み取ることで、所定のフォーマットに産地情報が表示された産地証明が出力される。なお、店舗用識別コード50は例えば、QRコード等の情報コードである。店舗用識別コード50は、出荷情報登録アプリを介して出力可能とされている。
【0083】
小売店舗は、店舗用識別コード50を産地証明書52と共に印刷し、消費者に販売する物品16(商品)と共に表示する。これにより、消費者は、自身の携帯端末装置54で店舗用識別コード50を読み取ることで、産地証明を携帯端末装置54で確認できる。
【0084】
本実施形態の店舗用識別コード50は、小売店舗に新たな物品16が入荷する毎に紐づけられる物品16の産地情報がサーバ14の産地証明管理部49によって更新される。
【0085】
上記更新のために、小売店舗は、物品16が入荷されると、出荷情報登録アプリを介して識別コード18を読み取り、物品16が入荷したことを入力する入荷処理を行う。入荷処理が実行されると、読み取られた識別コード18が示す物品16の産地情報を店舗用識別コード50に紐づける処理を産地証明管理部49が行う。これにより、店舗用識別コード50には、新たな物品16が入荷する毎に紐づけられる物品16の産地情報が更新される。この更新により、例えば、消費者が携帯端末装置54を介して確認する産地証明の出荷日が物品16(陳列される商品)に対応した出荷日となる。
【0086】
このように店舗用識別コード50に紐づけられる物品16の産地情報は、新たに入荷した物品16の識別コード18を読み取る毎に更新されるので、小売店舗は物品16が新たに入荷されても、新たな産地証明を消費者向けに発行する等が不要となる。
【0087】
また、店舗用識別コード50は、例えば、物品16の名称及び生産者の組み合わせ毎に発行される。このため、産地証明管理部49は、入荷処理によって読み取られた識別コード18が示す物品16の名称及び生産者の組み合わせに応じた店舗用識別コード50に対して上記更新を行う。
【0088】
なお、店舗用識別コード50は、図8に示すように産地証明書52と共に印刷するのではなく、例えば、デジタルサイネージ、電子ペーパー、及び電子値札等に表示されてもよい。
【0089】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
例えば、上記実施形態では、出荷量の総量が入荷した物品16の総量を超える登録は不可とし、登録可能期間を超えた後の出荷情報の登録を不可とする機能をサーバ14の出荷情報登録部46が有する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。これらの機能は、携帯端末装置12にインストールされた出荷情報登録アプリが有してもよい。
【0091】
上記実施形態では、識別コード18の生成をサーバ14が行う形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。識別コード18の生成はサーバ14ではなく、携帯端末装置12の出荷情報登録アプリで行われてもよい。この形態の場合、識別コード生成部48は、識別コード18の生成に必要な情報を通信部40を介して携帯端末装置12へ送信する。
【符号の説明】
【0092】
10・・・トレーサビリティシステム、12・・・携帯端末装置、14・・・サーバ、
16・・・物品、18・・・識別コード、22・・・表示部、28・・・読取部、
50・・・店舗用識別コード
図1
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図8