(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178823
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】自動給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 5/02 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A01K5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091747
(22)【出願日】2022-06-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売年月日 2022年 3月28日 販売した場所 公益財団法人横浜市緑の協会(神奈川県横浜市中区日本大通58 日本大通ビル2階)
(71)【出願人】
【識別番号】390029698
【氏名又は名称】テック大洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
【テーマコード(参考)】
2B102
【Fターム(参考)】
2B102AA20
2B102AB44
2B102AD05
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギーに基づく電源とするとともに確実に作動させることができ、設置場所の制限が少なく、飼育者の給餌作業負担を軽減することができ、多様なタイプの餌の給餌に対応可能であり、構造が複雑でない自動給餌装置を提供すること。
【解決手段】本体と、本体内に上下方向に多段に配設された餌置部材とを備え、餌置部材は上下方向に回動可能であり、餌置部材は、永電磁石により餌置可能となるように係合されるとともに永電磁石に通電することで餌が落下するよう、回動可能に構成されており、電源が、再生可能エネルギーに基づくものである、自動給餌装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、本体内に上下方向に多段に配設された餌置部材とを備え、
餌置部材は上下方向に回動可能であり、
餌置部材は、永電磁石により餌置可能となるように係合されるとともに永電磁石に通電することで餌が落下するよう、回動可能に構成されており、
電源が、再生可能エネルギーに基づくものである、
自動給餌装置。
【請求項2】
餌置部材は、餌及び餌置部材の自重により下方向に回動するように構成されている、請求項1に記載の自動給餌装置。
【請求項3】
本体の少なくとも一部を収容する外部筺体を備えており、外部筺体は、少なくとも1つの採餌用開口部と、少なくとも1つの餌補給用開口部とを備えている、請求項1又は2に記載の自動給餌装置。
【請求項4】
餌落下地点から採餌用開口部の間に、餌移動邪魔部材を備える、請求項3に記載の自動給餌装置。
【請求項5】
採餌用開口部と餌補給用開口部は、外部筺体に外周面に沿い角度方向に異なる位置関係となるように設けられている、請求項3に記載の自動給餌装置。
【請求項6】
餌補給用開口部を開閉する餌補給用開口部扉を備え、
餌補給用開口部内には、外部筺体内に格納可能な折畳ステップが配設されている、請求項3に記載の自動給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動給餌装置は、飼育している動物に対して、設定した任意のタイミングで自動的に給餌(餌やり)を行うために用いられている。自動給餌装置は、給餌に係る飼育者の作業負担を軽減するために、動物園、水族館、動物公園、ペットショップ、畜産施設等への導入が検討されている。
動物園、水族館、動物公園、ペットショップ、畜産施設等で飼育する動物には、対応に注意が必要な動物もいる。動物への給餌(餌やり)は、動物との距離が近くなる場合があり、動物と飼育者等の関係者との間に事故等が起こる可能性がある。例えば、ゾウのような大型動物は、大量の餌が必要であるため、動物活動領域での作業が長くなるおそれや、動物活動領域を2以上の領域に分割して給餌作業を行う、動物を一旦ほかの場所に移動させる等の作業等を行うことが、飼育者や動物の安全確保のために必要である。
一方、近年は、飼育されている動物の福祉と健康を改善するため、動物の飼育環境を工夫する環境エンリッチメントが注目されている。例えば、採餌の際に飼育動物が種々の工夫をする、飼育動物が野生本来の採餌行動を取り得るように、給餌すること等も求められている。
自動給餌装置としては、例えば、特許文献1~4に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-98687号公報
【特許文献2】特開平9-19230号公報
【特許文献3】実開平4-52451号公報
【特許文献4】実開昭55-65967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4に記載の自動給餌装置は、いずれも商用電源を用いるものであるため、商用電源が確保できる場所に設置場所が制限されてしまう。また、設置に際して商用電源を導入する工事を行う場合には、動物による配線等の損壊対策等が必要である。
特許文献1~4に記載の自動給餌装置は、商用電源を用いることを前提とした設計であることから作動電力が大きく、再生可能エネルギーに基づく電源のように小電力の電源では、長期にわたって確実に作動させることが困難である。特に、電磁石は作動電力が大きいため、長期にわたって確実に自動給餌装置を作動させることが困難である。また、ホッパ等が用いられている自動給餌装置は、干草等を餌として給餌することが困難である。さらに、自動給餌装置の構造自体も複雑である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、再生可能エネルギーに基づく電源とするとともに確実に作動させることができ、設置場所の制限が少なく、飼育者の給餌作業負担を軽減することができ、多様なタイプの餌の給餌に対応可能であり、構造が複雑でない自動給餌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、以下の構成を採用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
具体的な構成は、次のとおりである。
[項1]
本体と、本体内に上下方向に多段に配設された餌置部材とを備え、
餌置部材は上下方向に回動可能であり、
餌置部材は、永電磁石により餌置可能となるように係合されるとともに永電磁石に通電することで餌が落下するよう、回動可能に構成されており、
電源が、再生可能エネルギーに基づくものである、
自動給餌装置。
[項2]
餌置部材は、餌及び餌置部材の自重により下方向に回動するように構成されている、項1に記載の自動給餌装置。
[項3]
本体の少なくとも一部を収容する外部筺体を備えており、外部筺体は、少なくとも1つの採餌用開口部と、少なくとも1つの餌補給用開口部とを備えている、項1又は2に記載の自動給餌装置。
[項4]
餌落下地点から採餌用開口部の間に、餌移動邪魔部材を備える、項3に記載の自動給餌装置。
[項5]
採餌用開口部と餌補給用開口部は、外部筺体に外周面に沿い角度方向に異なる位置関係となるように設けられている、項3に記載の自動給餌装置。
[項6]
餌補給用開口部を開閉する餌補給用開口部扉を備え、
餌補給用開口部内には、外部筺体内に格納可能な折畳ステップが配設されている、項3に記載の自動給餌装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、再生可能エネルギーに基づく電源とするとともに確実に作動させることができ、設置場所の制限が少なく、飼育者の給餌作業負担を軽減することができ、給餌時の飼育者の安全性が向上し、多様なタイプの餌の給餌に対応可能であり、構造が複雑でない自動給餌装置が提供される。
本発明の自動給餌装置は、電力会社の商用電源系統を利用していないため、電気工事が不要であり、飼育動物による配電設備の破損や飼育動物の安全性を向上することができる。さらに、設置場所の自由度が極めて大きい。
本発明の自動給餌装置は、多様なタイプの餌の給餌に対応可能であり、複数回の給餌を自動で行うことが可能であるため、飼育者の給餌作業負担を軽減することが可能である。さらに、給餌に際して、動物の活動領域に飼育者が立ち入る必要をなくすことが可能であるため、給餌時に、飼育者が危険に晒されることを防止することが可能である。
本発明の自動給餌装置は、動物の活動領域外に、餌補給用開口部を設けることが可能であるため、自動給餌機への餌補給を、時間や作業者を選ばずに安全に行うことができる。さらに、餌補給用開口部に、折畳ステップ等を設けた場合には、餌置部材の段数が増えても、上段への餌補給作業を安全に行うことが可能である。
本発明の自動給餌装置において、餌移動邪魔部材を設けることで、採餌の際に飼育動物が種々の工夫をすることが必要となり、飼育動物が野生本来の採餌行動をとるように構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る自動給餌装置の一実施形態における本体部の透過斜視概略図。
【
図2】本発明に係る自動給餌装置の一実施形態における斜視概略図。
【
図4】本発明に係る自動給餌装置の餌置部材設置部の拡大図。
【
図5】本発明に係る自動給餌装置の再生可能エネルギーに基づく電源の設置部の拡大概要図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る自動給餌装置の好適な一実施態様を説明するが、本発明は、以下の一実施態様に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲において、適宜変更することが可能である。なお、異なる図面における同じ参照番号の使用は、類似又は同一の項目又は特徴を示す。
【0010】
本発明の自動給餌装置の一実施形態としては、
図1~
図5に示す自動給餌装置Aが挙げられる。
図1~
図5に示す自動給餌装置Aは、本体10、台座11、餌置部材20、永電磁石30、永電磁石制御装置40、チャージコントローラ50、餌移動邪魔部材60を少なくとも備えている。
【0011】
<本体>
本体10は、自動給餌装置Aの骨格を形成するもので、台座11に固定することができる。本体10は、金属(鉄、ステンレス、アルミニウム等)、プラスチック、木材、セラミック、複合材料等から構成することができる。ゾウ等の大型動物への給餌に用いる場合には、強度を得るために金属材料により構成することが好ましい。また、軽量化を図るためには、アルミニウム又はアルミニウム合金等を用いることが好ましい。
【0012】
本体10には、餌置部材20を上下方向に回動可能となるように取り付けることができる。また、本体10に補助部材(図示されていない)を設け、補助部材に餌置部材20を上下方向に回動可能なように取り付けることができる。
本体10には、餌置部材20を磁気吸着可能となるように永電磁石30を取り付けることができる。また、本体10に補助部材(図示されていない)を設け、餌置部材20を磁気吸着可能となるように永電磁石30を取り付けることができる。
本体10には、必要に応じて、強度確保の部材等や、配電盤等の各種設備・機器を取り付けるための部材等を設けることができる。
【0013】
本体10には、外装板を取り付けることができる。これにより、より簡易な構造の自動給餌装置Aを構成することができる。本体10に外装板を直接取り付ける場合には、餌補給のために、一部を開閉可能となるように構成される。また、必要に応じて、本体10下部の外装板の一部に、採餌用開口部81を設けることができる。
また、ゾウ等の大型動物用とする際には、
図2、
図3に示すように、本体10の少なくとも一部を外部筺体80内に収容することで、動物による本体10の破損を防止・軽減することができる。
【0014】
本体10の最下段及び/又は底部の一部は、採餌用開口部81とすることができる。また、本体10の最下段又は底部の一部を、採餌用開口部81と連通することができる。
本体10の最下段又は底部の一部を採餌用開口部81とする場合、本体10の外周面の最下段に相当する部分及び/又は本体10底部に、餌移動邪魔部材60を設けることができる。また、必要に応じて、底面部を傾斜させることで、落下した餌を採餌用開口部81に移動しやすくすることができる。
図1~
図3に示す自動給餌装置Aは、本体10底部が採餌用開口部81と連通されており、本体10底部に、餌移動邪魔部材60としての金網を設けることで、餌落下地点から採餌用開口部81の間に餌移動邪魔部材60を備えるように構成したものである。餌置部材20の回動により、餌置部材20に載置されていた餌は、本体10底部に設けられた金網上が餌落下地点となるように落下する。
【0015】
餌移動邪魔部材60は、落下した餌の全量又は大部分について、採餌用開口部81から容易には取り出すことができないものの、動物が工夫すれば取り出し可能となる部材であれば特に限定されない。例えば、金網、格子、多穴部材(パンチングメタル等)、棒材、板材等を、適宜配置することで餌移動邪魔部材60を構成することができる。
本発明の自動給餌装置Aにおいては、餌移動邪魔部材60の設置は任意である。例えば、ゾウ等の高度な知能を持つ動物に対しては、餌移動邪魔部材60を設けることで、採餌に際して動物が知能を働かすようにすることができ、場合によっては、野生本来の採餌行動に近付けることができるため、動物エンリッチメントの観点から有利である。例えば、
図1~
図3に示される自動給餌装置Aをゾウの自動給餌装置とした場合、ゾウは採餌用開口部81から鼻を入れ、(a)餌移動邪魔部材60(金網)上の干草塊に息を吹きかけて解し、餌移動邪魔部材60の空隙(金網の網目)から解れた干草を落下させる、(b)餌移動邪魔部材60の空隙(金網の網目)から干草を引っ張り出す等、採餌に際してゾウが知能を働かすようにすることができ、野生本来の採餌行動に近付けることができる。
【0016】
<餌置部材>
餌置部材20は、その上に餌を載置・保持可能であり、永電磁石30により餌置可能となるように係合可能なものであれば、特に限定されない。例えば、板状、メッシュ状、網状、パンチング状、縦格子状、格子状の1種以上の部材等から構成することができ、平面状(板状)、トレー状、箱状、籠状等の任意の形状とすることができる。これにより、複雑な構造とはならず、しかも、多様なタイプの餌が、餌置部材20上に載置・保持可能となり、多様なタイプの餌を、自動で給餌することが可能となる。
餌置部材20は、全体を永電磁石30に吸着する材料(鉄等の強磁性体)で構成されるか、永電磁石30との係合部分(永電磁石30と磁着する部分)をのみを永電磁石30に吸着する材料から構成される。
餌置部材20は、本体10内に上下方向に多段に配設される。
図1~
図3に示す自動給餌装置Aは、餌置部材20を10個用い、2列5段の餌置棚を形成しているが、餌置部材20の個数、形成する餌置棚の列数及び段数は、任意に設定することができる。
【0017】
餌置部材20は、上下方向に回動可能とされており、永電磁石30により餌置可能となるように係合されるとともに永電磁石30に通電することで餌が落下するように回動するように構成されている。
図4に示される一実施態様において、餌置部材20は、餌置部材20の自重量又は餌と餌置部材20の合計重量により下方向に回動するように、蝶番21を用いて一辺の少なくとも一部が本体10と連結されている。また、餌置部材20は、蝶番21を用いて本体10と連結された辺と対向する辺側が、永電磁石30と磁気吸着力により係合(磁着)しており、これにより、餌置部材20上に餌を載置することが可能となる。ここで、永電磁石30に通電すると、永電磁石30は磁気吸着力を喪失し、餌置部材20の自重量又は餌と餌置部材20の合計重量により下方向に回動し、これにより餌が落下することとなる。
【0018】
餌置部材20の回動方向は特に限定されない。例えば、
図4に示すように、餌置部材20は、永電磁石30が通電により磁気吸着力を喪失した際に、餌置部材20の自重量又は餌と餌置部材20の合計重量により下方向に回動するように構成できる。また、例えば、餌置部材20は、緊張状態にある弾性部材の弾性復元力により上方向に回動するように構成できる。本発明においては、通電により永電磁石30の磁気吸着力が低下(喪失)した際に、餌置部材20の自重量又は餌と餌置部材20の合計重量により下方向に回動する構成が好ましい。
【0019】
<永電磁石>
永電磁石30は、通電することにより磁気吸着力(磁力)が低下(喪失)し、係合(磁着)を解除することが可能な磁石である。永電磁石30は、通常の電磁石と異なり、通常時(非通電時)には磁力で吸着し、通電すれば一瞬で磁力を低下(喪失)することができる。通電の際に必要な電圧は、電力会社の商用電源系統の電圧(100V)より小さいため、電源が再生可能エネルギーに基づくものでも、永電磁石30を確実に、長期にわたって作動させることが可能である。
【0020】
永電磁石30としては、例えば、2種類の永久磁石(ネオジム磁石等とアルニコ磁石等)から構成されたものや、永久磁石と電磁石から構成されたものが挙げられる。永電磁石30は、磁気吸着力を低下(喪失)させる時だけにパルス電流を送るだけでよく、少ない電力(電圧・電流)で作動させることが可能である。永電磁石30は、各種のものが市販されており、必要な磁気吸着力や作動電力(電圧・電流)等に応じて、適宜好適なものを採用することができる。
【0021】
永電磁石30の作動制御は、永電磁石制御装置40を用いて行うことができる。永電磁石制御装置40としては、例えば、タイマー、各種センサー等からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。永電磁石制御装置40により、設定した任意のタイミングで永電磁石30に通電して永電磁石30の磁気吸着力(磁力)の低下(喪失)を制御することが可能である。例えば、永電磁石制御装置40としてタイマーを用いると、定められた時間に永電磁石30が動作するよう設定することができ、設定した時間に餌置部材20から餌を落下させ、飼育者が不在であっても自動で給餌することができる。
【0022】
<電源>
本発明に係る自動給餌装置Aの電源は、再生可能エネルギーに基づくものである。
本発明の自動給餌装置Aは、電源の周辺機器や関連する各種の機器、例えば、バッテリー、チャージコントローラ50、配電盤等を備えていてもよい。
【0023】
本発明において、再生可能エネルギーとしては、例えば、太陽光、風力、熱利用(地熱・太陽熱)、水力、海洋エネルギー(波力・潮力)、バイオマス等が挙げられる。再生可能エネルギーに基づく電源としては、これら単独又は1種以上を用いた発電設備が挙げられる。
【0024】
チャージコントローラ50は、再生可能エネルギーに基づく電源とバッテリーとの間に接続されて、バッテリーの過充電・過放電を防止してバッテリーを保護するとともに、非又は低発電時の電源への電流の逆流を防止して電力浪費を防止するものである。
バッテリーは、充電放電が可能なものであれば特に限定されない。再生可能エネルギーに基づく電源で発生した電気を充電することで蓄電し、少なくとも永電磁石30を作動させるのに必要な電力を放電し得るものであれば、特に限定されない。バッテリーからの電力(電流)は、永電磁石制御装置40(例えば、タイマー)を経て、設定した任意のタイミングで永電磁石30に送られ、永電磁石30が作動して、永電磁石30の磁気吸着力が低下(喪失)されて、餌置部材20から餌を落下させる。バッテリーを備えることで、再生可能エネルギー発電が不可能又はわずかである場合でも、安定して自動給餌装置Aを作動させることができる。
【0025】
図1~
図3に示す自動給餌装置Aにおいては、再生可能エネルギーに基づく電源として、ソーラーパネル70(太陽光発電装置)が用いられ、さらにチャージコントローラ50と、バッテリー(図示されていない)及び配電盤(図示されていない)が備えられている。
図1~
図3に示す自動給餌装置Aでは、
図5に示すように、外部筺体天井部85に設けられたソーラーパネル取付用開口部86にソーラーパネル70(太陽光発電装置)を設置し、その上に透光性部材(ガラス等)で構成されるソーラーパネル保護部材71を載置しシーラントでシールする構造としている。ソーラーパネル保護部材71により、ソーラーパネル70自体の破損や汚損、外部筺体80内への水の侵入を防止することができ、メンテナンス作業等も容易に行うことが可能である。
【0026】
本発明に係る自動給餌装置Aは、電力会社の商用電源系統を利用していない独立電源であるため、商用電源系統と接続する電気工事が不要であり、設置場所の自由度が高い。また、飼育動物による配電装置・配線等の設備破損の抑制、配電設備・配線等の破損による飼育動物の怪我や感電事故等を抑制することができ、安全性を向上させることができる。特に、再生可能エネルギーとして太陽光を用いた場合、太陽が当たる場所であればほとんどの場所に設置することができる。
【0027】
<外部筺体>
本発明の自動給餌装置Aは、本体10の少なくとも一部を収容する外部筺体80を備えることができる。外部筺体80は、
(a)本体10に収容した餌が、所定のタイミングでないときに採餌されることを防止する、
(b)本体10に収容した餌を、熱、光、風雨雪等から保護する、
(c)本体10に収容した餌を、良好な環境で保管する、
(d)動物(特に、ゾウ等の大型動物)からの本体10の保護、
等の機能を有するものである。
【0028】
外部筺体80は、少なくとも1つの採餌用開口部81と、少なくとも1つの餌補給用開口部82とを備えている。また、本体10の餌置部材20からの餌落下地点と外部筺体80に設けられる採餌用開口部81との間に、餌移動邪魔部材60を設けることができる。これにより、前記のとおり採餌に際して動物が知能を働かすようにすることができ、場合によっては、野生本来の採餌行動に近付けることができるため、動物エンリッチメントの観点から有利である。
【0029】
図1~3に示す自動給餌装置Aにおいて、2箇所の採餌用開口部81は、互いに向き合う位置に設けられている。これにより、自動給餌装置Aを、異なる動物の活動領域の境界部に設けることで、異なる動物の給餌を自動で行うことができる。
【0030】
採餌用開口部81と餌補給用開口部82は、外部筺体外周面に沿い角度方向に異なる位置関係となるように設けることができる。これにより、採餌用開口部81と餌補給用開口部82とを異なる領域に設けることが可能となり、餌補給用開口部82へのアクセスに際して動物活動領域にはいる必要がなくなる。餌補給用開口部82へのアクセス路を柵等で動物活動領域と隔離すれば、いつでも餌補給が可能となり、飼育者が安全に餌補給を行うことが可能となる。
【0031】
図2、
図3に示す自動給餌装置Aでは、本体10全体が外部筺体80内に収容されており、外部筺体80の下部であって、採餌用開口部81が2箇所設けられており、本体10に備えられている餌置部材20に餌を補給可能となる位置に、餌補給用開口部82が1箇所設けられている。
図2、
図3に示す自動給餌装置Aは、外部筺体外周面又は本体10外周面に沿って約90℃ずらして、採餌用開口部81と餌補給用開口部82とが設けられている。これにより、動物の活動領域外に餌補給用開口部82を設けることが可能であり、餌補給用開口部82に安全かつ容易にアクセスすることが可能となる。そして、自動給餌機への餌補給を、時間や作業者を選ばずに安全に行うことができる。
【0032】
本発明の自動給餌装置Aの外部筺体80には、餌補給用開口部82を開閉する餌補給用開口部扉83が備えられている。これにより、自動給餌装置A内の餌が決められたタイミングでないときに動物に採餌されることを抑制でき、鳥、鼠等の飼育していない動物に餌を横取りされることを抑制でき、第三者が餌を入れ替えることを抑制でき、自動給餌装置A内で餌が劣化することを抑制できる。特に、外部筺体80を断熱構造、密閉構造とする、さらに、可能であれば温度や湿度調整装置を設けることで、餌の劣化を効果的に抑制できる。
【0033】
餌補給用開口部82内には、外部筺体80内に格納可能な折畳ステップ84を配設することができる。自動給餌装置Aに餌置部材20を多数設けて段数が多い(上方向に棚が増える)多段式とした場合でも、餌補給に際して踏み台や梯子等を別途準備する必要がなく、作業者の業務負担を軽減することができる。また、踏み台や梯子等は、不安定である場合が多く、餌補給作業が安全に行えないおそれがあるが、折畳ステップ84を備えることで、より安全に餌補給を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
A 自動給餌装置
10 本体
11 台座
20 餌置部材
21 蝶番
30 永電磁石
40 永電磁石制御装置
50 チャージコントローラ
60 餌移動邪魔部材
70 ソーラーパネル
71 ソーラーパネル保護部材
80 外部筺体
81 採餌用開口部
82 餌補給用開口部
83 餌補給用開口部扉
84 折畳ステップ
85 外部筺体天井部
86 ソーラーパネル取付用開口部