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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178827
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/06 20060101AFI20231211BHJP
   A61F 5/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A42B3/06
A61F5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091759
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】521407050
【氏名又は名称】株式会社Berry
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
【テーマコード(参考)】
3B107
4C098
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107AA03
3B107BA05
3B107DA03
3B107DA04
4C098BB20
4C098BC01
(57)【要約】
【課題】軽量且つ堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメットを提供すること。
【解決手段】頭蓋形状矯正ヘルメット1は、頭蓋の変形を矯正するために治療対象者の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1であって、高さ方向の上側に配置された上側開口部12と、高さ方向の下側に配置された下側開口部13と、を有する略環状のシェル11と、シェル11の内側に配置されて頭部に接触するクッション19と、を備え、シェル11は、厚みがシェル11の周方向両側の厚みよりも相対的に厚い部分である厚肉部20と、厚肉部20から周方向C0の一方側に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21と、厚肉部20から周方向C0の他方側に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22と、厚肉部20から少なくとも高さ方向H0の片側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23と、を有する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋の変形を矯正するために治療対象者の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、
高さ方向の上側に配置された上側開口部と、前記高さ方向の下側に配置された下側開口部と、を有する略環状のシェルと、
前記シェルの内側に配置されて頭部に接触するクッションと、を備え、
前記シェルは、
厚みが前記シェルの周方向両側の厚みよりも相対的に厚い部分である厚肉部と、
前記厚肉部から周方向の一方側に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部と、
前記厚肉部から周方向の他方側に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部と、
前記厚肉部から少なくとも前記高さ方向の片側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部と、を有する、
頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項2】
前記シェルは、複数の前記厚肉部を有する、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項3】
前記厚肉部は、前記シェルの外表面側に盛り上がるように形成されている、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項4】
前記厚肉部は、前記下側開口部の近傍に形成されており、
前記高さ方向肉厚漸減部は、前記シェルの前記高さ方向の中央に向かって延びる、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項5】
前記厚肉部は、前記上側開口部の近傍に形成されており、
前記高さ方向肉厚漸減部は、前記シェルの前記高さ方向の中央に向かって延びる、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項6】
前記厚肉部は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置に設けられている、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項7】
前記厚肉部は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置と、治療対象者の前頭部に対応する位置と、に設けられている、
請求項2に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項8】
前記厚肉部は、治療対象者の右後頭部に対応する位置に設けられている、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項9】
前記厚肉部は、治療対象者の左後頭部に対応する位置に設けられている、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項10】
前記第1の周方向肉厚漸減部と、前記第2の周方向肉厚漸減部と、前記高さ方向肉厚漸減部は、前記厚肉部における前記シェルの外表面とその周囲の基準肉厚部における前記シェルの外表面とをなだらかにつなぐ、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項11】
前記厚肉部の厚みは、その周囲の基準肉厚部の厚みよりも0.5mm以上厚い、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項12】
前記厚肉部の厚みは、その周囲の基準肉厚部の厚みよりも0.5mm以上10mm以下だけ厚い、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項13】
前記基準肉厚部の厚みは、1.5mm以上3mm以下である、
請求項11又は請求項12に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項14】
前記シェルの相対密度は99%以上である、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項15】
前記厚肉部の位置に対応する位置の前記クッションの厚みと、その周囲の基準肉厚部の位置に対応する位置の前記クッションの厚みが同じである、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋の変形を矯正するために頭部に装着される頭蓋形状矯正ヘルメット及び頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児や幼児に、例えば斜頭、短頭、長頭等の治療を要する頭蓋変形が生じる場合がある。斜頭は頭蓋が左右対称ではなく片側に傾斜している変形形状である。短頭は、頭蓋の前後方向寸法が著しく短い変形形状である。長頭は、頭蓋の前後方向寸法が著しく長い変形形状である。このような頭蓋変形を治療する装具として、頭部に被ることにより、頭蓋の成長に伴って頭蓋の形状が矯正されるように変形を促す頭蓋形状矯正ヘルメットが、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-169510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頭蓋形状矯正ヘルメットは乳幼児が常時身に着けるヘルメットであるため、軽量化が求められる。上記特許文献1に開示されている頭蓋形状矯正ヘルメットは、軽量化のために相対密度を低くした材料を使用し、一方で、堅牢性を保つため外周縁の肉厚を増大せしめた厚肉補強部が形成されたシェルを有する。この厚肉補強部は、シェルの外周縁、即ち開口を規定している略円形の上縁と共に主部の下縁、背面垂下部及び突出部の自由縁に形成されているため、重量が増加する要因となっていた。そして、軽量化のために相対密度を低くした材料を使用する必要があったため、薄肉の部分と強い力がかかる部分とが一致してしまった場合、変形するおそれがあった。よって、この構成では、十分に軽量且つ堅牢性な頭蓋形状矯正ヘルメットを提供することが難しかった。
【0005】
本発明は、軽量且つ堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)頭蓋形状矯正ヘルメットは、頭蓋の変形を矯正するために治療対象者の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、高さ方向の上側に配置された上側開口部と、高さ方向の下側に配置された下側開口部と、を有する略環状のシェルと、シェルの内側に配置されて頭部に接触するクッションと、を備え、シェルは、厚みがシェルの周方向両側の厚みよりも相対的に厚い部分である厚肉部と、厚肉部から周方向の一方側に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部と、厚肉部から周方向の他方側に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部と、厚肉部から少なくとも高さ方向の片側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部と、を有する。
【0007】
(2)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルは、複数の厚肉部を有する。
【0008】
(3)(1)から(2)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、シェルの外表面側に盛り上がるように形成されている。
【0009】
(4)(1)から(3)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、下側開口部の近傍に形成されており、高さ方向肉厚漸減部は、シェルの高さ方向の中央に向かって延びる。
【0010】
(5)(1)から(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、上側開口部の近傍に形成されており、高さ方向肉厚漸減部は、シェルの高さ方向の中央に向かって延びる。
【0011】
(6)(1)から(5)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置に設けられている。
【0012】
(7)(1)から(6)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置と、治療対象者の前頭部に対応する位置と、に設けられている。
【0013】
(8)(1)から(7)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、治療対象者の右後頭部に対応する位置に設けられている。
【0014】
(9)(1)から(8)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部は、治療対象者の左後頭部に対応する位置に設けられている。
【0015】
(10)(1)から(9)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、第1の周方向肉厚漸減部と、第2の周方向肉厚漸減部と、高さ方向肉厚漸減部は、厚肉部におけるシェルの外表面とその周囲の基準肉厚部におけるシェルの外表面とをなだらかにつなぐ。
【0016】
(11)(1)から(10)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部の厚みは、その周囲の基準肉厚部の厚みよりも0.5mm以上厚い。
【0017】
(12)(1)から(11)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部の厚みは、その周囲の基準肉厚部の厚みよりも0.5mm以上10mm以下だけ厚い。
【0018】
(13)(11)又は(12)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの基準肉厚部の厚みは、1.5mm以上3mm以下である。
【0019】
(14)(1)から(13)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの相対密度は99%以上である。
【0020】
(15)(1)から(14)の頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの厚肉部の位置に対応する位置のクッションの厚みと、その周囲の基準肉厚部の位置に対応する位置のクッションの厚みが同じである。
【発明の効果】
【0021】
軽量且つ堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを斜め前方から見たときの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットが有するシェルの斜視図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るシェルの断面図、特に、図2のIa、Ib、Ic、Id、Ieを含む平面によって切断されたときの断面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係るシェルの断面図、特に、図2のIIa、IIb、IIcを含む平面によって切断されたときの断面図である。
図4】本発明の変形例1に係るシェルの断面図、特に、図2のIIa、IIb、IIcを含む平面によって切断されたときの断面図である。
図5】本発明の変形例2に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1について図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。
【0024】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1を斜め前方から見たときの斜視図である。頭蓋形状矯正ヘルメット1は、治療対象者の頭部の頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる。
【0025】
図1において、頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着する治療対象者としての幼児から見ての三次元方向が定義されている。顔が向いている方向を前、後頭部側を後ろ、右手側を右、左手側を左、頭頂部側を上、首側を下としている。又、図1には、シェル11の周方向C0及びシェル11の高さ方向H0が示されている。シェル11の周方向C0は、シェル11の前後左右方位を含む平面でシェル11を切断して断面視したときに、シェル11の断面形状に沿って延びる方向である(図3B参照)。シェル11の高さ方向H0は、シェル11の上方向と下方向とを結ぶ上下方向である。
【0026】
頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル11と、クッション19と、を備える。
【0027】
図1に示すように、シェル11は、上側開口部12及び下側開口部13を有する。頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着する治療対象者の図示は省略しているが、上側開口部12の上方に治療対象者の頭部の頭頂部が露出し、下側開口部13の下方に治療対象者の顔や耳、頚部等が露出する。シェル11は、頭蓋を周方向C0で囲む環状の主部14と、主部14の後部から下方に延出する背面延出部15と、主部14の左右側面部から下方にそれぞれ突出する左右一対の側面突出部16と、を有する。背面延出部15は治療対象者の後頭部襟足(頚部背面)に対向し、各側面突出部16は治療対象者の耳の前方に位置する。背面延出部15と各側面突出部16の間に、治療対象者の耳が位置する。
【0028】
シェル11が頭蓋形状矯正ヘルメット1の外形を構成している。シェル11は、C字形状を有する。C字の環の切れ目は、シェル11の一方の端部片28と図1では背面にあり図示されない他方の端部片とを有する。一方の端部片28と他方の端部片とは、連結部材29を介して互いに連結される。連結部材29は、シェル11に空けられる図示されないピン孔に固定される第1固定ピン29Aと、輪状に折り曲げられて第1固定ピン29Aに固定される第1帯状体29Bと、図示されない第2固定ピンと、輪状に折り曲げられて第2固定ピンに固定される第2帯状体29Cと、第1帯状体29Bと第2帯状体29Cとのそれぞれの輪状の部位が通される環状金具29Dとを有する。第2帯状体29Cは、環状金具29Dを通り折り曲げられて第2帯状体29C(自己)に重ねられ、一般周知の面ファスナーで固定される。第2帯状体29Cは適宜テンションが掛けられた状態で接合され、第1固定ピン29Aと第2固定ピンとの間の距離が固定され、一方の端部片28と他方の端部片との間が固定される。結果、一方の端部片28と主部14との間が固定され、シェル11の全体形状が固定される。
【0029】
シェル11には、複数の第1の通気孔17が設けられている。第1の通気孔17は、治療対象者としての乳幼児が頭蓋形状矯正ヘルメット1を常に装着しているような場合において、頭部からの汗を蒸散させる。図1に示すように、第1の通気孔17は多数設けられていることが好ましい。第1の通気孔17は、例えば、直径4mm程度の開口径を有する。第1の通気孔17は、例えば0.5mm以上5mm以下の開口径であってもよい。
【0030】
シェル11の外表面11Aは模様18を有する。乳幼児が常時身に着けるものであるため、美しい模様18のニーズが高い。模様18は、水圧転写膜によって設けられていてもよいし、ラッカースプレーによる塗装や刷毛塗りによるインク層によって設けられていてもよい。
【0031】
クッション19は、シェル11の内面に配置されて頭部に接触する。クッション19は、矯正対象の頭蓋が固いシェル11に直接押し付けられる時に生じる頭皮へのダメージを和らげる働きを有する。クッション19は、複数の第2の通気孔25を有する。複数の第2の通気孔25は、縦横に等間隔に設けられていてもよい。第2の通気孔25は、例えば、直径2mm程度の開口径を有する。第2の通気孔25は、例えば1mm以上4mm以下の開口径であって、第1の通気孔17の開口径よりも小さな開口径であってもよい。クッション19は、反発性を有する発泡合成樹脂の成形体を含む。クッション19は、例えばウレタンフォームと布地との層構造を有してもよい。クッション19は、シェル11の内面に、例えば面ファスナーを介して着脱自在に装着される。
【0032】
図2図3A及び図3Bを参照してシェル11の詳細について説明する。図2は、頭蓋形状矯正ヘルメット1が備えるシェル11の斜視図である。図3Aはシェル11の断面図、特に、図2のIa、Ib、Ic、Id、Ieを含む平面によって切断されたときの断面図であり、シェル11の左側から右側を見たときの断面図である。図3Bは、シェル11の断面図、特に、図2のIIa、IIb、IIcを含む平面によって切断されたときの断面図であり、シェル11の上側から下側を見たときの断面図である。即ち、図3Bは、図3AのII―IIc線に沿った断面図である。なお、図2図3A及び図3Bにおいても、図1と同様、前後、左右、上下等の方向が示されている。なお、図2図3A及び図3Bにおいては、第1の通気孔17の表記が省略されている。
【0033】
シェル11の形状は、治療対象者の頭部の3次元形状に基づいて作成された治療目標とする理想の3次元形状に基づいて決定される。シェル11は、例えば光造形方式の3Dプリンタにより造形されることが好ましい。これにより、複雑な形状のシェル11であっても、緻密で中実な造形物として形成することができる。シェル11を構成する樹脂は実質的に中実であり、相対密度(シェル11が中実でありシェル11中に空隙が存在しない状態の密度に対する相対密度)は99%以上であることが好ましい。相対密度はより好ましくは、99.5%以上である。これにより、強度及び剛性の高い造形物としてのシェル11を形成することができる。又、シェル11の耐久性を高めることができる。ただし、シェル11の造形方法は、光造形方式に限らない。シェル11を構成する樹脂として、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、PLA樹脂、PEEK樹脂、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、カーボンファイバー、ポリカーボネート、ポリプロピレン等及びこれらの樹脂を炭素繊維(カーボンファイバー)で強化した材料等が用いられる。特に、光造形方式の3Dプリンタにより空隙が実質的に存在しない造形物を形成するという観点からは、アクリル樹脂が好ましい。なお、相対密度Dは、シェル11の断面を顕微鏡或いはCT(Computed Tomography)スキャナ等により撮影し、相対密度=((撮影範囲の面積)-(撮影範囲内の空隙の面積))/(撮影範囲の面積)の式によって算出される。撮影範囲は1mm×1mm以上とする。10か所の異なる位置で撮影を行い、10か所の平均値により本実施形態の相対密度Dが算出される。
【0034】
本実施形態に係るシェル11は、厚みがシェル11の周方向C0の両側の厚みよりも相対的に厚い部分である厚肉部20と、厚肉部20から周方向C0の一方側である第1の周方向C1に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21と、厚肉部20から周方向C0の他方側である第2の周方向C2に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22と、厚肉部20から少なくとも高さ方向H0の片側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23と、を有する。
【0035】
シェル11は、基準肉厚部を有する。基準肉厚部は、シェル11における、厚肉部20及び各肉厚漸減部(第1の周方向肉厚漸減部21、第2の周方向肉厚漸減部22及び高さ方向肉厚漸減部23)が形成されていない部分であって、基準となる厚みの部分を指す。本実施形態においては、基準肉厚部を薄肉部24ともいう。各肉厚漸減部は、厚肉部20と、基準肉厚部との間をつなぐ。即ち、各肉厚漸減部は、厚肉部20から基準厚肉部まで延びている。
【0036】
厚肉部20は、外表面11Aの側に盛り上がるように形成される。シェル11の内表面11Bは、頭蓋の形状を決定するために慎重に検討された形状を有する。厚肉部20が外表面11Aに設けられることから、内表面11Bの形状が損なわれることが抑えられる。このように、厚肉部20は、治療対象者の頭部の3次元形状に基づいて作成された治療目標に対応する3次元形状としての基準形状に対して、シェル11の内表面11B側には盛り上がっておらず、シェル11の外表面11A側に盛り上がった形状として形成されていることが好ましい。
【0037】
各肉厚漸減部(第1の周方向肉厚漸減部21、第2の周方向肉厚漸減部22及び高さ方向肉厚漸減部23)は、厚肉部20におけるシェル11の外表面11Aとその周囲の基準肉厚部におけるシェル11の外表面11Aとをなだらかにつなぐ形状であることが好ましい。例えば、各肉厚漸減部におけるシェル11の外表面11Aと、厚肉部20におけるシェル11の外表面11Aとは、曲面でつながれているか、或いはなす角が160°以上180°未満となるような角度でつながれていることが好ましい。又、各肉厚漸減部におけるシェル11の外表面11Aと、その周囲の基準肉厚部におけるシェル11の外表面11Aとは、曲面でつながれているか、或いはなす角が160°以上180°未満となるような角度でつながれていることが好ましい。なお、シェル11は、第1の周方向肉厚漸減部21、第2の周方向肉厚漸減部22及び高さ方向肉厚漸減部23を一方の端部片28或いは連結部材29の形成されていない部位に有していてもよい。
【0038】
本実施形態のシェル11は、厚肉部20として、複数の厚肉部20(例えば、図3Aに示される厚肉部20A、20B、20C、20D)を備える。又、シェル11は、各厚肉部20に対応して、高さ方向肉厚漸減部23(例えば、図3Aに示される高さ方向肉厚漸減部23A、23B、23C、23D)と、第1の周方向肉厚漸減部21(例えば、図3Bに示される第1の周方向肉厚漸減部21A)と、第2の周方向肉厚漸減部22(例えば、図3Bに示される第2の周方向肉厚漸減部22A)と、をそれぞれ有する。
【0039】
図3A図3Bに示すように、シェル11は、下側開口部13の近傍に形成された、下側開口部13の前方向に位置する厚肉部20Aを有する。厚肉部20Aは、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の前頭部の下方に対応する位置に設けられている。この部分にクッション19が配置されているときは、厚肉部20Aは、治療対象者の前頭部の下方に接触するクッション19の位置に対応する位置に設けられている。
【0040】
図3Aに示すように、シェル11は、厚肉部20Aから高さ方向H0の上側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23Aを有する。図3Bに示すように、シェル11は、シェル11の周方向C0の第1の周方向C1に沿って、厚肉部20Aから第1の周方向C1に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21Aを有する。シェル11は、シェル11の周方向C0の第2の周方向C2に沿って、厚肉部20Aから第2の周方向C2に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22Aを有する。このように、シェル11は、高さ方向H0のみならず、周方向C0で肉厚の漸減する部位を有する。
【0041】
シェル11は、厚肉部20Aの高さ方向H0の上側に基準肉厚部としての薄肉部24Aを有する。例えば、厚肉部20Aの厚さd1は5mmであり、薄肉部24Aの厚さd2は2mmである。又、シェル11は、厚肉部20Aの周方向C0の第1の周方向C1側に基準肉厚部としての薄肉部24A1を有する。シェル11は、厚肉部20Aの周方向C0の第2の周方向C2側に基準肉厚部としての薄肉部24A2を有する。例えば、厚肉部20Aの厚さd1は5mmであり、薄肉部24A1及び薄肉部24A2の厚さd2Aは2mmである。厚肉部20Aは、薄肉部24A、24A1、24A2よりも2mm以上、或いは3mm以上厚くてもよい。
【0042】
図3Aに示すように、シェル11は、上側開口部12の近傍に形成された、上側開口部12の前方向に位置する厚肉部20Bを有する。厚肉部20Bは、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の前頭部の上方に対応する位置に設けられている。この部分にクッション19が配置されているときは、厚肉部20Bは、治療対象者の前頭部の上方に接触するクッション19の位置に対応する位置に設けられている。
【0043】
図3Aに示すように、シェル11は、厚肉部20Bから高さ方向H0の下側に向かって厚みが漸減し、シェル11の高さ方向H0の中央に向かって延びる高さ方向肉厚漸減部23Bを有する。又、図示は省略するが、シェル11は、シェル11の周方向C0の第1の周方向C1に沿って、厚肉部20Bから第1の周方向C1に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21を有する。シェル11は、シェル11の周方向C0の第2の周方向C2に沿って、厚肉部20Bから第2の周方向C2に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22を有する。
【0044】
シェル11は、厚肉部20Bの高さ方向H0の下側に基準肉厚部としての薄肉部24Aを有する。例えば、厚肉部20Bの厚さd3は5mmであり、薄肉部24Aの厚さd2は2mmである。厚肉部20Cは、薄肉部24Bよりも2mm以上、或いは3mm以上厚くてもよい。
【0045】
図3Aに示すように、シェル11は、上側開口部12の近傍に形成された、上側開口部12の後ろ方向に位置する厚肉部20Cを有する。厚肉部20Cは、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の後頭部の上方に対応する位置に設けられている。この部分にクッション19が配置されているときは、厚肉部20Cは、治療対象者の後頭部の上方に接触するクッション19の位置に対応する位置に設けられている。
【0046】
図3Aに示すように、シェル11は、厚肉部20Cから高さ方向H0の下側に向かって厚みが漸減し、シェル11の高さ方向H0の中央に向かって延びる高さ方向肉厚漸減部23Cを有する。又、図示は省略するが、シェル11は、シェル11の周方向C0の第1の周方向C1に沿って、厚肉部20Cから第1の周方向C1に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21を有する。シェル11は、シェル11の周方向C0の第2の周方向C2に沿って、厚肉部20Cから第2の周方向C2に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22を有する。
【0047】
シェル11は、厚肉部20Cの高さ方向H0の下側に基準肉厚部としての薄肉部24Bを有する。薄肉部24Bは、シェル11の高さ方向H0の中央付近の後ろ側に設けられている。例えば、厚肉部20Cの厚さd4は7mmであり、薄肉部24Bの厚さd5は2mmである。厚肉部20Cは、薄肉部24Bよりも4mm以上、或いは5mm以上厚くてもよい。
【0048】
図3Aに示すように、シェル11は、下側開口部13の近傍に形成された、下側開口部13の後ろ方向に位置する厚肉部20Dを有する。厚肉部20Dは、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置に設けられている。この部分にクッション19が配置されているときは、厚肉部20Dは、治療対象者の後頭部襟足に接触するクッション19の位置に対応する位置に設けられている。
【0049】
図3Aに示すように、シェル11は、厚肉部20Dから高さ方向H0の上側に向かって厚みが漸減し、シェル11の高さ方向H0の中央に向かって延びる高さ方向肉厚漸減部23Dを有する。又、図示は省略するが、シェル11は、シェル11の周方向C0の第1の周方向C1に沿って、厚肉部20Dから第1の周方向C1に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21を有する。シェル11は、シェル11の周方向C0の第2の周方向C2に沿って、厚肉部20Dから第2の周方向C2に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22を有する。
【0050】
シェル11は、厚肉部20Dの高さ方向H0の上側に基準肉厚部としての薄肉部24Bを有する。薄肉部24Bは、シェル11の高さ方向H0の中央付近の後ろ側に設けられている。例えば、厚肉部20Dの厚さd6は7mmであり、薄肉部24Bの厚さd5は2mmである。厚肉部20Dは、薄肉部24Bよりも4mm以上、或いは5mm以上厚くてもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態においては、シェル11は、複数の厚肉部20を有する。例えば、厚肉部20は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置と、治療対象者の前頭部に対応する位置と、に設けられていてもよい。但し、シェル11は、1つの厚肉部20のみを有していてもよい。複数の厚肉部20を有する場合、一つの厚肉部20(例えば、厚肉部20B)と、他の厚肉部20(例えば、厚肉部20D)の厚さは異なっていてもよい。
【0052】
(変形例1)
上記の実施形態においては、厚肉部20は、強度補強の必要な部位に主に設けられている。変形例1において厚肉部20は、被験者の頭蓋で成長が進み相対的に出っ張っている部位に対応して設けられる。或いは、厚肉部20は、被験者の寝るときの癖等で集中的に応力のかかりやすい部位に対応して設けられる。
【0053】
図4は、本発明の変形例1に係るシェル11の断面図、特に、図2のIIa、IIb、IIcを含む平面によって切断されたときの断面図であり、シェル11の上側から下側を見たときの断面図である。即ち、図4は、図3AのII―IIc線に沿った断面図である。但し、図4においては、シェル11の後ろ側が紙面上側となっている。図4においては、一方の端部片28の記載は省略されている。
【0054】
図4に示すように、シェル11は、厚肉部20Eを有する。厚肉部20Eは、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の右後頭部に対応する位置に設けられている。この部分にクッション19が配置されているときは、厚肉部20Eは、治療対象者の右後頭部に接触するクッション19の位置に対応する位置に設けられている。
【0055】
図4に示すように、シェル11は、シェル11の周方向C0の第1の周方向C1に沿って、厚肉部20Eから第1の周方向C1に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21Eを有する。シェル11は、シェル11の周方向C0の第2の周方向C2に沿って、厚肉部20Eから第2の周方向C2に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22Eを有する。図示は省略するが、シェル11は、厚肉部20Eから高さ方向H0の上側又は下側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23を有する。高さ方向肉厚漸減部23は、高さ方向H0の上側及び下側の両側に設けられていてもよい。又、厚肉部20Eが右後頭部の下側開口部13付近に設けられ、厚肉部20Eから高さ方向H0の上側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23が設けられていてもよい。厚肉部20Eが右後頭部の上側開口部12付近に設けられ、厚肉部20Eから高さ方向H0の下側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23が設けられていてもよい。
【0056】
シェル11は、厚肉部20Eの第1の周方向C1側に基準肉厚部としての薄肉部24C1を有する。シェル11は、厚肉部20Eの第2の周方向C2側に基準肉厚部としての薄肉部24C2を有する。例えば、厚肉部20Eの厚さd7は6mmであり、薄肉部24C1及び薄肉部24C2の厚さd8は2mmである。厚肉部20Eは、薄肉部24C1及び薄肉部24C2よりも3mm以上、或いは4mm以上厚くてもよい。
【0057】
図4においては、右後頭部に厚肉部20を設けた例を示したが、厚肉部20は、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の左後頭部に対応する位置に設けられていてもよい。この部分にクッション19が配置されているときは、厚肉部20は、治療対象者の左後頭部に接触するクッション19の位置に対応する位置に設けられることになる。治療対象者において、生育が進んで相対的に出っ張っている頭蓋の部位において、図4に図示されないクッション19は治療対象者の頭蓋に接触する。シェル11は、この接触部分に厚肉部20を有してもよい。
【0058】
(変形例2)
図5は、変形例2に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の正面図である。図5においては、一方の端部片28の記載は省略されている。図5に示すように、厚肉部20Fを、治療対象者が頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着したときに、治療対象者の側頭部の上方(側頭部と頭頂部の境界付近)に対応する位置に設けてもよい。
【0059】
図5に示すように、変形例2のシェル11は、厚肉部20Fから高さ方向H0の下側に向かって厚みが漸減し、シェル11の高さ方向H0の中央に向かって延びる高さ方向肉厚漸減部23Fを有する。更に、シェル11は、不図示の第1の周方向肉厚漸減部21及び第2の周方向肉厚漸減部22を有する。
【0060】
シェル11は、厚肉部20Fの高さ方向H0の下側に基準肉厚部としての薄肉部24Dを有する。例えば、厚肉部20Fの厚さd9は6mmであり、薄肉部24Dの厚さd10は2mmである。厚肉部20Fは、薄肉部24Dよりも3mm以上、或いは4mm以上厚くてもよい。
【0061】
厚肉部20の厚みは、その周囲のシェル11の薄肉部24(基準肉厚部)の厚みよりも0.5mm以上厚くてもよい。厚肉部20の厚みは、その周囲のシェル11の薄肉部24(基準肉厚部)の厚みよりも0.5mm以上10mm以下だけ厚くてもよい。薄肉部24(基準肉厚部)の厚みは、1.5mm以上3mm以下であってもよい。
【0062】
厚肉部20の位置に対応する位置のクッション19の厚みと、その周囲の薄肉部24(基準肉厚部)の位置に対応する位置のクッション19の厚みが同じでもよい。クッション19は全面において同一の構成部材で形成されていてもよい。厚肉部20は、シェル11の外表面11Aに盛られる。シェル11の内表面11Bは頭蓋の形状の矯正のために設計され、厚肉部20の影響を受けない。さらにクッション19の厚みが一定であることから、矯正のためのシェル11の内表面11Bの形状が保たれ、クッション19の厚みが矯正の効果に影響を及ぼすことが抑えられる。
【0063】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。又、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0064】
以上説明した実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1によれば以下のような効果が奏される。
【0065】
(1)頭蓋形状矯正ヘルメット1は、頭蓋の変形を矯正するために治療対象者の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1であって、高さ方向H0の上側に配置された上側開口部12と、高さ方向H0の下側に配置された下側開口部13と、を有する略環状のシェル11と、シェル11の内側に配置されて頭部に接触するクッション19と、を備え、シェル11は、厚みがシェル11の周方向両側の厚みよりも相対的に厚い部分である厚肉部20と、厚肉部20から周方向C0の一方側に向かって厚みが漸減する第1の周方向肉厚漸減部21と、厚肉部20から周方向C0の他方側に向かって厚みが漸減する第2の周方向肉厚漸減部22と、厚肉部20から少なくとも高さ方向H0の片側に向かって厚みが漸減する高さ方向肉厚漸減部23と、を有する。
【0066】
これにより、シェル11の周方向C0において部分的に形成された厚肉部20によりシェル11の適切な部分の強度を効果的に高めることができ、さらに各肉厚漸減部によりシェル11にかかる応力集中を抑制することができる。よって、軽量且つ堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメット1が提供される。
【0067】
(2)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11は、複数の厚肉部20を有する。
【0068】
これにより、強度が特に必要とされる複数の部位の強度が担保される。
【0069】
(3)(1)から(2)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、シェル11の外表面11A側に盛り上がるように形成されている。
【0070】
これにより、頭蓋矯正のために精密に設計されるシェル11の内表面11Bの形状が保たれつつ、シェル11の強度が向上され得る。
【0071】
(4)(1)から(3)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、下側開口部13の近傍に形成されており、高さ方向肉厚漸減部23は、シェル11の高さ方向H0の中央に向かって延びる。
【0072】
これにより、下側開口部13に開口部を広げる或いは狭めるような外力が加わった場合においても、シェル11の強度が保たれる。
【0073】
(5)(1)から(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、上側開口部12の近傍に形成されており、高さ方向肉厚漸減部23は、シェル11の高さ方向H0の中央に向かって延びる。
【0074】
これにより、頭部の上部にて常に頭蓋形状矯正ヘルメット1の重さが上側開口部12に印加されるような場合においても、シェル11の強度が保たれる。
【0075】
(6)(1)から(5)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置に設けられている。
【0076】
これにより、寝ていることが多い治療対象者である乳幼児の後頭部襟足に頭部重量による荷重がかかるような場合においても、シェル11の強度が保たれる。
【0077】
(7)(1)から(6)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、治療対象者の後頭部襟足に対応する位置と、治療対象者の前頭部に対応する位置と、に設けられている。
【0078】
これにより、強度が特に必要とされる複数の部位の強度が担保される。
【0079】
(8)(1)から(7)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、治療対象者の右後頭部に対応する位置に設けられている。
【0080】
治療対象の乳幼児の癖で、常に右後頭部を床面に付けて寝ているような場合においても、シェル11の強度が保たれる。
【0081】
(9)(1)から(8)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20は、治療対象者の左後頭部に対応する位置に設けられている。
【0082】
治療対象の乳幼児の癖で、常に左後頭部を床面に付けて寝ているような場合においても、シェル11の強度が保たれる。
【0083】
(10)(1)から(9)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、第1の周方向肉厚漸減部21と、第2の周方向肉厚漸減部22と、高さ方向肉厚漸減部23は、厚肉部20におけるシェル11の外表面11Aとその周囲の基準肉厚部におけるシェル11の外表面11Aとをなだらかにつなぐ。
【0084】
これにより、美的に優れ、軽量で堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメット1が提供される。又、シェル11にかかる局所的な応力集中を防ぐことができる。
【0085】
(11)(1)から(10)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20の厚みは、その周囲の基準肉厚部の厚みよりも0.5mm以上厚い。
【0086】
これにより、軽量で堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメット1が提供される。
【0087】
(12)(1)から(11)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20の厚みは、その周囲の基準肉厚部の厚みよりも0.5mm以上10mm以下だけ厚い。
【0088】
これにより、軽量で堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメット1が提供される。
【0089】
(13)(11)又は(12)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の基準肉厚部の厚みは、1.5mm以上3mm以下である。
【0090】
これにより、軽量で堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメット1が提供される。
【0091】
(14)(1)から(13)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の相対密度は99%以上である。
【0092】
これにより、変形しにくい頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11が実現される。軽量で堅牢な頭蓋形状矯正ヘルメット1が提供される。
【0093】
(15)(1)から(14)の頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル11の厚肉部20の位置に対応する位置のクッション19の厚みと、その周囲の基準肉厚部の位置に対応する位置のクッション19の厚みが同じである。
【0094】
これにより、精密な計算のもとに導出されるシェル11の内表面11Bの形を生かすことができ、矯正効果がより確実に近いものとなり得る。
【符号の説明】
【0095】
1 頭蓋形状矯正ヘルメット
11 シェル
12 上側開口部
13 下側開口部
19 クッション
20 厚肉部
21 第1の周方向肉厚漸減部
22 第2の周方向肉厚漸減部
23 高さ方向肉厚漸減部
24 薄肉部(基準肉厚部)
11A 外表面
C0 周方向
C1 第1の周方向
C2 第2の周方向
H0 高さ方向
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5