(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178830
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】樹脂加工機械用洗浄剤、その製造方法、及び樹脂加工機械内の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/72 20060101AFI20231211BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20231211BHJP
B29B 9/02 20060101ALI20231211BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20231211BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20231211BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20231211BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231211BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231211BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20231211BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231211BHJP
【FI】
B29C33/72
C08J3/12 A CES
B29B9/02
C11D7/22
C11D3/37
C11D17/06
C08L101/00
C08L23/00
C08K3/014
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091764
(22)【出願日】2022-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】岩井 喬史
(72)【発明者】
【氏名】野辺 洋平
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 茂
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F202
4H003
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA14
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4J002FD177
4J002FD317
4J002FD320
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】本発明は、樹脂フィルム・シート端材を原料として用いた、品質、加工性及び洗浄性能に優れる樹脂加工機械用洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより得られた粉砕体を含み、加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする、樹脂加工機械用洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより得られた粉砕体を含み、前記加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする、樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項2】
前記粉砕体の嵩密度が0.10g/cm3以上である、請求項1に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項3】
前記粉砕体の最大長さが2~10mmである、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項4】
重量平均分子量が50,000以上である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項5】
前記加工が溶融混練であり、前記樹脂フィルム・シート端材を含む原料を押出機で溶融混練することを含み、前記押出機のL/Dが45以下である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項6】
その他の成分をさらに含み、前記粉砕体と前記その他の成分とを溶融混練又はドライブレンドすることで得られる、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項7】
前記樹脂フィルム・シート端材がポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項8】
前記原料が、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、及び無機フィラーからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤の製造方法であり、
樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより粉砕体を得ることを含み、前記加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤を用いることを特徴とする、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂加工機械用洗浄剤、その製造方法、及び樹脂加工機械内の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックを取り巻く環境問題やサーキュラーエコノミー化への関心の高まりから、プラスチックの廃棄量削減、リサイクルの取り組みが推進されている。
樹脂フィルム・シート製品の生産工程では、裁断により生じる断片(トリミング耳)や不良原反、不良品などの端材が生じるが、これらの端材を廃棄物として処分する場合には、環境に与える負荷を考慮して適切な処分方法を取ることが求められている。一方、樹脂フィルム・シート端材の有効活用手段としては、マテリアルリサイクルが一般的に実施されており、端材を同一用途や同一目的の製品の原料として再利用するクローズドリサイクルや、別用途や他目的に利用するカスケードリサイクルなど、様々な方法が提案されている。
【0003】
各種プラスチック製品へのリサイクル樹脂の利用が進む中、樹脂を主な原料とする樹脂加工機械用洗浄剤に関しても、リサイクル樹脂を原料として活用することが検討されている。例えば、特許文献1では架橋ポリエチレンフィルムの粉砕物をパージ剤の原料に利用した例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ボトル成形品等と異なり、樹脂フィルム・シート端材を原料として用いる場合には、細かく粉砕するのみでは嵩密度が小さいため、洗浄剤として利用できないという課題があった。
その点、特許文献1では、架橋ポリエチレンフィルムの粉砕物が用いられ、他の添加成分と300℃で溶融混練して得られるパージ剤が記載されている。しかし、加工の際の高温加熱による樹脂の熱劣化の進行によって、洗浄剤ペレットに黄変・黒点異物が生じ、品質が低下すること、加工時の発煙により加工性が低下することが課題であった。また、熱劣化に伴う分子量・粘度の低下などにより、期待される洗浄効果が得られないという課題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂フィルム・シート端材を原料として用いた、品質、加工性及び洗浄性能に優れる樹脂加工機械用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、樹脂フィルム・シート端材を圧着、半溶融化、又は溶融混練して得られた粉砕体を含み、これらの加工工程の加工温度を280℃以下にすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりである。
[1]
樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより得られた粉砕体を含み、前記加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする、樹脂加工機械用洗浄剤。
[2]
前記粉砕体の嵩密度が0.10g/cm3以上である、[1]に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[3]
前記粉砕体の最大長さが2~10mmである、[1]又は[2]に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[4]
重量平均分子量が50,000以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[5]
前記加工が溶融混練であり、前記樹脂フィルム・シート端材を含む原料を押出機で溶融混練することを含み、前記押出機のL/Dが45以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[6]
その他の成分をさらに含み、前記粉砕体と前記その他の成分とを溶融混練又はドライブレンドすることで得られる、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[7]
前記樹脂フィルム・シート端材がポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[8]
前記原料が、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、及び無機フィラーからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤の製造方法であり、
樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより粉砕体を得ることを含み、前記加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする、製造方法。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤を用いることを特徴とする、洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂フィルム・シート端材を原料として用いた、品質、加工性及び洗浄性能に優れる樹脂加工機械用洗浄剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
<樹脂加工機械用洗浄剤>
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤(以下、単に「洗浄剤」ともいう。)は、樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより得られた粉砕体を含み、前記加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする。
【0012】
[粉砕体]
本実施形態の洗浄剤に含まれる粉砕体は、樹脂フィルム・シート端材を含む原料を圧着、半溶融化、又は溶融混練することにより得られるものである。樹脂フィルム・シート端材を含む原料は、樹脂フィルム・シート端材の他に、後述する添加剤を含んでいてもよい。
【0013】
樹脂フィルム・シート端材を含む原料を圧着する方法としては、例えば、樹脂フィルム・シート端材を含む原料を複数枚重ね合わせてロール等で圧力を加えて結着させる手法、単独のフィルム・シート端材を含む原料を集束しながら圧縮する方法などを用いることができる。
圧着する際、樹脂フィルム・シート端材の結着性を高めるため、後述する加工温度の範囲であれば、圧着時に外部熱源による加熱を実施しても構わないが、樹脂の熱劣化抑制の観点から、非加熱が望ましい。
得られた圧着物を回転刃等で一定の大きさに裁断することで粉砕体を得ることができる。
【0014】
樹脂フィルム・シート端材を含む原料を半溶融化させる方法としては、例えば、スクリューを有する押出装置に樹脂フィルム・シート端材を含む原料(添加剤を含む場合は予備混合したもの)を投入し、スクリュー回転により生じる摩擦に起因する樹脂のせん断発熱によって樹脂を半溶融化させて半溶融物を得る手法などを用いることができる。
半溶融化させる際、後述する加工温度の範囲内であれば、外部熱源による加熱を実施しても構わないが、樹脂の熱劣化抑制の観点から、非加熱が望ましい。また、冷媒を機内で循環させる方法などにより、加工温度を調整しても構わない。
なお、半溶融化とは、樹脂が融点以下の温度でゲル化した状態となるようにすることを指す。
得られた半溶融物を押し出しながらペレタイザー等で切断することで粉砕体を得ることができる。切断の方法としては、ストランドカット、ホットカット、アンダーウォーターカットなどの方法を、樹脂フィルム・シート端材を含む原料の加工性に応じて選択することができる。
【0015】
樹脂フィルム・シート端材を含む原料を溶融混練する方法としては、溶融混練装置を用いて樹脂フィルム・シート端材を含む原料(添加剤を含む場合は予備混合したもの)を加熱しながら混練する方法などを用いることができる。
樹脂フィルム・シート端材を含む原料の供給方法は特に限定されないが、予め粉砕機などで樹脂フィルム・シート端材を粉砕し、任意で添加剤を添加して予備混合した原料を、押込みスクリュー・アジテーターを備えたフィーダーで溶融混練装置に供給する方法、樹脂フィルム・シート端材を含む原料を直接引取り投入する方法、端材粉砕部と押出部が一体となった装置の使用などが挙げられる。
溶融混練装置としては特に限定されず、公知の混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む押出機、ニーダー、コニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。この際、加熱ヒーターの温度は後述する加工温度の範囲内で設定される。樹脂を十分に混練することができる観点から、押出機が特に好ましい。その際、用いられる押出機のL/Dは特に限定されないが、熱履歴を抑制する観点から45以下が好ましく、より好ましくは40以下である。また、L/Dは、原料を十分に溶融させる観点から、18以上が好ましく、より好ましくは20以上である。ここで、L/Dとは、スクリュー長さ(L)のスクリュー径(D)に対する比率である。
得られた溶融混練物をカットしてペレット状に成形することで粉砕体を得ることができる。溶融混練物のカット方法としては、ストランドカット、ホットカット、アンダーウォーターカットなどの方法を、樹脂フィルム・シート端材を含む原料の加工性に応じて選択することができる。
品質維持の観点から、溶融混練する際は、常圧で開放口(ベント)から脱気分を除去する開放脱気、又は、必要に応じて減圧して開放口(ベント)から脱気分を除去する減圧脱気を行うことが望ましい。溶融混練装置内における溶融樹脂の滞留時間をできるだけ短くすることが望ましく、かかる観点を考慮して、溶融混練条件を設定する。
【0016】
圧着、半溶融化、及び溶融混練において、樹脂フィルム・シート端材と添加剤との混合には、一般に使用されている装置、例えば、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等の予備混合装置、重量式供給機等を使用することができる。
【0017】
樹脂フィルム・シート端材を含む原料を粉砕体に加工する際の加工温度は、圧着、半溶融化、及び溶融混練のいずれにおいても280℃以下であり、好ましくは260℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。加工温度が上記範囲であると、樹脂フィルム・シート端材の熱劣化が抑制され、分子量、粘度等の樹脂フィルム・シートの有する物性を維持できるため、品質及び洗浄性能に優れる傾向にある。加工温度の下限は特に限定されず、上述のように、圧着及び半溶融化においては非加熱で行うことが望ましい。また、溶融混練においては、原料を十分に溶融させる観点から、160℃以上とすることが好ましく、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
加工温度は、各種加工条件(樹脂フィルム・シート端材の供給速度、せん断速度、スクリュー回転数、加熱温度設定、冷却)等を調整することにより、上記範囲に制御することができる。
【0018】
[[樹脂フィルム・シート端材]]
粉砕体の原料となる樹脂フィルム・シート端材としては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルム・シート製品の製造時に裁断により生じる断片(トリミング耳)や規格値から外れた不良原反、不良品などが挙げられる。
樹脂フィルム・シート端材は、1種単独であっても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
樹脂フィルム・シート端材の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むフィルム・シートが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂は1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。また、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むフィルム・シートにおいて、本発明の性能を損なわない範囲であれば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリオレフィン系樹脂以外の樹脂が含まれていても構わない。
その他には、スチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、又はスチレンと1種もしくは2種以上の他の単量体との共重合体であって、スチレンの含有量が50質量%以上のもの)を主成分として含むフィルム・シートが挙げられる。
なお、「主成分」とは、樹脂フィルム・シートの50質量%を超える割合で含まれる成分を指し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上の割合で含まれる成分を指す。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体、又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体であって、エチレンに由来する構造単位の含有量が50質量%以上のものを示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体であって、プロピレンに由来する構造単位の含有量が50質量%以上のものを示す。
【0021】
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられ、具体的には、一般的なフィルム・シートに利用されている高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等が挙げられる。さらに、超高分子量ポリエチレン系樹脂、架橋ポリエチレン系樹脂なども含まれ、これらを用いた場合には、洗浄剤組成物の粘度の向上により、洗浄性能を高める効果を得ることができる。
ここで、超高分子量ポリエチレン系樹脂とは、粘度平均分子量が30万以上のポリエチレン系樹脂を指す。洗浄性能の観点から、超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は30万以上であることが好ましく、より好ましくは35万以上、さらに好ましくは40万以上である。
架橋ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレート共重合体などを架橋したものが挙げられる。架橋方法は特に制限されず、過酸化物架橋、電子線架橋、シラン架橋法などが挙げられる。
【0022】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等が挙げられ、いずれも好適に使用できる。
【0023】
樹脂フィルム・シート端材の構造は特に限定されず、多層フィルム・シートの端材等も使用することができる。
【0024】
樹脂フィルム・シート端材には、成形加工性の向上や機能付与のために添加された成分として、滑剤、防曇剤、造核剤、帯電防止剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、可塑剤、架橋促進剤、ブロッキング防止剤、無機充填剤等の添加剤が含まれていてもよい。洗浄剤の樹脂原料として利用した場合に、これらの添加剤が有効成分として洗浄効果の向上に寄与する可能性があり、樹脂フィルム・シート端材を原料に用いるメリットになり得る。
【0025】
樹脂フィルム・シート端材の含有量は特に限定されないが、環境配慮及びコスト低減効果の観点から、洗浄剤を100質量%として、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。
【0026】
[[添加剤]]
粉砕体の原料は、樹脂フィルム・シート端材の他に、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、無機フィラー、無機発泡剤、リサイクルされていない新品であるバージン熱可塑性樹脂、超高分子量樹脂等が挙げられる。添加剤は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。中でも、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、及び無機フィラーからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
添加剤を添加することにより、洗浄剤を、洗浄目的や用途(洗浄対象とする加工機械・樹脂の種類等)に要求される性能に更に適したものとすることができる。
【0027】
添加剤の合計含有量は特に制限されないが、洗浄剤を100質量%として、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0028】
(酸化防止剤)
樹脂フィルム・シート端材はバージン樹脂と比べて熱履歴が加わっていることから、酸化防止剤を添加することが望ましい。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤など、一般的な酸化防止剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。リン系酸化防止剤の具体例としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスファイト等が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)等が挙げられる。ヒドロキシルアミン系酸化防止剤の具体例としては、ジステアリルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
酸化防止剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0029】
酸化防止剤の十分な効果を発現させるためには、洗浄剤の質量を100質量%として、0.01質量%以上を添加することが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、酸化防止剤の含有量は、3質量%未満が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。酸化防止剤の含有量が上記範囲であると、洗浄剤中の樹脂の劣化を抑制する効果が得られ、かつ酸化防止剤の分解生成物自身が他の添加剤(滑剤等)に対して阻害効果を及ぼすことが少ない傾向にある。
【0030】
(滑剤)
滑剤としては、有機酸、有機酸金属塩、有機酸アミド、有機酸エステル等の有機酸誘導体、各種エステルワックス、オレフィンワックス、フッ素系樹脂、ミネラルオイル等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0031】
上記有機酸としては、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸が好ましい。鎖の一部にヒドロキシル基を有していても良い。特に、入手のしやすさ、耐熱性の観点から、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸がより好ましい。また、アルキル鎖の異なる混合脂肪酸であってもよい。炭素数が上記範囲であると、ガスの発生や臭気の問題がなく、入手の容易さや界面での滑剤としての特性がうまく機能する傾向にある。
【0032】
上記有機酸金属塩における金属としては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、バリウム等が挙げられる。中でも、滑剤としての効果が最も発揮されるリチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛又はアルミニウムが好ましい。また、中でも、アルミニウム、亜鉛の金属塩は極性が低く、熱可塑性樹脂からのブリードアウトにより外部滑性を発現しやすく、より好ましい。特に好ましくは、亜鉛である。
上記有機酸金属塩における炭化水素部位は、上述の有機酸と同じく、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸が好ましく、入手のしやすさ、耐熱性の観点から、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸がより好ましい。
【0033】
上記有機酸アミドとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数12~18の脂肪酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸のアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミドが、入手のしやすさ、滑剤としての効果の点から好ましく、より好ましくはエチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミドである。
【0034】
上記有機酸エステル、エステルワックスとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、硬化油等のポリオールエステル等が挙げられる。入手のしやすさ、滑剤としての効果の点から、ステアリン酸ステアレート、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド等が好ましい。
【0035】
上記オレフィンワックスとしては、低分子ポリオレフィン等が挙げられ、特に限定されるものではないが、一般的な低密度あるいは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。重量平均分子量が1,000~20,000程度、滴点が80~180℃であるものが最も効果を発揮しやすい。
【0036】
上記フッ素系樹脂としては、PTFE、PFA、PVDF、PVDF系共重合体、ETFE、PFE等が挙げられ、金属面への樹脂付着性を抑える効果が期待できる。形状としては、ペレット状、パウダー状等、種々使用することができるが、加工する際に均一に分散させるためにパウダー状のものが特に好ましい。平均粒径は、特に限定されないが、1,000μm以下が好ましい。
【0037】
上記ミネラルオイルとは、石油を精製して得られる油であり、鉱物油、潤滑油、流動パラフィン等とも呼ばれるナフテン、イソパラフィン等も含む飽和炭化水素系のオイルである。広い粘度範囲のミネラルオイルが使用可能であり、例えば、流動パラフィンの場合、JIS K2283により測定した動粘度が50~500mm2/sであるもの、レッドウッド法(日本油化学協会基準油脂分析試験法2.2.10.4-1996)により測定した粘度が30~2000(秒)の範囲のものを用いてもよい。
【0038】
上述の滑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0039】
滑剤は、洗浄性能の観点から、融点又は軟化点が70℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。
【0040】
滑剤の含有量は、洗浄剤100質量%に対して0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量%、さらに好ましくは0.5~8質量%である。
【0041】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、陰イオン活性剤、陽イオン活性剤、非イオン活性剤、両性表面活性剤等が挙げられる。
陰イオン活性剤としては、高級脂肪酸アルカリ塩(アルファスルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム等)、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等を例示することができる。
陽イオン活性剤としては、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩等を例示することができる。
非イオン活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(ペンタエリスリトールテトラステアラート等)、脂肪酸モノグリセリド等を例示することができる。
両性表面活性剤としては、アミノ酸等を例示することができる。
界面活性剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
界面活性剤の含有量は、洗浄剤100質量%に対して0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量%、さらに好ましくは0.5~8質量%である。
【0043】
(可塑剤)
可塑剤としては、特に限定されず、一般的な可塑剤であるフタル酸エステルやアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、クエン酸エステルなどが挙げられる。
可塑剤の含有量は、洗浄剤100質量%に対して0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量%、さらに好ましくは0.5~8質量%である。
【0044】
(無機フィラー)
本明細書において、無機フィラーとは、後述の無機発泡剤以外の無機化合物をいい、天然物及び人工合成物のいずれも示す。無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、硫酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ケイソウ土、ガラス粉末、ガラス球、ガラス繊維、シラスバルーン等が挙げられる。
無機フィラーの含有量は、洗浄剤100質量%に対して1~70質量%であることが好ましく、より好ましくは3~60質量%、さらに好ましくは5~50質量%である。
【0045】
(無機発泡剤)
本明細書において、無機発泡剤とは、加熱により分解し、発泡、すなわち気体を発生する無機化合物を指す。無機発泡剤の具体例としては、水等の無機物理発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、ホウ水素化ナトリウム等の水素化物、アジ化カルシウム等のアジド化合物、マグネシウム、アルミニウム等の軽金属、炭酸水素ナトリウムと酸との組み合わせ、過酸化水素とイースト菌との組み合わせ、アルミニウム粉末と酸との組み合わせ等の公知の無機化学発泡剤が挙げられる。
無機発泡剤の含有量は、洗浄剤100質量%に対して0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量%、さらに好ましくは0.5~8質量%である。
【0046】
(バージン熱可塑性樹脂)
バージン熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
バージン熱可塑性樹脂の含有量は、洗浄剤の質量を100質量%として、10~90質量%であることが好ましく、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~50質量%である。バージン熱可塑性樹脂の配合比率が低いほど、樹脂フィルム・シート端材の使用によるコストメリットは大きくなり、また、リサイクル性に優れる。
【0047】
(超高分子量樹脂)
本明細書において、超高分子量樹脂とは、分子量100万以上の高分子であり、例えば、エチレン系超高分子、スチレン-アクリロニトリル系超高分子、メタクリル酸メチル系超高分子等が挙げられる。中でも、エチレン系超高分子が好ましい。分子量の上限は特に限定されないが、一般的には1000万以下であることが実用上好ましい。
また、超高分子量樹脂はホモポリマーでもコポリマーでもよく、コポリマーの場合は主成分(例えば、エチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル等)の含有量が50質量%以上である必要がある。
超高分子量樹脂の含有量は、洗浄剤100質量%に対して1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0048】
粉砕体の形状は特に限定されないが、例えば、ペレット状(円柱状・球状・平面状)、フレーク状、パウダー状等の形状が挙げられる。
【0049】
前記粉砕体のサイズとしては、最大長さが2~10mmであることが好ましく、より好ましくは3~10mm、更に好ましくは3~8mmである。最大長さが2~10mmであると、洗浄剤が粉砕体からなる(粉砕体そのものを洗浄剤として用いる)場合に、洗浄対象である樹脂加工機械のスクリューへのかみ込み性が良好となる傾向にある。また、後述するように、洗浄剤が粉砕体の他にその他の成分を含み、粉砕体とその他の成分とをドライブレンドして得られた洗浄剤である場合に、形状差に起因する分級などの工程不良が抑制される他、粉砕体とその他の成分とを溶融混練して得られた洗浄剤である場合にも、当該溶融混練の際の溶融混練装置のスクリューへのかみ込み性が良好となる傾向にある。
なお、粉砕体の最大長さとは、50個以上の粉砕体について、粉砕体の表面上の2点間の距離のうち最大となる長さをノギス等を用いて測定し、平均した値とする。
【0050】
前記粉砕体の嵩密度は、0.10g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは0.15g/cm3以上、更に好ましくは0.20g/cm3以上である。嵩密度が0.10/cm3以上であると、粉砕体そのものを洗浄剤として用いる(洗浄剤が粉砕体からなる)場合に、洗浄対象である樹脂加工機械へのフィードが安定する傾向にある。また、後述するように、洗浄剤が粉砕体の他にその他の成分を含み、粉砕体とその他の成分とをドライブレンドして得られた洗浄剤である場合に、分級が抑制される傾向にある他、粉砕体とその他の成分とを溶融混練して得られた洗浄剤である場合にも、当該溶融混練の際の溶融混練装置へのフィードが安定する傾向にある。
また、粉砕体の嵩密度の上限は、特に限定されないが、0.80g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.75g/cm3以下、さらに好ましくは0.70g/cm3以下である。
なお、粉砕体の嵩密度は、JIS K 7365に準拠して計測するものとする。
【0051】
洗浄剤中の粉砕体の含有量は特に限定されないが、環境配慮及びコスト低減効果の観点から、洗浄剤を100質量%として、20~100質量%であることが好ましく、より好ましくは30~90質量%、更に好ましくは50~80質量%である。
【0052】
[その他の成分]
本実施形態の洗浄剤は、粉砕体の他に、その他の成分を含んでいてもよい。粉砕体のみからなる洗浄剤とする(粉砕体をそのまま洗浄剤として使用する)ことも可能であるが、その他の成分を含むことで、洗浄目的や用途(洗浄対象とする樹脂加工機械・樹脂の種類等)に要求される性能に更に適した洗浄剤とすることができる。
その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、無機フィラー、無機発泡剤、リサイクルされていない新品であるバージン熱可塑性樹脂、超高分子量樹脂等、上述の粉砕体に含まれる添加剤と同様のものが挙げられる。その他の成分は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0053】
その他の成分の合計含有量は、特に制限されないが、洗浄剤を100質量%として、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0054】
洗浄剤100質量%におけるその他の成分各々の含有量は、上述の粉砕体に含まれる各添加剤と同様としてよい。
洗浄剤が同じ化合物を添加剤及びその他の成分として含む場合は、その合計含有量が、上述した各添加剤の含有量の好適範囲内であることが好ましい。例えば、酸化防止剤が添加剤として粉砕体中に含まれ、かつその他の成分としても洗浄剤中に含まれる場合、添加剤としての酸化防止剤とその他の成分としての酸化防止剤との合計含有量が、洗浄剤100質量%に対して0.01質量%以上3質量%未満であることが好ましい。
【0055】
洗浄剤がその他の成分を含む場合、その他の成分は、粉砕体と溶融混練又はドライブレンドされることが好ましい。
【0056】
粉砕体とその他の成分とを溶融混練する方法としては、例えば、粉砕体とその他の成分とを予備混合したものを溶融混練装置を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。
溶融混練装置としては特に限定されず、公知の混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む押出機、ニーダー、コニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。特に、樹脂を十分に混練することができる観点から、押出機が好ましく、より好ましくは二軸押出機である。二軸押出機を使用すると押出性が安定し、押出機から吐出されるストランドの脈動等が抑えられる傾向にある。
得られた溶融混練物をカットしてペレット状に成形することで粉砕体を得ることができる。溶融混練物のカット方法としては、ストランドカット、ホットカット、アンダーウォーターカットなどの方法を、樹脂フィルム・シート端材を含む原料の加工性に応じて選択することができる。
粉砕体とその他の成分との混合には、一般に使用されている装置、例えば、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等の予備混合装置、重量式供給機等を使用してもよい。
なお、溶融混練温度(例えば、押出機で溶融混練する際のシリンダーの設定温度等)は、熱履歴を抑制する観点から、280℃以下に設定することが好ましく、260℃以下がより好ましく、240℃以下が更に好ましい。溶融混練温度の下限は特に限定されないが、原料を十分に溶融させる観点から、160℃以上に設定することが好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上が更に好ましい。
溶融混練物のカット方法としては、ストランドカット、ホットカット、アンダーウォーターカットなどの方法を、粉砕体からなる洗浄剤の加工性に応じて選択することができる。
品質維持の観点から、溶融混練する際は、常圧で開放口(ベント)から脱気分を除去する開放脱気、又は、必要に応じて減圧して開放口(ベント)から脱気分を除去する減圧脱気を行うことが望ましい。溶融混練装置内における溶融樹脂の滞留時間をできるだけ短くすることが望ましく、かかる観点を考慮して、溶融混練条件を設定する。
【0057】
一方、粉砕体とその他の成分とをドライブレンドする方法としては、例えば、粉砕体とその他の成分とをタンブラーブレンダー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等の混合装置で一定時間混合する方法が挙げられる。
ドライブレンドにより添加されるその他の成分としては、特に限定されないが、バージン熱可塑性樹脂のペレットや洗浄に有効な成分を予め造粒したマスターバッチ等であることが望ましい。
【0058】
樹脂加工機械用洗浄剤の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、80,000以上がより好ましく、100,000以上が更に好ましい。洗浄剤の重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂フィルム・シート端材の熱劣化が抑制されているため、優れた洗浄性能を発揮できる傾向にある。洗浄剤の重量平均分子量の上限については、特段の制約はない。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。なお、使用する溶離液に関しては特に制限はなく、対象とする樹脂を溶解するものであればよい。
【0059】
[樹脂加工機械用洗浄剤の形状]
本実施形態の洗浄剤の形状は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、ペレット状(円柱状、球状、平面状)、フレーク状、パウダー状等の形状が挙げられる。
【0060】
[樹脂加工機械用洗浄剤の製造方法]
本実施形態の洗浄剤の製造方法は、上述のとおり、樹脂フィルム・シート端材を含む原料に対して圧着、半溶融化、及び溶融混練からなる群から選択される加工を行うことにより粉砕体を得ることを含み、加工の加工温度が280℃以下であることを特徴とする。
また、本実施形態の洗浄剤の製造方法は、上述のとおり、粉砕体とその他の成分とを溶融混練又はドライブレンドすることを含んでいてもよい。
【0061】
[樹脂加工機械内の洗浄方法]
本実施形態の樹脂加工機械内の洗浄方法は、上述の本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤を使用することを特徴とする。
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤を使用して洗浄することができる樹脂加工機械としては、例えば、射出成形機、押出機等が挙げられ、熱可塑性樹脂を扱う樹脂加工機械であれば特に制限されるものではない。
【実施例0062】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例及び比較例において使用した各成分は、以下のとおりである。
【0064】
<樹脂フィルム・シート端材>
(A-1)ポリエチレンフィルム端材(PE)(重量平均分子量:25万)
(A-2)OPP包装シート端材(PP)(重量平均分子量:20万)
(A-3)超高分子量ポリエチレンフィルム端材(UHMWPE)(重量平均分子量:50万)
(A-4)架橋ポリエチレンフィルム端材(架橋PE)(ゲル分率:25%)
【0065】
<添加剤及びその他の成分>
(B-1)高密度ポリエチレン(HDPE)(バージン樹脂、旭化成株式会社製「サンテックB161」)
(B-2)ポリプロピレン(PP)(バージン樹脂、サンアロマー株式会社製「サンアロマーPB270A」)
(C-1)酸化防止剤(BASF社製「Irganox1010」)
(C-2)滑剤(日油株式会社製「アルフローH-50F」)
(D-1)炭酸カルシウム(矢橋工業株式会社製「KK3000」)
【0066】
[粉砕体の製造]
下記に示すいずれかの方法を用い、表1に示す加工温度により、樹脂フィルム・シート端材と場合に応じて添加剤とを表1に示す割合で含む原料を粉砕体に加工した。
【0067】
(加工方法a(半溶融化))
樹脂フィルム・シート端材(添加剤を含む場合は、樹脂フィルム・シート端材と添加剤とをタンブラーブレンダーを用いて5分間予備混合したもの)をフィルム・シート屑自動造粒機(株式会社東洋製機製「ハイペレッターHP-90」)に投入し、スクリューの回転による樹脂のせん断発熱により、樹脂を半溶融状態にした後、内蔵されたカッターでペレット状に加工した。造粒機において外部熱源による加熱は行わなかった。
【0068】
(加工方法b(圧着))
樹脂フィルム・シート端材をインフレエッジトリム処理装置(HF社製「REPRE H981-A」)に導入して、4~10枚の端材を重ね合わせてロールで圧着し、内蔵されたカッターで5mm四方程度のサイズに裁断し、ペレット状に加工した。圧着の際に外部熱源による加熱は行わなかった。
【0069】
(加工方法c-1(溶融混練))
樹脂フィルム・シート端材を粉砕機で5mm四方程度に粉砕した後、場合に応じて添加剤を添加し、予めタンブラーブレンダーを用いて5分間予備混合したものを、押込みスクリュー・アジテーターを備えたフィーダーで二軸押出機(芝浦機械株式会社製「TEM26SS」、L/D=48)に投入し、溶融混練した。シリンダー設定最高温度は表1に記載の加工温度に設定した。得られた溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断し、ペレット状に加工した。
(加工方法c-2(溶融混練))
端材粉砕部と単軸の押出部が一体となった端材ペレタイズ装置(エレマ社製「インタレマ」、L/D=30)に、樹脂フィルム・シート端材(添加剤を含む場合は、樹脂フィルム・シート端材と添加剤とをタンブラーブレンダーを用いて5分間予備混合したもの)を導入し、溶融混錬した。シリンダー設定最高温度は表1に記載の加工温度に設定した。内蔵されたカッターでホットカットにより造粒を行った。
【0070】
(加工方法d(粉砕))
樹脂フィルム・シート端材を粉砕機で5mm四方程度に粉砕した。
【0071】
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は、以下のとおりである。
【0072】
[粉砕体の最大長さの測定]
50個の粉砕体について、粉砕体の表面上の2点間の距離のうち最大となる長さをノギスで測定し、その平均値を求めて最大長さ(mm)とした。
【0073】
[粉砕体の嵩密度測定]
粉砕体の嵩密度(g/cm3)を、JIS K 7365に準拠して測定した。
【0074】
[洗浄剤の製造時の発煙]
一連の洗浄剤製造工程で発煙の様子について、各工程で使用した加工機器の最終段階部分(押出機の吐出口など、加工物が得られる部分)から風下5mの地点において、デジタルカメラ(キヤノン株式会社製「IXY650」)を用いて該加工機器の最終段階部分の写真を撮影し、以下の基準で判断した。
・評価基準
◎(優れる):発煙が認められず、作業に全く支障のない状態
〇(良好):発煙が認められるが、5m先まで視界が良好である(すべての加工機器について上記撮影した写真にて最終段階部分を確認できる)ため、作業の支障にはならない程度である状態
×(不良):発煙が激しく、5m先を明瞭に視認できない(上記撮影した写真にて最終段階部分を確認できなかった加工機器がある)ため、作業環境が著しく悪化した状態
【0075】
[洗浄剤ペレットの着色]
スクリュー式射出成形機(芝浦機械株式会社製「EC100S」)を用いて、洗浄剤のプレート(寸法:90mm×50mm×2.5mm)を成形した(シリンダー温度:220℃±10℃、金型温度:60℃±5℃)。プレート1枚について、色差計によりYI値を測定した。
・評価基準
[主成分(50質量%超)がPEである洗浄剤の場合]
◎(優れる):同様に成形したバージンのPEのプレートと比較して、YI値の増加幅が30%未満
〇(良好):同様に成形したバージンのPEのプレートと比較して、YI値の増加幅が30~100%
×(不良):同様に成形したバージンのPEのプレートと比較してYI値の増加幅が100%超
[主成分(50質量%超)がPPである洗浄剤の場合]
◎(優れる):同様に成形したバージンのPPのプレートと比較して、YI値の増加幅が30%未満
〇(良好):同様に成形したバージンのPPのプレートと比較して、YI値の増加幅が30~100%
×(不良):同様に成形したバージンのPPのプレートと比較してYI値の増加幅が100%超
【0076】
[洗浄剤ペレット中の黒点]
スクリュー式射出成形機(芝浦機械株式会社製「EC100S」)を用いて、洗浄剤のプレート(寸法:90mm×50mm×2.5mm)を成形した(シリンダー温度:220℃±10℃、金型温度:60℃±5℃)。プレート4枚の表裏について、径が0.1mm以上である黒点の個数を確認した。
・評価基準
◎(優れる):黒点の個数が10個以下
〇(良好):黒点の個数が11~20個
×(不良):黒点の個数が21個以上
【0077】
[重量平均分子量の測定]
洗浄剤の重量平均分子量を、超高温GPC(株式会社センシュー科学製)を用い、溶離液として1-クロロナフタレン、検量線用標準物質としてポリスチレンを用い、カラム温度210℃にて測定した。検出器としてはRI(示差屈折)検出器を用いた。
【0078】
[ポリエチレン系樹脂の洗浄評価]
青色に着色された低密度ポリエチレンを着色マスターバッチとし、着色マスターバッチ10質量%と高密度ポリエチレン(以下、「PE」と称する。)90質量%を混合し、小型押出機(ブラベンダー社製「プラスチコーダ」)に500g投入して、スクリューを回転させて当該樹脂混合物をTダイから排出して成形機内に疑似的な汚れを付着させた。
その後、当該成形機に実施例または比較例で得られた洗浄剤を投入し、シリンダー温度200℃及びダイ温度200℃の条件でスクリュー回転により洗浄した。この時、PEの青色から洗浄剤の色に切り替わるために必要であった洗浄剤量をダイから排出されたパージ屑から計量し、洗浄性の数値(g)とした。
[評価基準]
◎(優れる):パージ屑量が250g以下であり、洗浄性に優れる
〇(良好):パージ屑量が250g超350g以下であり、洗浄性が良好
×(不良):パージ屑量が350g超であり、洗浄が困難
【0079】
[ポリプロピレン系樹脂の洗浄評価]
型締め力100tの芝浦機械株式会社製射出成形機に先行樹脂としてポリプロピレン(以下、「PP」と称する。)の黒着色成形材料500gをシリンダー温度230℃にてホッパーより投入した。樹脂のパージが終わるまでスクリュー回転を続け、回転停止後、15分同一温度で滞留させた。その後、実施例または比較例で得られた洗浄剤をホッパーより流し、内部を洗浄した。この時、PPの黒色から洗浄剤の色に切り替わるために必要であった洗浄剤量をノズルより排出されたパージ屑から計量し、洗浄性の数値(g)とした。
[評価基準]
◎(優れる):パージ屑量が500g以下であり、洗浄性に優れる
〇(良好):パージ屑量が500g超650g以下であり、洗浄性が良好
×(不良):パージ屑量が650g超であり、洗浄が困難
【0080】
<実施例1、3~5、8、9、11、12>
前述の加工方法a~dのいずれかで樹脂フィルム・シート端材及び任意で添加剤を含む原料を加工して得られた粉砕体と、その他の成分とを、以下の方法のいずれかで加工し、洗浄剤を得た。粉砕体とその他の成分との混合割合(質量%)を表1に示す。
・溶融混練による加工(表1で「溶融混練」と記載)
予めタンブラーブレンダーを用いて粉砕体とその他の成分とを5分間予備混合し、二軸押出機(芝浦機械株式会社製TEM26SX)を用いて溶融混練した。押出条件は、シリンダー設定温度240℃、供給量15kg/時間とした。このようにして得られた溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断し、ペレット状の洗浄剤を得た。
・ドライブレンドによる加工(表1で「ブレンド」と記載)
タンブラーブレンダーを用いて粉砕体とその他の成分とを5分間ドライブレンドした。
【0081】
<実施例2、6、7、10、13、14、比較例1、2>
樹脂フィルム・シート端材と添加剤とを含む原料を加工して得られた粉砕体を、そのまま洗浄剤として用いた。
【0082】
【0083】
評価結果より、本発明の実施例と、従来の加工法により得られた比較例とでは、実施例の方が高い品質、加工性及び洗浄効果を有するという有意な差が見られた。
本発明によれば、生産工程内で生じる樹脂フィルム・シート端材を洗浄剤の原料として用いる際の加工性を高めるとともに、優れた品質、洗浄効果を示す樹脂加工機械用洗浄剤を得ることができる。
前記加工が溶融混練であり、前記樹脂フィルム・シート端材を含む原料を押出機で溶融混練することを含み、前記押出機のL/Dが45以下である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。
前記原料が、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、及び無機フィラーからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤。