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特開2023-178834ウレタン樹脂、ウレタン樹脂組成物およびウレタン樹脂水分散体、ならびにウレタン樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178834
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂、ウレタン樹脂組成物およびウレタン樹脂水分散体、ならびにウレタン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20231211BHJP
   C08G 18/81 20060101ALI20231211BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20231211BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/81 008
C08G18/67
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091769
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡島 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 修平
(72)【発明者】
【氏名】鷺坂 利澄
(72)【発明者】
【氏名】神田 良輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
【Fターム(参考)】
4F100AH03A
4F100AH03H
4F100AK51A
4F100AK51G
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA02G
4F100CA02H
4F100CB02A
4F100CB02G
4F100EC18
4F100EH46A
4F100EH46G
4F100JK06
4J034BA02
4J034BA03
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC54
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD05
4J034DA01
4J034DB04
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DH02
4J034DH06
4J034DM01
4J034DP12
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA04
4J034HA07
4J034HA18
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA12
4J034JA22
4J034JA30
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034QC03
4J034QC05
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は基材への密着性および耐熱性に優れ、水性媒体への分散性も良好なウレタン樹脂およびウレタン水分散体を提供することにある。
【解決手段】 以下の(1)~(3)を満足するウレタン樹脂。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定において、分子量が1.0×10以上の成分の面積比が10%以上である
(2)重量平均分子量(Mw)が2.0×10~1.0×10である
(3)分子量分布(Mw/Mn)が9~15000である(ここでMnは数平均分子量を表す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)~(3)を満足するウレタン樹脂。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定において、分子量が1.0×10以上の成分の面積比が10%以上である
(2)重量平均分子量(Mw)が2.0×10~1.0×10である
(3)分子量分布(Mw/Mn)が9~15000である(ここでMnは数平均分子量を表す)
【請求項2】
前記ウレタン樹脂が、水酸基との反応性またはイソシアネート基との反応性を有する官能基とラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物(C)に由来するラジカル重合性二重結合および前記化合物(C)の重合体の少なくとも一方を構成単位として有する、請求項1に記載のウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂がカルボキシル基を有する請求項1または2に記載のウレタン樹脂。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂の酸価が50~800eq/tである請求項1または2に記載のウレタン樹脂。
【請求項5】
請求項1または2に記載のウレタン樹脂と架橋剤とを含むウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のウレタン樹脂が水性媒体に分散しているウレタン樹脂水分散体。
【請求項7】
請求項1または2に記載のウレタン樹脂を含有する層を有する積層体。
【請求項8】
少なくともポリオール(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、および水酸基との反応性またはイソシアネート基との反応性を有する官能基とラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物(C)を構成単位として有するウレタン重合体を作成後、前記ウレタン重合体を水性媒体に分散し、さらにラジカル重合することを特徴とする、ウレタン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂組成物およびウレタン樹脂水分散体、ならびにウレタン樹脂の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、分散性に優れ、基材への密着性にも優れ、加えて耐熱性に優れるウレタン樹脂と、ウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用、化粧品包装用、医療包装用材料、偏光板材料など、近年では各種プラスチックフィルムが幅広く使用されている。特に機能性を高めるために、複数種のフィルムを接着剤等でラミネートしたラミネートフィルムや、フィルムに機能性のコーティング剤を塗布した機能性フィルムが多用されている。このような接着剤やコーティング剤としては基材への密着性や耐熱性が要求される。使用形態としては、有機溶剤溶解品や水性分散品を基材に塗布して使用されることが一般的であるが、特に近年は環境問題により水性分散品が求められるようになっている。
【0003】
一般に、接着剤やコーティング剤の耐熱性を上げるためには、樹脂のガラス転移温度を上げる方策が知られているが、他方でガラス転移温度を上げると樹脂の柔軟性が低下し、基材への密着性に問題が生じる。例えば特許文献1では、食品包装用のウレタン系接着剤組成物において、ガラス転移温度が高いポリオールとガラス転移温度が低いポリオールとを含有させることで、耐熱性に優れたウレタン系接着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3583629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようなガラス転移温度による耐熱性の制御は塗膜の柔軟性が乏しく、基材への密着性が低下する傾向にあった。また樹脂の高分子量化により基材への密着性や耐熱性を向上させようとした場合、高粘度化やゲル化が要因で耐熱性が向上し得る分子量を有するウレタン樹脂を得ることが困難であった。加えて、特許文献1のウレタン樹脂は有機溶剤溶解品であり、環境問題を考慮すると水性分散品であることが望ましい。従って、本発明の目的は基材への密着性および耐熱性に優れ、水性媒体への分散性も良好なウレタン樹脂およびウレタン水分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、平均分子量が大きく、かつ広い分子量分布を有するウレタン樹脂が、基材への密着性並びに耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の[1]~[8]の構成を有するものである。
[1] 以下の(1)~(3)を満足するウレタン樹脂。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定において、分子量が1.0×10以上の成分の面積比が10%以上である
(2)重量平均分子量(Mw)が2.0×10~1.0×10である
(3)分子量分布(Mw/Mn)が9~15000である(ここでMnは数平均分子量を表す)
[2] 前記ウレタン樹脂が、水酸基との反応性またはイソシアネート基との反応性を有する官能基とラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物(C)に由来するラジカル重合性二重結合および前記化合物(C)の重合体の少なくとも一方を構成単位として有する、前記[1]に記載のウレタン樹脂。
[3] 前記ウレタン樹脂がカルボキシル基を有する前記[1]または[2]に記載のウレタン樹脂。
[4] 前記ウレタン樹脂の酸価が50~800eq/tである前記[1]または[2]に記載のウレタン樹脂。
[5] 前記[1]または[2]に記載のウレタン樹脂と架橋剤とを含むウレタン樹脂組成物。
[6] 前記[1]または[2]に記載のウレタン樹脂が水性媒体に分散しているウレタン樹脂水分散体。
[7] 前記[1]または[2]に記載のウレタン樹脂を含有する層を有する積層体。
[8] 少なくともポリオール(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、および水酸基との反応性またはイソシアネート基との反応性を有する官能基とラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物(C)を構成単位として有するウレタン重合体を作成後、前記ウレタン重合体を水性媒体に分散し、さらにラジカル重合することを特徴とする、ウレタン樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材への密着性にも優れ、加えて耐熱性に優れるウレタン樹脂を提供することができる。さらに、本発明のウレタン樹脂は水性媒体への分散性にも優れており、ウレタン樹脂水分散体としても提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のウレタン樹脂は、以下の(1)~(3)を満足するウレタン樹脂である。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定において、分子量が1.0×10以上の成分の面積比が10%以上である
(2)重量平均分子量(Mw)が2.0×10~1.0×10である
(3)分子量分布(Mw/Mn)が9~15000である(ここでMnは数平均分子量を表す)
【0010】
<要件(1)>
本発明のウレタン樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定において、分子量が1.0×10以上の成分の面積比が10%以上である。好ましくは15%以上、より好ましくは17%以上、さらに好ましくは20%以上である。前記下限値以上とすることで、基材への密着性に優れ、耐熱性にも優れたウレタン樹脂とすることができる。ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定方法および分子量、面積比の算出方法は、実施例に記載の方法で測定される。
【0011】
本発明のウレタン樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定において、分子量が1.0×10以上の成分の面積比が90%以下であることが好ましく、より好ましくは88%以下、さらに好ましくは86%以下、特に好ましくは84%以下である。前記範囲内とすることで、水分散性が良好で、また高分子量の成分が十分に樹脂中に存在することで耐熱性が向上する。
【0012】
<要件(2)>
本発明のウレタン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2.0×10~1.0×10である必要がある。好ましくは3.0×10以上であり、より好ましくは5.0×10以上であり、さらに好ましくは1.0×10以上であり、特に好ましくは1.0×10以上である。また、好ましくは8.0×10以下であり、より好ましくは6.0×10以下であり、さらに好ましくは4.0×10以下であり、特に好ましくは3.0×10以下である。重量平均分子量を前記範囲内とすることで、基材への密着性に優れたウレタン樹脂とすることができる。重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定される。
【0013】
<要件(3)>
本発明のウレタン樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が9~15000である(ここでMnは数平均分子量を表す)必要がある。好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは50以上であり、特に好ましくは100以上である。また、好ましくは13000以下であり、より好ましくは12000以下であり、さらに好ましくは10000以下であり、特に好ましくは8000以下である。分子量分布が前記範囲内であることで、高分子量でありながら水分散性に優れ、耐熱性にも優れたウレタン樹脂とすることができる。この理由は定かではないが、分子量分布が広いことで高分子量成分と低分子量成分が共存し、低分子量成分が高分子量成分の相溶化剤的に働くため、耐熱性を有するまで高分子量化しても水分散性に優れるウレタン樹脂となると考察される。分子量分布(Mw/Mn)は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であり、前記重量平均分子量と同様、実施例に記載の方法で測定される。
【0014】
本発明のウレタン樹脂は、構成単位としては特に限定されず、例えばポリオール(A)およびポリイソシアネート化合物(B)を含む構成単位により構成されるものが使用できる。
【0015】
<ポリオール(A)>
本発明のウレタン樹脂を構成できるポリオール(A)(以下、成分(A)とも言う)は特に限定されず、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、シリコンポリオールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオールおよび2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジオ-ル、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメチロール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等の脂環族グリコール、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール、1,4-フェニレングリコ-ルのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等の、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドをそれぞれ1~数モル付加して得られるグリコール類等の芳香族グリコール等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併用できる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては環状エーテルを開環重合して得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0017】
ポリエステルグリコールとしてはジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等)またはその無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール等)との重縮合によって得られるもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート等や、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルエステルグリコールとしてはポリエステルグリコールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルグリコールとジカルボン酸とを重縮合したもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては低分子量ジオールとアルキレンカーボネートまたはジアルキルカーボネートとから脱グリコールまたは脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。シリコンポリオールとしてはポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。本発明で用いられる成分(A)としては、基材への密着性および耐熱性の観点から前記の中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが特に好ましい。
【0019】
本発明で用いられる成分(A)のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、ガラス転移温度が-30℃以上であることが好ましい。より好ましくは-25℃以上、さらに好ましくは-20℃以上である。また、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に好ましくは30℃以下である。ガラス転移温度を前記の範囲内とすることで、ウレタン樹脂とした際の密着性が良好となる。なお、成分(A)が複数の成分により構成される場合、成分(A)のガラス転移温度は、各成分のガラス転移温度と各成分の質量比から加重平均にて計算される。
【0020】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
本発明のウレタン樹脂を構成できるポリイソシアネート化合物(B)(以下、成分(B)とも言う)は、ポリイソシアネート化合物であれば特に限定されず、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートもしくは脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2?メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6?トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、o-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。また、前記ポリイソシアネート化合物(B)を2種類以上含む混合物、これらのポリイソシアネート化合物のウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。本発明で好ましいポリイソシアネート化合物(B)は、耐熱性、密着性、溶解性などを考慮すれば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、さらには、得られるウレタン樹脂の水分散性および製造時のゲル化のおそれが小さく耐候性および樹脂の機械的強度に優れるヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナートがより好ましく、水分散性と光学特性に優れるジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナートが特に好ましい。これらを単独で、または2種以上を併用することができる。
【0021】
ポリイソシアネート化合物(B)の仕込量比は、ポリオール(A)の水酸基と成分(B)のイソシアネート基から、イソシアネート基/水酸基(NCO/OH)のモル比で0.50以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.65以上がさらに好ましい。また、5.00以下が好ましく、2.00以下がより好ましく、1.00以下が特に好ましい。
仕込み量比が前記下限値を下回ると得られるウレタン樹脂の数平均分子量が低く脆い樹脂となり、一方、前記上限値を超えると反応時に粘度が高くなりゲル化しやすくなったり、未反応のイソシアネートが残存するため、水分散体の安定性が低下する恐れがあり、いずれも好ましくない。なお、後記の成分(D)を含有する場合は、水酸基は成分(A)と成分(D)の水酸基の合計量として計算する。
【0022】
<水酸基との反応性またはイソシアネート基との反応性を有する官能基とラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物(C)>
本発明のウレタン樹脂は、水酸基との反応性またはイソシアネート基との反応性を有する官能基とラジカル重合性二重結合とを同一分子内に有する化合物(C)(以下、成分(C)とも言う)を構成単位として有していてもよい。このような成分(C)の例としては、2-イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)、2-イソシアネートエチルアクリレート(昭和電工社製、カレンズAOI)、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI-EG)、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズBEI)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルHO-250(N))、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルHOP(N))、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルHOP-A(N))、2-ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルHOB(N))等が挙げられる。成分(C)のラジカル重合性二重結合は、ラジカル反応性の観点から、成分(C)の分子の末端に位置していることが好ましい。
【0023】
成分(C)のウレタン樹脂中における含有量は成分(B)を100重量部とした場合、1~25重量部であることが好ましく、より好ましくは2~20重量部である。成分(C)の含有量が1重量部未満の場合、ラジカル重合による高分子量化が不十分となり、25重量部を超えると、ラジカル重合時にゲル化しやすいため好ましくない。
【0024】
<1個以上のカルボキシル基を有するポリオール(D)>
本発明のウレタン樹脂は、1個以上のカルボキシル基を有するポリオール(D)(以下、成分(D)とも言う)を構成単位として有していてもよい。このような成分(D)の例としては、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(3-ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0025】
本発明のウレタン樹脂はバイオマス資源から誘導された原料を用いることができる。バイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。この中でも、より好ましいバイオマス資源としては、植物資源であるが、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。さらに好ましくは、とうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシである。
【0026】
本発明のウレタン樹脂は、50~800eq/tの酸価を有することが好ましい。より好ましくは100eq/t以上、さらに好ましくは200eq/t以上、特に好ましくは300eq/t以上である。また、750eq/t以下が好ましく、さらに好ましくは700eq/t以下、特に好ましくは600eq/t以下である。酸価を前記の範囲内とすることで、水分散性が向上し、また後述する架橋剤との架橋反応に使用することもできる。酸価が前記下限値未満の場合、水分散性が悪化することがある。また、酸価が前記上限値より大きければ、水分散性から水溶性に近い状態となり、製造時にゲル化する恐れがある。
【0027】
本発明のウレタン樹脂は、例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、まず前記成分(A)、成分(B)および成分(C)を構成単位として含むウレタン重合体を、プレポリマー化法によって作製する。次いで水分散化を行い、次いでラジカル重合開始剤を添加し、成分(C)に由来するラジカル重合性二重結合をラジカル重合させることで、高分子量化かつ分子量分布の広いウレタン樹脂を製造することができる。有機溶剤を用いた場合、さらにラジカル重合後に脱溶剤を行うことで目的のウレタン樹脂水分散体を得ることができる。この方法によれば、従来溶液化が困難であった高分子量の樹脂であっても、水分散体として得ることが可能である。水性媒体に水分散化する前に前記ラジカル重合を行うと、粘度が上昇し、さらにはゲル化が生じてしまい高分子量体を得ることが困難となる場合がある。なお、前記ウレタン重合体は、さらに成分(D)を構成単位として有していてもよい。
【0028】
前記の方法における重合溶媒としては、イソシアネートとの反応性が低いものであれば使用することができ、例えば、アミン等の塩基性化合物を含まない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ヘキサン、2-メチルペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類が挙げられる。もちろんプレポリマー化法は無溶媒でも実施しても良い。重合溶媒を用いる場合、水分散化後の脱溶剤工程で溶剤を除去できることが好ましく、溶解性の観点から、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0029】
ウレタン樹脂を製造する際の触媒としては通常のウレタン化反応触媒が用いることができ、例えばトリメチルチンラウレート、ジメチルチンジラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジヒドロキサイド、スタナスオクトエートなどの錫系触媒、ビスマス系触媒、レッドオレート、レッド-2-エチルヘキソエートなどの鉛系触媒、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジアザビシクロオクタンなどのアミン系触媒等を使用することができる。
【0030】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリリルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-n-ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-エチルヘキサノエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-イソノナエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、過酸化ラウロイルなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0031】
ラジカル重合開始剤の種類は、溶剤溶解性や重合温度に応じて選定され得る。例えば、本発明では特に限定されないが、ラジカル重合開始剤としては、その重合温度での半減期が10分以上3時間以内であるものが好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量は、目標の重合率や反応条件などに応じて調整すればよく、本発明ではラジカル重合開始剤の添加量は成分(C)の仕込み量に対して0.001~15重量%であることが好ましい。これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、重合温度は10~180℃が好ましく、より好ましくは30~150℃である。重合時の樹脂固形分は5~95重量%が好ましく、より好ましくは15~60重量%である。
【0032】
上記成分(A)~(D)、およびラジカル重合開始剤に加えて、任意の適切な他の成分、例えば連鎖移動剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、フェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物等の酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、帯電防止剤、外部架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、ゲル化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機および有機充填剤、可塑剤、滑剤、補強剤、触媒、揺変剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐触剤、顔料等が挙げられる。
【0033】
上記帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。係る帯電防止剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上の帯電防止剤を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明において、ウレタン樹脂に水分散性を与えるために酸性基を中和させる化合物を添加しても良い。その具体例としては、トリメチルアミンやトリエチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N-ジアルキルアルカノールアミン類、N-アルキル-N,N-ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類、N-メチルモルフォリンやN-エチルモルフォリン等のN-アルキルモルフォリン等の3級アミン;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられ、これらの中でも、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンから選択される1種以上を用いることが好ましい。使用量は、上記の酸性基と反応して塩を形成して水分散性を与える範囲であればよく、中和率50~200%が好ましく、中和率75~150%がより好ましい。
【0035】
本発明のウレタン樹脂は、そのままであるいは有機溶媒で希釈してウレタン樹脂組成物として使用することもできるし、水性媒体に分散させてウレタン樹脂水分散体として使用することもできる。ウレタン樹脂組成物およびウレタン樹脂水分散体のいずれの場合も、その固形分は5~75質量%であることが好ましい。
【0036】
本発明のウレタン樹脂を水性媒体に分散させる場合、必要に応じて、乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤がコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
【0037】
上記のアニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N-アシルアミノ酸塩;N-アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0038】
また、ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1~18のアルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコールおよび/またはアルキレンジアミンのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。該ノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1~18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、2-ブタノール、第三ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4-ジ第三ブチルフェノール、2,5-ジ第三ブチルフェノール、3,5-ジ第三ブチルフェノール、4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノール、4-イソオクチルフェノール、4-ノニルフェノール、4-第三オクチルフェノール、4-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール、4-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものが挙げられる。また、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物でもブロック付加物でもよい。基材に対して特に強固な密着性を与えるシランカップリング剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、コロイダルシリカ、テトラアルコキシシランおよびその縮重合物、キレート剤、エポキシ化合物を用いてもよい。
【0039】
<架橋剤>
本発明のウレタン樹脂は耐熱性を更に向上させるために架橋剤および必要に応じて他の樹脂を配合して架橋塗膜を得ることができ、前記ウレタン樹脂と反応して架橋するものであれば特に限定されない。架橋剤としては、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、カルボジイミド等が挙げられる。架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アミノ成分としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0041】
ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、前述のポリイソシアネート化合物のポリイソシアナト基にブロック剤を付加することによって得られるものが挙げられ、ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系、マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム系、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系等のブロック化剤が挙げられる。
【0042】
メラミン樹脂としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン等のメチロールメラミン;これらのメチロールメラミンのアルキルエーテル化物または縮合物;メチロールメラミンのアルキルエーテル化物の縮合物等が挙げられる。
【0043】
架橋剤の添加量は、ウレタン樹脂のカルボキシル基に対して架橋剤中の反応性官能基量が1~2倍程度になることが好ましい。また、架橋塗膜の形成は架橋剤を配合した混合物を塗布し40~200℃で数秒間~数時間加熱することによって行うことができる。
【実施例0044】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0045】
<ゲル浸透クロマトグラフィー>
重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン樹脂、移動相:テトラヒドロフラン、解析ソフト:LabSolutions島津製作所社製)によって測定および解析をした。ウレタン樹脂水分散体を樹脂濃度が0.25質量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィーにより分子量、分子量分布を測定した。得られた測定結果において、標準物質であるポリスチレン樹脂を用いた検量線に基づいて分子量が1.0×10以上の成分の面積比を算出した。流速は1mL/分、カラム温度は40℃とした。カラムには昭和電工製KF-802、804L、806Lを直列に接続したものを用いた。標準物質としては、プロピルベンゼン(和光純薬社製)および昭和電工製の標準物質であるShodex STANDARD S-1.68、S-2.45、S-3.25、S-3.8、S-5.0、S-7.0、S-18、S-22、S-47、S-124、S-326、S-661を用いた。
【0046】
<酸価>
ウレタン樹脂水分散体2.0gを30mlのジメチルアセトアミドに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定した。この滴定量から、中和に消費された水酸化カリウムのmg数を樹脂1gあたりの量に換算して酸価(100eq/t=5.6mgKOH/g)を算出した。
【0047】
<水分散性>
濃厚系粒径アナライザー FPAR-1000(大塚電子株式会社製)により、ウレタン樹脂水分散体の粒子径を測定した。本装置のキュムラント解析結果より得られるキュムラント平均粒子径を粒子径とし、水分散性の指標とした。
評価 ○:粒子径が100nm未満
△:粒子径が100nm以上、300nm未満
×:粒子径が300nm以上または分散状態を保持できなかった。
【0048】
<評価用積層体の作製>
ウレタン樹脂水分散体をポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、50μm)の非コロナ処理面に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥させた。得られた塗布フィルムとポリ塩化ビニルフィルム(タキロンシーアイ社製、125μm)とを120℃、0.3MPa、1m/minの条件でロールラミネートを行い、塗布層をポリ塩化ビニルフィルムに転写させた。次いで、塗布層が転写されたポリ塩化ビニルフィルムとポリカーボネート基材(TP技研株式会社製、500μm)とを120℃、0.3MPa、1m/minの条件でロールラミネートを行い評価用積層体を得た。
【0049】
<密着性>
上記方法で得られた評価用積層体を10mm幅の試験片に切り取り、引っ張り試験機(島津製オートグラフAG-X plus)を用いて、25℃において引張速度50mm/minで180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
評価 ◎:剥離強度が10N/10mm以上
○:剥離強度が8N/10mm以上、10N/10mm未満
△:剥離強度が5N/10mm以上、8N/10mm未満
×:剥離強度が5N/10mm未満
【0050】
<耐熱密着性>
上記方法で得られた評価用積層体を10mm幅の試験片に切り取り、引っ張り試験機(島津製オートグラフAG-X plus)を用いて、80℃において引張速度50mm/minで180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
評価 ◎:剥離強度が3N/10mm以上
○:剥離強度が1.5N/10mm以上、3N/10mm未満
△:剥離強度が0.5N/10mm以上、1.5N/10mm未満
×:剥離強度が0.5N/10mm未満
【0051】
(合成例1)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製ポリカーボネートジオール)117.0g、2,2-ジメチロールプロピオン酸8.5g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート41.6g、とカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)4.2gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.13gを加え、メチルエチルケトン171.2gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で8時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン7.7gを添加、混合し、次いでイソプロピルアルコール40.0gを添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水429.6gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.19gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分29質量%のウレタン樹脂(PU-1)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0052】
(合成例2)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)117.0g、2,2-ジメチロールプロピオン酸8.5g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート41.6g、とカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)6.2gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.13gを加え、メチルエチルケトン173.1gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で8時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン7.7gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール40.4g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水434.0gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.31gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分30質量%のウレタン樹脂(PU-2)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0053】
(合成例3)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)111.6g、2,2-ジメチロールプロピオン酸9.2g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート41.6g、とカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)8.1gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.21gを加え、メチルエチルケトン170.4gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で8時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン8.3gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール39.8g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水427.7gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.41gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分28質量%のウレタン樹脂(PU-3)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0054】
(合成例4)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)140.0g、2,2-ジメチロールプロピオン酸8.1g、イソホロンジイソシアネート35.6g、とカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)4.2gを仕込み、触媒として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.036gを加え、メチルエチルケトン187.8gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で12時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン6.7gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール43.8g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水468.3gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.32gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分29質量%のウレタン樹脂(PU-4)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0055】
(合成例5)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)110.0g、2,2-ジメチロールプロピオン酸12.1g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート47.2gとカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)6.2gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.24gを加え、メチルエチルケトン175.5gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で10時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン10.9gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール41.0g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水439.5gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.31gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分29質量%のウレタン樹脂(PU-5)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0056】
(合成例6)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、P-1012(株式会社クラレ製、ポリエステルポリオール)111.6g、2,2-ジメチロールプロピオン酸9.2g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート41.6gとカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)7.0gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.21gを加え、メチルエチルケトン169.4gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で10時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン8.3gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール39.5g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水425.1gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.35gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分28質量%のウレタン樹脂(PU-6)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0057】
(合成例7)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)114.0g、2,2-ジメチロールプロピオン酸10.2g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート41.6gとカレンズAOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルアクリレート)5.4gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.21gを加え、メチルエチルケトン174.5gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で12時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン9.2gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール40.7g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水437.0gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.27gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分29質量%のウレタン樹脂(PU-7)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0058】
(合成例8)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)131.4g、2,2-ジメチロールプロピオン酸6.5g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート39.7gとカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)3.4gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.12gを加え、メチルエチルケトン181.0gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で12時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン5.9gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール42.2g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水452.2gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.15gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分29質量%のウレタン樹脂(PU-8)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0059】
(比較合成例1)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-50(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)120.0g、2,2-ジメチロールブタン酸11.9g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート200.2gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.60gを加え、メチルエチルケトン332.0gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、80℃で反応させたところ、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートがポリオールに対し大過剰であるため分子量が増大していき、重合溶液がゲル化したため、ウレタン樹脂(PU-9)を得ることができなかった。
【0060】
(比較合成例2)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製ポリカーボネートジオール)99.0g、2,2-ジメチロールプロピオン酸10.9g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート42.5gとカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)5.0gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.13gを加え、メチルエチルケトン169.8gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で10時間反応させた。次いで、過酸化ラウロイル0.25gを添加し、78℃で反応させたところ、分子量が増大していき、重合溶液がゲル化したため、ウレタン樹脂(PU-10)を得ることができなかった。
【0061】
(比較合成例3)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-100(宇部興産製ポリカーボネートジオール)115.2g、2,2-ジメチロールプロピオン酸8.7g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート45.3gとカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)0.56gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.14gを加え、メチルエチルケトン169.8gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で10時間反応させた。反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン7.9gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール39.6g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水426.2gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、過酸化ラウロイル0.03gを添加し、さらに78℃まで昇温後、2時間反応させた。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分29質量%のウレタン樹脂(PU-11)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0062】
(比較合成例4)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、ETERNACOLL UM-90(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)77.9g、PH-200(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)116.9g、2,2-ジメチロールブタン酸10.7g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート20.5gとカレンズMOI(昭和電工社製、2-イソシアネートエチルメタクリレート)2.9gを仕込み、触媒として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.02gを加え、メチルエチルケトン296.6gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、80℃で6時間反応させた後、過酸化ラウロイル0.13gを添加し、さらに80℃で5時間反応させた後、n-ブタノール2.9gを添加した。その後反応溶液を50℃まで冷却し、これにトリエチルアミン8.7gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール53.2g添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水564.2gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分28質量%のウレタン樹脂(PU-12)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0063】
(比較合成例5)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応容器に、PH-200(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)150.0g、PH-100(宇部興産製、ポリカーボネートジオール)62.5g、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.1g、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアナート64.9gを仕込み、触媒としてBiCAT8210(The Shepherd Chemical Company製、ビスマス系触媒)0.20gを加え、メチルエチルケトン292.5gに溶解した。その後、窒素気流下、撹拌しながら、78℃で16時間反応させた。反応溶液を40℃まで冷却し、これにトリエチルアミン13.7gを添加・混合し、次いでイソプロピルアルコール68.3gを添加し、均一となるまで攪拌した。その後強攪拌のもと50℃に熱した水712.5gを30分かけて滴下し、さらに30分攪拌した。その後、内温を100℃まで昇温しながら、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを留去し、40℃以下まで冷却することにより、不揮発分27質量%のウレタン樹脂(PU-13)水分散体を得た。得られたウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂の酸価、重量平均分子量、分子量分布および分子量が1.0×10以上の成分の面積比の測定結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
<実施例1~8、比較例1~5>
上記合成例および比較合成例で得られたウレタン樹脂について、上記した方法により水分散性、密着性および耐熱密着性の各評価を実施した。ただし比較合成例1および2のウレタン樹脂は、ウレタン樹脂溶液を得られなかったため、評価を実施できなかった。評価結果を表2に示した。
【0066】
<実施例9>
実施例1にて得られたウレタン樹脂水分散体30.0gに、架橋剤としてカルボジライトV-02(日清紡ケミカル製、カルボジイミド、不揮発分40質量%)を17.5g添加し、ウレタン樹脂水分散体樹脂組成物を得た。得られたウレタン樹脂水分散体組成物を用いて、上記した評価用積層体の作製方法により、評価用積層体を得た。得られた評価用積層体について、40℃で5日間のエージング処理を施した後に、耐熱密着性の評価を実施した。
【0067】
【表2】
【0068】
表2からわかるように、実施例1~8のウレタン樹脂では、水分散性、常温での密着性、耐熱密着性のいずれもが良好な評価結果を得られた。一方、比較例1(比較合成例1)は実施例1と同程度の分子量分布となるようにウレタン重合により高分子量化を行ったが、重合溶液がゲル化しウレタン樹脂を得られなかった。比較例2(比較合成例2)は実施例2と同程度の分子量が1.0×10以上の成分の面積比となるようにウレタン重合を行ったが、水分散化する前にラジカル重合を実施したために、重合溶液がゲル化しウレタン樹脂を得られなかった。比較例3は分子量が1.0×10以上の成分の面積比が低いため、樹脂の耐熱性が劣った。比較例4は重量平均分子量が低いために基材への密着性に劣り、それに伴い耐熱性が劣った。比較例5では重量平均分子量が低く、分子量分布も狭いため、基材への密着性および耐熱性のどちらもが劣った。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のウレタン樹脂は水分散性、基材への密着性、耐熱性に優れるため、フィルムコーティング剤や金属板コーティング剤、各種接着剤として有用である。