(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178839
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】眼内観察システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20231211BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20231211BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61B1/00 640
A61B1/00 R
A61B1/313
A61B1/045 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091776
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金澤 憲昭
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA26
4C161DD01
4C161JJ18
4C161WW14
4C161YY14
(57)【要約】
【課題】複数回の使用を想定した眼内内視鏡に対して使用が可能か否かを容易に判断することが可能な眼内観察システムを提供する。
【解決手段】眼内観察システム1は、眼内内視鏡10と、眼内内視鏡10の関連情報を記憶し且つ無線通信によって読み出し可能なRFIDタグ21を含み、連結索22を介して眼内内視鏡10に繋がるタグホルダ20と、制御装置30とを備える。制御装置30は、RFIDタグ21と無線通信を行う通信部34と、通信部34を介してRFIDタグ21から取得した関連情報の参照によって眼内内視鏡10の使用可能回数が1以上又は0であるかを判断する演算部31と、使用可能回数が1以上であると判断されたときは、眼内内視鏡10によって得られた観察像を示す画像信号を生成し、使用可能回数が0であると判断されたときは、眼内内視鏡10の使用不可を示す画像信号を生成する画像信号生成部33とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内内視鏡と、
前記眼内内視鏡の関連情報を記憶し且つ無線通信によって読み出し可能なRFIDタグを含み、連結索を介して前記眼内内視鏡に繋がるタグホルダと、
制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記RFIDタグと無線通信を行う通信部と、
前記通信部を介して前記RFIDタグから前記関連情報を取得すると共に、取得した前記関連情報の参照によって前記眼内内視鏡の使用可能回数が1以上又は0であるかを判断する演算部と、
前記使用可能回数が1以上であると判断されたときは、前記眼内内視鏡によって得られた観察像を示す画像信号を生成し、前記使用可能回数が0であると判断されたときは、前記眼内内視鏡の使用不可を示す画像信号を生成する画像信号生成部と
を含む眼内観察システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記使用可能回数が1以上であり且つ前記RFIDタグが連続した所定時間以上前記通信部と通信可能な状態に置かれていたと判断したときは、前記使用可能回数を1だけ減算し、前記通信部を介してその値を前記RFIDタグに書き込む
請求項1に記載の眼内観察システム。
【請求項3】
前記RFIDタグは、前記関連情報として前記使用可能回数を記憶する
請求項1に記載の眼内観察システム。
【請求項4】
前記RFIDタグは、前記関連情報として前記使用可能回数を記憶する
請求項2に記載の眼内観察システム。
【請求項5】
前記制御装置は記憶部を更に含み、
前記RFIDタグは、前記関連情報として前記眼内内視鏡の識別情報を記憶し、
前記記憶部は、前記眼内内視鏡の前記識別情報と、前記識別情報に関連付けられた前記使用可能回数とを記憶し、
前記演算部は、前記関連情報の参照として、前記記憶部に記憶された前記使用可能回数を参照する
請求項1に記載の眼内観察システム。
【請求項6】
前記演算部は、前記使用可能回数が1以上であり且つ前記RFIDタグが連続した所定時間以上前記通信部と通信可能な状態に置かれていたと判断したときは、前記記憶部に記憶された前記使用可能回数を1だけ減算する
請求項5に記載の眼内観察システム。
【請求項7】
前記使用可能回数を表示する表示部を更に備える
請求項1に記載の眼内観察システム。
【請求項8】
前記使用可能回数が0のとき、警報音を発する警報部を更に備える
請求項1に記載の眼内観察システム。
【請求項9】
前記タグホルダは、前記制御装置に設けられたソケットに係止可能に挿入されるプラグとして形成されている
請求項1~8のうちの何れか一項に記載の眼内観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、対物レンズ及び光ファイバ束を含む観察光学系を収容した挿入部と、挿入部を支持すると共に術者等の操作者によって把持される基部とを備えている。観察光学系に入射した観察像の光は、内視鏡に内蔵されたイメージファイバー及びイメージセンサによって受光され、画像信号に変換される。内視鏡と接続したコントローラは、画像信号をモニタが表示可能な映像信号に変換し、当該モニタに出力する。
【0003】
内視鏡の種類や数の増加に伴い、管理負担が大きくなる傾向がある。特許文献1が開示する内視鏡は、プロセッサに接続する内視鏡のコネクタに、RFID(Radio Frequency Identification:電波方式認識)タグが埋設されている。RFIDタグは、内視鏡の属性、機体識別番号、及び洗浄消毒の履歴などを記憶している。これらの情報は無線通信を用いてプロセッサに読み取られ、更に内視鏡を管理するデータベースに送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
眼科手術に用いられる眼内内視鏡は従来、手術の度に廃棄されてきた。これは、眼球に挿入される眼内内視鏡の挿入部が、直径0.4mm程度で長さが数cmと非常に細く且つ長いため、他の種類の内視鏡と比べて、手術時の操作やその後の殺菌消毒、洗浄等によって変形や摩耗が発生しやすいことが原因の1つである。しかしながら、変形や摩耗のある程度の進行は不可避ではあるものの、構成部品の質や機能の向上によって、許容される性能の範囲内で眼内内視鏡でも複数回の使用が可能となることが見込まれる。眼内内視鏡を複数回使用することができれば、手術費用を削減と医療廃棄物の削減に寄与することができる。なお、複数回使用の管理を眼内鏡システムで行うことができれば、医療従事者の管理工数の削減にも寄与することができる。
【0006】
本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであり、複数回の使用を想定した眼内内視鏡に対して使用が可能か否かを容易に判断することが可能な眼内観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る眼内観察システムは、眼内内視鏡と、前記眼内内視鏡の関連情報を記憶し且つ無線通信によって読み出し可能なRFIDタグを含み、連結索を介して前記眼内内視鏡に繋がるタグホルダと、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記RFIDタグと無線通信を行う通信部と、前記通信部を介して前記RFIDタグから前記関連情報を取得すると共に、取得した前記関連情報の参照によって前記眼内内視鏡の使用可能回数が1以上又は0であるかを判断する演算部と、前記使用可能回数が1以上であると判断されたときは、前記眼内内視鏡によって得られた観察像を示す画像信号を生成し、前記使用可能回数が0であると判断されたときは、前記眼内内視鏡の使用不可を示す画像信号を生成する画像信号生成部とを含む。
【0008】
前記演算部は、前記使用可能回数が1以上であり且つ前記RFIDタグが連続した所定時間以上前記通信部と通信可能な状態に置かれていたと判断したときは、前記使用可能回数を1だけ減算し、前記通信部を介してその値を前記RFIDタグに書き込んでもよい。
【0009】
前記RFIDタグは、前記関連情報として前記使用可能回数を記憶してもよい。
【0010】
前記制御装置は記憶部を更に含んでもよい。この場合、前記RFIDタグは、前記関連情報として前記眼内内視鏡の識別情報を記憶し、前記記憶部は、前記眼内内視鏡の前記識別情報と、前記識別情報に関連付けられた前記使用可能回数とを記憶し、前記演算部は、前記関連情報の参照として、前記記憶部に記憶された前記使用可能回数を参照してもよい。
【0011】
前記演算部は、前記使用可能回数が1以上であり且つ前記RFIDタグが連続した所定時間以上前記通信部と通信可能な状態に置かれていたと判断したときは、前記記憶部に記憶された前記使用可能回数を1だけ減算してもよい。
【0012】
前記眼内観察システムは前記使用可能回数を表示する表示部を更に備えてもよい。前記眼内観察システムは、前記使用可能回数が0のとき、警報音を発する警報部を更に備えてもよい。前記タグホルダは、前記制御装置に設けられたソケットに係止可能に挿入されるプラグとして形成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数回の使用を想定した眼内内視鏡に対して使用が可能か否かを容易に判断することが可能な眼内観察システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る眼内観察システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る眼内内視鏡の構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る眼内内視鏡の挿入部の断面図であり、(a)は
図2中のIIIA-IIIA断面図、(b)は
図2中のIIIB-IIIB断面図である。
【
図4】本実施形態に係るタグホルダの一例を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る眼内観察システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】使用不可を表示した画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。以下の説明において操作者とは、術者、助手、或いはその他の補助者などの本実施形態に係る眼内観察システムを使用する者を指す。
【0016】
本実施形態に係る眼内観察システムは、眼内内視鏡によって得られた観察像をモニタに表示させる装置である。また、本実施形態に係る眼内内視鏡は、洗浄及び消毒などの処理を経て再使用が可能な内視鏡である。但し、眼内内視鏡に対しては、使用できる回数が予め定められている。従って、その回数を超えた眼内内視鏡を使用した場合、眼内観察システムは観察像をモニタに表示させず、操作者に対して回数超過を通知する。このような動作により、操作者は、数回の使用を想定した眼内内視鏡に対して使用が可能か否かを容易に判断することができる。
【0017】
図1は、本実施形態に係る眼内観察システム1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、眼内観察システム1は、眼内内視鏡(Ophthalmic Endoscope)10と、RFIDタグ21を含むタグホルダ20と、制御装置30とを備える。
【0018】
まず眼内内視鏡10について説明する。
図2は、眼内内視鏡10の構成の一例を示す図である。
図3は、眼内内視鏡10の挿入部11の断面図であり、
図3(a)は
図2中のIIIA-IIIA断面図、
図3(b)は
図2中のIIIB-IIIB断面図である。
【0019】
眼内内視鏡10は、人間の眼球に挿入され、網膜等の眼底組織を観察する内視鏡である。
図2に示すように、眼内内視鏡10は、挿入部11と、基部12と、コード(ケーブル)13と、2つのプラグ14A、14Bとを備える。
【0020】
挿入部11は、眼球に挿入される管状の形状を有し、その外形を規定する外装管(外皮)15を含む。外装管15は中空の菅状部材であり、その内部に後述の観察光学系40等を収容する。外装管15の外径は、例えば0.4mm~0.9mm(即ち27G~20G)である。本実施形態に係る外装管15は、ステンレス鋼又はチタン等の金属で構成される。但し、外装管15の材料は、硬質プラスチック、金属、またはそれらの複合材料でもよい。
【0021】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、眼内内視鏡10は、外装管15の内部に収容される観察光学系40を備える。
図3(b)に示すように、観察光学系40は、対物レンズ41と、光ファイバ束42とを含む。対物レンズ41は、挿入部11の先端部11aに取り付けられ、観察対象からの反射光を光ファイバ束42に集光すると共に観測窓として機能する。対物レンズ41は、例えば、少なくとも1枚以上のGRINレンズ(GRadient Index Lens)、球面レンズ、非球面レンズである。
【0022】
観察光学系40の光ファイバ束42は、例えば数千本から数万本の光ファイバ43によって構成され、略円形の断面を有する。光ファイバ束42は、先端部11aからコード13を経由してプラグ14Aまで延伸し、対物レンズ41によって集光された光を制御装置30に伝送する。
【0023】
眼内内視鏡10は、外装管15の内部に収容される照明光学系45を備えてもよい。観察光学系40と同じく、照明光学系45も多数の光ファイバ47を含む光ファイバ束46によって構成される。照明光学系45の光ファイバ束46は、その中央部を切り欠いた扇形の断面を有し、外装管15の内周壁に沿って、当該内周壁と観察光学系40の光ファイバ束42との間に設けられる。観察光学系40は、先端部11aからコード13を経由してプラグ14Bまで延伸し、光源38から放出された光を先端部11aに伝送し、観察領域に照射する。なお、光源38は例えば制御装置30に内蔵されていてもよく(
図1参照)、制御装置30とは別の装置として設けられてもよい。
【0024】
基部12は、挿入部11よりも太い棒状部材であり、挿入部11を支持すると共に術者によって把持される把持部として機能する。延伸方向に沿った基部12の長さは、例えば40mm~60mmである。また、基部12の直径は、例えば5mm~15mmである。なお、本実施形態に係る基部12は、硬質プラスチックで構成される。但し、基部12の材質は、ステンレス鋼等の金属、当該金属と硬質プラスチックの複合材料でもよい。
【0025】
基部12は、上述した観察光学系40の光ファイバ束42及び照明光学系45の光ファイバ束46を収容すると共に、これらを当該基部12に接続されるコード13に導く。コード13は、観察光学系40の光ファイバ束42を収容するコード13aと、照明光学系45の光ファイバ束46を収容するコード13bに分岐する。
【0026】
コード13aの端部にはプラグ14Aが取り付けられ、プラグ14Aは制御装置30に設けられたソケット(図示せず)に挿入される。これにより、光ファイバ束42は、制御装置30に設けられたCCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサ35への光路と光学的に結合する。同様に、コード13bの端部にはプラグ14Bが取り付けられ、プラグ14Bは制御装置30に設けられたソケット(図示せず)に挿入される。これにより、光ファイバ束46は制御装置30に設けられた光源38からの光路と光学的に結合する。
【0027】
眼内内視鏡10は、洗浄及び消毒などの処理を経て再使用することができる。但し、使用できる回数は、耐久性等を考慮して予め定められている。この回数が後述する使用可能回数Nであり、例えばRFIDタグ21に記憶されている。
【0028】
次にタグホルダ20について説明する。
図1に示すように、タグホルダ20は、制御装置30の通信部34(後述)との無線通信によって読み出し可能なRFIDタグ21を含んでいる。換言すれば、タグホルダ20はRFIDタグ21を、その内部に収容(保持)している。
【0029】
タグホルダ20は連結索22を介して眼内内視鏡10に繋がっている。連結索22は、例えば、タグホルダ20の把持部23と眼内内視鏡10のプラグ14Aの間を連結している。連結索22は柔軟性をもつ単線、編線又は撚り線である。連結索22の材質は、金属、樹脂、及び天然素材の何れでもよい。また、連結索22は、直線的に形成されてもよく、伸縮性を向上させるために螺旋状に形成されてもよい。或いはその他の形状を有してもよい。連結索22を介した眼内内視鏡10との接続によって、RFIDタグ21をプラグ14A等に埋設する場合と比べ、プラグ14A等の大型化を避けることができる。
【0030】
図4は、本実施形態に係るタグホルダ20の一例を示す斜視図である。この図に示すように、タグホルダ20は、制御装置30のソケット39に挿入される円筒状のプラグとして形成されている。但し、タグホルダ20の形状は、制御装置30に一時的に保持される形状を有する限り任意である。例えばタグホルダ20は所定の厚みを有する矩形のカードのような形状でもよい。制御装置30側も上述のソケット39に限られず、タグホルダ20の形状に応じて、タグホルダ20を一時的に保持する機構を有する。
【0031】
タグホルダ20は、ソケット39に係止可能に挿入される。即ち、タグホルダ20はソケット39に挿入された後、タグホルダ20とソケット39に設けられた係止機構24によって、一時的に係止される。これにより、タグホルダ20がソケット39から意図せず抜けてしまうことが防止される。係止機構24は、例えばタグホルダ20に形成された溝25と、ソケット39の周壁に設けられたボールプランジャ26とによって構成される。タグホルダ20がソケット39内の所定の位置まで挿入されたとき、ボールプランジャ26のボールの一部が溝25に嵌る。これによりタグホルダ20がソケット39から抜け落ちることが防止される。
【0032】
RFIDタグ21は、アンテナと、当該アンテナを用いて制御装置30の通信部34(後述)と通信する通信部と、記憶部と、これらを制御する制御部とを有した周知の構成の電子タグである。RFIDタグ21は所謂パッシブタグであり、上述した眼内内視鏡10の関連情報を記憶している。RFIDタグ21は所謂アクティブタグでもよいが、タグホルダ20の小型化及び軽量化の観点からは、バッテリを必要としないパッシブタグが有利である。
【0033】
RFIDタグ21は、タグホルダ20がソケット39に適切に挿入された状態で、通信部34と無線通信が可能な位置に収容されている。このような位置は例えば
図4に示すような、タグホルダ20の先端側の部分である。通信部34と通信できる限り、タグホルダ20内におけるRFIDタグ21の位置は任意に設定できる。但し、何れの場合もタグホルダ20と通信部34と間の無線通信が行なえるよう、RFIDタグ21の周囲の部分は、非磁性の材質によって形成されている。
【0034】
RFIDタグ21は、眼内内視鏡10の関連情報として、眼内内視鏡10の使用可能回数Nを記憶する。使用可能回数Nは、眼内内視鏡10が使用できる現時点の回数(即ち残数)であり、その初期値(即ち最大値)は予め設定されている。関連情報は、通信部34を介して制御装置30の演算部31に送られる。
【0035】
次に制御装置30について説明する。
図1に示すように、制御装置30は、演算部31と、記憶部32と、画像信号生成部33と、通信部34を備える。演算部31はCPUを含む演算回路を備え、記憶部32に記憶されたプログラムを読み込んで種々の処理を実行すると共に各回路の制御を行う。記憶部32はRAM及びROM等のメモリで構成され、少なくとも演算部31が実行するプログラムを記憶する。また、演算部31は時間を計測するタイマ回路も備える。タイマ回路はタイマ素子を用いて構築されてもよく、ソフトウェアの実行により仮想的に構築されてもよい。
【0036】
画像信号生成部33は、アナログフロントエンド(AFE)及びデジタル信号プロセッサ(DSP)等を含む画像信号処理回路を備え、イメージセンサ35が出力した観察像の検出信号を当該観察像の画像信号に変換する。また、画像信号生成部33は、演算部31を介して記憶部32に記憶された画像データを受け取り、当該画像データに基づく画像の画像信号を生成することもできる。更に、画像信号生成部33は、観察像を示す画像信号をモニタ50に出力するインタフェース回路も備えている。
【0037】
通信部34は所謂RFIDリーダライタであり、アンテナ(又はコイル)及び送受信回路などを備え、RFIDタグ21との間で無線通信を行う。この無線通信はISO/IEC又はJIS等の規格で定められている近接無線通信(NFC)である。
【0038】
制御装置30は、回数表示部(表示部)36を備えてもよい。回数表示部36は7セグLED或いは液晶パネルなどで構成される表示回路である。回数表示部36は演算部31による制御に基づいて眼内内視鏡10の使用可能回数Nを表示する。なお、使用可能回数Nは、画像信号生成部33によって生成される画像信号によってモニタ50に表示されてもよい。この場合、回数表示部36は省略されてもよい。何れの場合も、眼内内視鏡10の残りの使用回数を直観的に理解することができる。
【0039】
制御装置30は、警報部37を備えてもよい。警報部37はスピーカ又はブザーなどの音波発生回路である。警報部37は使用可能回数Nがゼロのとき、演算部31による制御に基づいて警報音を発生する。音を用いた警告は、使用可能回数Nの表示よりも、操作者に注意を向けやすい。従って、操作者に対して眼内内視鏡10の交換を強く促すことができる。
【0040】
次に、眼内観察システム1による動作について説明する。
図5は、眼内観察システム1の動作を示すフローチャートである。眼内観察システム1の初期状態として、眼内内視鏡10が有する観察光学系のプラグ14A及び照明光学系のプラグ14Bは、制御装置30のソケットに既に挿入されている。一方、タグホルダ20はソケット39に挿入されてない。
【0041】
上述の状態で、まず演算部31が、通信部34によるRFIDタグ21へのデータ読み出しコマンド等の発信によって、RFIDタグ21の検出を試みる(ステップS11)。通信が確立されない間は(ステップS11においてNO)、下記ステップS12の処理と平行して、この発信を継続する。
【0042】
初期状態ではタグホルダ20がソケット39に挿入されておらず、通信部34はRFIDタグ21との通信が達成できていない。この初期状態が続く間、画像信号生成部33は画像信号の生成を開始しない(ステップS12)。或いは画像信号生成部33は、記憶部32に予め記憶されている画像データを用いて、タグホルダ20が未装着である旨を示す画像をモニタ50に表示してもよい。
【0043】
タグホルダ20がソケット39内の所定の位置まで挿入されると、通信部34とRFIDタグ21との通信(例えば読み出し)が確立される。この通信の確立によって、演算部31はRFIDタグ21が検出されたと判断する(ステップS11においてYES)。
【0044】
RFIDタグ21が検出された後、演算部31は通信部34を介して、眼内内視鏡10の関連情報の取得として、RFIDタグ21から眼内内視鏡10の使用可能回数Nを読み出す(ステップS13)。画像信号生成部33は、使用可能回数Nを示す画像信号をモニタ50に出力する(ステップS14)。回数表示部36が設けられる場合は、回数表示部36が使用可能回数Nを表示する。
【0045】
モニタ50又は回数表示部36に表示される値は、今回の手術を含む眼内内視鏡10の使用の残数である。この値は使用の累積回数ではないため、操作者は現在使用している眼内内視鏡10があと何回使用できるかを直ちに理解できる。
【0046】
次に、演算部31は、関連情報の参照として、RFIDタグ21から読み出された使用可能回数Nを参照し、これにより使用可能回数Nが1以上又は0であるかを判断する(ステップS15)。使用可能回数Nが1以上であると判断された場合(ステップS15でYES)、演算部31は、RFIDタグ21が連続した所定時間以上、通信部34と通信可能な状態に置かれていたか否かを判断する(ステップS16)。つまり、タグホルダ20が所定時間以上、ソケット39に所定の位置まで挿入されていたか否かが判断される。この判断は、例えば、通信部34とRFIDタグ21の間の継続的な通信時間が所定時間を経過したか否かを判断することによって遂行できる。なお、上述の所定時間は任意に設定でき、タグホルダ20の誤挿入に気が付くことを考慮すると例えば30秒程度である。
【0047】
RFIDタグ21が連続した所定時間以上、通信部34と通信可能な状態に置かれていないと判断されたとき(ステップS16でNO)、演算部31は、通信部34がRFIDタグ21と未だに通信可能どうかを確認する。即ち、RFIDタグ21が未だに検出されるか否かを判断する(ステップS17)。
【0048】
RFIDタグ21が未だに検出される場合(ステップS17でYES)、処理はステップS16に戻る。一方、RFIDタグ21が検出されない場合(ステップS17でNO)、演算部31は、タグホルダ20がソケット39から外れた、或いはソケット39内で所定の位置からずれたと判断し、一連の処理を終了する。これにより、使用可能回数Nの減算(ステップS18)がタグホルダ20の偶発的な挿入、脱落、あるいは位置ずれによって実行されてしまうことを防止できる。
【0049】
RFIDタグ21が連続した所定時間以上、通信部34と通信可能な状態に置かれていたと判断されたとき(ステップS16でYES)、演算部31は使用可能回数Nを1だけ減算し(ステップS18)、通信部34を介して、その値(=N-1)をRFIDタグ21に書き込む(ステップS19)。つまり、RFIDタグ21に記憶されていた使用可能回数Nが、使用可能回数Nから1だけ減算した値に更新される。
【0050】
使用可能回数Nの更新後、画像信号生成部33は、観察像を示す画像信号をモニタ50に出力する(ステップS20)。これにより、操作者は、モニタ50に表示された観察像を視認することができる。
【0051】
ステップS15に戻り、使用可能回数Nが1以上でない、即ち、使用可能回数Nが0であると判断された場合(ステップS15でNO)、画像信号生成部33は、眼内内視鏡10の使用不可を示す画像信号を生成し、モニタ50に出力する(ステップS21)。
図6は、使用不可を示す画像信号に基づいてモニタ50に表示される画像の例を示す図である。これにより、操作者は、現時点で制御装置30に接続した眼内内視鏡10が使用回数を超過し、使用不可であることを認識することができる。つまり本実施形態によれば、複数回の使用を想定した眼内内視鏡に対して使用が可能か否かを容易に判断することが可能な眼内観察システムを提供することができる。また、操作者に対して、使用不可と判定された眼内内視鏡10の交換を促すことができる。
【0052】
モニタ50には本来、観察像が表示される。従って、操作者(特に術者)はモニタ50に注目していることが多い。そのモニタ50に眼内内視鏡10の使用不可を示す画像が表示されるため、眼内観察システム1の故障ではなく、眼内内視鏡10が使用不可であることが直ちに理解できる。
【0053】
なお、警報部37が設けられている場合、ステップS21における画僧表示と共に、警報部37から警報音が出力されてもよい(ステップS22)。操作者が回数表示部36又はモニタ50に表示されている使用可能回数Nを見落としている場合、或いは操作者が回数表示部36又はモニタ50が見えない場所にいる場合でも、音を用いた通知によって眼内内視鏡10が使用不可であることが直ちに理解できる。
【0054】
なお、RFIDタグ21に記憶され、演算部31によって参照される眼内内視鏡10の関連情報は、当該眼内内視鏡10の使用可能回数Nを特定するための情報でもよい。このような情報は、例えば眼内内視鏡10に与えられた固有の識別情報である。識別情報は例えば、眼内内視鏡10に与えられた固有の文字、数字、記号、又はこれらのうちの少なくとも2つの組み合わせなどが挙げられる。つまり、この識別情報は、使用可能回数Nを特定するための、換言すれば使用可能回数Nを参照するための間接的な情報として機能する。
【0055】
RFIDタグ21に、関連情報として眼内内視鏡10の識別情報が記憶される場合、これに関連して制御装置30の記憶部32は、この識別情報に関連付けられた使用可能回数Nを記憶する。この場合、ステップS13において、演算部31は通信部34を介して、眼内内視鏡10の使用可能回数Nの代わりに、眼内内視鏡10の識別情報をRFIDタグ21から読み出す(ステップS13´)。また、ステップS19において、演算部31は使用可能回数Nを1だけ減算した値(=N-1)を記憶部32に書き込む(ステップS19´)。つまり、ステップS19´では、記憶部32に記憶されていた使用可能回数Nが、使用可能回数Nから1だけ減算した値に更新される。
【0056】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0057】
1…眼内観察システム、10…眼内内視鏡、11…挿入部、11a…先端部、12…基部、13…コード、14A…プラグ、14B…プラグ、15…外装管、20…タグホルダ、21…RFIDタグ、22…連結索、23…把持部、24…係止機構、25…溝、26…ボールプランジャ、30…制御装置、31…演算部、32…記憶部、33…画像信号生成部、34…通信部、35…イメージセンサ、36…回数表示部、37…警報部、38…光源、39…ソケット、40…観察光学系、41…対物レンズ、42…光ファイバ束、43…光ファイバ、45…照明光学系、46…光ファイバ束、47…光ファイバ、50…モニタ