IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178842
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電子部品および電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20231211BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20231211BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231211BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01L27/04 L
H01F27/00 S
H01F41/04 C
H01F17/00 C
H01L27/04 P
H01L27/04 C
H01L27/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091780
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】冨永 隆一朗
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】中磯 俊幸
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
5F038
【Fターム(参考)】
5E062FF01
5E070AA01
5E070AA05
5E070AB03
5E070CB13
5E070DB08
5F038AC05
5F038AC15
5F038AR01
5F038AR07
5F038AV04
5F038AZ04
5F038BH03
5F038CA16
5F038CD18
(57)【要約】
【課題】渦電流による損失を低減することができる電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品は、主面を有し、半導体材料を含む半導体基板と、
前記主面上に設けられ、導電材料からなるコイルと、を備え、
前記半導体基板は、前記半導体材料からなる半導体より電気抵抗が低い低抵抗部を含み、
前記コイルは、前記低抵抗部と電気的に接続しており、前記コイルの軸方向は、前記主面と平行である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有し、半導体材料を含む半導体基板と、
前記主面上に設けられ、導電材料からなるコイルと、を備え、
前記半導体基板は、前記半導体材料からなる半導体より電気抵抗が低い低抵抗部を含み、
前記コイルは、前記低抵抗部と電気的に接続しており、前記コイルの軸方向は、前記主面と平行である、電子部品。
【請求項2】
有機絶縁材料からなる有機絶縁層と、無機絶縁材料からなる無機絶縁層と、をさらに備える、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記無機絶縁層は、前記半導体基板と前記コイルとの間に少なくとも位置する、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記有機絶縁層は、前記コイルの隣り合うターン間と、前記コイルの内径部分と、の少なくとも一方に位置する、請求項2または3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記コイルに電気的に接続され、前記主面に平行な平面に沿って設けられた第1外部端子をさらに備える、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項6】
前記主面に直交する方向からみて、前記第1外部端子は、前記主面の外縁よりも内側に位置する、請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記低抵抗部は、前記半導体基板の外面の少なくとも一部から露出し、
前記外面のうちの前記低抵抗部が露出した部分に設けられ、前記低抵抗部に接続している第2外部端子をさらに備える、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項8】
前記第2外部端子は、前記主面に平行な平面に沿って設けられている、請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記主面に直交する方向からみて、前記第2外部端子は、前記主面の外縁よりも内側に位置する、請求項7に記載の電子部品。
【請求項10】
前記コイルは、前記主面に沿って延在する第1インダクタ配線と、前記主面に沿って延在し、前記第1インダクタ配線に電気的に接続された第2インダクタ配線と、を含み、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とは、前記主面に直交する方向に並んで配置され、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線との間の前記主面に直交する方向の距離は、前記第1インダクタ配線の前記主面に直交する方向の厚みよりも小さい、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項11】
前記コイルは、前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とを接続する接続配線をさらに含み、
前記接続配線は、前記主面に直交する方向に延在している、請求項10に記載の電子部品。
【請求項12】
前記半導体基板の全体が、前記低抵抗部である、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項13】
前記低抵抗部は、前記主面の少なくとも一部から露出し、
前記低抵抗部上に設けられた誘電部と、前記誘電部上に設けられた電極部と、をさらに備え、
前記低抵抗部と、前記誘電部と、前記電極部と、により、キャパシタ素子が構成されている、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項14】
前記コイルは、前記主面に沿って延在する第1インダクタ配線と、前記主面に沿って延在し、前記第1インダクタ配線に電気的に接続された第2インダクタ配線と、を含み、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とは、前記主面に直交する方向に並んで配置され、
前記電極部の前記主面に直交する方向の厚みは、前記第1インダクタ配線の前記主面に直交する方向の厚みよりも小さい、請求項13に記載の電子部品。
【請求項15】
前記半導体基板の一部が、前記低抵抗部であり、
前記半導体基板は、前記低抵抗部以外の領域にダイオード素子を含む、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項16】
前記導電材料と同一の導電材料からなり、前記コイルとは電気的に独立している配線部をさらに備える、請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品。
【請求項17】
請求項1から3の何れか1つに記載の電子部品の製造方法であって、
前記半導体基板に前記低抵抗部を形成する工程と、
前記低抵抗部を形成した後に、前記コイルを形成する工程と、を備える、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品および電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としては、特開2020-145475号公報(特許文献1)に記載されたものがある。電子部品は、互いに対向する第1面および第2面を有する基板と、第1面に薄膜プロセスで形成されたキャパシタ素子と、第2面に形成されたコイルと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-145475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、薄膜プロセスでキャパシタ素子を形成する場合、基板を薄膜プロセスに親和性の高い半導体基板とすることが考えられる。しかしながら、特許文献1の電子部品では、コイルの軸が基板の主面に直交しており、コイルにより発生する磁束は基板を通過する。電気抵抗が比較的低い半導体基板である場合、通過する磁束により基板に発生する渦電流が大きくなり、損失が大きくなる。特に、半導体基板に不純物ドーピングなどにより低抵抗部を形成している場合は、さらに損失が大きくなる。
【0005】
そこで、本開示は、渦電流による損失を低減することができる電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である電子部品は、
主面を有し、半導体材料を含む半導体基板と、
前記主面上に設けられ、導電材料からなるコイルと、を備え、
前記半導体基板は、前記半導体材料からなる半導体より電気抵抗が低い低抵抗部を含み、
前記コイルは、前記低抵抗部と電気的に接続しており、前記コイルの軸方向は、前記主面と平行である。
【0007】
ここで、半導体材料とは、例えば、SiなどのIV族元素からなる単体半導体、GaAs、SiC、GaN、InPなどのIII族またはV族化合物からなる半導体、ITOなどの酸化物半導体などである。
【0008】
前記態様によれば、コイルの軸方向は、主面と平行であるため、コイルにより発生する磁束が基板を通過する割合を低減できる。したがって、電子部品が半導体材料を含み、かつ低抵抗部を含む半導体基板を備えていても、渦電流による損失を低減することができる。
【0009】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
有機絶縁材料からなる有機絶縁層と、無機絶縁材料からなる無機絶縁層と、をさらに備える。
【0010】
前記実施形態によれば、有機絶縁層と無機絶縁層を備えるため、電子部品の設計自由度が向上する。
【0011】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記無機絶縁層は、前記半導体基板と前記コイルとの間に少なくとも位置する。
【0012】
前記実施形態によれば、半導体基板とコイルとの間に位置する絶縁層の厚みを薄くすることができる。
【0013】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記有機絶縁層は、前記コイルの隣り合うターン間と、前記コイルの内径部分と、の少なくとも一方に位置する。
【0014】
前記実施形態によれば、コイルの外形の凹凸を有機絶縁層で埋めることがきるため、電子部品の外表面を平坦にすることができる。
【0015】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記コイルに電気的に接続され、前記主面に平行な平面に沿って設けられた第1外部端子をさらに備える。
【0016】
前記実施形態によれば、マザーボード基板やパッケージ基板などに容易に電子部品を実装できる。
【0017】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記主面に直交する方向からみて、前記第1外部端子は、前記主面の外縁よりも内側に位置する。
【0018】
前記実施形態によれば、電子部品に個片化する際に、切断刃が第1外部端子に接触することを抑制できるため、第1外部端子の変形やバリの発生を抑制できる。
【0019】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記低抵抗部は、前記半導体基板の外面の少なくとも一部から露出し、
前記外面のうちの前記低抵抗部が露出した部分に設けられ、前記低抵抗部に接続している第2外部端子をさらに備える。
【0020】
前記実施形態によれば、低抵抗部と第2外部端子とを合わせてコイルの外部端子とすることができるため、第2外部端子が設けられていない場合と比較して、コイルの外部端子の電気抵抗を低減できる。
【0021】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記第2外部端子は、前記主面に平行な平面に沿って設けられている。
【0022】
前記実施形態によれば、マザーボード基板やパッケージ基板などに容易に電子部品を実装できる。
【0023】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記主面に直交する方向からみて、前記第2外部端子は、前記主面の外縁よりも内側に位置する。
【0024】
前記実施形態によれば、電子部品に個片化する際に、切断刃が第2外部端子に接触することを抑制できるため、第2外部端子の変形やバリの発生を抑制できる。
【0025】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記コイルは、前記主面に沿って延在する第1インダクタ配線と、前記主面に沿って延在し、前記第1インダクタ配線に電気的に接続された第2インダクタ配線と、を含み、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とは、前記主面に直交する方向に並んで配置され、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線との間の前記主面に直交する方向の距離は、前記第1インダクタ配線の前記主面に直交する方向の厚みよりも小さい。
【0026】
前記実施形態によれば、前記主面に直交する方向の電子部品の厚みを小さくできるため、電子部品をより小型化できる。
【0027】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記コイルは、前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とを接続する接続配線をさらに含み、
前記接続配線は、前記主面に直交する方向に延在している。
【0028】
前記実施形態によれば、電子部品は、第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とを接続する接続配線をさらに含む。ここで、接続配線の延在方向の長さを長くすると、コイルの内磁路の体積を増大させることができるため、コイルのQ値を高めることができる。しかし、接続配線の延在方向の長さを長くすると、コイルの電気抵抗も増大する。前記実施形態によれば、接続配線は、主面に直交する方向に延在しているため、第1インダクタ配線と第2インダクタ配線とを最短距離で接続することができる。そのため、接続配線の延在方向の長さを長くした場合でも、コイルの電気抵抗の増大を抑制しつつ、コイルの内磁路の体積を増大させることができる。その結果、コイルのQ値を高めることができる。
【0029】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記半導体基板の全体が、前記低抵抗部である。
【0030】
前記実施形態によれば、電子部品の電気抵抗を低くできる。
【0031】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記低抵抗部は、前記主面の少なくとも一部から露出し、
前記低抵抗部上に設けられた誘電部と、前記誘電部上に設けられた電極部と、をさらに備え、
前記低抵抗部と、前記誘電部と、前記電極部と、により、キャパシタ素子が構成されている。
【0032】
前記実施形態によれば、キャパシタ素子がさらに設けられているため、LCフィルタのような複合電子部品を得ることができる。
【0033】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記コイルは、前記主面に沿って延在する第1インダクタ配線と、前記主面に沿って延在し、前記第1インダクタ配線に電気的に接続された第2インダクタ配線と、を含み、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とは、前記主面に直交する方向に並んで配置され、
前記電極部の前記主面に直交する方向の厚みは、前記第1インダクタ配線の前記主面に直交する方向の厚みよりも小さい。
【0034】
前記実施形態によれば、キャパシタ素子がさらに設けられている場合でも、小型な電子部品を得ることができる。
【0035】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記半導体基板の一部が、前記低抵抗部であり、
前記半導体基板は、前記低抵抗部以外の領域にダイオード素子を含む。
【0036】
前記実施形態によれば、ダイオード素子を含む電子部品を得ることができる。
【0037】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
前記コイルを構成する導電材料と同一の導電材料からなり、前記コイルとは電気的に独立している配線部をさらに備える。
【0038】
前記実施形態によれば、配線部により、コイルとは独立した素子を形成することができる。
【0039】
好ましくは、前記電子部品の製造方法の一実施形態では、
前記半導体基板に前記低抵抗部を形成する工程と、
前記低抵抗部を形成した後に、前記コイルを形成する工程と、を備える。
【0040】
前記実施形態によれば、熱負荷の高い低抵抗部を形成する工程を、コイルを形成する工程の前に行うため、コイルに不要な熱負荷を与えない。これにより、品質を向上できる電子部品を製造することができる。また、コイルを形成する際に、熱に弱い有機材料などを用いることができ、設計自由度が向上する。
【発明の効果】
【0041】
本開示の一態様である電子部品によれば、渦電流による損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】電子部品の第1実施形態を示す平面図である。
図2A図1のA-A断面図である。
図2B図1のB-B断面図である。
図3A】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3B】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3C】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3D】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3E】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3F】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3G】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3H】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3I】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3J】電子部品の製法を説明する説明図である。
図3K】電子部品の製法を説明する説明図である。
図4】電子部品の第2実施形態を示す平面図である。
図5図4のA-A断面図である。
図6】電子部品の第3実施形態を示す断面図である。
図7】電子部品の第4実施形態を示す平面図である。
図8A図7のA-A断面図である。
図8B図7のB-B断面図である。
図9A】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9B】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9C】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9D】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9E】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9F】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9G】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9H】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9I】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9J】電子部品の製法を説明する説明図である。
図9K】電子部品の製法を説明する説明図である。
図10】電子部品の第5実施形態を示す断面図である。
図11】電子部品の第6実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本開示の一態様である電子部品および電子部品の製造方法を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0044】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、電子部品の第1実施形態を示す平面図である。図2Aは、図1のA-A断面図である。図2Bは、図1のB-B断面図である。
【0045】
図1図2Aおよび図2Bに示すように、電子部品1は、主面21fを有し、半導体材料を含む半導体基板21と、主面21f上に設けられた絶縁層22と、絶縁層22内であって主面21f上に設けられ、導体材料からなるコイル10と、絶縁層22の上面に設けられた第1外部端子41および第1ダミー外部端子61と、半導体基板21の下面に設けられた第2外部端子42と、を備える。図3では、便宜上、第1外部端子41および第1ダミー外部端子61を二点鎖線で示している。
【0046】
図中、電子部品1の厚み方向をZ方向とし、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。電子部品1のZ方向に直交する平面において、電子部品1の長さ方向をX方向とし、電子部品1の幅方向をY方向とする。また、「主面上」とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、当該主面を境界とする基板の外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「主面上」とは主面の向きによって定まる相対的な方向である。また、ある要素に対して「上」には、当該要素と接する直上の位置(on)だけではなく、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置(above)も含む。
【0047】
半導体基板21は、例えば、Siなどの単体半導体、GaAs、SiC、GaN、InPなどの化合物半導体、ITOなどの酸化物半導体などの半導体材料を含む。半導体基板21は、Siを含むことが好ましい。半導体基板21の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体状である。主面21fは、半導体基板21の外面を構成する6面のうち、順Z方向側を向く面である。
【0048】
半導体基板21は、少なくとも一部に、上記の半導体材料を含み、かつ半導体材料からなる半導体、例えば、Si、GaAs、SiC、GaN、InP、ITOよりも電気抵抗が低い低抵抗部211を含む。本実施形態では、半導体基板21の全体が、低抵抗部211である。これにより、電子部品1の電気抵抗を低くできる。
【0049】
半導体基板21が半導体材料として例えばSiを含む場合、低抵抗部211は、PやBをドープされたSiであり、半導体基板21が半導体材料として例えばGaAsを含む場合、低抵抗部211は、SiやSn、S、Se、Te、Be、Zn、GeをドープされたGaAsである。
【0050】
「低抵抗」とは、電気抵抗率が10-1Ω・cm以下であることを意味する。これにより、低抵抗部211の電気抵抗が十分に低くなり、電流の大部分を低抵抗部211に流すことができる。例えば、半導体基板21がSi基板の場合、Si基板の電気抵抗率は10Ω・cm程度である。低抵抗部211の電気抵抗率が、半導体基板21のうちの低抵抗部211以外の部分の電気抵抗率の1/1000倍以下であれば、電流の大部分を低抵抗部211に流すことができる。そのため、低抵抗部211の電気抵抗率を10-1Ω・cm以下としている。低抵抗部211の電気抵抗率は、例えば、次のように算出できる。まず、低抵抗部211の両端に測定用プローブを接触させて4端子法で直流電気抵抗を測定する。次に、測定した電気抵抗を低抵抗部211の断面積、例えばリンやボロンをドープしたSiの断面積と掛け、低抵抗部211の両端までの長さで割ることで電気抵抗率を測定することができる。なお、ドープした断面積は、低抵抗部211を横断する断面を露出させ、エネルギー分散型X線分析(EDX)にて元素マッピングすることで算出できる。具体的に述べると、元素マッピングにおいて、ドープ量のピーク値に対し、その3割となる領域までの範囲の面積をドープした断面積とすればよい。
【0051】
低抵抗部211は、半導体基板21に不純物をドーピングし、高濃度不純物領域(言い換えると、ドープ層)を形成することで得ることができる。すなわち、低抵抗部211は、半導体基板21が含む半導体材料を含有し、半導体材料からなる半導体より電気抵抗が低く、かつ、半導体基板21と一体化している。半導体基板21がSi基板の場合、1×1020/cm程度のIII族もしくはV族の不純物ドープを行うことが好ましい。これにより、低抵抗部211の電気抵抗率は、V族不純物のリンのドープであれば10-3Ω・cm程度、III族不純物のボロンのドープであれば5×10-3Ω・cm程度となる。
【0052】
絶縁層22は、外部環境からコイル10を保護する。絶縁層22は、主面21f上に設けられた第1層絶縁層221と、第1層絶縁層221上に設けられた第2層絶縁層222と、を含む。絶縁層22は、コイル10の少なくとも一部に接触する。これにより、コイル10のリーク電流を抑制し、Q値を高めることができる。本実施形態では、絶縁層22は、コイル10の外面の全面に接触している。
【0053】
第1層絶縁層221は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの無機絶縁材料からなる無機絶縁層であることが好ましい。第1層絶縁層221は、半導体基板21が例えばシリコン基板の場合、半導体基板21を熱酸化して形成される熱酸化シリコン(SiO)であることが好ましい。ただし、これに限られず、半導体基板21の主面21f上にスパッタ法や蒸着法などの薄膜法でシリコン酸化膜を形成してもよい。第1層絶縁層221には、コイル10と、低抵抗部211と、の接続部分に開口部221aが設けられている。好ましくは、第1層絶縁層221は、半導体基板21とコイル10との間に少なくとも位置している。これにより、半導体基板21とコイル10との間に位置する絶縁層の厚みを薄くすることができる。
【0054】
第1層絶縁層221の厚みは、特に限定されないが、例えば1μmである。なお、第1層絶縁層221の構成材料は、上記に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマーやこれらの組み合わせなどの有機絶縁材料や、ガラスやアルミナなどの焼結体などで構成されていてもよいし、無機絶縁材料と有機絶縁材料とが組み合わされていてもよい。
【0055】
第2層絶縁層222は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマーやこれらの組み合わせなどの有機絶縁材料からなる有機絶縁層であることが好ましい。第2層絶縁層222には、第1外部端子41とコイル10との接続部分に開口部222aが設けられている。好ましくは、第2層絶縁層222は、コイル10の隣り合うターン間と、コイル10の内径部分と、の少なくとも一方に位置している。これにより、コイル10外形の凹凸を有機絶縁材料で埋めることがきるため、電子部品1の外表面を平坦にすることができる。
【0056】
第2層絶縁層222の厚みは、特に限定されないが、例えば10μmである。なお、第2層絶縁層222の構成材料は、上記に限定されず、例えば、ガラスやアルミナなどの焼結体、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの無機絶縁材料の薄膜などであってもよいし、無機絶縁材料と有機絶縁材料とが組み合わされていてもよい。
【0057】
コイル10は、第1インダクタ配線11と、第2インダクタ配線12と、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とを接続する複数の第1接続配線51と、を含む。
【0058】
第1インダクタ配線11は、主面21fに沿って延在している。第1インダクタ配線11は、複数存在している。具体的に述べると、第1インダクタ配線11は、第1端部11aから第2端部11bに向かって、逆Y方向に直線状に延在している。第1インダクタ配線11の下面は、第1層絶縁層221の上面に接触している。複数の第1インダクタ配線11は、X方向に沿って平行に配置されている。最も順X方向側に位置する第1インダクタ配線11の第2端部11bは、第2接続配線52を介して、低抵抗部211に電気的に接続されている。これにより、コイル10は、低抵抗部211に電気的に接続される。第2接続配線52は、第1層絶縁層221の開口部221aに設けられ、第1層絶縁層221を貫通するビア配線である。
【0059】
第1インダクタ配線11の導電材料は、例えばAu,Ag,Ni,Cu,Alまたはこれらを含む合金や化合物などであることが好ましい。第1インダクタ配線11の導電材料は、導電率の低いCuであることがより好ましい。なお、第1インダクタ配線11は、シード層と電解めっき層との多層構成であってもよく、シード層として、TiやNiを含んでいてもよい。
【0060】
第2インダクタ配線12は、主面21fに沿って延在している。第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とは、主面21fに直交する方向(Z方向)に並んで配置されている。具体的に述べると、第2インダクタ配線12は、第1インダクタ配線11よりも順Z方向側に配置されている。第2インダクタ配線12は、第1インダクタ配線11と電気的に接続されている。第2インダクタ配線12は、複数の本体配線部121とパッド部122とを有する。第2インダクタ配線12の導電材料は、第1インダクタ配線11と同一であることが好ましい。
【0061】
本体配線部121は、第1端部121aから第2端部121bに向かって、ややX方向に傾いて逆Y方向に直線状に延在している。複数の本体配線部121は、X方向に沿って平行に配置されている。パッド部122は、Y方向に直線状に延在している。パッド部122は、本体配線部121よりも幅広に形成されている。パッド部122は、最も逆X方向側に位置する本体配線部121の第2端部121bに接続されている。本体配線部121の第1端部121aは、第1接続配線51を介して、第1インダクタ配線11の第1端部11aに接続されている。第1接続配線51は、第2層絶縁層222内に設けられたビア配線である。本体配線部121の第2端部121bは、第1接続配線51を介して、第1インダクタ配線11の第2端部11bに接続されている。以上の構成により、第1インダクタ配線11と第1接続配線51と本体配線部121とが、この順に接続されることにより、弦巻螺旋状のコイル10が構成される。なお、コイル10は渦巻螺旋状や蛇行形状、直線形状などであってもよい。さらに、コイル10はこれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0062】
本実施形態では、コイル10の軸方向CAは、半導体基板21の主面21fに平行である。コイルの軸方向とは、コイルが巻き回される螺旋の巻回軸に沿った方向を指す。これにより、コイル10により発生する磁束が、半導体材料を含む半導体基板21、より具体的には低抵抗部211を通過する割合を低減できる。したがって、電子部品1が、半導体材料を含み、かつ低抵抗部211を含む半導体基板21を備えていても、渦電流による損失を低減することができる。特に、コイル10に高周波信号が流れる場合でもコイル10のQ値の低下が低くなり、高周波用インダクタとして適切な構成とできる。なお、第2インダクタ配線12は、シード層と電解めっき層との多層構成であってもよく、シード層として、TiやNiを含んでいてもよい。
【0063】
第1外部端子41は、導電性材料からなり、例えば、NiおよびAuがこの順に積層された2層構成である。第1外部端子41の構成は、特に限定されず、例えばCu、NiおよびAuがこの順に積層された3層構成であってもよいし、必要に応じてバリア層としてPd層を含んでもよいし、外表面にSnめっきがされていてもよい。さらに、第1外部端子41は、外表面がソルダーレジストで保護されていてもよい。
【0064】
第1外部端子41は、第3接続配線53を介して、第2インダクタ配線12のパッド部122に電気的に接続されている。第3接続配線53は、第2層絶縁層222の開口部222aに設けられたビア配線である。第1外部端子41の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、Z方向からみて矩形状である。Z方向からみて、第1外部端子41は、半導体基板21の中央よりも逆X方向側に配置されている。本実施形態では、第1外部端子41は、コイル10に電気的に接続され、主面21fに平行な平面に沿って設けられている。これにより、マザーボード基板やパッケージ基板などに容易に電子部品1を実装できる。
【0065】
第1ダミー外部端子61は、第1外部端子41と同じ導電性材料から構成されていることが好ましい。第1ダミー外部端子61は、電気的に独立している。言い換えると、第1ダミー外部端子61は、コイル10と電気的に接続されていない。第1ダミー外部端子61の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、Z方向からみて矩形状である。Z方向からみて、第1ダミー外部端子61は、半導体基板21の中央よりも順X方向側に配置されている。第1ダミー外部端子61を設けることにより、マザーボードなどに電子部品1を実装する際に、第1外部端子41のみならず、第1ダミー外部端子61も半田などを介してマザーボードなどに固定できる。そのため、電子部品1の姿勢が安定し、電子部品1を容易にマザーボードなどに固定できる。
【0066】
第2外部端子42は、導電性材料からなり、例えば、Al、Cu、Ni、Ti、Auおよびこれらの組み合わせからなっていることが好ましい。また、スパッタ法でNi層を形成し、熱処理することにより、シリサイド化されていてもよい。これにより、第2外部端子42の電気抵抗をさらに低くすることができる。第2外部端子42は、金属からなることが好ましい。第2外部端子42は、低抵抗部211よりも電気抵抗率が低いことが好ましい。
【0067】
第2外部端子42の形状および配置は、特に限定されない。本実施形態では、第2外部端子42は、半導体基板21の下面の全面に設けられている。また、第2外部端子42は、主面21fに平行な平面に沿って設けられている。これにより、マザーボード基板やパッケージ基板などに容易に電子部品1を実装できる。第2外部端子42は、低抵抗部211に接続している。第2外部端子42が設けられていることにより、低抵抗部211と第2外部端子42とを合わせてコイル10の外部端子とすることができるため、第2外部端子42が設けられていない場合と比較して、コイル10の外部端子の電気抵抗を低減できる。なお、第2外部端子42は、必須の構成ではなく、電子部品1に設けられていなくてもよい。例えば、第2外部端子42を設けない場合、第1ダミー外部端子61をコイル10と電気的に接続し、第2外部端子としてもよい。
【0068】
電子部品1によれば、コイル10の軸方向CAが主面21fと平行であるため、コイル10により発生する磁束が半導体基板21を通過する割合を低減できる。したがって、電子部品1が、半導体材料を含みかつ低抵抗部211を含む半導体基板21を備えていても、渦電流による損失を低減することができる。電子部品1のサイズの一例としては、0.4mm(長さ)×0.2mm(幅)×95μm(厚み)である。
【0069】
好ましくは、主面21fに直交する方向からみて、絶縁層22は、半導体基板21の外縁よりも内側に位置する。この構成によれば、電子部品1に個片化する際に、絶縁層22が切断刃に接触することを抑制できるため、切断刃への樹脂詰まりなどを抑制できる。そのため、容易に電子部品1に個片化できる。
【0070】
好ましくは、有機絶縁材料からなる有機絶縁層と、無機絶縁材料からなる無機絶縁層と、をさらに備える。本実施形態において具体的に説明すると、第1層絶縁層221が無機絶縁層であり、第2層絶縁層222が有機絶縁層である。この構成によれば、有機絶縁層と無機絶縁層を備えるため、電子部品1の設計自由度が向上する。
【0071】
好ましくは、低抵抗部211は、半導体基板21の外面の少なくとも一部から露出し、第2外部端子42は、当該外面のうちの低抵抗部211が露出した部分に設けられ、低抵抗部211に接続している。この構成によれば、低抵抗部211と第2外部端子42とを合わせてコイル10の外部端子とすることができるため、第2外部端子42が設けられていない場合と比較して、コイル10の外部端子の電気抵抗を低減できる。
【0072】
好ましくは、コイル10は、主面21fに沿って延在する第1インダクタ配線11と、主面21fに沿って延在し、第1インダクタ配線11に電気的に接続された第2インダクタ配線12と、を含み、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とは、主面21fに直交する方向に並んで配置され、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12との間の主面21fに直交する方向の距離は、第1インダクタ配線11の主面21fに直交する方向の厚みよりも小さい。
【0073】
具体的に述べると、図2Bに示すように、好ましくは、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12との間の主面21fに直交する方向(Z方向)の距離L1は、第1インダクタ配線11の主面21fに直交する方向の厚みt1よりも小さい。この構成によれば、主面に直交する方向の電子部品1の厚みを小さくできるため、電子部品1をより小型化できる。
【0074】
(製造方法)
次に、図3Aから図3Kを参照して、電子部品1の製造方法について説明する。図3Aから図3Eは、図1のA-A断面(図2A)に対応し、図3Fから図3Kは、図1のB-B断面(図2B)に対応する。
【0075】
図3Aに示すように、少なくとも一部に低抵抗部211を含む半導体基板21aを準備する。本実施形態では、半導体基板21aの全体が、低抵抗部211である。以下では、説明を簡略化するため、半導体基板21aをシリコン基板として説明する。低抵抗部211の形成方法の一例として、例えば、シリコン基板にホスフィン(PH)などの不純物をドーピングする。これにより、シリコン基板にドープ層が形成され、このドープ層が低抵抗部211となる。
【0076】
図3Bに示すように、半導体基板21aを熱酸化し、主面21fに熱酸化シリコン層である第1層絶縁層221を形成する。なお、熱酸化シリコン層に代えて、有機絶縁膜または有機絶縁膜と無機絶縁膜との組み合わせを主面21fに形成して、第1層絶縁層221としてもよい。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、半導体基板21aの上面の一部が露出するように、第1層絶縁層221の所定位置に開口部221aを形成する。所定位置は、第2接続配線52を設ける位置である。フォトリソグラフィ工法におけるエッチングは、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を採用すればよい。
【0077】
図3Cに示すように、第1層絶縁層221上および開口部221a内に図示しないシード層を形成する。その後、レジストを貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてレジストに所定パターンを形成する。所定パターンは、第1インダクタ配線11の形状に対応したパターンである。シード層に給電しつつ、電解めっき法を用いて、第2接続配線52と第1インダクタ配線11とを同時に形成する。その後、DFRを剥離し、シード層をエッチングする。
【0078】
図3Dに示すように、第1層絶縁層221上および第1インダクタ配線上に第1層目の絶縁層2221を塗布する。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、第1インダクタ配線11の上面の一部が露出するように、第1層目の絶縁層2221の所定位置に開口部2221aを形成する。所定位置は、第1接続配線51を設ける位置である。続いて、必要に応じて、第1層目の絶縁層2221を乾燥および硬化させる。なお、フォトリソグラフィ工法に代えて、レーザーを用いて開口部2221aを形成してもよい。
【0079】
図3Eに示すように、第1層目の絶縁層2221上および開口部2221a内に図示しないシード層を形成する。その後、レジストを貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてレジストに所定パターンを形成する。所定パターンは、第2インダクタ配線12の形状に対応したパターンである。シード層に給電しつつ、電解めっき法を用いて、第1接続配線51と第2インダクタ配線12(本体配線部121およびパッド部122)とを同時に形成する。その後、DFRを剥離し、シード層をエッチングする。以上により、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とを含むコイル10が形成される。
【0080】
図3Fに示すように、第2インダクタ配線12を覆うように、第1層目の絶縁層2221上に第2層目の絶縁層2222を塗布する。これにより、第1層目の絶縁層2221および第2層目の絶縁層2222が積層されて、第2層絶縁層222が形成される。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、第2インダクタ配線12のパッド部122の上面の一部が露出するように、第2絶縁層222の所定位置に開口部222aを形成する。所定位置は、第3接続配線53を設ける位置である。続いて、必要に応じて、第2層目の絶縁層2222を乾燥および硬化させる。なお、フォトリソグラフィ工法に代えて、レーザーを用いて開口部222aを形成してもよい。
【0081】
図3Gに示すように、第2層絶縁層222から露出する、第2インダクタ配線12のパッド部122の上面の一部を覆うように、第1外部端子41を形成する。また、第1外部端子41の形成と同時に、第2層絶縁層222上に第1ダミー外部端子61を形成する。第1外部端子41および第1ダミー外部端子61の形成方法の一例として、例えば、電解めっき法を用いて下地Cu層を形成し、その後、無電解めっき法を用いてNiめっき層およびAuめっき層をこの順に形成する方法が挙げられる。
【0082】
図3Hに示すように、半導体基板21aの下面を研磨する。これにより、厚みが調整された半導体基板21が形成される。研磨は、化学的なドライエッチング法やウェットエッチング法を用いてもよいし、機械的な研磨や研削などで削ってもよいし、CMPのような化学的方法及び機械的方法を用いてもよい。また、本工程で研磨せずに、電子部品の実装後にモールド樹脂と同時に半導体基板を研磨してもよい。
【0083】
図3Iに示すように、スパッタ法やめっきなどを用いて、半導体基板21の下面に第2外部端子42を形成する。第2外部端子42の導電材料は、例えばCuである。
【0084】
図3Jに示すように、切断線Dにて電子部品を個片化して、図3Kに示すように、電子部品1を製造する。
【0085】
以上、電子部品1の製造方法は、半導体基板21aに低抵抗部211を形成する工程と、低抵抗部211を形成した後に、コイル10を形成する工程と、を備える。この構成によれば、熱負荷の高い低抵抗部211を形成する工程を、コイル10を形成する工程の前に行うため、コイル10に不要な熱負荷を与えない。これにより、品質を向上できる電子部品1を製造することができる。また、コイル10を形成する際に、熱に弱い有機材料などを用いることができ、設計自由度が向上する。
【0086】
<第2実施形態>
図4は、電子部品の第2実施形態を示す平面図である。図5は、図4のA-A断面図である。図4は、図1に対応する平面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、第1外部端子、第2外部端子、第1接続配線および第2接続配線の各々の形状と、絶縁層の厚みが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図4図5(特に、符号Aを参照)に示すように、主面21fに直交する方向(Z方向)からみて、第1外部端子41Aおよび第2外部端子42Aの各々は、半導体基板21の主面21fの外縁よりも内側に位置する。これにより、電子部品1Aに個片化する際に、切断刃が第1外部端子41Aおよび第2外部端子42Aに接触することを抑制できるため、第1外部端子41Aおよび第2外部端子42Aの変形やバリの発生を抑制できる。
【0088】
本実施形態では、第1接続配線51Aは、主面21fに直交する方向に延在する垂直配線である。第1接続配線51Aの延在方向(Z方向)の長さは、第1実施形態の第1接続配線51の延在方向(Z方向)の長さよりも長い。
【0089】
ここで、第1接続配線51Aの延在方向の長さを長くすると、コイル10Aの内磁路(コア部)の体積を増大させることができるため、コイル10AのQ値を高めることができる。しかし、第1接続配線51Aの延在方向の長さを長くすると、コイル10Aの電気抵抗も増大する。本実施形態では、第1接続配線51Aが垂直配線であるため、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とを最短距離で接続することができる。そのため、第1接続配線51Aの延在方向の長さを長くした場合でも、コイル10Aの電気抵抗の増大を抑制しつつ、コイル10Aの内磁路の体積を増大させることができる。その結果、コイル10AのQ値を高めることができる。第1接続配線51Aは、特許請求の範囲に記載の「接続配線」に相当する。
【0090】
第2層絶縁層222Aの厚みは、第1実施形態の第2層絶縁層222の厚みよりも厚い。また、第2接続配線52Aは、第1層絶縁層221を貫通する第1層ビア配線521Aと、第2層絶縁層222A内に設けられ、第1層ビア配線521A上に設けられた第2層ビア配線522Aと、を含む。第2層ビア配線522Aの上面は、第1インダクタ配線11の下面と接続している。これにより、第2接続配線52Aは、第1インダクタ配線11と低抵抗部211とを電気的に接続している。本実施形態では、第2層ビア配線522Aが設けられているため、第1インダクタ配線11は、第1層絶縁層221と接触しておらず、第1層絶縁層221よりも順Z方向側に所定距離離れて配置されている。これにより、コイル10Aと低抵抗部211との間の絶縁性をより確実に確保できる。
【0091】
<第3実施形態>
図6は、電子部品の第3実施形態を示す断面図である。図6は、図2Aに対応する断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、第3外部端子が設けられている点が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図6に示すように、第1実施形態の第1ダミー外部端子61に代えて、第3外部端子43が、第2層絶縁層222上に設けられている。第3外部端子43は、第4接続配線54を介して、最も順X方向側に存在する本体配線部121に電気的に接続している。第4接続配線54は、第2層絶縁層222内に設けられたビア配線である。これにより、3端子(第1から第3外部端子41~43)を有する電子部品1Bを得ることができる。電子部品1Bの使用時に、例えば第2外部端子42が設けられている半導体基板21をグランド(GND)にすることができる。
【0093】
なお、第1層絶縁層221の厚みは、相対的に薄い。言い換えると、半導体基板21と第1インダクタ配線11との間のギャップは狭い。そのため、半導体基板21と第1インダクタ配線11と第1層絶縁層221とにより、キャパシタが構成されている場合がある。この場合、電子部品1Bは、共振制御することができる。
【0094】
<第4実施形態>
(構成)
図7は、電子部品の第4実施形態を示す断面図である。図8Aは、図7のA-A断面図である。図8Bは、図7のB-B断面図である。図7は、図1に対応する平面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、キャパシタ素子が設けられている点が主に相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図7では、便宜上、第1外部端子および後述する第3外部端子の記載を省略している。
【0095】
図7図8A図8Bに示すように、低抵抗部211は、主面21fの少なくとも一部から露出している。本実施形態では、低抵抗部211は、主面21fの全面から露出している。電子部品1Cは、低抵抗部211上に設けられた誘電部71と、誘電部71上に設けられた電極部72と、をさらに含む。低抵抗部211と、誘電部71と、電極部72と、により、キャパシタ素子7が構成されている。
【0096】
誘電部71は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの無機絶縁材料から構成されていることが好ましい。誘電部71は、半導体基板21が例えばシリコン基板の場合、半導体基板21を熱酸化して形成される熱酸化シリコンであることが好ましい。誘電部71の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1μm程度である。電極部72は、例えば、TiやCuなどの金属材料から構成されていることが好ましい。電極部72の厚みは、特に限定されないが、例えば2μm程度である。
【0097】
本実施形態では、コイル10Cとキャパシタ素子7とを覆うように、半導体基板21の主面21f上に絶縁層22Cが設けられている。絶縁層22Cには、第2インダクタ配線12のパッド部122の上面の一部が露出ように、開口部22bが設けられている。絶縁層22Cは、第1実施形態で説明した第2層絶縁層222と同一材料で構成されていることが好ましい。絶縁層22Cの厚みは、特に限定されないが、例えば10μm程度である。
【0098】
また、第1実施形態で説明した第1ダミー外部端子61に代えて、第3外部端子43が、絶縁層22C上に設けられている。第3外部端子43は、第1外部端子41と同一材料で構成されていることが好ましい。また、最も順X方向側に位置する第1インダクタ配線11の第2端部11bには、第2端部11bから順X方向側に延びるパッド部111が設けられている。
【0099】
また、第1中継配線81および第2中継配線82が、絶縁層22C内に設けられている。第1中継配線81は、第1インダクタ配線11のパッド部111よりも順Z方向側に配置され、第2インダクタ配線12と同一層に設けられている。第2中継配線82は、第2インダクタ配線12のパッド部122よりも逆Z方向側に配置され、第1インダクタ配線11と同一層に設けられている。第1中継配線81は、第6接続配線56を介して、第3外部端子43と電気的に接続している。第1中継配線81は、第5接続配線55を介して、第1インダクタ配線11のパッド部111と電気的に接続している。
【0100】
最も順X方向側に位置する第1インダクタ配線11の第2端部11bは、第2接続配線52Cを介して、電極部72に電気的に接続している。第1外部端子41は、開口部22bから露出するパッド部122の上面を覆っている。これにより、第1外部端子41は、パッド部122と接続している。第2中継配線82は、第8接続配線58を介して、第2インダクタ配線12のパッド部122と電気的に接続している。第2中継配線82は、第7接続配線57を介して、半導体基板21の低抵抗部211と電気的に接続している。以上の構成により、コイル10Cとキャパシタ素子7とは、並列に接続されている。
【0101】
なお、第2中継配線82の上面には、第7接続配線57に対応した位置に第1凹部R1が設けられている。第2インダクタ配線12のパッド部122の上面には、第7接続配線57に対応した位置に第2凹部R2が設けられている。第1凹部R1および第2凹部R2によりアンカー効果が生じて、第2中継配線82および第2インダクタ配線12(すなわち、コイル10C)と、絶縁層22Cと、の密着性が向上する。
【0102】
本実施形態によれば、キャパシタ素子7がさらに設けられているため、LCフィルタのような複合電子部品を得ることができる。電子部品1Cのサイズの一例としては、0.4mm(長さ)×0.2mm(幅)×90μm(厚み)である。
【0103】
好ましくは、コイル10Cは、主面21fに沿って延在する第1インダクタ配線11と、主面21fに沿って延在し、第1インダクタ配線11に電気的に接続された第2インダクタ配線12と、を含み、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とは、主面21fに直交する方向に並んで配置され、電極部72の主面21fに直交する方向の厚みt2は、第1インダクタ配線11の主面21fに直交する方向の厚みt3よりも小さい。
【0104】
ここで、キャパシタ素子は、コイルとは異なり電圧素子のため、直流電流が流れない。そこで、上記構成では、電極部72の厚みを積極的に薄くしている。これにより、キャパシタ素子7がさらに設けられている場合でも、小型な電子部品1Cを得ることができる。
【0105】
(製造方法)
次に、図9Aから図9Kを参照して、電子部品1Cの製造方法について説明する。図9Aから図9Fは、図7のB-B断面(図8B)に対応し、図9Gから図9Kは、図7のA-A断面(図8A)に対応する。
【0106】
図9Aに示すように、少なくとも一部に低抵抗部211を含む半導体基板21aを準備する。本実施形態では、半導体基板21aの全体が、低抵抗部211である。以下では、説明を簡略化するため、半導体基板21aをシリコン基板として説明する。低抵抗部211の形成方法は、第1実施形態と同様にすればよい。
【0107】
図9B示すように、半導体基板21aを熱酸化し、主面21fに熱酸化シリコン層を形成する。なお、熱酸化シリコン層に代えて、有機絶縁膜または有機絶縁膜と無機絶縁膜との組み合わせを主面21fに形成してもよい。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、半導体基板21aの上面の一部が露出するように、誘電部71を形成する。フォトリソグラフィ工法におけるエッチングは、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を採用すればよい。
【0108】
図9Cに示すように、例えばスパッタ法などにより、主面21fの露出部分上と誘電部71上とに、例えばTi、Cu、Alなどの金属膜を形成する。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、主面21fの露出部分上に存在する金属膜をエッチングして、誘電部71上に電極部72を形成する。以上により、低抵抗部211と誘電部71と電極部72とを含むキャパシタ素子7が形成される。
【0109】
図9Dに示すように、主面21fの露出部分上と電極部72上とに、第1層目の絶縁層221Cを塗布する。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、電極部72の上面の一部が露出するように、第1層目の絶縁層221Cの所定位置に開口部221bを形成する。所定位置は、第2接続配線52Cおよび第7接続配線57を設ける位置である。続いて、必要に応じて、第1層目の絶縁層221Cを乾燥および硬化させる。なお、フォトリソグラフィ工法に代えて、レーザーを用いて開口部221bを形成してもよい。
【0110】
図9Eに示すように、第1層目の絶縁層221C上および開口部221b内に図示しないシード層を形成する。その後、レジストを貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてレジストに所定パターンを形成する。所定パターンは、第1インダクタ配線11および第2中継配線82の形状に対応したパターンである。シード層に給電しつつ、電解めっき法を用いて、第1インダクタ配線11と第2中継配線82と第2接続配線52Cと図示しない第7接続配線57とを同時に形成する。その後、DFRを剥離し、シード層をエッチングする。
【0111】
図9Fに示すように、第1層目の絶縁層221C上に第2層目の絶縁層222Cを塗布する。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、第1インダクタ配線11およびパッド部111の上面の一部が露出するように、第2層目の絶縁層222Cの所定位置に複数の開口部222bを形成する。所定位置は、第1接続配線51と第5接続配線55と第8接続配線58とを設ける位置である。続いて、必要に応じて、第2層目の絶縁層222Cを乾燥および硬化させる。なお、フォトリソグラフィ工法に代えて、レーザーを用いて開口部222bを形成してもよい。続いて、第2層目の絶縁層222C上および開口部222b内に図示しないシード層を形成する。その後、レジストを貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてレジストに所定パターンを形成する。所定パターンは、第2インダクタ配線12および第1中継配線81の形状に対応したパターンである。シード層に給電しつつ、電解めっき法を用いて、第2インダクタ配線12と第1中継配線81と第1接続配線51と第5接続配線55と図示しない第8接続配線58とを同時に形成する。その後、DFRを剥離し、シード層をエッチングする。以上により、第1インダクタ配線11と第2インダクタ配線12とを含むコイル10Cが形成される。
【0112】
図9Gに示すように、第2層目の絶縁層222C上に第3層目の絶縁層223Cを塗布する。これにより、第1層目から第3層目の絶縁層221C~223Cが積層されて、絶縁層23Cが形成される。続いて、フォトリソグラフィ工法を用いて、第2インダクタ配線12のパッド部122の上面の一部が露出するように、第3層目の絶縁層223Cの所定位置に開口部223bを形成する。所定位置は、第1外部端子41とパッド部122との接続部分に対応した位置、および、第3外部端子43と第1中継配線81との接続部分に対応した位置である。続いて、必要に応じて、第3層目の絶縁層223Cを乾燥および硬化させる。なお、フォトリソグラフィ工法に代えて、レーザーを用いて開口部223bを形成してもよい。
【0113】
図9Hに示すように、絶縁層22Cから露出するパッド部122の上面の一部を覆うように、第1外部端子41を形成する。また、絶縁層22Cから露出する、図示しない第1中継配線81の上面の一部を覆うように、第3外部端子43を形成する。第1外部端子41と第3外部端子43の形成方法の一例として、例えば、無電解めっき法を用いてNiめっき層およびAuめっき層をこの順に形成する方法が挙げられる。
【0114】
図9Iに示すように、半導体基板21aの下面を研磨する。これにより、厚みが調整された半導体基板21が形成される。研磨は、化学的なドライエッチング法やウェットエッチング法を用いてもよいし、機械的な研磨や研削などで削ってもよいし、CMPのような化学的方法及び機械的方法を用いてもよい。また、本工程で研磨せずに、電子部品の実装後にモールド樹脂と同時に半導体基板を研磨してもよい。
【0115】
図9Jに示すように、切断線Dにて電子部品を個片化して、図9Kに示すように、電子部品1Cを製造する。
【0116】
以上、電子部品1Cの製造方法は、低抵抗部211を形成する工程と、コイル10Cを形成する工程と、の間に、キャパシタ素子7を形成する工程をさらに含み、低抵抗部211を形成する工程において、低抵抗部211が主面21fの少なくとも一部から露出するようにし、キャパシタ素子7を形成する工程において、低抵抗部211上に誘電部71を形成し、誘電部71上に電極部72を形成する。
【0117】
上記構成によれば、熱負荷の高い低抵抗部211を形成する工程を、コイル10Cを形成する工程の前に行うため、コイル10Cに不要な熱負荷を与えない。これにより、品質を向上できる電子部品1Cを製造することができる。
【0118】
<第5実施形態>
図10は、電子部品の第5実施形態を示す断面図である。図10は、図8Bに対応する断面図である。第5実施形態は、第4実施形態とは、被覆層と無機絶縁層と第2ダミー外部端子とが設けられている点が主に相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第4実施形態と同じ構成であり、第4実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0119】
図10に示すように、本実施形態では、第4実施形態で説明した第1外部端子41に代えて、第2ダミー外部端子62が、絶縁層22Cの上面に設けられている。第2ダミー外部端子62は、第3外部端子43と同じ導電性材料から構成されていることが好ましい。第2ダミー外部端子62は、電気的に独立している。言い換えると、第2ダミー外部端子62は、コイル10Cと電気的に接続されていない。第2ダミー外部端子62を設けることにより、マザーボードなどに電子部品1Dを実装する際に、第3外部端子43のみならず、第2ダミー外部端子62も半田などを介してマザーボードなどに固定できる。そのため、電子部品1Dの姿勢が安定し、電子部品1Dを容易にマザーボードなどに固定できる。
【0120】
絶縁層22Cの上面であって、第2ダミー外部端子62と第3外部端子43とが設けられていない領域に被覆層25が設けられている。被覆層25は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とするソルダーレジストなどである。被覆層25を設けることにより、電子部品1Dを外部環境から保護することができる。
【0121】
本実施形態では、第2中継配線82と低抵抗部211とを接続する第7接続配線57Dは、低抵抗部211との接続部分にパッド配線571Dを含む。なお、第7接続配線57Dは、図10に示した断面には現れないが、便宜上、破線のハッチングで示した。パッド配線571Dは、電極部72と同一の導電材料から構成されていることが好ましい。これにより、第7接続配線57Dの製造工程を簡略化することができるため、第7接続配線57Dを容易に製造することができる。半導体基板21の下面には、第2外部端子42Dが設けられている。第2外部端子42Dは、第1実施形態で説明した第2外部端子42と同一の導電材料から構成されていることが好ましい。本実施形態では、半導体基板21の低抵抗部211と、第2外部端子42Dと、誘電部71Dと、電極部72とにより、キャパシタ素子7Dが構成される。
【0122】
絶縁層22Cは、無機絶縁層23を含む。無機絶縁層23は、第1インダクタ配線11と電極部72との間に少なくとも存在し、誘電部71Dと電極部72とを覆っている。無機絶縁層23は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などから構成されていることが好ましい。無機絶縁層23を設けることにより、コイル10Cとキャパシタ素子7Dとの間の絶縁性を向上させることができる。
【0123】
<第6実施形態>
図11は、電子部品の第6実施形態を示す断面図である。図11は、図10に対応する断面図である。第6実施形態は、第5実施形態とは、ダイオード素子が設けられている点と、接続配線の延在方向の長さが主に相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第5実施形態と同じ構成であり、第5実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0124】
図11に示すように、電子部品1Eは、並列に接続されたコイル10Eおよびキャパシタ素子7EがA領域に、ダイオード素子9がB領域に設けられている。コイル10Eおよびキャパシタ素子7Eと、ダイオード素子9と、は電気的に独立している。なお、A領域の構成は、第5実施形態の電子部品1Dの構成に対応する。
【0125】
半導体基板21の主面21f上に層間絶縁層26が設けられている。層間絶縁層26のうちのA領域に存在する部分が、キャパシタ素子7Eの誘電部71Dとなる。層間絶縁層26上に、キャパシタ素子7Eを覆う無機絶縁層23Eが設けられている。
【0126】
[ダイオード素子]
B領域における絶縁層22C上に第4外部端子44と第5外部端子45とが設けられている。第4外部端子44および第5外部端子45は、第3外部端子43と同一の導電材料から構成されていることが好ましい。
【0127】
低抵抗部211Eは、半導体基板21の一部に設けられている。具体的に述べると、低抵抗部211Eは、A領域における半導体基板21内に配置され、主面21fから露出するように、主面21fに沿って設けられている。低抵抗部211Eは、電子部品1Eの外部には露出していない。半導体基板21は、低抵抗部211E以外の領域にダイオード素子9を含む。ダイオード素子9は、P型半導体層91とN型半導体層92とを含む。
【0128】
P型半導体層91は、半導体基板21がシリコン基板の場合、例えばホウ素をドーピングして形成することができる。P型半導体層91は、主面21fから露出するように、半導体基板21内に設けられている。N型半導体層92は、半導体基板21がシリコン基板の場合、例えばリンをドーピングして形成することができる。N型半導体層92は、P型半導体層91に接触しながら、P型半導体層91を覆うように、半導体基板21内に設けられている。N型半導体層92の一部は、主面21fから露出している。
【0129】
P型半導体層91は、主面21fからの露出面から順Z方向に延びて、無機絶縁層23Eと層間絶縁層26とを貫通する第7接続配線57Eと、第7接続配線57E上に設けられた第4中継配線84と、第4中継配線84の上面から順Z方向に延びる第6接続配線56Eと、第6接続配線56Eの上面に設けられた第3中継配線83と、第3中継配線83の上面に設けられた第9接続配線59と、を介して、第4外部端子44に接続されている。第6接続配線56Eは、主面21fに直交する方向に延在する垂直配線である。以上の構成により、第4外部端子44は、P型半導体層91に電気的に接続している。
【0130】
N型半導体層92は、主面21fからの露出面から順Z方向に延びて、無機絶縁層23Eと層間絶縁層26とを貫通する第7接続配線57Eと、第7接続配線57E上に設けられた第6中継配線86と、第6中継配線86の上面から順Z方向に延びる第6接続配線56Eと、第6接続配線56Eの上面に設けられた第5中継配線85と、第5中継配線85の上面に設けられた第9接続配線59と、を介して、第5外部端子45に接続されている。以上の構成により、第5外部端子45は、N型半導体層92に電気的に接続している。
【0131】
[コイルおよびキャパシタ素子]
本実施形態では、第5実施形態の構成と比較して、第2ダミー外部端子62に代えて、第1外部端子41が設けられている。第1外部端子41は、第2インダクタ配線12のパッド部122に電気的に接続している。第1接続配線51Eは、Z方向に延在する垂直配線である。これにより、コイル10Eの電気抵抗の増大を抑制しつつ、コイル10Eの内磁路の体積を大きくできるため、コイル10EのQ値を高めることができる。第1接続配線51Eは、特許請求の範囲に記載の「接続配線」に相当する。
【0132】
好ましくは、第5中継配線85と第6中継配線86と第6接続配線56Eとは、コイル10Eを構成する導電材料と同一の導電材料からなり、コイル10Eとは電気的に独立している。この構成によれば、第5中継配線85と第6中継配線86と第6接続配線56Eにより、コイル10Eとは独立した素子を形成することができる。第5中継配線85と第6中継配線86と第6接続配線56とが、特許請求の範囲に記載の「配線部」に相当する。
【0133】
電子部品1Eの製造方法は、低抵抗部211Eを形成する工程と、コイル10Eを形成する工程と、の間に、ダイオード素子9を形成する工程をさらに含み、低抵抗部211Eを形成する工程において、半導体基板21aが低抵抗部211Eを一部に含むようにし、ダイオード素子9を形成する工程において、半導体基板21aのうちの低抵抗部211E以外の領域にダイオード素子9を形成することが好ましい。
【0134】
上記製造方法によれば、熱負荷の高い低抵抗部211Eを形成する工程を、コイル10Eを形成する工程の前に行うため、コイル10Eに不要な熱負荷を与えない。これにより、品質を向上できる電子部品1Eを製造することができる。
【0135】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第6実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0136】
前記実施形態では、コイルは弦巻螺旋状コイルであったが、コイルの構造、形状、材料などに特に限定はない。例えば、コイルは、半導体基板の主面に沿って延在する平面スパイラル状であってもよい。
【0137】
前記実施形態では、電子部品として半導体基板上に絶縁層および外部端子が設けられていたが、絶縁層および外部端子は必須の構成ではない。このとき、コイルと外部回路とを接続する場合に、コイルの端部が、外部回路と直接接続していてもよい。
【0138】
<1>
主面を有し、半導体材料を含む半導体基板と、
前記主面上に設けられ、導電材料からなるコイルと、を備え、
前記半導体基板は、前記半導体材料からなる半導体より電気抵抗が低い低抵抗部を含み、
前記コイルは、前記低抵抗部と電気的に接続しており、前記コイルの軸方向は、前記主面と平行である、電子部品。
<2>
有機絶縁材料からなる有機絶縁層と、無機絶縁材料からなる無機絶縁層と、をさらに備える、<1>に記載の電子部品。
<3>
前記無機絶縁層は、前記半導体基板と前記コイルとの間に少なくとも位置する、<2>に記載の電子部品。
<4>
前記有機絶縁層は、前記コイルの隣り合うターン間と、前記コイルの内径部分と、の少なくとも一方に位置する、<2>または<3>に記載の電子部品。
<5>
前記コイルに電気的に接続され、前記主面に平行な平面に沿って設けられた第1外部端子をさらに備える、<1>から<4>の何れか1つに記載の電子部品。
<6>
前記主面に直交する方向からみて、前記第1外部端子は、前記主面の外縁よりも内側に位置する、<5>に記載の電子部品。
<7>
前記低抵抗部は、前記半導体基板の外面の少なくとも一部から露出し、
前記外面のうちの前記低抵抗部が露出した部分に設けられ、前記低抵抗部に接続している第2外部端子をさらに備える、<1>から<6>の何れか1つに記載の電子部品。
<8>
前記第2外部端子は、前記主面に平行な平面に沿って設けられている、<7>に記載の電子部品。
<9>
前記主面に直交する方向からみて、前記第2外部端子は、前記主面の外縁よりも内側に位置する、<7>または<8>に記載の電子部品。
<10>
前記コイルは、前記主面に沿って延在する第1インダクタ配線と、前記主面に沿って延在し、前記第1インダクタ配線に電気的に接続された第2インダクタ配線と、を含み、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とは、前記主面に直交する方向に並んで配置され、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線との間の前記主面に直交する方向の距離は、前記第1インダクタ配線の前記主面に直交する方向の厚みよりも小さい、<1>から<9>の何れか1つに記載の電子部品。
<11>
前記コイルは、前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とを接続する接続配線をさらに含み、
前記接続配線は、前記主面に直交する方向に延在している、<10>に記載の電子部品。
<12>
前記半導体基板の全体が、前記低抵抗部である、<1>から<11>の何れか1つに記載の電子部品。
<13>
前記低抵抗部は、前記主面の少なくとも一部から露出し、
前記低抵抗部上に設けられた誘電部と、前記誘電部上に設けられた電極部と、をさらに備え、
前記低抵抗部と、前記誘電部と、前記電極部と、により、キャパシタ素子が構成されている、<1>から<12>の何れか1つに記載の電子部品。
<14>
前記コイルは、前記主面に沿って延在する第1インダクタ配線と、前記主面に沿って延在し、前記第1インダクタ配線に電気的に接続された第2インダクタ配線と、を含み、
前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線とは、前記主面に直交する方向に並んで配置され、
前記電極部の前記主面に直交する方向の厚みは、前記第1インダクタ配線の前記主面に直交する方向の厚みよりも小さい、<13>に記載の電子部品。
<15>
前記半導体基板の一部が、前記低抵抗部であり、
前記半導体基板は、前記低抵抗部以外の領域にダイオード素子を含む、<1>から<14>の何れか1つに記載の電子部品。
<16>
前記導電材料と同一の導電材料からなり、前記コイルとは電気的に独立している配線部をさらに備える、<1>から<15>の何れか1つに記載の電子部品。
<17>
<1>から<16>の何れか1つに記載の電子部品の製造方法であって、
前記半導体基板に前記低抵抗部を形成する工程と、
前記低抵抗部を形成した後に、前記コイルを形成する工程と、を備える、電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0139】
1、1A、1B、1C、1D、1E 電子部品
7、7D、7E キャパシタ素子
71 誘電部
72 電極部
9 ダイオード素子
91 P型半導体層
92 N型半導体層
10、10A、10C、10E コイル
11 第1インダクタ配線
111 パッド部
11a 第1端部
11b 第2端部
12 第2インダクタ配線
121 本体配線部
121a 第1端部
121b 第2端部
122 パッド部
21 半導体基板
21f 主面
211 低抵抗部
22、22A、22C 絶縁層
23 無機絶縁層
221 第1層絶縁層
222 第2層絶縁層
25 被覆層
26 層間絶縁層
41~45 第1から第5外部端子
51~59 第1から第9接続配線
61 第1ダミー外部端子
62 第2ダミー外部端子
81~86 第1から第6中継配線
D 切断線
L1 第1インダクタ配線と第2インダクタ配線との間の距離
R1 第1凹部
R2 第2凹部
t1、t3 第1インダクタ配線の厚み
t2 電極部の厚み
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図10
図11