(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178848
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20231211BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/14 210
B01D53/18 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091791
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 至高
(72)【発明者】
【氏名】奥原 洋人
(72)【発明者】
【氏名】池田 諒介
(72)【発明者】
【氏名】富田 久士
【テーマコード(参考)】
4D020
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB10
4D020CB16
4D020CB17
4D020CC01
4D020CC05
4D020CC06
4D020CC09
4D020CC10
4D020CC16
4D020CD01
4D020CD02
4D020CD10
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB01
4D020DB05
4D020DB07
4D020DB15
(57)【要約】
【課題】吸収液を用いて空気中の二酸化炭素を吸収する場合であっても、吸収液中の水分の減少を低減することが可能な二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収システム1は、水と空気とが直接接触し、水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、水のうち気化せずに残った水を冷却する冷却部と、空気及び水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、空気に含まれる二酸化炭素が吸収液で吸収され、水蒸気の水分が吸収液に補給される少なくとも1つの吸収部と、吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する少なくとも1つの再生部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と空気とが直接接触し、前記水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、前記水のうち気化せずに残った水を冷却する冷却部と、
前記空気及び前記水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、前記空気に含まれる二酸化炭素が前記吸収液で吸収され、前記水蒸気の水分が前記吸収液に補給される少なくとも1つの吸収部と、
前記吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する少なくとも1つの再生部と、
を備える、二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記冷却部は開放式冷却塔である、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記アルカリ性水溶液はアミン水溶液である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの吸収部は、鉛直方向よりも水平方向に長い形状を有する容器と、前記容器内に配置され、充填材を含む気液接触部と、前記充填材に前記吸収液を供給する液体供給システムとを含み、
前記容器は、前記水平方向の一端に設けられ、前記冷却部から供給された空気が導入されるガス導入口と、前記水平方向の他端に設けられ、前記気液接触部で二酸化炭素が除去された残りの空気が排出されるガス排出口とを有する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの吸収部は前記二酸化炭素を吸収した吸収液の液面レベルを測定する吸収液液面計を含み、
前記冷却部から前記少なくとも1つの吸収部に供給される前記空気の量は前記吸収液液面計によって測定された液面レベルに基づいて制御される、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの吸収部は、気液接触部と、前記気液接触部よりも前記冷却部側に設けられた前処理部とを含み、
前記気液接触部では、前記空気及び前記水蒸気と、前記吸収液との前記気液接触が実施され、
前記前処理部は、前記冷却部から供給される前記空気に水である前処理水を散布する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記前処理部は前記前処理水の液面レベルを測定する前処理水液面計を含み、
前記冷却部から前記前処理部に供給される前記空気の量は前記前処理水液面計によって測定された液面レベルに基づいて制御される、請求項6に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの吸収部は、前記空気の流路上に並列に配置された複数の吸収部であり、
前記複数の吸収部の数は、前記少なくとも1つの再生部の数よりも多い、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
水と空気とが直接接触し、前記水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、前記水のうち気化せずに残った水を冷却する工程と、
前記空気及び前記水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、前記空気に含まれる二酸化炭素が前記吸収液で吸収され、前記水蒸気の水分が前記吸収液に補給される工程と、
前記吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する工程と、
を含む、二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因として問題視されており、世界的に二酸化炭素濃度の上昇を抑制する動きが広まっている。大気中の二酸化炭素濃度を低減させる方法の一つとして、直接空気回収(DAC)と呼ばれる技術が提案されている。DACは空気中の二酸化炭素を直接回収する技術である。DACで回収された二酸化炭素は、地下などに貯蔵することができるが、様々な化合物の原料として用いることもできる。
【0003】
特許文献1には、吸着剤を用いた循環式吸着/脱着により、空気から二酸化炭素を分離する方法が開示されている。当該方法は、吸着剤に二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、吸着剤から二酸化炭素を脱着する脱着工程を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、固体吸着剤を用いることで空気中の二酸化炭素を吸着している。大気中の二酸化炭素濃度は400ppm程度と低いため、一定量の二酸化炭素を回収するには、大量の空気を処理する必要がある。しかしながら、固体吸着剤を用いた二酸化炭素の回収方法は、スケールアップが容易ではない。
【0006】
一方、液体吸収剤を用いて二酸化炭素を吸収する方法を利用することも考えられる。しかしながら、上述のように、一定量の二酸化炭素を回収するには、大量の空気を処理する必要がある。大量の空気を吸収液に接触させた場合、空気の湿度などの条件により、吸収液中の水分が蒸発し、吸収液の濃度が高くなるおそれがある。このような場合、吸収液の二酸化炭素の吸収特性が変化するおそれがある。
【0007】
そこで、本開示は、吸収液を用いて空気中の二酸化炭素を吸収する場合であっても、吸収液中の水分の減少を低減することが可能な二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る二酸化炭素回収システムは、水と空気とが直接接触し、水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、水のうち気化せずに残った水を冷却する冷却部を備える。二酸化炭素回収システムは、空気及び水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、空気に含まれる二酸化炭素が吸収液で吸収され、水蒸気の水分が吸収液に補給される少なくとも1つの吸収部を備える。二酸化炭素回収システムは、吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する少なくとも1つの再生部を備える。
【0009】
冷却部は開放式冷却塔であってもよい。
【0010】
アルカリ性水溶液はアミン水溶液であってもよい。
【0011】
少なくとも1つの吸収部は、鉛直方向よりも水平方向に長い形状を有する容器と、容器内に配置され、充填材を含む気液接触部と、充填材に吸収液を供給する液体供給システムとを含んでいてもよい。容器は、水平方向の一端に設けられ、冷却部から供給された空気が導入されるガス導入口と、水平方向の他端に設けられ、気液接触部で二酸化炭素が除去された残りの空気が排出されるガス排出口とを有していてもよい。
【0012】
少なくとも1つの吸収部は二酸化炭素を吸収した吸収液の液面レベルを測定する吸収液液面計を含み、冷却部から少なくとも1つの吸収部に供給される空気の量は吸収液液面計によって測定された液面レベルに基づいて制御されてもよい。
【0013】
少なくとも1つの吸収部は、気液接触部と、気液接触部よりも冷却部側に設けられた前処理部とを含み、気液接触部では、空気及び水蒸気と、吸収液との気液接触が実施され、前処理部は、冷却部から供給される空気に水である前処理水を散布してもよい。
【0014】
前処理部は前処理水の液面レベルを測定する前処理水液面計を含み、冷却部から前処理部に供給される空気の量は前処理水液面計によって測定された液面レベルに基づいて制御されてもよい。
【0015】
少なくとも1つの吸収部は、空気の流路上に並列に配置された複数の吸収部であり、複数の吸収部の数は、少なくとも1つの再生部の数よりも多くてもよい。
【0016】
本開示に係る二酸化炭素回収方法は、水と空気とが直接接触し、水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、水のうち気化せずに残った水を冷却する工程を含んでいる。二酸化炭素回収方法は、空気及び水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との接触により、空気に含まれる二酸化炭素が吸収液で吸収され、水蒸気の水分が吸収液に補給される工程を含んでいる。吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、吸収液を用いて空気中の二酸化炭素を吸収する場合であっても、吸収液中の水分の減少を低減することが可能な二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る二酸化炭素回収システムを示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る冷却部を示す概略図である。
【
図3】一実施形態に係る横型多段構造の吸収部を示す概略図である。
【
図4】
図3のIV-IV線で切断した断面図である。
【
図5】一実施形態に係る再生部を示す概略図である。
【
図6】一実施形態に係る横型多段構造の吸収部を示す概略図である。
【
図7】一実施形態に係る二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1は、冷却部10と、二酸化炭素回収部20とを備えている。二酸化炭素回収部20は、吸収部30と、再生部70と、供給配管81と、還流配管82と、ポンプ83と、熱交換器84と、ポンプ85と、冷却器86とを備えている。
【0021】
供給配管81は吸収部30と再生部70とを接続している。供給配管81にはポンプ83が設けられている。ポンプ83の駆動により、二酸化炭素を吸収する吸収液Lは、吸収部30から再生部70へ供給される。還流配管82は、再生部70と吸収部30とを接続している。還流配管82にはポンプ85と冷却器86とが設けられている。また、供給配管81及び還流配管82には、熱交換器84が設けられる。ポンプ85の駆動により、二酸化炭素が放散された吸収液Lは、再生部70から吸収部30へ供給される。
【0022】
冷却部10と吸収部30とは配管19を介して接続されている。本実施形態では、吸収部30には、冷却部10から配管19を介して供給された空気と、大気中の空気とが混合された空気が供給される。後述するように、冷却部10では水蒸気が生成され、冷却部10から供給される空気には水蒸気が含まれる。そして、冷却部から出てくる水蒸気の水分を吸収液に補給することにより、吸収液中の水分の減少を低減している。以下、各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0023】
冷却部10は、水と空気とが直接接触し、上記水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、上記水のうち気化せずに残った水を冷却する。これにより、水を効率的に冷却することができる。本実施形態では、冷却部10は、開放式冷却塔である。冷却部10で冷却された水は、発電所及び工場などの被冷却装置を冷却する冷却水として用いることができる。
図2に示すように、冷却部10は、タンク11と、水供給部12と、充填材13と、気流発生部14とを備えている。
【0024】
タンク11は、水供給部12と、充填材13と、気流発生部14とを収容している。タンク11には、大気中の空気を取り込む空気供給口15と、取り込んだ空気を排出する空気排出口16とが設けられている。本実施形態において、空気供給口15はタンク11の側面に設けられており、空気排出口16はタンク11の天頂部に設けられている。タンク11は、空気供給口15と空気排出口16とを接続する空気流路を有している。空気供給口15からタンク11内に供給された空気は、空気流路を通り、空気排出口16を介してタンク11の外側へ排出される。空気流路上には、充填材13及び気流発生部14が配置されている。また、タンク11の底部には貯水部17が設けられている。
【0025】
水供給部12は、充填材13に水を供給する。水供給部12は、例えば充填材13に水を散布してもよい。水供給部12は、具体的には、ノズルから充填材13に水を散布するノズルを含んでいてもよい。水供給部12は、充填材13の上方に設けられていてもよい。これにより、重力の作用によって水供給部12から充填材13に水を供給することができる。
【0026】
充填材13は、水供給部12の鉛直方向下方に配置されている。水供給部12から供給された水は、充填材13と接触しながら流れ落ちる。水が充填材13の表面で液膜を形成するため、水の表面積が大きくなる。そのため、水と空気との接触効率が高くなり、水を効率的に冷却することができる。また、水は、充填材13と接触することで時間をかけて流れ落ちるため、水が気化しやすくなる。充填材13から流れ落ちた水は、貯水部17に貯水される。
【0027】
水供給部12及び貯水部17には循環配管18が接続されている。循環配管18には、図示しない外部の被冷却装置と、ポンプとが接続されており、ポンプの駆動によって循環配管18内の冷却水を循環することができる。具体的には、被冷却装置で加温された水は、水供給部12に供給され、タンク11内で冷却される。タンク11内で冷却された水は、貯水部17から排出され、循環配管18を通って被冷却装置に供給される。被冷却装置に供給された水は、熱交換によって再度加温され、冷却部10に戻される。
【0028】
充填材13は、空気供給口15と空気排出口16との間に設けられている。充填材13は冷却部10の外部から供給された空気が通過可能なように構成されている。これにより、空気が、充填材13の表面の水と直接接触するため、水を効率よく冷却することができる。
【0029】
気流発生部14は、空気排出口16に設けられている。気流発生部14は、空気排出口16を介し、タンク11の内側から外側へ向かう空気の流れを発生させる。これにより、タンク11内の空気をタンク11の外側へ排出している。また、気流を発生させることにより、タンク11内が陰圧になるため、空気供給口15を介し、タンク11の外側の空気をタンク11内に取り入れることができる。すなわち、気流発生部14の駆動により、空気流路に気流を発生させることができる。タンク11内では、水供給部12から供給された水と充填材13とにタンク11の外側の空気を強制的に吹き付けることができる。なお、気流発生部14は、空気排出口16に設けられているが、空気供給口15など、空気の流路上に設けられていればよい。また、複数の気流発生部14が空気の流路上に設けられていてもよい。また、気流発生部14は、送風機であってもよく、ファンであってもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、冷却部10が上から落下する冷却水に対し、水と接触する空気が水の流れと直角に流れるクロスフロー方式である例について説明した。しかしながら、冷却部10は、上から落下する冷却水に対し、水と接触する空気が下から上へ流れるカウンターフロー方式であってもよい。また、冷却部10の形状は特に限定されず、丸形冷却塔であってもよく、角形冷却塔であってもよい。
【0031】
冷却部10で生成された水蒸気は、冷却部10に供給された空気とタンク11内で混合され、空気と水蒸気とを含む加湿空気として空気排出口16から排出される。冷却部10の空気排出口16と、吸収部30のガス導入口34は、配管19を介して接続されている。加湿空気は、配管19を介し、冷却部10から吸収部30へ供給される。配管19には、吸収部30へ供給される加湿空気の流量を調整する流量調整部19aが設けられている。流量調整部19aは、マスフローコントローラーを含んでいてもよい。
【0032】
配管19は、主配管19bと、分岐管19cとを有していてもよい。主配管19bは、冷却部10から排出された空気が吸収部30へ流れるように構成されている。また、分岐管19cは、大気中の空気が吸収部30へ流れるように構成されている。分岐管19cは、流量調整部19aと吸収部30との間において主配管19bから分岐していてもよい。これにより、冷却部10から吸収部30へ供給される空気の比率を調整することができる。すなわち、冷却部10から吸収部30へ供給される水蒸気の量を調整することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、主配管19bに流量調整部19aを設け、冷却部10から吸収部30へ供給される空気量を調整することで、冷却部10から吸収部30へ供給される水蒸気の量を調整している。しかしながら、分岐管19cに流量調整部19aを設け、分岐管19cを介して吸収部30に供給される大気中の空気量を調整することで、冷却部10から吸収部30へ供給される水蒸気の量を調整してもよい。
【0034】
また、配管19の吸収部30側の一端は、直接接続されておらず、後述する吸収部30のガス導入口34付近に配置されていてもよい。このような構成であっても、気流発生部14により、冷却部10からの加湿空気を吸収部30に供給することができる。また、このような構成であっても、後述する吸収部30の気流発生部35aにより、冷却部10からの加湿空気と外気の空気とを、吸収部30に所定の量で取り込むことができる。なお、配管19の冷却部10側の一端は、直接接続されておらず、空気排出口16付近に配置されている。このような構成により、冷却部から空気と水蒸気とを含む加湿空気を吸収部30に供給することができるとともに、流量調整部19aによって加湿空気の流れが止められた場合であっても、冷却部10の運用に支障が生じるのを抑制することができる。
【0035】
なお、以下の説明において、冷却部10から主配管19bを介して吸収部30へ供給される加湿空気、又は、上記加湿空気と分岐管19cを介して吸収部30へ供給される大気中の空気との混合ガスを、ガスGとして説明する。
【0036】
吸収部30では、空気及び水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、空気に含まれる二酸化炭素が吸収液で吸収され、水蒸気の水分が吸収液に補給される。これにより、空気中の二酸化炭素を吸収液で吸収するとともに、吸収液中の水分の減少を抑制することができる。
【0037】
アルカリ性水溶液はアミン水溶液であってもよい。これにより、二酸化炭素を効率よく吸収することができる。アミン水溶液は、例えば、アルカノールアミン、アルコール性水酸基を有するヒンダードアミン、ピペラジン及びピペラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。アルカノールアミンは、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びジグリコールアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。アルコール性水酸基を有するヒンダードアミンは、例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)及び2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。ピペラジン誘導体は、2-メチルピペラジン、2-(アミノメチル)ピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン及び2-(β-ヒドロキシエチル)ピペラジンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。アルカリ性水溶液におけるアミノ化合物の濃度は、アルカリ性水溶液の流動性や消耗損失抑制などの観点から、例えば10質量%~50質量%であってもよい。
【0038】
図3及び
図4は、横型多段構造の吸収部30の一実施形態を示す。なお、
図3及び
図4では、X方向及びY方向を水平方向とし、Z方向を鉛直方向として説明する。
図3及び
図4に示すように、吸収部30は、容器31と、気液接触部40と、液体供給システム42とを含んでいる。
【0039】
容器31は、鉛直方向(Z方向)よりも水平方向(X方向)に長い形状を有している。容器31は、長手方向であるX方向に沿った天板31t、底板31b及び一対の側壁31sと、X方向両端の第1端壁31a及び第2端壁31dとを有する。容器31の形状は、略四角柱状であり、X方向に垂直な断面は略長方形である。ただし、容器31の形状は特に限定されず、例えば、容器31は湾曲した形状を有していてもよい。
【0040】
気液接触部40は容器31内に配置されている。気液接触部40は、容器31のX方向に沿って配列するように割り当てられる第1領域40a、第2領域40b、第3領域40c及び第4領域40dを含む複数の領域を有している。気液接触部40は充填材41を含んでいる。充填材41は、気液接触部40における複数の領域の各々に設けられている。本実施形態では、水平方向に沿って各領域が配列しているため、多段構造にしても重力負荷がかかりにくく、大量の空気を処理することができる。なお、気液接触部40の複数の領域の数は特に限定されず、1つであってもよく、気液接触部40は2以上の複数の領域を有していてもよい。また、各領域の形状及び大きさなどは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、複数の領域は、吸収部30が例えばY字状などのような分岐構造を有するように接続してもよい。
【0041】
気液接触部40の各領域において吸収液Lを上方から充填材41へ供給して流下させることによって、充填材41に液膜が形成される。充填材41は、X方向及びZ方向に延び広がっている複数の板41aを含んでいる。板41aは、長方形の平板であり、Y方向に間隔を空けて並列している。板41aは、複数の板41aを並列させることによって、全体として直方体形状の気液接触空間が形成されている。板41aの平面は、ガスGが通過するX方向に沿うように配置されるので、供給されるガスGは、板41a間の空間、及び、板41aと側壁31sとの間の空間を真っ直ぐに通過する。これにより、流通抵抗によるガスGの圧力損失を低く抑えながら、気液接触部40をガスGが通過することができる。
【0042】
板41aは、金属及び樹脂の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。金属は、ステンレス綱、アルミニウム、ニッケル、チタン、炭素鋼、真鍮、銅、モネル、銀、スズ及びニオブからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びPTFEからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。板41aは、やすりがけ、サンドブラスト処理、紫外線オゾン処理、及びプラズマ処理などの表面加工によって表面に微小な凹凸が形成されたものであってもよい。また、板41aは、コーティングなどによって表面が改質されていてもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、X方向及びZ方向に延び広がっている複数の板41aを、Y方向に間隔を空けて並列している。しかしながら、X方向及びY方向に延び広がっている複数の板41aを、Z方向に間隔を空けて並列していてもよい。また、板41aは、表面積を増やすため、凹凸を有していてもよい。また、板41aは、金属線を用いた金網、パンチングメタル板、及びエキスパンドメタル板などのように、複数の開口を有していてもよい。
【0044】
容器31は、複数の上部仕切り壁32と、複数の下部仕切り壁33とを有している。上部仕切り壁32は、それぞれ天板31tから底板31bに向かって突出している。上部仕切り壁32は、ガスGが充填材41を回避して充填材41の上方を流れるのを抑制する。下部仕切り壁33は、底板31bから天板31tに向かって突出している。下部仕切り壁33は、それぞれ上部仕切り壁32とZ方向で対向しており、空間を空けて設けられている。下部仕切り壁33は、ガスGの流れが充填材41の下方に逃れるのを抑制する役割をする。
【0045】
容器31は、水平方向(X方向)の一端に設けられ、冷却部10から供給された空気(ガスG)が導入されるガス導入口34を有している。また、容器31は、水平方向(X方向)の他端に設けられ、気液接触部40で二酸化炭素が除去された残りの空気(ガスG’)が排出されるガス排出口35を有している。本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1では、従来のような鉛直方向に長い縦型の吸収塔を用いることも可能である。しかしながら、空気中の二酸化炭素を回収する場合、二酸化炭素濃度が低いことから、多くの空気を回収するため、空気の導入口を大きく広げる場合がある。しかしながら、縦型の吸収塔では、充填材の下方から空気を導入するため、空気の導入口を広げると、充填材の下方に大きなデッドスペースが生じるおそれがある。しかしながら、上記のように、水平方向にガス導入口34とガス排出口35とが設けられることにより、吸収部30をコンパクトにすることができる。
【0046】
ガス導入口34は、容器31の一端における第2端壁31dの中央に設けられている。ガス排出口35は、容器31の他端における第1端壁31a中央に設けられている。ガス導入口34には、ガスGを受け入れ可能なように配管19が接続されている。また、ガス導入口34にはフィルタ34aが設けられている。フィルタ34aにより、ガスG中の異物を取り除くことができる。また、ガス排出口35には、気流発生部35aが設けられている。気流発生部35aにより、容器31内に気流が発生し、ガスGが第4領域40d、第3領域40c、第2領域40b、第1領域40a内を順次通過することができる。本実施形態において、気流発生部35aは、送風機であってもよく、ファンであってもよい。なお、気流発生部35aは、例えばガス導入口34に設けられていてもよい。また、気流発生部35aを用いず、外部から供給されるガスGの流圧を利用して容器31内に気流を発生させてもよい。
【0047】
ガス排出口35は大気中に開放されていてもよい。また、ガス排出口35と気液接触部40との間の空間領域には、微小液滴がガスG’と一緒にガス排出口35から排出されるのを抑制するため、デミスタ35bが設けられていてもよい。デミスタ35bは、金網のような網状部材、又は多孔板のような多孔質部材を含んでいてもよい。
【0048】
液体供給システム42は、充填材41に吸収液Lを供給する。液体供給システム42は、液分配器43と、液回収口44と、接続配管45と、ポンプ46とを含んでいる。接続配管45には、液分配器43と、液回収口44とが接続されている。また、各接続配管45には、ポンプ46が設けられている。
【0049】
液分配器43は、充填材41に吸収液Lを散布する。液分配器43は、気液接触部40において複数の領域の各々のZ方向上側に設けられている。液分配器43は、吸収液Lを各ドリップポイントへ誘導して分配するための分配管を含んでいてもよい。分配管の各ドリップポイントには、例えば、開口及び細管ノズルなどのような液体を落下させる部材が設けられていてもよい。液分配器43のドリップポイントの密度(面積当たりの液体の供給点数)は100~3000点/m2程度であってもよく、500~3000点/m2程度であってもよい。
【0050】
液回収口44は、気液接触部40の各領域において充填材41のZ方向下側に設けられている。液回収口44は、容器31の底板31bに形成されている。液回収口44は、例えば中央が最も低くなるように傾斜した漏斗状のような凹部を有している。
【0051】
吸収部30は、複数の接続配管45を含んでいる。複数の接続配管45は、第1配管45aと、第2配管45bと、第3配管45cとを含んでいる。第1配管45aは、第1領域40aの液回収口44と第2領域40bの液分配器43とを接続している。第2配管45bは、第2領域40bの液回収口44と第3領域40cの液分配器43とを接続している。第3配管45cは、第3領域40cの液回収口44と第4領域40dの液分配器43とを接続している。第1配管45a、第2配管45b及び第3配管45cには、ポンプ46がそれぞれ設けられている。ポンプ46は、送液エネルギーを供給する動力源として作用する。また、第1領域40aの液分配器43には、還流配管82が接続されている。第4領域40dの液回収口44には、供給配管81が接続されている。
【0052】
まず、吸収液Lは、還流配管82を通じて第1領域40a内の液分配器43に供給される。液分配器43に供給された吸収液Lは、液分配器43から充填材41へ散布される。充填材41の上方から充填材41の表面を伝って流下する吸収液Lは、第1領域40aの底部に貯留され、液回収口44から第1配管45aへ排出される。吸収液Lは、ポンプ46の駆動によって、1つの領域の液回収口44から次の領域の液分配器43へ送られる。したがって、第1領域40aの底部の吸収液Lは、次の第2領域40bの液分配器43へ供給される。同様に、吸収液Lは、後続の第3領域40c及び第4領域40dへ順次供給される。このようにして、吸収液Lは、気液接触部40の複数の領域を順番に流れる。吸収部30に供給されたガスGは、吸収液Lと気液接触し、ガスGに含まれる二酸化炭素が吸収液Lに吸収される。二酸化炭素を吸収した吸収液L’は、第4領域40dの液回収口44から、供給配管81を介して再生部70へ送られる。
【0053】
吸収液Lが液体供給システム42から充填材41に供給されると、供給される吸収液Lは充填材41をZ方向に流下する。また、ガス導入口34からガスGが供給されると、供給されるガスGは充填材41内をX方向に通過する。そのため、液体供給システム42により吸収液Lが散布される方向と、ガスGが供給される方向とが、互いに交差し、吸収液LとガスGとが接触する。
【0054】
本実施形態では、液体供給システム42によって供給される吸収液Lは、第1領域40a、第2領域40b、第3領域40c、第4領域40dの順番で気液接触部40を通過する。一方、ガスGは、第4領域40d、第3領域40c、第2領域40b、第1領域40aの順番で気液接触部40を通過する。すなわち、吸収液Lが気液接触部40を通過する方向と、ガスGが気液接触部40を通過する方向とが逆方向であるため、気液接触部40全体として向流接触が実施される。
【0055】
なお、二酸化炭素の吸収は、発熱反応である。しかしながら、空気中の二酸化炭素濃度は400ppm程度と低く、二酸化炭素の吸収に伴う発熱は多くない。また、気液接触部40を通過するガスGと吸収液Lとの接触により、一部の吸収液Lが気化し、残りの吸収液Lが冷却される。これにより、吸収液Lの温度が過度に上昇するのが抑制される。そのため、吸収液Lの温度を調整するための冷却器は、第1配管45a、第2配管45b及び第3配管45cに設けられていなくてもよい。また、本実施形態では還流配管82に冷却器86を設けている。しかしながら、上記と同様の理由により、冷却器86は還流配管82に設けられていなくてもよい。
【0056】
吸収部30は二酸化炭素を吸収した吸収液Lの液面レベルを測定する吸収液液面計47を含んでいてもよい。冷却部10から吸収部30に供給される空気の量は吸収液液面計47によって測定された液面レベルに基づいて制御されてもよい。これにより、吸収液Lの液面を安定させることができ、吸収液Lの散布に支障が生じるのを抑制することができる。また、吸収液L中の水分量を維持することができ、吸収液L中のアルカリ性水溶液の濃度を安定させることができる。
【0057】
冷却部10から吸収部30に供給される空気の量は気流発生部14及び流量調整部19aの少なくともいずれか一方によって調整することができる。吸収液液面計47と気流発生部14とは電気的に接続されていてもよい。そして、吸収液液面計47で測定された吸収液Lの液面レベルに基づき、気流発生部14による気流発生量を増減させ、吸収部30に供給される空気の量を制御してもよい。また、吸収液液面計47と流量調整部19aとは電気的に接続されていてもよい。そして、吸収液液面計47で測定された吸収液Lの液面レベルに基づき、流量調整部19aによって配管19内の流路を広げたり狭めたりすることにより、吸収部30に供給される空気の量を制御してもよい。吸収液液面計47は、電極式液面計、フロート式液面計、超音波式液面計、静電容量式液面計、及び差圧式液面計など公知の液面計を用いることができる。
【0058】
再生部70は、吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する。
図5に示すように、再生部70は、再生槽71と、液供給部72と、充填材73と、循環配管74と、リボイラ75と、デミスタ76と、気液分離部90とを含んでいる。再生槽71内には、液供給部72と、充填材73と、デミスタ76とが収容されている。吸収部30内の吸収液は、熱交換器84で加熱され、液供給部72に供給される。液供給部72は充填材73よりも上側に配置されており、充填材73に吸収液Lを散布する。吸収液は、二酸化炭素を放散しながら滴り落ち、再生槽71の底部に滞留する。再生槽71の底部には循環配管74が接続されており、循環配管74にはリボイラ75が設けられている。再生部70の底部に滞留する吸収液はリボイラ75によって加熱され、吸収液から二酸化炭素がさらに放散される。デミスタ76は液供給部72の上側に配置されており、再生槽71内で放散された二酸化炭素を含むガスは、微小液滴を除去するデミスタ76を通過し、再生部70の天頂に設けられたガス排出口から排出される。
【0059】
一方、再生部70の底部に滞留する吸収液は、還流配管82を通じ、吸収部30の液体供給システム42へ送られる。この際、供給配管81を通る吸収液と還流配管82を通る吸収液の熱とが熱交換され、供給配管81を通る吸収液が加熱され、還流配管82を通る吸収液が冷却される。吸収部30に供給された吸収液は、冷却部10から供給されたガスGと気液接触し、ガスG中の二酸化炭素が再び吸収液に吸収される。吸収部30内で二酸化炭素が除去されたガスG’は、ガス排出口35から排出される。
【0060】
気液分離部90は、再生槽71から排出された二酸化炭素を含むガス中の水分を分離する。気液分離部90は、排気管91と、送液配管92と、冷却器93と、気液分離器94と、ポンプ95とを含んでいる。排気管91は再生槽71のガス排出口と気液分離器94の側面とを接続しており、排気管91には冷却器93が設けられている。送液配管92は気液分離器94の底部と再生槽71とを接続しており、送液配管92にはポンプ95が設けられている。
【0061】
再生部70のガス排出口から排出された高濃度の二酸化炭素を含むガスは、排気管91を通って冷却器93によって冷却され、ガスに含まれる水分及び吸収液Lが凝縮される。凝縮された水などは、気液分離器94において分離され、ポンプ95の駆動によって送液配管92を通じて気液分離部90から再生部70へ供給され、再生槽71の底部の吸収液Lに戻される。高濃度の二酸化炭素を含むガスは、例えば体積比で90%以上、95%以上又は99%以上の二酸化炭素を含有する。
【0062】
以上説明した通り、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1は、冷却部10と、少なくとも1つの吸収部30と、少なくとも1つの再生部70とを備えている。冷却部10は、水と空気とが直接接触し、上記水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、上記水のうち気化せずに残った水を冷却する。少なくとも1つの吸収部30は、上記空気及び上記水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、上記空気に含まれる二酸化炭素が吸収液で吸収され、上記水蒸気の水分が吸収液に補給される。再生部70は、吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する。
【0063】
また、二酸化炭素回収方法は、水と空気とが直接接触し、水の一部が気化して水蒸気が生成されることにより、上記水のうち気化せずに残った水を冷却する工程を含んでいる。二酸化炭素回収方法は、上記空気及び上記水蒸気と、アルカリ性水溶液を含む吸収液との気液接触により、上記空気に含まれる二酸化炭素が吸収液で吸収され、上記水蒸気の水分が吸収液に補給される工程を含んでいる。二酸化炭素回収方法は、吸収液に吸収された二酸化炭素を放散する工程を含んでいる。
【0064】
したがって、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1及び二酸化炭素回収方法によれば、吸収液を用いて空気中の二酸化炭素を吸収する場合であっても、吸収液中の水分の減少を低減することができる。
【0065】
また、気液接触部40の吸収液Lには、冷却部10から水蒸気が補給される。一方、吸収液Lを調製するための水は、二酸化炭素の吸収特性を高い状態で維持したり、塩が析出するのを抑制したりするため、純度が高い方が好ましい。このような純水は、水道水と比較してコストが高いが、水蒸気の純度は高いため、吸収液Lの濃度を維持するために必要な純水の使用量を低減することができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム1及び二酸化炭素回収方法について
図6を用いて説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1では、吸収部30は、前処理部50と、洗浄部60とをさらに備えている。その他の点については、特に言及がなければ、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
吸収部30は、気液接触部40と、気液接触部40よりも冷却部10側に設けられた前処理部50とを含んでいる。上述したように、気液接触部40では、空気及び水蒸気と、吸収液との気液接触が実施される。前処理部50は、冷却部10から供給される空気に水である前処理水W1を散布する。これにより、フィルタ34aを異物が通り抜けた場合、又は、フィルタ34aが設けられていない場合であっても、空気中の異物を前処理水W1で除去することができる。また、空気に前処理水W1を散布することにより、前処理水W1が空気に供給され、空気の湿度が高くなる。そのため、吸収液L中の水分の蒸発を抑制することができ、吸収液Lの液面を安定させることができる。
【0068】
前処理部50は、容器31内に配置されている。前処理部50は、ガス導入口34と気液接触部40との間に配置されている。前処理部50には、気液接触部40の各領域と同様に、充填材51と液体供給システム52とが設けられている。液体供給システム52は、液分配器53と、液回収口54と、配管55と、ポンプ56とを含んでいる。液分配器53は、充填材51の上側に設けられている。液回収口54は、充填材51の下側に設けられる。配管55は、液分配器53と液回収口54とを接続している。配管55にはポンプ56が設けられ、ポンプ56の駆動によって、前処理水W1が液分配器53から充填材51へ供給される。ガスGと接触した前処理水W1は、充填材51を流れ落ち、液回収口54から配管55を通じて液分配器53へ供給される。すなわち、前処理水W1は、液回収口54、配管55及び液分配器53をこの順番で通って循環している。液分配器53から散布される前処理水W1は、前処理部50におけるガスGとの接触によって、ガスGから微粒子などの異物を除去する。
【0069】
容器31は下部仕切り壁36を有している。下部仕切り壁36は、前処理部50と気液接触部40との境界位置において、底板31bから天板31tに向かって突出している。また、前処理部50と気液接触部40との境界には、デミスタ37が設置されている。デミスタ37は、前処理部50から気液接触部40へ向かう前処理水W1の微小液滴を捕集し、前処理水W1の微小液滴がガスGと一緒に気液接触部40に移動するのを抑制する。デミスタ37は、金網のような網状部材、又は多孔板のような多孔質部材を含んでいてもよい。デミスタ37は、下部仕切り壁36より前処理部50に近い位置に設けられる。これにより、デミスタ37が捕集した液滴を容易に前処理部50側に落下させることができる。なお、本実施形態においては、容器31内に前処理部50を有するように吸収部30を構成しているが、前処理部50は、別体として吸収部30に接続してもよい。
【0070】
前処理部50の前処理水W1の一部を、二酸化炭素回収システム1の外部に排出してもよい。前処理部50には、大気中の空気が供給されるため、空気のゴミ及び菌などが前処理部50に流入するおそれがある。そのため、前処理水W1の一部を排出して入れ替えることで、前処理水W1の水質を安定させることができる。また、冷却部10から水分が過剰に供給された場合であっても、前処理水W1の一部を排出することで、オーバーフローを抑制することができる。前処理水W1の排出量は、前処理水W1の総量の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0071】
洗浄部60は、気液接触部40を通過したガスGを洗浄する。洗浄部60は、容器31内に配置されている。洗浄部60は、気液接触部40とガス排出口35との間に配置されている。洗浄部60は、気液接触部40の各領域と同様に、充填材61と液体供給システム62とが設けられている。液体供給システム62は、液分配器63と、液回収口64と、配管65と、ポンプ66とを含んでいる。液分配器63は、充填材61の上側に設けられる。液回収口64は、充填材61の下側に設けられる。配管65は、液分配器63と液回収口64とを接続している。配管65にはポンプ66が設けられ、ポンプ66の駆動によって、洗浄液W2が液分配器63から充填材61へ供給される。ガスGと接触した洗浄液W2は、充填材61を流れ落ち、液回収口64から配管65を通じて液分配器63へ供給される。すなわち、洗浄液W2は、液回収口64、配管65及び液分配器63をこの順番で通って循環している。洗浄液W2は、例えば水のような吸収液Lの吸収剤成分であるアミノ化合物を取り込み可能な液であってもよい。液分配器63から散布される洗浄液W2は、洗浄部60内のガスGとの接触により、ガスGが洗浄され、吸収液Lが容器31から流れ出るのを抑制することができる。
【0072】
容器31は、上部仕切り壁38と、下部仕切り壁39とを有している。上部仕切り壁38は、洗浄部60と気液接触部40との境界位置において、天板31tから底板31bに向かって突出している。下部仕切り壁39は、洗浄部60と気液接触部40との境界位置において、底板31bから天板31tに向かって突出している。上部仕切り壁38は、ガスGが充填材61を回避して充填材61の上方を流れるのを抑制する。下部仕切り壁39の上端の高さは、気液接触部40の下部仕切り壁33の上端よりも高くてもよい。これにより、気液接触部40の吸収液Lが洗浄部60に移行するのを抑制することができる。なお、本実施形態においては、容器31内に洗浄部60を有するように吸収部30を構成しているが、別体として吸収部30に接続してもよい。
【0073】
前処理部50は前処理水W1の液面レベルを測定する前処理水液面計57を含み、冷却部10から前処理部50に供給される空気の量は前処理水液面計57によって測定された液面レベルに基づいて制御される。これにより、前処理水W1の液面レベルを維持することができ、前処理水W1の散布に支障が生じるのを抑制することができる。
【0074】
冷却部10から前処理部50に供給される空気の量は気流発生部14及び流量調整部19aの少なくともいずれか一方によって調整することができる。前処理水液面計57と気流発生部14とは電気的に接続されていてもよい。そして、前処理水液面計57で測定された吸収液Lの液面レベルに基づき、気流発生部14による気流発生量を増減させ、前処理部50に供給される空気の量を制御してもよい。また、前処理水液面計57と流量調整部19aとは電気的に接続されていてもよい。そして、前処理水液面計57で測定された吸収液Lの液面レベルに基づき、流量調整部19aによって配管19内の流路を広げたり狭めたりすることにより、前処理部50に供給される空気の量を制御してもよい。前処理水液面計57は吸収液液面計47と同様のものを用いることができる。
【0075】
前処理水W1の液面レベルは、常に一定になるように制御されてもよい。また、冷却部10の稼働時間が変化する場合には、冷却部10の稼働時間に応じて前処理水W1の液面レベルが制御されてもよい。例えば、冷却部10が昼間にしか稼働しない場合には、昼間の液面レベルを低くするように制御し、夜間の液面レベルを高くするように制御してもよい。また、前処理水W1の蒸発状況が変化する場合などには、前処理水W1の蒸発状況に応じて前処理水W1の液面レベルが制御されてもよい。例えば、昼間の前処理水W1の蒸発量が夜間の前処理水W1の蒸発量よりも多い場合には、昼間の液面レベルを高くするように制御し、夜間の液面レベルを低くするように制御してもよい。
【0076】
以上説明した通り、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1及び二酸化炭素回収方法によれば、吸収液を用いて空気中の二酸化炭素を吸収する場合であっても、吸収液中の水分の減少を低減することができる。
【0077】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る二酸化炭素回収システム1及び二酸化炭素回収方法について
図7を用いて説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1は、2つの吸収部30を備えている。その他の点については、特に言及がなければ、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
二酸化炭素回収システム1は、第1吸収部30aと第2吸収部30bとを含む2つの吸収部30と、1つの再生部70とを備えている。第1吸収部30aと第2吸収部30bとは、空気の流路上に並列に配置されている。冷却部10は、第1冷却部10aと第2冷却部10bとを含んでいる。第1冷却部10aは第1吸収部30aと接続されている。第2冷却部10bは第2吸収部30bと接続されている。
【0079】
第1吸収部30aと第2吸収部30bとは供給配管81を介して再生部70と接続されている。具体的には、供給配管81は、第1供給配管81aと第2供給配管81bと第3供給配管81cとを含んでいる。第1吸収部30aは第1供給配管81aを介して再生部70と接続されている。第2吸収部30bは第2供給配管81bを介して再生部70と接続されている。第1供給配管81a及び第2供給配管81bは第3供給配管81cから分岐して接続されている。ポンプ83は第1ポンプ83aと第2ポンプ83bとを含んでいる。第1ポンプ83aは第1供給配管81aに設けられている。第2ポンプ83bは第2供給配管81bに設けられている。第3供給配管81cには熱交換器84が設けられている。
【0080】
第1吸収部30aと第2吸収部30bとは還流配管82を介して再生部70と接続されている。具体的には、還流配管82は、第1還流配管82aと第2還流配管82bと第3還流配管82cとを含んでいる。第1吸収部30aは第1還流配管82aを介して再生部70と接続されている。第2吸収部30bは第2還流配管82bを介して再生部70と接続されている。第1還流配管82a及び第2還流配管82bは第3還流配管82cから分岐して接続されている。ポンプ85は第1ポンプ85aと第2ポンプ85bとを含んでいる。冷却器86は第1冷却器86aと第2冷却器86bとを含んでいる。第1ポンプ85a及び第1冷却器86aは第1還流配管82aに設けられている。第2ポンプ85b及び第2冷却器86bは第2還流配管82bに設けられている。第3還流配管82cには熱交換器84が設けられている。
【0081】
第1吸収部30aで二酸化炭素を吸収した吸収液は、第1ポンプ83aの駆動により、第1吸収部30aから再生部70へ供給される。第2吸収部30bで二酸化炭素を吸収した吸収液は、第2ポンプ83bの駆動により、第2吸収部30bから再生部70へ供給される。第1吸収部30aの吸収液と第2吸収部30bの吸収液は、熱交換器84の手前で合流し、熱交換器84によって加熱され、再生部70に供給される。再生部70では二酸化炭素が放散される。二酸化炭素が放散された吸収液は、第1ポンプ85a及び第2ポンプ85bの駆動により、再生部70から第1吸収部30a及び第2吸収部30bへ供給される。吸収液は、熱交換器84で冷却された後に分岐する。分岐した吸収液は、第1還流配管82aを介して第1吸収部30aへ供給され、第2還流配管82bを介して第2吸収部30bへ供給される。第1吸収部30a及び第2吸収部30bに供給された吸収液は、再び空気中の二酸化炭素を吸収する。
【0082】
本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1では、少なくとも1つの吸収部30は、空気の流路上に並列に配置された複数の吸収部30であり、複数の吸収部30の数は、少なくとも1つの再生部の数よりも多い。大気中の二酸化炭素濃度は、通常、発電所などから放出されるガスに比べて薄い。一方、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1では、複数の吸収部30で二酸化炭素を吸収し、複数の吸収部30よりも少ない数の再生部70で二酸化炭素を放散する。そのため、空気中の二酸化炭素を効率よく回収することができる。また、複数の吸収部30のうちの1つの吸収部30が故障又はメンテナンスにより使用できなくなった場合であっても、残りの吸収部30によって二酸化炭素を回収することができる。
【0083】
なお、本実施形態では、二酸化炭素回収システム1が2つの吸収部30と1つの再生部70とを備える例について説明した。しかしながら、二酸化炭素回収システム1は、3つ以上の複数の吸収部30と、複数の吸収部30よりも少ない数の再生部70とを備えていてもよい。
【0084】
また、複数の吸収部30がそれぞれ前処理部50を備える場合、複数の前処理部50における前処理水W1の合計量が一定になるように液面レベルを制御してもよい。これにより、いずれかの冷却部10が故障又はメンテナンスにより使用できなくなった場合であっても、残りの冷却部10によって前処理部50に供給された水分が、他の前処理部50にも供給される。したがって、使用できなくなった冷却部10の後段の前処理部50において、前処理水W1の散布に支障が生じるのを抑制することができる。複数の吸収部30における各々の前処理部50は、配管58を介して接続されており、配管58内を前処理水W1が流通していてもよい。なお、液面レベルの制御については、上述した通りであるため、説明を省略する。
【0085】
以上説明した通り、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1及び二酸化炭素回収方法によれば、吸収液を用いて空気中の二酸化炭素を吸収する場合であっても、吸収液中の水分の減少を低減することができる。
【0086】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0087】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 二酸化炭素回収システム
10 冷却部
30 吸収部
40 気液接触部
41 充填材
41a 板
42 液体供給システム
47 吸収液液面計
50 前処理部
57 前処理水液面計
70 再生部