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特開2023-178860通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特開-通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特開-通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム 図3
  • 特開-通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム 図4
  • 特開-通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178860
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】通信サービスの要求に基づく通信制御を行う基地局装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/18 20090101AFI20231211BHJP
【FI】
H04W28/18 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091815
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 忍
(72)【発明者】
【氏名】北藪 透
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067AA14
5K067DD41
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】複数の種類の要求品質を考慮した通信制御を行うこと。
【解決手段】端末装置に、スループットと遅延との要求を伴う無線通信サービスを提供する基地局装置は、端末装置との通信におけるスループットに関する第1の測定値と遅延に関する第2の測定値を取得し、第1の測定値がスループットに関する第1の要求値を超えているか、及び、第2の測定値が遅延に関する第2の要求値を下回っているかに基づいて、無線通信における許容遅延と許容誤り率を設定し、許容遅延と許容誤り率に基づいて、端末装置との通信の制御を行う。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置に、スループットと遅延との要求を伴う無線通信サービスを提供する基地局装置であって、
前記端末装置との通信におけるスループットに関する第1の測定値と遅延に関する第2の測定値を取得する取得手段と、
前記第1の測定値がスループットに関する第1の要求値を超えているか、及び、前記第2の測定値が遅延に関する第2の要求値を下回っているかに基づいて、無線通信における許容遅延と許容誤り率を設定する設定手段と、
前記許容遅延と前記許容誤り率に基づいて、前記端末装置との通信の制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記第1の測定値と前記第2の測定値を制御装置へ通知する通知手段と、
前記制御装置から、前記第1の測定値がスループットに関する前記第1の要求値を超えているか、及び、前記第2の測定値が遅延に関する前記第2の要求値を下回っているかに基づいて決定された、前記許容遅延および前記許容誤り率の情報を受信する受信手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記制御装置は、Open Radio Access Network(O-RAN)のRAN Intelligent Controllerであり、前記基地局装置は前記O-RANにおいて前記端末装置の通信のスケジューリングを行う装置である、ことを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記第1の測定値がスループットに関する前記第1の要求値を超えており、かつ、前記第2の測定値が遅延に関する前記第2の要求値を下回っている場合、前記許容遅延を大きくするように設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記第1の測定値がスループットに関する前記第1の要求値を超えており、かつ、前記第2の測定値が遅延に関する前記第2の要求値を下回っていない場合、前記許容誤り率を下げるように設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記第1の測定値がスループットに関する前記第1の要求値を超えておらず、かつ、前記第2の測定値が遅延に関する前記第2の要求値を下回っている場合、前記許容誤り率を上げるように設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記第1の測定値がスループットに関する前記第1の要求値を超えておらず、かつ、前記第2の測定値が遅延に関する前記第2の要求値を下回っていない場合、前記許容遅延を小さくするように設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記許容遅延を大きくしたことに応じて、前記端末装置へのリソースの割り当ての優先順位を下げるように制御を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記許容誤り率を下げたことに応じて、前記端末装置が低いレベルの変調及び符号化方式を使用するように制御を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項10】
端末装置に、スループットと遅延との要求を伴う無線通信サービスを提供する基地局装置によって実行される制御方法であって、
前記端末装置との通信におけるスループットに関する第1の測定値と遅延に関する第2の測定値を取得することと、
前記第1の測定値がスループットに関する第1の要求値を超えているか、及び、前記第2の測定値が遅延に関する第2の要求値を下回っているかに基づいて、無線通信における許容遅延と許容誤り率を設定することと、
前記許容遅延と前記許容誤り率に基づいて、前記端末装置との通信の制御を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から9のいずれか1項に記載の基地局装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信サービスの要求に基づく通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムなどの無線通信システムにおいて、端末装置からその通信相手の装置までの品質が所定品質を満たすように要求されることがある。例えば、ロングタームエボリューションでは、スケジューリングの優先度制御により、一定のアプリケーションなどに対して優先して品質を向上させるような制御が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通信の内容によっては、例えばスループットと遅延の両方の要求を満たす必要があるなど、複数の種類の要求品質が求められる場合、スケジューリングの優先度制御のみでは十分にその要求に対応することができない。
【0004】
本発明は、複数の種類の要求品質を考慮した通信制御技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による基地局装置は、端末装置に、スループットと遅延との要求を伴う無線通信サービスを提供する基地局装置であって、前記端末装置との通信におけるスループットに関する第1の測定値と遅延に関する第2の測定値を取得する取得手段と、前記第1の測定値がスループットに関する第1の要求値を超えているか、及び、前記第2の測定値が遅延に関する第2の要求値を下回っているかに基づいて、無線通信における許容遅延と許容誤り率を設定する設定手段と、前記許容遅延と前記許容誤り率に基づいて、前記端末装置との通信の制御を行う制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の種類の要求品質を考慮した通信制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】通信システムの構成例を示す図である。
図2】装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】基地局装置の機能構成例を示す図である。
図4】制御装置の機能構成例を示す図である。
図5】処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、基地局装置101と端末装置102が、例えば第5世代(5G)やその他の世代のセルラ通信規格に準拠した無線通信を行う。基地局装置101は、例えば、端末装置102に対して、端末装置102が要求するアプリケーションに対応するパラメータを設定し、無線リソースを割り当てて、その無線リソースを介した無線通信サービスを提供する。例えば、基地局装置101は、端末装置102が要求するアプリケーションに対応する優先度を設定し、その優先度に基づいて、複数の端末装置102のそれぞれの通信に使用されるべき周波数および時間リソースを割り当てる。なお、本無線通信システムは、一例において、Open Radio Access Network(O-RAN)を用いて構成される。この場合、基地局装置101は、例えば、O-RAN Central Unit(O-CU)及びO-RAN Distributed Unit(O-DU)を含んで構成されうる。そして、基地局装置101は、O-CUの機能を用いて端末装置102との間で無線接続を確立し、O-DUの機能を用いてスケジューリング(リソースの割り当て)を行い、また、無線通信パラメータを設定して端末装置102との通信を行いうる。ただし、ここではO-CUとO-DUとの区別は特に必要でなく、基地局装置101は、少なくともスケジューリング機能を有する通信装置として機能しうる。
【0010】
基地局装置101は、例えばRAN Intelligent Controller(RIC)へ、端末装置102との間での通信の状況に関する情報を通知し、RICがその情報に基づいて生成した制御情報を受信することにより、端末装置102との間での通信を制御するように構成される。RICは、Near-RT RIC111とNon-RT RIC112とを含む。なお、RTはReal Timeの略語である。Non-RT RIC112とNear-RT RIC111は、制御のリアルタイム性の違いにより区別される。例えば、Non-RT RIC112は、システム全体の長期的な挙動を制御するためのポリシの決定等の処理を実行する。一方、Near-RT RIC111は、基地局装置101の短期的な挙動を制御するように動作しうる。基地局装置101は、Near-RT RIC111及びNon-RT RIC112のそれぞれに対して、端末装置102ごとの通信の状況に関する情報を通知しうる。なお、基地局装置101は、Near-RT RIC111には、端末装置102ごとの通信の状況に関する情報を通知し、Non-RT RIC112には、複数の端末装置102についての通信の状況の統計に関する情報を通知してもよい。また、Non-RT RIC112は、さらに外部のデータベース113から情報を取得してもよい。
【0011】
なお、O-RANを用いた構成は一例であり、基地局装置101は、任意のネットワークノードの形式を有する制御装置と接続され、その制御装置による制御に基づいて、後述のような、端末装置102への通信サービスの提供処理を実行しうる。また、基地局装置101がそのような制御の機能を内包し、後述のような処理に関連する制御装置が設けられなくてもよい。
【0012】
本実施形態では、基地局装置101が、端末装置102のそれぞれに対して、少なくともスループットと遅延に関する要求品質が設定されている通信サービスを提供するものとする。基地局装置101は、このスループットに関する第1の要求値及び遅延に関する第2の要求値を充足するように、端末装置102のそれぞれに関する通信パラメータの設定を行う。本実施形態では、端末装置102ごとに、スループットに関する第1の測定値がスループットに関する第1の要求値を超えているか(スループットが要求値より高いか)、及び、遅延に関する第2の測定値が遅延に関する第2の要求値を下回っているか(遅延時間が要求値より短いか)に基づいて、基地局装置101において許容遅延と許容誤り率とが設定される。本実施形態では、基地局装置101は、スループットと遅延の2つの基準に基づいて、許容遅延と許容誤り率との組み合わせを用いることにより、スループット及び遅延を調整する。なお、本実施形態では、スループットの測定値と遅延の測定値との少なくともいずれかにおいて要求値が満たされている場合には、スループットを低下させ又は遅延を大きくするなど、その要求値を満たしている指標を要求値に近付ける処理が行われうる。これによれば、例えば、十分な品質を得られている端末装置102の通信の優先度を下げて、相対的に品質が十分でない端末装置102の通信の優先度を上げて品質を改善させることができる。
【0013】
一例において、基地局装置101は、1つ以上の端末装置102のそれぞれについて、スループットに関する第1の測定値と、遅延に関する第2の測定値とを取得する。そして、基地局装置101は、第1の測定値がスループットに関する第1の要求値を超えているか、及び、第2の測定値が遅延に関する第2の要求値を下回っているかに基づいて、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての無線通信における許容遅延と許容誤り率を設定する。その後、基地局装置101は、設定した許容遅延と許容誤り率に基づいて、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての通信制御を行う。
【0014】
基地局装置101は、許容遅延を小さく設定した端末装置102に対して、無線リソースの割り当ての優先順位を上げることにより、スループットを向上させることができる。また、基地局装置101は、許容遅延を大きく設定した端末装置102に対して、無線リソースの割り当ての優先順位を下げることにより、他の端末装置102に対して無線リソースを多く割り当てることが可能となる。また、許容誤り率を下げると、それに伴って、変調および符号化方式(MCS)のレベルが低く設定され、一度のデータ送信によって受信側においてそのデータの受信に成功する確率が高くなると共に再送が発生しにくくなる。その結果、遅延時間を短縮することができる。また、許容誤り率を上げると、MCSのレベルが高く設定され、無線リソースの単位量あたりに送信可能なデータ量を増やすことができ、スループットを改善することができる。なお、MCSは、レベルが高くなるほど、変調多値数と符号化率との少なくともいずれかが上昇し、1シンボルあたりの送信可能なビット数が増えるが、誤りへの耐性が低くなる傾向を有する。
【0015】
一例において、基地局装置101自身が、第1の測定値が第1の要求値を超えているか、及び、第2の測定値が第2の要求値を下回っているかに基づいて、許容遅延と許容誤り率を決定しうる。また、基地局装置101は、第1の測定値及び第2の測定値を制御装置に通知しうる。この場合、制御装置が、第1の測定値が第1の要求値を超えているか、及び、第2の測定値が第2の要求値を下回っているかに基づいて、許容遅延と許容誤り率の値を決定し、その決定した値を、基地局装置101へ通知してもよい。
【0016】
一例において、基地局装置101は、Near-RT RIC111に、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての第1の測定値及び第2の測定値を通知しうる。また、基地局装置101は、Near-RT RIC111に、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての、第1の測定値及び第2の測定値の短期的な平均値などの統計値(すなわち、端末装置102ごとの統計値)を通知してもよい。そして、Near-RT RIC111は、その通知された値に基づいて、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての許容遅延及び許容誤り率を決定し、基地局装置101に通知しうる。基地局装置101は、1つ以上の端末装置102のそれぞれについて、その決定された許容遅延及び許容誤り率を設定し、その設定に基づいて通信サービスを提供しうる。これによれば、端末装置102のそれぞれの現在の状態に応じたスループット及び遅延の制御を行うことができる。
【0017】
また、基地局装置101は、Non-RT RIC112に、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての第1の測定値及び第2の測定値を通知しうる。なお、基地局装置101は、Non-RT RIC112に、1つ以上の端末装置102のそれぞれについての、第1の測定値及び第2の測定値の平均値などの統計値(すなわち、端末装置102ごとの統計値)を通知してもよい。また、基地局装置101は、Non-RT RIC112に、1つ以上の端末装置102のそれぞれについて第1の測定値及び第2の測定値を取得し、その取得した測定値の平均値などの統計値(すなわち、複数の端末装置102について得られた測定値の統計値)を通知してもよい。そして、Non-RT RIC112は、基地局装置101に接続されている1つ以上の端末装置102のそれぞれのスループットや遅延の長期的な傾向に基づいて、許容遅延や許容誤り率の長期的な目標値を設定し、その情報を、ポリシ情報としてNear-RT RIC111へ通知しうる。
【0018】
また、Non-RT RIC112は、基地局装置101に接続されている端末装置102について、その存在する位置に対応する情報や、その端末装置102の移動速度などの環境情報を外部のデータベース113から取得してもよい。この場合、Non-RT RIC112は、その取得された情報に基づいて、端末装置102におけるスループットや遅延がどのように変化するかを所定のアルゴリズムに基づいて予測し、その予測に基づいて、許容遅延や許容誤り率の長期的な目標値を設定しうる。例えば、端末装置102の位置及び移動速度に基づいて、その端末装置102の移動経路を予測し、その経路に沿って移動した場合に基地局装置101との間に障害物となる建物が存在する場合には、スループットが低下することが予測される。Non-RT RIC112は、このような場合、端末装置102における現在のスループットの測定値に負のオフセットを加算し、その加算結果に基づいて許容遅延や許容誤り率の長期的な目標値を設定しうる。
【0019】
一例において、基地局装置101は、スループットに関する第1の測定値が第1の要求値を超えており、かつ、遅延に関する第2の測定値が第2の要求値を下回っている場合、許容遅延を大きくするように設定を行う。すなわち、スループットも遅延も要求値を達成している場合、許容遅延が大きく設定されることにより、スケジューリングにおける優先度が低くされうる。これにより、例えばスループットが不十分な他の端末装置102に対して無線リソースを優先的に割り当てることができ、システム全体としての効率を改善することができる。
【0020】
また、基地局装置101は、スループットに関する第1の測定値が第1の要求値を超えており、かつ、遅延に関する第2の測定値が第2の要求値を下回っていない場合、許容誤り率を下げるように設定を行う。すなわち、スループットは要求値を達成しているが、遅延が要求値を達成していない場合、許容誤り率を下げる設定が行われることにより、端末装置102において使用されるMCSのレベルが下げられ、通信の信頼性を向上させうる。これによれば、スループットを落とすことを許容することにより、通信の失敗の発生及び通信の失敗による再送の発生を抑制することを可能とし、遅延を低減することが可能となる。なお、基地局装置101は、この処理によってスループットの測定値が第1の要求値を下回ることとなった場合、許容遅延を小さくして、スケジューリングの優先度を上げるように制御してもよい。許容誤り率を上げることによりスループットを改善することができるが、そのような制御を行うと遅延の要求を満たさなくなることが想定されうる。その結果、許容誤り率を再度下げる必要が生じ、制御が安定しなくなる場合がありうる。このため、許容誤り率を下げた結果、スループットが要求値を満たさなくなった場合には、許容誤り率を上げるのではなく、許容遅延を小さくする制御が行われるようにしうる。これにより、制御を安定させることが可能となる。
【0021】
基地局装置101は、スループットに関する第1の測定値が第1の要求値を超えておらず、かつ、遅延に関する第2の測定値が第2の要求値を下回っている場合、許容誤り率を上げるように設定を行いうる。すなわち、スループットが要求値を達成しておらず、遅延は要求値を達成している場合に、許容誤り率を上げる設定が行われることにより、端末装置102において使用されるMCSのレベルが上げられる。これにより、一定の無線リソースにおいて送信可能なデータの量を増やし、スループットが改善する。なお、上述のように、スループットが要求値を達成し、遅延が要求値を達成しないことにより許容誤り率が下げられた後には、許容誤り率を上げずに、許容遅延を小さくしてもよい。
【0022】
基地局装置101は、スループットに関する第1の測定値が第1の要求値を超えておらず、かつ、遅延に関する第2の測定値も第2の要求値を下回っていない場合、許容遅延を小さくするように設定を行いうる。これによれば、スケジューリングによる優先順位を上昇させ、割り当てられるべきリソース量を増やして、スループットを改善することができる。また、その際に、使用されるMCSのレベルを下げてもよく、これにより、誤りの発生を抑制して、遅延を低減することができる。
【0023】
(装置構成)
続いて、上述のような基地局装置101及び制御装置(例えばNear-RT RIC111として機能する装置)の構成例について説明する。図2は、基地局装置101及び制御装置のハードウェア構成例を示す図である。基地局装置101及び制御装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置101や制御装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。基地局装置101の通信回路205は、例えば、端末装置102との間のLTEや5Gの無線通信用の回路や、制御装置との間の有線通信又は無線通信用の回路を含んで構成されうる。また、制御装置の通信回路205は、基地局装置101との間の有線通信又は無線通信用の回路を含んで構成される。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、基地局装置101は複数の通信回路205を有しうる。
【0024】
図3は、基地局装置101の機能構成例を示す図である。基地局装置101は、その機能として、スループット測定部301、遅延測定部302、及び、通信制御部303を含む。また、基地局装置101は、例えば上述のような制御装置が存在する場合には、測定値通知部304及び制御情報受信部305をさらに含む。なお、基地局装置101は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能部を実現しうる。ただし、これは一例であり、これらの機能を実現する専用のハードウェアが用いられてもよい。
【0025】
スループット測定部301は、接続中の1つ以上の端末装置102のそれぞれについて、その端末装置102との通信において得られたスループットを測定する。遅延測定部302は、接続中の1つ以上の端末装置102のそれぞれについて、その端末装置102との通信における遅延量を測定する。通信制御部303は、スループット測定部301によって得られたスループットの測定値が要求値を超えているか否か及び遅延測定部302によって測定された遅延の測定値が要求値を下回っているかに基づいて、許容遅延と許容誤り率との少なくともいずれかを制御する。通信制御部303は、外部の制御装置が用いられない構成において、スループット及び遅延の測定値とそれぞれの要求値との関係に基づいて、許容遅延と許容誤り率とを決定するように構成されうる。一方で、通信制御部303は、外部の制御装置が用いられる構成において、後述のようにして制御情報受信部305から取得された許容遅延と許容誤り率とを用いるように構成されてもよい。なお、スループット及び遅延の測定値とそれぞれの要求値との差がいずれも所定値以下である場合、すなわち、スループット及び遅延が概ね要求値を達成することができている場合には、許容遅延及び許容誤り率を変更しないように制御してもよい。通信制御部303は、許容遅延と許容誤り率との少なくともいずれかの制御の際に、必要に応じて、無線リソースの割り当ての際の優先順位の変更と、MCSの変更とを行う。なお、通信制御部303の処理例については、上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。
【0026】
測定値通知部304は、外部の制御装置が用いられる場合に、スループット測定部301及び遅延測定部302をその制御装置へ通知する。制御情報受信部305は、外部装置によって決定された許容遅延と許容誤り率、及び場合によってはリソース割り当ての優先順位やMCS、を受信する。この場合、通信制御部303は、受信した許容遅延及び許容誤り率を設定して、端末装置102との通信を制御する。
【0027】
図4は、制御装置(例えばNear-RT RIC111として動作する装置)の機能構成例を示す図である。制御装置は、その機能として、測定値受信部401、制御情報生成部402、及び制御情報送信部403を含んで構成される。なお、制御装置は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能部を実現しうる。ただし、これは一例であり、これらの機能を実現する専用のハードウェアが用いられてもよい。なお、基地局装置101が許容遅延及び許容誤り率を決定する機能を有する場合には、制御装置は省略されてもよい。
【0028】
測定値受信部401は、基地局装置101から、その基地局装置101に接続されている端末装置102との間の通信のスループット及び遅延の測定値を受信する。制御情報生成部402は、受信した測定値に基づいて、基地局装置101が端末装置102との間の通信において設定すべき許容遅延及び許容誤り率を決定する。許容遅延及び許容誤り率の決定方法の例については、上述の通りであるため、ここでは説明を繰り返さない。制御情報送信部403は、決定された許容遅延及び許容誤り率の情報を、基地局装置101へ送信する。
【0029】
(処理の流れ)
続いて、本実施形態において基地局装置101(及び必要に応じて制御装置)によって実行される処理の流れの例について、図5を用いて説明する。
【0030】
まず、基地局装置101は、接続中の1つ以上の端末装置102との通信において、それぞれのスループット及び遅延を測定する(S501)。ここで、基地局装置101は、外部の制御装置が存在する場合、その測定値をその制御装置へ送信しうる。基地局装置101又は制御装置は、スループットの測定値が要求値を超えているか及び遅延の測定値が要求値を下回っているかを判定する(S502、S503、S506)。
【0031】
基地局装置101又は制御装置は、ある端末装置102との通信について、スループットの測定値が要求値を超えており、かつ、遅延の測定値が要求値を下回っている場合(S502でYES、S503でYES)、許容遅延を大きくすることを決定する(S504)。基地局装置101は、その端末装置102の通信について、許容遅延を例えば所定ステップだけ大きくし、必要に応じて、リソース割り当ての優先順位を下げる制御を実行する。この場合、その端末装置102の通信の品質は改善しないが、他の端末装置102の通信の品質を改善させることが可能となる。なお、基地局装置101は、この制御の後に、その端末装置102の通信をさらに監視し、まだスループットの測定値が要求値を超え、かつ、遅延の測定値が要求値を下回っている場合に、さらに許容遅延を所定ステップだけ上げるなど、図5の処理を繰り返し実行しうる。
【0032】
基地局装置101又は制御装置は、ある端末装置102との通信について、スループットの測定値が要求値を超えており、かつ、遅延の測定値が要求値を下回っていない場合(S502でYES、S503でNO)、許容誤り率を下げることを決定する(S505)。基地局装置101は、その端末装置102の通信について、許容誤り率を例えば所定ステップだけ下げ、必要に応じて、MCSのレベルを下げる制御を実行する。この場合、許容誤り率を下げることにより、その端末装置102の通信において通信に失敗する確率を低減することで、遅延を短くすることが可能となる。なお、基地局装置101又は制御装置は、この処理によってスループットの測定値が要求値を下回ってしまった場合には、後述のS507の処理を行わずに、許容遅延を小さくすることを決定しうる。
【0033】
基地局装置101又は制御装置は、ある端末装置102との通信について、スループットの測定値が要求値を超えておらず、かつ、遅延の測定値が要求値を下回っている場合(S502でNO、S506でYES)、許容誤り率を上げることを決定する(S507)。基地局装置101は、その端末装置102の通信について、許容誤り率を例えば所定ステップだけ上げ、MCSのレベルを上げる制御を実行する。許容誤り率を上げることにより、その端末装置102の通信において、無線リソースの単位量あたりの通信可能なデータ量を増やすことができ、スループットを向上させることができる。
【0034】
基地局装置101又は制御装置は、ある端末装置102との通信について、スループットの測定値が要求値を超えておらず、かつ、遅延の測定値が要求値を下回っていない場合(S502でNO、S506でNO)、許容遅延を小さくすることを決定する(S508)。基地局装置101は、その端末装置102の通信について、許容遅延を例えば所定ステップだけ小さくし、リソース割り当ての優先順位を上げる制御を実行する。これによれば、その端末装置102に対してより多くの無線リソースが割り当てられ、スループット及び遅延を改善することができる。なお、この場合、基地局装置101は、必要に応じて、MCSのレベルを下げる制御を行ってもよい。
【0035】
以上のような処理により、1つ以上の端末装置102のそれぞれの通信において、スループットと遅延の要求が同時に満たされる確率を向上させることができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0036】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5