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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178865
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電気部品
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231211BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H05K1/02 B
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091821
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】西尾 渉
【テーマコード(参考)】
2G025
5E338
【Fターム(参考)】
2G025AB02
2G025AC01
5E338AA03
5E338AA16
5E338CC01
5E338CC04
5E338CD03
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】反りが生じることが抑制された電気部品を提供する。
【解決手段】電気部品1は、回路素子15と、磁界変化を検出するセンサであるセンサ16と、回路素子が設けられている第1領域10B、および、センサが設けられている第2領域10Cを有する基材10Aと、第1領域に設けられている第1導電部材15A、15B、15C、15Dと、第2領域に設けられている第2導電部材16A、16B、16C、16D、16E、17Aと、を備え、第1領域における第1導電部材の存在量と、第2領域における第2導電部材の存在量との差である存在量差が、基材の反りに対して影響を及ぼさない程度に小さいため、存在量差を起因とする反りが生じることが抑制される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子(15)と、
磁界変化を検出するセンサ(16)と、
前記回路素子が設けられている第1領域(10B)、および、前記センサが設けられている第2領域(10C)を有する基材(10A)と、
前記第1領域に設けられている第1導電部材(15A、15B、15C、15D)と、
前記第2領域に設けられている第2導電部材(16A、16B、16C、16D、16E、17A)と、を備え、
前記第1領域における前記第1導電部材の存在量と、前記第2領域における前記第2導電部材の存在量との差である存在量差が、前記基材の反りに対して、影響を及ぼさない程度に小さい電気部品。
【請求項2】
前記基材は、前記基材の厚さ方向(TD)に離れて設けられている、表面(10D)と、裏面(10E)と、を備え、
前記第1導電部材は、前記表面に設けられている第1導電膜(15A)を備え、
前記第2導電部材は、前記表面に設けられている第2導電膜(16A)を備える請求項1に記載の電気部品。
【請求項3】
前記第2導電膜における、前記厚さ方向に直交する方向のうちの短手方向の長さ(L2)が、前記第1導電膜における、前記厚さ方向に直交する方向のうちの短手方向の長さ(L1)よりも長い、または、前記第2導電膜における前記厚さ方向の長さ(H2)が、前記第1導電膜における前記厚さ方向の長さ(H1)よりも長い請求項2に記載の電気部品。
【請求項4】
前記第2導電膜を複数備える請求項2または3に記載の電気部品。
【請求項5】
前記第2導電部材は、前記第2導電膜の他に、前記第2導電膜および前記センサと非接続の導電パターン(16E)を備える請求項2または3に記載の電気部品。
【請求項6】
前記第1導電部材は、前記第1導電膜の他に、前記第1領域における、前記表面と前記裏面の間に設けられ、前記回路素子に接続される第1内部パターン(15B、15C)を備え、
前記第2導電部材は、前記第2導電膜の他に、前記第2領域における、前記表面と前記裏面の間に設けられ、前記センサに接続される第2内部パターン(16B、16C)を備える請求項2または3に記載の電気部品。
【請求項7】
前記第2導電部材は、前記第2導電膜の他に、前記裏面に設けられている第3導電膜(17A)を備える請求項2または3に記載の電気部品。
【請求項8】
前記第1導電部材は、前記第1導電膜の他に、前記厚さ方向に電気的な導通を提供する第1ビア導体(15D)を備え、
前記第2導電部材は、前記第2導電膜の他に、前記厚さ方向に電気的な導通を提供する第2ビア導体(16D)を備える請求項2または3に記載の電気部品。
【請求項9】
前記第1導電膜と前記第2導電膜に接続される制御装置(11)と、
前記制御装置と前記第1導電膜とを接続する第1はんだ(18)と、
前記制御装置と前記第2導電膜とを接続する第2はんだ(19)と、をさらに備える請求項2または3に記載の電気部品。
【請求項10】
前記センサが、パワーウィンドウ装置(4)に設けられるモータ(2)の磁界変化を検出するための部品であって、
磁界変化を検出可能な程度に、前記センサが前記基材において、前記モータの近傍に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の電気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、磁界を検出するセンサを備える電気部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、銅箔層が設けられたプリント配線基板が記載されている。厚さ方向に対称関係にある銅箔層の双方または一方にバランス処理を施して、厚さ方向に対称関係にある銅箔層のバランスを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-124612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚さ方向に直交する方向に関して、銅箔層の密度が不均質であると、プリント配線基板に反りが生じる虞があった。
【0005】
そこで本開示の目的は、反りが生じることが抑制された電気部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電気部品は、
回路素子(15)と、
磁界変化を検出するセンサ(16)と、
回路素子が設けられている第1領域(10B)、および、センサが設けられている第2領域(10C)を有する基材(10A)と、
第1領域に設けられている第1導電部材(15A、15B、15C、15D)と、
第2領域に設けられている第2導電部材(16A、16B、16C、16D、16E、17A)と、を備え、
第1領域における第1導電部材の存在量と、第2領域における第2導電部材の存在量との差である存在量差が、基材の反りに対して、影響を及ぼさない程度に小さい。
【0007】
これによれば、基材(10A)の反りが抑制される。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電気部品のブロック図である。
図2】第1実施形態の電気部品の平面図である。
図3】第2実施形態の電気部品の平面図である。
図4図3に示すIVから見た電気部品の側面図である。
図5】第3実施形態の電気部品の平面図である。
図6】第4実施形態の電気部品の平面図である。
図7】第5実施形態の電気部品の平面図である。
図8図7に示すVIII-VIII線の電気部品の断面図である。
図9】第6実施形態の電気部品の平面図である。
図10図9に示すXから見た電気部品の側面図である。
図11】第7実施形態の電気部品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0011】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
<パワーウィンドウ装置>
以下に、電気部品1をパワーウィンドウ装置4に適用した例について説明する。図1はパワーウィンドウ装置4の電気構成図である。図2は電気部品1の平面図である。パワーウィンドウ装置4は、例えば車両のドアに設けられるウィンドウガラス5を昇降可能にする装置である。パワーウィンドウ装置4は、電気部品1と、モータ2と、操作スイッチ3と、を備える。電気部品1は、モータ2の作動を制御する。操作スイッチ3は、乗員がパワーウィンドウ装置4に対して作動を指令するために、車両に設けられているスイッチである。操作スイッチ3から電気部品1に操作信号が入力される。
【0013】
電気部品1はモータ2に接続されている。操作スイッチ3から電気部品1に操作信号が入力されると、電気部品1からモータ2に電力が供給される。供給された電力によってモータ2が回転する。モータ2の回転力が、パワーウィンドウ装置4に設けられている昇降アームなどの変換機構を介して、ウィンドウガラス5に伝達される。モータ2の回転力が、ウィンドウガラス5を昇降する力に変換される。
【0014】
なお、電気部品1は、パワーウィンドウ装置4以外にも適用することができる。電気部品1は、パワーウィンドウ装置4、自動ドア装置、ポンプ装置、送風装置など多様な基板をもつ装置に適用することができる。電気部品1は、その用途に起因して、基板における導体パターンが偏らざるを得ない場合に適している。
【0015】
<電気部品の電気的構成>
図1に示すように、電気部品1は、コントローラ11と、電源回路素子12と、入力回路素子13と、駆動回路素子14と、ホールセンサ16と、を備える。コントローラ11および駆動回路素子14には、自身の作動に必要な電力が電源回路素子12を介して供給される。入力回路素子13に、操作スイッチ3からの操作信号が入力される。なお、図面においては、モータ2を「M」と略記している。操作スイッチ3を「SW」と略記している。コントローラ11を「CONT」と略記している。電源回路素子12を「PSC」と略記している。入力回路素子13を「INC」と略記している。駆動回路素子14を「DRC」と略記している。ホールセンサ16を「HSNR」と略記している。コントローラ11は制御装置に相当する。
【0016】
コントローラ11は、入力回路素子13に入力された操作信号に基づいて、駆動回路素子14を介してモータ2を駆動させる。ホールセンサ16は、モータ2の出力軸2Aとともに回転するロータの磁界変化を検出可能なセンサである。ホールセンサ16は一例としてモータ2の回転速度信号を検出する。さらにホールセンサ16は検出した回転速度信号をコントローラ11へ出力する。
【0017】
一例として、回転速度信号は、ウィンドウガラス5の所定移動量毎に、ホールセンサ16へ入力される。ウィンドウガラス5の所定移動量毎に、ホールセンサ16からコントローラ11へ回転速度信号が出力される。コントローラ11は、ウィンドウガラス5の所定移動量毎に入力される回転速度信号に基づいて、ウィンドウガラス5の昇降位置を算出する。なお、回転速度信号が入力されるタイミングは、ウィンドウガラス5の所定移動量毎に限定されない。他の一例として、回転速度信号が入力されるタイミングは、モータ2の所定回転角毎であってもよい。
【0018】
<電気部品の機械的構成>
電気部品1に含まれる構成要素を説明するに当たって、後述の基板10における厚さ方向をTD(thickness direction)方向と称することがある。基板10の厚さ方向に直交する二方向の奥行方向をDP(depth direction)方向、幅方向をWD(width direction)方向と称することがある。なお、DP方向およびWD方向は、後述の表面10Dと裏面10Eの広がる方向に相当する。
【0019】
電気部品1は、さらに、基板10と、第1はんだ18と、第2はんだ19と、を備える。基板10は、絶縁基材10Aと、導電膜15A、16Aを備える。絶縁基材10Aは、回路要素を支持する基材である。絶縁基材10Aは、樹脂などの電気絶縁性を有する材料を用いて形成されている。絶縁基材10Aとしては、たとえば樹脂のみを含むもの、ガラス布、不織布などと樹脂とを組み合わせたものを採用することができる。導電膜15A、16Aは、第1導電膜15Aと第2導電膜16Aを含む。第1導電膜15Aと第2導電膜16Aは、金属箔をパターニングして形成されている。金属箔の一例は、銅箔である。
【0020】
絶縁基材10Aは、TD方向に関して厚さが薄い扁平形状である。絶縁基材10Aは、TD方向に厚さ分、離れて配置された、表面10Dと裏面10Eを備える。表面10Dと裏面10EそれぞれはTD方向に直交する平面に沿って延びている。表面10Dに、コントローラ11、電源回路素子12、入力回路素子13、駆動回路素子14、第1導電膜15A、ホールセンサ16、第2導電膜16A、第1はんだ18、および、第2はんだ19が設けられている。
【0021】
なお、コントローラ11、電源回路素子12、入力回路素子13、および、駆動回路素子14は、パッケージにそれぞれ被覆されている。各々のパッケージから端子が露出されている。パッケージとしては、QFN(Quad Flat Non-leaded package)が採用されている。QFNはリードがなく、代わりに電極パッドが端子として備えられたパッケージである。なお、パッケージはQFNに限定されない。
【0022】
これまでに説明したように、ホールセンサ16は、モータ2の出力軸2Aとともに回転するロータの磁界変化を検出可能なセンサである。そのために、ホールセンサ16はロータの磁界変化を検出可能な程度に、モータ2の近くに設けることが設計として要求される。第1実施形態においては、モータ2がWD方向に関して基板10の縁部と隣接するように設けられている。
【0023】
モータ2の出力軸2AがWD方向に関して基板10の縁部と隣接するように設けられている。出力軸2AはDP方向に沿って延びている。DP方向はモータ2の回転軸方向でもある。出力軸2AはDP方向を回転軸として時計回りまたは半時計周りに回転する。ホールセンサ16が、モータ2に隣接している側の縁部の近傍に設けられている。ホールセンサ16が、モータ2の磁界変化を検出可能な程度に、モータ2に隣接している縁部の近傍に設けられている。このようにして、ホールセンサ16の配置がモータ2の配置によって決定されている。ホールセンサ16の配置の変更が容易ではない。
【0024】
電源回路素子12、入力回路素子13、および、駆動回路素子14それぞれは、第1導電膜15Aを介してコントローラ11に接続されている。なお、以下説明を簡便にするために、文脈に応じて適宜、電源回路素子12、入力回路素子13、および、駆動回路素子14を合わせて、回路素子15と称する場合がある。回路素子15は電気回路に設けられる素子の総称である。コントローラ11から回路素子15に向かって第1導電膜15Aが各々延びている。コントローラ11と電源回路素子12をつなぐように第1導電膜15Aが延びている。コントローラ11と入力回路素子13をつなぐように第1導電膜15Aが延びている。コントローラ11と駆動回路素子14をつなぐように第1導電膜15Aが延びている。
【0025】
3つの第1導電膜15Aの一端が、コントローラ11の端子に、第1はんだ18を介して、接続されている。3つの第1導電膜15Aのうちの1つの他端が、電源回路素子12の端子に、第1はんだ18を介して接続されている。3つの第1導電膜15Aのうちの別の1つの他端が、入力回路素子13の端子に、第1はんだ18を介して接続されている。3つの第1導電膜15Aのうちのさらに別の1つの他端が、駆動回路素子14の端子に、第1はんだ18を介して接続されている。
【0026】
ホールセンサ16は、第2導電膜16Aを介してコントローラ11に接続されている。第2導電膜16Aは、コントローラ11からホールセンサ16に向かって延びている。第2導電膜16Aの一端が、コントローラ11の端子に、第2はんだ19を介して、接続されている。第2導電膜16Aの他端が、ホールセンサ16の端子に、第2はんだ19を介して接続されている。
【0027】
<第1領域と第2領域>
本実施形態では、基板10は平面視において長方形である。なお、平面視における基板10の形状は長方形に限定されない。例えば基板10の形状はL字状であってもよい。以下、表面10Dにおける領域を説明するに当たって、WD方向に関して表面10Dを二分する仮想の境界線BLを図面に付す。図面においては、境界線BLを破線で表している。表面10Dは、境界線BLによって、第1領域10Bと第2領域10Cに分けられる。一例として、第1領域10Bの大きさと第2領域10Cの大きさは等しい。なお、第1領域10Bの大きさと第2領域10Cの大きさは等しくなくても良い。
【0028】
さらに、第1領域10Bに、回路素子15と、第1導電膜15Aと、第1はんだ18と、コントローラ11の一部と、が設けられている。第1領域10Bにおいて、電源回路素子12、入力回路素子13、駆動回路素子14が密集して設けられている。なお、第1実施形態では、第1領域10Bに、回路素子15として、電源回路素子12、入力回路素子13、駆動回路素子14が含まれている形態について説明したが、第1領域10Bに設けられる回路素子15はこれらに限定されない。回路素子15として、電源回路素子12、入力回路素子13、駆動回路素子14に代わって、別の回路や電子素子が設けられていてもよい。
【0029】
第2領域10Cに、ホールセンサ16と第2導電膜16Aと、第2はんだ19と、コントローラ11の残りの部位が設けられている。第2領域10Cにおいて、ホールセンサ16が、モータ2の磁界変化を検出可能な程度、モータ2の近傍に設けられている。さらに言えば、ホールセンサ16が、モータ2の磁界変化を検出可能な程度に、出力軸2Aに隣接している縁部の近傍に設けられている。表面10Dにおいて、ホールセンサ16が回路素子15から離れて設けられている。
【0030】
なお、境界線BLは表面10Dを二分する線分であれば、その形状は限定されない。表面10Dが境界線BLによって、回路素子15の設けられる第1領域10Bと、ホールセンサ16の設けられる第2領域10Cに分けられればよい。なお、第1領域10Bに回路素子15のすべてが設けられていなくてもよい。第1領域10Bに回路素子15の一部が設けられていてもよい。第2領域10Cにホールセンサ16のみが設けられていなくても良い。第2領域10Cにホールセンサ16の他に、回路素子15とは別の、別の回路素子17が設けられていても良い。
【0031】
領域10B、10Cに関してまとめると、基板10は、TD方向に直交する平面に沿って、2つだけの領域10B、10Cを有している場合がある。2つの領域10B、10Cは、基板10におけるTD方向に直交する平面における面積を等分する場合がある。2つの領域10B、10Cの境界は、コントローラ11のパッケージを通っている場合がある。図示の実施形態では、2つの領域10B、10Cの境界は、DP方向(奥行方向)に沿って延びている。
【0032】
基板10は、領域10B、10Cごとに温度変化に起因する膨張収縮量が異なる。この結果、基板10は湾曲する場合がある。湾曲は、基板10をTD方向へ凸または凹となるように生じる。湾曲は、WD方向を弦とし、かつ、変形した基板10を弧とするように生じる。湾曲は、基板10のWD方向における反りとも呼ばれる。
【0033】
第1領域10Bにおける第1導電膜15Aの存在量と、第2領域10Cにおける第2導電膜16Aの存在量との差である存在量差を想定することができる。存在量差は、存在量差に起因する基板10の反りが、許容範囲内に抑制される程度に小さい。存在量差は、存在量差に起因する基板10の反りが、電気的な接続の断線を生じない程度に小さい。
【0034】
<第1導電膜の存在量と第2導電膜の存在量>
第1導電膜15Aにおける、表面10Dに沿うとともに、コントローラ11と回路素子15とを繋ぐように延びる延伸方向に直交する方向の長さを長さL1と称する場合がある。長さL1は、第1導電膜15AにおけるTD方向に直交する方向のうちの短手方向の長さでもある。第2導電膜16Aにおける、表面10Dに沿うとともに、コントローラ11とホールセンサ16とを繋ぐように延びる延伸方向に直交する方向の長さを長さL2と称する場合がある。長さL2は、第2導電膜16AにおけるTD方向に直交する方向のうちの短手方向の長さでもある。
【0035】
長さL2の大きさが、長さL1の長さよりも長い。そして第1領域10Bにおける第1導電膜15Aの存在量と、第2領域10Cにおける第2導電膜16Aの存在量との差である、存在量差が、所定値未満である。所定値とは、存在量差が、基板10の反りに対して、影響を及ぼさない程度に小さい値のことである。なお、コントローラ11から回路素子15に向かって各々延びる第1導電膜15Aの長さL1は等しくても、等しくなくてもよい。存在量差が、所定値未満であればよい。
【0036】
<電気部品の製造方法>
一例として基板10は、以下のようにして製造される。先ず、銅箔層が形成された基板10を用意する。次に銅箔層に、パターン印刷などによって、第1導電膜15Aおよび第2導電膜16Aなどの配線パターンを形成する。次にエッチングによって、第1導電膜15Aおよび第2導電膜16Aなどの配線パターン以外の銅箔層を除去する。
【0037】
次に、得られた基板10の所定位置に、はんだ18、19を設ける。さらに基板10の所定位置にコントローラ11、電源回路素子12、入力回路素子13、駆動回路素子14、および、ホールセンサ16を設ける。次にリフロー炉内で加熱して、はんだ18、19を溶融させる。そしてコントローラ11、電源回路素子12、入力回路素子13、駆動回路素子14、および、ホールセンサ16と、導電膜15A、16Aと、をはんだ18、19を介して接続させる。このようにして基板10が製造されている。
【0038】
ところで銅箔層は、リフロー炉内における加熱時に膨張し、さらに冷却されて収縮する。その際、基板10に残った銅の存在量が不均質であると、銅の存在量の差に起因して基板10に反りが生じることがある。なお、基板10に残った銅の線膨張率差が不均一であると、銅の線膨張率差の差に起因して基板10に反りが生じるとも言える。また製造時に限らず、基板10は、市場において摂氏マイナス30度~摂氏150度の環境にさらされた状態で使用される可能性がある。これによっても、銅の存在量の差に起因して基板10に反りが生じる虞がある。そのために第1実施形態では、積極的に導電膜15A、16Aの存在量差が所定値未満となるようにして、基板10の反りを抑制させている。積極的に導電膜15A、16Aの線膨張率差が所定値未満となるようにして、基板10の反りを抑制させているとも言える。
【0039】
<作用効果>
第2導電膜16AにおけるTD方向に直交する方向のうちの短手方向の長さである長さL2が、第1導電膜15AにおけるTD方向に直交する方向のうちの短手方向の長さである長さL1よりも長い。そして、第1領域10Bにおける第1導電膜15Aの存在量と、第2領域10Cにおける第2導電膜16Aの存在量との差である、存在量差が、基板10の反りに対して、影響を及ぼさない程度に小さい。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。なお、存在量差を起因とする反りが絶縁基材10Aに生じることが抑制されるとも言い変えることができる。基板10の反りの低減により、筐体組付け時の基板10の寸法外れの発生も防ぐことができる。
【0040】
コントローラ11、回路素子15、および、ホールセンサ16が、QFN型のパッケージに被覆されている。パッケージから露出した端子が、はんだ18、19を介して導電膜15A、16Aに接続されている。QFN型のパッケージはQFP型のパッケージ(Quad Flat Package)と比較して基板10の反りに対してはんだ18、19にストレスがかかりやすい。しかしながら第1実施形態によれば、コントローラ11などにQFN型のパッケージが採用されていても、はんだ18、19にストレスがかかることが抑制される。導電膜15A、16Aの存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制されるのに伴って、はんだ18、19にストレスがかかることが抑制される。
【0041】
第1領域10Bに、回路素子15と、第1導電膜15Aと、第1はんだ18が設けられている。第1領域10Bにおいて、回路素子15が密集して設けられている。第2領域10Cに、ホールセンサ16と、第2導電膜16Aと、第2はんだ19が設けられている。第2領域10Cにおいて、ホールセンサ16が、モータ2の磁界変化を検出可能な程度、モータ2の近傍に設けられている。ホールセンサ16の配置がモータ2の配置によって決定されている。ホールセンサ16の配置の変更が容易ではない。
【0042】
そのために、基板10において素子が密集する第1領域10Bと、素子が密集せず疎となる第2領域10Cが生じる。このような配置においては、第1導電膜15Aと第2導電膜16Aの存在量差を所定値未満とすることは難しい。しかしながら第1実施形態によれば、基板10において素子が密集する第1領域10Bと、素子が密集せず疎となる第2領域10Cが生じていても、存在量差を所定値未満にすることが可能である。存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。
【0043】
(第2実施形態)
図3に示すように第2実施形態においては、第1導電膜15Aの長さL1と、第2導電膜16Aの長さL2は等しい。第1導電膜15AにおけるTD方向に関する長さを、長さH1と称する場合がある。第2導電膜16AにおけるTD方向に関する長さを、長さH2と称する場合がある。図4に示すように第2実施形態においては、第2導電膜16AのTD方向に関する長さH2が、第1導電膜15AのTD方向に関する長さH1よりも長い。
【0044】
そして第1導電膜15Aと第2導電膜16Aの存在量差が所定値未満である。なお、コントローラ11から回路素子15に延びる第1導電膜15AそれぞれのTD方向の長さH1が異なっていてもよい。その場合においても、第1導電膜15Aと第2導電膜16Aの存在量差が、所定値未満であればよい。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。
【0045】
(第3実施形態)
図5に示すように第3実施形態においては、電気部品1が2つの第2導電膜16Aを備える。第2領域10Cに2つの第2導電膜16Aが設けられている。2つの第2導電膜16Aそれぞれが、コントローラ11の端子とホールセンサ16の端子に、第2はんだ19を介して接続されている。そして、第1導電膜15Aと第2導電膜16Aの存在量差が所定値未満である。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。なお、第2領域10Cに設けられる第2導電膜16Aの個数は2つに限定されない。第2領域10Cに設けられる第2導電膜16Aの個数はいくつであってもよい。
【0046】
(第4実施形態)
図6に示すように第4実施形態においては、電気部品1が、第2導電膜16Aおよびホールセンサ16と非接続である、2つの導電パターン16Eを備えている。第2領域10Cに2つの導電パターン16Eが設けられている。そして、第1領域10Bにおける第1導電膜15Aの全体の存在量と、第2領域10Cにおける、第2導電膜16Aの存在量と導電パターン16Eの存在量とを合算した存在量との差である、存在量差が、所定値未満である。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。なお、第2領域10Cに設けられる導電パターン16Eの個数は2つに限定されない。第2領域10Cに設けられる導電パターン16Eの個数はいくつであってもよい。
【0047】
(第5実施形態)
図7および図8に示すように第5実施形態においては、基板10が、4つの絶縁層10Fと、2種類の第1導電部材15A~15C、16A~16Cを備えている。第1導電部材15A~15C、16A~16Cには、第1導電膜15Aと、第2導電膜16Aと、第1内部パターン15B、15Cと、第2内部パターン16B、16Cと、が含まれている。内部パターン15B、15C、16B、16Cは、隣り合う絶縁層10Fの間に設けられている。なお、絶縁層10Fの数、および、内部パターン15B、15C、16B、16Cの数は限定されない。
【0048】
第1導電膜15A、および、第2導電膜16Aは、信号線、信号ライン、信号パターンなどと称されることがある。第1導電膜15Aは回路素子15に電気的に接続されている。内部パターン15B、16Bは例えば、グランド配線である。グランド配線は回路素子15およびホールセンサ16においてグランド電位を提供する。グランド配線は、グランド層、グランドパターンなどと称されることがある。内部パターン15C、16Cは例えば、電源配線である。電源配線は、回路素子15およびホールセンサ16において、電源電位を提供する。電源配線は、電源層、電源パターンなどと称されることがある。
【0049】
また第5実施形態においては、境界線BLによって、基板10は、第1領域10Bと第2領域10Cに分けられる。第1領域10Bおよび第2領域10CはTD方向に厚みを有している。第1領域10Bには、第1導電部材15A~15Cとして、第1導電膜15Aと、第1内部パターン15B、15Cとが含まれる。第2領域10Cには、第2導電部材16A~16Cとして、第2導電膜16Aと、第2内部パターン16B、16Cとが含まれる。
【0050】
第2領域10Cに含まれる第2内部パターン16B、16Cの存在量が、第1領域10Bに含まれる第1内部パターン15B、15Cの存在量よりも多い。一例として、第1導電部材15A~15C、16A~16Cの存在量の差異は、平面に沿って拡がる面積の差で調整する。別の一例としてTD方向の厚さの差で調整してもよい。そして、第1領域10Bに含まれる第1導電部材15A~15Cの存在量と、第2領域10Cに含まれる第2導電部材16A~16Cの存在量との差である、存在量差が所定値未満である。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。
【0051】
(第6実施形態)
図9および図10に示すように第6実施形態においては、第2領域10Cの裏面10Eに、回路素子15とは別の回路素子17が設けられている。回路素子17とコントローラ11とを第3導電膜17Aが電気的に接続する。基板10に、TD方向に貫通するスルーホールが形成されている。スルーホールは、表面10Dと裏面10Eとに、開口を形成している。スルーホールの内壁と、表面10Dの開口の縁と、裏面10Eの開口の縁に、めっきが連続して設けられている。
【0052】
回路素子17に繋がる第3導電膜17Aの一部が、表面10Dにおいて、コントローラ11の端子から表面10D側のスルーホールの縁に向かって延びている。回路素子17に繋がる第3導電膜17Aの残りの部位が、裏面10Eにおいて、裏面10E側のスルーホールの縁から回路素子17の端子に向かって延びている。
【0053】
第6実施形態においても、境界線BLによって、基板10は、第1領域10Bと第2領域10Cに分ける。第1領域10Bおよび第2領域10CはTD方向に厚みを有している。第1領域10Bには、導電部材15Aとして、電源回路素子12に繋がる第1導電膜15Aと、入力回路素子13につながる第1導電膜15Aが含まれる。第2領域10Cには、導電部材16A、17Aとして、回路素子17につながる第3導電膜17Aと第2導電膜16Aが含まれる。
【0054】
そして、第1領域10Bに含まれる導電部材15Aの存在量と、第2領域10Cに含まれる導電部材16A、17Aの存在量との差である、存在量差が所定値未満である。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。またTD方向に関して、第2導電膜16Aと第3導電膜17Aとが重なっている。これによれば第2領域10CにおいてTD方向に関して導電部材16A、17Aの分布が不均質になることが抑制される。第2領域10Cに反りが生じることが抑制される。
【0055】
(第7実施形態)
図11に示すように第7実施形態においては、基板10が、さらに、導電部材15D、16Dとして、ビア導体15D、16Dを備える。ビア導体15D、16Dは、異なる層に配置されている、内部パターン15B、15C、16B、16Cや導電膜15A、16Aを電気的に接続する。ビア導体15D、16DはTD方向に関して電気的な導通を提供する。ビア導体15D、16Dは、接続ビア、層間接続部などと称されることがある。
【0056】
第7実施形態においても、境界線BLによって、基板10を、第1領域10Bと第2領域10Cに分ける。第1領域10Bには、第1導電部材15A、15Dとして、第1導電膜15Aと第1ビア導体15Dが含まれる。第2領域10Cには、第2導電部材16A、16Dとして、第1導電膜15Aと第2ビア導体16Dが含まれる。第2領域10Cに含まれる第2ビア導体16Dの数は、第1領域10Bに含まれる第1ビア導体15Dの数よりも多い。そして、第1領域10Bに含まれる第1導電部材15A、15Dの存在量と、第2領域10Cに含まれる第2導電部材16A、16Dの存在量との差である、存在量差が所定値未満である。これによれば、存在量差を起因とする反りが基板10に生じることが抑制される。
【0057】
境界線BLを対称軸として、WD方向に関して、第1ビア導体15Dと一部が重複するように、第2ビア導体16Dが第2領域10Cに設けられている。なお、第1領域10Bにおいて第1ビア導体15DがDP方向に関して対称となるように設けられている。第2領域10Cにおいて第2ビア導体16DがDP方向に関して対称となるように設けられている。通電経路上不必要なビア導体15D、16Dであっても、平面方向に関するバランスを優先して、ビア導体15D、16Dが基板10に設けられることがある。
【0058】
(その他の実施形態)
第1実施形態~第7実施形態の構成を種々組み合わせた構成とすることもできる。第1実施形態~第7実施形態の構成をいくつ組み合わせた構成としてもよい。また適宜、第1実施形態~第7実施形態の構成において、導電部材15A~15D、16A~16D、17Aに導電膜15A、16A、17Aが含まれない構成が採用されていてもよい。第1実施形態~第7実施形態の構成において、基板10における反りの挙動が分かる場合は、山なりに凸となる側の導電部材15A~15D、16A~16D、17Aの存在量を減らすことが望ましい。
【符号の説明】
【0059】
10A 基材、 10B 第1領域、 10C 第2領域、 10D 表面、 10E 裏面、 11 制御装置、 15 回路素子、 15A 第1導電部材、 15A 第1導電膜、 15B 第1導電部材、 15B 第1内部パターン、 15C 第1導電部材、 15C 第1内部パターン、 15D 第1導電部材、 15D 第1ビア導体、 16 センサ、 16A 第2導電部材、 16A 第2導電膜、 16B 第2導電部材、 16B 第2内部パターン、 16C 第2導電部材、 16C 第2内部パターン、 16D 第2導電部材、 16D 第2ビア導体、 16E 第2導電部材、 16E 導電パターン、 17A 第2導電部材、 17A 第3導電膜、 18 第1はんだ、 19 第2はんだ、 2 モータ、 4 パワーウィンドウ装置、 H1、H2、L1、L2 長さ、 TD 厚さ方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11