(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178871
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】分析装置、分析装置用磁場発生装置、および、分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20231211BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N33/543 541A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091829
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】原頭 基司
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 孝
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059AA06
2G059AA10
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF02
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】撮影部を配置しつつ、撮影部の撮影範囲内に磁性粒子を集積可能な磁場発生部を配置することである。
【解決手段】実施形態に係る分析装置は、磁性体を含む試料を収容するカートリッジが配置される試料配置部と、前記試料配置部の前記カートリッジが配置される面とは反対面の側に配置され、前記反対面からの撮影によって、前記試料を撮影する撮影部と、前記反対面の側に配置され、前記撮影部に対応する位置に開口が形成され、前記開口の周りに第1の磁極が形成されることにより、第1の磁場を発生させる第1の磁場発生部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を含む試料を収容するカートリッジが配置される試料配置部と、
前記試料配置部の前記カートリッジが配置される面とは反対面の側に配置され、前記反対面からの撮影によって、前記試料を撮影する撮影部と、
前記反対面の側に配置され、前記撮影部に対応する位置に開口が形成され、前記開口の周りに第1の磁極が形成されることにより、第1の磁場を発生させる第1の磁場発生部と、
を備える分析装置。
【請求項2】
前記第1の磁場発生部においては、前記試料配置部における前記試料を収容するカートリッジが配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるように、前記第1の磁極と異極の第2の磁極が配置される、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記第1の磁場発生部における前記第2の磁極は、前記開口の周りに形成された前記第1の磁極による磁場に影響を与えない、前記開口から離間した位置に形成される、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記開口から離間した位置は、前記第1の磁極から前記第2の磁極までの距離が、前記開口の中心から前記第1の磁極までの距離の3倍以上離れた位置である、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第1の磁場発生部は、複数の棒形状の磁石を有し、
前記複数の棒形状の磁石は、前記複数の棒形状の磁石のそれぞれの前記第1の磁極が、前記開口の周りに複数並び、それぞれの第2の磁極が前記開口から離れて円周状に並ぶように配置される、請求項2に記載の分析装置。
【請求項6】
前記複数の棒形状の磁石は、前記試料配置部における前記カートリッジが配置される面に対して、前記複数の棒形状の磁石のそれぞれの長手方向が平行となるように、配置される、請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記複数の棒形状の磁石は、前記試料配置部における前記カートリッジが配置される面に対して、前記複数の棒形状の磁石のそれぞれの長手方向が垂直となるように、配置される、請求項5に記載の分析装置。
【請求項8】
記複数の棒形状の磁石は、前記試料配置部における前記カートリッジが配置される面に対して、前記複数の棒形状の磁石のそれぞれの長手方向が傾斜するように、配置される、請求項5に記載の分析装置。
【請求項9】
前記第1の磁場発生部は、環状形状の磁石を有し、
前記環状形状の磁石は、前記第1の磁極が、前記開口の周りに連続的に形成され、前記第2の磁極が、前記試料配置部における前記カートリッジが配置される面に対して垂直な方向及び前記第1の磁極の下方において、連続的に形成される、請求項2に記載の分析装置。
【請求項10】
前記環状形状の磁石は、前記試料配置部における前記カートリッジが配置される面に対して垂直な方向に、複数の環状形状の磁石片を積層して形成される、請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記磁石は、永久磁石である請求項5乃至請求項10のいずれかに記載の分析装置。
【請求項12】
前記永久磁石を、前記磁性体に磁場を印加させない位置に移動する移動機構を更に備える、請求項11に記載の分析装置。
【請求項13】
前記開口の径は、前記撮影部の最大径よりも大きく形成され、
前記移動機構は、前記撮影部が、前記開口に挿入されるように、前記永久磁石を、前記磁性体に磁場を印加させない位置に移動させる、請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記磁石は、磁心と、前記磁心に巻回されたコイルと、を有する電磁石である請求項5乃至請求項10のいずれかに記載の分析装置。
【請求項15】
前記撮影部は、前記第1の磁場発生部の開口を通じて、前記試料を撮影する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項16】
前記カートリッジが前記試料配置部に配置されたとき、前記開口の中心から、前記カートリッジにおいて前記試料が収容される試料収容部の底面であるセンサ面までの距離Dは、下記の算出式で得られ、
D=1.1×R1
但し、R1は前記開口の中心を中心として、前記第1の磁極が位置する所定の円周の半径である
請求項1に記載の分析装置。
【請求項17】
前記第1の磁場発生部は、前記磁性体を前記撮影部に近づける方向に移動させる前記第1の磁場を発生させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項18】
前記試料配置部の前記カートリッジが配置される面の側に配置され、前記試料中に含まれる磁性体を前記撮影部から遠ざける方向に移動させる第2の磁場を発生させる第2の磁場発生部を更に備える、請求項1に記載の分析装置。
【請求項19】
磁性体を含む試料を収容するカートリッジが配置される試料配置部と、
前記試料配置部の前記カートリッジが配置される面とは反対面の側に配置され、前記反対面からの撮影によって、前記試料を撮影する撮影部と、を備える分析装置であって、
前記反対面の側に配置され、前記撮影部に対応する位置に開口が形成され、前記開口の周りに第1の磁極が形成されることにより、第1の磁場を発生させる第1の磁場発生部と、
を備える分析装置用磁場発生装置。
【請求項20】
磁性体を含む試料を収容するカートリッジが配置される試料配置部と、
前記試料配置部の前記カートリッジが配置される面とは反対面の側に配置され、前記反対面からの撮影によって、前記試料を撮影する撮影部と、
前記反対面の側に配置され、前記撮影部による前記試料の撮影のための開口を形成し、前記開口の周りに第1の磁極が形成されることにより、第1の磁場を発生させる第1の磁場発生部と
を用いて前記試料を分析する分析方法であって、
前記試料配置部にカートリッジが配置される工程と、
前記第1の磁場発生部により、前記第1の磁場を発生させて、前記磁性体を移動させる工程と、
前記撮影部により、前記試料配置部に配置された試料を撮影する工程と、
を有する分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、分析装置、分析装置用磁場発生装置、および、分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極微量のウイルスや生体物質等の試料中の検出対象物を高感度に検出することによって、感染症等の疾病を早期に診断することを可能にする分析装置が、多くの病院で利用されている。このような分析装置においては、試料中の検出対象物を磁性粒子と結合させ、磁性粒子を含む試料を収容するカートリッジを配置する試料配置部の上側及び下側に配置された磁場発生部によって、磁性粒子を速く沈降及び上昇させて、検査対象物の付着した磁性粒子のみをセンサエリア上に集める。そして、分析装置は、光学的な手段を用いて、磁性粒子を含む試料を収容するカートリッジに形成されたセンサエリアに捕捉された磁性粒子の個数を計数することにより、試料に含まれる検出対象物を高感度に検出および定量することができる。
【0003】
この分析装置の光学的手段には、センサエリアに捕捉された磁性粒子の個数を計数しつつ、磁性粒子の沈降や上昇の過程を連続的に観察するための撮影部が用いられる場合がある。この光学的手段に撮影部が用いられる場合、撮影部はカートリッジの下側からセンサエリアを撮影する必要がある。しかし、試料配置部の下側には、磁場発生部が配置されているため、磁場発生部が障害となり、磁場発生部により磁性粒子を沈降させつつ、撮影部により磁性粒子の沈降の過程を撮影することができない。この問題を解消するために、磁場発生部に、扁平且つ、環状形状の磁石を用いることにより磁性粒子を沈降させつつ、撮影部は、磁石の開口を通じて、カートリッジのセンサエリアを撮影することができる。
【0004】
しかしながら、環状形状の外周を境界とする閉曲面を垂直に貫く方向に単純に着磁された扁平且つ、環状形状の磁石を用いた場合、磁性粒子は、撮影部の撮影範囲内である、磁石の開口上方のセンサエリア中央部分に集まらず、殆どが磁石の環状内周部分のセンサエリアに集まることとなり、撮影部により磁性粒子の沈降の過程を撮影するには不利である。このため、分析装置において、磁性粒子の沈降と上昇の過程を連続的に観察するためには、試料配置部の下側に、撮影部を配置しつつ、撮影部の撮影範囲内に磁性粒子を集積可能な磁場発生部が設けられていることが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5759378号公報
【特許文献2】特許第5253423号公報
【特許文献3】特許第5759377号公報
【特許文献4】国際公開第2008/107827号公報
【特許文献5】国際公開第2010/058303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、撮影部を配置しつつ、撮影部の撮影範囲内に磁性粒子を集積可能な磁場発生部を構成し配置することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記の課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る分析装置は、磁性体を含む試料を収容するカートリッジが配置される試料配置部と、前記試料配置部の前記カートリッジが配置される面とは反対面の側に配置され、前記反対面からの撮影によって、前記試料を撮影する撮影部と、前記反対面の側に配置され、前記撮影部に対応する位置に開口が形成され、前記開口の周りに第1の磁極が形成されることにより、第1の磁場を発生させる第1の磁場発生部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る分析システムの機能構成の例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る分析システムの詳細構成の例を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る分析装置の下磁場発生部の上面図。
【
図4】比較例に係る下磁場発生部の構成による磁力線を示す図。
【
図5】比較例に係る下磁場発生部の構成による磁性粒子の吸引位置を示す図。
【
図6】第1実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁力線を示す図。
【
図7】第1実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す斜視図。
【
図8】第1実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す上面図。
【
図9】第1実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す側面図。
【
図10】第1実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す斜視図。
【
図11】逆極性の単磁荷が十分遠方にあってその作用が無視できると見なせる場合、円周上に分布する単磁荷がzの位置に作る磁場を説明する図。
【
図12】第1実施形態に係る分析装置が、移動機構により、下磁場発生部を非磁場印加位置に移動した状態を示す図。
【
図13】移動機構がある本実施形態に係る分析装置で実行される分析処理の内容を説明するためのフローチャート図。
【
図14】変形例1に係る分析システムの詳細構成の例を示す図。
【
図15】変形例1に係る分析装置の下磁場発生部の上面図。
【
図16】変形例2に係る分析システムの詳細構成の例を示す図。
【
図17】第2実施形態に係る分析システムの詳細構成の例を示す図。
【
図18】第2実施形態に係る分析装置の下磁場発生部の上面図。
【
図19】第2実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す斜視図。
【
図20】第2実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す上面図。
【
図21】第2実施形態に係る下磁場発生部の構成における磁性粒子の吸引位置を示す側面図。
【
図22】変形例3に係る分析システムの詳細構成の例を示す図。
【
図23】変形例3に係る分析装置の下磁場発生部の上面図。
【
図24】移動機構がある変形例3に係る分析装置で実行される分析処理の内容を説明するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、分析装置、分析装置用磁場発生装置、および、分析方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明において実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1及び
図2を用いて、第1実施形態に係る分析システムの構成例を説明する。
図1は、第1実施形態に係る分析システムの機能構成の例を示すブロック図である。
図2は、第1実施形態に係る分析システムの詳細構成の例を示す図である。
図1に示すように、分析システム1は、カートリッジ2及び分析装置3を備えて構成されている。
【0011】
まず、
図2を用いて、カートリッジ2について説明する。カートリッジ2は、試料に検出対象物が含まれているか否かを分析する際に、分析装置3に対して配置される容器である。このカートリッジ2は、分析装置3に対して着脱可能に配置される。本実施形態において、
図2に示すように、カートリッジ2は、筐体21と、透明基板22とを備える。このカートリッジ2は、その内部、すなわち、筐体21及び透明基板22により形成される反応容器201に、磁性粒子を含む試料を収容可能に構成される。なお、カートリッジ2は、検査容器、反応容器、及び反応ユニット等と言い換えても構わない。また、カートリッジ2は、例えば、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、又はRS(Respiratory Syncytial)ウイルス等のウイルス検査など、多種の目的に用いることが可能である。
【0012】
カートリッジ2の筐体21は、例えば樹脂などで形成される。筐体21の下面には第1の凹部が形成されている。第1の凹部の上面の一部には反応容器201の上面及び側面を構成する第2の凹部が形成されている。そして、第1の凹部には、透明基板22が配置されている。また、第2の凹部の上面の一端部近傍に筐体21を上方に貫通してその内部の反応容器201に試料等を導入するための孔21aが形成され、他端部近傍に筐体21を上方に貫通して反応容器201から空気を逃がすための孔21bが形成されている。なお、孔21a及び孔21bは、それぞれ複数形成されてもよい。
【0013】
透明基板22は、光が透過する素材、例えば、樹脂又は光学ガラス等で形成される。透明基板22は側面が第1の凹部の側面に密接して配置されている。
【0014】
反応容器201は、上面が筐体21の第2の凹部の上面により構成され、側面が筐体21の第2の凹部の側面により構成され、下面が透明基板22の上面により構成される。この透明基板22の上面、すなわち、反応容器201の下面をセンサ面とも呼ぶ。
【0015】
反応容器201は、試料202を収容し、試料202に含まれる、検出対象物と試薬成分213とを反応させる。反応容器201を形成する面のうちの下面、すなわち透明基板22の上面には、複数の第1の抗体211が固定される。第1の抗体211は、検出対象物に含まれる抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する物質である。第1の抗体211は、例えば、透明基板22の上面と抗体のアミノ基を利用した共有結合により、透明基板22の上面に固定される。なお、反応容器201は、本実施形態における試料収容部に相当している。
【0016】
反応容器201は、例えば、予め空の状態となっている。検出時においては、例えば孔21aを介して、外部から反応容器201へ、試料202が注入される。試料202には、抗原212を含む検出対象物と、試薬成分213とが含まれる。試薬成分213には、例えば、抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する第2の抗体214と、第2の抗体214が結合された磁性粒子215とが含まれる。磁性粒子215は、少なくとも一部がマグネタイト等の磁性体材料で形成されている。磁性粒子215は、例えば、磁性体材料から形成された粒子の表面が高分子材料で被覆されている。なお、磁性粒子215は、高分子材料で構成された粒子の表面を磁性体材料で被覆するように構成されてもよい。また、磁性粒子215は、試料202において分散可能に構成されたものであればどのようなもので代替してもよい。磁性粒子215は、本実施形態における磁性体に相当している。
【0017】
試料202を注入することで、反応容器201には、透明基板22の上面に固定された第1の抗体211に加えて、検出対象物に含まれる抗原212及び試薬成分213が収容される。反応容器201に試料202が注入されると、反応容器201内の空気は、孔21bから外部へ排出される。
【0018】
試薬成分213は、反応容器201に満たされた試料202中を分散可能に移動する。このとき、磁性粒子215は、磁性粒子215に掛かる重力が、この重力と逆向きに掛かる試料202中における浮力よりも大きくなるように選ばれる。第2の抗体214が結合された磁性粒子215は、第2の抗体214が、抗原212を介して第1の抗体211と結合することで、透明基板22の上面近傍に固定される。なお、第2の抗体214は、第1の抗体211と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0019】
以下、
図2に示すように、反応容器201において、透明基板22の表面から鉛直上方向に離れた点線までの領域、すなわち、透明基板22の表面近傍に至る領域をセンサエリアと定義する。エバネッセント光を表面近傍に存在する磁性粒子の照明に使う場合、センサエリアの厚さは、エバネッセント光が表面から染み出す距離を意味する。
【0020】
次に、
図1及び
図2を用いて、分析装置3の構成詳細に説明する。分析装置3は、
図1に示すように、磁場発生回路31と、撮影部32と、入力インターフェース33と、出力インターフェース34と、記憶回路35と、処理回路36とを備えて構成されている。また、分析装置3は、
図2に示すように、カートリッジ2が配置される配置台37と、移動機構38とを備えている。なお、配置台37は、本実施形態における試料配置部に相当し、これには穴または透明窓が設けられており、撮影部32から配置台37の穴または透明窓と透明基板を通してカートリッジ2内の試料202を撮影可能な構造となっている。
【0021】
磁場発生回路31は、処理回路36の制御の下、磁場を発生させて、カートリッジ2に磁場を印加する。磁場発生回路31は、
図2に示すように、例えば、下磁場発生部311と、上磁場発生部312とを備えて構成されている。なお、本実施形態に係る分析装置3が、磁場を発生させる際には、分析装置用磁場発生装置としての役割を果たすことになる。
【0022】
下磁場発生部311は、例えば、永久磁石や電磁石などにより構成される。電磁石の場合には移動機構38は不要であり、下磁場印加の有無は駆動電流のオン・オフで磁場が制御される。下磁場発生部311は、配置台37のカートリッジ2が配置される面とは反対面の側、すなわち、カートリッジ2の下方に配置される。下磁場発生部311は、鉛直方向下向きの磁場を発生させて、カートリッジ2に対して下向きの磁場を印加する。すなわち、下磁場発生部311は、試料に含まれる磁性粒子を撮影部32に近づける方向に移動させる。この下磁場発生部311は、本実施形態における第1の磁場発生部に相当する。
【0023】
上磁場発生部312は、例えば、永久磁石や電磁石などにより構成される。電磁石の場合には移動機構38は不要であり、上磁場印加の有無は駆動電流のオン・オフで磁場が制御される。上磁場発生部312は、配置台37のカートリッジ2が配置される面の側、すなわち、カートリッジ2の上方に配置される。上磁場発生部312は、鉛直方向上向きの磁場を発生させて、カートリッジ2に対して上向きの磁場を印加する。すなわち、上磁場発生部312は、試料に含まれる磁性粒子を撮影部32から遠ざける方向に移動させる。本実施形態において、上磁場発生部312は、永久磁石により構成されている。この上磁場発生部312は、本実施形態における第2の磁場発生部に相当する。
【0024】
この下磁場発生部311の構成及び配置を、
図2及び
図3を用いて、詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る分析装置3の下磁場発生部311の上面図である。本実施形態において、
図2及び
図3に示すように、下磁場発生部311には、開口3111が形成される。また、下磁場発生部311は、複数の棒形状の磁石3112を有する。
【0025】
開口3111は、撮影部32に対応する位置に形成されている。この撮影部32に対応する位置とは、例えば、撮影部32の光軸L1方向の前方位置(試料202側)である。この開口3111は、撮影部32が、開口3111を通じて、試料202を撮影するために用いられる。また、本実施形態において、開口3111は、下磁場発生部311が、後述する下向きの磁場を印加しない非磁場印加位置に移動する際にも、用いられる。
【0026】
複数の棒形状の磁石3112のそれぞれは、永久磁石により構成される。この複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極は、開口3111の周りに形成され、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極は対向している。また、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第2の磁極は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。本実施形態においては、複数の棒形状の磁石3112は、6本の棒形状の磁石を備えて構成されている。
【0027】
この複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極は、第1平面PL1に位置する。また、第1平面PL1は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、平行である。この第1平面PL1の平面上には、第1平面PL1の中心を示す第1の中心O1が位置する。この第1の中心O1は、開口3111の中心である。また、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第2の磁極は、第2平面PL2に位置する。この第2平面PL2の平面上には、第2平面PL2の中心を示す第2の中心O2が位置する。第1平面PL1と第2平面PL2とは平行である。本実施形態において、第1の中心O1と第2の中心O2とが一致しているため、第1平面PL1と第2平面PL2とは一致している。
【0028】
本実施形態において、
図2及び
図3に示すように、6本の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極であるN極は、第1の中心O
1を中心とする半径R
1の円周に沿うように、配置される。つまり、6本の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極であるN極は、開口3111の周りに、複数並べて配置される。このように、下磁場発生部311は、開口3111の周りに第1の磁極であるN極が形成されることにより、下向きの磁場を発生させる。
【0029】
また、本実施形態において、
図2及び
図3に示すように、6本の棒形状の磁石3112のそれぞれの第2の磁極であるS極は、第2の中心O
2を中心とする、半径R
1より大きい半径R
2の円周に沿うように、配置される。つまり、6本の棒形状の磁石のそれぞれの第2の磁極であるS極は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。
【0030】
さらに、本実施形態において、6本の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極は、第1平面PL1に位置し、6本の棒形状の磁石3112のそれぞれの第2の磁極は、第2平面PL2に位置し、第1平面PL1と第2平面PL2とは一致していることから、6本の棒形状の磁石3112は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、6本の棒形状の磁石3112のそれぞれの長手方向が平行となるように配置される。
【0031】
なお、
図3に示す例では、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の数は、6本であるが、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の数は任意である。例えば、下磁場発生部311は、2本以上5本以下の磁石を備えるように構成されてもよく、7本以上の磁石を備えるように構成されてもよい。
【0032】
また、
図3に示す例では、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の断面形状は、長方形状であるが、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の断面形状は長方形状に限られない。すなわち、棒形状の磁石の断面形状は任意であり、円形や楕円形などの断面形状であってもよい。
【0033】
ここで、
図4乃至
図10を参照して、本実施形態に係る下磁場発生部311の構成による磁力線及び磁性粒子215の吸引位置と、比較例に係る下磁場発生部の構成による磁力線及び磁性粒子215の吸引位置とを説明する。
図4は、比較例に係る下磁場発生部の構成による磁力線を示す図である。
図5は比較例に係る下磁場発生部による磁性粒子215の吸引位置を示す図である。磁性粒子215の実際の直径は1μm前後であるが、
図5では吸引位置を分かりやすくするため故意に誇張して大きく描いてある。
図6は、本実施形態に係る下磁場発生部311の構成における磁力線を示す図である。
図7乃至
図10は、本実施形態に係る下磁場発生部311の構成における磁性粒子215の吸引位置を示す図である。
図7乃至
図10においても、磁性粒子215の吸引位置を分かりやすくするため故意に誇張して大きく描いてある。
【0034】
比較例に係る下磁場発生部は、
図4及び
図5に示すように、環状形状の外周を境界とする閉曲面を垂直に貫く方向に単純に着磁された扁平且つ、環状形状の磁石である。この磁石の上部には第1の磁極であるN極が形成されており、第1の磁極であるN極の下部には第2の磁極であるS極が形成されている。このように、比較例に係る下磁場発生部において、N極に対してS極が離れずに形成されているため、比較例に係る下磁場発生部は、
図4に示すように、N極の上方において、磁力線が集束するような磁場領域A1を発生させることとなる。
【0035】
このような磁場領域A1が発生することにより、比較例に係る下磁場発生部311は、
図5に示すように、磁性粒子215をN極の上方に吸引することとなる。したがって、撮影部32の撮影範囲内に磁性粒子を集積できず、撮影部32が、開口3111を通じて、磁性粒子215を撮影するためには不利になる可能性があり、分析装置3の測定結果の精度が落ちる可能性がある。
【0036】
一方、本実施形態に係る下磁場発生部311においては、
図6に示すように、複数の棒形状の磁石3112の第1の磁極であるN極は、開口3111の周りに対向して配置される。また、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第2の磁極であるS極は、配置台37における試料202を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるように配置される。すなわち、複数の棒形状の磁石3112の第2の磁極であるS極は、開口3111の周りに形成された第1の磁極による磁場(例えば、磁場領域A2)に影響を与えない、開口3111から離間した位置に形成される。この第1の磁極及び第2の磁極が離間して配置されることにより、下磁場発生部311は、
図6に示すように、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極であるN極の中間の上方向において、磁力線が一旦集束し、集束した磁力線が発散する磁場領域A2を発生させることができる。つまり、この磁場領域A2に、磁性粒子215を含む試料202を収容するカートリッジ2を配置することにより、配置台37における試料202を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるようにすることができる。
【0037】
このような磁場領域A2が発生することにより、本実施形態に係る下磁場発生部311は、
図7乃至
図10に示すように、磁性粒子215を開口3111の上方に吸引することができる。したがって、撮影部32の撮影範囲内に磁性粒子を集積することができ、撮影部32が、開口3111を通じて、磁性粒子215を撮影することができるため、比較例に係る下磁場発生部311と比較して分析装置3の測定結果の精度が高くなる。
【0038】
ここで、第2の磁極が発生する磁場は、開口3111の周りに形成された第1の磁極による磁場に影響を与えない。開口3111から離間した位置とは、例えば、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、開口3111の中心である第1の中心O1から第1の磁極までの距離に対して、十分に大きい場合である。第1の磁極から第2の磁極までの距離は、例えば、第1の磁極の端面から第2の磁極の端面までの距離であり、本実施形態においては、半径R1と半径R2との差である。
【0039】
また、この開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離に対して、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、十分に大きいとは、例えば、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離の3倍以上離れた位置である。すなわち、本実施形態においては、第1の磁極から第2の磁極までの距離は、半径R
1の3倍以上の大きさとなる。仮に、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、この開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離の3倍未満の場合、配置台37における試料を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、
図6に示すような略上下方向に磁場が打ち消されて磁場強度が弱くなるため、カートリッジ2に収容された磁性粒子215を、この磁場領域A2に吸引するには不利となる。
【0040】
なお、便宜上第1の磁極から第2の磁極までの距離は、第1の磁極の端面から第2の磁極の端面までの距離としたが、第1の磁極から第2の磁極までの距離はこれに限られない。すなわち、第1の磁極中心(磁石端面から若干内部に奥まった位置となる)から第2の磁極中心までの距離としてもよい。
【0041】
次に、
図11を参照して、開口3111の周りに配置された第1の磁極が形成する上下方向の磁場の吸引力が極大となる位置について説明する。
図11は、逆極性の単磁荷が十分遠方にあってその作用が無視できると見なせる場合、円周上に分布する単磁荷がzの位置に作る磁場Hを説明する図である。この
図11において、円周上に同極性の磁荷が一様に分布しており、その全量がQ
mの場合のzの位置に作る磁場Hを考える。なお、円の幅は、無視することとする。
図1のように、円周上の微少区間dsがz軸上の点に作る磁場は、式(1)のように表される。
【数1】
なお、μ
0は、真空の透磁率である。
【0042】
また、水平方向の磁場は円周の180度反対の磁荷が作る磁場と打ち消しあるため、円周上全ての磁荷が作る磁場を計算する際に消える。つまり、円周上の磁荷が作る磁場の計算は、z軸上に作られる磁場Hを計算するのみで良い。したがって、z軸上の磁場は、式(2)のように表される。
【数2】
【0043】
この磁場(dHcosθ)を円周分足し合わせてやることで、Hcosθ=cosθΣdHで表される。つまり、式(3)のように表される。
【数3】
【0044】
ここで、cosθは、式(4)のように表される。
【数4】
【0045】
ΣdQ
mは円周上の全ての磁荷の足し合わせであり、Q
mと表されることを用いて、円周上に一様に分布する磁荷がz軸上に作る磁場は、式(5)のように表される。
【数5】
【0046】
そして、式(5)に基づいて、開口3111の周りに配置された第1の磁極が形成する磁場Hの上下方向の吸引力が極大となる位置は、式(6)乃至(10)ように計算される。
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
このとき、第1の磁極と異極の第2の磁極は、第1の磁極に対して、離間して配置されているため、第2の磁極による、第1の磁極の吸引力への影響は無視できるものと仮定できる。
【0047】
式(10)に表される計算結果において、撮影部32に対応する位置に形成された開口3111の中心である第1の中心O1からカートリッジ2のセンサ面までの距離Dが、±0.082R1となる位置に、カートリッジ2を配置することは、磁石自体に厚みがあるため開口3111の面から奥まった位置に配置することを意味し、装置の構成上困難である。また、撮影部32に対応する位置に形成された開口3111の中心である第1の中心O1からカートリッジ2のセンサ面までの距離Dが、-1.10R1となる位置に、カートリッジ2を配置することは、撮影部32と干渉する位置にカートリッジ2が配置されることとなるため、困難である。従って、式(10)に表される計算結果に基づいて、撮影部32に対応する位置に形成された開口3111の中心である第1の中心O1からカートリッジ2のセンサ面までの距離Dが、1.10R1となる位置に、カートリッジ2が配置されることが望ましい。
【0048】
ここで、式(10)に示される開口3111の周りに配置された第1の磁極が形成する磁場Hの上下方向の吸引力が極大となる位置において、4つの解が導出される理由を説明する。まず、磁性粒子のみ働く吸引力F
mの式は、式(11)のように表される。
【数11】
このとき、κ
pは粒子の体積磁化率であり、κ
fは流体の体積磁化率であり、μ
0は真空の透磁率であり、V
pは磁性粒子の体積である。
【0049】
次に、式(11)を磁束密度Bの関係式に変形した式は、式(12)に表される。
【数12】
このとき、χ
pは粒子の質量磁化率であり、χ
fは流体の質量磁化率であり、m
pは粒子の質量である。
【0050】
式(11)に表されるように、磁性粒子のみに働く吸引力Fmは磁界強度Hの2乗にのみ比例するのではなく、磁場(磁界強度)Hの2乗の勾配に比例する。また、式(12)に表されるように、磁性粒子のみに働く吸引力Fmは、磁束密度の2乗に比例するのではなく、磁束密度と磁束密度の勾配の積に比例する。したがって、式(11)及び式(12)に表されるように、式(10)に示される開口3111の周りに配置された第1の磁極が形成する磁場Hの上下方向の吸引力が極大となる位置において、4つの解が導出されることとなる。
【0051】
図1及び
図2に戻り、撮影部32は、処理回路36の制御の下、分析装置3の配置台37に配置されるカートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を、1個1個識別して計数できるようにするための光学デバイスである。撮影部32は、例えば、拡大機能を持つ光学式カメラである。本実施形態において、撮影部32は、カートリッジ2の下方に、すなわち、配置台37のカートリッジ2が配置される面とは反対面の側に配置され、反対面からの撮影によって、配置台37に配置されるカートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を撮影する。また、本実施形態において、撮影部32は、撮影部32に対応する位置に開口3111が形成されているため、撮影部32は、下磁場発生部311の開口3111を通じて、センサエリア上に結合している磁性粒子215を撮影する。撮影部32は、
図2に示すように、対物レンズ321と、画像センサ323とを備えて構成されている。
【0052】
対物レンズ321は、撮影対象物である、カートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215の像を、画像センサ323の受光面に結像させるための光学系の例である。本実施形態においては、対物レンズ321は、下磁場発生部311の下方、かつ、下磁場発生部311と画像センサ323の間に配置されている。
【0053】
画像センサ323は、対物レンズ321を介して、カートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を撮影する。画像センサ323は、例えばCCD(Charge-Coupled Device)センサ及びCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等により実現される。本実施形態においては、画像センサ323は、対物レンズ321の下方に配置されている。
【0054】
入力インターフェース33は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路36へ出力する。入力インターフェース33は、例えば、操作面へ触れることで指示が入力されるメンブレンスイッチ、タッチパネル、タッチパッド、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、またはトラックボール等の一つ以上の入力機器に接続されている。
【0055】
出力インターフェース34は、処理回路36に接続され、処理回路36から供給される信号を出力する。出力インターフェース34は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0056】
記憶回路35は、磁気的若しくは光学的記録媒体又は半導体メモリなどの、プロセッサにおり読み取り可能な記録媒体を有する。記憶回路35は、本実施形態に係る分析装置3の回路で実行されるプログラムを記憶する。なお、記憶回路35の記憶媒体内のプログラム及びデータの一部又は全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるようにしてもよい。
【0057】
また、記憶回路35は、本実施形態に係る一つ以上の動作プログラム等を記憶している。この動作プログラムは、例えば、測定に必要な所定の処理を実行するタイミングを規定するプログラムを含む。測定に必要な所定の処理を実行するタイミングとは、例えば、下向きの磁場の印加の開始のタイミング及び停止のタイミング、上向きの磁場の印加の開始のタイミング及び停止のタイミング、撮影のタイミング、計数のタイミングなどである。これらのタイミングは、予め経験的、実験的に取得される。
【0058】
処理回路36は、分析装置3の中枢として機能するプロセッサである。処理回路36は、記憶回路35に記憶されている動作プログラムを実行することで、この制御プログラムに対応する機能を実現する。なお、処理回路36は、記憶回路35で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えていてもよい。
【0059】
図1に示される処理回路36は、記憶回路35に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、処理回路36は、動作プログラムを実行することで、制御機能361と、計数機能362とを有する。計数機能362とは、撮影した画像から磁性粒子数をカウントする「粒子解析」と呼ばれるソフトウエア・アルゴリズムを意味する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって制御機能361と、計数機能362とが実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが制御プログラムを実行することにより、これらの各種機能を実現しても構わない。なお、
図1に示した制御機能361及び計数機能362は、それぞれ、本実施形態における制御部及び計数部を構成している。
【0060】
下磁場発生部311及び/又は上磁場発生部312が永久磁石により構成されている場合、分析装置3は、
図2に示すように、下磁場発生部311及び/又は上磁場発生部312を移動する移動機構38を備えている。すなわち、アクチュエータ等により構成された移動機構38は、下磁場発生部311及び上磁場発生部312のそれぞれの位置を、磁場印加位置と、非磁場印加位置との間で移動させる。磁場印加位置は、カートリッジ2内の磁性粒子215に対して磁場を印加させる位置である。磁場印加位置は、例えば、カートリッジ2の近傍の位置である。また、非磁場印加位置は、カートリッジ2内の磁性粒子215に対して磁場による吸引力を印加させない位置である。この非磁場印加位置は、例えば、カートリッジ2から離れた位置である。
【0061】
移動機構38は、モータなどを備えており、下磁場発生部311及び上磁場発生部312のそれぞれを、水平方向に移動させたり、垂直方向に移動させたりすることができる。これにより、移動機構38は、下磁場発生部311及び上磁場発生部312のそれぞれを、磁場印加位置から非磁場印加位置に移動させたり、非磁場印加位置から磁場印加位置に移動させたりすることができる。
【0062】
図12は、本実施形態に係る分析装置3が、移動機構38により、下磁場発生部311を非磁場印加位置に移動した状態を示す図である。
図2及び
図12に示す例では、移動機構38は、下磁場発生部311を垂直方向に移動させることにより、
図2に示す磁場印加位置と、
図12に示す非磁場印加位置との間を移動させる。本実施形態において、移動機構38が下磁場発生部311を非磁場印加位置に移動させる場合には、移動機構38は、撮影部32が下磁場発生部311の開口3111に挿入されるように、下磁場発生部311を非磁場印加位置に移動させる。そのため、本実施形態において、開口3111の径は、撮影部32の最大径よりも大きく形成される。
【0063】
図13は、移動機構がある本実施形態に係る分析装置3で実行される分析処理の内容を説明するためのフローチャート図である。この分析処理では、カートリッジ2に上向きの磁場及び下向きの磁場を印加したり、カートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を撮影したり、カートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を計数したりする。この分析処理は、カートリッジ2が配置台37に配置された場合に実行される処理である。
【0064】
図13に示すように、まず、分析装置3は、ユーザによりカートリッジ2の配置が完了されるまで待機する(ステップS11)。すなわち、ユーザは、カートリッジ2を分析装置3における配置台37に配置させる。そして、カートリッジ2の配置後、ユーザは、配置台37に配置されたカートリッジ2に、磁性粒子215を含む試料202を注入して、カートリッジ2の配置を完了する。このステップS11において、下磁場発生部311及び上磁場発生部312は、非磁場印加位置に位置している。なお、このステップS11において、カートリッジ2への試料202の注入は、自動により行われてもよく、手動により行われてもよい。
【0065】
そして、分析装置3へのカートリッジ2の配置が完了すると、分析装置3は、カートリッジ2に上向きの磁場を印加する(ステップS13)。この上向きの磁場を印加する処理は、処理回路36における制御機能361により実現される。具体的には、分析装置3は、移動機構38を制御して、上磁場発生部312を磁場印加位置に移動させることにより、カートリッジ2に上向きの磁場を印加する。これにより、反応容器201に試料202が導入されると、磁性粒子215は沈降することなく、上方へ移動することができる。なお、このステップS13において、下磁場発生部311は非磁場印加位置に位置している。また、分析装置3へのカートリッジ2の配置の完了は、分析装置3にセンサを設けて、このセンサにより、カートリッジ2への配置の完了を自動的に検知するようにしてもよく、或いは、ユーザが分析装置3に設けられた入力インターフェース33の一例である完了ボタンを押下することにより、分析装置3がカートリッジ2の配置の完了を検知するようにしてもよい。
【0066】
次に、
図13に示すように、分析装置3は、撮影を行う(ステップS15)。この撮影を行う処理は、処理回路36における制御機能361により実現される。具体的には、分析装置3は、カートリッジ2に上向きの磁場を印加した状態で、撮影部32を制御して、分析装置3の配置台37に配置されるカートリッジ2のセンサエリアを撮影する。このセンサエリアを撮影部32が撮影することにより、試料202の導入直後の磁性粒子215の結合が撮影される。なお、このステップS15においては、静止画像を撮影することとしたが、動画像を撮影するようにしてもよい。すなわち、このステップS15において、動画像の撮影を開始するようにしてもよい。
【0067】
次に、
図13に示すように、分析装置3は、カートリッジ2に下向きの磁場を印加する(ステップS17)この下向きの磁場を印加する処理は、処理回路36における制御機能361により実現される。具体的には、分析装置3は、移動機構38を制御して、上磁場発生部312を磁場印加位置から非磁場印加位置に移動させ、下磁場発生部311を非磁場印加位置から磁場印加位置に移動させることにより、上向きの磁場の印加を停止して、カートリッジ2に下向きの磁場を印加する。
【0068】
カートリッジ2に下向きの磁場が印加されると、カートリッジ2に注入された試料202中に拡散している磁性粒子215は、試料202中を沈降して、反応容器201のセンサエリアに侵入する。磁性粒子215が沈降する際には、磁性粒子215は、試料202中の検出対象物と結合しながら沈降して、センサ面上の第1の抗体211に達する。この磁性粒子215の沈降速度は、下向きの磁場がカートリッジ2に印加されていることから、この下向きの磁場がカートリッジ2に印加されておらず、重力のみで沈降する場合と比較して、速くなる。つまり、カートリッジ2に下向きの磁場を印加することにより、磁性粒子215の沈降に要する時間を短くすることができる。
【0069】
次に、
図13に示すように、分析装置3は、カートリッジ2に上向きの磁場を印加する(ステップS19)。この上向きの磁場を印加する処理は、処理回路36における制御機能361により実現される。具体的には、分析装置3は、ステップS17において、下向きの磁場を印加してから所定の時間経過後、移動機構38を制御して、下磁場発生部311を磁場印加位置から非磁場印加位置に移動させ、上磁場発生部312を非磁場印加位置から磁場印加位置に移動させることにより、下向きの磁場の印加を停止して、カートリッジ2に上向きの磁場を印加する。
【0070】
カートリッジ2に上向きの磁場が印加されると、磁性粒子215は試料中を上側に移動する。しかし、抗原抗体反応でセンサ面上の第1の抗体211に結合した磁性粒子215は、上向きの磁場に抗して、センサ面上の第1の抗体211に結合したままの状態となる。つまり、検出対象物と結合した磁性粒子215はセンサエリアに残ることとなる。
【0071】
次に、
図13に示すように、分析装置3は、撮影を行う(ステップS21)。この撮影を行う処理は処理回路36における制御機能361により実現される。具体的には、分析装置3の配置台37に配置されるカートリッジ2のセンサエリアを撮影する。このセンサエリアを撮影部32が撮影することにより、センサ面上に固定された第1の抗体211と磁性粒子215との結合が撮影される。なお、ステップS15において動画像の撮影を開始した場合にあっては、このステップS21において撮影を終了する。
【0072】
次に、
図13に示すように、分析装置3は、磁性粒子215の数を計数する(ステップS23)。この計数する処理は、処理回路36における計数機能362により実現される。具体的には、分析装置3は、ステップS21において撮影した画像を解析して、センサエリアに残っている磁性粒子215の数をカウントし、試料202に検出対象物が含まれているか否かを判定し、また、試料202に含まれる検出対象物の濃度は、画像において単位面積当たりの粒子数に比例することから、換算して求められる。
【0073】
ステップS23にて、磁性粒子215の数を計数することにより、本実施形態に係る分析処理を終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る分析システム1によれば、カートリッジ2を配置台37に配置した状態において、カートリッジ2が配置される面とは反対面の側に撮影部32を設け、撮影部32の光軸L1方向の前方に開口3111が形成され、その開口3111の周りに第1の磁極であるN極を形成し、開口3111から十分離間した位置に第2の磁極を形成する下磁場発生部311を、カートリッジ2が配置される面とは反対面の側に設けることとしたので、撮影部32を配置しつつ、撮影部32の撮影範囲内にカートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を集積可能な磁場発生部を配置することができる。すなわち、本実施形態においては、開口3111の周りに、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第1の磁極を対向して配置し、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの第2の磁極を、開口3111から離れて、円周状に配置し、複数の棒形状の磁石3112を、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの長手方向が平行となるように配置することにより、試料を収容するカートリッジが配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるため、撮影部32の撮影範囲内に、カートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を集積することができ、撮影部32は、開口3111を通じて、センサエリアに捕捉された磁性粒子215を撮影することができる。このため、磁性粒子215の沈降と上昇の過程を連続的に観察することができる。
【0075】
〔変形例1〕
上述した第1実施形態に係る分析システム1においては、複数の棒形状の磁石3112を、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの長手方向が平行となるように配置するようにしたが、複数の棒形状の磁石3112を、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの長手方向が垂直となるように変形することも可能である。以下、この変形例を第1実施形態に適用した場合を変形例1として、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0076】
図1及び
図14を用いて、変形例1に係る分析システム1の構成例を説明する。
図14は、変形例1に係る分析システム1の詳細構成の例を示す図であり、上述した第1実施形態における
図2に対応する図である。この
図1及び
図14に示すように、下磁場発生部の複数の棒形状の磁石の構成が第1実施形態と異なるため、変形例1においては、複数の棒形状の磁石3112aと表記する。なお、複数の棒形状の磁石3112a以外の構成及び機能は、上述した第1実施形態における
図1及び
図2と同等であるので、説明を省略する。
【0077】
図14及び
図15を参照して、複数の棒形状の磁石3112aの構成を詳細に説明する。
図15は、変形例1に係る分析装置3の下磁場発生部311の上面図であり、上述した第1実施形態における
図3に対応する図である。
【0078】
複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれは、永久磁石により構成される。この複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極は、開口3111の周りに形成されている。複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極と異極である第2の磁極は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。本変形例においては、
図15に示すように、複数の棒形状の磁石3112aは、6本の棒形状の磁石を備えて構成されている。
【0079】
複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極は、第1平面PL1に位置する。また、第1平面PL1は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、平行である。この第1平面PL1の平面上には、第1平面PL1の中心を示す第1の中心O
1が位置する。この第1の中心O
1は、開口3111の中心である。さらに、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第2の磁極は、第2平面PL2に位置する。この第2平面PL2の平面上には、第2平面PL2の中心を示す第2の中心O
2が位置する。第1平面PL1と第2平面PL2とは平行である。変形例1においては、
図14に示すように、第1の中心O
1と第2の中心O
2とは、異なる位置にあり、第1の中心O
1と第2の中心O
2とを結ぶ線分が垂直な関係にあり、線分の距離d1だけ離れて位置している。つまり、第1平面PL1と第2平面PL2とは、距離d1だけ離れて位置する。
【0080】
変形例1において、
図14及び
図15に示すように、6本の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極であるN極は、第1の中心O
1とする半径R
1の円周上に並ぶように配置される。つまり、6本の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極であるN極は、開口3111の周りに、並べて配置されている。このように、下磁場発生部311は、開口3111の周りに第1の磁極であるN極が形成されることにより、下向きの磁場を発生させる。
【0081】
また、変形例1において、
図14及び
図15に示すように、6本の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第2の磁極であるS極は、第2の中心O
2を中心とする、半径R
1と同じ大きさの半径R
2の円周上に並ぶように配置される。つまり、6本の棒形状の磁石のそれぞれの第2の磁極であるS極は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。
【0082】
さらに、変形例1において、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極は、第1平面PL1に位置し、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第2の磁極は、第2平面PL2に位置し、第1平面PL1と第2平面PL2とは、距離d1だけ離れて位置し、半径R1と半径R2とは同じ大きさであることから、本変形例においては、複数の棒形状の磁石3112aは、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの長手方向が垂直となるように配置される。
【0083】
なお、
図15に示す例では、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の数は、6本であるが、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の数は任意である。例えば、下磁場発生部311は、2本以上5本以下の磁石を備えるように構成されてもよく、7本以上の磁石を備えるように構成されてもよい。
【0084】
また、
図15に示す例では、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の断面形状は、長方形状であるが、下磁場発生部311が備える棒形状の磁石の断面形状は長方形状に限られない。すなわち、棒形状の磁石の断面形状は任意であり、円形や楕円形などの断面形状であってもよい。
【0085】
以上のように、変形例1に係る分析システム1によれば、開口3111の周りに、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第1の磁極を配置し、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの第2の磁極を、開口3111から離れて、円周状に配置し、複数の棒形状の磁石3112aを、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112aのそれぞれの長手方向が垂直となるように配置することにより、配置台37における試料202を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるため、撮影部32の撮影範囲内に、カートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を集積することができ、撮影部32は、開口3111を通じて、センサエリアに捕捉された磁性粒子215を撮影することができる。このため、磁性粒子215の沈降と上昇の過程を連続的に観察することができる。
【0086】
〔変形例2〕
上述した第1実施形態に係る分析システム1においては、複数の棒形状の磁石3112を、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの長手方向が平行となるように配置するようにしたが、複数の棒形状の磁石3112を、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112のそれぞれの長手方向が傾斜するように変形することも可能である。以下、この変形例を第1実施形態に適用した場合を変形例2として、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0087】
図1及び
図16を用いて、変形例2に係る分析システム1の構成例を説明する。
図16は、変形例2に係る分析システム1の詳細構成の例を示す図であり、上述した第1実施形態における
図2に対応する図である。この
図1及び
図16に示すように、下磁場発生部の複数の棒形状の磁石の構成が第1実施形態と異なるため、本実施形態の変形例2においては、複数の棒形状の磁石3112bと表記する。なお、複数の棒形状の磁石3112b以外の構成及び機能は、上述した第1実施形態における
図1及び
図2と同等であるので、説明を省略する。
【0088】
複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれは、永久磁石により構成される。この複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極は、開口3111の周りに形成されている。複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極と異極である第2の磁極は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。
【0089】
複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極は、第1平面PL1に位置する。また、第1平面PL1は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、平行である。この第1平面PL1の平面上には、第1平面PL1の中心を示す第1の中心O
1が位置する。この第1の中心O
1は、開口3111の中心である。さらに、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第2の磁極は、第2平面PL2に位置する。この第2平面PL2の平面上には、第2平面PL2の中心を示す第2の中心O
2が位置する。第1平面PL1と第2平面PL2とは平行である。変形例2において、
図16に示すように、第1の中心O
1と第2の中心O
2とは異なる位置にあり、第1の中心O
1と第2の中心O
2とを結ぶ線分は垂直な関係にあり、この線分の距離d2だけ離れて位置している。つまり、第1平面PL1と第2平面PL2とは、距離d2だけ離れて位置する。
【0090】
変形例2において、
図16に示すように、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極は、第1の中心O
1とする半径R
1の円周上に並ぶように配置される。つまり、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極であるN極は、開口3111の周りに、並べて配置されている。このように、下磁場発生部311は、開口3111の周りに第1の磁極であるN極が形成されることにより、下向きの磁場を発生させる。
【0091】
また、変形例2において、
図16に示すように、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第2の磁極であるS極は、第2の中心O
2を中心とする、半径R
1より大きい半径R
2の円周上に並ぶように配置される。つまり、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第2の磁極であるS極は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。
【0092】
さらに、変形例2において、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極は、第1平面PL1に位置し、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第2の磁極は、第2平面PL2に位置し、第1平面PL1と第2平面PL2とは、距離d2だけ離れて位置し、半径R2は半径R1より大きいことから、複数の棒形状の磁石3112bは、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの長手方向が傾斜するように配置される。
【0093】
以上のように、変形例2に係る分析システム1によれば、開口3111の周りに、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第1の磁極を配置し、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの第2の磁極を、開口3111から離れて、円周状に配置し、複数の棒形状の磁石3112bを、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112bのそれぞれの長手方向が傾斜するように配置することにより、配置台37における試料202を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるため、撮影部32の撮影範囲内に、カートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を集積することができ、撮影部32は、開口3111を通じて、センサエリアに捕捉された磁性粒子215を撮影することができる。このため、磁性粒子215の沈降と上昇の過程を連続的に観察することができる。
【0094】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態に係る分析システム1においては、下磁場発生部311が備える磁石として、複数の棒形状の磁石により構成されていたが、磁石の形状はこれに限られない。第2実施形態においては、下磁場発生部が備える磁石として、環状形状の磁石により構成されてもよい。以下、上述した第1実施形態とは異なる部分を説明する。
【0095】
図1及び
図17を用いて、第2実施形態に係る分析システム1の構成例を説明する。
図17は、第2実施形態に係る分析システム1の詳細構成の例を示す図であり、上述した第1実施形態における
図2に対応する図である。この
図1及び
図17に示すように、下磁場発生部が備える磁石の構成が第1実施形態と異なるため、第2実施形態においては、環状形状の磁石3112cと表記する。なお、環状形状の磁石3112c以外の構成及び機能は、上述した第1実施形態における
図1及び
図2と同等であるので、説明を省略する。
【0096】
図17及び
図18を参照して、環状形状の磁石3112cの構成を詳細に説明する。
図18は、第2実施形態に係る分析装置3の下磁場発生部311の上面図であり、上述した第1実施形態における
図3に対応する図である。
【0097】
環状形状の磁石3112cは、永久磁石により構成される。環状形状の磁石3112cの第1の磁極は、開口3111の周りに連続的に形成される。また、第1の磁極と異極である、環状形状の磁石3112cの第2の磁極は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して垂直な方向及び第1の磁極の下方において、連続的に形成される。本実施形態においては、環状形状の磁石3112cは、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、垂直な方向に、複数の環状形状の磁石片を積層して形成される。具体的には、環状形状の磁石3112cは、4つの環状形状の磁石片を積層して形成される。この複数の環状形状の磁石片を積層して、環状形状の磁石3112cが形成される場合、複数の環状形状の磁石片のそれぞれの異極同士を結合して積層することにより、環状形状の磁石3112cが形成される。そのため、本実施形態においては、4つの環状形状の磁石片の上下方向の一端には第1の磁極であるN極が形成され、4つの環状形状の磁石片の上下方向の他端には第2の磁極であるS極が形成される。
【0098】
また、本実施形態においては、環状形状の磁石3112cの内側には、撮影部32が配置される。そのため、環状形状の磁石3112の内径は、撮影部32の外径の最大径よりも大きく形成されている。
【0099】
環状形状の磁石3112cの第1の磁極は、第1平面PL1に位置する。また、第1平面PL1は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、平行である。この第1平面PL1の平面上には、第1平面PL1の中心を示す第1の中心O
1が位置する。この第1の中心O
1は、開口3111の中心である。環状形状の磁石3112cの第2の磁極は、第2平面PL2に位置する。この第2平面PL2の平面上には、第2平面PL2の中心を示す第2の中心O
2が位置する。第1平面PL1と第2平面PL2とは平行である。第2実施形態において、
図17に示すように、第1の中心O
1と第2の中心O
2とは、異なる位置にあり、第1の中心O
1と第2の中心O
2とを結ぶ線分が垂直な関係にあり、線分の距離d3だけ離れて位置している。つまり、第1平面PL1と第2平面PL2とは、距離d3だけ離れて位置する。
【0100】
第2実施形態において、
図17及び
図18に示すように、環状形状の磁石3112cの第1の磁極であるN極は、第1の中心O
1とする半径R
1の円周方向に沿うように連続的に形成される。このように、下磁場発生部311は、開口3111の周りに第1の磁極であるN極が形成されることにより、下向きの磁場を発生させる。また、環状形状の磁石3112cの第2の磁極であるS極は、第1の中心O
2とする半径R
2の円周方向に沿うように連続的に形成される。
【0101】
なお、
図18に示す例では、下磁場発生部311が備える環状形状の磁石片の数は、4個であるが、下磁場発生部311が備える環状形状の磁石片の数は任意である。例えば、下磁場発生部311は、3個以下の磁石片を備えるように構成されてもよく、5本以上の磁石片を備えるように構成されてもよい。
【0102】
また、
図18に示す例では、下磁場発生部311が備える環状形状の磁石の断面形状は、円形状であるが、下磁場発生部311が備える環状形状の磁石の断面形状は円形状に限られない。すなわち、環状形状の磁石の断面形状は任意であり、矩形状や楕円形状などの断面形状であってもよい。
【0103】
図5及び
図19乃至
図21を参照して、本実施形態に係る下磁場発生部311の構成による磁性粒子215の吸引位置と、比較例に係る下磁場発生部の構成による磁性粒子215の吸引位置とを説明する。
図19乃至
図21は、本実施形態に係る下磁場発生部311の構成における磁性粒子215の吸引位置を示す図である。
図19乃至
図21において、磁性粒子215の吸引位置を分かりやすくするため故意に誇張して大きく描いてある。
【0104】
比較例に係る下磁場発生部は、
図5に示すように、扁平且つ、環状形状の磁石であり、環状の磁石の上部には第1の磁極であるN極が形成されており、環状の磁石の下部には第2の磁極であるS極が形成されている。このように、比較例に係る下磁場発生部においては、N極に対してS極が離れずに形成されている。そのため、
図5に示すように、磁性粒子215をN極の上方に吸引することとなる。このため、撮影部32が、開口3111を通じて、磁性粒子215を撮影することが困難になる可能性があり、分析装置3の測定結果の精度が落ちる可能性がある。
【0105】
一方、本実施形態に係る下磁場発生部311において、環状形状の磁石3112cの第1の磁極であるN極は、開口3111の周りに連続的に形成される。また、第1の磁極と異極の第2の磁極であるS極は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して垂直な方向及び第1の磁極の下方であり、開口3111から離れて、配置台37における試料202を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるように配置される。すなわち、環状形状の磁石3112cの第2の磁極であるS極が発生する磁場は、開口3111の周りに形成された第1の磁極による磁場に影響を与えず、開口3111から離間した位置に、連続的に形成されている。このように、本実施形態に係る下磁場発生部311においては、比較例に係る下磁場発生部と異なり、第2の磁極であるS極が、第1の磁極であるN極に対して離れて形成されている。
【0106】
これにより、
図19乃至
図21に示すように、磁性粒子215を開口3111の上方に吸引することができる。このため、撮影部32の撮影範囲内に磁性粒子215を集積することができ、撮影部32が、開口3111を通じて、磁性粒子215を撮影することができるため、比較例に係る下磁場発生部311と比較して分析装置3の測定結果の精度が高くなる。
【0107】
ここで、第2の磁極が形成される、開口3111の周りに形成された第1の磁極による磁場に影響を与えない、開口3111から離間した位置とは、例えば、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離に対して、十分に大きい場合である。本実施形態において、第1の磁極から第2の磁極までの距離は、例えば、第1の磁極の端面から第2の磁極の端面までの距離である。この開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離に対して、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、十分に大きいとは、例えば、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離の3倍以上離れた位置である。すなわち、本実施形態においては、第1の磁極から第2の磁極までの距離は、半径R
1の3倍以上の大きさとなる。仮に、第1の磁極から第2の磁極までの距離が、この開口3111の中心である第1の中心O
1から第1の磁極までの距離の3倍未満の場合、配置台37における試料を収容するカートリッジ2が配置される位置である試料位置において、
図6に示すような略上下方向に磁場が形成されないため、カートリッジ2に収容された磁性粒子215を、この磁場領域A2に吸引することができない。
【0108】
なお、第1の磁極から第2の磁極までの距離は、第1の磁極の端面から第2の磁極の端面までの距離としたが、第1の磁極から第2の磁極までの距離はこれに限られない。すなわち、第1の磁極から第2の磁極までの距離の決め方は任意であり、例えば、第1の磁極が位置する第1平面PL1と、第2の磁極が位置する第2平面PL2との距離d3を、第1の磁極から第2の磁極までの距離としてもよい。
【0109】
以上のように、本実施形態に係る分析システム1によれば、カートリッジ2を配置台37に配置した状態において、カートリッジ2が配置される面とは反対面の側に撮影部32を設け、撮影部32の光軸L1方向の前方に開口3111が形成され、その開口3111の周りに第1の磁極が連続的に形成され、開口3111から離間した位置に第2の磁極が連続的に形成される下磁場発生部311を、カートリッジ2が配置される面とは反対面の側に設けることとしたので、撮影部32を配置しつつ、撮影部32の撮影範囲内にカートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を集積可能な磁場発生部を配置することができる。すなわち、本実施形態においては、環状形状の磁石3112cの第1の磁極を、開口3111に沿うように連続的に形成し、開口3111から離間した位置に、環状形状の磁石3112cの第2の磁極を、連続的に形成することにより、試料202を収容するカートリッジが配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるため、撮影部32の撮影範囲内に、カートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を集積することができ、撮影部32は、開口3111を通じて、センサエリアに捕捉された磁性粒子215を撮影することができる。このため、磁性粒子215の沈降と上昇の過程を連続的に観察することができる。
【0110】
〔変形例3〕
上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、下磁場発生部311は永久磁石により構成することとしたが、下磁場発生部311は電磁石により構成することも可能である。以下、この変形例を第1実施形態に適用した場合を変形例3として、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0111】
図1及び
図22を用いて、変形例3に係る分析システム1の構成例を説明する。
図22は、変形例3に係る分析システム1の詳細構成の例を示す図であり、上述した第1実施形態における
図2に対応する図である。この
図1及び
図22に示すように、複数の棒形状の磁石の構成が第1実施形態と異なるため、変形例3においては、複数の棒形状の磁石3112dと表記する。また、複数の棒形状の磁石3112dが電磁石により構成される場合は、下磁場発生部311は移動機構38を備えなくてよい。なお、複数の棒形状の磁石3112d及び移動機構38以外の構成及び機能は、上述した第1実施形態における
図1及び
図2と同等であるので、説明を省略する。
【0112】
図22及び
図23を参照して、複数の棒形状の磁石3112dの構成を詳細に説明する。
図23は、変形例3に係る分析装置3の下磁場発生部311の上面図であり、上述した第1実施形態における
図3に対応する図である。
【0113】
本変形例において、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれは、電磁石により構成され、処理回路36の制御の下、磁場をON/OFFすることにより、カートリッジ2に対して、下向きの磁場を印加する。複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれは、磁心3112d_1と、コイル3112d_2とを有する。
【0114】
磁心3112d_1は、複数設けられており、下磁場発生部311の開口3111の周りに配意されている。この複数の磁心3112d_1のそれぞれの一端は、開口3111の周りに配置されている。複数の磁心3112d_1のそれぞれの他端は、開口3111から離れて、円周状に並ぶように配置される。本変形例においては、複数の磁心3112d_1の一端は、円環形状の磁心に結合されている。さらに、本変形例においては、
図23に示すように、磁心3112d_1は、6本設けられている。
【0115】
コイル3112d_2は、複数の磁心3112d_1のそれぞれの周囲に巻回されている。このコイル3112d_2に電流を流すことにより、磁場を一定の方向に発生させ、複数の磁心3112d_1のそれぞれの一端と他端とを異なる磁極に磁化させている。本変形例において、
図23に示すように、コイル3112d_2に電流を流すことにより、複数の磁心3112d_1のそれぞれの一端を第1の磁極であるN極に磁化させ、複数の磁心3112d_1のそれぞれの他端を第2の磁極であるS極に磁化させている。
【0116】
複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの一端は、第1平面PL1に位置する。また、第1平面PL1は、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、平行である。この第1平面PL1の平面上には、第1平面PL1の中心を示す第1の中心O1が位置する。この第1の中心O1は、開口3111の中心である。また、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの他端は、第2平面PL2に位置する。この第2平面PL2の平面上には、第2平面PL2の中心を示す第2の中心O2が位置する。第1平面PL1と第2平面PL2とは平行である。本変形例において、第1の中心O1と第2の中心O2とは一致しているため、第1平面PL1と第2平面PL2は一致している。
【0117】
本変形例において、
図22及び
図23に示すように、6本の磁心3112d_1のそれぞれの一端は、第1の中心O
1を中心とする半径R
1の円周に沿うように、配置される。つまり、磁場がONされることにより、6本の磁心3112d_1のそれぞれの一端は、第1の磁極であるN極として、開口3111の周りに、並べて配置される。つまり、磁場がONされることにより、6本の磁心3112d_1のそれぞれの一端は、第1の磁極であるN極として、開口3111の周りに、並べて配置される。このように、下磁場発生部311は、処理回路36の制御の下、開口3111の周りに第1の磁極であるN極が形成されることにより、下向きの磁場を発生させる。
【0118】
また、本変形例において、
図22及び
図23に示すように、6本の磁心3112d_1のそれぞれの他端は、第2の中心O
2を中心とする半径R
2の円周に沿うように、配置される。つまり、磁場がONされることにより、6本の磁心3112d_1のそれぞれの他端は、第2の磁極であるS極として、開口3111の周りに、並べて配置される。
【0119】
さらに、本変形例において、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの一端は、第1平面PL1に位置し、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの他端は、第2平面PL2に位置し、第1平面PL1と第2平面PL2とは一致していることから、複数の棒形状の磁石3112dは、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの長手方向が平行となるように配置される。
【0120】
なお、本変形例においては、複数の棒形状の磁石3112dは、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの長手方向が平行となるように配置されることとしたが、複数の棒形状の磁石3112dは、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの長手方向が垂直となるように配置されてもよく、複数の棒形状の磁石3112dのそれぞれの長手方向が傾斜するように配置されてもよい。
【0121】
また、
図23に示す例では、磁石3112dが備える磁心3112d_1の数は、6本であるが、磁石3112dが備える磁心3112d_1の数は任意である。例えば、磁石3112dは、2本以上5本以下の磁心3112d_1を備えるように構成されてもよく、7本以上の磁心3112d_1を備えるように構成されてもよい。
【0122】
さらに、
図23に示す例では、磁石3112dが備える磁心3112d_1の断面形状は、円形状であるが、磁石3112dが備える磁心3112d_1の断面形状は円形状に限られない。すなわち、磁石3112dが備える磁心3112d_1の断面形状は任意であり、長方形や楕円形などの断面形状であってもよい。なお、変形例3に係る下磁場発生部311の構成による磁力線及び磁性粒子215の吸引位置は、第1実施形態に係る下磁場発生部311の構成による磁力線及び磁性粒子215の吸引位置と同等であるので、説明を省略する。
【0123】
図24は、移動機構がある変形例3に係る分析装置3で実行される分析処理の内容を説明するためのフローチャート図である。この分析処理では、カートリッジ2に上向きの磁場及び下向きの磁場を印加したり、カートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を撮影したり、カートリッジ2のセンサエリア上に結合している磁性粒子215を計数したりする。この分析処理は、カートリッジ2が配置台37に配置された場合に実行される処理である。なお、
図24に示すステップS11からステップS15までの処理は、上述した第1実施形態における
図13と同等であるため、説明を省略する。
【0124】
ステップS11における分析装置3へのカートリッジ2の配置が完了すると、分析装置3は、カートリッジ2に下向きの磁場を印加する(ステップS31)。この下向きの磁場を印加する処理は、処理回路36における制御機能361により実現される。具体的には、分析装置3は、上磁場発生部312を磁場印加位置から非磁場印加位置に移動させることにより、上向きの磁場の印加を停止し、複数の磁心3112d_1のそれぞれに巻回されたコイル3112d_2に電流を流し、磁心3112d_1の一端を第1の磁極であるN極に磁化させ、磁心3112d_1の他端を第2の磁極であるS極に磁化させることにより、下向きの磁場を発生させ、カートリッジ2に対して下向きの磁場を印加する。なお、この
図24に示すステップS31より後の処理は、上述した第1実施形態における
図13と同等であるため、説明を省略する。
【0125】
そして、ステップS23において、磁性粒子215の数を計数することにより、本変形例に係る分析処理を終了する。
【0126】
以上のように、本変形例に係る分析システム1によれば、複数の棒形状の磁石3112dを、電磁石により構成し、開口3111の周りに、複数の磁心3112d_1のそれぞれの一端を配置し、開口3111から離間した位置に、複数の磁心3112d_1のそれぞれの他端を、開口3111から離れて、円周状に配置し、複数の棒形状の磁石3112dを、配置台37におけるカートリッジ2が配置される面に対して、複数の磁心3112d_1のそれぞれの長手方向が平行となるように配置して、複数の磁心3112d_1のそれぞれの周囲に巻回されたコイル3112d_2に電流を流すことにより、試料を収容するカートリッジが配置される位置である試料位置において、略上下方向に磁場が形成されるため、カートリッジ2に収容される試料202中の磁性粒子215を開口3111の上方のセンサエリアに集積することができ、撮影部32は、開口3111を通じて、センサエリアに捕捉された磁性粒子215を撮影することができる。このため、磁性粒子215の沈降と上昇の過程を連続的に観察することができる。
【0127】
なお、上述した変形例3の説明は、第1実施形態に応用した場合の説明であるが、本変形例は第2実施形態に対しても適用可能なことは明らかである。
【0128】
〔第1実施形態及び第2実施形態のその他の変形例〕
上述した第1実施形態及び第2実施形態の分析システム1に係る分析装置3においては、上磁場発生部312を永久磁石に代えて、電磁石により構成されるようにしてもよい。すなわち、下磁場発生部311及び上磁場発生部312の両方が電磁石により構成されていてもよく、下磁場発生部311及び上磁場発生部312のいずれか一方が、電磁石により構成され、他方が永久磁石により構成されてもよく、下磁場発生部311及び上磁場発生部312の両方が永久磁石により構成されてもよい。
【0129】
また、第1実施形態及び第2実施形態の分析システム1に係る分析装置3においては、開口3111の径を、撮影部32の最大径よりも大きく形成されるようにしたが、開口3111の径は、撮影部32の最大径よりも小さくてもよい。この場合、移動機構38は、下磁場発生部311を、水平方向に移動させることにより、磁場印加位置と非磁場印加位置との間を移動させるようにしてもよい。
【0130】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサは、プロセッサ単一の回路として構成されている場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて、1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して、その機能を実現するようにしてもよい。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置及び方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置及び方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0131】
1…分析システム、2…カートリッジ、21…カートリッジの筐体、22…透明基板、201…反応容器、202…試料、211…第1の抗体、212…抗原、213…試薬成分、214…第2の抗体、215…磁性粒子、3…分析装置、31…磁場発生回路、311…下磁場発生部、312…上磁場発生部、32…撮影部、321…対物レンズ、323…画像センサ、33…入力インターフェース、34…出力インターフェース、35…記憶回路、36…処理回路、361…制御機能、362…計数機能