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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178879
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/16 20060101AFI20231211BHJP
   B66C 1/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B66C13/16 C
B66C1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091840
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平沼 一則
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA37
3F004HA07
3F004JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】搬送物の重量の算出の精度を向上させる。
【解決手段】作業機械は、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメント4と、アタッチメント4の先端に設けられるリフティングマグネット6とを有し、アタッチメント4を駆動させる油圧シリンダ7,8,9と、アタッチメント4のうち、リフティングマグネット6より上部旋回体側3に、リフティングマグネット6を回転させる回転機構P7とをさらに有し、リフティングマグネット6に搬送物が吸着した状態で、回転機構P7によってリフティングマグネット6を回転させた、複数の回転角度の各々で計測された油圧シリンダ7,8,9のシリンダ圧に基づいて、リフティングマグネット6に吸着した搬送物の重心GSの位置を算出し、算出された重心に基づいて搬送物の重量Wsを測定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントの先端に設けられるリフティングマグネットと、を有し、
前記リフティングマグネットに吸着した搬送物の重心の位置を算出し、算出された前記重心の位置に基づいて前記搬送物の重量を算出する、
作業機械。
【請求項2】
前記アタッチメントを駆動させる油圧シリンダと、
前記アタッチメントのうち、前記リフティングマグネットより前記上部旋回体側に、前記リフティングマグネットを回転させる回転機構と、をさらに有し、
前記リフティングマグネットに前記搬送物が吸着した状態で、前記回転機構によって前記リフティングマグネットを回転させた、複数の回転角度の各々で計測された前記油圧シリンダのシリンダ圧に基づいて、前記リフティングマグネットに吸着した前記搬送物の前記重心の位置を算出し、算出された前記重心の位置に基づいて前記搬送物の重量を算出する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記リフティングマグネットに吸着した第1の搬送物について算出された前記重心の位置を記憶部に記憶し、前記リフティングマグネットに吸着した、前記第1の搬送物とは別の第2の搬送物について、記憶部に記憶された前記重心の位置に基づいて前記第2の搬送物の重量を算出する、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
所定の条件を満たした場合に、前記リフティングマグネットに吸着した、前記第1の搬送物から前記重心の位置を算出し、算出された前記重心の位置を前記記憶部に記憶する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記リフティングマグネットに吸着した前記搬送物を認識可能な空間認識装置をさらに有し、
前記空間認識装置による認識結果に基づいて、前記リフティングマグネットに吸着した前記搬送物の前記重心の位置を算出する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントの先端に設けられるリフティングマグネットと、
前記アタッチメントのうち、前記リフティングマグネットより前記上部旋回体側に、前記リフティングマグネットを回転させる回転機構と、を有し、
前記リフティングマグネットに搬送物が吸着した状態において、前記リフティングマグネットに前記搬送物を吸着させている面が、水平面と略平行の状態を維持するように、前記回転機構を制御した状態で、前記搬送物の重量を算出する、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アタッチメントの先端に設けられたリフティングマグネットに鉄屑等を吸着させ、且つ当該アタッチメントを用いて持ち上げて、ダンプトラックの荷台等に積み込む作業機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/022454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、作業機械に装着されているリフティングマグネットの重量を考慮するが、持ち上げた物体の重心を考慮したものでない。リフティングマグネットを装着した作業機械においては、持ち上げた物体の重心を考慮せずに、持ち上げた物体の重量を算出した場合、算出された物体の重量に、当該物体の重心の偏りに基づく誤差が含まれる可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、リフティングマグネットに吸着した搬送物の重心を考慮することで、搬送物の重量の算出精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機械は、上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、アタッチメントの先端に設けられるリフティングマグネットと、を有し、リフティングマグネットに吸着した搬送物の重心を算出し、算出された重心に基づいて搬送物の重量を測定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、搬送物の重量の算出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る作業機械に搭載される駆動系の構成例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る作業機械のアタッチメントがつり上げる搬送物の重量の算出に関するパラメータを説明する模式図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る角度制御部によって角度を制御されたリフティングマグネットを例示した図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る作業機械が搬送物の重心を記憶するまでの初期設定処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
(作業機械の概要)
図1は、本実施形態に係る作業機械100の側面図である。作業機械100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメント(作業具)としてのリフティングマグネット6が取り付けられている。ブーム4及びアーム5はアタッチメントの一例である作業アタッチメントを構成している。そして、ブーム4はブームシリンダ7(油圧シリンダの一例)で駆動され、アーム5はアームシリンダ8(油圧シリンダの一例)で駆動され、リフティングマグネット6はリフティングマグネットシリンダ9(油圧シリンダの一例)で駆動される。なお、本実施形態において、アタッチメントの先端に取り付けられ搬送物の搬送に用いることができる作業具(搬送機構)はリフティングマグネット6であるが、作業の種類によって、グラップル、解体用フォーク、チェーンソーを含むハーベスタ等の他の作業具が取り付けられてもよい。
【0011】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、リフティングマグネット6にはリフティングマグネット角度センサS3が取り付けられている。上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、空間認識装置80、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5が取り付けられている。
【0012】
ブーム角度センサS1は、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出するように構成されている。ブーム角度センサS1は、例えば、ブームフートピン回りのブーム4の回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量(ブームストローク量)を検出するシリンダストロークセンサ、又は、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等であってもよく、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよい。ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出するアーム角度センサS2、及び、アーム5に対するリフティングマグネット6の回動角度であるリフティングマグネット角度を検出するリフティングマグネット角度センサS3についても同様である。
【0013】
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜(機体傾斜角度)を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸及び左右軸回りの傾斜角度を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交して作業機械100の旋回軸上の一点である機械中心点を通る。
【0014】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
【0015】
空間認識装置80は作業機械100の周囲を撮像するように構成されている。空間認識装置80は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、赤外線カメラ又はLIDAR等である。図1の例では、空間認識装置80は、上部旋回体3の上面前端に取り付けられたフロントカメラ80F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられたバックカメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右カメラ80R(図1では不可視。)を含む。
【0016】
そして、空間認識装置80は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。また、空間認識装置80は、空間認識装置80又は作業機械100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。撮像した画像を利用するだけでなく、空間認識装置80としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等を利用する場合には、多数の信号(レーザ光等)を物体に発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を検出してもよい。
【0017】
空間認識装置80は、作業機械100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。物体は、例えば、ダンプトラック、地形形状(傾斜、穴等)、電線、電柱、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、ヘルメット、安全ベスト、作業服、又は、ヘルメットにおける所定のマーク等である。このようにして、空間認識装置80は、物体の種類、位置、及び形状等の少なくとも1つを識別できるように構成されていてもよい。例えば、空間認識装置80は、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
【0018】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6b、及び、ブームシリンダストロークセンサS7が取り付けられていてもよい。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS6c、アームボトム圧センサS6d、及び、アームシリンダストロークセンサS8が取り付けられていてもよい。リフティングマグネットシリンダ9にはリフティングマグネットロッド圧センサS6e、リフティングマグネットボトム圧センサS6f、及び、リフティングマグネットシリンダストロークセンサS9が取り付けられていてもよい。
【0019】
ブームロッド圧センサS6aはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS6bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS6cはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS6dはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。リフティングマグネットロッド圧センサS6eはリフティングマグネットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットロッド圧」とする。)を検出し、リフティングマグネットボトム圧センサS6fはリフティングマグネットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットボトム圧」とする。)を検出する。
【0020】
上部旋回体3には、運転室としてのキャブ10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。
【0021】
また、上部旋回体3上にはキャブ10がキャブ昇降装置90を介して昇降可能に設けられている。以下では、このように昇降可能なキャブを「エレベータキャブ」と称する場合がある。なお、図1は、キャブ昇降装置90によりキャブ10が最高位置まで上昇した状態を示す。また、キャブ10は、ブーム4の側方(通常、左側)に配置されている。
【0022】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る作業機械100に搭載される駆動系の構成例を示す図である。図2において、機械的動力伝達系は二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気制御系は一点鎖線、電気駆動系は太点線でそれぞれ示される。
【0023】
作業機械100の駆動系は、主に、エンジン11、メインポンプ14、油圧ポンプ14G、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、コントローラ30及びエンジン制御装置74で構成されている。
【0024】
エンジン11は、作業機械100の動力源であり、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、オルタネータ11a、メインポンプ14、油圧ポンプ14G及びパイロットポンプ15の入力軸のそれぞれに接続されている。
【0025】
メインポンプ14は、作動油ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0026】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14の吐出量を制御する。
【0027】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0028】
コントロールバルブ17は、作業機械100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対し、メインポンプ14が吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0029】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットポンプ15からの作動油をコントロールバルブ17内にある対応する流量制御弁のパイロットポートに供給してパイロット圧を生成する。具体的には、操作装置26は、旋回操作及びアーム操作のための左操作レバー、ブーム操作及びリフティングマグネット操作のための右操作レバー、走行ペダル、並びに、走行レバー(何れも図示せず。)等を含む。パイロット圧は、操作装置26の操作内容(例えば操作方向及び操作量を含む。)に応じて変化する。
【0030】
操作圧センサ29は、操作装置26が生成するパイロット圧を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、操作装置26が生成したパイロット圧を検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26のそれぞれの操作内容を把握する。
【0031】
コントローラ30は、各種演算を実行する制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置等を備えたマイクロコンピュータである。コントローラ30は、例えば、各種機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、それらプログラムのそれぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0032】
油圧ポンプ14Gは作動油ライン16を介して作動油を油圧モータ60に供給する。本実施形態では、油圧ポンプ14Gは固定容量型油圧ポンプであり、切換弁61を通じて油圧モータ60に作動油を供給する。
【0033】
切換弁61は、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油の流れを切り換えるように構成されている。本実施形態では、切換弁61はコントローラ30からの制御指令に応じて弁位置が切り換わる電磁弁である。切換弁61は、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を連通させる第1弁位置と、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を遮断する第2弁位置とを有する。
【0034】
コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモードに切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第1弁位置に切り換える。また、コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモード以外に切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第2弁位置に切り換える。図2は、切換弁61が第2弁位置にある状態を示す。
【0035】
モード切換スイッチ62は、作業機械100の動作モードを切り換えるスイッチである。本実施形態では、キャブ10内に設置されるロッカスイッチである。操作者はモード切換スイッチ62を操作してショベルモードとリフティングマグネットモードとを二者択一的に切り換える。ショベルモードは作業機械100を掘削機(ショベル)として作動させるときの動作モードであり、例えばリフティングマグネット6の代わりにバケットがアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。リフティングマグネットモードは作業機械100をリフティングマグネット付き作業機械として作動させるときのモードであり、リフティングマグネット6がアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。なお、コントローラ30は各種センサの出力に基づいて作業機械100の動作モードを自動的に切り換えてもよい。
【0036】
リフティングマグネットモードが選択された場合、切換弁61は第1弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させる。一方、リフティングマグネットモード以外の動作モードが選択された場合、切換弁61は第2弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させることなく作動油タンクに流出させる。
【0037】
油圧モータ60の回転軸は発電機63の回転軸に機械的に連結されている。発電機63は、リフティングマグネット6を励磁するための電力を生成する。本実施形態では、発電機63は電力制御装置64からの制御指令に応じて動作する交流発電機である。
【0038】
電力制御装置64はリフティングマグネット6を励磁するための電力の供給・遮断を制御する。本実施形態では、電力制御装置64は、コントローラ30からの発電開始指令・発電停止指令に応じて発電機63による交流電力の発電の開始・停止を制御する。また、電力制御装置64は発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給する。また、電力制御装置64はリフティングマグネット6に印加される電圧の大きさ、及び、リフティングマグネット6を流れる電流の大きさを制御できる。
【0039】
コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオン操作されてオン状態になると電力制御装置64に対して吸着指令を出力する。吸着指令を受けた電力制御装置64は、発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給し、リフティングマグネット6を励磁する。励磁されたリフティングマグネット6は物体(磁性体)を吸着可能な吸着状態となる。
【0040】
また、コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオフ操作されてオフ状態になると電力制御装置64に対して釈放指令を出力する。釈放指令を受けた電力制御装置64は、発電機63による発電を中止させ、吸着状態にあるリフティングマグネット6を非吸着状態(釈放状態)にする。リフティングマグネット6の釈放状態は、リフティングマグネット6への電力供給が中止されてリフティングマグネット6が発生させていた電磁力が消失した状態を意味する。
【0041】
リフティングマグネットスイッチ65は、リフティングマグネット6の吸着・釈放を切り換えるスイッチである。本実施形態では、リフティングマグネットスイッチ65は、左操作レバー26Lの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての弱励磁ボタン65A及び強励磁ボタン65Bと、右操作レバー26Rの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての釈放ボタン65Cとを含む。
【0042】
弱励磁ボタン65Aは、リフティングマグネット6に所定の電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(弱吸着状態)にするための入力装置の一例である。所定の電圧は、例えば、磁力調節ダイヤル66を通じて設定される電圧である。
【0043】
強励磁ボタン65Bは、リフティングマグネット6に許容最大電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(強吸着状態)にするための入力装置の一例である。
【0044】
釈放ボタン65Cは、リフティングマグネット6を釈放状態にするための入力装置の一例である。
【0045】
磁力調節ダイヤル66は、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、磁力調節ダイヤル66はキャブ10内に設置され、弱励磁ボタン65Aが押されたときのリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、磁力調節ダイヤル66は、第1レベルから第4レベルの4段階でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を切り換えできるように構成されている。図2は、磁力調節ダイヤル66で第3レベルが選択された状態を示す。
【0046】
リフティングマグネット6は、磁力調節ダイヤル66で設定されたレベルの磁力(吸着力)を発生させるように制御される。磁力調節ダイヤル66は、磁力(吸着力)のレベルを示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0047】
この構成により、操作者は、左手で左操作レバー26Lを操作し且つ右手で右操作レバー26Rを操作して作業アタッチメントを動作させながら、指でリフティングマグネット6による物体(磁性体)の吸着及び釈放を実行できる。典型的には、操作者は、物体(例えば鉄屑等)にリフティングマグネット6を接触させた状態で弱励磁ボタン65Aを押して鉄屑をリフティングマグネット6に吸着させる。その後、操作者は、ブーム4を緩やかに上昇させ、鉄屑を吸着したリフティングマグネット6を持ち上げた後で、強励磁ボタン65Bを押してリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を増大させる。アタッチメント操作(ブーム操作、アーム操作及びバケット操作の少なくとも1つを含む操作)又は旋回操作による鉄屑の運搬中において、鉄屑がリフティングマグネット6から落ちるのを防止するためである。
【0048】
また、操作者は、磁力調節ダイヤル66でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節することで、物体の仕分けを行うことができる。操作者は、例えば、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いてスクラップの山から比較的軽い物体を選択的に持ち上げて移動させることで、比較的軽い物体と比較的重い物体とを仕分けることができる。操作者は、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いることで、比較的重い物体を持ち上げてしまうのを防止できるためである。
【0049】
作業機械100は、弱励磁ボタン65A又は強励磁ボタン65Bが押されたときに、動作モードを自動的に速度制限モードに切り換えるように構成されていてもよい。速度制限モードは、例えば、リフティングマグネットモードにおいて、旋回速度及びアタッチメントの駆動速度が制限される動作モードである。
【0050】
また、作業機械100は、弱励磁ボタン65Aが押された後で、所定の操作が行われた場合、或いは、所定の状態になった場合、リフティングマグネット6の状態を、強励磁ボタン65Bが押されたときの状態である強吸着状態に自動的に移行させてもよい。所定の操作は、例えば、旋回操作である。所定の状態は、例えば、アタッチメントが所定の姿勢になった状態、具体的には、ブーム角度が所定角度になった状態である。この場合、作業機械100は、例えば、弱励磁ボタン65Aが押されて弱吸着状態となっているリフティングマグネット6がブーム上げ操作に応じて持ち上げられた後で旋回操作が行われたときに、強励磁ボタン65Bが押されなくとも、リフティングマグネット6の状態を強吸着状態に自動的に移行させることができる。
【0051】
表示装置40は、各種情報を表示する装置である。本実施形態では、表示装置40は、運転席が設けられたキャブ10の右前部のピラー(図示せず。)に固定されている。また、図2に示すように、表示装置40は、作業機械100に関する情報を画像表示部41に表示して操作者に情報を提供できる。また、表示装置40は、入力装置としてのスイッチパネル42を含む。操作者はスイッチパネル42を利用して各種指令をコントローラ30に対して入力できる。
【0052】
スイッチパネル42は、各種スイッチを含むパネルである。本実施形態では、スイッチパネル42は、ハードウェアボタンとしてのライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウインドウォッシャスイッチ42cを含む。ライトスイッチ42aは、キャブ10の外部に取り付けられるライトの点灯・消灯を切り換えるためのスイッチである。ワイパースイッチ42bは、ワイパーの作動・停止を切り換えるためのスイッチである。ウインドウォッシャスイッチ42cは、ウインドウォッシャ液を噴射するためのスイッチである。
【0053】
表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70はオルタネータ11aで発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置40以外の電装品72等にも供給される。エンジン11のスタータ11bは蓄電池70からの電力で駆動されてエンジン11を始動する。
【0054】
エンジン制御装置74は、エンジン11を制御する。本実施形態では、エンジン制御装置74は、エンジン11の状態を示す各種データを収集し、収集したデータをコントローラ30に送信する。エンジン制御装置74とコントローラ30とは別体として構成されているが一体的に構成されていてもよい。例えば、エンジン制御装置74は、コントローラ30に統合されてもよい。
【0055】
エンジン回転数調節ダイヤル75は、エンジン回転数を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、エンジン回転数調節ダイヤル75はキャブ10内に設置され、エンジン回転数を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、エンジン回転数調節ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。図2は、エンジン回転数調節ダイヤル75でHモードが選択された状態を示す。
【0056】
SPモードは、作業量を優先させたい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音で作業機械を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジンをアイドリング状態で動作させたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数(アイドリング回転数)を利用する。
【0057】
エンジン11は、エンジン回転数調節ダイヤル75で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数が維持されるように制御される。エンジン回転数調節ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0058】
また、コントローラ30は、角度制御部31と、重心算出部32と、重心記憶部33と、重量算出部34と、累積重量算出部35と、を有している。
【0059】
角度制御部31は、リフティングマグネットシリンダ9の動作を制御して、リフティングマグネット6の角度を制御する。
【0060】
重心算出部32は、リフティングマグネット6に吸着した搬送物の重心の位置を算出する。本実施形態に係る重心算出部32は、リフティングマグネット6に搬送物が吸着した状態で、後述するピンP7(回転機構の一例)を基準として回転させた、リフティングマグネット6の複数の回転角度の各々で、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値を取得する。そして、重心算出部32は、取得した複数のシリンダ圧に基づいて、リフティングマグネット6に吸着した搬送物の重心の位置を算出する。具体的な算出手法については後述する。
【0061】
重心記憶部33は、コントローラ30内部に設けられた不揮発性記憶媒体に設けられた記憶領域であって、重心算出部32によって算出された搬送物の重心の位置を示す情報を記憶する。
【0062】
本実施形態に係る重心記憶部33は、リフティングマグネット6に吸着した第1の搬送物について算出された重心の位置を含んだ情報を記憶する。その後、重量算出部34が、リフティングマグネット6に吸着した、第1の搬送物とは別の第2の搬送物について、重心記憶部33に記憶された重心の位置に基づいて第2の搬送物の重量を測定する。第1の搬送物と、第2の搬送物とは、例えば、せん断寸法が均一となるスクラップ部材である。このため、第1の搬送物と、第2の搬送物とは、重心の位置が略一致している。
【0063】
重量算出部34は、リフティングマグネット6に吸着された搬送物の重量(現重量)を算出する。現重量は、例えば、ブーム4の根元回りのトルクの釣り合いで算出される。具体的には、リフティングマグネット6に吸着された搬送物によってブームシリンダ7の推力が増加し、ブームシリンダ7の推力から算出されるブーム4の根元回りのトルクも増加する。トルクの増加分と、搬送物の重量及び搬送物の重心から計算されるトルクとが、一致する。このように、重量算出部34は、ブームシリンダ7の推力(ブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6bの測定値)及び、重心記憶部33に記憶されている搬送物の重心の位置に基づいて、搬送物の重量を算出する。
【0064】
累積重量算出部35は、ダンプトラックの荷台に積み込まれた搬送物の累積重量を算出する。本実施形態では重量算出部34によって算出された重量の搬送物が、ダンプトラックに積み込まれる毎に、累積重量算出部35が、重量算出部34によって算出された重量を、前回までの累積重量に加算する。
【0065】
次に、図3を用いて、本実施形態に係る作業機械100の重量算出部34におけるリフティングマグネット6に吸着された搬送物の重量を算出する方法について説明する。
【0066】
図3は、作業機械100のアタッチメントがつり上げる搬送物の重量の算出に関するパラメータを説明する模式図である。図3は、本実施形態に係る作業機械100が搬送物を吊り上げる際の様子を示している。
【0067】
作業機械100が、リフティングマグネット6で搬送物をつり上げる際、作業機械100は、典型的には、図1に示す姿勢に比べ、ブーム4を下げ、アーム5を閉じ、リフティングマグネット6を開いた姿勢で、搬送物をつり上げる。また、アタッチメントは、ブーム4のフートピン側で上部旋回体3に片持ち支持されている。また、アタッチメントの先端には、重量の重いリフティングマグネット6が取り付けられている。次に、作業機械100の具体的な構成について説明する。
【0068】
本実施形態に係る作業機械100の構成である、上部旋回体3とブーム4とをピンP1が連結する。上部旋回体3とブームシリンダ7とをピンP2が連結する。ブーム4とブームシリンダ7とをピンP3が連結する。ブーム4とアームシリンダ8とをピンP4が連結する。アーム5とアームシリンダ8とをピンP5が連結する。ブーム4とアーム5とをピンP6が連結する。アーム5とリフティングマグネット6とをピンP7が連結する。
【0069】
ピンP7は、リフティングマグネット6を回転させる回転機構として機能する。
【0070】
図3には、ブーム4の重心G1と、アーム5の重心G2と、リフティングマグネット6の重心G3と、リフティングマグネット6のマグネット面6Aに吸着した搬送物の重心GSと、を示している。
【0071】
また、ピンP1とブーム4の重心G1との間を距離D1とする。ピンP1とアーム5の重心G2との間を距離D2とする。ピンP1とリフティングマグネット6の重心G3との間を距離D3とする。ピンP1と搬送物の重心GSとの間を距離Dsとする。ピンP2とピンP3を結ぶ直線と、ピンP1との距離をDcとする。また、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値をFbとする。また、ブーム重量のうち、ピンP1とブーム4の重心G1とを結ぶ直線に対して垂直方向の垂直成分をW1aとする。アーム重量のうち、ピンP1とアーム5の重心G2とを結ぶ直線に対して垂直方向の垂直成分をW2aとする。リフティングマグネット6の重量をW3とし、リフティングマグネット6のマグネット面6Aに吸着した搬送物の重量をWsとする。
【0072】
図3に示すように、ピンP7の位置は、ブーム角度及びアーム角度により算出される。即ち、ピンP7の位置は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2の検出値に基づいて算出することができる。
【0073】
次に、ピンP1回りの各モーメントとブームシリンダ7との釣り合いの式は、以下の式(1)で表すことができる。
【0074】
WsDs+W1aD1+W2aD2+W3D3=FbDc ・・・(1)
【0075】
ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値Fbは、ブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6bにより算出される。距離Dc、垂直成分の重量W1aは、ブーム角度センサS1により算出される。垂直成分の重量W2a、距離D2は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2により算出される。距離D1、重量W3、は既知の値である。また、ピンP7を基準とした、リフティングマグネット6の重心G3の位置は既知の値である。このため、距離D3は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、リフティングマグネット角度センサS3、及び重心G3の位置により算出される。
【0076】
上述したように、距離Dsは、ピンP1と搬送物の重心GSとの間の距離であり、ピンP1の位置は固定されている(図3参照)。このため、重心GSの位置を特定できれば、距離Dsが特定される。つまり、搬送物の重量Ws、及び搬送物の重心GS以外は、算出可能又は既知の値となるので、搬送物の重心GSが算出された場合(換言すれば、距離Dsが特定された場合)、式(1)を搬送物の重量Wsについて展開した下記の式(2)から、重量算出部34が、搬送物の重量Wsを算出できる。
【0077】
Ws=(FbDc-(W1aD1+W2aD2+W3D3))/Ds ・・・(2)
【0078】
換言すれば、搬送物の重量Wsは、重心記憶部33に記憶された、搬送物の重心GSと、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値(ブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6bの検出値)、ブーム角度(ブーム角度センサS1の検出値)及びアーム角度(アーム角度センサS2の検出値)と、に基づいて算出することができる。なお、重心記憶部33に記憶されている、搬送物の重心GSは、後述する重心算出部32により算出される。
【0079】
次に、重心算出部32による搬送物の重心GSの位置の算出について説明する。上述した式(1)は、搬送物の重量Ws、及び搬送物の重心GSの距離Ds以外は、算出可能又は既知の値である。一方、角度制御部31は、リフティングマグネット6の角度を制御することで、搬送物の重心GS及びリフティングマグネット6の重心G3の位置を変更することができる。つまり、リフティングマグネット6の角度を異ならせることで、導出される複数の式(1)から、搬送物の重量Ws、及び、(距離Dsを算出するための)搬送物の重心GSの位置を算出できる。
【0080】
図4は、本実施形態に係る角度制御部31によって角度を制御されたリフティングマグネット6を例示した図である。
【0081】
図4に示される例では、角度制御部31は、リフティングマグネット6のマグネット面6Aが水平面と略平行となる角度を0度として、ピンP7回りに+90度、及び―90度の回転制御を行う。
【0082】
角度制御部31がリフティングマグネット6を"90度"に回転制御させたリフティングマグネット6の位置6aでは、リフティングマグネット6の重心は重心G3aとなり、搬送物の重心は重心GSaとなる。リフティングマグネット6の重心G3aの位置は既知の値である。
【0083】
角度制御部31がリフティングマグネット6を"0度"に回転制御させたリフティングマグネット6の位置6bでは、リフティングマグネット6の重心は重心G3bとなり、搬送物の重心は重心GSbとなる。リフティングマグネット6の重心G3bの位置は既知の値である。
【0084】
角度制御部31がリフティングマグネット6を"-90度"に回転制御させたリフティングマグネット6の位置6cでは、リフティングマグネット6の重心は重心G3cとなり、搬送物の重心は重心GScとなる。リフティングマグネット6の重心G3cの位置は既知の値である。
【0085】
図4に示される例では、リフティングマグネット6の回転角度が"-90度"、"0度"、"90度"と変化した場合でも、搬送物の重量Wsに変化は生じない。一方、リフティングマグネット6の回転角度が"-90度"、"0度"、"90度"と変化したことに応じて、搬送物の重心GSa、GSb、GScと変化する。しかしながら、搬送物の重心GSa、GSb、GScは、ピンP7からの距離Lsはすべて同じで、角度のみ異なる。換言すれば、搬送物の重心GSa、GSb、GScは、リフティングマグネット6の重心G3からの距離も等しくなる。
【0086】
本実施形態においては、角度制御部31が、リフティングマグネット6の回転角度を変化させる場合について説明した。本実施形態に係る、リフティングマグネット6の回転角度を変化させる制御は、コントローラ30の角度制御部31が自動で行う手法に制限するものではない。例えば、コントローラ30の角度制御部31が、操作装置26に入力された操作者からの操作に従って、リフティングマグネット6の回転角度を変化させる制御を行ってもよい。
【0087】
搬送物の重量Wsが変化せずとも、搬送物の重心GSa、GSb、GScの変化に応じて、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値Fbが変化する。そこで、当該変化に基づいて、式(1)から、搬送物の重心の位置を算出できる。
【0088】
本実施形態に係る重心算出部32は、上記の要件と、リフティングマグネット6の回転角度"-90度"、"0度"、"90度"の各々で検出された、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値と、式(1)と、に基づいて搬送物の重心GSの位置を算出する。例えば、重心算出部32は、回転角度"-90度"、"0度"、"90度"の各々のパラメータを代入した3個の式(1)の収束計算によって、搬送物の重量Wsが同じになるように、標準偏差が最小となる搬送物の重心GSの位置を算出する。
【0089】
なお、本実施形態に係る搬送物の重心GSの位置とは、リフティングマグネット6の重心G3の位置から、搬送物の重心GSまでの距離に基づいて定められている。本実施形態に係るコントローラ30は、ピンP1とリフティングマグネット6の重心G3との間を距離D3と、当該重心GSの位置と、リフティングマグネット6の回転角度と、によって、ピンP1と搬送物の重心GSとの間の距離Dsを算出できる。
【0090】
重心記憶部33は、重心算出部32によって算出された搬送物の重心GSの位置を記憶する。搬送物の重心GSの位置は、例えば、リフティングマグネット6の重心G3を基準とした、搬送物の重心GSまでの距離及び方向で表される。
【0091】
なお、本実施形態では、重心算出部32が算出する、搬送物の重心GSの位置は、リフティングマグネット6の重心G3から搬送物の重心GSまでの距離に制限されるものではなく、ピンP1と搬送物の重心GSとの間の距離Dsを算出可能な位置であればよい。
【0092】
ところで、各作業現場では、典型的には、搬送対象のスクラップ材(搬送物の一例)は、せん断寸法が均一となるようにせん断される。このため、作業機械100が、当該作業現場でせん断寸法が均一となるスクラップ材を搬送している限り、リフティングマグネット6によって吸着されるスクラップ材の重心GSの位置は略等しくなる。
【0093】
そこで、本実施形態に係る作業機械100では、同一工程でせん断されているスクラップ材を搬送する場合に、重量算出部34が、重心記憶部33に記憶されている重心GSの位置と、式(2)と、に基づいて、スクラップ材(搬送物の一例)の重量を算出する。
【0094】
次に、作業機械100が搬送物の重心を記憶するまでの初期設定処理の流れについて説明する。図5は、本実施形態に係る作業機械100が搬送物の重心を記憶するまでの初期設定処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【0095】
コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65からの操作に応じて、電力制御装置64に対して吸着指令を出力することで、リフティングマグネット6による搬送物の吸着制御が行われる(S501)。
【0096】
搬送物を吸着した後、コントローラ30は、オペレータから「重心推定」ボタンの押下を受け付けた場合に、吸着した搬送物のつり上げ制御を行う(S502)。コントローラ30による、重心を算出するためのつり上げ制御は、通常の搬送物のつり上げ速度と比べて遅い速度(極低速)で行う。これにより、つり上げ時に振動等が生じるのを抑制して、重心の算出精度を向上できる。
【0097】
その後、角度制御部31がリフティングマグネット6の角度制御を行う(S503)。本フローチャートでは、リフティングマグネット6について、"90度"、"0度"、"-90度"の順に角度制御を行う。
【0098】
そして、重心算出部32は、リフティングマグネット6の角度に対応する、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値Fbを計測し、取得する(S504)。
【0099】
そして、重心算出部32は、リフティングマグネット6の3姿勢("90度"、"0度"、"-90度")の全てについてブームシリンダ7のシリンダ圧の計測を終了したか否かを判定する(S505)。3姿勢全ての計測を終了していない場合(S505:No)、再びS503から処理を行う。
【0100】
一方、重心算出部32は、3姿勢全ての計測を終了した場合(S505:Yes)、リフティングマグネット6の角度毎に計測された、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値Fbと、式(1)と、に基づいて、搬送物の重心の位置を算出する(S506)。
【0101】
そして、重心算出部32は、算出した搬送物の重心の位置を、重心記憶部33に記憶する(S507)。
【0102】
上述した処理手順によって、搬送物の重心の位置が、重心記憶部33に記憶される。そして、作業機械100が、搬送物をリフティングマグネット6に吸着させる毎に、重量算出部34が、重心記憶部33に記憶された、搬送物の重心の位置を用いることで、搬送物の重量を算出できる。
【0103】
本実施形態では、搬送物の重心の位置を算出するために、リフティングマグネット6の3個の角度(3姿勢)で計測する例について説明した。しかしながら、搬送物の重心の位置の算出を3姿勢に基づいて計測する手法に制限するものではない。例えば、未知数が、搬送物の重量、及び搬送物の重心の位置の2個のため、2個の角度(2姿勢)と式(1)とによって重心の位置を算出してもよい。さらには、4個の角度(4姿勢)以上による収束計算によって、重心の位置を算出してもよい。
【0104】
さらに、搬送する搬送物(例えば、スクラップ材)のせん断寸法が変更された場合、或いは、搬送する搬送物(例えば、スクラップ材)の形状が変更された場合には、重心算出部32が、再び、搬送物の重心の位置の算出を行う。
【0105】
また、本実施形態は、搬送物のせん断寸法や、搬送物の形状が変更された場合に、搬送物の重心の位置を算出する手法に制限するものではない。例えば、オペレータから任意のタイミングで「重心推定」ボタンの押下を受け付けた場合に、搬送物から重心を算出してもよいし、搬送物をリフティングマグネット6に吸着させる毎に、重量の位置を算出してもよい。このように、重心算出部32による搬送物の重心の位置の算出は、任意の条件を満たした場合に行われる。
【0106】
また、本実施形態では、搬送する搬送物を、スクラップ材に制限するものではなく、リフティングマグネット6に吸着する物体であればよい。搬送物としては、例えば、せん断が不要な鉄屑等の産業廃棄物であってもよい。例えば、同一の作業現場から排出される産業廃棄物をリフティングマグネット6に吸着させる場合、重量算出部34は、重心は略同一として、重心記憶部33に記憶された、搬送物の重心の位置を用いることで、搬送物の重量を算出する。
【0107】
本実施形態に係るコントローラ30は、算出された搬送物の重心の位置に基づいて、搬送物の重量を算出することで、搬送物の重心誤差に基づいた、重量の計測の誤差を抑制できる。これにより、搬送物の重量の検出精度を向上させることができる。
【0108】
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、重心算出部32が搬送物の重心の位置を算出する例について説明した。しかしながら、搬送物の重心の位置の特定手法を、第1の実施形態で示した算出手法に制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、搬送物の形状に基づいて、搬送物の重心を算出する手法について説明する。
【0109】
まずは、第1の実施形態と同様に、リフティングマグネット6に搬送物を吸着させた後、コントローラ30は、オペレータから「重心推定」ボタンの押下を受け付けた場合に、吸着した搬送物のつり上げ制御を行う。
【0110】
空間認識装置80が、リフティングマグネット6に吸着した状態で、吊り上げられた搬送物を撮像する。そして、空間認識装置80は、撮像データを、コントローラ30に送信する。なお、本実施形態では、空間認識装置80が搬送物を撮像する例について説明するが、搬送物の形状を認識可能であれば、撮像以外の手法を用いてもよい。
【0111】
そして、重心算出部32は、空間認識装置80による撮像データ(認識結果の一例)に基づいて、搬送物の形状を認識し、認識された搬送物の形状に基づいて、リフティングマグネット6に吸着した搬送物の重心の位置を算出する。推定された搬送物の重心の位置は、重心記憶部33に記憶される。
【0112】
以降のコントローラ30が行う処理は、第1の実施形態と同様として説明を省略する。
【0113】
本実施形態に係るコントローラ30は、搬送物の重心の位置を記憶することで、第1の実施形態と同様に、算出された搬送物の重心の位置に基づいて、搬送物の重量を算出できる。これにより、本実施形態に係るコントローラ30は、搬送物の重心誤差に基づいた、重量の計測の誤差を抑制し、搬送物の重量の検出精度を向上させることができる。
【0114】
(第3の実施形態)
上述した実施形態においては、搬送物の重心の位置を推定し、当該重心の位置に基づいて搬送物の重量を計測する例について説明した。しかしながら、搬送物の重量を計測する際に、搬送物の重心の位置を特定する手法に制限するものではない。
【0115】
第3の実施形態においては、リフティングマグネット6に搬送物が吸着した状態において、リフティングマグネット6に搬送物を吸着させているマグネット面6Aが、水平面と略平行の状態を維持するように、リフティングマグネットシリンダ9がピンP7を含む回転機構を制御した状態で、重量算出部34が、搬送物の重量を算出する。
【0116】
第3の実施形態に係るコントローラ30は、リフティングマグネット6に吸着させた搬送物を移動させる際に、角度制御部31が、搬送物を吸着させているマグネット面6Aが、水平面に略平行(換言すれば鉛直方向に略直角)な状態を維持し続けるように、リフティングマグネット6の角度制御を行う。
【0117】
つまり、本実施形態においては、搬送物を吸着させているマグネット面6Aが、水平面に略平行(換言すれば鉛直方向に略直角)な状態を維持することで、搬送物が、リフティングマグネット6の鉛直下方向に存在している。したがって、図4で示したX1―X2方向における、搬送物の重心の位置と、リフティングマグネット6の重心の位置と、が略一致する。つまり、式(1)において、ピンP1とリフティングマグネット6の重心G3との間の距離D3と、ピンP1と搬送物の重心GSとの間の距離Dsと、が略一致する。
【0118】
そこで、本実施形態のように、搬送物を吸着させているマグネット面6Aが、水平面に略平行な状態を維持している場合、本実施形態に係る重量算出部34は、距離D3と距離Dsとが略一致することを式(2)に当てはめて、搬送物の重量を算出する。
【0119】
本実施形態に係るコントローラ30は、搬送物を吸着させているマグネット面6Aが、水平面に略平行な状態を維持することで、マグネット面6Aが水平面に非平行な状態となる場合に比べ、搬送物の重量を正確に算出できる。
【0120】
また、本実施形態においては、搬送物を吸着させているマグネット面6Aが、水平面に略平行な状態を維持するように制御する。
【0121】
本実施形態の作業機械100におけるリフティングマグネット6の制御は、リフティングマグネット6の姿勢を制御するためにリフティングマグネットシリンダ9の油圧を抜き、作業機械からリフティングマグネット6に係る力を抑制する制御と比較して、慣性力によって角度姿勢に変化が生じるのを抑制して、リフティングマグネット6近傍に振動発生が生じるのを抑制できる。これにより、本実施形態に係るコントローラ30は、搬送物の重力の検知精度を向上させることができる。なお、リフティングマグネットシリンダ9の油圧を抜く制御は、リフティングマグネットシリンダ9と作動油タンクとを連通させる制御、すなわち、リフティングマグネット6の自重を利用してリフティングマグネット6のマグネット面6Aを常に鉛直可能に向けようとする制御を意味する。
【0122】
上述した実施形態においては、コントローラ30による搬送物の重量の算出の精度を向上させることで、計量調整の手戻り作業を削減できるので、積み込み現場の作業効率を向上させることができる。また、上述した実施形態に係るコントローラ30は、搬送物の過積載を発生させることなく、ダンプトラックが積み込み可能な上限近傍まで搬送物を積み込みできるので、輸送効率の向上を実現できる。さらに、上述した実施形態に係るコントローラ30は、ダンプトラックに対して搬送物の過積載を抑制できるので、過積載の負荷による道路の損傷を抑制できる。
【0123】
上述した実施形態においては、作業機械の一例としてリフティングマグネット6が取り付けられた油圧ショベルを用いる例について説明するが、油圧ショベルに制限するものではない。例えば、建設機械、標準機、応用器、林業機械、又は油圧ショベルをベースとした搬送機械に適用してもよい。
【0124】
以上、本発明に係る作業機械の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0125】
100 作業機械
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム(アタッチメント)
5 アーム(アタッチメント)
6 リフティングマグネット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 リフティングマグネットシリンダ
30 コントローラ
31 角度制御部
32 重心算出部
33 重心記憶部
34 重量算出部
35 累積重量算出部
図1
図2
図3
図4
図5