(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178885
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20231211BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01F17/04 N
H01F27/32 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091866
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 大陸
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044BA01
5E044BB01
5E044BB05
5E044CA02
5E044CA08
5E044CA09
5E044CB07
5E070AA01
5E070AA11
5E070AB01
5E070AB08
5E070BA08
(57)【要約】
【課題】 パーツのコストダウン及び組立時における工数削減による製造面のコストダウンを図るとともに、パーツ間のバラツキや製造における組立上のバラツキを低減して均質性及び品質を高める。
【解決手段】 コイル部2に対して左右の側面からそれぞれ嵌め込み可能な一対の絶縁体半部5,6の組合わせにより構成する円筒状の絶縁体ユニット4を備え、絶縁体半部5,6は、コイル部2の外周面2oを覆う半円筒状のアウタ絶縁部5m,6m,及びこのアウタ絶縁部5m,6mの内周面5mi,6miからコイル部2の内方へ突出し、少なくとも一部の先端部5s…,5ss…,6s…,6ss…がコイル部2の内周面2iから内方へ所定長さLiだけ突出するとともに、コイル部2の軸心Kiに対する交差方向に位置する全てのターン部T…に接触する複数のインナ絶縁部5s…,6s…を有し、かつ絶縁素材Dにより一体形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電素材による導線を巻回したコイル部,及びこのコイル部の内周面,外周面及び両端面に対向するコア面を有するコア部を備えるコイル部品において、前記コイル部に対して左右の側面からそれぞれ嵌め込み可能な一対の絶縁体半部の組合わせにより構成する円筒状の絶縁体ユニットを備え、前記絶縁体半部は、前記コイル部の外周面を覆う半円筒状のアウタ絶縁部,及びこのアウタ絶縁部の内周面から前記コイル部の内方へ突出し、少なくとも一部の先端部が前記コイル部の内周面から内方へ所定長さだけ突出するとともに、前記コイル部の軸心に対する交差方向に位置する全てのターン部に接触する複数のインナ絶縁部を有し、かつ絶縁素材により一体形成してなることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記コア部は、E型に形成した一対のコア半部の組合わせにより構成することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記アウタ絶縁部は、前記コイル部の径方向外方に位置することにより、当該コイル部の外周面とこの外周面に対向する前記コア面間を絶縁する厚さを有することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項4】
前記インナ絶縁部は、前記コイル部の内周面から内方へ突出する先端部までの所定長さは、当該コイル部の内周面とこの内周面に対向する前記コア面間を絶縁する空気空間を形成する長さを有することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項5】
前記インナ絶縁部は、前記コイル部におけるターン部間の相互を絶縁する厚さを有することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項6】
前記インナ絶縁部は、前記コイル部の一方の端面とこの一方の端面に対向する前記コア面間を絶縁する厚さを有することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項7】
前記インナ絶縁部は、前記コイル部の他方の端面とこの他方の端面に対向する前記コア面間を絶縁する厚さを有することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項8】
前記絶縁体ユニットは、外周面に、二次コイル部を巻回可能な凹溝状のボビン形状部を形成してなることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線を巻回したコイル部,及びこのコイル部の内周面,外周面及び両端面に対向するコア面を有するコア部を備えるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電素材による導線を巻回したコイル部,及びこのコイル部の内周面,外周面及び両端面に対向するコア面を有するコア部を備えるコイル部品は知られており、既に本出願人もこの種のコイル部品として好適なコイル部品及びその製造方法を特許文献1により提案した。
【0003】
同文献1に記載のコイル部品は、製造工数の低減,製造コストの削減及びコイル部品のサイズダウンを図るとともに、全体の放熱性をより高めることを目的としたものであり、具体的には、平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線の両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品を構成するに際して、導電性素材により形成した所定の厚さを有するプレート基材からコイル本体部及びコイル端子部に対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材に対する曲げ処理により製作したコイル部と、コイル本体部における各ターン部間に挿入することにより各ターン部間の電気的絶縁を行う絶縁素材により形成した一又は二以上の絶縁片部を所定間隔置きに設けたセパレータ部材とを備えて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載のコイル部品は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、この種のコイル部品は、比較的大電流で使用するとともに、振動等の劣悪環境で使用されることも少なくないため、コイル部品本来の磁気的及び電気的性能はもちろんのこと、絶縁性能も重要な性能の一つとなる。このため、特許文献1の場合、一又は二以上の絶縁片部を所定間隔置きに設けた二つのセパレータ部材と、第一ボビン分割部及び第二ボビン分割部を有するコイルボビンの計四つの絶縁パーツを、絶縁の要求される必要部位に組付けていた。
【0007】
この結果、コイル部品全体のパーツ点数が増加し、コイル部品を構成するパーツ面におけるコストアップを招くとともに、加えて、組立時における工数の増加により製造コストの上昇を招く難点があった。
【0008】
しかも、パーツ点数が増加するため、製造ロット毎のパーツ間のバラツキや製造における組立上のバラツキが発生しやすく、コイル部品の均質性で不利になる難点があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したコイル部品の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、導電素材Eによる導線Wを巻回したコイル部2,及びこのコイル部2の内周面2i,外周面2o及び両端面2u,2dに対向するコア面3i,3o,3u,3dを有するコア部3を備えるコイル部品1を構成するに際して、コイル部2に対して左右の側面からそれぞれ嵌め込み可能な一対の絶縁体半部5,6の組合わせにより構成する円筒状の絶縁体ユニット4を備え、絶縁体半部5,6は、コイル部2の外周面2oを覆う半円筒状のアウタ絶縁部5m,6m,及びこのアウタ絶縁部5m,6mの内周面5mi,6miからコイル部2の内方へ突出し、少なくとも一部の先端部5s…,5ss…,6s…,6ss…がコイル部2の内周面2iから内方へ所定長さLiだけ突出するとともに、コイル部2の軸心Kiに対する交差方向に位置する全てのターン部T…に接触する複数のインナ絶縁部5s…,6s…を有し、かつ絶縁素材Dにより一体形成してなることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、コア部3は、E型に形成した一対のコア半部3x,3yの組合わせにより構成することができる。一方、アウタ絶縁部5m,6mは、コイル部2の径方向Fd外方に位置することにより、当該コイル部2の外周面2oとこの外周面2oに対向するコア面3o間を絶縁する厚さLoに設定することができる。他方、インナ絶縁部5s…,6s…は、コイル部2の内周面2iから内方へ突出する先端部5ss…,6ss…までの長さは、当該コイル部2の内周面2iとこの内周面2iに対向するコア面3i間を絶縁する空気空間Aiを形成する長さLiに設定することができるとともに、インナ絶縁部5s…,6s…は、コイル部2におけるターン部T…の相互間を絶縁する厚さLtに設定することができる。また、インナ絶縁部5s…,6s…は、コイル部2の一方の端面2uとこの一方の端面2uに対向するコア面3u間を絶縁する厚さLuに設定することができるとともに、インナ絶縁部5s…,6s…は、コイル部2の他方の端面2dとこの他方の端面2dに対向するコア面3d間を絶縁する厚さLdに設定することができる。加えて、絶縁体ユニット4の外周面4fには、二次コイル部8を巻回可能な凹溝状のボビン形状部7を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係るコイル部品1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 基本的に、二つの絶縁体半部5,6により全体の絶縁機能を確保できるため、パーツ点数の削減によりパーツ面のコストダウンを図ることができるとともに、組立時における工数削減による製造面のコストダウンも図ることができる。しかも、パーツ点数を削減(半減)できるため、製造ロット毎のパーツ間のバラツキや製造における組立上のバラツキを低減して、コイル部品の均質性及び品質を高めることができる。
【0014】
(2) 好適な態様により、コア部3を構成するに際し、E型に形成した一対のコア半部3x,3yの組合わせにより構成すれば、同一パーツとなるコア半部3x,3yを組合わせることにより、閉路となるコア部3を構築できるため、パーツコストの削減に寄与できるとともに、製造容易性を高めることができるため、製造コストの削減にも寄与することができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、アウタ絶縁部5m,6mの厚さを設定するに際し、コイル部2の径方向Fd外方に位置することにより、当該コイル部2の外周面2oとこの外周面2oに対向するコア面3o間を絶縁する厚さLoに設定すれば、絶縁素材Dにより形成するアウタ絶縁部5m,6mの厚さの設定のみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の外周面2oとコア面3o間の絶縁を容易かつ確実に実施できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、インナ絶縁部5s…,6s…を形成するに際し、コイル部2の内周面2iから内方へ突出する先端部5ss…,6ss…までの長さを、当該コイル部2の内周面2iとこの内周面2iに対向するコア面3i間を絶縁する空気空間Aiを形成する長さLiに設定すれば、インナ絶縁部5s…,6s…の長さの設定のみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の内周面2iとコア面3i間の絶縁を容易かつ確実に実施することができるとともに、コイルボビンの機能を兼ねるため、別途のコイルボビンを不要にすることができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、インナ絶縁部5s…,6s…の厚さを設定するに際し、コイル部2におけるターン部T…の相互間を絶縁する厚さLtに設定すれば、各ターン部T…間の間隔をインナ絶縁部5s…,6s…により設定できるため、各ターン部T…間の絶縁性能を容易かつ確実に確保できる。したがって、コイル部2の表面に塗布する絶縁塗料を不要にすることができるとともに、各ターン部T…間における隙間の均等性及び安定性を確保できる。しかも、コイル部2の表面に塗布する絶縁塗料が不要になるため、大電流を流して使用するコイル部品1であっても、全体の放熱性を高めることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、コイル部2の一方(上側)の端面2uとこの一方の端面2uに対向するコア面3u間の絶縁を、一端部(上端部)に位置するインナ絶縁部5s…,6s…の厚さLuにより設定すれば、端部のインナ絶縁部5s…,6s…の厚さのみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の一方の端面2uとコア面3u間の絶縁を容易かつ確実に実施することができる。しかも、コイルボビンに対応するバリア部或いは絶縁シートの機能を兼ねるため、本来必要となる別途のコイルボビンを不要にすることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、コイル部2の他方(下側)の端面2dとこの他方の端面2dに対向するコア面3d間の絶縁を、他端部(下端部)に位置するインナ絶縁部5s…,6s…の厚さLdにより設定すれば、端部のインナ絶縁部5s…,6s…の厚さのみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の他方の端面2dとコア面3d間の絶縁を容易かつ確実に実施することができる。しかも、コイルボビンに対応するバリア部或いは絶縁シートの機能を兼ねるため、本来必要となる別途のコイルボビンを不要にすることができる。
【0020】
(8) 好適な態様により、絶縁体ユニット4の外周面4fに、二次コイル部8を巻回可能な凹溝状のボビン形状部7を形成すれば、絶縁体ユニット4を二次コイル部8を設ける際におけるコイルボビンとして利用可能になるため、トランスを構築できるなど、多機能性及び発展性に優れたコイル部品1として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の好適実施形態に係るコイル部品の一部を仮想線で示した一部断面平面図、
【
図2】同コイル部品の一部を仮想線で示した一部断面正面図、
【
図3】同コイル部品の絶縁体半部の
図4中B-B線における断面正面図、
【
図4】同絶縁体半部の
図3中A-A線における断面平面図、
【
図5】同コイル部品のコア部を仮想線で示した平面図、
【
図6】同コイル部品のコア部を仮想線で示した正面図、
【
図7】同コイル部品の構成パーツを正面方向から見た一部断面を含む展開図、
【
図8】同絶縁体半部の変更例に係る
図4中C方向からの矢視図、
【
図9】同絶縁体半部の変更例に係る
図4中C方向からの底面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係るコイル部品1の主要構成パーツについて、
図1-
図10を参照して説明する。
【0024】
図7は、コイル部品1の構成パーツの展開図を示す。コイル部品1は、コイル部2と、一対の絶縁体半部5,6の組合わせにより構成する絶縁体ユニット4と、一対のコア半部3x,3yの組合わせにより構成するコア部3を備える。
【0025】
コイル部2は、
図2に示すように、銅等の導電素材Eにより断面が矩形となる平角線Wを巻回したコイル本体部2mを備え、このコイル本体部2mの両端となる上端及び下端は、
図1に示すように、それぞれ正面方向前方に延出した延出部2pu及び2pdに形成するとともに、この延出部2pu及び2pdの先端側はコイル端子部2su,2sd(
図7参照)を形成する。例示のコイル本体部2mは、ターン数が6.5回巻である。図中、一巻分をターン部Tにより示す。
【0026】
一方、絶縁体ユニット4は、
図5-
図7に示すように、コイル部2に対して左右の側面からそれぞれ嵌め込み可能な一対の絶縁体半部5,6の組合わせにより構成する。絶縁体半部5と6は、具体的な形状をコイル部2の形状に合致させるも、基本的な形状は左右対称形態となる。これにより、絶縁体半部5と6を組合わせた際には円筒状になる。絶縁体半部5と6は、それぞれ合成樹脂素材等の絶縁素材Dにより一体成形する。
【0027】
この場合、一方の絶縁体半部5、即ち、正面から見て左側に位置する絶縁体半部5は、
図3及び
図4に示すように、一体形成したアウタ絶縁部5mとインナ絶縁部5s…を備える。
【0028】
アウタ絶縁部5mは、上下方向における中間位置に、コイル部2の外周面2oを覆う半円筒状に形成した中間絶縁部21を有するとともに、この中間絶縁部21の上方と下方にそれぞれ上絶縁部22と下絶縁部23を有するアウタ絶縁部5mを備える。この場合、一例として、上絶縁部22と下絶縁部23は、軸方向(上下方向)の長さを、中間絶縁部21と同程度に選定するとともに、周方向の長さを中間絶縁部21の全体長さの2/3程度に選定し、中間絶縁部21の周方向における中間位置に設ける。
【0029】
また、中間絶縁部21の外面(外周面)には、
図8に示すように、周方向(半周)に凹溝状(チャンネル状)のボビン形状半部24を形成する。これにより、
図10に示すように、絶縁体半部5と6の組合わせにより絶縁体ユニット4を構成した際には、この絶縁体ユニット4の外周面4fに、二次コイル部8を巻回可能な凹状リング形のボビン形状部7が形成される。このように、絶縁体ユニット4の外周面4fに、二次コイル部8を巻回可能な凹溝状のボビン形状部7を形成すれば、絶縁体ユニット4を二次コイル部8を設ける際におけるコイルボビンとして利用可能になるため、トランスを構築できるなど、多機能性及び発展性に優れたコイル部品1として提供することができる。
【0030】
このアウタ絶縁部5mは、
図1及び
図2に示すように、コイル部2に対して左側面から組付けて使用する。したがって、アウタ絶縁部5mをコイル部2に組付けた際には、コイル部2の左側であって、径方向Fd外方に位置するとともに、特に、アウタ絶縁部5mの中間絶縁部21は、コイル部2の左側の外周面2oを半周にわたり覆う。このため、アウタ絶縁部5mの厚さを設定するに際しては、
図1に示すように、コイル部2の外周面2oとこの外周面2oに対向するコア面3o間を絶縁する厚さLoに設定する。このように設定すれば、絶縁素材Dにより形成するアウタ絶縁部5mの厚さの設定のみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の外周面2oとコア面3o間の絶縁を容易かつ確実に実施できる。
【0031】
インナ絶縁部5s…(5sx,5syを含む)は、
図1-
図4に示すように、アウタ絶縁部5mの内周面5miからコイル部2の内方へ突出し、その先端部5ss…はコイル部2の内周面2iから内方へ長さLiだけ突出する。インナ絶縁部5s…は、内周面5miにおける軸方向(上下方向)に、コイル部2の各ターン部T…間隔置きに複数(例示は八つ)設ける。したがって、各インナ絶縁部5s…は、コイル部2に組付けた際には、
図2に示すように、コイル部2の軸心Kiに対する交差方向に位置する全てのターン部T…に接触する。
【0032】
この場合、中間エリアに位置する複数(例示は六つ)のインナ絶縁部5s…、即ち、一端(上端)と他端(下端)に位置するインナ絶縁部5sxと5syを除いた各インナ絶縁部5s…は、
図1及び
図2に示すように、コイル部2の内周面2iから内方へ長さLiだけ突出し、その先端部5ss…は、この内周面2iに対向するコア面3iに当接する。このため、突出する長さLiは、コイル部2の内周面2iと対向するコア面3i間を絶縁する空気空間Aiを形成する長さに設定する。なお、実施形態では、一例として、インナ絶縁部5s…の全部を同一形状に形成したが、少なくとも離間した二つのインナ絶縁部5s,5sのみ、或いはインナ絶縁部5sxと5syのみでも空気空間Aiを形成することも可能であるため、空気空間Aiを形成可能な各種形態によるインナ絶縁部5s…(5sx,5syを含む)により実施することができる。各インナ絶縁部5s…は、
図1に示すように、二つの離間した三角形の山形突出形状部により形成し、先端の頂点が先端部5ss…となる。このように設定すれば、インナ絶縁部5s…の長さの設定のみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の内周面2iとコア面3i間の絶縁を容易かつ確実に実施することができるとともに、コイルボビンの機能を兼ねるため、別途のコイルボビンを不要にすることができる。
【0033】
また、各インナ絶縁部5s…の厚さは、コイル部2における各ターン部T…の相互間を絶縁する厚さに設定する。このように設定すれば、各ターン部T…間の間隔をインナ絶縁部5s…により設定できるため、各ターン部T…間の絶縁性能を容易かつ確実に確保できる。したがって、コイル部2の表面に塗布する絶縁塗料を不要にすることができるとともに、各ターン部T…間における隙間の均等性及び安定性を確保できる。しかも、コイル部2の表面に塗布する絶縁塗料が不要になるため、大電流を流して使用するコイル部品1であっても、全体の放熱性を高めることができる。即ち、このようなインナ絶縁部5s…の形状及び構成により、各ターン部T…の相互間を絶縁する厚さLtが確保されるとともに、空気空間Aiが確保されるため、従来の絶縁構造よりもパーツ点数が削減され、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0034】
さらに、インナ絶縁部5s…における一端(上端)に位置するインナ絶縁部5sxは、
図2に示すように、コイル部2の一端(上端)における端面2uとこの端面2uに対向するコア面3u間を絶縁する厚さLuを設定する。このように設定すれば、端部のインナ絶縁部5s…の厚さのみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の一方の端面2uとコア面3u間の絶縁を容易かつ確実に実施することができる。しかも、コイルボビンに対応するバリア部或いは絶縁シートの機能を兼ねるため、本来必要となる別途のコイルボビンを不要にすることができる。
【0035】
同様に、インナ絶縁部5s…における他端(下端)に位置するインナ絶縁部5sdも、
図2に示すように、コイル部2の他端(下端)における端面2dとこの端面2dに対向するコア面3d間を絶縁する厚さLdを設定する。このように設定すれば、端部のインナ絶縁部5s…の厚さのみで十分な絶縁性能を確保できるため、コイル部2の他方の端面2dとコア面3d間の絶縁を容易かつ確実に実施することができる。しかも、コイルボビンに対応するバリア部或いは絶縁シートの機能を兼ねるため、本来必要となる別途のコイルボビンを不要にすることができる。
【0036】
なお、
図8及び
図9には、絶縁体半部5の変更例に係る
図4中C方向からの矢視図と
図4中C方向からの底面斜視図をそれぞれ示す。
図8及び
図9は、絶縁体半部5の全体のイメージを示すものであり、
図1-
図7に示した絶縁体半部5とは細部の形状や構成が異なる。
【0037】
以上、一方の絶縁体半部5について詳細に説明したが、他方の絶縁体半部6も同様に構成することができる。即ち、他方の絶縁体半部6は、
図1-
図7に示すように、コイル部2の右側の側面に組付けるため、左側の側面に組付ける一方の絶縁体半部5に対して、具体的な構成は、コイル部2の構成及び形状に合致させるも、基本的な構成は、左右対称になる点を除いて、一方の絶縁体半部5と同じになる。図中、絶縁体半部6において、6mはアウタ絶縁部、6miはアウタ絶縁部の内周面、6sはインナ絶縁部、6ssはインナ絶縁部の先端部、6sxは最上部のインナ絶縁部、6syは最下部のインナ絶縁部をそれぞれ示す。
【0038】
他方、コア部3は、
図7(
図5,
図6)に示すように、上側に配するコア半部3xと下側に配するコア半部3yの組合わせにより構成する。一対のコア半部3x,3yは、それぞれE型形状に形成する。これにより、同一パーツとなるコア半部3x,3yを組合わせることにより、閉路となるコア部3を構築することができるため、パーツコストの削減に寄与できるとともに、製造容易性を高めることができるため、製造コストの削減にも寄与することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係るコイル部品1の製造方法について、
図1-
図9の各図を参照して説明する。
【0040】
まず、各構成パーツは、
図7に示すように、予め、別途製造して用意する。この場合、コア部3を構成する一対のコア半部3x及び3yは、一例として、磁性素材を用いて焼成工程等により製造することができる。この場合、複数のコア半部3x…を用意し、一つをコア半部3xとして使用し、他のコア半部3xを反転させることにより、コア半部3yとして利用できる。
【0041】
また、絶縁体ユニット4を構成する一対の絶縁体半部5,6は、一例として、合成樹脂素材を用いて成形工程等により、それぞれ一体の成形品として製造することができる。さらに、コイル部2は、銅材等の導電性素材Eにより平角線Wを形成するとともに、湾曲加工又は折曲加工を含む巻回工程等により平角線Wを形成する。
【0042】
そして、製造する際には、コイル部2を軸方向に拡張し、
図7に示す矢印F1のように、一方の絶縁体半部5をコイル部2の左側の側面に組付けるとともに、矢印F2のように、他方の絶縁体半部6をコイル部2の右側の側面に組付ける。この際、各インナ絶縁部5s…を、コイル部2の各ターンT…間に収容し、アウタ絶縁部5mの内周面5miをコイル部2の外周面2oに当接させるとともに、各インナ絶縁部6s…を、コイル部2の各ターンT…間に収容し、アウタ絶縁部6mの内周面6miをコイル部2の外周面2oに当接させる。これにより、
図5及び
図6に示すように、絶縁体半部5と絶縁体半部6を組合わせた絶縁体ユニット4が構成され、かつコイル部2に装着された状態となる。
【0043】
この後、下方からコイル部2の下半部に対して、
図7に示す矢印F3のように、コア半部3yを装着するとともに、上方からコイル部2の上半部に対して、
図7に示す矢印F4のように、コア半部3xを装着する。これにより、
図5及び
図6において仮想線で示すように、コア半部3x,3yを組付けることができるため、閉磁路となるコア部3が構成される。
【0044】
以上により、目的のコイル装置1を得ることができる。このように、本実施形態に係るコイル装置1は、絶縁手段として二つの絶縁体半部5,6を用いたため、コイル装置1全体の製造も極めて容易に行うことができる。
【0045】
また、前述したように、絶縁体ユニット4には、周方向に凹溝状(チャンネル状)となるボビン形状半部24…を形成し、絶縁体ユニット4の外周面4fに、二次コイル部8を巻回可能な凹溝状のボビン形状部7を設けたため、絶縁体ユニット4を、二次コイル部8を設ける際におけるコイルボビンに兼用可能になる。これにより、
図10に示すように、ボビン形状部7に、二次コイル部8を巻回することにより二次コイル部8を設ければ、一次コイル部を構成するコイル部2(コイル装置1)と二次コイル部8によるトランス10を構築することができるなど、多機能性及び発展性に優れたコイル部品1として提供することができる。
【0046】
よって、このような本実施形態に係るコイル部品1によれば、基本的な構成として、コイル部2に対して左右の側面からそれぞれ嵌め込み可能な一対の絶縁体半部5,6の組合わせにより構成する円筒状の絶縁体ユニット4を備え、絶縁体半部5,6は、コイル部2の外周面2oを覆う半円筒状のアウタ絶縁部5m,6m及びこのアウタ絶縁部5m,6mの内周面5mi,6miからコイル部2の内方へ突出して先端部5ss…,6ss…がコイル部2の内周面2iから内方へ長さLiだけ突出するとともに、コイル部2の軸心Kiに対する交差方向に位置する全てのターン部T…に接触する複数のインナ絶縁部5s…,6s…を有し、かつ絶縁素材Dにより一体形成してなるため、パーツ点数の削減によりパーツ面のコストダウンを図ることができるとともに、組立時における工数削減による製造面のコストダウンも図ることができる。しかも、パーツ点数を削減(半減)できるため、製造ロット毎のパーツ間のバラツキや製造における組立上のバラツキを低減して、コイル部品の均質性及び品質を高めることができる。
【0047】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0048】
例えば、コア部3は、一対のE型に形成したコア半部3x,3yの組合わせにより構成した場合を示したが、E型の第一コア分割部とI形の第二コア分割部の組合わせにより構成してもよい。また、平角線Wを巻回したコイル部2を例示したが、丸線等の他の導線種類の使用を排除するものではない。なお、導電素材E,絶縁素材Dは、例示に限定されることなく、同様の機能(特性)を有する各種素材を利用できるとともに、磁性素材も同様の機能(特性)を有する各種磁性素材を選定可能である。さらに、アウタ絶縁部5m,6m,及びインナ絶縁部5s…,6s…は、同様の機能を発揮することを条件として、各種形状,寸法,形態等により実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るコイル部品は、導線を用いたコイル部を有する、インダクタ,トランス等の各種コイル部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:コイル部品,2:コイル部,2i:コイル部の内周面,2o:コイル部の外周面,2u:コイル部の端面,2d:コイル部の端面,3:コア部,3i:コア面,3o:コア面,3u:コア面,3d:コア面,3x:コア半部,3y:コア半部,4:絶縁体ユニット,4f:絶縁体ユニットの外周面,5:絶縁体半部,5m:アウタ絶縁部,5mi:アウタ絶縁部の内周面,5s…:インナ絶縁部,5ss:インナ絶縁部の先端部,6:絶縁体半部,6m:アウタ絶縁部,6mi:アウタ絶縁部の内周面,6s…:インナ絶縁部,6ss:インナ絶縁部の先端部,7:ボビン形状部,8:二次コイル部,E:導電素材,D:絶縁素材,W:導線(平角線),Ki:コイル部の軸心,T…:ターン部,Li:長さ,Lo:厚さ,Lt:厚さ,Lu:厚さ,Ld:厚さ,Ai:空気空間,Fd:径方向