(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178890
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6474 20110101AFI20231211BHJP
【FI】
H01R13/6474
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091876
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大熊 誉仁
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FC23
(57)【要約】
【課題】インピーダンス整合を実現しつつ小型である差動伝送に適したコネクタを提供する
【解決手段】コネクタ100は、複数の端子セット3Sを備える。端子セット3Sは、一対の信号端子30A及び一対のグランド端子30Bで構成される。一対の信号端子30Aの各々は、インピーダンス調整部60を有する。一対のグランド端子30Bの各々は、対応部70を有する。一対のインピーダンス調整部60は配列方向で隣接しており、一対の対応部70は一対のインピーダンス調整部60を配列方向外側から挟んでいる。対応部70の配列方向寸法W2は、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1よりも小さい。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
一又は複数の端子セットと、を備えるコネクタであって、
前記端子セットは、一対の信号端子及び一対のグランド端子で構成され、
前記一対の信号端子の各々は、前記ハウジングに保持された被保持部と、前記ハウジングから露出した露出部と、を有し、
前記露出部は、インピーダンス調整部と、前記インピーダンス調整部と前記被保持部とを連結する連結部と、を有し、
前記一対のグランド端子の各々は、対応部を有し、
一対の前記インピーダンス調整部は、配列方向で隣接しており、
一対の前記対応部は、前記一対のインピーダンス調整部を配列方向外側から挟んでおり、
前記インピーダンス調整部の配列方向寸法は、前記連結部の配列方向寸法よりも大きく、
前記対応部の配列方向寸法は、前記インピーダンス調整部の配列方向寸法よりも小さい、
コネクタ。
【請求項2】
前記インピーダンス調整部は、
配列方向内側に膨出した内側膨出部と、
配列方向外側に膨出した外側膨出部と、を有する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記対応部は、配列方向内側に膨出した内側膨出部を有しない、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記対応部は、当該対応部と隣り合うインピーダンス調整部から離間する離間部を有する、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有する、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記一又は複数の端子セットは、複数の端子セットであり、
前記複数の端子セットのうち一の端子セットの前記対応部と、当該一の端子セットと隣り合う他の端子セットの前記対応部とは、一体化されている、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記一又は複数の端子セットは、複数の端子セットであり、
前記複数の端子セットのうち隣り合う端子セットは、前記グランド端子を共用している、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記コネクタは、取付対象物に取り付けられて使用されるものであり、
前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して移動可能な可動ハウジングと、を備え、
前記被保持部は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、を備え、
前記露出部は、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部との間に位置する、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタは、取付対象物に取り付けられて使用されるものであり、
前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、
前記一対の信号端子の各々は、前記取付対象物に接続される接続部と、前記被保持部であって前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、を有し、
前記露出部は、前記接続部と前記固定側被保持部との間に形成される、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコネクタでは、複数の端子の各々が、空気中に露出している部分に幅広部を有している。これにより、露出している部分において上がりやすいインピーダンスが調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高周波信号の伝送には、差動伝送方式を採用することが有効である。さらに、信号端子をS、グランド端子をGと表現したとき、「GSSGSSG」や「GGSSGGSSGG」のように、一対の信号端子を一対のグランド端子で挟むようにピンアサイン(端子の機能割当)を行うことが有効である。
【0005】
特許文献1に記載のコネクタでは、複数の端子がすべて同一形状であるため、上記のようなピンアサインを行った場合、信号端子だけでなくグランド端子も幅広部を有することとなる。そして、インピーダンスを調整する目的に幅広部をさらに幅広にすると、グランド端子の幅広部までも幅広になる。その結果、端子の配列間隔を大きくせざるを得ず、端子配列方向でコネクタが大型化してしまう。
【0006】
本開示が解決しようとする課題は、インピーダンス整合を実現しつつ小型である差動伝送に適したコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係るコネクタは、ハウジングと、一又は複数の端子セットと、を備えるコネクタであって、前記端子セットは、一対の信号端子及び一対のグランド端子で構成され、前記一対の信号端子の各々は、前記ハウジングに保持された被保持部と、前記ハウジングから露出した露出部と、を有し、前記露出部は、インピーダンス調整部と、前記インピーダンス調整部と前記被保持部とを連結する連結部と、を有し、前記一対のグランド端子の各々は、対応部を有し、一対の前記インピーダンス調整部は、配列方向で隣接しており、一対の前記対応部は、前記一対のインピーダンス調整部を配列方向外側から挟んでおり、前記インピーダンス調整部の配列方向寸法は、前記連結部の配列方向寸法よりも大きく、前記対応部の配列方向寸法は、前記インピーダンス調整部の配列方向寸法よりも小さい。
【0008】
本態様では、コネクタは、ハウジングと、一又は複数の端子セットと、を備える。端子セットは、一対の信号端子及び一対のグランド端子で構成される。
【0009】
一対の信号端子の各々は、ハウジングに保持された被保持部と、ハウジングから露出した露出部と、を有する。
露出部は、ハウジングから露出しているため、インピーダンスが過剰に上がりやすい。
【0010】
ここで、露出部は、インピーダンス調整部と、インピーダンス調整部と被保持部とを連結する連結部と、を有する。そして、インピーダンス調整部の配列方向寸法は、連結部の配列方向寸法よりも大きい。
このため、インピーダンス調整部の配列方向寸法が連結部の配列方向寸法と同じである態様と比較して、露出部のインピーダンス(差動インピーダンス)を下げることができ、インピーダンスを調整することができる。
【0011】
また、一対のグランド端子の各々は、対応部を有する。そして、一対のインピーダンス調整部は配列方向で隣接しており、一対の対応部は一対のインピーダンス調整部を配列方向外側から挟んでいる。
このため、インピーダンス調整部と対応部とで「GSSG」のピンアサインを実現できる。
【0012】
また、対応部の配列方向寸法は、インピーダンス調整部の配列方向寸法よりも小さい。
このため、対応部の配列方向寸法がインピーダンス調整部の配列方向寸法を同じである態様と比較して、コネクタを配列方向で大型化せずに、インピーダンス調整部の配列方向寸法を大きくすることができる。
【0013】
なお、後述する実施形態では、インピーダンス調整部の延在方向が直線状である例を説明する。しかし、本態様のインピーダンス調整部は、これに限定されない。
また、後述する実施形態では、インピーダンス調整部の板厚方向が、配列方向及び延在方向の両方に垂直な方向である例を説明する。しかし、本態様のインピーダンス調整部は、これに限定されず、そもそも板厚方向が想定されないもの(例えば端子が鋳造で製造される等、板材を材料としない場合)であってもよい。
また、後述する実施形態では、露出部が、空気中に露出している例を説明する。しかし、本態様の露出部は、これに限定されず、例えばゲル状又は液状の物の中に配置されていてもよい。
【0014】
第2の態様に係るコネクタは、第1の態様において、前記インピーダンス調整部は、配列方向内側に膨出した内側膨出部と、配列方向外側に膨出した外側膨出部と、を有する。
【0015】
本態様では、インピーダンス調整部は、配列方向内側に膨出した内側膨出部と、配列方向外側に膨出した外側膨出部と、を有する。
このため、インピーダンス調整部が内側膨出部と外側膨出部の何れか一方のみを有する態様と比較して、インピーダンス調整部の配列方向寸法を大きくできる。
なお、配列方向内側とは、配列方向のうち配列方向中心に近づく方向を意味し、配列方向外側とは、配列方向のうち配列方向中心から遠ざかる方向を意味する。そして、配列方向中心とは、配列方向に並んだ「一方の対応部」「一方のインピーダンス調整部」「他方のインピーダンス調整部」「他方の対応部」において、一方のインピーダンス調整部と他方のインピーダンス調整部との間の位置を意味する。
また、インピーダンス調整部の内側膨出部又は外側膨出部は、当該インピーダンス調整部が連結する他の部分と比べて、配列方向内側又は配列方向外側に膨出した部分である。
【0016】
第3の態様に係るコネクタは、第1又は第2の態様において、前記対応部は、配列方向内側に膨出した内側膨出部を有しない。
【0017】
本態様では、対応部は、配列方向内側に膨出した内側膨出部を有しない。
このため、対応部が内側膨出部を有する態様と比べて、インピーダンス調整部の配列方向寸法を大きくしやすい。
なお、対応部の内側膨出部は、当該対応部が連結する他の部分と比べて、配列方向内側に膨出した部分である。
【0018】
第4の態様に係るコネクタは、第1~第3の何れかの態様において、前記対応部は、当該対応部と隣り合うインピーダンス調整部から離間する離間部を有する。
【0019】
本態様では、対応部は、当該対応部と隣り合うインピーダンス調整部から離間する離間部を有する。
このため、対応部が離間部を有しない態様と比べて、インピーダンス調整部の配列方向寸法を大きくしやすい。
【0020】
第5の態様に係るコネクタは、第1~第4の何れかの態様において、前記一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有する。
【0021】
本態様では、一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有する。
このため、一対のインピーダンス調整部同士の電磁結合を強くできる。一対のインピーダンス調整部同士の電磁結合が強くなると、コモンモードインピーダンスが上昇し、コモンモードノイズが低減される。また、互いの対向面の面積が拡大されることで差動インピーダンスは下がるので、差動インピーダンスが上がりやすい露出部のインピーダンスを調整することができる。
なお、互いの対向面の面積を拡大する構造とは、互いの対向面がインピーダンス調整部の延在方向に平行に延びている構造と比べて、互いの対向面の面積を拡大している構造を意味する。
【0022】
第6の態様に係るコネクタは、第1~第5の何れかの態様において、前記一又は複数の端子セットは、複数の端子セットであり、前記複数の端子セットのうち一の端子セットの前記対応部と、当該一の端子セットと隣り合う他の端子セットの前記対応部とは、一体化されている。
【0023】
本態様では、コネクタは、複数の端子セットを有する。そして、複数の端子セットのうち一の端子セットの対応部と、当該一の端子セットと隣り合う他の端子セットの対応部とは、一体化されている。
一の対応部と他の対応部とが隣接していると、相互誘導を起こして高速伝送に悪影響を及ぼすおそれがあるところ、本態様では、このような弊害を回避できる。
【0024】
第7の態様に係るコネクタは、第1~第5の何れかの態様において、前記一又は複数の端子セットは、複数の端子セットであり、前記複数の端子セットのうち隣り合う端子セットは、前記グランド端子を共用している。
【0025】
本態様では、コネクタは、複数の端子セットを有する。そして、複数の端子セットのうち隣り合う端子セットは、グランド端子を共用している。
このため、一の対応部と他の対応部とが隣接することにならないので、上述した相互誘導による弊害を回避できる。また、グランド端子の数を減らすことができるので、コネクタを配列方向で小型化できる。
【0026】
第8の態様に係るコネクタは、第1~第7の何れかの態様において、前記コネクタは、取付対象物に取り付けられて使用されるものであり、前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して移動可能な可動ハウジングと、を備え、前記被保持部は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、を備え、前記露出部は、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部との間に位置する。
【0027】
本態様では、ハウジングは、固定ハウジングと、可動ハウジングと、を備える。被保持部は、固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、を備える。そして、露出部は、固定側被保持部と可動側被保持部との間に位置する。
このため、差動伝送に適したフローティングコネクタとすることができる。
なお、後述する実施形態では、露出部が、インピーダンス調整部と固定側被保持部とを連結する連結部と、インピーダンス調整部と可動側被保持部とを連結する連結部と、を有し、インピーダンス調整部の配列方向寸法は、両方の連結部の配列方向寸法よりも大きい例を説明する。しかし、本態様のインピーダンス調整部の配列方向寸法は、これに限定されず、少なくとも片方の連結部の配列方向寸法よりも大きければよい。
【0028】
第9の態様に係るコネクタは、第1~第7の何れかの態様において、前記コネクタは、取付対象物に取り付けられて使用されるものであり、前記ハウジングは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、前記一対の信号端子の各々は、前記取付対象物に接続される接続部と、前記被保持部であって前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、を有し、前記露出部は、前記接続部と前記固定側被保持部との間に形成される。
【0029】
本態様では、ハウジングは、固定ハウジングを備える。一対の信号端子の各々は、取付対象物に接続される接続部と、固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、を有する。そして、露出部は、接続部と固定側被保持部との間に形成される。
このため、接続部と固定側被保持部との間に露出部を有するコネクタにおいて、差動伝送に適した構造とすることができる。
【0030】
また、本開示の他の態様に係るコネクタは、ハウジングと、一又は複数の端子セットと、を備えるコネクタであって、前記端子セットは、一対の信号端子及び一対のグランド端子で構成され、前記一対の信号端子の各々は、前記ハウジングに保持された被保持部と、前記ハウジングから露出した露出部と、を有し、前記露出部は、インピーダンス調整部と、前記インピーダンス調整部と前記被保持部とを連結する連結部と、を有し、前記一対のグランド端子の各々は、対応部を有し、一対の前記インピーダンス調整部は、配列方向で隣接しており、一対の前記対応部は、前記一対のインピーダンス調整部を配列方向外側から挟んでおり、前記インピーダンス調整部の配列方向寸法は、前記連結部の配列方向寸法よりも大きく、前記一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有し、互いに隣接する前記インピーダンス調整部及び前記対応部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有しない。
【0031】
本態様では、コネクタは、ハウジングと、一又は複数の端子セットと、を備える。端子セットは、一対の信号端子及び一対のグランド端子で構成される。
【0032】
一対の信号端子の各々は、ハウジングに保持された被保持部と、ハウジングから露出した露出部と、を有する。
露出部は、ハウジングから露出しているため、インピーダンスが過剰に上がりやすい。
【0033】
ここで、露出部は、インピーダンス調整部と、インピーダンス調整部と被保持部とを連結する連結部と、を有する。そして、インピーダンス調整部の配列方向寸法は、連結部の配列方向寸法よりも大きい。
このため、インピーダンス調整部の配列方向寸法が連結部の配列方向寸法と同じである態様と比較して、露出部のインピーダンス(差動インピーダンス)を下げることができ、インピーダンスを調整することができる。
【0034】
また、一対のグランド端子の各々は、対応部を有する。そして、一対のインピーダンス調整部は配列方向で隣接しており、一対の対応部は一対のインピーダンス調整部を配列方向外側から挟んでいる。
このため、インピーダンス調整部と対応部とで「GSSG」のピンアサインを実現できる。
【0035】
また、一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有する。このため、一対のインピーダンス調整部同士の結合が強化されてコモンモードインピーダンスが上昇する。これにより、コモンモードノイズが減衰するので、差動伝送方式で信号を送受信する場合に有利となる。
また、互いに隣接するインピーダンス調整部及び対応部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有しない。このため、電磁界を一対のインピーダンス調整部同士の対向面に局在させることができる。これにより、外部放射を抑制し、複数端子並んだ際の相互誘導を抑制することができる。
【0036】
なお、後述する実施形態では、対応部の配列方向寸法が、インピーダンス調整部の配列方向寸法よりも小さい例を説明するが、本態様はこれに限定されない。
また、本態様では、上述のとおり「前記一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有し、互いに隣接する前記インピーダンス調整部及び前記対応部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有しない」という構成を有するが、上述した作用効果は、必ずしもこの構成であることを要しない。
具体的には、「前記一対のインピーダンス調整部は、互いの対向面の面積を拡大する構造を有し、前記一対のインピーダンス調整部の互いの対向面の面積は、互いに隣接する前記インピーダンス調整部及び前記対応部の互いの対向面の面積よりも大きい」という構成を備えれば、本態様の上述した作用効果を一定程度奏する。つまり、互いに隣接するインピーダンス調整部及び対応部が、互いの対向面の面積を拡大する構造を有しているものでも上述した作用効果を一定程度奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】接続前の第一コネクタ及び第二コネクタを示す斜視図である。
【
図2】接続状態の第一コネクタ及び第二コネクタを示す斜視図である。
【
図10】インピーダンス調整部及び対応部を配列方向及び延在方向の両方に垂直な方向から見た図である。
【
図11】第一変形例のインピーダンス調整部及び対応部を示す図である。
【
図12】第二変形例のインピーダンス調整部及び対応部を示す図である。
【
図13】第三変形例の複数の第一端子を示す斜視図である。
【
図14】第三変形例のインピーダンス調整部及び対応部を示す図である。
【
図15】第四変形例の複数の第一端子を示す斜視図である。
【
図16】第四変形例のインピーダンス調整部及び対応部を示す図である。
【
図17】第二コネクタに本開示の発明を適用する場合の構造の一例を示す斜視図である。
【
図18】インピーダンス調整部及び対応部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示のコネクタの実施形態について説明する。
【0039】
各図に示す矢印Xをコネクタ前後方向、矢印Yをコネクタ幅方向、矢印Zをコネクタ上下方向と呼ぶことがある。
【0040】
(コネクタセット100,200)
図1~
図3は、第一コネクタ100及び第二コネクタ200からなるコネクタセット100,200を示す。
第一コネクタ100を第一基板B1に取り付け、第二コネクタ200を第二基板B2に取り付け、第一コネクタ100と第二コネクタ200とを接続することで、第一基板B1と第二基板B2とを接続することができる。第一基板B1と第二基板B2とは、互いに平行に配置される。
第一コネクタ100はフローティングコネクタであり、第二コネクタ200はフローティングコネクタではない。
【0041】
(第一コネクタ100)
第一コネクタ100は、第一ハウジング10,20と、複数の第一端子30と、を備える。第一ハウジング10,20は、固定ハウジング10と、可動ハウジング20と、を備える。
【0042】
固定ハウジング10は、第一コネクタ100の取付対象物である第一基板B1に固定されるハウジングである。固定ハウジング10は、複数の第一端子30を介して第一基板B1に固定される。
【0043】
可動ハウジング20は、固定ハウジング10に対して移動可能に設けられるハウジングである。可動ハウジング20は、複数の第一端子30によって浮遊状態で支持される。
【0044】
固定ハウジング10及び可動ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁体で形成される。
【0045】
第一端子30は、第一基板B1と第二コネクタ200の第二端子50とを接続する。
第一端子30は、導電性の板材に抜き加工及び曲げ加工などを施すことで作られる。
【0046】
図4に示すように、複数の端子30は、前側の複数(12個)の端子30と、後側の複数(12個)の端子30と、から構成される。前側の端子30と後側の端子30とで一対の端子30が構成され、当該一対の端子30がY方向を配列方向として配列されていると把握することもできる。前後一対の端子30は、互いの接触部側方向(Z方向から見て、接続部31に対し接触部35bが位置する方向)をX方向内側に向けるよう、互いに対向して配置される。
【0047】
(第一端子30)
次に、第一端子30について詳細に説明する。
【0048】
図4に示すように、複数(24個)の第一端子30には、一対の信号端子30Aと、一対のグランド端子30Bとから構成される端子セット3Sが複数含まれる。具体的には、前側の複数(12個)の第一端子30には、3組の端子セット3Sが含まれ、後側の複数(12個)の第一端子30には、3組の端子セットが含まれる。
図5に示すように、一対の信号端子30Aのうち一方と他方は、配列方向であるY方向で対称な構造であり、一対のグランド端子30Bのうち一方と他方も、配列方向であるY方向で対称な構造である。
【0049】
以下、信号端子30A及びグランド端子30Bに共通する特徴について説明するときは、第一端子30という用語を用いる。
【0050】
図5に示すように、第一端子30は、接続部31と、固定側被保持部32と、中間部33と、可動側被保持部34と、先端部35と、をこの順に有する。
【0051】
接続部31は、取付対象物である第一基板B1に接続される部分である。
接続部31は、固定側被保持部32から第一基板B1の面に沿う方向であるX方向外側に延びる。接続部31は、第一基板B1の面に半田付けされる。
【0052】
固定側被保持部32は、固定ハウジング10に保持される部分である。
固定側被保持部32は、+Z方向を圧入方向として固定ハウジング10に圧入されることで固定ハウジング10に保持される。固定側被保持部32は、板幅方向を端子配列方向であるY方向に向け、+Z方向に延びる。固定側被保持部32は、圧入用突起を有する。圧入用突起は、固定側被保持部32の板幅方向両側に形成される。
【0053】
中間部33は、固定側被保持部32と可動側被保持部34とを連結する部分であって、固定側被保持部32に対し可動側被保持部34が変位可能となるように変形可能に形成される部分である。中間部33は、何れのハウジングにも保持されない部分であり、第一ハウジング10,20から露出した部分となる。以下、中間部33を露出部33と呼ぶことがある。
中間部33は、一端側曲部33aと、直線部33bと、他端側曲部33cと、をこの順に有する。
【0054】
一端側曲部33aは、第一端子30の延在方向のZ方向成分をプラスからマイナスに転換する。
【0055】
直線部33bは、延在方向を直線状とする部分である。直線部33bの延在方向は、-Z方向及びX方向内側の斜め方向である。直線部33bの板幅方向は、端子配列方向であるY方向を向く。直線部33bは、板厚方向に曲げられた部分を有しない。
信号端子30Aの直線部33bには、インピーダンス調整部60が形成され、グランド端子30Bの直線部33bには、対応部70が形成される。インピーダンス調整部60及び対応部70の詳細については後述する。
【0056】
他端側曲部33cは、第一端子30の延在方向のZ方向成分をマイナスからプラスに転換する。なお、他端側曲部33cの延在方向中間部には、幅広に形成された幅広部33c1が形成される。
【0057】
可動側被保持部34は、可動ハウジング20に保持される部分である。
可動側被保持部34は、+Z方向を圧入方向として可動ハウジング20に圧入されることで可動ハウジング20に保持される。可動側被保持部34は、板幅方向を端子配列方向であるY方向に向け、+Z方向に延びる。可動側被保持部34は、圧入用突起を有する。圧入用突起は、可動側被保持部34の板幅方向両側に形成される。
【0058】
先端部35は、可動側被保持部34よりも他端側の部分である。
先端部35は、接触部35bと、弾性支持部35aと、を有する。
【0059】
接触部35bは、第二コネクタ200(相手コネクタ)の第二端子50(相手端子)に接触する部分である。接触部35bは、第二端子50に接触する方向であるX方向内側に凸となるように板厚方向で曲げられている。
【0060】
弾性支持部35aは、接触部35bを弾性的に支持する部分である。コネクタ100に第二コネクタ200(相手コネクタ)が接続されると、弾性支持部35aは、接触部35bがX方向外側へ変位するように、弾性変形する。
【0061】
(固定ハウジング10)
次に、固定ハウジング10について詳細に説明する。
【0062】
図6に示すように、固定ハウジング10は、前側の端子保持部11と、後側の端子保持部11と、を備える。前側の端子保持部11と後側の端子保持部11とは同一構造である。以下、両者を区別しないときは、単に端子保持部11と呼ぶ。
【0063】
端子保持部11は、複数の配列方向壁12を有する。
配列方向壁12は、端子30の固定側被保持部32に対し、その配列方向及び板幅方向であるY方向の両側に位置する。複数の配列方向壁12のうち隣り合う配列方向壁12の間の空間に固定側被保持部32が圧入される。当該空間は、X方向内側に開放されている。これにより、固定側被保持部32を圧入する際、当該開放された部分を端子30の中間部33(具体的には一端側曲部33a)が通過可能になっている。
【0064】
端子保持部11は、外側壁13を有する。
外側壁13は、固定側被保持部32に対し、X方向外側に位置する。外側壁13は、複数の配列方向壁12のX方向外側端と接続する。
【0065】
端子保持部11は、天壁14を有する。
天壁14は、固定側被保持部32及び中間部33の一部に対し、+Z方向に位置する。天壁14は、複数の配列方向壁12の+Z方向側と接続する。天壁14は、外側壁13の+Z方向の端からX方向内側に延びる。
【0066】
(可動ハウジング20)
次に、可動ハウジング20について詳細に説明する。
【0067】
図7に示すように、可動ハウジング20は、複数の配列方向壁21を有する。
配列方向壁21は、端子30の一部に対し、その配列方向であるY方向の両側に位置する。
【0068】
配列方向壁21は、下部配列方向壁21aと、上部配列方向壁21bと、を有する。
下部配列方向壁21aは、可動側被保持部34に対応する。
上部配列方向壁21bは、先端部35に対応する。
上部配列方向壁21bは、前側部分と後側部分とに分離されている。前側の上部配列方向壁21bと後側の上部配列方向壁21bとの間には、相手コネクタである第二コネクタ200の一部が挿入される空間が形成される。
下部配列方向壁21aは、前側部分と後側部分とが一体に形成される。
【0069】
可動ハウジング20は、前後一対の外側壁22を有する。
外側壁22は、端子30の一部に対し、X方向外側に位置する。外側壁22は、複数の配列方向壁21をそのX方向外側部分で連結する。
【0070】
可動ハウジング20は、配列方向連結壁23を有する。
配列方向連結壁23は、複数の下部配列方向壁21aを配列方向で連結する。
【0071】
(インピーダンス調整部60及び対応部70)
次に、インピーダンス調整部60及び対応部70について説明する。
【0072】
図5に示すように、信号端子30Aとグランド端子30Bとは、中間部33(露出部33)の直線部33bの構造が互いに相違する。具体的には、信号端子30Aの中間部33の直線部33bにはインピーダンス調整部60が形成されるのに対し、グランド端子30Bの中間部33の直線部33bには対応部70が形成される。なお、信号端子30Aとグランド端子30Bとは、中間部33の直線部33b以外の部分の構造が共通する。
【0073】
一対のインピーダンス調整部60及び一対の対応部70は、いずれも、同じ延在方向に延在する。延在方向は、-Z方向かつX方向内側の斜め方向である。
一対のインピーダンス調整部60は、配列方向であるY方向で隣接している。一対の対応部70は、一対のインピーダンス調整部60を配列方向であるY方向の外側から挟んでいる。
【0074】
図10は、配列方向に配列され、延在方向に延在する一対のインピーダンス調整部60及び一対の対応部70を、延在方向及び配列方向の両方に垂直な方向から見た図である。なお、一対のインピーダンス調整部60及び一対の対応部70を1セットとして、
図10には3セットが示されている。
【0075】
一対のインピーダンス調整部60及び一対の対応部70は、いずれも、延在方向及び配列方向の両方に垂直な方向(
図10の紙面垂直方向)に板厚方向を向ける。
【0076】
隣接するインピーダンス調整部60同士の間には、ハウジング10,20が介在していない。また、隣接するインピーダンス調整部60と対応部70との間にも、ハウジング10,20が介在していない。さらに、隣接する対応部70同士の間にも、ハウジング10,20が介在していない。
なお、隣接する複数の一端側曲部33a(連結部)の間には、固定ハウジング10が介在している(
図3参照)。
【0077】
インピーダンス調整部60は、一端部60aと、本体部60bと、他端部60cと、を有する。
一端部60aは、インピーダンス調整部60の一端側の部分を構成しており、一端側曲部33aと接続される。
他端部60cは、インピーダンス調整部60の他端側の部分を構成しており、他端側曲部33cと接続される。
本体部60bは、一端部60aと他端部60cとの間の部分を構成する。
【0078】
本体部60bは、板厚方向から見て、略矩形状に形成される。本体部60bの板幅W1は、一端側曲部33aの板幅W3よりも大きく、他端側曲部33cの板幅W3よりも大きい。なお、本実施形態では、一端側曲部33aの板幅W3と、他端側曲部33cの板幅W3とは同一である。本体部60bの板幅W1は、一端側曲部33aの板幅W3の1.5倍以上が好ましく、更に好ましくは2.5倍以上である。
【0079】
一端部60aは、一端側曲部33aに向かうに従い板幅が小さくなるように形成される。
他端部60cは、他端側曲部33cに向かうに従い板幅が小さくなるように形成される。
一端部60aのうち最も他端側での板幅は、本体部60bの板幅W1よりも小さい。このため、一端部60aと本体部60bとの境界で板幅が不連続に変化している。
他端部60cのうち最も一端側での板幅は、本体部60bの板幅W1よりも小さい。このため、他端部60cと本体部60bとの境界で板幅が不連続に変化している。
一端部60a及び他端部60cと本体部60bとの境界で板幅が不連続に変化していることにより、インピーダンス調整部60の面積(
図10と同じ方向から見た面積)を効果的に大きくすることができる。換言すると、インピーダンス調整部60における断面積が大きい部分を効果的に増やすことができる。また、板幅が不連続に変化している付近で中間部33の曲げを発生させやすくなり、曲げをコントロールすることができる。
【0080】
対応部70は、一端部70aと、本体部70bと、他端部70cと、を有する。
一端部70aは、対応部70の一端側の部分を構成しており、一端側曲部33aと接続される。
他端部70cは、対応部70の他端側の部分を構成しており、他端側曲部33cと接続される。
本体部70bは、一端部70aと他端部70cとの間の部分を構成する。
【0081】
本体部70bは、板厚方向から見て、略矩形状に形成される。本体部70bの板幅W2は、一端側曲部33aの板幅W3より若干大きい。対応部70の本体部70bの板幅W2は、インピーダンス調整部60の本体部60bの板幅W1よりも小さく、好ましくは0.8倍以下、更に好ましくは、0.5倍以下である。
【0082】
インピーダンス調整部60は、内側膨出部61と、外側膨出部62と、を備えていると捉えることができる。
内側膨出部61は、配列方向内側に膨出された部分であり、具体的には、インピーダンス調整部60の板幅が一端側曲部33aと同じ板幅であると仮定した構造(
図10の一点鎖線が表す構造)に対して、配列方向内側に膨出した部分である。
外側膨出部62は、配列方向外側に膨出された部分であり、具体的には、インピーダンス調整部60の板幅が一端側曲部33aと同じ板幅であると仮定した構造(
図10の一点鎖線が表す構造)に対して、配列方向外側に膨出した部分である。
【0083】
内側膨出部61が形成されることで、一対のインピーダンス調整部60同士の距離が近づいている。一対のインピーダンス調整部60同士の距離が近づくことで、信号端子30A同士の結合が強化されてコモンモードインピーダンスが上昇する。
また、内側膨出部61及び外側膨出部62が形成されることで、インピーダンス調整部60の断面積が拡大されている。インピーダンス調整部60の断面積が拡大されることで、差動インピーダンスが低下する。
【0084】
対応部70は、離間部73と、外側膨出部72と、を備えていると把握することができる。
離間部73は、隣り合うインピーダンス調整部60から離れる方向である配列方向外側へ離間する部分であり、具体的には、対応部70の板幅が一端側曲部33aと同じ板幅であると仮定した構造(
図10の一点鎖線が表す構造)に対して、配列方向外側に窪んだ部分である。
外側膨出部72は、配列方向外側に膨出された部分であり、具体的には、対応部70の板幅が一端側曲部33aと同じ板幅であると仮定した構造(
図10の一点鎖線が表す構造)に対して、配列方向外側に膨出した部分である。
【0085】
対応部70が内側膨出部を有さず、かつ離間部73を備えることで、インピーダンス調整部60の外側膨出部62の膨出量が大きくできる。その結果、本実施形態では、インピーダンス調整部60の外側膨出部62は、インピーダンス調整部60の内側膨出部61よりも膨出量が大きい。
【0086】
(第二コネクタ200)
次に、第二コネクタ200について説明する。
【0087】
図1に示すように、第二コネクタ200は、第二ハウジング40と、複数の第二端子50と、を備える。第二ハウジング40は、固定ハウジングのみを備え、可動ハウジングを備えない。
【0088】
第二ハウジング40は、第二コネクタ200の取付対象物である第二基板B2に固定される。第二ハウジング40は、複数の第二端子50を介して第二基板B2に固定される。
【0089】
第二端子50は、第二基板B2と第一コネクタ100の第一端子30とを接続する。
第二端子50は、導電性の板材に抜き加工及び曲げ加工などを施すことで作られる。
複数の第二端子50の各々は、互いに同一の形状である。
【0090】
複数の第二端子50は、前側の複数(図では12個)の第二端子50と、後側の複数(図では12個)の第二端子50と、を備える。前側の第二端子50と後側の第二端子50とで一対の第二端子50が構成され(
図8参照)、当該一対の第二端子50がY方向を端子配列方向として配列されていると把握することもできる。
【0091】
(第二端子50)
次に、第二端子50について説明する。
【0092】
第二端子50は、接続部51と、被保持部53と、先端部54と、をこの順に有する。
【0093】
接続部51は、第二基板B2に接続される部分である。
接続部51は、第二基板B2の面に沿う方向であるX方向外側に延び、第二基板B2の面に半田付けされる。
【0094】
被保持部53は、第二ハウジング40に保持される部分である。
被保持部53は、-Z方向を圧入方向として第二ハウジング40に圧入されることで第二ハウジング40に保持される。被保持部53は、圧入用突起53aを有する。圧入用突起53aは、被保持部53の板幅方向両側に形成される。
【0095】
先端部54は、被保持部53よりも他端側の部分である。
先端部54は、被保持部53との間に曲部を介さずに接続され、-Z方向に直線状に延びる。これにより、被保持部53及び先端部54は、-Z方向に直線状に延びる。
先端部54は、連結部54aと、接触部54bを有する。
【0096】
連結部54aは、被保持部53と接触部54bとを連結する部分である。
接触部54bは、第一コネクタ100の第一端子30に接触する部分である。接触部54bが第一端子30に接触する面は、X方向外側の面である。
【0097】
第二端子50は、接続部51と被保持部53との間に、中継部52を有する。
中継部52は、接続部51と被保持部53とをX方向で連結する。中継部52は、接続部51側から、一端側曲部52aと、直線部52bと、他端側曲部52cと、を有する。
【0098】
一端側曲部52aは、接続部51と直線部52bとを連結する。一端側曲部52aの曲げ角度は、45度以下である。
直線部52bは、X方向内側に直線状に延びる。
他端側曲部52cは、直線部52bと被保持部53とを連結する。
【0099】
図3に示すように、中継部52は、第二ハウジング40から露出している。以下、中継部52を露出部52ということがある。隣接する直線部52b同士の間には、ハウジング40が介在しておらず、隣接する他端側曲部52c同士の間にも、ハウジング40が介在していない。他方、隣接する一端側曲部52a同士の間には、後述する配列方向壁46が介在している。
【0100】
(第二ハウジング40)
第二ハウジング40は、基部41を有する。
【0101】
基部41には、端子圧入孔42が形成される。端子圧入孔42は、基部41をZ方向に貫通する孔であり、第二端子50の被保持部53が圧入されて保持される孔である。
【0102】
第二ハウジング40は、端子配置壁43を有する。
【0103】
端子配置壁43には、端子配置溝44が形成される。端子配置溝44は、端子圧入孔42から直線状に繋がる溝であり、第二端子50の先端部54が配置される溝である。
【0104】
端子圧入孔42及び端子配置溝44の内部には、端子圧入孔42及び端子配置溝44に沿って延びる調整溝45が形成される。調整溝45は、第二端子50のインピーダンスを調整するために形成される。調整溝45は、X方向内側を深さ方向とする溝である。
【0105】
第二ハウジング40は、第二端子50の一端側曲部52aに対し、Y方向の両側に位置する複数の配列方向壁46と有する。隣り合う配列方向壁46の間に、一端側曲部52aが配置される。配列方向壁46は、基部41から+Z方向に突出する。
【0106】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0107】
本実施形態では、コネクタ100は、ハウジング10,20と、複数の端子セット3S(
図4参照)と、を備える。端子セット3Sは、一対の信号端子30A及び一対のグランド端子30Bで構成される。
【0108】
図3に示すように、一対の信号端子30Aの各々は、ハウジング10,20に保持された被保持部32,34と、ハウジング10,20から露出した露出部33と、を有する。
露出部33は、ハウジング10,20から露出しているため、インピーダンスが過剰に上がりやすい。
【0109】
ここで、
図5に示すように、露出部33は、インピーダンス調整部60と、インピーダンス調整部60と被保持部32,34とを連結する連結部33a,33cと、を有する。そして、
図10に示すように、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1は、連結部33a,33cの配列方向寸法W3よりも大きい。
このため、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1が連結部33a,33cの配列方向寸法W3と同じである態様と比較して、露出部33のインピーダンス(差動インピーダンス)を下げることができ、インピーダンスを調整することができる。
【0110】
また、一対のグランド端子30Bの各々は、対応部70を有する。そして、一対のインピーダンス調整部60は配列方向で隣接しており、一対の対応部70は一対のインピーダンス調整部60を配列方向外側から挟んでいる。
このため、インピーダンス調整部60と対応部70とで「GSSG」のピンアサインを実現できる。
【0111】
また、対応部70の配列方向寸法W2は、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1よりも小さい。
このため、対応部70の配列方向寸法W2がインピーダンス調整部60の配列方向寸法W1を同じである態様と比較して、コネクタ100を配列方向で大型化せずに、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1を大きくすることができる。
【0112】
また、本実施形態では、
図10に示すように、インピーダンス調整部60は、配列方向内側に膨出した内側膨出部61と、配列方向外側に膨出した外側膨出部62と、を有する。
このため、インピーダンス調整部60が内側膨出部61と外側膨出部62の何れか一方のみを有する態様と比較して、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1を大きくできる。
【0113】
また、本実施形態では、対応部70は、配列方向内側に膨出した内側膨出部71(
図11参照)を有しない。
このため、対応部70が内側膨出部71を有する態様と比べて、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1を大きくしやすい。
【0114】
また、本実施形態では、対応部70は、当該対応部70と隣り合うインピーダンス調整部60から離間する離間部73を有する。
このため、対応部70が離間部73を有しない態様(
図12参照)と比べて、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1を大きくしやすい。
【0115】
また、本実施形態では、
図3に示すように、ハウジング10,20は、固定ハウジング10と、可動ハウジング20と、を備える。被保持部32は、固定ハウジング10に保持される固定側被保持部32と、可動ハウジング20に保持される可動側被保持部34と、を備える。そして、露出部33は、固定側被保持部32と可動側被保持部34との間に位置する。
このため、差動伝送に適したフローティングコネクタとすることができる。
【0116】
また、本実施形態では、
図5に示すように、一対のグランド端子30Bの各々は、ハウジング10,20に保持された被保持部32,34を有する。そして、
図4に示すように、一対の信号端子30Aの被保持部32,34及び一対のグランド端子30Bの被保持部32,34は、配列方向で等間隔に配置される。
このため、ハウジング10,20に対して効率よく端子を保持させることができる。
【0117】
以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0118】
【0119】
第一変形例では、インピーダンス調整部60及び対応部70の構造が上記実施形態とは異なる。他の部分の構成は上記実施形態と同様である。
【0120】
第一変形例では、上記実施形態と同様、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1は、対応部70の配列方向寸法W2よりも大きい。なお、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1は、平均寸法を意味している。
第一変形例の対応部70は、内側膨出部71と、外側膨出部72と、を有する。
【0121】
また、第一変形例では、一対のインピーダンス調整部60は、互いの対向面の面積を拡大する構造60Sを有する。
具体的には、一対のインピーダンス調整部60は、互いに対向する一対の対向面60Sを有する。一対の対向面60Sは、共に、板厚方向から見て、延在方向に沿って凹凸が繰り返された形状である。具体的には、対向面60Sは、板厚方向から見て、正弦曲線に類似した形状であり、滑らかな曲線状である。
これにより、インピーダンス調整部60には、隣接するインピーダンス調整部60に向かう方向に突出する凸部と、隣接するインピーダンス調整部60から離れる方向に窪む凹部とが延在方向に沿って交互に形成される。
一方のインピーダンス調整部60の凸部は、他方のインピーダンス調整部60の凹部と延在方向で同じ位置に形成される。そして、一方のインピーダンス調整部60の凹部は、他方のインピーダンス調整部60の凸部と延在方向で同じ位置に形成される。
【0122】
以上のように、一対のインピーダンス調整部60が互いの対向面の面積を拡大する構造60aを有していることにより、一対のインピーダンス調整部60同士の結合を強くできる。一対のインピーダンス調整部60同士の結合が強くなると、コモンモードインピーダンスが上昇し、コモンモードノイズが低減される。
他方、インピーダンス調整部60とこれと隣接する対応部70とは、互いの対向面の面積を拡大する構造を有しない。このため、電磁界を一対のインピーダンス調整部60同士の対向面に局在させることができる。これにより、外部放射を抑制し、複数の端子並んだ際の相互誘導を抑制することができる。
【0123】
なお、上記実施形態(
図10参照)において、一対のインピーダンス調整部60が、互いの対向面の面積を拡大する構造を有するように変更してもよい。
また、互いの対向面の面積を拡大する構造としては、
図11に示す構造以外にも、例えば
図18(A)(B)に示す構造が挙げられる。これらの構造(
図11及び
図18)に共通するように、互いの対向面の面積を拡大する構造としては、同一の形状がインピーダンス調整部60の延在方向(各図の上下方向)で繰り返し現れる構造が好ましい。
【0124】
【0125】
第二変形例では、対応部70は、内側膨出部71(
図11参照)及び離間部73(
図10参照)を有しない。第二変形例では、対応部70の配列方向内側の端は、延在方向に平行に延びる。対応部70の配列方向内側の端は、配列方向の位置に関し、一端側曲部33aの配列方向内側の端と一致する。
【0126】
第二変形例では、対応部70が内側膨出部71を有しない結果、対応部70が内側膨出部71を有する第一変形例(
図11参照)と比較して、インピーダンス調整部60の外側膨出部62の膨出量が大きくなっている。
一方、対応部70が離間部73を有しない結果、対応部70が離間部73を有する実施形態(
図10参照)と比較して、インピーダンス調整部60の外側膨出部62の膨出量が小さくなっている。
【0127】
【0128】
第三変形例では、複数の端子セット3Sのうち一の端子セット3Sの対応部70と、当該一の端子セット3Sと隣り合う他の端子セット3Sの対応部70とは、一体化されている。
一の対応部70と他の対応部70とが隣接していると、相互誘導を起こして高速伝送に悪影響を及ぼすおそれがあるところ、第三変形例では、このような弊害を回避できる。
【0129】
なお、一のグランド端子30Bの対応部70と、隣り合う他のグランド端子30Bの対応部70とが一体化されているので、対応部70の配列方向寸法W2は、
図14のW2が示す寸法と考える。
【0130】
前側の複数の第一端子30及び後側の複数の第一端子30のそれぞれは、上記実施形態と同様、3組の端子セット3Sを含む。しかし、前側の複数の第一端子30及び後側の複数の第一端子30のそれぞれは、上記実施形態と異なり、14個の第一端子30から構成され、具体的には「GGSSGGSSGGSSGG」の配列で構成される。このうち「GG」の部分が一体化部材(2個のグランド端子30Bが一体化された部材)によって構成される。なお、14個の第一端子30のうち配列方向で最も外側の2個のグランド端子30Bは、いずれの端子セット3Sにも属しない。
【0131】
第三変形例でも、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1は、対応部70の配列方向寸法W2よりも大きい。更に言うと、
図14に示すように、インピーダンス調整部60の配列方向寸法W1は、対応部70の配列方向寸法W2の2倍以上が更に好ましい。
【0132】
【0133】
第四変形例では、前側の複数の第一端子30及び後側の複数の第一端子30のそれぞれは、上記実施形態と同様、3組の端子セット3Sを含む。しかし、前側の複数の第一端子30及び後側の複数の第一端子30のそれぞれは、上記実施形態と異なり、10個の第一端子30から構成される。これにより、複数の端子セット3Sのうち隣り合う端子セット3Sは、グランド端子30Bを共用している。
このため、一の対応部70と他の対応部70とが隣接することにならないので、上述した相互誘導による弊害を回避できる。また、グランド端子30Bの数を減らすことができるので、コネクタ100を配列方向で小型化できる。
【0134】
また、グランド端子30Bの対応部70は、内側膨出部71及び外側膨出部72を有しない。対応部70の配列方向寸法W2は、一端側曲部33aの配列方向寸法W3と同一である。これにより、より一層、コネクタ100を配列方向で小型化できる。
【0135】
〔補足説明〕
なお、上記実施形態では、コネクタ100が複数の端子セット3Sを備える例を説明した。しかし、本開示のコネクタはこれに限定されず、端子セットを1セットのみ備えるものであってもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、第一端子30が、その部位によらず板厚方向をY方向に垂直な平面内の方向に向ける例を説明した。しかし、本開示の信号端子及びグランド端子はこれに限定されない。
【0137】
また、上記実施形態では、第二コネクタ200の複数の第二端子50の各々が、互いに同一の形状である。つまり、第二コネクタ200には本開示の発明が適用されていない。しかし、第二コネクタ200に本開示の発明を適用してもよい。
【0138】
図17は、本開示の発明が適用された第二コネクタ200が備える端子セット5Sを示す。第二端子50(信号端子50A又はグランド端子50B)の露出部52の直線部52bに、インピーダンス調整部60又は対応部70が形成されている。なお、他端側曲部52cが「連結部」に相当する。この図では、第一変形例に類似する構造が採用されているが、他の構造(例えば上記実施形態や第二変形例~第四変形例に類似する構造)が採用されてもよい。これにより、接続部51と被保持部53との間に露出部52を有するコネクタ200において、差動伝送に適した構造とすることができる。また、
図17に示すように、インピーダンス調整部60と接続部51とを連結する部分(一端側曲部52a)の配列方向寸法も、インピーダンス調整部60の配列方向寸法よりも小さいことが好ましい。
【0139】
また、上記実施形態では、固定ハウジング10が備える前側の端子保持部11と後側の端子保持部11とが互いに分離された例を説明した。しかし、本開示の固定ハウジングは、これに限定されず、全体が一体として形成されてもよい。例えば、前側の端子保持部と後側の端子保持部とがコネクタ幅方向外側の二か所の部分で互いに連結されていてもよい。
また、上記実施形態では、可動ハウジング20における相手コネクタ200の一部が挿入される空間が、幅方向両側に開放されている例を説明した。しかし、本開示の可動コネクタは、これに限定されず、当該空間の幅方向両側に位置する壁部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0140】
100 第一コネクタ
200 第二コネクタ
3S 端子セット
5S 端子セット
10,20 第一ハウジング(ハウジング)
10 固定ハウジング
20 可動ハウジング
30 第一端子(端子)
30A 信号端子
30B グランド端子
31 接続部
32 固定側被保持部(被保持部)
33 中間部(露出部)
33a 一端側曲部(連結部)
33b 直線部
33c 他端側曲部(連結部)
34 可動側被保持部(被保持部)
35 先端部
40 第二ハウジング
50 第二端子
51 接続部
52 中継部
52a 一端側曲部
52b 直線部(露出部)
52c 他端側曲部(露出部)
53 被保持部
60 インピーダンス調整部
60S 対向面(互いの対向面の面積を拡大する構造)
61 内側膨出部
62 外側膨出部
70 対応部
71 内側膨出部
72 外側膨出部
73 離間部
W1 インピーダンス調整部の板幅(配列方向寸法)
W2 対向部の板幅(配列方向寸法)
W3 連結部の板幅(配列方向寸法)