(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178904
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/20 20160101AFI20231211BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20231211BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20231211BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20231211BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20231211BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20231211BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20231211BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20231211BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20231211BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231211BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20231211BHJP
【FI】
B60W20/20 ZHV
B60K6/442
B60K6/52
B60K6/547
B60W10/10 900
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60K6/36
B60K17/04 G
B60L50/16
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091899
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】大室 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】葉畑 陽平
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D039AA03
3D039AB27
3D039AC36
3D039AC39
3D202AA02
3D202AA06
3D202BB00
3D202BB02
3D202BB11
3D202BB31
3D202CC22
3D202CC23
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD32
3D202DD36
3D202EE10
3D202FF01
3D202FF07
3D202FF13
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA09
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】エンジンの燃費を最良にすることができる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】(a)電子制御装置は、エンジンを作動させて車両を駆動する駆動モードとして、第1回転機と第2回転機との間で電力が授受される電気パスにおける電気パス量がエンジンの運転点を目標運転点とするための目標電気パス量となるように第1回転機を発電動作させ、第2回転機を第2動力源として駆動動作させる第1モードと、エンジンからの動力の全てを第1回転機の発電に用い、第2回転機によって車両を駆動する第2モードと、エンジンからの動力を第1回転機の発電に用いることなく車両を駆動する第3モードと、を選択でき、(b)電子制御装置は、第1モードを選択すると仮定した場合、第2モードを選択すると仮定した場合、及び第3モードを選択した場合のうち、最もエンジンの燃費が良い場合を駆動モードとして選択する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと第1回転機とを含む第1動力源と、前記第1動力源からの動力を流体を介して伝達する流体式伝動装置と、前記第1動力源からの動力が前記流体式伝動装置を介して入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力軸と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力軸と、前記第1出力軸に入力されたトルクの一部を前記第2出力軸に分配するトルク分配装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記トルク分配装置は、第2回転機と、前記第2回転機が接続される第1回転要素、前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの一方の出力軸が接続される第2回転要素、及び前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの他方の出力軸が接続される第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素を非回転部材に選択的に係合する第1係合装置及び前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に係合する第2係合装置の少なくとも一方と、を備え、前記第1係合装置及び前記第2係合装置のいずれか一方が係合状態にあるときに、前記第2回転機を第2動力源として用いることができ、
前記制御装置は、前記エンジンを作動させて車両を駆動する駆動モードとして、前記第1回転機と前記第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける電力の大きさである電気パス量が前記エンジンの運転点を目標運転点とするための目標電気パス量となるように前記第1回転機を発電動作させ、前記第2回転機を前記第2動力源として駆動動作させる第1モードと、前記エンジンからの動力の全てを前記第1回転機の発電に用い、前記第2回転機によって前記車両を駆動する第2モードと、前記エンジンからの動力を前記第1回転機の発電に用いることなく前記車両を駆動する第3モードと、を選択でき、
前記制御装置は、前記駆動モードとして前記第1モードを選択すると仮定した場合、前記駆動モードとして前記第2モードを選択すると仮定した場合、及び前記駆動モードとして前記第3モードを選択すると仮定した場合のうち、最も前記エンジンの燃費が良い場合を前記駆動モードとして選択する
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記車両用駆動装置は、前記流体式伝動装置から入力された動力を前記第1出力軸に出力する変速機をさらに備え、
前記駆動モードとして前記第1モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記電気パスの伝達効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、前記変速機の伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記駆動モードとして前記第2モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記電気パスの伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記駆動モードとして前記第1モード又は前記第2モードが選択されると仮定した場合における前記電気パス量は、前記第2回転機の負荷率が制限されている場合には、前記負荷率に応じて制限される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記車両用駆動装置は、前記流体式伝動装置から入力された動力を前記第1出力軸に出力する変速機をさらに備え、
前記駆動モードとして前記第3モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、前記変速機の伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体式伝動装置を介して第1出力軸に入力された第1動力源からのトルクの一部を第2出力軸に分配するトルク分配装置を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと第1回転機とを含む第1動力源と、前記第1動力源からの動力を流体を介して伝達する流体式伝動装置と、前記第1動力源からの動力が前記流体式伝動装置を介して入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力軸と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力軸と、前記第1出力軸に入力されたトルクの一部を前記第2出力軸に分配するトルク分配装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された全輪駆動車両の車両用駆動装置がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用駆動装置においてエンジンを作動させて車両を駆動する場合、エンジンの運転点は、必ずしもエンジンの熱効率が最良となる予め定められた目標運転点に制御されるわけではない。また、エンジンの運転点がエンジンの熱効率が最良となる予め定められた目標運転点に制御されたとしても、エンジンの燃費はエンジンの動力が伝達される経路の影響を受けるため、必ずしもエンジンの燃費が最良とはならない可能性がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの燃費を最良にすることができる車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、エンジンと第1回転機とを含む第1動力源と、前記第1動力源からの動力を流体を介して伝達する流体式伝動装置と、前記第1動力源からの動力が前記流体式伝動装置を介して入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力軸と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力軸と、前記第1出力軸に入力されたトルクの一部を前記第2出力軸に分配するトルク分配装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、(a)前記トルク分配装置は、第2回転機と、前記第2回転機が接続される第1回転要素、前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの一方の出力軸が接続される第2回転要素、及び前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの他方の出力軸が接続される第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素を非回転部材に選択的に係合する第1係合装置及び前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に係合する第2係合装置の少なくとも一方と、を備え、前記第1係合装置及び前記第2係合装置のいずれか一方が係合状態にあるときに、前記第2回転機を第2動力源として用いることができ、(b)前記制御装置は、前記エンジンを作動させて車両を駆動する駆動モードとして、前記第1回転機と前記第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける電力の大きさである電気パス量が前記エンジンの運転点を目標運転点とするための目標電気パス量となるように前記第1回転機を発電動作させ、前記第2回転機を前記第2動力源として駆動動作させる第1モードと、前記エンジンからの動力の全てを前記第1回転機の発電に用い、前記第2回転機によって前記車両を駆動する第2モードと、前記エンジンからの動力を前記第1回転機の発電に用いることなく前記車両を駆動する第3モードと、を選択でき、(c)前記制御装置は、前記駆動モードとして前記第1モードを選択すると仮定した場合、前記駆動モードとして前記第2モードを選択すると仮定した場合、及び前記駆動モードとして前記第3モードを選択すると仮定した場合のうち、最も前記エンジンの燃費が良い場合を前記駆動モードとして選択することにある。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、(a)前記車両用駆動装置は、前記流体式伝動装置から入力された動力を前記第1出力軸に出力する変速機をさらに備え、(b)前記駆動モードとして前記第1モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記電気パスの伝達効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、前記変速機の伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出されることにある。
【0008】
第3発明の要旨とするところは、第1発明において、前記駆動モードとして前記第2モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記電気パスの伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出されることにある。
【0009】
第4発明の要旨とするところは、第1発明乃至第3発明のいずれか1の発明において、前記駆動モードとして前記第1モード又は前記第2モードが選択されると仮定した場合における前記電気パス量は、前記第2回転機の負荷率が制限されている場合には、前記負荷率に応じて制限されることにある。
【0010】
第5発明の要旨とするところは、第1発明において、(a)前記車両用駆動装置は、前記流体式伝動装置から入力された動力を前記第1出力軸に出力する変速機をさらに備え、(b)前記駆動モードとして前記第3モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、前記変速機の伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出されることにある。
【発明の効果】
【0011】
第1発明の車両用駆動装置によれば、前記制御装置は、前記駆動モードとして前記第1モードを選択すると仮定した場合、前記駆動モードとして前記第2モードを選択すると仮定した場合、及び前記駆動モードとして前記第3モードを選択すると仮定した場合のうち、最も前記エンジンの燃費が良い場合を前記駆動モードとして選択する。車両用駆動装置においてエンジンを作動させて車両が駆動される場合において、エンジンの動力が伝達される経路が異なる、第1モード乃至第3モードのうち、最もエンジンの燃費が良い場合が駆動モードとして選択されるため、エンジンの燃費を最良にすることができる。
【0012】
第2発明の車両用駆動装置によれば、第1発明において、(a)前記車両用駆動装置は、前記流体式伝動装置から入力された動力を前記第1出力軸に出力する変速機をさらに備え、(b)前記駆動モードとして前記第1モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記電気パスの伝達効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、前記変速機の伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される。このように、駆動モードとして第1モードが選択されると仮定した場合において、エンジンの燃費がエンジンの熱効率、電気パスの伝達効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、変速機の伝達効率、及びトルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される場合は、そうでない場合に比較してエンジンの燃費を正確に算出することができる。
【0013】
第3発明の車両用駆動装置によれば、第1発明において、前記駆動モードとして前記第2モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記電気パスの伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される。このように、駆動モードとして第2モードが選択された場合において、エンジンの燃費がエンジンの熱効率、電気パスの伝達効率、及びトルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される場合は、そうでない場合に比較してエンジンの燃費を正確に算出することができる。
【0014】
第4発明の車両用駆動装置によれば、第1発明乃至第3発明のいずれか1の発明において、前記駆動モードとして前記第1モード又は前記第2モードが選択されると仮定した場合における前記電気パス量は、前記第2回転機の負荷率が制限されている場合には、前記負荷率に応じて制限される。例えば、第2回転機が高温となって負荷率が制限されている場合には、電気パス量が第2回転機の負荷率に応じて制限されることで、第2回転機の出力が制限されるため、第2回転機の負荷が低減されるように制御される。
【0015】
第5発明の車両用駆動装置によれば、第1発明において、(a)前記車両用駆動装置は、前記流体式伝動装置から入力された動力を前記第1出力軸に出力する変速機をさらに備え、(b)前記駆動モードとして前記第3モードが選択されると仮定した場合における前記エンジンの燃費は、前記エンジンの熱効率、前記流体式伝動装置の伝達効率、前記変速機の伝達効率、及び前記トルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される。このように、駆動モードとして第3モードが選択された場合において、エンジンの燃費がエンジンの熱効率、流体式伝動装置の伝達効率、変速機の伝達効率、及びトルク分配装置の伝達効率に基づいて算出される場合は、そうでない場合に比較してエンジンの燃費を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明が適用される車両用駆動装置の概略構成を説明する図であるとともに、車両用駆動装置における各種制御のための制御機能の要部を説明する図である。
【
図2】
図1に示すハイブリッド用トランスミッションの概略構成を説明する図である。
【
図3】
図2に示す自動変速機の変速作動とそれに用いられる係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動係合表である。
【
図4】
図1に示すトランスファの概略構成を説明する図である。
【
図5】
図4に示すトランスファにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。
【
図6】
図4に示すトランスファにおいて成立させられる各モードとトランスファにおける各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。
【
図7】動力源の切替制御に用いる走行領域切替マップと、自動変速機の変速制御に用いるATギヤ段変速マップと、の一例を示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【
図8】
図2の自動変速機の伝達効率について、ATギヤ段及び作動油の油温との関係を示す一例である。
【
図9】車両用駆動装置において、エンジン運転点を無段変速機のように変更できることを説明する図である。
【
図10】電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
【
図11】電気パス有りのパラレル運転モードにおいて、エンジンの燃費最適回転速度に対してTM用回転機の発電動作により移動可能な、自動変速機のATギヤ段毎のエンジン回転速度の範囲を例示する図である。
【
図12】
図4とは別のトランスファの概略構成を説明する図である。
【
図13】
図12に示すトランスファにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。
【
図14】
図12に示すトランスファにおいて成立させられる各モードとトランスファにおける各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。
【
図15】
図1とは別の動力伝達装置の概略構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の各実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0018】
図1は、本発明が適用される車両用駆動装置10の概略構成を説明する図であるとともに、車両用駆動装置10における各種制御のための制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。車両用駆動装置10は、車両8に備えられ、走行用の動力源PUとして機能する。車両用駆動装置10は、エンジン12、TM用回転機MGM、TF用回転機MGF、左右一対の前輪14、左右一対の後輪16、及び動力伝達装置18を備える。動力伝達装置18は、エンジン12等からの動力を前輪14及び後輪16へそれぞれ伝達する車両用動力伝達装置である。エンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFについては、特に区別しない場合は、単に「動力源PU」と記す。後述するトルクコンバータ48や自動変速機50へ動力を出力する、エンジン12及びTM用回転機MGMは、動力源PUとして機能する第1動力源PU1である。後述するトランスファ28に備えられたTF用回転機MGFは、第1動力源PU1に替えて或いは加えて動力源PUとして機能する第2動力源PU2として用いることができる。なお、「TM用回転機MGM」及び「TF用回転機MGF」は、本発明における「第1回転機」及び「第2回転機」にそれぞれ相当する。
【0019】
車両8は、車両用駆動装置10によって後輪16へ伝達されるトルクの一部を前輪14に分配することが可能な全輪駆動車両である。車両用駆動装置10は、後輪16のみにトルクを伝達する後輪駆動(=後輪16のみが駆動輪DW)に加え、前輪14のみにトルクを伝達する前輪駆動(=前輪14のみが駆動輪DW)も可能である。車両8は、前輪14と後輪16とを各々二輪備え、車輪を四輪備えた車両であるので、四輪駆動車両でもある。本実施例では、全輪駆動と四輪駆動とは同意である。後輪駆動と前輪駆動とは、各々、二輪駆動である。
【0020】
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置130によって、車両用駆動装置10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置20が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe[Nm]が制御される。
【0021】
TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、発動機としての機能及び発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、インバータ22を介してバッテリ24に接続されている。TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、後述する電子制御装置130によってインバータ22が制御されることにより、TM用回転機MGMの出力トルクであるMGMトルクTmgm[Nm]及びTF用回転機MGFの出力トルクであるMGFトルクTmgf[Nm]がそれぞれ制御される。MGMトルクTmgm及びMGFトルクTmgfは、発動機として機能する力行トルク(モータトルクとも言われる)でも発電機として機能する回生トルク(発電トルクとも言われる)でも良い。バッテリ24は、TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFの各々に対して電力を授受する蓄電装置である。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
【0022】
動力伝達装置18は、ハイブリッド用トランスミッション26(以下、単に「トランスミッション26」と記す。)、トランスファ28、フロントプロペラシャフト30、リヤプロペラシャフト32、フロントディファレンシャルギヤ34、リヤディファレンシャルギヤ36、左右一対のフロントドライブシャフト38、及び左右一対のリヤドライブシャフト40を備える。動力伝達装置18では、第1動力源PU1からトランスミッション26を介して入力された動力が、トランスファ28から、リヤプロペラシャフト32、リヤディファレンシャルギヤ36、リヤドライブシャフト40等を順次介して後輪16へ伝達される。動力伝達装置18では、第1動力源PU1からトランスファ28に入力されたトルクの一部が前輪14側へ分配されると、その分配されたトルクが、フロントプロペラシャフト30、フロントディファレンシャルギヤ34、フロントドライブシャフト38等を順次介して前輪14へ伝達される。
【0023】
図2は、
図1に示すトランスミッション26の概略構成を説明する図である。トランスミッション26は、非回転部材であるトランスミッションケース42内において共通の回転中心線である軸線CL1上に配設された、エンジン12に連結された回転機連結軸46、トルクコンバータ48、及び自動変速機50などを備える。トルクコンバータ48及び自動変速機50は、軸線CL1に対して略対称的に構成されており、
図2では軸線CL1に対して下半分が省略されている。
【0024】
トルクコンバータ48は、ポンプ翼車48a、タービン翼車48b、及びロックアップクラッチLUを備える公知のトルクコンバータである。ポンプ翼車48aは、回転機連結軸46に相対回転不能に連結され、タービン翼車48bは、自動変速機50の入力軸である変速機入力軸52に相対回転不能に連結されている。トルクコンバータ48は、第1動力源PU1からの動力を流体を介して変速機入力軸52へ伝達する、本発明における「流体式伝動装置」に相当する。
【0025】
自動変速機50は、第1動力源PU1からトルクコンバータ48を経て入力された動力をトランスファ28へ出力する機械式伝動装置である。自動変速機50は、例えば第1遊星歯車装置56及び第2遊星歯車装置58の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2の複数の係合装置と、を備える、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。係合装置CBは、例えば油圧アクチュエータにより係合状態や解放状態などの作動状態つまり制御状態が制御される公知の油圧式摩擦係合装置である。自動変速機50は、本発明における「変速機」に相当する。
【0026】
自動変速機50は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γtm(=AT入力回転速度Ni[rpm]/AT出力回転速度No[rpm])が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。本実施例では、自動変速機50にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸52の回転速度であり、タービン翼車48bの回転速度であるタービン回転速度Nt[rpm]と同値である。AT出力回転速度Noは、自動変速機50の出力軸である変速機出力軸54の回転速度である。
【0027】
図3は、
図2に示す自動変速機50の変速作動とそれに用いられる係合装置CBの作動の組み合わせとの関係を説明する作動係合表である。
図3において、「○」は係合状態を、「△」はエンジンブレーキ時や自動変速機50のコーストダウンシフト時の係合状態を、空欄は解放状態を、それぞれ表している。自動変速機50は、車両8の前進走行時には、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)-AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成され得る。変速比γtmが最も大きいのがAT1速ギヤ段であり、高速走行が可能なAT4速ギヤ段側であるほど変速比γtmが小さくなる。自動変速機50のニュートラル状態(図中の「N」)は、自動変速機50が動力を伝達不能な状態である。自動変速機50は、車両8の後進走行時には、ニュートラル状態とされる(図中の「Rev」)。車両8の後進走行時には、例えばTF用回転機MGFから動力が出力される。
【0028】
図4は、
図1に示すトランスファ28の概略構成を説明する図である。トランスファ28は、非回転部材であるトランスファケース44内において、(a)TF用回転機MGF、連結ギヤ対76、チェーン78、(b)共通の軸線CL1上に配設された、TF入力軸62、差動装置64、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、TF出力軸66、中間軸68、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2、及びドライブギヤ70、(c)共通の回転中心線である軸線CL2上に配設された、TF出力軸72及びドリブンギヤ74、などを備える。トランスファケース44は、本発明における「非回転部材」に相当する。TF用ブレーキBF1及びTF用クラッチCF1は、本発明における「第1係合装置」及び「第2係合装置」にそれぞれ相当する。連結ギヤ対76は、TF用回転機MGFのロータ軸80と一体的に回転する回転機連結ギヤ76aと、回転機連結ギヤ76aと常時噛み合うカウンタギヤ76bと、から構成されている。チェーン78は、ドライブギヤ70とドリブンギヤ74とを動力伝達可能に連結する部材(例えば、スプロケット)である。差動装置64、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、中間軸68、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2、及びドライブギヤ70は、軸線CL1に対して略対称的に構成されており、
図4では軸線CL1に対して下半分が省略されている。ドリブンギヤ74は、軸線CL2に対して略対称的に構成されており、
図4では軸線CL2に対して上半分が省略されている。
【0029】
トランスファ28は、更に、トランスファケース44に固定された切替用アクチュエータ82を備える(
図1参照)。切替用アクチュエータ82は、第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2の制御状態を各々制御する油圧アクチュエータである。TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1は、例えば油圧アクチュエータにより制御状態が制御される公知の油圧式摩擦係合装置である。第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2は、各々、公知の噛合クラッチつまりドグクラッチである。
【0030】
TF入力軸62、TF出力軸66、及びTF出力軸72は、それぞれ変速機出力軸54、リヤプロペラシャフト32、及びフロントプロペラシャフト30と動力伝達可能に連結されている。ドリブンギヤ74及びカウンタギヤ76bは、それぞれTF出力軸72及び中間軸68に相対回転不能に固定されている。
【0031】
差動装置64は、シングルピニオン型の遊星歯車装置で構成されており、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備える。サンギヤSは、中間軸68に相対回転不能に固定され、キャリアCAは、ドライブギヤ70に連結され、リングギヤRは、TF用ブレーキBF1を介して選択的にトランスファケース44に係合(=連結)され得る。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に係合される。なお、サンギヤS、キャリアCA、リングギヤRは、本発明における「第1回転要素」、「第2回転要素」、「第3回転要素」にそれぞれ相当する。
【0032】
第1噛合クラッチD1は、TF入力軸62に相対回転不能に連結された第1噛合歯a1、TF出力軸66に相対回転不能に連結された第2噛合歯a2、中間軸68に相対回転不能に連結され第3噛合歯a3、及び第1スリーブd1sを備える。第1スリーブd1sは、第1噛合歯a1、第2噛合歯a2、及び第3噛合歯a3の各々に対して軸線CL1方向(=軸線CL1と平行な方向)に相対移動可能に設けられ、第1噛合歯a1、第2噛合歯a2、及び第3噛合歯a3の各々に対して相対回転不能に噛み合うことが可能な内周歯が形成されている。第1噛合クラッチD1の第1状態[1]は、第1噛合歯a1と第2噛合歯a2とが第1スリーブd1sを介して結合された状態を示している。第1噛合クラッチD1の第2状態[2]は、第1噛合歯a1と第3噛合歯a3とが第1スリーブd1sを介して結合された状態を示している。なお、
図4では、便宜上、第1スリーブd1sを各状態に合わせて複数図示している。
【0033】
第2噛合クラッチD2は、リングギヤRに相対回転不能に連結された第4噛合歯a4、キャリアCAに相対回転不能に連結された第5噛合歯a5、TF出力軸66に相対回転不能に連結された第6噛合歯a6、及び第2スリーブd2sを備える。第2スリーブd2sは、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の各々に対して軸線CL1方向に相対移動可能に設けられ、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の各々に対して相対回転不能に噛み合うことが可能な内周歯が形成されている。第2噛合クラッチD2の第1状態[1]は、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の何れの間も結合されていないニュートラル状態を示している。第2噛合クラッチD2の第2状態[2]は、第4噛合歯a4と第6噛合歯a6とが第2スリーブd2sを介して結合された状態を示している。第2噛合クラッチD2の第3状態[3]は、第5噛合歯a5と第6噛合歯a6とが第2スリーブd2sを介して結合された状態を示している。なお、
図4では、便宜上、第2スリーブd2sを各状態に合わせて複数図示している。
【0034】
図5は、
図4に示すトランスファ28における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。
図5において、トランスファ28を構成する差動装置64の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1,Y2,Y3は、左側から順にサンギヤSの回転速度、キャリアCAの回転速度、リングギヤRの回転速度、をそれぞれ表す軸である。縦線Y1よりも左側に示した縦線Y0は、TF出力軸66の回転速度を表す軸である。
【0035】
図5の共線図を用いて表現すれば、TF出力軸66は、第1噛合クラッチD1(第1状態[1]参照)を介してTF入力軸62に選択的に連結されるとともにリヤプロペラシャフト32に連結されている。サンギヤSは、TF用回転機MGFが動力伝達可能に連結されているとともに第1噛合クラッチD1(第2状態[2]参照)を介してTF入力軸62に選択的に連結される。キャリアCAは、TF出力軸72に連結されているとともに第2噛合クラッチD2(第3状態[3]参照)を介してTF出力軸66に選択的に連結される。リングギヤRは、第2噛合クラッチD2(第2状態[2]参照)を介してTF出力軸66に選択的に連結されるとともにTF用ブレーキBF1を介してトランスファケース44に選択的に係合される。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に係合される。差動装置64では、直線Lcdにより、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRの相互の回転速度の関係が示される。TF出力軸66は、第1動力源PU1からの動力がトルクコンバータ48を介して入力され、且つ、後輪16に動力を出力する出力軸である。TF出力軸72は、前輪14に動力を出力する出力軸である。なお、後輪16及び前輪14は、本発明における「一方の車輪」及び「他方の車輪」にそれぞれ相当する。また、TF出力軸66は、本発明における「第1出力軸」及び「他方の出力軸」に相当し、TF出力軸72は、本発明における「第2出力軸」及び「一方の出力軸」に相当する。
【0036】
図6は、
図4に示すトランスファ28において成立させられる各モードとトランスファ28における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。トランスファ28の各モードは、電子制御装置130によって制御される。各モードにおけるTF用ブレーキBF1及びTF用クラッチCF1については、「○」は係合状態、「空欄」は解放状態、をそれぞれ表している。各モードにおける第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2については、それらが備える各噛合歯の結合状態が「○」又は「(○)」で表されている。なお、「(○)」は、エンジン12を含む第1動力源PU1からトランスファ28への動力伝達が遮断されているのであれば第1状態[1]であっても良いことを表している。例えば、「(○)」では、自動変速機50がニュートラル状態とされ且つ第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされたり、第1噛合クラッチD1において第2噛合クラッチD2のようにニュートラル状態(「N」)を形成できるのであれば第1噛合クラッチD1がニュートラル状態とされたりする。
【0037】
車両8においては、例えば動力源PUのうちエンジン12が停止状態とされ且つTM用回転機MGMやTF用回転機MGFが駆動状態とされるBEV走行(Battery Electric Vehicle)を行う走行モード(以下、「BEV走行モード」と記す。)と、動力源PUのうち少なくともエンジン12が作動状態とされるエンジン走行を行う走行モード(以下、「エンジン走行モード」と記す。)と、が選択可能である。
【0038】
車両用駆動装置10は、エンジン12の出力[W]すなわちパワーであるエンジンパワーPe[W]の動力伝達経路として、電気パス及び機械式パスを備える。ここで、電気パスとは、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとの間での電力授受により電気的に動力伝達される電気経路をいい、機械式パスとは、トルクコンバータ48を介して機械的に動力が伝達される機械経路をいう。車両用駆動装置10では、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとを使って電気式無段変速機が形成され得る。
【0039】
番号m1のEV(FF)ハイモード、及び、番号m2のEV(FF)ローモードは、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1のうちの何れか一方のみが係合状態とされ、第1噛合クラッチD1が第1状態[1](ただし、第1動力源PU1からトランスファ28への動力伝達は遮断されている)とされ、且つ第2噛合クラッチD2が第1状態[1]とされることで実現される。以下、EV(FF)ハイモード及びEV(FF)ローモードについて、特に区別しない場合は単にEV(FF)モードという。
【0040】
EV(FF)ハイモードでは、TF用クラッチCF1が係合状態とされるため差動装置64におけるサンギヤS及びキャリアCAは一体的に回転する。これにより、トランスファ28の変速比γtf(=サンギヤSの回転速度/キャリアCAの回転速度)は、「1」となり、トランスファ28ではハイギヤ段が形成される。一方、EV(FF)ローモードでは、TF用ブレーキBF1が係合状態とされて差動装置64における差動作用により、キャリアCAの回転速度がサンギヤSの回転速度に対して減速させられる。これにより、トランスファ28の変速比γtfは、サンギヤSの歯数とリングギヤRの歯数とに応じて「1」よりも大きくなり、トランスファ28ではローギヤ段が形成される。このようにハイギヤ段又はローギヤ段が形成されたトランスファ28において、TF用回転機MGFからの動力が前輪14側へ伝達される。このようにEV(FF)ハイモード及びEV(FF)ローモードでは、トランスファ28は、ハイギヤ段とローギヤ段とが選択的に形成される変速機としても機能する。
【0041】
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の全てがTM用回転機MGMでの発電に用いられ、且つTF用回転機MGFによって車両8が駆動される場合、EV(FF)モードによって、「シリーズ運転モード」が駆動モードとして実現される。「シリーズ運転モード」は、第1動力源PU1からTF出力軸66への動力伝達を遮断した状態でTF用回転機MGFのみを動力源PUとして走行する駆動モードである。「駆動モード」とは、車両8を駆動する方式であって、動力源PU及び動力伝達装置18の制御状態が電子制御装置130によって制御されることによって実現される。シリーズ運転モードでは、例えば第1噛合クラッチD1が第1状態[1]の場合、自動変速機50がニュートラル状態とされることでエンジン12の引き摺りが抑制される。
【0042】
EV(FF)モードでは、例えば後述するATギヤ段変速マップと同様、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係であるマップに、実際の車速V[km/h]及び要求駆動トルクTrdem[Nm]を適用することで、トランスファ28の変速比γtfが設定される。例えば、比較的低車速領域においてトランスファ28がローギヤ段とされる一方で、比較的高車速領域においてトランスファ28がハイギヤ段とされる。なお、後述するように、「H4_トルクスプリットモード」や「H4_LSDモード」において、運転者によりデフロック選択スイッチ120がオン状態へ操作された場合、EV(FF)モードとはされず、「H4_Lockモード」が成立させられる。また、「H4_Lockモード」において、車両8の停止時であって運転者によりローギヤ選択スイッチ122がオン状態へ操作された場合、「L4_Lockモード」が成立させられる。
【0043】
番号m3のH4_トルクスプリットモードは、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされ、第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ、且つ第2噛合クラッチD2が第2状態[2]とされることで実現される。H4_トルクスプリットモードは、例えばトランスファ28がハイギヤ段と同等の状態で、第1動力源PU1から機械式パスを経てTF出力軸66に入力されたトルクをTF用回転機MGFの反力トルクによってサンギヤSにて受け持つモードであって、TF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。H4_トルクスプリットモードでは、TF用回転機MGFは力行させられる。H4_トルクスプリットモードでは、第1動力源PU1であるエンジン12からTF出力軸66へ入力されたトルクがTF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルク分配されるが、前輪14と後輪16とは同じ回転速度で回転している。差動装置64のキャリアCAはTF出力軸72を介して前輪14に接続され、差動装置64のリングギヤRはTF出力軸66を介して後輪16に接続されているため、キャリアCAとリングギヤRとは同じ回転速度で回転している、すなわち変速比γtfは「1」の状態となっている。
【0044】
番号m4のH4_LSDモードは、TF用ブレーキBF1が解放状態とされ、第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ、且つ第2噛合クラッチD2が第2状態[2]とされた状態で、TF用クラッチCF1がスリップ状態に制御されることで実現される。H4_LSDモードは、H4_トルクスプリットモードにおけるTF用回転機MGFの反力トルクの作用に替えて、TF用クラッチCF1のスリップ状態による差動装置64の差動作用の制限により、TF用クラッチCF1のトルク容量(=TF用クラッチCF1の係合力)に応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。
【0045】
このようにH4_トルクスプリットモード及びH4_LSDモードでは、トランスファ28は、第1動力源PU1からTF出力軸66に入力されたトルクの一部をTF出力軸72に分配するトルク分配装置である。
【0046】
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の全てがトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸62に入力される場合、H4_トルクスプリットモード又はH4_LSDモードによって、「電気パス無しのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。「電気パス無しのパラレル運転モード」は、第1動力源PU1から機械式パスを経てTF出力軸66へ入力された動力が前輪14及び後輪16へ分配される駆動モードである。
【0047】
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の一部がトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸62に入力され、エンジン12からの動力の残余がTM用回転機MGMでの発電に用いられ、且つTF用回転機MGFによって車両8が駆動される場合、H4_LSDモードによって、「電気パス有りのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。「電気パス有りのパラレル運転モード」は、電気パス量Ppse[W]がエンジン運転点PNTengを目標運転点PNTtgtとするための目標電気パス量PpsetgtとなるようにTM用回転機MGMを発電動作させ、TF用回転機MGFを第2動力源PU2として駆動動作させる駆動モードである。エンジン運転点PNTengは、エンジン12の運転点である。電気パス量Ppseとは、電気パスを用いて電気的に動力伝達される電力の大きさである。
【0048】
番号m5のH4_Lockモードは、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされ、第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ、且つ第2噛合クラッチD2が第3状態[3]とされることで実現される。H4_Lockモードは、差動装置64がデフロック状態とされた状態で、第1動力源PU1からTF出力軸66に入力されたトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。
【0049】
番号m6のL4_Lockモードは、TF用クラッチCF1が解放状態とされ、TF用ブレーキBF1が係合状態とされ、第1噛合クラッチD1が第2状態[2]とされ、且つ第2噛合クラッチD2が第3状態[3]とされることで実現される。L4_Lockモードは、トランスファ28がデフロック状態とされ且つローギヤ段とされた状態で、第1動力源PU1から中間軸68を介して差動装置64のサンギヤSへ入力されたトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。
【0050】
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の全てがトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸62に入力される場合、H4_Lockモード又はL4_Lockモードによって、「電気パス無しのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。
【0051】
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の一部がトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸62に伝達され、エンジン12からの動力の残余がTM用回転機MGMでの発電に用いられ、且つTF用回転機MGFによって車両8が駆動される場合、H4_Lockモード又はL4_Lockモードによって、「電気パス有りのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。
【0052】
なお、本明細書における「電気パス有りのパラレル運転モード」、「シリーズ運転モード」、及び「電気パス無しのパラレル運転モード」は、本発明における「第1モード」、「第2モード」、及び「第3モード」にそれぞれ相当する。
【0053】
図1に戻り、車両用駆動装置10は、機械式のオイルポンプであるMOP84、電動式のオイルポンプであるEOP86、EOP86を回転駆動するための専用のモータであるポンプ用モータ88等を備える。MOP84は、回転機連結軸46に連結されている(
図2参照)。MOP84やEOP86が吐出した作動油OILは、油圧制御回路60へ供給される。油圧制御回路60は、MOP84及びEOP86の少なくとも一方が吐出した作動油OILの油圧を元圧として、トランスミッション26内及びトランスファ28内の各部に必要な作動油OILを供給する。例えば、油圧制御回路60は、ロックアップクラッチLU、係合装置CB、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、第1噛合クラッチD1、及び第2噛合クラッチD2の制御状態を制御する油圧をそれぞれ生成し、各アクチュエータにそれぞれ供給する。
【0054】
車両用駆動装置10は、動力源PU及びトランスファ28などを制御する制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置130を備える。電子制御装置130は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両用駆動装置10の各種制御を実行する。電子制御装置130は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等の各コンピュータを含んで構成される。電子制御装置130は、本発明における「制御装置」に相当する。電子制御装置130は、油圧制御回路60を制御することにより、ロックアップクラッチLU、係合装置CB、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、第1噛合クラッチD1、及び第2噛合クラッチD2の制御状態を制御する。
【0055】
電子制御装置130には、車両用駆動装置10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ90、MGM回転速度センサ92、タービン回転速度センサ94、AT出力回転速度センサ96、車速センサ98、MGF回転速度センサ100、アクセル開度センサ102、スロットル弁開度センサ104、ブレーキペダルセンサ106、シフトポジションセンサ108、加速度センサ110、ヨーレートセンサ112、ステアリングセンサ114、バッテリセンサ116、油温センサ118、デフロック選択スイッチ120、ローギヤ選択スイッチ122など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne[rpm]、TM用回転機MGMの回転速度であるMGM回転速度Nmgm[rpm]、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、AT出力回転速度No、車速V、TF用回転機MGFの回転速度であるMGF回転速度Nmgf[rpm]、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc[%]、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth[%]、ホイールブレーキを作動させるためのブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、車両8に備えられたシフトレバーの操作位置を示すシフト操作ポジションPOSsh、車両8の前後加速度Gx[m/sec2]及び左右加速度Gy[m/sec2]、車両8の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw[rad/sec]、車両8に備えられたステアリングホイールの操舵角度θsw[rad]及び操舵方向Dsw、バッテリ24のバッテリ温度THbat[℃]やバッテリ充放電電流Ibat[A]やバッテリ電圧Vbat[V]、作動油OILの温度である油温THoil[℃]、運転者によって「H4_Lockモード」又は「L4_Lockモード」が選択されたことを示す信号であるロックモードオン信号LOCKon、運転者によってトランスファ28のローギヤ段が選択されたことを示す信号であるローギヤオン信号LOWon)が、それぞれ入力される。
【0056】
デフロック選択スイッチ120及びローギヤ選択スイッチ122は、例えば運転席の近傍に設けられている。デフロック選択スイッチ120は、トランスファ28において差動装置64をデフロック状態とするときに運転者によりオン状態へ操作されるスイッチである。ローギヤ選択スイッチ122は、トランスファ28を「H4_Lockモード」から「L4_Lockモード」へ切り替えるときに運転者によりオン状態へ操作されるスイッチである。
【0057】
電子制御装置130からは、車両8に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置20、インバータ22、油圧制御回路60、切替用アクチュエータ82、ポンプ用モータ88、ホイールブレーキ装置124、情報報知装置126など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、TM用回転機MGMを制御するためのMGM制御信号Smgm、TF用回転機MGFを制御するためのMGF制御信号Smgf、自動変速機50の制御に関わる係合装置CBの制御状態を制御するための変速制御信号Sat、トランスファ28の制御に関わるTF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1の各々の制御状態を制御するための油圧制御信号Scbf、トランスファ28の制御に関わる第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2を各々作動させるためのトランスファ制御信号Stf、EOP86を制御するためのEOP制御信号Seop、ホイールブレーキによる制動力を制御するためのブレーキ制御信号Sb、運転者に各種情報の報知を行うための情報報知制御信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
【0058】
電子制御装置130は、駆動モード制御部132、動力源制御部134、及び伝達経路制御部136を機能的に備える。
【0059】
駆動モード制御部132は、動力源決定部132a、電気パス量算出部132b、燃費算出部132c、及びモード決定部132dを、機能的に備える。
【0060】
動力源決定部132aは、例えば要求駆動量マップに実際のアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両8に対する要求駆動量(例えば要求駆動トルクTrdem[Nm])を算出する。要求駆動量マップは、例えばアクセル開度θacc及び車速Vと要求駆動量との間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップである。要求駆動量は、車両8に要求される駆動量であって、例えば要求駆動トルクTrdemである。要求駆動トルクTrdemは、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。要求駆動量としては、駆動輪DWにおける要求駆動力Frdem[N]などを用いても良い。このように、要求駆動トルクTrdem、要求駆動パワーPrdem、及び要求駆動力Frdemは、車両8の要求駆動量である点では同意である。
【0061】
図7は、動力源PUの切替制御に用いる走行領域切替マップと、自動変速機50の変速制御に用いるATギヤ段変速マップ(=ATギヤ段変速線図)と、の一例を示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
図7に示す一点鎖線Aは、エンジン走行モードが選択されるエンジン走行領域と、BEV走行モードが選択されるBEV走行領域と、の予め定められた境界線である。一般的にエンジン12の熱効率であるエンジン熱効率ηeng[g/kWh]が低下する、一点鎖線Aで示される車速Vが比較的低い低車速領域、或いは、要求駆動トルクTrdemが比較的低い低負荷領域がBEV走行領域とされる。なお、走行領域切替マップによりBEV走行領域とされる場合であっても、バッテリ24の充電状態値(予め定められた満充電容量に対する実際に蓄電されている充電量の比)SOC[%]が予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、エンジン走行領域とされる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を自動的に始動してバッテリ24を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断するための予め定められた閾値である。
【0062】
ATギヤ段変速マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係である。ATギヤ段変速マップは、トランスファ28において成立させられる各モード毎に用意されている。ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機50の変速が判断されるための変速線を有する所定の関係である。ATギヤ段変速マップでは、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdem[N]やアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断されるためのアップシフト線、及び、破線に示すようなダウンシフトが判断されるためのダウンシフト線である。
【0063】
図1に戻り、動力源決定部132aは、例えば走行領域切替マップに実際の車速V及び要求駆動トルクTrdemを適用することで、エンジン走行領域であるか否かを判定する。すなわち、エンジン12が作動状態とされるか否かが決定される。
【0064】
以下、動力源決定部132aによりエンジン走行領域であると決定された場合について主に説明する。
【0065】
動力源決定部132aによりエンジン走行領域であると決定された場合には、電気パス量算出部132bは、最大電気パス量Ppsemaxを算出する。最大電気パス量Ppsemaxは、電気パスを用いて電気的に動力伝達が可能な電気パス量Ppseの最大値である。例えば、TF用回転機MGFが高温となって負荷率Rld[%]が制限されて消費電力Wcmgm[W]が制限される場合には、負荷率Rldが制限されていない場合に比較して最大電気パス量Ppsemaxは低くされる。負荷率Rldとは、TF用回転機MGFの最大出力に対する出力可能出力の比である。負荷率Rldは、本発明における「第2回転機の負荷率」に相当する。
【0066】
電気パス量算出部132bにより最大電気パス量Ppsemaxが算出されると、燃費算出部132cは、シリーズ運転モードにおける燃費Eff[g/W]を算出する。このシリーズ運転モードにおける燃費Effの算出においては、例えばATギヤ段は、ニュートラル状態であるものとされる。燃費Effは、例えばエンジンパワーPeあたりの燃料消費量である。燃費Effは、本発明における「エンジンの燃費」に相当する。シリーズ運転モードの場合、エンジン12の動力は全て電気パスを経由してTM用回転機MGMからTF用回転機MGFへ動力伝達される。そのため、要求駆動トルクTrdemを満足するように、電気パスの伝達効率ηpse[%]、及びトランスファ28の伝達効率ηtf[%]に基づいて、エンジンパワーPeの要求値である要求エンジンパワーPedem[W]が算出される。その算出された要求エンジンパワーPedemの等パワー線Lpeと熱効率最適線Lflとの交点がエンジン運転点PNTengとされ、エンジン運転点PNTengでの燃料噴射量が燃費Effとして算出される。伝達効率ηpseは、例えばTM用回転機MGMの発電電力Wgmgm[W]、MGF回転速度Nmgf、及びMGFトルクTmgfと、伝達効率ηpseと、の間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに基づいて算出される。伝達効率ηpseでは、トルクコンバータ48の引き摺りも考慮される。伝達効率ηtfは、例えばトランスファ28のモード{EV(FF)ハイモード又はEV(FF)ローモード}と、伝達効率ηtfと、の間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに基づいて算出される。なお、電気パス量Ppseは、最大電気パス量Ppsemax以下に制限される。シリーズ運転モードにおいて要求駆動トルクTrdemが満足されない場合には、例えば燃費Effが無限大とされることで、後述のモード決定部132dによりシリーズ運転モードが決定されないようにされる。
【0067】
動力源決定部132aによりエンジン走行領域であると判定された場合には、燃費算出部132cは、電気パス無しのパラレル運転モードにおける燃費Effを算出する。この電気パス無しのパラレル運転モードにおける燃費Effの算出においては、例えば自動変速機50の変速比γtm及びトランスファ28の変速比γtfは、予め定められたマップに実際の車速V及び要求駆動トルクTrdemを適用してそれぞれ決定されたものである。電気パス無しのパラレル運転モードの場合、エンジン12の動力は全て機械式パスを経由して駆動輪DWへ伝達される。そのため、要求駆動トルクTrdemを満足するように、トルクコンバータ48の伝達効率ηtc[%]、自動変速機50の伝達効率ηtm[%]、及びトランスファ28の伝達効率ηtfに基づいて、要求エンジンパワーPedemが算出される。ここで、ポンプ回転速度Npに対するタービン回転速度Ntの比を、速度比eとする。伝達効率ηtcは、例えば速度比eと伝達効率ηtcとの間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに基づいて算出される。ポンプ回転速度Npは、ポンプ翼車48aの回転速度であって、エンジン回転速度Neと同値である。タービン回転速度Ntは、車速Vと変速比γtf及び変速比γtmとで定まる回転速度である。伝達効率ηtmは、例えば自動変速機50のATギヤ段及び油温THoilと、伝達効率ηtmと、の間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに基づいて算出される。エンジン運転点PNTengは、変速比γtmと、トルクコンバータ48の性能曲線により求められるトルクコンバータ48の容量係数Cと、で決定され、その決定されたエンジン運転点PNTengでの燃料噴射量が燃費Effとして算出される(
図9のカップリング点P01参照)。
【0068】
図8は、ATギヤ段及び作動油OILの油温THoilと、伝達効率ηtmと、の関係の一例である。例えば、伝達効率ηtmは、ATギヤ段がハイ側であるほど、又、油温THoilが高温であるほど、高くなる。
【0069】
トランスファ28の伝達効率ηtfは、例えばトランスファ28の各モード{H4_トルクスプリットモード、H4_LSDモード、H4_Lockモード、又はL4_Lockモード}と、伝達効率ηtfと、の間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに基づいて算出される。
【0070】
電気パス量算出部132bにより最大電気パス量Ppsemaxが算出されると、燃費算出部132cは、電気パス有りのパラレル運転モードにおける燃費Effを算出する。具体的には、まず、燃費算出部132cは、エンジン運転点PNTengを目標運転点PNTtgtとするための電気パス量Ppseである目標電気パス量Ppsetgtを求める。目標運転点PNTtgtは、例えば熱効率最適点であり、要求エンジンパワーPedemが二点鎖線L02であるときには熱効率最適点P02である(
図9参照)。目標電気パス量Ppsetgtは、エンジン運転点PNTengをカップリング点P01から目標運転点PNTtgtに変更するときのMGMトルクTmgmと、目標運転点PNTtgtにおけるエンジン回転速度NeつまりMGM回転速度Nmgmと、の積である。この電気パス有りのパラレル運転モードにおける燃費Effの算出においては、例えば自動変速機50の変速比γtm及びトランスファ28の変速比γtfは、予め定められたマップに実際の車速V及び要求駆動トルクTrdemを適用してそれぞれ決定されたものである。
【0071】
電気パス有りのパラレル運転モードの場合、エンジン12から駆動輪DWに伝達される動力は、機械式パスすなわちトルクコンバータ48及び自動変速機50を経由して駆動輪DWに伝達される分と、電気パスを経由して駆動輪DWに伝達される分との和である。機械式パスを経由して駆動輪DWに伝達される分は、伝達効率ηtc、伝達効率ηtm、及び伝達効率ηtfに基づいて算出される。電気パスを経由して駆動輪DWに伝達される分は、伝達効率ηpse及び伝達効率ηtfに基づいて算出される。したがって、機械式パスを経由して駆動輪DWに伝達される分と、電気パスを経由して駆動輪DWに伝達される分と、の和が要求駆動トルクTrdemを満足するように、要求エンジンパワーPedemが算出される。その算出された要求エンジンパワーPedemの等パワー線Lpeと熱効率最適線Lflとの交点がエンジン運転点PNTengとされ、エンジン運転点PNTengでの燃料噴射量が燃費Effとして算出される。なお、目標電気パス量Ppsetgtが最大電気パス量Ppsemaxにより制限される場合には、その差分(=|目標電気パス量Ppsetgt-最大電気パス量Ppsemax|)だけ目標電気パス量Ppsetgtが減少させられ、その減少分を補うように機械式パスを経由して駆動輪DWに伝達される分が増加させられる。この場合、エンジン運転点PNTengは、熱効率最適線Lfl上を通らなくなる。また、シリーズ運転モードや電気パス無しのパラレル運転モードと同様に、伝達効率ηtc、伝達効率ηtm、伝達効率ηtf、及び伝達効率ηpseは、それぞれマップを用いて算出することができる。
【0072】
燃費算出部132cにより各運転モードにおける燃費Effが算出されると、モード決定部132dは、最も燃費Effが良い場合における運転モードを、車両8を駆動するのに選択する駆動モードとして決定する。
【0073】
モード決定部132dにより駆動モードが決定されると、動力源制御部134は、決定された駆動モードに応じてエンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFを制御する。動力源制御部134は、エンジン制御部134a及び回転機制御部134bを機能的に備え、それらの制御機能によりエンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFをそれぞれ制御する。
【0074】
モード決定部132dにより駆動モードが決定されると、伝達経路制御部136は、決定された駆動モードに応じてトルクコンバータ48、自動変速機50、及びトランスファ28を制御する。伝達経路制御部136は、LU制御部136a、変速機制御部136b、及びトランスファ制御部136cを、機能的に備える。
【0075】
LU制御部136aは、モード決定部132dにより決定された駆動モードを実現するように、トルクコンバータ48のロックアップクラッチLUの断接状態を制御する。
【0076】
変速機制御部136bは、モード決定部132dにより決定された駆動モードでのATギヤ段を実現するように、必要に応じて自動変速機50の変速制御を実行する。
【0077】
トランスファ制御部136cは、モード決定部132dにより決定された駆動モードを実現するようにトランスファ28のTF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2の断接状態を制御する。なお、トランスファ制御部136cは、「H4_トルクスプリットモード」や「H4_LSDモード」では、例えば車速センサ98、加速度センサ110、ヨーレートセンサ112などの各種センサによる各種信号に基づいて車両8の走行状態を判断し、その判断した走行状態に応じたトルク分配比Rxの目標値を設定する。トルク分配比Rxは、前輪14と後輪16とに分配する動力源PUからのトルクの割合である。トルク分配比Rxは、例えば動力源PUから後輪16及び前輪14に伝達される総トルクに対する後輪16に伝達されるトルクの割合、すなわち後輪側分配率Xrで表すことができる。または、トルク分配比Rxは、例えば動力源PUから後輪16及び前輪14に伝達される総トルクに対する前輪14に伝達されるトルクの割合、すなわち前輪側分配率Xf(=1-Xr)で表すことができる。
【0078】
回転機制御部134bは、「H4_トルクスプリットモード」では、TF用回転機MGFによる反力トルクを生じさせるMGFトルクTmgfを調節することによって後輪側分配率Xrが目標値となるようにTF用回転機MGFを制御する。MGFトルクTmgfが大きくされる程、後輪側分配率Xrが小さくされる、すなわち前輪側分配率Xfが大きくされる。
【0079】
トランスファ制御部136cは、「H4_LSDモード」では、TF用クラッチCF1のトルク容量を調節することによって後輪側分配率Xrが目標値となるようにTF用クラッチCF1の係合状態(スリップ係合状態又は完全係合状態)を制御する。TF用クラッチCF1のトルク容量が大きくされる程、後輪側分配率Xrが小さくされる。トランスファ制御部136cは、TF用クラッチCF1の制御状態を係合状態に制御することによってトルク分配比Rxを制御することができる。動力源制御部134は、「H4_LSDモード」では、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrに加えることができる。
【0080】
動力源制御部134は、「H4_Lockモード」では、TF用クラッチCF1が係合状態とされることで、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrに加えることができる。
【0081】
トランスファ制御部136cは、「H4_トルクスプリットモード」や「H4_LSDモード」において、運転者によりデフロック選択スイッチ120がオン状態へ操作された場合、「H4_Lockモード」を成立させる。トランスファ制御部136cは、「H4_Lockモード」において、車両8の停止時であって運転者によりローギヤ選択スイッチ122がオン状態へ操作された場合、「L4_Lockモード」を成立させる。動力源制御部134は、「L4_Lockモード」では、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrに加えることができる。
【0082】
動力源制御部134は、TF用クラッチCF1が係合状態にあるときに、TF用回転機MGFを第2動力源PU2として用いることができる(「EV(FF)ハイモード」、「H4_LSDモード」、「H4_Lockモード」、「L4_Lockモード」参照)。
【0083】
図9は、車両用駆動装置10において、エンジン運転点PNTengを無段変速機のように変更できることを説明する図である。エンジン運転点PNTengは、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の運転点つまり動作点である。
【0084】
図9において、二点鎖線で示される等パワー線Lpeは、各々、アクセル開度θacc等に応じて算出された要求駆動パワーPrdemを実現するための要求エンジンパワーPedemの一例を示している。要求エンジンパワーPedemは、アクセル操作等の運転者操作によって要求されるエンジンパワーPeである。一方で、破線L01は、便宜上、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeを変数とする二次元座標上に、トルクコンバータ48の速度比eに応じてポンプ翼車48aに生じるトルクであるポンプトルクTp[Nm]の一例を示したものである。ポンプトルクTpは、一定のタービン回転速度Ntの下では、破線L01のような、ハード要件で決まるエンジン回転速度Neとの関係が示される。そして、要求エンジンパワーPedemが例えば二点鎖線L02であるときには、エンジン運転点PNTengは、破線L01と二点鎖線L02とが重なる点である所謂カップリング点P01に自然と決められる。
【0085】
カップリング点P01に対して、例えばエンジンパワーPeの一部を用いてTM用回転機MGMを発電動作させることで、要求エンジンパワーPedemを変えないままで、エンジン運転点PNTengを例えば実線L03で示される熱効率最適線Lfl上の熱効率最適点P02に変更することができる。熱効率最適線Lflは、エンジン熱効率ηengが最も良くなる、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を表す予め定められたエンジン12の動作曲線であって、エンジン12の熱効率向上に最適なエンジン運転点PNTengとして予め定められた熱効率最適点の連なりである。車両用駆動装置10では、エンジントルクTeとMGMトルクTmgmとの和がポンプトルクTpと釣り合うように、すなわち「Tp=Te+Tmgm(
図9のTmgmは負の値)」という関係が成立するように、MGMトルクTmgmが調節されることで、エンジン運転点PNTengをタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。MGMトルクTmgmが負の値となる場合には、つまりTM用回転機MGMを発電動作させる場合には、TM用回転機MGMによって発電された電力は、基本的にはTF用回転機MGFに供給されてTF用回転機MGFによって機械的な動力に変換される。
【0086】
トランスファ制御部136cは、H4_トルクスプリットモード又はH4_LSDモードにおいて、運転者によりデフロック選択スイッチ120がオン状態へ操作された場合に、H4_Lockモードを成立させるようにトランスファ28の制御状態を制御する。トランスファ制御部136cは、H4_Lockモードにおいて、車両8の停止時であって運転者によりローギヤ選択スイッチ122がオン状態へ操作された場合に、L4_Lockモードを成立させるようにトランスファ28の制御状態を制御する。
【0087】
図10は電子制御装置130の制御作動を説明するフローチャートの一例である。
図10のフローチャートは、繰り返し実行される。
【0088】
まず、動力源決定部132aの機能に対応するステップS10(以下、「ステップ」を省略する。)においてエンジン走行領域であるか否かが判定される。すなわち、エンジン12が作動状態とされるか否かが判定される。S10の判定が否定された場合は、リターンとなる。S10の判定が肯定された場合は、電気パス量算出部132bの機能に対応するS20において最大電気パス量Ppsemaxが決定される。S20の実行後、燃費算出部132cの機能に対応するS30において、シリーズ運転モードにおける燃費Effが算出され、燃費算出部132cの機能に対応するS40において、電気パス無しのパラレル運転モードにおける燃費Effが算出され、燃費算出部132cの機能に対応するS50において、電気パス有りのパラレル運転モードにおける燃費Effが算出される。S30~S50の実行後、モード決定部132dの機能に対応するS60において、最も燃費Effが良い場合における運転モードが、車両8を駆動する駆動モードとして決定される。S60の実行後、動力源制御部134及びトランスファ制御部136cの機能に対応するS70において、決定された駆動モードが実現されるようにエンジン12、TM用回転機MGM、TF用回転機MGF、及びトランスファ28が制御される。S60で決定された駆動モードが電気パス無しのパラレル運転モード又は電気パス有りのパラレル運転モードの場合には、LU制御部136a及び変速機制御部136bの機能に対応して、ロックアップクラッチLU及び自動変速機50も制御される。S70の実行後は、リターンとなる。
【0089】
図11は、電気パス有りのパラレル運転モードにおいて、エンジン12の燃費最適回転速度Nesに対してTM用回転機MGMの発電動作により移動可能な、自動変速機50のATギヤ段毎のエンジン回転速度Neの範囲を例示する図である。
図11に示す燃費最適回転速度Nesは、電気パス有りのパラレル運転モードが決定された場合における燃費Effが最も良くなるエンジン回転速度Neである。
【0090】
図11において、「●」は、電気パス無しのパラレル運転モードにおいて車速Vを同一としたときの各ATギヤ段毎のタービン回転速度Nt(=γtm×No)であり、ロックアップクラッチLUが完全係合状態である場合におけるエンジン回転速度Neでもある(
図9のロックアップ点P03参照)。「○」は、電気パス無しのパラレル運転モードにおいて車速Vを同一としたときの各ATギヤ段毎のカップリング点P01におけるエンジン回転速度Necである(
図9のカップリング点P01参照)。したがって、「●-○」は、電気パス有りのパラレル運転モードが選択された場合に、燃費最適回転速度Nesに対してTM用回転機MGMの発電動作により移動可能なATギヤ段毎のエンジン回転速度Neの範囲を示しており、ロックアップクラッチLUのスリップ量を示してもいる。破線で示した回転速度は、燃費最適回転速度Nesである(
図9の熱効率最適点P02参照)。
図11で例示したAT4速ギヤ段では、エンジン回転速度Necが燃費最適回転速度Nesよりも低いので、エンジン回転速度Neを燃費最適回転速度Nesに移動させる場合、TM用回転機MGMを力行動作させる必要がある。そのため、AT4速ギヤ段では、TM用回転機MGMが電力を供給される動力循環状態となり、燃費向上の上では不利である。ここにいう動力循環状態とは、TF用回転機MGFが発電するとともに、TM用回転機MGMが負回転且つ力行状態とされてTF用回転機MGFが発電した電気エネルギーを消費する状態である。
図11で例示したAT3速ギヤ段やAT2速ギヤ段では、エンジン回転速度Necが燃費最適回転速度Nesよりも高く、又、TM用回転機MGMの発電動作により移動可能なエンジン回転速度Neの範囲内に燃費最適回転速度Nesがある。よって、AT3速ギヤ段やAT2速ギヤ段では、TM用回転機MGMの発電動作による機械式パスと電気パスとを併用したTM用回転機MGMからTF用回転機MGFへの電気的な動力伝達によって、エンジン回転速度Neを燃費最適回転速度Nesに移動させることができる。これにより、燃費Effを向上させる効果が期待できる。エンジン回転速度Necから燃費最適回転速度Nesへ移動させるためのMGM発電量Pmgm[W]は、AT3速ギヤ段の方がAT2速ギヤ段に比べて小さくされる。
図11で例示したAT1速ギヤ段では、タービン回転速度Ntが燃費最適回転速度Nesよりも高く、TM用回転機MGMの発電動作により移動可能なエンジン回転速度Neの範囲内に燃費最適回転速度Nesがない。そのため、AT1速ギヤ段では、機械式パスと電気パスとの併用によるエンジン回転速度Neの燃費最適回転速度Nesへの移動ができない。
【0091】
図11で例示した各ATギヤ段において、エンジン回転速度Neを燃費最適回転速度Nesに移動させることを考えれば、TM用回転機MGMが発電動作させられ、MGM発電量Pmgmが最小となるAT3速ギヤ段が燃費向上の上では最も有利である。
【0092】
ただし、トランスファ28における各モードにて必要とされる電気パス量Ppseは、必ずしもエンジン運転点PNTengを熱効率最適点P02に移動させるためのMGM発電量Pmgmと一致するわけではない。そのため、本実施例では、トランスファ28における各モードにて必要とされる電気パス量Ppseを実現しつつ、電気パスを併用してエンジン運転点PNTengを熱効率最適点P02に近づける。
【0093】
本実施例によれば、電子制御装置130は、駆動モードとして電気パス有りのパラレル運転モードを選択すると仮定した場合、駆動モードとしてシリーズ運転モードを選択すると仮定した場合、及び駆動モードとして電気パス無しのパラレル運転モードを選択すると仮定した場合のそれぞれの燃費Effを算出し、最も燃費Effが良い場合の運転モードを駆動モードとして選択する。車両用駆動装置10においてエンジン12を作動させて車両8が駆動される場合において、エンジン12の動力が伝達される経路が異なる、電気パス有りのパラレル運転モード、シリーズ運転モード、及び電気パス無しのパラレル運転モードのうち、最も燃費Effが良い場合が駆動モードとして選択されるため、燃費Effを最良にすることができる。
【0094】
本実施例によれば、(a)車両用駆動装置10は、トルクコンバータ48から入力された動力をTF出力軸66に出力する自動変速機50をさらに備え、(b)駆動モードとして電気パス有りのパラレル運転モードが選択されると仮定した場合における燃費Effは、エンジン熱効率ηeng、伝達効率ηpse、トルクコンバータ48の伝達効率ηtc、自動変速機50の伝達効率ηtm、及びトランスファ28の伝達効率ηtfに基づいて算出される。このように、駆動モードとして電気パス有りのパラレル運転モードが選択されると仮定した場合において、燃費Effがエンジン熱効率ηeng、伝達効率ηpse、伝達効率ηtc、伝達効率ηtm、及び伝達効率ηtfに基づいて算出される場合は、そうでない場合に比較して燃費Effを正確に算出することができる。
【0095】
本実施例によれば、駆動モードとしてシリーズ運転モードが選択されると仮定した場合における燃費Effは、エンジン熱効率ηeng、伝達効率ηpse、及び伝達効率ηtfに基づいて算出される。このように、駆動モードとしてシリーズ運転モードが選択された場合において、燃費Effがエンジン熱効率ηeng、伝達効率ηpse、及び伝達効率ηtfに基づいて算出される場合は、そうでない場合に比較して燃費Effを正確に算出することができる。
【0096】
本実施例によれば、駆動モードとして電気パス有りのパラレル運転モード又はシリーズ運転モードが選択されると仮定した場合における電気パス量Ppseは、TF用回転機MGFの負荷率Rldが制限されている場合には、負荷率Rldに応じて制限される。例えば、TF用回転機MGFが高温となって負荷率Rldが制限されている場合には、電気パス量PpseがTF用回転機MGFの負荷率Rldに応じて制限されることで、TF用回転機MGFの出力が制限されるため、TF用回転機MGFの負荷が低減されるように制御される。
【0097】
本実施例によれば、(a)車両用駆動装置10は、トルクコンバータ48から入力された動力をTF出力軸66に出力する自動変速機50をさらに備え、(b)駆動モードとして電気パス無しのパラレル運転モードが選択されると仮定した場合における燃費Effは、エンジン熱効率ηeng、トルクコンバータ48の伝達効率ηtc、自動変速機50の伝達効率ηtm、及びトランスファ28の伝達効率ηtfに基づいて算出される。このように、駆動モードとして電気パス無しのパラレル運転モードが選択された場合において、燃費Effがエンジン熱効率ηeng、伝達効率ηtc、伝達効率ηtm、及び伝達効率ηtfに基づいて算出される場合は、そうでない場合に比較して燃費Effを正確に算出することができる。
トランスファ200は、トランスファケース202内において、TF用回転機MGF、連結ギヤ対218、及びチェーン220などを備える。連結ギヤ対218は、TF用回転機MGFのロータ軸222と一体的に回転する回転機連結ギヤ218aと、回転機連結ギヤ218aと常時噛み合うカウンタギヤ218bと、から構成されている。チェーン220は、ドライブギヤ212とドリブンギヤ216とを動力伝達可能に連結する部材である。
TF入力軸204は、変速機出力軸54と動力伝達可能に連結されている。TF出力軸208は、リヤプロペラシャフト32と動力伝達可能に連結されている。TF出力軸214は、フロントプロペラシャフト30と動力伝達可能に連結されている。ドリブンギヤ216は、TF出力軸214に相対回転不能に固定されている。カウンタギヤ218bは、中間軸210に相対回転不能に固定されている。
差動装置206は、シングルピニオン型の遊星歯車装置で構成されており、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備える。サンギヤSは、中間軸210に相対回転不能に固定されている。したがって、サンギヤSには、連結ギヤ対218を介してTF用回転機MGFが接続されている。キャリアCAは、TF出力軸208に相対回転不能に固定されている。リングギヤRは、TF用ブレーキBF1を介して選択的にトランスファケース202に係合される。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に係合される。なお、サンギヤS、キャリアCA、リングギヤRは、本発明における「第1回転要素」、「第2回転要素」、「第3回転要素」にそれぞれ相当する。
番号m1のEV(FR)ハイモードでは、トランスファ200の変速比γtf(=サンギヤSの回転速度/キャリアCAの回転速度)は、「1」となり、トランスファ200ではハイギヤ段が形成される。一方、番号m2のEV(FR)ローモードでは、変速比γtfは、サンギヤSの歯数とリングギヤRの歯数とに応じて「1」よりも大きくなり、トランスファ200ではローギヤ段が形成される。このようにハイギヤ段又はローギヤ段が形成されたトランスファ200において、TF用回転機MGFからの動力が後輪16側へ伝達される。このようにEV(FR)ハイモード及びEV(FR)ローモードでは、トランスファ200は、ハイギヤ段とローギヤ段とが選択的に形成される変速機としても機能する。以下、EV(FR)ハイモード及びEV(FR)ローモードについて、特に区別しない場合は単にEV(FR)モードという。
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の全てがTM用回転機MGMでの発電に用いられ、且つTF用回転機MGFによって車両8が駆動される場合、EV(FR)モードによって、「シリーズ運転モード」が駆動モードとして実現される。
番号m3のH4_トルクスプリットモードは、例えばトランスファ200がハイギヤ段と同等の状態で、第1動力源PU1から機械式パスを経てTF出力軸208に入力されたトルクをTF用回転機MGFの反力トルクによってサンギヤSにて受け持つモードであって、TF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。H4_トルクスプリットモードでは、TF用回転機MGFは回生させられる。TF用回転機MGFの回生によって発電された電力は、例えばバッテリ24に充電される。
番号m4のH4_LSDモードは、H4_トルクスプリットモードにおけるTF用回転機MGFの反力トルクの作用に替えて、TF用クラッチCF1のスリップ状態による差動装置206の差動作用の制限により、TF用クラッチCF1のトルク容量に応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。
このようにH4_トルクスプリットモード及びH4_LSDモードでは、トランスファ200は、第1動力源PU1からTF出力軸208に入力されたトルクの一部をTF出力軸214に分配するトルク分配装置である。
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の全てがトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸204に入力される場合、H4_トルクスプリットモード又はH4_LSDモードによって、「電気パス無しのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の一部がトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸204に入力され、エンジン12からの動力の残余がTM用回転機MGMでの発電に用いられ、且つTF用回転機MGFによって車両8が駆動される場合、H4_LSDモードによって、「電気パス有りのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。
番号m5のH4_Lockモードは、差動装置206がデフロック状態とされた状態で、第1動力源PU1からTF出力軸208に入力されたトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。番号m6のL4_Lockモードは、トランスファ200がデフロック状態とされ且つローギヤ段とされた状態で、第1動力源PU1から中間軸210を介して差動装置206のサンギヤSへ入力されたトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の全てがトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸204に入力される場合、H4_Lockモード又はL4_Lockモードによって、「電気パス無しのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。
例えば、エンジン12が作動状態とされ、エンジン12からの動力の一部がトルクコンバータ48及び自動変速機50を介してTF入力軸204に伝達され、エンジン12からの動力の残余がTM用回転機MGMでの発電に用いられ、且つTF用回転機MGFによって車両8が駆動される場合、H4_Lockモード又はL4_Lockモードによって、「電気パス有りのパラレル運転モード」が駆動モードとして実現される。
本実施例における電子制御装置130は、前述の実施例1におけるEV(FF)ローモードの替わりにEV(FR)ローモードに対して、及び、前述の実施例1におけるEV(FF)ハイモードの替わりにEV(FR)ハイモードに対して、それぞれ同様の制御を実行する。