(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178905
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20231211BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20231211BHJP
F21S 43/15 20180101ALI20231211BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20231211BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20231211BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231211BHJP
F21Y 105/10 20160101ALN20231211BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20231211BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21S43/15
F21V5/00 510
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y105:10
F21W103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091900
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰宏
(57)【要約】
【課題】光源からの光を効率良く利用しつつ、所望の明るさ分布の照射パターンを形成できる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、複数の光源(24、25、26)と、そこからの光を集光する集光レンズ13と、そこで集光された光を部分的に通す複数のスリット部36が設けられた遮光部材(14)と、そこを通した光を投影して複数の照射図柄Diを有する照射パターンPiを形成する投影レンズ15と、を備える。その光源(24、25、26)は、スリット部36に個別に対応して設けられ、集光レンズ13は、スリット部36に個別に対応する複数のレンズ部(43、44、45)が重ねられ、複数のレンズ部(43、44、45)の間には光を低減する減光部(71、72)が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、
複数の前記光源からの光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズで集光された光を部分的に通す複数のスリット部が設けられた遮光部材と、
前記遮光部材を通した光を投影することにより、複数の前記スリット部に対応する複数の照射図柄を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記光源は、前記スリット部に個別に対応して設けられ、
前記集光レンズは、前記スリット部に個別に対応する複数のレンズ部が重ねられ、複数の前記レンズ部の間には光を低減する減光部が設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記減光部は、前記集光レンズにおいて、複数の前記光源側となる裏面における複数の前記レンズ部の間に減光処理が施されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記減光部は、前記集光レンズにおいて、前記遮光部材側となる表面における複数の前記レンズ部の間に減光処理が施されて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
複数の前記光源は、順次点灯されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
複数の前記スリット部は、前記照射パターンにおいて離れた位置に投影される第1照射図柄に対応する第1スリット部と、前記照射パターンにおいて前記第1照射図柄よりも近い位置に投影される第2照射図柄に対応する第2スリット部と、前記照射パターンにおいて前記第2照射図柄よりも近い位置に投影される第3照射図柄に対応する第3スリット部と、を有し、
複数の前記レンズ部は、前記第1スリット部に対向する第1レンズ部と、前記第2スリット部に対向する第2レンズ部と、前記第3スリット部に対向する第3レンズ部と、を有し、
前記第1レンズ部は、対応する前記光源と対向する第1対向入射面部と、前記第1対向入射面部を取り巻く第1傾斜入射面部と、前記第1傾斜入射面部を取り巻く第1反射面と、を有し、
前記第2レンズ部は、対応する前記光源と対向する第2対向入射面部と、前記第2対向入射面部を取り巻く第2傾斜入射面部と、前記第2傾斜入射面部を取り巻く第2反射面と、を有し、
前記第3レンズ部は、対応する前記光源からの光を集光する凸レンズとされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第3レンズ部では、前記第2レンズ部側に位置する底面にも減光処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
複数の前記レンズ部は、一体とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、車両の周辺の路面に照射パターンを形成するものが考えられている(例えば、特許文献1等参照)。この従来の車両用灯具は、光源からの光をシェード(遮光部材)のスリットを通して投影することにより照射パターンを形成して、見た者に何らかの意図を知らせることができる。この従来の車両用灯具は、光源からの光をライトガイドによりシェードに導くことで、光源からの光を効率良く利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の車両用灯具は、光源からの光をライトガイド内で拡散してシェード上での配光(光束)分布を均一的なものとしているので、シェード上における配光分布を調整することが困難であり、形成する照射パターンを所望の明るさ分布とすることが困難となる。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、光源からの光を効率良く利用しつつ、所望の明るさ分布の照射パターンを形成できる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、複数の光源と、複数の前記光源からの光を集光する集光レンズと、前記集光レンズで集光された光を部分的に通す複数のスリット部が設けられた遮光部材と、前記遮光部材を通した光を投影することにより、複数の前記スリット部に対応する複数の照射図柄を有する照射パターンを形成する投影レンズと、を備え、前記光源は、前記スリット部に個別に対応して設けられ、前記集光レンズは、前記スリット部に個別に対応する複数のレンズ部が重ねられ、複数の前記レンズ部の間には光を低減する減光部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、光源からの光を効率良く利用しつつ、所望の明るさ分布の照射パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る実施例1の車両用灯具が車両に搭載されてそれぞれ照射パターンを形成した様子(全灯)を示す説明図である。
【
図2】車両用灯具の構成を分解して示す説明図である。
【
図3】光源部における第1光源、第2光源、第3光源の構成および位置関係を示す説明図である。
【
図4】集光レンズを光源部側から見た様子を示す説明図である。
【
図5】
図4に示すI-I線に沿って得られた断面で示す説明図である。
【
図6】集光レンズをシェード側から見た様子を示す説明図である。
【
図7】集光レンズを光源部側であって上下方向の斜め下側から見た様子を示す説明図である。
【
図8】集光レンズにおいて、第2光源からの光が第1レンズ部と第2レンズ部との間を通り迷光となる様子を示す説明図である。
【
図9】第2レンズ部を通した第2光源からの光がシェードの第2スリット部に配光分布を形成する際に、
図8に示す迷光が第3スリット部に意図しない配光分布(迷光領域)を形成する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の実施例1について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1では、車両用灯具10が設けられている様子の把握を容易とするために、車両1に対して車両用灯具10を強調して示しており、必ずしも実際の様子とは一致するものではない。また、
図9では、シェード14(そのシェード部33の照射スリット35)上に第2光源25からの光により第2スリット部362に第2配光領域が形成されるとともに、第3スリット部363に意図しない配光領域(迷光領域)が形成される様子の把握を容易とするために、シェード部33(その各スリット部36)の周辺のみを示している。その
図9では、それぞれが示す各領域において、光束(光量)の高さに応じた領域を破線で囲んでおり、その領域の中心に向かうほど光束が高くなる等高線のように配光(光束)分布を示している。
【実施例0010】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、
図1から
図9を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、
図1に示すように、自動車等の車両1の灯具として用いられるもので、車両1に設けられる前照灯とは別に、車両1の前方の周辺の路面2に照射パターンPiを形成すべく車両1の前部に設けられる。その車両1の前方の周辺とは、車両1に設けられる前照灯により照射される前照灯領域よりも車両1に近い近接領域を必ず含むものであり、部分的に前照灯領域を含む場合もある。なお、車両用灯具10は、車両1の後方や側方の周辺の路面2にも照射パターンPiを形成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0011】
各車両用灯具10は、実施例1では、車両1の前端における路面2よりも高い位置に配置されており、投影光軸Lp(
図2等参照)が路面2に対して傾斜した状態で設けられる。2つの車両用灯具10は、取り付けられる位置および照射パターンPiを形成する位置が異なることを除くと、基本的に等しい構成とされている。以下の説明では、各車両用灯具10において、光を照射(投影)する方向となる投影光軸Lpが伸びる方向を光軸方向(図面ではZとする)とし、光軸方向を水平面に沿う状態とした際の鉛直方向を上下方向(図面ではYとする)とし、光軸方向および上下方向に直交する方向(水平方向)を幅方向(図面ではXとする)とする(
図2等参照)。
【0012】
車両用灯具10は、
図2に示すように、設置台部11に、光源部12と集光レンズ13とシェード14と投影レンズ15とが取り付けられ、単一の投射光学系とされて、プロジェクタタイプの路面投影ユニットを構成する。設置台部11は、光源部12が設けられる箇所であり、熱伝導性を有するアルミダイカストや樹脂で形成され、全体として光源部12で発生する熱を外部に逃がすヒートシンクとして機能する。設置台部11は、ベース部21と、一対の取付腕部22と、を有する。
【0013】
ベース部21は、光軸方向に直交する平板状とされ、真ん中に光源取付個所に光源部12が取り付けられる。この光源取付個所は、平坦な面とされており、複数のネジ孔と複数の位置決め突起とが設けられている。また、ベース部21では、複数の放熱フィンが設けられており、光源取付個所に設置された光源部12で発生した熱を主に各放熱フィンから外部に放熱する。
【0014】
一対の取付腕部22は、光源部12の幅方向での両外側で対を為して設けられ、ベース部21から光軸方向の前方側に突出されている。両取付腕部22は、光軸方向の前方側の端部が光軸方向に直交する平面とされている。各端部には、位置決め突起22aとネジ孔22bとが設けられている。位置決め突起22aは、端部における上下方向の下部に設けられ、光軸方向の前方側に突出されている。ネジ孔22bは、端部における上下方向の上部に設けられ、ネジ23の捻じ込みによる集光レンズ13とシェード14と投影レンズ15との固定が可能とされている。
【0015】
光源部12は、第1光源24と、第2光源25と、第3光源26(
図3等参照)と、コネクタ端子27と、それらが実装される基板28と、を有する。この3つの光源(24、25、26)は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成されている。3つの光源(24、25、26)は、実施例1では、出射光軸を中心とするランバーシアン分布でアンバー色の光(アンバー色光)を出射する。なお、3つの光源(24、25、26)は、色(波長帯域)や、分布の態様や、色の数等は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0016】
実施例1の3つの光源(24、25、26)は、
図3等に示すように、投影光軸Lpを挟んで上下方向で並列して設けられ、第1光源24が投影光軸Lpよりも下側に位置され、第2光源25が投影光軸Lpよりも上側に位置され、第3光源26が第2光源25よりも上側に位置されている。第1光源24は、幅方向に長尺な矩形状とされており、2つのLEDチップ24aと、それぞれを覆う蛍光体24bと、を有する。第2光源25は、略正方形状とされており、1つのLEDチップ25aと、それぞれを覆う蛍光体25bと、を有する。第3光源26は、略正方形状とされており、1つのLEDチップ26aと、それぞれを覆う蛍光体26bと、を有する。3つの光源(24、25、26)は、各LEDチップ24a、25a、26aからの光を蛍光体24b、25b、26bを通すことでアンバー色光として出射する。このため、第1光源24では、蛍光体24bが第1発光面として機能し、第2光源25では、蛍光体25bが第2発光面として機能し、第3光源26では、蛍光体26bが第3発光面として機能する。
【0017】
コネクタ端子27は、
図2に示すように、基板28の配線パターンと電気的に接続されており、点灯制御回路に接続された接続コネクタが着脱自在とされている。コネクタ端子27は、基板28の上下方向の下側の端部に設けられており、接続コネクタの着脱が容易とされている。コネクタ端子27は、接続コネクタが取り付けられることで、配線パターンを介する点灯制御回路から各光源(24、25、26)への電力の供給を可能とする。
【0018】
基板28は、ガラスエポキシ基板等の樹脂材料で形成された板状とされ、各光源(24、25、26)が実装される。基板28では、設置台部11のベース部21の光源取付個所の各ネジ孔に対応して複数のネジ通し孔が設けられるとともに、光源取付個所の各位置決め突起に対応して複数の位置決め孔が設けられている。この基板28は、各位置決め孔に対応する位置決め突起が通されつつ、各ネジ通し孔に通されたネジ29が対応するネジ孔に捻じ込まれることにより、ベース部21に取り付けられる。これにより、基板28は、実装された各光源(24、25、26)を、集光レンズ13に対向させる。基板28は、コネクタ端子27を介して点灯制御回路から電力を適宜供給して各光源(24、25、26)を適宜点灯させる。
【0019】
集光レンズ13は、各光源(24、25、26)から出射された光を集光するものであり、シェード14上における後述する各スリット部36の周辺、すなわちシェード14上において全てのスリット部36を含みつつ各スリット部36が設けられた領域に光を集める。集光レンズ13は、各光源(24、25、26)からの光を集光する集光レンズ本体31と、そこから幅方向に突出された一対の集光レンズ取付片部32と、を有する。この集光レンズ本体31と集光レンズ取付片部32とは、一体とされて形成されており、実施例1では型枠を用いた樹脂成形により一体に形成されている。集光レンズ本体31は、シェード14上に所定の配光領域を形成すべく光学特性が設定されている。これについては、後述する。
【0020】
両集光レンズ取付片部32は、光軸方向に直交する板状とされ、設置台部11のベース部21の両取付腕部22の端部に宛がうことが可能とされている。各集光レンズ取付片部32には、集光レンズ位置決め孔32aと集光レンズネジ通し孔32bとが設けられている。各集光レンズ位置決め孔32aは、集光レンズ取付片部32が端部に宛がわれた状態で、その位置決め突起22aを嵌め入れることができる。各集光レンズネジ通し孔32bは、集光レンズ取付片部32が端部に宛がわれた状態で、そのネジ孔22bに捻じ込まれるネジ23を通すことができる。集光レンズ13は、各集光レンズ位置決め孔32aに対応する位置決め突起22aが通されつつ、各集光レンズネジ通し孔32bに通された各ネジ23が対応するネジ孔22bに捻じ込まれることにより、設置台部11の両取付腕部22(その端部)に取り付けられる。
【0021】
シェード14は、集光レンズ13で集光された各光源(24、25、26)からの光を後述する照射スリット35から部分的に通すことで照射パターンPiを形成する遮光部材の一例である。その照射パターンPiは、
図1に示すように、3つの照射図柄Diが車両1から遠ざかる方向に略等しい間隔で整列されている。ここで、各照射図柄Diは、個別に示す際には、車両1から最も遠いものを第1照射図柄Di1とし、そこから車両1に近づくにつれて順に、第2照射図柄Di2、第3照射図柄Di3とする。実施例1では、各照射図柄Diは、車両1側を底辺とする略二等辺三角形とされており、互いに略等しい大きさで等しい形状とされている。
【0022】
この照射パターンPiは、投影面となる路面2上において、第1照射図柄Di1と第2照射図柄Di2と第3照射図柄Di3とが、車両1から遠ざかるように同一直線上に並べて形成されている。このため、照射パターンPiは、3つの照射図柄Diが並べられることで、その並べられた方向を指し示す矢印のように見せることができる。この照射パターンPiとしての矢印が指し示す方向すなわち各照射図柄Diの略二等辺三角形の頂点が並ぶ方向を矢印方向Daとし、その指し示す側(第1照射図柄Di1側)を矢印方向Daの前側とする。この3つの照射図柄Diからなる照射パターンPiは、シェード14により形成される。
【0023】
シェード14は、
図2に示すように、基本的に光の透過を阻む板状の部材で形成されており、シェード部33と一対のシェード取付片部34とを有する。シェード取付片部34は、シェード部33から幅方向の両側に突出しており、設置台部11の両取付腕部22の端部に取り付けられた集光レンズ13の各集光レンズ取付片部32に宛がうことが可能とされている。各シェード取付片部34には、シェード位置決め孔34aとシェードネジ通し孔34bとが設けられている。各シェード位置決め孔34aは、シェード取付片部34が集光レンズ取付片部32に宛がわれた状態で、そこに通された位置決め突起22aを嵌め入れることが可能とされている。各シェードネジ通し孔34bは、シェード取付片部34が集光レンズ取付片部32に宛がわれた状態で、その集光レンズネジ通し孔32bに通されるネジ23を通すことが可能とされている。シェード14は、各シェード位置決め孔34aに対応する位置決め突起22aが通されつつ、各シェードネジ通し孔34bに通された各ネジ23が対応するネジ孔22bに捻じ込まれることにより、集光レンズ13を介して設置台部11の両取付腕部22に取り付けられる。シェード14は、シェード取付片部34が両取付腕部22に取り付けられることで、シェード部33の中心位置が投影光軸Lp上に位置される。
【0024】
シェード部33は、板状の部材が部分的に切り欠かれて貫通された照射スリット35が設けられている。照射スリット35は、集光レンズ13(その集光レンズ本体31)で集光された各光源(24、25、26)からの光を部分的に通すことで、投影する照射パターンPiを所定の形状に成形する。照射スリット35は、照射パターンPiに対応されており、実施例1では3つのスリット部36で構成されている。
【0025】
この3つのスリット部36は、3つの照射図柄Diに一対一で対応している。その各スリット部36は、投影レンズ15がシェード14(照射スリット35)を反転させて路面2に投影することから、照射パターンPiの各照射図柄Diの位置関係に対して、投影光軸Lpを中心として回転対称な位置関係とされている。このため、各スリット部36は、上下方向の最も下側の第1スリット部361が照射パターンPiの第1照射図柄Di1に対応し、その上の第2スリット部362が第2照射図柄Di2に対応し、その上の第3スリット部363が第3照射図柄Di3に対応する。
【0026】
各スリット部36は、路面2上で各照射図柄Diが狙った大きさでかつ狙った位置関係となるように、シェード部33上での位置および大きさが設定されている。実施例1のシェード14では、上下方向において、第3スリット部363が投影光軸Lpよりも上方に設けられ、投影光軸Lp上に第2スリット部362が設けられ、その下に第1スリット部361が設けられている(
図9参照)。このシェード14(照射スリット35の各スリット部36)を透過した光は、投影レンズ15により路面2に投影される。
【0027】
その各スリット部36は、それぞれが対応する各照射図柄Diと同様に略二等辺三角形状とされており、各照射図柄Diに対して上下左右が反転されている。3つのスリット部36は、路面2上で各照射図柄Diが上記した
図1に示す大きさで略等間隔となるように、それぞれ路面2までの距離に応じて大きさおよび間隔が設定されている。詳細には、車両用灯具10は、路面2に対して投影光軸Lpが傾斜して設けられることでシェード14および投影レンズ15から路面2までの距離が異なるので、投影レンズ15により路面2上に投影されると各スリット部36(そこを透過した光である各照射図柄Di)がその距離に応じた大きさおよび間隔とされる。具体的には、実施例1では、第1スリット部361が最も小さいとともに高さ方向に縮められた略二等辺三角形とされ、第2スリット部362が第1スリット部361よりも大きな略二等辺三角形とされ、第3スリット部363が第2スリット部362よりも大きな略二等辺三角形で底面が少し膨らむように湾曲された形状とされている。そして、各スリット部36は、それぞれ対応する照射図柄Diよりも幅方向に拡げられており、第1スリット部361と第2スリット部362との間隔よりも、第2スリット部362と第3スリット部363との間隔の方が大きくされている。
【0028】
このように、3つのスリット部36は、各照射図柄Diとは異なる大きさとされるとともに異なる間隔とされている。各スリット部36では、対応する照射図柄Diに対する縮小比が、第1スリット部361が最も小さくされており、通った光が路面2上に投影される際に最も大きな拡大率で拡大されて第1照射図柄Di1を形成する。また、各スリット部36では、対応する照射図柄Diに対する縮小比が、第3スリット部363が最も大きくされており、通った光が路面2上に投影される際に最も小さな拡大率で拡大されて第3照射図柄Di3を形成する。
【0029】
投影レンズ15は、シェード14を通した光を投影する投影レンズ本体37と、そこから幅方向に突出された一対の投影レンズ取付片部38と、を有する。投影レンズ本体37は、光軸方向で見て円形状の凸レンズとされており、実施例1では、入射面および出射面が凸面とされた自由曲面とされている。投影レンズ本体37は、シェード14の照射スリット35(その各スリット部36)を投影することで、投影光軸Lpに対して傾斜する路面2上に照射パターンPiを形成する(
図1参照)。なお、入射面と出射面とは、投影レンズ本体37を凸レンズとするものであれば、凸面でもよく凹面でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0030】
両投影レンズ取付片部38は、光軸方向に直交する板状とされ、設置台部11の両取付腕部22の端部に取り付けられたシェード14の各シェード取付片部34に宛がうことが可能とされている。各投影レンズ取付片部38には、投影レンズ位置決め孔38aと投影レンズネジ通し孔とが設けられている。各投影レンズ位置決め孔38aは、投影レンズ取付片部38がシェード取付片部34に宛がわれた状態で、そこに通された位置決め突起22aを嵌め入れることができる。各投影レンズネジ通し孔は、投影レンズ取付片部38がシェード取付片部34に宛がわれた状態で、そのシェードネジ通し孔34bに通されるネジ23を通すことができる。投影レンズ15は、各投影レンズ位置決め孔38aに対応する位置決め突起22aが通されつつ、各投影レンズネジ通し孔に通された各ネジ23が対応するネジ孔22bに捻じ込まれることにより、設置台部11の両取付腕部22(その端部)に取り付けられる。これにより、投影レンズ15は、投影レンズ本体37の光軸である投影光軸Lpが所定の方向に向けられて、車両用灯具10の投影光軸Lpの向きが設定される。
【0031】
次に、集光レンズ13の集光レンズ本体31の構成について、主に
図4から
図7を用いて説明する。この集光レンズ本体31(集光レンズ13)は、シェード14に対向された表面41と、光源部12に対向された裏面42と、を有する。この集光レンズ本体31は、第1光源24に対応する第1レンズ部43と、第2光源25に対応する第2レンズ部44と、第3光源26に対応する第3レンズ部45と、を有する。実施例1の集光レンズ13(集光レンズ本体31)では、第1レンズ部43の上に第2レンズ部44が載せられ、その第2レンズ部44の上に第3レンズ部45が載せられた状態で、その第1レンズ部43と第2レンズ部44と第3レンズ部45とが一体に形成されている。実施例1の集光レンズ13は、光源部12すなわち各光源(24、25、26)から出射された光により、シェード14の各スリット部36を適切に照射すべく、第1レンズ部43と第2レンズ部44と第3レンズ部45とにおける表面41側および裏面42側の形状(光学的)が設定されている。
【0032】
第1レンズ部43は、第1光源24と光軸方向で対向(第1光源24の出射光軸上に位置)されており、第1光源24からの光をシェード14の第1スリット部361が設けられた領域に光を集める。その第1レンズ部43の裏面42は、
図4、
図5、
図7等に示すように、中央部分が集光レンズ13の内側(光源部12とは反対側)に凹んでおり、その中央で外側に凸に湾曲された第1対向入射面部51と、それを取り巻く第1傾斜入射面部52と、その第1傾斜入射面部52を円錐台状に取り巻く第1反射面53と、が設けられている。
【0033】
第1対向入射面部51は、光軸方向で第1光源24と対向してその出射光軸上に設けられており、後側の焦点(後側焦点)の近傍に第1光源24が位置される。第1対向入射面部51は、第1光源24から出射される光を第1レンズ部43の軸線と略平行に進行する平行光として第1レンズ部43内に入射させ、表面41の後述する第1内側出射面部55へ向けて進行させる。なお、この平行光(平行な光)とは、光が第1対向入射面部51を経ることでコリメートされた状態の光のことをいう。
【0034】
第1傾斜入射面部52は、第1光源24側へと突出して設けられており、第1光源24からの光のうち、第1対向入射面部51へと進行しないものを第1レンズ部43内に入射させる。第1反射面53は、第1傾斜入射面部52から集光レンズ13内に入射した光が進行する位置に設けられている。第1反射面53は、第1傾斜入射面部52から入射した光を反射し、第1レンズ部43の軸線と略平行に進行する平行光として、表面41の後述する第1外側出射面部56へ向けて進行させる。なお、第1反射面53は、全反射を利用して光を反射してもよく、蒸着や塗装等によりアルミや銀等を接着させることで光を反射してもよい。これらのことから、裏面42は、第1光源24から出射された光を、効率良く入射させて表面41へと導く。
【0035】
このため、第1レンズ部43では、第1対向入射面部51を経た光が直接表面41側に向かう直射光となるとともに、第1傾斜入射面部52を経て第1反射面53で反射された光が内部で反射されてから表面41側に向かう反射光となる。この第1レンズ部43は、このような構成とされているので、対応する第1光源24から出射された光を効率良く利用することができる。
【0036】
この第1レンズ部43では、表面41側に入射された光を前後方向の前側に出射させる第1出射面54が設けられている。第1出射面54は、
図6等に示すように、正面視して上側の一部を切り欠いた円形状とされており、光学的な設定の異なる第1内側出射面部55と第1外側出射面部56とを有する。第1内側出射面部55は、第1出射面54において第1対向入射面部51を経た光が進行する領域に設けられ、正面視して略円形状とされている。第1内側出射面部55は、第1外側出射面部56よりも集光レンズ13における外側(投影レンズ15側(前後方向の前側))に突出している。この第1内側出射面部55は、第1光源24から第1対向入射面部51を経た光を屈折させることで、シェード14の第1スリット部361上において、光学特性に応じた位置に第1光源24の複数の配光像を適宜重ねて形成する。この光学特性は、第1対向入射面部51とともに第1内側出射面部55の曲率(面形状)を場所毎に調整することで設定でき、実施例1ではその曲率を漸次的に変化させて設定されている。
【0037】
第1外側出射面部56は、第1内側出射面部55を幅方向で挟む領域および第1内側出射面部55の下側の領域を取り囲むように設けられており、第1光源24から第1傾斜入射面部52を経て第1反射面53で反射された光が進行する領域に位置されている。第1外側出射面部56は、第1内側出射面部55よりも集光レンズ13における内側(前後方向の後側)に位置して(凹んで)いる。第1外側出射面部56は、第1光源24から第1傾斜入射面部52を経て第1反射面53で反射された光を屈折させることで、シェード14の第1スリット部361上において、光学特性に応じた位置に第1光源24の複数の配光像を適宜重ねて形成する。この光学特性は、第1反射面53とともに第1外側出射面部56の曲率(面形状)を場所毎に調整することで設定でき、実施例1ではそれらの曲率が漸次的に変化されて設定されている。
【0038】
この第1レンズ部43は、例えば、第1内側出射面部55を経た光により第1スリット部361の全域を明るくするような配光領域を形成し、第1外側出射面部56を経た光により第1スリット部361の頂点近傍を明るくする配光領域を形成する。そして、第1レンズ部43は、第1内側出射面部55を経た光と、第1外側出射面部56を経た光と、を重ね合わせることにより、第1スリット部361の全域を明るくしつつ、第1スリット部361の頂点近傍を最も高い光束(光量)とする第1配光領域を形成する。なお、第1レンズ部43は、対応する第1照射図柄Di1を適切に形成する観点から第1スリット部361を明るくする配光領域を形成するものであれば、第1内側出射面部55と第1外側出射面部56とが形成する配光領域における明るさの分布や形状等は適宜設定すればよく、実施例1に限定されない。
【0039】
第2レンズ部44は、第2光源25と光軸方向で対向(第2光源25の出射光軸上に位置)されており、第2光源25からの光をシェード14の第2スリット部362が設けられた領域に光を集める。この第2レンズ部44は、対応するスリット部36の大きさや形状が異なることに起因する細かな光学的な設定を除くと、それぞれの裏面42および表面41における基本的な構成や第2スリット部362に対する集光の基本的な概念が等しくされている。このため、以下では、第2レンズ部44の構成および光学的な設定について、簡単に説明する。
【0040】
その第2レンズ部44の裏面42は、
図4、
図5、
図7等に示すように、中央部分が集光レンズ13の内側(光源部12とは反対側)に凹んでおり、その中央で外側に凸に湾曲された第2対向入射面部57と、それを取り巻く第2傾斜入射面部58と、その第2傾斜入射面部58を円錐台状に取り巻く第2反射面59と、が設けられている。第2対向入射面部57は、光軸方向で第2光源25と対向してその出射光軸上に設けられており、第2光源25から出射される光を第2レンズ部44の軸線と略平行に進行する平行光として集光レンズ13内に入射させ、表面41の後述する第2内側出射面部62へ向けて進行させる。第2傾斜入射面部58は、第2光源25側へと突出して設けられており、第2光源25からの光のうち、第2対向入射面部57へと進行しないものを第2レンズ部44内に入射させる。第2反射面59は、第2傾斜入射面部58から集光レンズ13内に入射した光を反射し、第2レンズ部44の軸線と略平行に進行する平行光として、表面41の後述する第2外側出射面部63へ向けて進行するように集光させる。
【0041】
この第2レンズ部44では、表面41側に入射された光を前後方向の前側に出射させる第2出射面61が設けられている。第2出射面61は、正面視して幅方向に長尺な略矩形状とされており、光学的な設定の異なる第2内側出射面部62と第2外側出射面部63とを有する。第2内側出射面部62は、第2出射面61において第2対向入射面部57を経た光が進行する領域に設けられ、正面視して略円形状とされ、第2外側出射面部63よりも集光レンズ13における外側(投影レンズ15側(前後方向の前側))に突出している。第2外側出射面部63は、第2内側出射面部62を幅方向で挟む領域に設けられており、第2光源25から第2傾斜入射面部58を経て第2反射面59で反射された光が進行する領域に位置されて、第2内側出射面部62よりも集光レンズ13における内側(前後方向の後側)に位置して(凹んで)いる。
【0042】
この第2レンズ部44は、例えば、第2内側出射面部62を経た光により、第2スリット部362の全域を明るくするような配光領域を形成し、第2外側出射面部63を経た光により第2スリット部362の頂点近傍を明るくする配光領域を形成する。そして、第2レンズ部44は、第2内側出射面部62を経た光と、第2外側出射面部63を経た光と、を重ね合わせることにより、第2スリット部362の全域を明るくしつつ、第2スリット部362の頂点近傍を最も高い光束(光量)とする第2配光領域AL(
図9参照)を形成する。なお、第2レンズ部44は、対応する第1照射図柄Di1を適切に形成する観点から第2スリット部362を明るくする配光領域を形成するものであれば、第2内側出射面部62と第2外側出射面部63とが形成する配光領域における明るさの分布や形状等は適宜設定すればよく、実施例1に限定されない。
【0043】
第3レンズ部45は、
図4から
図7等に示すように、光軸方向で正面視して幅方向に長尺な略長方形状とされた凸レンズとされ、全体として第3光源26から出射された広がりのある光を、投影光軸Lpと平行に近い状態に集光してシェード部33へと進行させる。この第3レンズ部45は、第3光源26に対向された第3入射面64と、その反対側に向けられた第3出射面65と、を有する。第3レンズ部45は、実施例1では、第3入射面64および第3出射面65が凸面とされた自由曲面とされている。なお、第3入射面64と第3出射面65とは、第3レンズ部45を凸レンズとするものであれば、凸面でもよく凹面でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0044】
第3入射面64は、光軸方向で第3光源26と対向しており、後側の焦点(後側焦点)の近傍に第3光源26が位置される。第3入射面64は、第3光源26から出射される光を第3レンズ部45の軸線と略平行に進行する平行光として第3レンズ部45内に入射させる。第3出射面65は、第3入射面64と反対側に設けられており、第3入射面64を経た光を屈折させることで、拡散しつつ前後方向の前側へ向けて進行させる。第3出射面65は、第3光源26から第3入射面64を経た光を照射することで、シェード14(シェード部33)上において、光学特性に応じた位置に第3光源26の複数の配光像を適宜重ねて形成する。この光学特性は、第3入射面64とともに第3出射面65の曲率(面形状)を場所毎に調整することで設定でき、実施例1ではその曲率を漸次的に変化させて設定されている。
【0045】
この第3出射面65は、第3光源26から出射されて第3入射面64を経た光を適宜屈折させることで、シェード14の第3スリット部363の全域を略等しい光束(光量)とする第3配光領域を形成する。ここで、全域を略等しい光束とするとは、少なくとも上記した第1配光領域や第2配光領域ALよりも光束の変化が少ないことをいい、好適には略均一な光束であることをいう。実施例1の第3配光領域は、第1配光領域や第2配光領域ALよりも光束が低いものとされている。
【0046】
この集光レンズ13は、第1レンズ部43により第1光源24からの光で第1スリット部361に第1配光領域を形成し、第2レンズ部44により第2光源25からの光で第2スリット部362に第2配光領域ALを形成し、第3レンズ部45により第3光源26からの光で第3スリット部363に第3配光領域を形成する。このため、集光レンズ13は、シェード14上において、第1スリット部361、第2スリット部362に対しては所定の抑揚(メリハリ(光束の高低差))を付けた所定の光束分布を形成でき、第3スリット部363に対しては第1スリット部361、第2スリット部362よりも低い均一な光束分布を形成できる。
【0047】
この集光レンズ13では、集光レンズ本体31において、第1減光部71と第2減光部72とが設けられている。この第1減光部71と第2減光部72とは、集光レンズ本体31において、各光源(24、25、26)からの光(光束)を弱めるまたは遮るもので、第1減光部71が第1レンズ部43と第2レンズ部44との間に位置され、第2減光部72が第2レンズ部44と第3レンズ部45との間に位置されている。
【0048】
実施例1では、第1減光部71が表面側第1減光部73と裏面側第1減光部74とを有し、第2減光部72が表面側第2減光部75と裏面側第2減光部76とを有する。この表面側第1減光部73は、集光レンズ本体31の表面41において、第1レンズ部43の第1出射面54と、第2レンズ部44の第2出射面61と、の間に減光処理が施されて形成されている。また、表面側第2減光部75は、集光レンズ本体31の表面41において、第2レンズ部44の第2出射面61と、第3レンズ部45の第3出射面65と、の間に減光処理が施されて形成されている。さらに、裏面側第1減光部74は、集光レンズ本体31の裏面42において、第1レンズ部43の第1対向入射面部51、第1傾斜入射面部52および第1反射面53と、第2レンズ部44の第2対向入射面部57、第2傾斜入射面部58および第2反射面59と、の間に減光処理が施されて形成されている。裏面側第2減光部76は、集光レンズ本体31の裏面42において、第2レンズ部44の第2対向入射面部57、第2傾斜入射面部58および第2反射面59と、第3レンズ部45の第3入射面64と、の間に減光処理が施されて形成されている。
【0049】
その減光処理は、黒色等の遮光性の塗料を塗布することにより遮光面とすることや、微細な光学素子やプリズム(凹凸)やシボ等を形成することにより散乱面とすることがあげられる。集光レンズ本体31では、表面41または裏面42における上記の位置に対して、幅方向に伸びつつ上下方向に所定の大きさの帯状の領域に対して上記の減光処理を施すことにより、第1減光部71と第2減光部72とが設けられている。ここで、第1減光部71と第2減光部72とは、上下方向での大きさが1mm以下とされており、実施例1では0.5mmとされている。
【0050】
加えて、実施例1では、第3レンズ部45において、第2レンズ部44側に位置する底面45aにも減光処理が施されて、第2減光部72の一部を構成する底面側第2減光部77が設けられている。底面45aは、上記のように第3レンズ部45が凸レンズとされて第3入射面64が凸面とされた自由曲面とされているのに対して、第2レンズ部44が第2対向入射面部57と第2傾斜入射面部58と第2反射面59とを有していることにより、互いの形状の差異によって形成されている(
図6参照)。そして、この底面45aは、第2光源25の斜め前方上側に位置することから、第2光源25からの直接進行してきた光を第3レンズ部45内に入射させる可能性がある。このため、実施例1では、第3レンズ部45の底面45aにも減光処理を施して底面側第2減光部77を形成している。
【0051】
次に、車両用灯具10の作用について説明する。車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板28から各光源(24、25、26)に供給することで、それらを個別にまたは順次または同時に点灯および消灯できる。各光源(24、25、26)からの光は、集光レンズ13で集光されてシェード14を照射し、その照射スリット35(各スリット部36)を透過した後に、投影レンズ15により投影されることで、照射パターンPiを路面2上に形成する。その照射パターンPiは、上記の配光(光束)分布とされたシェード14の照射スリット35(その各スリット部36)を透過した光が、投影レンズ15により投影されることで、3つの照射図柄Diが矢印方向Daに並べられた位置に、個別にまたは順次または同時に形成される。
【0052】
車両用灯具10は、ターンランプと連動されており、左右いずれかのターンランプが点灯されると、その点灯された側に設けられたものの各光源(24、25、26)が点灯されて、照射パターンPiを路面2上に形成する。実施例1では、最初に第3光源26が点灯され、次に第3光源26の点灯が維持されたまま第2光源25が点灯され、次に第3光源26および第2光源25の点灯が維持されたまま第1光源24が点灯され、次に各光源(24、25、26)が一斉に消灯され、以降はこれを繰り返す。これにより、照射パターンPiは、第3照射図柄Di3、第2照射図柄Di2、第1照射図柄Di1の順で点灯されて矢印方向Daに伸びていくように見せることができる。このため、車両用灯具10は、見通しの悪い路地から他の路地へと車両1が進行しようとしている場面において、他の路地にいる者が車両1を視認できない場合であっても、路面2上に形成された照射パターンPiを視認させることができる。加えて、車両1は、ハザードランプが点灯された場合には、左右の2つの車両用灯具10が同時に照射パターンPiを路面2上に上記のように形成するので、左右のターンランプのみを点滅させている場合と比較して、ハザードランプが点灯されていることをより確実に認識させることができる。
【0053】
ここで、先行技術文献に記載の従来の車両用灯具は、複数の光源に個別に対応させて複数のライトガイドを設けており、各光源からの光を効率良く利用している。その従来の車両用灯具は、各導光部材が内部で光を拡散させて光束分布が略均一とした光を出射させており、各導光部材を通した光でシェード(遮光部材)上を照射することで、シェード上の配光(光束)分布を略均一なものとしている。また、従来の車両用灯具は、シェード上において、ライトガイド毎に対応する光源からの光が導かれるので、光源毎に別々にシェード上に導いている。このため、従来の車両用灯具は、シェード上において、光束の低い領域の中において光束の変化を連続的としつつ部分的に光束の高い領域を形成することのように所望の配光分布を得るのが困難である。
【0054】
これに対して、車両用灯具10は、集光レンズ13において、3つの光源(24、25、26)に対して、それぞれからの光を集光する単一の第1レンズ部43と第2レンズ部44と第3レンズ部45とを設けている。その第1レンズ部43は、シェード14のシェード部33上において、対応する第1光源24からの光で、第1スリット部361の全域を明るくしつつ第1スリット部361の頂点近傍を最も明るくする第1配光領域を形成する。また、第2レンズ部44は、シェード14のシェード部33上において、対応する第2光源25からの光で、第2スリット部362の全域を明るくしつつ第2スリット部362の頂点近傍を最も明るくする第2配光領域ALを形成する。そして、第3レンズ部45は、シェード14のシェード部33上において、第1配光領域や第2配光領域ALよりも低く均一な光束で第3スリット部363の全域を明るくする第3配光領域を形成する。
【0055】
ここで、第3スリット部363は、照射パターンPiにおいて最も車両1に近くに位置する第3照射図柄Di3に対応しており、車両用灯具10からの距離が近い場所に投影されるので、見易い第3照射図柄Di3を形成するために、他の照射図柄Diよりも低い一様な光束とされることが望ましい。これは、以下のことによる。第3スリット部363は、第3照射図柄Di3に対応するものであることから、シェード部33上において大きな面積を有するものとなる。すると、第3スリット部363は、第1レンズ部43や第2レンズ部44のように光束の抑揚を付けた所定の光束分布とするレンズを用いて照射すると、全域に亘って照射することが困難となり、形成する第3照射図柄Di3において暗い箇所が生じる等の明るさのムラを生じさせて、適正な第3照射図柄Di3を形成できなくなる虞がある。これに対して、第1スリット部361と第2スリット部362とは、照射パターンPiにおいて車両1から離れた位置の第1照射図柄Di1、第2照射図柄Di2に対応しており、車両用灯具10からの距離が遠い場所に投影されるので、見易い第1照射図柄Di1、第2照射図柄Di2を形成するために、所定の抑揚(メリハリ(光束の高低差))を付けた光束分布とされることが望ましい。
【0056】
そして、車両用灯具10は、単一の集光レンズ13において各光源(24、25、26)に対して個別に対応させた第1レンズ部43と第2レンズ部44と第3レンズ部45とを設けることにより、シェード14上を所望の配光分布で照射できる。すなわち、車両用灯具10は、第1スリット部361、第2スリット部362に対しては第1レンズ部43、第2レンズ部44を用いて所定の抑揚のある光束分布の第1配光領域、第2配光領域ALを形成し、第3スリット部363に対しては第3レンズ部45を用いて一様な光束の第3配光領域を形成している。このため、車両用灯具10は、単一の集光レンズ13を用いても、シェード部33上において、抑揚のある所定の光束分布の箇所と、一様な光束の箇所と、を一緒に形成することができる。これにより、車両用灯具10は、第1照射図柄Di1、第2照射図柄Di2の先端中央を中心として明確なものにできるとともに、第3照射図柄Di3の全体を明確なものにでき、より適切な照射パターンPiを形成することができる。よって、車両用灯具10は、従来の車両用灯具と比較して、単一の集光レンズ13を用いる簡易な構成としつつ、シェード14上に形成する配光領域の配光分布の調整を容易とすることができ、所望の明るさ分布で見易い照射パターンPiを形成できる。
【0057】
ここで、車両用灯具10では、単一の集光レンズ13で各光源(24、25、26)に個別に対応させるために、集光レンズ13の集光レンズ本体31において、光学特性の異なる第1レンズ部43と第2レンズ部44と第3レンズ部45とを上下方向に重ねて一体的に設けている。すると、車両用灯具10では、各光源(24、25、26)からの光の一部が対応されたものとは異なるレンズ部(43、44、45)へと進行し、その光に起因してシェード14のシェード部33上に意図しない配光領域が形成される恐れがある。これについて、以下で説明する。
【0058】
先ず、集光レンズ13の集光レンズ本体31では、上記のように構成されていることから、基本的に、第1光源24からの光が第1レンズ部43(その第1対向入射面部51、第1傾斜入射面部52)に進行し、第2光源25からの光が第2レンズ部44(その第2対向入射面部57、第2傾斜入射面部58)に進行し、第3光源26からの光が第3レンズ部45(その第3入射面64)に進行する。しかしながら、各光源(24、25、26)は、光を出射する方向に所定の広がりのあることから、一部の光が対応するレンズ部に隣接するレンズ部へと向かう虞がある。この一例を
図8、
図9に示す。なお、
図8では、本願発明と同様の構成の集光レンズ13(集光レンズ本体31)を用いている。これは、集光レンズ13(集光レンズ本体31)であっても、第1減光部71や第2減光部72を設けていない場合には同様の問題が生じることによる。このため、以下の説明では、集光レンズ13(集光レンズ本体31)において、表面41の表面側第1減光部73および表面側第2減光部75と、裏面42の裏面側第1減光部74および裏面側第2減光部76と、を設けていない場合に生じ得る意図しない光を用いて説明する。
【0059】
図8に示す例では、第2光源25からの光の一部(以下では、迷光Sともいう)が、第2レンズ部44と第3レンズ部45との間(第2減光部72に相当する箇所)を通して、シェード14側へと進行した様子を示す。このような迷光Sは、第2レンズ部44の第2対向入射面部57や第2傾斜入射面部58と、第3レンズ部45の第3入射面64と、の間から集光レンズ本体31に入射する(迷光S1とする)。この迷光Sは、第2レンズ部44と第3レンズ部45との間(第2減光部72に相当する箇所)を進行(迷光S2とする)し、第2レンズ部44の第2出射面61と第3レンズ部45の第3出射面65との間から出射されて、シェード14の第3スリット部363へと向かう(迷光S3とする)。第2光源25のみが点灯された場合であって、上記の迷光Sが生じた場合のシェード14のシェード部33上における配光分布を
図9に示す。
【0060】
シェード部33では、上記したように、第2光源25からの光が第2レンズ部44を通して照射されることにより、第2スリット部362の全域を明るくしつつ、第2スリット部362の頂点近傍を最も明るくする第2配光領域ALが形成される。そして、上記のような迷光Sが生じると、その迷光Sがシェード14の第3スリット部363へと向かうことにより、第3スリット部363において意図しない配光領域(以下では、迷光領域ASとする)が形成される。この迷光領域ASは、第3光源26が消灯されているにも関わらず第3スリット部363の中央近傍を明るくしている。このため、車両用灯具10では、このような迷光Sが生じると、第3光源26を消灯しつつ第2光源25を点灯させた場合であっても、第2照射図柄Di2を明確に形成できるものの、第3照射図柄Di3が形成される領域の一部をぼんやりと明るくしてしまう。また、車両用灯具10では、このような迷光Sが生じると、第2光源25と第3光源26とを同時に点灯させた場合であっても、第2照射図柄Di2は適切に形成できるものの、第3照射図柄Di3が迷光領域ASの分だけ意図しない領域が明るくなってしまい、明るさのムラが生じたりして意図した見え方とは異なるものとなってしまう。
【0061】
これに対して、車両用灯具10は、集光レンズ本体31において、第2レンズ部44と第3レンズ部45との間に、第2減光部72としての表面側第2減光部75および裏面側第2減光部76を設けている。このため、上記のような迷光S1は、集光レンズ本体31の裏面42において、裏面側第2減光部76により遮られる、もしくは散乱されることとなり、迷光S2のようには集光レンズ本体31内へと進行することが防止される。すなわち、裏面側第2減光部76は、迷光S1の入射を遮ることで迷光S2となることを防止する、もしくは迷光S1を拡散させることにより迷光領域ASを形成するような強い光(高い光束)の迷光S2として集光レンズ本体31内へと進行することを防止することができる。また、迷光S2は、裏面側第2減光部76を経た後に、集光レンズ本体31の表面41において、表面側第2減光部75により遮られる、もしくは散乱されることとなる。このため、迷光S2は、裏面側第2減光部76により上記のように拡散されて十分に弱められた後に、表面側第2減光部75により遮られるもしくは拡散されるので、より確実に迷光領域ASを形成するような強い光(高い光束)の迷光S3として集光レンズ本体31から出射されることが防止される。
【0062】
また、上記のような迷光S2は、裏面側第2減光部76を通らなかった場合であっても生じうるが、集光レンズ本体31の表面41において、表面側第2減光部75により遮られる、もしくは散乱されることとなり、迷光S3のようには集光レンズ本体31から出射されることが防止される。これにより、車両用灯具10は、上記のような第2光源25から迷光Sに起因して、シェード14の第3スリット部363に迷光領域ASが形成されることを防止できる。このため、車両用灯具10は、第3光源26を消灯しつつ第2光源25を点灯させると、第2照射図柄Di2を明確に形成でき、第3照射図柄Di3が形成される領域を暗いままとすることができる。また、車両用灯具10は、第2光源25と第3光源26とを同時に点灯させると、第2照射図柄Di2と第3照射図柄Di3とを適切に形成することができ、意図した見え方とすることができる。
【0063】
ここで、上記のような迷光は、第3光源26からの光が第2レンズ部44と第3レンズ部45との間からシェード14の第2スリット部362へと向かうものでも同様の問題を招くことが考えられる。これに対して、車両用灯具10は、第2減光部72としての表面側第2減光部75および裏面側第2減光部76により、このような迷光も遮るもしくは散乱することができる。
【0064】
また、上記のような迷光は、第2光源25からの光が第2レンズ部44と第1レンズ部43との間からシェード14の第1スリット部361へと向かうもの、第1光源24からの光が第2レンズ部44と第1レンズ部43との間からシェード14の第2スリット部362へと向かうもの、でも同様の問題を招くことが考えられる。これに対して、車両用灯具10は、集光レンズ本体31において、第1レンズ部43と第2レンズ部44との間に第1減光部71を設けているので、その表面側第1減光部73および裏面側第1減光部74により、このような迷光も遮るもしくは散乱することができる。これらのことから、車両用灯具10は、各照射図柄Diを適切に形成することができ、それぞれを意図した見え方とすることができる。
【0065】
ここで、実施例1の集光レンズ本体31(集光レンズ13)は、第1減光部71および第2減光部72として、表面41の表面側第1減光部73および表面側第2減光部75と、裏面42の裏面側第1減光部74および裏面側第2減光部76と、で構成している。このため、第1減光部71および第2減光部72は、集光レンズ本体31内での各レンズ部(43、44、45)間での光の進行を遮ったり散乱させたりすることはできない。しかしながら、集光レンズ本体31では、3つの光源(24、25、26)に個別に対応させて3つのレンズ部(43、44、45)を設けているので、各光源(24、25、26)から対応するレンズ部(43、44、45)に入射された光が、隣接するレンズ部へと向かうことを抑えることができる。特に、実施例1の集光レンズ本体31は、各レンズ部(43、44、45)が対応する光源(24、25、26)からの光を略平行に進行する平行光として入射させるものとしているので、隣接するレンズ部へと向かうことを極めて少ないものにできる。このことから、集光レンズ本体31(集光レンズ13)は、表面41や裏面42の所定の位置に減光処理を施して形成した第1減光部71および第2減光部72であっても、上記したような迷光による影響を十分に抑制できる。
【0066】
加えて、実施例1の集光レンズ本体31(集光レンズ13)は、第3レンズ部45において、第2レンズ部44側に位置する底面45aにも減光処理を施して、第2減光部72の一部を構成する底面側第2減光部77を設けている。このため、第3レンズ部45では、その第3入射面64と、第2レンズ部44における第2対向入射面部57、第2傾斜入射面部58および第2反射面59と、の形状の差異によって、第2光源25に面する底面45aから光が入射して迷光となることを抑制できる。このことから、集光レンズ本体31(集光レンズ13)は、第3光源26を消灯しつつ第2光源25を点灯させた場合には第3照射図柄Di3が形成される領域を暗いままとすることができ、第2光源25と第3光源26とを同時に点灯させると、第2照射図柄Di2と第3照射図柄Di3とを適切に形成することができる。
【0067】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
車両用灯具10は、複数の光源(24、25、26)と、そこからの光を集光する集光レンズ13と、そこで集光された光を部分的に通す複数のスリット部36が設けられたシェード14と、そこを通した光を投影することにより、複数のスリット部36に対応する複数の照射図柄Diを有する照射パターンPiを形成する投影レンズ15と、を備える。その光源(24、25、26)は、スリット部36に個別に対応して設けられ、集光レンズ13は、スリット部36に個別に対応する複数のレンズ部(43、44、45)が重ねられ、複数のレンズ部(43、44、45)の間には光を低減する減光部(71、72)が設けられている。このため、車両用灯具10は、各光源(24、25、26)から対応するレンズ部(43、44、45)に入射された光が、対応されたものとは異なるスリット部36へと向かう迷光による影響を十分に抑制できる。
【0068】
車両用灯具10では、減光部(71、72)が、集光レンズ13において、複数の光源(24、25、26)側となる裏面42における複数のレンズ部(43、44、45)の間に減光処理が施されて形成されている。このため、車両用灯具10は、各レンズ部(43、44、45)の間から集光レンズ13に入射する光(迷光S1→S2)に起因して、点灯させていない照射図柄Diの場所を明るくしたり、形成した照射図柄Diに明るさのムラを生じさせて意図した見え方とは異ならせたりすることを抑制できる。
【0069】
車両用灯具10では、減光部(71、72)が、集光レンズ13において、遮光部材(シェード14)側となる表面41における複数のレンズ部(43、44、45)の間に減光処理が施されて形成されている。このため、車両用灯具10は、各レンズ部(43、44、45)の間から出射される光(迷光S2→S3)に起因して、点灯させていない照射図柄Diの場所を明るくしたり、形成した照射図柄Diに明るさのムラを生じさせて意図した見え方とは異ならせたりすることを抑制できる。
【0070】
車両用灯具10は、複数の光源(24、25、26)を順次点灯させることができる。このため、車両用灯具10は、消灯された光源に対応する照射図柄Diの場所を明るくすることを防止できるので、順次点灯させた意図を適切に表現できる。
【0071】
車両用灯具10では、複数のスリット部36が、照射パターンPiの第1照射図柄Di1に対応する第1スリット部361と、照射パターンPiの第2照射図柄Di2に対応する第2スリット部362と、照射パターンPiの第3照射図柄Di3に対応する第3スリット部363と、を有する。また、複数のレンズ部(43、44、45)は、第1スリット部361に対向する第1レンズ部43と、第2スリット部362に対向する第2レンズ部44と、第3スリット部363に対向する第3レンズ部45と、を有する。そして、第1レンズ部43は、対応する第1光源24と対向する第1対向入射面部51と、それを取り巻く第1傾斜入射面部52と、それを取り巻く第1反射面53と、を有する。加えて、第2レンズ部44は、対応する第2光源25と対向する第2対向入射面部57と、それを取り巻く第2傾斜入射面部58と、それを取り巻く第2反射面59と、を有し、第3レンズ部45は、対応する第3光源26からの光を集光する凸レンズとされている。このため、車両用灯具10は、第1光源24および第2光源25からの光を効率良く利用できるとともに、第1レンズ部43や第2レンズ部44の構成を簡易なものとしつつ、第1スリット部361や第2スリット部362に所定の光束分布を形成できる。また、車両用灯具10は、第3光源26からの光により、第3スリット部363に対しては第3レンズ部45を用いて一様な光束分布を形成できる。これらのことから、車両用灯具10は、単一の集光レンズ13を用いても、第1照射図柄Di1、第2照射図柄Di2の先端中央を中心として明確なものにできるとともに、第3照射図柄Di3の全体を明確なものにでき、より適切な照射パターンPiを形成することができる。
【0072】
車両用灯具10では、第3レンズ部45において、第2レンズ部44側に位置する底面45aにも減光処理を施している。このため、車両用灯具10は、第3光源26を消灯しつつ第2光源25を点灯させた場合には第3照射図柄Di3が形成される領域を暗いままとすることができ、第2光源25と第3光源26とを同時に点灯させると、第2照射図柄Di2と第3照射図柄Di3とを適切に形成することができる。
【0073】
車両用灯具10では、複数のレンズ部(43、44、45)を一体としている。このため、車両用灯具10は、複数のレンズ部(43、44、45)との相対的な位置精度を高めることができるとともに、組み立て工程等を容易なものにできる。
【0074】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、複数の光源(24、25、26)からの光を効率良く利用しつつ、所望の明るさ分布の照射パターンPiを形成できる。
【0075】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0076】
なお、実施例1では、3つの照射図柄Diを車両1側を底辺とする略二等辺三角形として、車両1から遠ざかる方向に略等しい間隔で整列させて照射パターンPiを構成している。しかしながら、照射パターンは、シェード(遮光部材)により形成する複数の照射図柄Diで構成されるものであれば、照射図柄Diとしての記号の図柄や形成る位置や照射図柄Diの数等は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0077】
また、車両用灯具10は、実施例1では車両1の前部に設けられていたが、車両1に対して照射パターンを形成する位置に応じて車両1に設ければ、ドアミラーに収容したり、前照灯の灯室や尾灯の灯室(車両の後部の左右両側の灯室)に配置したり、車体に設けたりしてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0078】
さらに、実施例1では、各光源(24、25、26)をアンバー色の光を出射するものとしている。しかしながら、光源から出射する光の色は、設ける箇所や伝える内容に合わせて適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0079】
実施例1では、遮光部材として、集光レンズ13で集光された光を照射スリット35から通すシェード14を用いている。しかしながら、遮光部材は、集光レンズ13で集光された光を部分的に通す複数のスリット部36(照射スリット35)が設けられたものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。その他の構成としては、例えば、光の透過を阻む板状のフィルム部材に、光を部分的に透過させる複数の照射スリットを設け、集光レンズ13を経た光を複数の照射スリットから透過させる遮光板(フィルタ)とすることができる。
【0080】
実施例1では、運転手が運転する車両1に車両用灯具10を設けている。しかしながら、車両用灯具は、自動運転機能を有する車両に設けられてもよく、実施例1の構成に限定されない。この場合、車両用灯具は、設けられる用途に応じたタイミング、すなわち車両1の動作に関する何らかの意図に応じたタイミングで照射パターンを形成すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0081】
実施例1では、光源部12がヒートシンクとしての機能を有する設置台部11に設けられており、この設置台部11に集光レンズ13とシェード14と投影レンズ15とが取り付けられる構成としている。しかしながら、車両用灯具は、光源からの光を集光レンズで遮光部材上に集光し、投影レンズで投影することで照射パターンを形成するものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0082】
実施例1では、各光源(24、25、26)を、LEDチップ、それを覆う蛍光体と、を有するものとしている。しかしながら、各光源(24、25、26)は、それぞれが個別にレンズ部(43、44、45)に対応されていれば、それぞれの構成は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0083】
実施例1では、最初に第3光源26が点灯され、次に第3光源26の点灯が維持されたまま第2光源25が点灯され、次に第3光源26および第2光源25の点灯が維持されたまま第1光源24が点灯され、次に各光源(24、25、26)が一斉に消灯され、以降はこれを繰り返すものとしている。しかしながら、各光源(24、25、26)は、全てが同時に点灯されてもよく、全てが個別に点灯されてもよく、適宜無作為に組み合わされて点灯されてもよく、点灯される順番や点灯の態様は適宜設定することができ、実施例1の態様に限定されない。
【0084】
実施例1では、第1減光部71および第2減光部72を、集光レンズ本体31(集光レンズ13)において、表面41の表面側第1減光部73および表面側第2減光部75と、裏面42の裏面側第1減光部74および裏面側第2減光部76と、で構成している。しかしながら、各減光部(71、72)は、対応するレンズ部(43、44、45)の間に設けられて、光の進行を遮ったり散乱させたりするものであればよく、実施例1の構成に限定されない。例えば、各減光部(71、72)は、対応するレンズ部(43、44、45)の間で板状に形成されている、すなわち集光レンズ本体31内での各レンズ部(43、44、45)間での光の進行を遮ったり散乱させたりするものとしてもよい。
10 車両用灯具 13 集光レンズ 14 (遮光部材の一例としての)シェード 15 投影レンズ 24 第1光源 25 第2光源 26 第3光源 36 スリット部 361 第1スリット部 362 第2スリット部 363 第3スリット部 41 表面 42 裏面 43 第1レンズ部 44 第2レンズ部 45 第3レンズ部 45a 底面 51 第1対向入射面部 52 第1傾斜入射面部 53 第1反射面 57 第2対向入射面部 58 第2傾斜入射面部 59 第2反射面 71 (減光部の一例としての)第1減光部 72 (減光部の一例としての)第2減光部 Di 照射図柄 Di1 第1照射図柄 Di2 第2照射図柄 Di3 第3照射図柄 Pi 照射パターン