(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178913
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20231211BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20231211BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091909
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柿本 憲志
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC15
3D054CC47
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】ラップベルト部上を移動可能なエアバッグを備える乗員保護装置において、乗員がエアバッグの位置決めを簡便に行うことができる乗員保護装置を提供する。
【解決手段】乗員保護装置10は、シートベルト11と、エアバッグ30を含み、シートベルト11のラップベルト部13に対してシートの左右方向にスライド移動可能に組み付けられたバッグ組付体29と、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備え、バッグ組付体29は、タングがバックルに結合された状態において、左右方向の一端側に配置され、乗員M側に突出する突出部59aと、左右方向の他端側に配置され、乗員M側に突出する突出部59bとを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
タングと、前記タングが結合されるバックルと、前記タングが前記バックルに結合された状態において前記シートに着座した前記乗員の腰部を拘束するラップベルト部と、を少なくとも有するシートベルトと、
折り畳まれて収容され、膨張して前記乗員を保護するエアバッグを含み、前記ラップベルト部に対して前記シートの左右方向にスライド移動可能に組み付けられたエアバッグモジュールと、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
を備え、
前記エアバッグモジュールは、前記タングが前記バックルに結合された状態において、前記左右方向の一端側に配置され、前記乗員側に突出する第1突出部と、前記左右方向の他端側に配置され、前記乗員側に突出する第2突出部とを有することを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記タングが前記バックルに結合された状態において、前記第1突出部と前記第2突出部の前記乗員側へのそれぞれの突出量は、前記エアバッグモジュールの前記左右方向の中心側から端部側にかけて大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記エアバッグモジュールは、
前記エアバッグと、
前記エアバッグを保持し、前記ラップベルト部に対して前記左右方向にスライド移動可能に連結された連結部材と、
折り畳まれた状態の前記エアバッグと前記連結部材とを収容し、前記ラップベルト部に対して前記左右方向にスライド移動可能に連結された収容部材と、
を備え、
前記収容部材は、前記第1突出部と前記第2突出部とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記第1突出部と前記第2突出部は、弾性体によって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記弾性体は、前記収容部材の前記乗員側の部位における内周面に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートに着座した乗員を保護するための構成として、シートベルトが広く用いられている。また特許文献1では、シートベルトの装着時において乗員の腰部を拘束するラップベルト部にエアバッグを設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアバッグの性能を最大限に発揮させるためには、乗員の正面にエアバッグの狙いの位置を配置させるのが望ましい。一方、乗員には個々の体格差があるため、ラップベルト部に対するエアバッグの位置が固定されている場合、エアバッグの狙いの位置があらゆる乗員の正面に位置するとは限らない。そこでラップベルト部上でエアバッグをスライド移動可能な構成とすることが考えられる。これにより乗員がエアバッグを位置調整することが可能となり、エアバッグの狙いの位置を各乗員の正面に配置させやすくなる。
【0005】
しかしながら、このようにラップベルト部上でエアバッグをスライド移動可能な構成としても、乗員によるエアバッグの位置調整が不十分な場合には、エアバッグの狙いの位置を乗員の正面に配置させられず、エアバッグの性能を最大限に発揮させられないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、ラップベルト部上を移動可能なエアバッグを備える乗員保護装置において、乗員がエアバッグの位置決めを簡便に行うことができる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の代表的な構成は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、タングと、前記タングが結合されるバックルと、前記タングが前記バックルに結合された状態において前記シートに着座した前記乗員の腰部を拘束するラップベルト部と、を少なくとも有するシートベルトと、折り畳まれて収容され、膨張して前記乗員を保護するエアバッグを含み、前記ラップベルト部に対して前記シートの左右方向にスライド移動可能に組み付けられたエアバッグモジュールと、前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備え、前記エアバッグモジュールは、前記タングが前記バックルに結合された状態において、前記左右方向の一端側に配置され、前記乗員側に突出する第1突出部と、前記左右方向の他端側に配置され、前記乗員側に突出する第2突出部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ラップベルト部上をスライド移動可能に構成されたエアバッグモジュールにおいて、その一端側と他端側とに乗員側に突出する第1突出部と第2突出部とがそれぞれ設けられている。このため、乗員はシートベルトの装着時に第1突出部と第2突出部との間の中央に身体の中央が配置されるようにエアバッグを位置調整させやすくなる。従って、乗員がエアバッグの位置決めを簡便に行うことができる。
【0009】
また本発明では、前記タングが前記バックルに結合された状態において、前記第1突出部と前記第2突出部の前記乗員側へのそれぞれの突出量は、前記エアバッグモジュールの前記左右方向の中心側から端部側にかけて大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0010】
このような構成により、第1突出部と第2突出部が乗員の腰回りに沿ってフィットしやすくなるため、乗員の快適性を向上させることができる。
【0011】
また本発明では、前記エアバッグモジュールは、前記エアバッグと、前記エアバッグを保持し、前記ラップベルト部に対して前記左右方向にスライド移動可能に連結された連結部材と、折り畳まれた状態の前記エアバッグと前記連結部材とを収容し、前記ラップベルト部に対して前記左右方向にスライド移動可能に連結された収容部材と、を備え、前記収容部材は、前記第1突出部と前記第2突出部とを有することが好ましい。
【0012】
このような構成により、エアバッグモジュールにおいて、エアバッグや連結部材よりも乗員側に位置する収容部材に第1突出部と第2突出部が設けられているため、乗員が第1突出部や第2突出部を視覚や触覚などで認識しやすくなる。
【0013】
また、前記第1突出部と前記第2突出部は、弾性体によって形成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成により、第1突出部及び第2突出部が乗員に接触する際に弾性変形して接触面積が大きくなるため、第1突出部及び第2突出部と乗員との接触性を向上させることができる。また、乗員の異物感が和らいで乗員の快適性を向上させることができる。
【0015】
また、前記弾性体は、前記収容部材の前記乗員側の部位における内周面に取り付けられていることが好ましい。
【0016】
このような構成により、弾性体が収容部材の外部に露出しないため、収容部材の意匠性が損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
【
図2】乗員保護装置を搭載したシートの左側面図である。
【
図3】乗員保護装置を搭載したシートの正面図であり、乗員がシートに着座してシートベルトを装着した状態を示し、膨張状態のエアバッグを二点鎖線で示している。
【
図4】乗員保護装置を搭載したシートの左側面図であり、乗員がシートに着座してシートベルトを装着し、且つ、エアバッグが膨張した状態を示している。
【
図5】
図3に示すA-A部を切断した乗員保護装置のバッグ組付体の断面図である。
【
図6】乗員保護装置のエアバッグが膨張した状態のバッグ組付体を下側から見た斜視図であり、バッグカバーは省略している。
【
図7】乗員保護装置のバッグ組付体を構成する各部材の平面図である。
【
図8】乗員保護装置のバッグ組付体の横断面図であり、シートベルトを装着した状態の乗員を二点鎖線で示している。
【
図9】乗員保護装置のバッグ組付体の他の構成を示す横断面図である。
【
図10】乗員保護装置のバッグ組付体の他の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、まず本発明の一実施形態に係る乗員保護装置10の全体構成について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の説明において、左右方向は乗員保護装置10を搭載したシート1に着座する乗員Mから見て左方向と右方向を意味し、前後方向は当該乗員Mから見て前方向と後方向を意味する。
【0019】
図1は、乗員保護装置10を搭載したシート1の斜視図である。
図2は、乗員保護装置10を搭載したシート1の左側面図である。
図3は、乗員保護装置10を搭載したシート1の正面図であり、乗員Mがシート1に着座してシートベルト11を装着した状態を示し、膨張状態のエアバッグ30を二点鎖線で示している。
図4は、乗員保護装置10を搭載したシート1の左側面図であり、乗員Mがシート1に着座してシートベルト11を装着し、且つ、エアバッグ30が膨張した状態を示している。
【0020】
図1~
図4に示す様に、乗員保護装置10は、車両のシート1に搭載されている。乗員保護装置10は、シートベルト11と、エアバッグ30を備えるバッグ組付体29と、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター24から構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5を備える。
【0021】
シートベルト11は、シート1に着座した乗員Mの左肩口付近において、上端11a側を背もたれ部2の上端3における左縁側の内部に設けられた巻き取り装置15から繰り出し可能に構成されている。シートベルト11の下端11b側は、座部5の左側に設けられたアンカ部材17に固定された固定端となっている。なお、シートベルト11は、滑り性能が良好なポリエステル繊維等を編んだ帯状材から形成されている。
【0022】
シートベルト11の中間部位には、タング20が設けられている。タング20は、シート1の座部5の右側に設けられたバックル19に締結(結合)される。乗員Mがシート1に着座し、タング20がバックル19に締結された状態が、乗員Mにシートベルト11が装着された状態である。
【0023】
乗員Mに装着された状態のシートベルト11は、タング20から巻き取り装置15側に延び、乗員Mの上半身MUの前面側に配置され、乗員Mの上半身MUを拘束可能な部位をショルダーベルト部12とし、タング20から下端11b側に延び、乗員Mの腰部MWの前面側に配置され、腰部MWを拘束可能な部位をラップベルト部13としている。なお、乗員Mは、バックル19に設けられた不図示のリリースボタンを押圧操作することによってタング20のバックル19に対する締結状態を解除し、タング20をバックル19から取り外すことができる。
【0024】
また、巻き取り装置15は、シートベルト11の急激な引き出しがある場合は引き出しを停止させ、さらに車両の衝突等があれば引き出したシートベルト11を巻き取り可能に構成されたプリテンショナー機構16を有する。プリテンショナー機構16は、汎用のものであり、内蔵したガスジェネレータを作動させてシートベルト11を巻き付けていた軸を回転させて、シートベルト11を瞬時に巻き取るものである。
【0025】
インフレーター24は、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体25と、インフレーター本体25から延出して略L字状に屈曲するパイプ部26とを備え、シート1の座部5の後面側に固定されている。パイプ部26は、ガス供給路部45の先端47aに接続されており、クランプ27で締結されることでガス供給路部45に連結されている。
【0026】
エアバッグモジュールとしてのバッグ組付体29は、エアバッグ30、バッグ連結部52、バッグカバー59、及びガス供給路部45を備える。ガス供給路部45は、エアバッグ30とインフレーター24とを連結し、インフレーター24から排出される膨張用ガスをエアバッグ30に供給する。エアバッグ30は、作動前の膨張していない状態では、折り畳まれた状態でバッグカバー59の内部に収納されている。バッグ組付体29の詳しい構成は後述する。
【0027】
次に、乗員保護装置10による乗員Mの保護動作について説明する。まず乗員保護装置10が搭載された車両が衝突すると、巻き取り装置15のプリテンショナー機構16が作動し、乗員Mのシート1への着座姿勢を安定させるために乗員Mに装着されたシートベルト11が巻き取られる。これによりシートベルト11のラップベルト部13がタング20側に引き込まれるとともに、ラップベルト部13から連なるショルダーベルト部12が乗員Mの肩口側に引き込まれる。その後、インフレーター24が作動して、膨張用ガスがインフレーター本体25からガス供給路部45を経由してエアバッグ30に供給され、エアバッグ30が膨張する。これにより前方移動する乗員Mの上半身MUがエアバッグ30に受け止められて乗員Mが保護される。
【0028】
次に、バッグ組付体29の詳しい構成について説明する。
図5は、
図3に示すA-A部を切断したバッグ組付体29の断面図である。
図6は、エアバッグ30が膨張した状態のバッグ組付体29を下側から見た斜視図であり、バッグカバー59は省略している。
図7は、バッグ組付体29を構成する各部材の平面図である。
図8は、バッグ組付体29の横断面図であり、シートベルト11を装着した状態の乗員Mを二点鎖線で示している。
【0029】
図5~
図8に示す様に、バッグ組付体29は、エアバッグ30、バッグ連結部52、バッグカバー59、及びガス供給路部45を備える。エアバッグ30は、膨張完了時において、周壁31が側方から見て略三角柱状に膨張する形状を成している。また、エアバッグ30は、底面側の底壁部32、後面側の後壁部33、前面側の前壁部34、及び、左右の側壁部35L、35Rを備える。膨張完了時のエアバッグ30は、底壁部32の下面32aが乗員Mの大腿部MFによって支持される支持面となり、後壁部33が前方移動する乗員Mの上半身MUを受け止める受止面となる。
【0030】
また、エアバッグ30における底壁部32の後縁32b付近には、ガス供給路部45内の膨張用ガスを流入させるための開口部である二つの流入口40aが設けられている。また、左右の側壁部35L、35Rの前部側には、エアバッグ30内に流入した膨張用ガスの余剰分を排気するための開口部であるベントホール42が設けられている。
【0031】
エアバッグ30は、ポリエステル繊維を平織り等して形成した織布からなるバッグ用素材に対してガス漏れ防止用のシリコン等のコーティング材を設けたバッグ用基布から形成されている。そしてエアバッグ30の周壁31は、底壁部32、前壁部34、及び、左右の側壁部35L、35Rの前部側を形成する前側部位31aと、後壁部33、及び、左右の側壁部35L、35Rの後部側を形成する後側部位31bとの二枚のバッグ用基布から形成されている。
【0032】
ガス供給路部45は、エアバッグ30に連結されるバッグ側部46と、バッグ側部46からインフレーター24側に延びる筒状のガス流路部47を備える。ガス流路部47の先端47aは、インフレーター24のパイプ部26に連結されている。バッグ側部46は、エアバッグ30の流入口40aと連通する連通口46aを有し、連通口46aの周縁が流入口40aの周縁に縫合されることによりバッグ側部46がエアバッグ30の底壁部32の後縁32b側に連結されている。
【0033】
このガス供給路部45は、下面側の外側材49と、外側材49と外形寸法を同じとしたエアバッグ30側のバッグ側材50との外周縁相互を縫合して形成されている。外側材49とバッグ側材50は、エアバッグ30を形成するバッグ用基布と同様の基布から形成されている。なお、外側材49とバッグ側材50との外周縁相互の縫合前には、バッグ側材50の連通口46aの周縁を、エアバッグ30の流入口40aの周縁に縫合させておくこととなる。
【0034】
連結部材としてのバッグ連結部52は、エアバッグ30をラップベルト部13に連結する部材である。バッグ連結部52は、エアバッグ30を形成するバッグ用基布と同様の基布である連結部用素材54の端部54a相互を縫合糸56によって結合させて形成された筒状の部材である。バッグ連結部52は、ガス供給路部45のバッグ側部46に対し、縫合部52bにおいて縫合されて連結されている。つまりバッグ連結部52は、エアバッグ30に直接連結されておらず、ガス供給路部45を介してエアバッグ30の下面32a側に間接的に連結されている。このようにしてバッグ連結部52は、エアバッグ30を保持する。なお、エアバッグ30に対してバッグ連結部52を直接縫合し、バッグ連結部52がエアバッグ30を直接的に保持する構成としてもよい。
【0035】
また、筒状のバッグ連結部52は、その筒内部の空間であり、ラップベルト部13が挿通されるベルト挿通部52aを有する。ベルト挿通部52aにラップベルト部13が挿通されると、バッグ連結部52はラップベルト部13に対し、ラップベルト部13上をラップベルト部13の長手方向に沿ってスライド移動可能に連結される。この結果、バッグ連結部52に保持されたエアバッグ30は、ラップベルト部13上をスライド移動可能となる。
【0036】
このようにエアバッグ30をラップベルト部13上でスライド移動可能に構成することにより、シート1に着座してシートベルト11を装着した乗員Mがエアバッグ30をシート1の左右方向にスライド移動させて個々の体格に合わせて位置調整可能となる。このため、エアバッグ30の狙いの位置であるエアバッグ30の中心位置を乗員Mの正面に配置させやすくなり、エアバッグ30の性能を発揮させやすくなる。
【0037】
収容部材としてのバッグカバー59は、折り畳まれた状態のエアバッグ30、ガス供給路部45のバッグ側部46、バッグ連結部52、及びラップベルト部13におけるバッグ組付体29に組み付けられている部分を収容する。バッグカバー59は、カバー素材60の端部60a相互を縫合糸61で縫合されて結合されることにより筒形状となっており、この筒内部に上述した部材を収容する。また、バッグカバー59は、エアバッグ30が膨張する際にエアバッグ30から圧力を受けてその一部が破断し、エアバッグ30をバッグカバー59から突出させる。なお、バッグカバー59はラップベルト部13を単に覆う構成であるため、ラップベルト部13上をスライド移動可能となっている。また、カバー素材60は、エアバッグ30等の素材と異なり、意匠性を低下させないようにシート1のシート素材に使用されるようなファブリックから形成されている。
【0038】
また、バッグカバー59における乗員M側の部位の内周面には、後述する突出部59a、59bを形成するための弾性体としてのウレタン製の二つのブロック65a、65bが接着剤、両面テープ、面ファスナー、縫合などの方法で取り付けられている。このブロック65a、65bは、乗員Mがシートベルト11を装着した状態において、シート1の左右方向におけるバッグカバー59の一端側と他端側にそれぞれ配置され、且つ、同方向におけるシート1の一端部付近と他端部付近にそれぞれ配置される。
【0039】
また、乗員Mがシートベルト11を装着した状態において、ブロック65a、65bは、バッグカバー59の中心側から端部側にかけてシート1の前後方向の厚みが厚肉となる形状を成している。本実施形態では、ブロック65a、65bは鉛直方向から見て略三角形状であり、両者は左右対称の形状となっている。具体的には、ブロック65aは、バッグカバー59の内周面に取り付けられる取付面65a1と、ラップベルト部13に接触するベルト接触面65a2と、その他の面65a3を有する。そして取付面65a1とベルト接触面65a2から形成される頂点65a4、取付面65a1とその他の面65a3から形成される頂点65a5、及びベルト接触面65a2とその他の面65a3から形成される頂点65a6の三つの頂点を有する略三角形状を成しており、この三つの頂点は面取りされている。同様に、ブロック65bは、バッグカバー59の内周面に取り付けられる取付面65b1と、ラップベルト部13に接触するベルト接触面65b2と、その他の面65b3を有する。そして取付面65b1とベルト接触面65b2から形成される頂点65b4、取付面65b1とその他の面65b3から形成される頂点65b5、及びベルト接触面65b2とその他の面65b3から形成される頂点65b6の三つの頂点を有する略三角形状を成しており、この三つの頂点は面取りされている。なお、本実施形態では、ブロック65a、65bの材料として安価なウレタンを用いたものの、本発明はこれに限られず、他の材料で形成されたブロック65a、65bを用いてもよい。
【0040】
このようにバッグカバー59の内周面にブロック65a、65bが取り付けられることにより、バッグカバー59には乗員M側にそれぞれ突出する突出部59a、59bが形成される。即ち、
図8に示す様に、ブロック65a、65bはラップベルト部13に接触して配置されるものの、ラップベルト部13の剛性はバッグカバー59の剛性より高いため、ラップベルト部13の剛性によって押し出されたブロック65a、65bがバッグカバー59の内周面を外方に向かって押し出し、これによりバッグカバー59に突出部59a、59bが形成される。また、ブロック65a、65bの形状に基づき、突出部59a、59bの乗員M側への突出量は、シート1の左右方向におけるバッグカバー59の中心側から端部側にかけて大きくなる。本実施形態では、突出部59a、59bにおける最も突出している部分である頂点65a5、65b5のそれぞれの突出量は5cm程度である。
【0041】
また、ブロック65a、65bを上述した位置に配置することで、突出部59a、59bは次の位置に配置される。即ち、第1突出部としての突出部59aは、乗員Mがシートベルト11を装着した状態において、シート1の左右方向におけるバッグカバー59の一端側に配置され、且つ、シート1の一端部付近に配置される。第2突出部としての突出部59bは、乗員Mがシートベルト11を装着した状態において、シート1の左右方向におけるバッグカバー59の他端側に配置され、且つ、シート1の他端部付近に配置される。また、エアバッグ30の中心位置は、突出部59aと突出部59bとを結ぶ仮想線の中心付近に配置されるように設定されている。
【0042】
ここでバッグカバー59の一端側と他端側とは、乗員Mがシートベルト11を装着した状態において、シート1の左右方向におけるバッグカバー59の中心に対する一方側と他方側を意味する。後述する乗員Mによるエアバッグ30の位置調整の簡便化の観点から、シート1の左右方向における突出部59aと突出部59bとの間隔は400mm~550mm程度に設定するのが好ましく、本実施形態では約500mmに設定されている。また、同様の観点から、シート1の左右方向の各端部付近として、突出部59a、59bをシート1の左右方向の各端部から150mmまでの位置に配置するのが好ましい。
【0043】
バッグ組付体29をラップベルト部13に組み付ける場合、まず筒状にする前のバッグ連結部52を連結させたガス供給路部45をエアバッグ30に連結し、エアバッグ30を折り畳む。次に、バッグ連結部52でラップベルト部13におけるバッグ組付体29を組み付ける部分を包み、バッグ連結部52を筒状に形成する。その後、バッグカバー59によって折り畳んだ状態のエアバッグ30などの部材をラップベルト部13と共に包み、バッグカバー59を筒状に形成する。このようにしてバッグ組付体29をラップベルト部13に組み付けることができる。その後、インフレーター24のパイプ部26とガス供給路部45のガス流路部47の先端47aとをクランプ27を用いて連結させることにより、バッグ組付体29をシート1に搭載することができる。
【0044】
次に、乗員Mがエアバッグ30の位置を調整する方法について説明する。まず乗員Mは、シート1に着座し、シートベルト11を巻き取り装置15から引き出しつつタング20をバックル19に締結させてシートベルト11を装着する。次に、乗員Mは、エアバッグ30の中心が乗員Mの上半身MUの中央に配置されていない場合、バッグ組付体29をラップベルト部13上でスライド移動させて、エアバッグ30の中心が乗員Mの上半身MUの中央に配置されるように位置調整する。この時、乗員Mは、突出部59a及び突出部59bを視覚または触覚で認識し、突出部59aと突出部59bとを結ぶ仮想線の中心に上半身MUの中央が配置されるようにバッグ組付体29を位置調整することにより、上半身MUの中央位置とエアバッグ30の中心とを概ね一致させることができる。このように本実施形態の構成によれば、乗員Mはエアバッグ30の位置決めを簡便に行うことができる。
【0045】
また、突出部59aと突出部59bの乗員M側へのそれぞれの突出量は、シート1の左右方向におけるバッグカバー59の中心側から端部側にかけて大きくなるように構成されている。このような構成により、突出部59aと突出部59bが乗員Mの腰回りに沿ってフィットしやすくなるため、乗員Mの快適性を向上させることができる。
【0046】
また、突出部59a、59bは、弾性体によって形成されている。これにより突出部59a、59bが乗員Mに接触する際に弾性変形して突出部59a、59bと乗員Mとの接触面積が大きくなるため、突出部59a、59bと乗員Mとの接触性を向上させることができる。また、乗員Mの異物感が和らいで、乗員Mの快適性を向上させることができる。
【0047】
また、突出部59a、59bを形成するためのブロック65a、65bは、バッグカバー59の内周面に取り付けられている。このような構成により、ブロック65a、65bが外部に露出しないため、バッグカバー59の意匠性が損なわれることを抑制することができる。
【0048】
また、突出部59aと突出部59bは、エアバッグモジュールを構成するエアバッグ30やバッグ連結部52よりも乗員M側に位置するバッグカバー59に設けられている。これにより乗員Mが突出部59a、59bを視覚や触覚などで認識しやすくなる。
【0049】
なお、本実施形態では、バッグカバー59の内周面にブロック65a、65bを取り付けることによってバッグカバー59に突出部59a、59bを形成する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。例えば
図9に示す様に、バッグカバー59の外周面にブロック65a、65bを上記同様の方法で取り付けて突出部59a、59bを形成してもよい。これにより既存のバッグ組付体29にブロック65a、65bを取り付けて突出部59a、59bを簡単に設けることができる。また、
図10に示す様に、シート1の左右方向におけるバッグ連結部52の長さを上記構成よりも長くして、バッグ連結部52にブロック65a、65bを上記同様の方法で取り付けて突出部59a、59bを形成してもよい。このような構成としても上記同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、シートベルト11がショルダーベルト部12とラップベルト部13を備えるいわゆる三点式のシートベルト11を例示して乗員保護装置10を説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、シートベルト11がショルダーベルト部12を備えずにラップベルト部13を備えるいわゆる二点式のシートベルト11に本発明を適用しても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…シート、10…乗員保護装置、11…シートベルト、13…ラップベルト部、19…バックル、20…タング、24…インフレーター、25…インフレーター本体、26…パイプ部、29…バッグ組付体、30…エアバッグ、45…ガス供給路部、52…バッグ連結部、59…バッグカバー、59a、59b…突出部、65a、65b…ブロック、M…乗員、MW…腰部