(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017892
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】施肥設計装置、施肥設計方法および施肥設計用のプログラム
(51)【国際特許分類】
C05F 17/70 20200101AFI20230131BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20230131BHJP
【FI】
C05F17/70
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176163
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2019031202の分割
【原出願日】2019-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018033376
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 紀子
(72)【発明者】
【氏名】冨沢 良介
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザーの経験に基づく直感による施肥を簡便に実現させる施肥設計装置、施肥設計方法および施肥設計用のプログラムを提供する。
【解決手段】圃場の生育力を示すデータである生育データまたは圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部101と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部102と、指定位置受付照合部102によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部103と、前記生育データ又は前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に検量線を作成する検量線作成部104とを備える施肥設計装置100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、
前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と
を備え、
前記検量線を求める処理において、
前記任意の位置における前記生育データまたは前記土壌データの少なくとも一つと前記任意の位置における前記施肥量値とに基づき前記2次元座標系上にプロット点が複数指定され、
前記複数指定された前記プロット点にフィッティングする線が前記検量線として求められる施肥設計装置。
【請求項2】
前記プロット点の一つは、前記2次元座標系上の縦軸の値が当該施肥対象圃場における平均施肥量であり、前記2次元座標系上における横軸の値が前記生育データの平均値または前記土壌データの平均値である請求項1に記載の施肥設計装置。
【請求項3】
施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、
前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、
当該施肥対象圃場に使用予定の肥料の総量に対応させて前記検量線の平行移動および傾きの変更の少なくとも一方を行う検量線修正部と
を備える施肥設計装置。
【請求項4】
前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作製部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも少ない場合に、前記検量線を下方に平行移動させ、
前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作成部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも多い場合に、前記検量線を上方に平行移動させる請求項3に記載の施肥設計装置。
【請求項5】
施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、
前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記検量線から施肥マップを作成する施肥マップ作成部と
を備える施肥設計装置。
【請求項6】
施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、
前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と
を備え、
前記データベース受付部は、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データから作成されるマップデータを受け付けることができる施肥設計装置。
【請求項7】
施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、
前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、
数値データである前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データをマップデータに変換するデータ変換部と
を備える施肥設計装置。
【請求項8】
施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、
前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、
航法衛星からの航法信号を受信し、位置の特定を行うGNSS位置特定部と
を備え、
前記ユーザー入力施肥量値受付部は、前記GNSS位置特定部が特定した位置または前記GNSS位置特定部が特定した位置を含む範囲に対して、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付ける施肥設計装置。
【請求項9】
施肥対象圃場の施肥量を算出する方法であって、
前記圃場の生育力を示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付ステップと、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合ステップと、
前記指定位置受付照合ステップによって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付ステップと、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成ステップと
を有し、
前記検量線を求める処理において、
前記任意の位置における前記生育データまたは前記土壌データの少なくとも一つと前記任意の位置における前記施肥量値とに基づき前記2次元座標系上にプロット点が複数指定され、
前記複数指定された前記プロット点にフィッティングする線が前記検量線として求められる施肥設計方法。
【請求項10】
コンピュータに読み取らせて実行させる施肥対象圃場の施肥量算出用プログラムであって、
コンピュータを
前記圃場の生育力を示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、
利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、
前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、
前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部として機能させ、
前記検量線を求める処理において、
前記任意の位置における前記生育データまたは前記土壌データの少なくとも一つと前記任意の位置における前記施肥量値とに基づき前記2次元座標系上にプロット点が複数指定され、
前記複数指定された前記プロット点にフィッティングする線が前記検量線として求められる施肥設計用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に肥料を施肥する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場において、植物等の生育状態を表すデータである生育データと該植物等の生育場所を表す位置データから、圃場内の各場所における施肥量を表すマップである施肥マップを作成する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在でも、圃場の各場所に施肥される量は、その圃場を長く管理してきた者等の経験に基づいた、直感によるものが多く、この直感による施肥量をコンピュータ等で計算することは、非常に多くのパラメータの設定や膨大なデータの蓄積が必要となり、困難な場合が多い。
【0005】
そこで、本発明は、簡便な方法によって、本発明の利用者の直感によって決められる施肥量を、圃場内のすべての場所で再現できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部とを備え、前記検量線を求める処理において、前記任意の位置における前記生育データまたは前記土壌データの少なくとも一つと前記任意の位置における前記施肥量値とに基づき前記2次元座標系上にプロット点が複数指定され、前記複数指定された前記プロット点にフィッティングする線が前記検量線として求められる施肥設計装置である。本発明において、前記プロット点の一つは、前記2次元座標系上の縦軸の値が当該施肥対象圃場における平均施肥量であり、前記2次元座標系上における横軸の値が前記生育データの平均値または前記土壌データの平均値である態様が挙げられる。
【0007】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、当該施肥対象圃場に使用予定の肥料の総量に対応させて前記検量線の平行移動および傾きの変更の少なくとも一方を行う検量線修正部とを備える施肥設計装置である。本発明において、前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作製部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも少ない場合に、前記検量線を下方に平行移動させ、前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作成部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも多い場合に、前記検量線を上方に平行移動させる態様が挙げられる。
【0008】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記検量線から施肥マップを作成する施肥マップ作成部とを備える施肥設計装置である。
【0009】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部とを備え、前記データベース受付部は、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データから作成されるマップデータを受け付けることができる施肥設計装置である。
【0010】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、数値データである前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データをマップデータに変換するデータ変換部とを備える施肥設計装置である。
【0011】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、航法衛星からの航法信号を受信し、位置の特定を行うGNSS位置特定部とを備え、前記ユーザー入力施肥量値受付部は、前記GNSS位置特定部が特定した位置または前記GNSS位置特定部が特定した位置を含む範囲に対して、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付ける施肥設計装置である。
【0012】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する方法であって、前記圃場の生育力を示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付ステップと、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合ステップと、前記指定位置受付照合ステップによって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付ステップと、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成ステップとを有し、前記検量線を求める処理において、前記任意の位置における前記生育データまたは前記土壌データの少なくとも一つと前記任意の位置における前記施肥量値とに基づき前記2次元座標系上にプロット点が複数指定され、前記複数指定された前記プロット点にフィッティングする線が前記検量線として求められる施肥設計方法である。
【0013】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させる施肥対象圃場の施肥量算出用プログラムであって、コンピュータを前記圃場の生育力を示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部として機能させ、前記検量線を求める処理において、前記任意の位置における前記生育データまたは前記土壌データの少なくとも一つと前記任意の位置における前記施肥量値とに基づき前記2次元座標系上にプロット点が複数指定され、前記複数指定された前記プロット点にフィッティングする線が前記検量線として求められる施肥設計用のプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置情報を有する圃場の状態を示したデータを基に、本発明の利用者が、任意の地点(または、任意の地点を含む範囲)を指示し、その地点(または、任意の地点を含む範囲)に散布する施肥量を入力することで、施肥を行う圃場全体について、本発明の利用者の直感による施肥量を反映した施肥量の算出(施肥設計)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】X-Yグラフ上に示される検量線の概念図である。
【
図6】X-Yグラフ上に示される検量線の概念図である。
【
図16】入力画面の表示内容の一例を示す図面代用写真である。
【
図18】入力画面の表示内容の一例を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1の実施形態
(概要)
本実施形態では、施肥対象圃場の各地点(または、任意の地点を含む範囲)に、任意の指標に基づく作物を生育する力の度合いまたは尺度を付与したマップ状のデータにおいて、本発明の利用者(ユーザー)が指定する任意の地点(または、任意の地点を含む範囲)へ入力された施肥量に基づいて、施肥設計を行う形態を示す。また、その概念図を
図1に示す。
【0017】
(施肥設計装置の構成)
図2には、施肥設計装置100の構成が示されている。施肥設計装置100は、施肥設計を行う装置であって、データベース受付部101、指定位置受付照合部102、ユーザー設定施肥量受付部103、検量線作成部104、施肥マップ作成部105、平均値算出部116、検量線修正部117を備える。本実施形態において、施肥設計装置100はユーザーが携帯できるか、できないかは問わず、例えば、携帯できるタブレットやスマートフォンでもよいし、携帯できないデスクトップ型パーソナルコンピュータや大規模なスーパーコンピュータであってもよいし、トラクター等の農機具や乗用車等の移動体に搭載される計算機や演算装置としてもよく、その大きさや重量は、本実施形態を実施することの制限とならない。例えば、トラクターの運転補助、自動運転、操作等を制御するコントローラを当該トラクターが備える形態において、当該コントローラが備えるコンピュータとしての機能を利用して施肥設計装置100を構成することもできる。
【0018】
図2に示される施肥設計装置100の各機能部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)に代表されるPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。また、一部の機能を専用のハードウェアで構成し、他の一部を汎用のマイコンにより構成することも可能である。また、汎用のPC(パーソナルコンピュータ)や各種制御用のコンピュータ(例えば、トラクターの自動運転制御のためのコンピュータ)に
図2に示す機能部の機能を実現するためのアプリ―ケーションソフトウエアをインストールし、当該コンピュータを施肥設計装置100として動作させてもよい。
【0019】
各機能部を専用のハードウェアで構成するのか、CPUにおけるプログラムの実行によりソフトウェア的に構成するのかは、要求される演算速度、コスト、消費電力等を勘案して決定される。なお、機能部を専用のハードウェアで構成することとソフトウェア的に構成すること(アプリケーションとして構成することも含む)は、特定の機能を実現するという観点からは、等価である。そして、各機能部を装置として実現することも等価である。
【0020】
データベース受付部101は、位置情報を有する施肥対象圃場の各地点(または、任意の地点を含む範囲)に、任意の指標に基づく作物を生育する力の尺度を付与したマップ状のデータ(マップデータ)を受け付ける。データベース受付部101が受け付けるデータとしては、例えば、植物等の生育状態を表すデータである生育データと該植物等の生育場所を表す位置データから作成される生育マップ、または土壌が持つ植物等を生育する力を示す土壌データと該土壌の場所を表す位置データから作成される土壌マップを受け付ける。なお、生育データは、茎、葉、花、実等の生育の状態をセンサ等で評価したものである。生育データの具体例としては、茎の長さ、葉の色の程度(色素の含有量)、花の色、実の大きさ等を評価したパラメータが挙げられる。生育データは、植物センサ等を用いて行い、例えば、特開2012-247235等に記載されている技術を用いて取得してもよい。位置データは、GNSS(Global Navigation Satellite System)位置特定装置等を用いることで取得できる。土壌データの取得は、レーザーセンサによる特定の波長の反射光の検出(例えば、窒素特有の波長の検出)、スペクトルカメラによる土壌分析、過去の生育履歴等の分析によって取得できる。
【0021】
ここで、生育マップとは、現在の植物の状態に起因するデータに基づいた、位置情報(位置データ)を有する各地点における植物の生育状況を表したマップであって、土壌の状態や日当たり等の違いよって生まれる生育力の差異を表す。生育マップは、施肥対象の圃場等を任意の範囲ごとに、任意の段階(2以上)で生育状況を表すことで、生育マップは作成できる。例えば、一辺が10mの正方形である圃場を一辺2mごとの範囲で区切れば、一辺2mの正方形25個ができる。25個の正方形に対して、生育状況または生育力を2以上の数である、例えば、生育状況が、良い、普通、悪い(または、生育力3、2、1)の3段階で評価することで作成することができる。この場合の生育マップを
図3に示す。
【0022】
生育マップの基となる生育の指標としては、生育している作物の茎の長さ、葉の大きさ、色、糖度、デンプン濃度、特定の元素や成分の濃度や含有量、電気伝導度、特定の光の反射率、画像解析から得られる葉の密度、光の透過率、これら指標の複数の組み合わせたもの等が挙げられる。なお、生育しつつある作物の撮影画像を解析し、収穫量を予想する場合に得られる予想収穫量のマップデータは、既に存在する作物の現状における生育の状態に係るパラメータであるので、生育マップとなる。
【0023】
そして、土壌マップとは、過去または現在の土壌に起因するデータに基づいた、位置情報(位置データ)を有する各地点における土壌の植物等を生育する力(生育力)またはその性質を表したマップであって、施肥対象の圃場等を任意の範囲ごとに、任意の段階(2以上)で土壌の状況を表すものである。そのため、土壌マップは、上記の生育マップにおける植物の生育状況または生育力を土壌マップの生育力に置き換えれば、上記生育マップと同様に作成できる。
【0024】
土壌マップは、例えば、土壌の肥料成分(窒素、リン酸、カリウム等)の充足率(または含有率)、土壌のPH(水素イオン濃度)およびEC(電気伝導度)等の化学的性質、土壌の保水力や通気性等の物理的性質、土壌の有機物の分解力および耐病害虫の存在率等の生物的性質を指標としてマップ化することで作成することができる。この場合、例えば、肥沃と見なせる土壌における窒素、リン酸、カリウムの密度(mg/m3)の平均値を充足率100%とする。そして、この充足率が35%未満を土壌レベル1(生育力1)、35~65%未満を土壌レベル2(生育力2)、65~100%を土壌レベル3(生育力3)、それを2m×2mの区画を単位としてマップ化する。このマップが土壌マップとなる。
【0025】
また、施肥対象の圃場において過去の収穫量を任意の範囲ごとに数値を付与した収穫量マップや、施肥対象の圃場において収穫された作物の品質または含有成分等を任意の範囲ごとに評価または値を付与した品質マップも、圃場の各地点(または各範囲)における生育力を示すものであるため、データベース受付部101で受け付ける土壌マップと等価であって、この一つとして含まれる。収穫量マップおよび品質マップは、施肥対象の圃場等を任意の範囲ごとに、収穫量および品質を任意の段階(2以上)で評価すれば作成可能であって、例えば、3段階評価とすれば、上記生育マップの作成例と同様に作成できる。
【0026】
指定位置受付照合部102は、ユーザーの指定する任意の位置(ユーザーが施肥量を設定する対象となる位置であって、その位置を含む範囲であってもよい)を受け付け、データベース受付部101で受け付けられた生育マップまたは土壌マップへ照合する。
【0027】
ユーザーによる施肥量を設定する位置の指定は、施肥設計装置100に備えられている情報表示部(図示省略)または別個の外部情報表示装置等の画面に生育マップまたは土壌マップを表示させ、表示されたマップをペンや指によるタッチまたはマウスによるクリックによって行ってもよいし、生育マップおよび土壌マップには位置情報が付与されているため、地図座標系の入力でもよい。なお、地図座標系とは、地図データを扱う際に利用されるグローバルな座標系である。通常、上記のGNSS位置特定装置(例えば、汎用のGPS受信機)で得られる位置データは、地図座標系におけるものとして得られる。そして、上記した位置の指定方法は一例であって、生育マップ上および土壌マップ上の地点を特定できる方法ならば、上記方法に限定されない。
【0028】
ユーザー設定施肥量受付部103は、ユーザーが指定した任意位置(または、その位置を含む範囲)に対して、ユーザーが設定する任意の施肥量を受け付ける。受け付ける施肥量は、ユーザーの直感による量でも、ビックデータ等の分析による量であってもよく、受け付ける量に技術的な根拠の有無は必要ない。また、ここで受け付ける施肥量は、具体的な数値を受け付けてもよいし、数値に範囲を持つもの(例えば、単位面積あたり、N1kg~N2kgの範囲で許容される施肥量を散布)であってもよい。
【0029】
検量線作成部104は、生育マップにおける生育状況または土壌マップにおける土壌の状況の生育力をX軸方向のパラメータ、施肥量をY軸方向のパラメータとしたX-Yグラフを作成し、ユーザーが指定した任意の位置(または、その位置を含む範囲)に対して設定された施肥量を上記のX-Yグラフへ参照することで、生育状況または土壌の状況に応じた検量線を作成する。なお、X-Yグラフ上に検量線を引いた場合を
図4に示す。
【0030】
ここで、上記のX-YグラフのX軸方向のパラメータとして反映する生育マップにおける生育状況または土壌マップにおける土壌の状況は、ベースマップ受付部101で受け付けた生育マップまたは土壌マップに設定された任意の段階(2以上)の生育状況または土壌の状況に限られず、生育状況または土壌の状況の詳細な値(例えば、数値化された測定値)が付与されているのならば、それらを使用することもできる。
【0031】
具体的な検量線の作成例としては、まずユーザーが指定した施肥量を決めたい位置(または、その位置を含む範囲)を生育マップまたは土壌マップ上で特定し、そのマップ上の位置の生育状況または土壌の状況を取得し、取得した生育状況または土壌の状況とユーザーが設定した施肥量に対応するX-Yグラフ上の位置にプロット点を配置する。これを最低2回行うことでプロットされた点を結ぶ検量線が作成できる。
【0032】
例えば検量線は、2次元座標系における横軸に土壌データ(例えば、養分の程度を示すパラメータである窒素含有量)をとり、縦軸に施肥量(単位面積当たりの肥料の散布量)をとったグラフとなる。ここで、土壌データは、光学センサ等によって取得される。ユーザーは、圃場の各所における施肥量を経験的に把握している。ユーザーが当該圃場の航空写真等において特定の場所を指定すると、その場所の土壌データ(横軸の値)が得られる。
【0033】
そして、ユーザーがその場所の施肥量(縦軸の値)を入力すると、上記2次元座標系上の1点が特定される。これがプロット点となる。この作業を土壌の状態が異なる場所で行うことで、異なる第2のプロット点が得られる。そして、当該座標系上における異なる2点におけるプロット点が得られれば、それを結ぶ線(簡単な例では、直線)を引くことで、検量線が得られる。
【0034】
プロット決める作業を3回以上行った場合は、近似直線としてもよい。また、プロット点が3点以上ある場合に、それにフィッティングする関数を求め、その関数により表される線を検量線としてもよい。
【0035】
なお、他のプロット点と整合しないイレギュラーな位置にプロット点が現れた場合は、ユーザーによる位置の再指定および施肥量の再設定を促してもよい。ユーザーによる位置の再指定および施肥量の再設定する場合は、検量線を作成する上で大きく外れた場所のみであってもよいし、すべての箇所を再指定および再設定してもよい。
【0036】
同様に、ユーザーが指定した施肥量が、数値範囲形式であった場合は、ユーザーが指定した数値範囲内を検量線が通過するように作成させるが、ユーザーが指定した数値範囲の全てを通過できない場合は、ユーザーによる位置の再指定および施肥量の再設定を促してもよいし、近似直線を作成してもよい。なお、上記の検量線作成方法は一例であって、検量線作成の方法は上記方法に限定されない。
【0037】
検量線の横軸として、生育データを用いる場合、例えば横軸に作物の葉の色の濃度(例えば緑の色素の濃度)をとり、縦軸に施肥量をとることで検量線が作成される。葉の色以外の生育データとしては、茎の長さ、花の色、実の大きさ等を数値化したパラメータが挙げられる。
【0038】
施肥マップ作成部105は、データベース受付部101で受け付けられた生育マップまたは土壌マップと検量線作成部104で作成した検量線から施肥マップを作成する。ここで、施肥マップとは、位置情報(位置データ)を有する各地点における施肥量を表したマップであって、施肥対象の圃場等を任意の範囲ごとに、任意の施肥量が設定されたものである。すなわち、施肥マップは、生育マップおよび土壌マップにおいて、各地点に設定されていた植物の生育状況または生育力を、上記の検量線を用いて施肥量に置き換えることで作成できる。
【0039】
すなわち、検量線作成部104で作成した検量線(生育状況または土壌の状況と施肥量の関係)に基づいて、データベース受付部101で受け付けられた生育マップおよび土壌マップに施肥量を反映させていくことで施肥マップは作成できる。
【0040】
施肥マップの具体的な作成例を示す。例えば、任意の広さの施肥対象圃場について、施肥マップを作成する場合を考える。
図5のように、施肥対象圃場をA、B、C、Dの4つの範囲に分割し、A、B、C、Dのそれぞれに生育力が、2、3、1、2と設定された生育マップが与えられたとする。この施肥対象圃場のA、B、Cについて、順にユーザーが指定し、それぞれ施肥量を、9kg、5.5kg、15kgと設定した場合、X軸のパラメータを生育力、Y軸のパラメータをユーザーが設定した施肥量とすれば、Aにおける施肥量設定に対応する生育力2と施肥量9kgの交点、Bにおける施肥量設定に対応する生育力3と施肥量5.5kgの交点、Cにおける施肥量設定に対応する生育力1と施肥量15kgの交点に3点のプロット点が配置され、この3点のプロット点を結ぶことまたは近似することで検量線が作成される。なお、作成される検量線の一例は、
図6のようになる。
【0041】
そして、最初に与えられた生育マップに設定された生育力に対応する施肥量を検量線から読み取り、生育マップの生育力を施肥量に置き換えることで施肥マップが作成される。
図5の生育マップの場合ならば、例えば、Aは施肥量10kg、Bは施肥量5kg、Cは施肥量15kg、Dは施肥量10kgと設定される施肥マップが作成される。また、その場合に作成される施肥マップの一例を
図7に示す。
【0042】
平均値算出部116と検量線修正部117は、この例では利用しない。平均値算出部116と検量線修正部117の機能については後述する。
【0043】
なお、施肥設計装置100は、受け付けたデータや過去の履歴等を記憶するために記憶部を備える構成であってもよいし、施肥設計装置100とは別個の外部ストレージ装置にデータ記憶することで、適時データを使用できるようにしてもよい。外部ストレージ装置とのデータの受け渡しは、施肥設計装置100が通信部を備えていれば可能である。さらに、施肥設計装置100が通信部を備えていれば、他の装置と組み合わせた本発明の実施が容易になる。
【0044】
(処理の一例)
本実施形態における処理の一例を
図8に示す。
図8の処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、
図1の施肥設計装置100により実行される。このプログラムをサーバに記憶し、そこからPC等にダウンロードすることで利用する形態も可能である。
【0045】
まず、施肥設計装置100は、施肥対象となる圃場の生育マップまたは土壌マップを受け付ける(ステップS101)。次に、ユーザーが指定する施肥量を設定したい箇所(位置またはその位置を含む範囲)を受け付け、ステップS101で受け付けた生育マップ上または土壌マップ上に照合する(ステップS102)。
【0046】
そして、ステップS102でユーザーが指定した施肥量を設定したい箇所(位置またはその位置を含む範囲)に対応する、生育マップ上または土壌マップ上の箇所(位置またはその位置を含む範囲)に、ユーザーが指定する任意の施肥量を受け付ける(ステップS103)。なお、ステップS102とステップS103は、2以上の任意の回数を繰り返す。
【0047】
生育マップにおける生育状況または土壌マップにおける土壌の状況をX軸方向のパラメータ、施肥量をY軸方向のパラメータとしたX-Yグラフを作成し、ユーザーが指定した位置または範囲に対して入力された施肥量を上記のX-Yグラフへ参照することで、生育状況または土壌の状況に応じた検量線を作成する(ステップS104)。
【0048】
最後に、ステップS101で受け付けられた生育マップまたは土壌マップとステップS104で作成した検量線から施肥マップを作成する(ステップS105)。以上で、処理は終了となる。
【0049】
上述の処理(ステップS101~ステップS105)によって得られる施肥マップは、施肥機を備える農業用機具(例えば、農業用トラクター、耕うん機、作物の種または球根等の作付用機械、施肥機を牽引し移動する農業用機械)とともに用いることで、ユーザーの直感が反映された施肥が、大規模かつ迅速に実現できる。例えば、施肥マップを見ながら、施肥機を備える農業用機具のオペレータが、手動で施肥量を調整しながら、施肥を行ってもよい。また、施肥マップを読み込むことができる制御装置を、施肥機を備える農業用機具に備えれば、施肥量の制御を自動化することができる。さらに、施肥機を備える農業用機具に、自動操舵システムおよびGNSS位置特定装置を備えれば、農業用機具の運転操作までも自動化された施肥が実現される。
【0050】
また、ステップS104で作成した検量線は、ステップS105における施肥マップ作成のみならず、それのみであっても、施肥量の消費量予測および消費量分析等の用途に使用できる。
【0051】
(変形例)
上記の実施形態において、データベース受付部101は、生育マップまたは土壌マップを受け付けることを示した。しかし、データベース受付部101が受け付けるデータ(情報)は、位置データ等を有するマップ状のデータ(マップデータ)に限定されない。例えば、数値状のデータ(数値データ)であってもよい。
【0052】
数値データとしては、例えば、圃場の各地点の地図座標系における位置座標および各地点の生育力を示すパラメータを有するデータベース状の形態であってもよい。
【0053】
この場合の施肥設計装置100の構成を
図9に示す。
図9のように、データ変換部106を備えていればよい。データ変換部106は、圃場の各地点の地図座標系における位置座標および各地点の生育力を示すパラメータを有する数値状のデータを、マップデータに変換するものである。
【0054】
受け付けた数値データは、データ変換部106においてマップデータに変換された後、上述の処理のステップS102~ステップS105を行えば、施肥マップの作成は可能である。
【0055】
2.第2の実施形態
(概要)
ここでは、ユーザーが、施肥設計装置100を携帯しながら、ユーザー自身が存在する位置(または、その位置を含む範囲)について、施肥量の設定することで、対象圃場の施肥設計を実現する実施形態を示す。また、その概念図を
図10に示す。
【0056】
(施肥設計装置の構成)
施肥設計装置100の構成を
図11に示す。
図11に示すとおり第1の実施形態の場合に対して、GNSS位置特定部107が加わる構成になる。GNSS位置特定部107は、GPS衛星に代表される航法衛星からの航法信号を受信し、それに基づき測位(位置の特定)を行う。GNSS位置特定部107によりGNSS位置特定部107(GNSS位置特定装置107のアンテナの位置)の地図座標系における位置(経度・緯度・高度)が特定される。そして、本実施形態の場合、指定位置受付照合部102は、位置データをGNSS位置特定部107より受け付ける。
【0057】
(処理の一例)
本実施形態における処理の一例を
図12に示す。
図12の処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、
図11の施肥設計装置100により実行される。まず、施肥設計装置100は、施肥対象となる圃場の生育マップまたは土壌マップを受け付ける(ステップS201)。次に、施肥設計装置100を携帯したユーザーが施肥対象となる圃場内の施肥量を設定したい位置(施肥量設定地点P)に到着すると、GNSS位置特定部107によって、ユーザーが施肥量を設定したい場所の位置(またはその位置を含む範囲)を特定し、ステップS101で受け付けた生育マップ上または土壌マップ上に照合する(ステップS202)。
【0058】
そして、ステップS202で特定したユーザーが指定した施肥量を設定したい位置(または、その位置を含む範囲)に対応する、生育マップ上または土壌マップ上の位置について、ユーザーが指定する任意の施肥量を受け付ける(ステップS203)。なお、ステップS202とステップS203は、2以上の任意の回数を繰り返す。例えば、
図10のように、ユーザーが移動しながら、3地点で施肥量を設定するならば、施肥量設定地点P
1、P
2、P
3の各地点について、航法衛星によって位置が特定された上で、ユーザーにより施肥量が設定される。以降は、上記のステップS104とステップS105を順に同様の処理を行えば、施肥マップを得られ、処理は終了となる。
【0059】
なお、ステップS201において、マップデータではなく数値データを受け付けた場合は、データ変換部106によってマップデータにすればよく、第1の実施形態の変形例と同様に処理可能である。この場合の施肥設計装置100の構成を
図13に示す。
【0060】
本実施形態においては、施肥設計装置100をユーザーが携帯し、操作できることが望ましいが、必ずしも、ユーザーが施肥設計装置100を携帯できる場合に限られない。例えば、移動体に施肥設計装置100を積載し、圃場内の施肥量を設定したい位置に移動しながら、上記のステップS202とステップS203を行うことで、ユーザーが携帯できない大きさや重量の施肥設計装置100を用いることができる。
【0061】
3.第3の実施形態
(概要)
検量線作成部104で作成される検量線は、蓄積されたデータ、データベース受付部101が受け付けたマップデータおよび後述する数値データ等から、サンプルとなる検量線を作成し、その検量線をユーザーがカスタマイズまたは編集する作成方法が考えられる。その場合の処理を本実施形態で示す。
【0062】
(施肥設計装置の構成)
施肥設計装置100の構成を
図14に示す。本実施形態の場合の施肥設計装置100の構成は、データベース受付部101、検量線作成部104、施肥マップ作成部105、ユーザー編集情報受付部108となる。
【0063】
データベース受付部101は、第1および2の実施形態の場合と機能は同じである。検量線作成部104は、蓄積されたデータ、データベース受付部101が受け付けたマップデータおよび後述する数値データ等から、サンプルとなる検量線を作成する。
【0064】
ユーザー編集情報受付部108は、検量線作成部104が作成した検量線に対して、ユーザーが任意で行う編集内容(例えば、検量線の傾きの調整、サンプルとなる検量線のY軸上での平行移動等)を受け付け、その内容を反映する。施肥マップ作成部105は、データベース受付部101で受け付けられた生育マップおよび土壌マップ等のマップデータとユーザー編集情報受付部108が受け付けたユーザーによる編集を反映した検量線を基に、施肥マップを作成する。
【0065】
(処理の一例)
本実施形態における処理の一例を
図15に示す。
図15の処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、
図14の施肥設計装置100により実行される。まず、施肥対象圃場のマップデータまたは数値データをデータベース受付部101で受け付ける(ステップS301)。次に、検量線作成部104においてサンプルとなる検量線を作成する(ステップS302)。ステップS302で作成されたサンプルとなる検量線をユーザーが編集することで、最終的な検量線を作成する(ステップS303)。ステップS302で作成された最終的な検量線から施肥マップを作成し(ステップS304)、処理は終了となる。
【0066】
なお、本実施形態の場合においても、ステップS301において、マップデータではなく数値データを受け付けた場合は、施肥設計装置100が上記のデータ変換部106を備えることでマップデータに変換し、その後の処理を行うことができる。
【0067】
本実施形態で示した検量線をユーザーが編集することは、第1および第2の実施形態においても、施肥設計装置100が上記のユーザー編集情報受付部108を備えることで行うことができる。例えば、ステップS104で作成された検量線について、ユーザーが編集を行った後に、ステップS105において施肥マップを作成する処理方法が挙げられる。
【0068】
4.第4の実施形態
ユーザー(当該圃場で農作業を行う本発明を利用するユーザー)は、経験的に当該圃場における平均の施肥量(単位は、kg/m
2やkg/10アール)を把握している。よって、ユーザーは持っているこの平均の施肥量を利用して、
図6の検量線が作成できると便利である。本実施形態では、ユーザーが把握している対象となる圃場の平均の肥料量を用いて検量線を作成する場合の例を説明する。なお、使用するハードウェアは、
図1および
図2に示すものを用いる。
【0069】
図16には、施肥設計装置100を構成するPCのディスプレイに表示される操作画面の一例が示されている。
図16はマップ画像が示されている。このマップ画像は、土壌マップの一例である。
図16のマップ画像には、検量線の作成対象となる圃場の生育値分布データが示されている。このデータは、圃場の空撮画像に生育値のデータを埋め込み、色の濃さで圃場各部の生育値が視覚的に把握できるようにした加工画像である。生育値は、土壌データの一例であり、土壌の生育力(土壌の作物を育てる力)を示す指標である。この例では、生育値は土壌の窒素系の養分で成長した葉の窒素の含有量と関係あるとして考える。そして例えば、葉の窒素の含有量は、レーザー光を用いる窒素センサにより計測したものなどをから取得できる。
【0070】
図16の操作画面中のマップ外の適当な部分をユーザーがクリック(指定)すると、マップ外に当該圃場の生育値の平均値が表示され、また平均施肥量を入力するウィンドが表示される。生育値の平均値は、圃場をマトリクス状に区切り、その1区画の生育値を区画の総数で積算し、その値を区画の総数で割ることで得られる。この処理は、
図2の平均値算出部116で行われる。
【0071】
ユーザーは、上記のウィンドに対象となる圃場の平均施肥量を入力する。ここでは、この平均施肥量として、ユーザーは経験的に把握している値を入力する。この際、画面上に表示された当該圃場の平均生育値の数値をユーザーが参照してもよい。
【0072】
次に、ユーザーは、
図16のマップ上の任意を選び、その点をクリック(指定)する。この際、成育値が平均値からある程度離れた点を選ぶ。この入力を受け、このユーザーに指定された位置における生育値のデータが取得され、それが画面上に表示される。この生育値を見て、ユーザーは、その位置に散布する肥料の量(施肥量)を決定する。この決定は、ユーザーの過去の経験やこれまで得た知見に基づいて、ユーザーの判断により行われる。この判断を行うに当たっての材料には、栽培する作物、季節、想定される作物の出荷量、コストといった要因が含まれてもよい。
【0073】
次に、入力された平均の施肥量を縦軸の値、およびそれに対応する生育値を横軸の値として、第1の点が得られる。それとは別に、マップ上でユーザーが指定した位置におけるユーザーが入力した施肥量とその位置の生育値とを第2の点としてプロットし、検量線グラフを作成する。
【0074】
すなわち、横軸に生育値、縦軸に施肥量をとり、上記第1の点と第2の点をプロットする。そして、両点を通る直
線を引き、
図17に例示する検量線を作成する。ここで、第2の点に相当する点を2点以上取得してもよい。例えば、生育値が平均値より高い位置を第2の点、更に生育値が平均値より低い位置を第3の点とし、それぞれの点における施肥量を入力することで、3点を用いて検量線を作成する。
【0075】
なお、第1の点と第2の点が近い場合は、検量線の誤差が大きくなるので、第2点として、
図16のマップ上のより色が薄い(またはより色が濃い)場所を選ぶ方が好ましい。
【0076】
第2の点の指定をナビゲートする方法として、生育値の平均値またはそれに近い場所を強調表示し、第2の点として、生育値が平均値から離れた点を指定し易いようにしてもよい。
【0077】
(変形例)
第2の点の指定に際して、複数の点を指定し、指定された各点の生育値の平均値を求め、それを利用して第2の点のプロット位置を決めてもよい。この場合の例を
図18に示す。
図18において、圃場全体の平均施肥量を入力する点は、
図16の場合と同じである。また、検量線における第1の点の求め方も
図17の場合と同じである。
【0078】
この場合、ユーザーは、ポイントB,C,Dの3点を選択する(2点あるいは4点以上であってもよい)。選択する点の場所は任意でよい。ユーザーは、この3点それぞれにおける施肥量を自らの判断により入力する。そして、この3点各点における生育値が取得され、その平均値が算出さる。また、ユーザーにより入力された3点の施肥量の平均が計算される。この処理は、
図2の平均値算出部116で行われる。
【0079】
そして、3点における生育値の平均値を横軸上の値とし、施肥量の平均値を縦軸上の値として、第2の点が取得される。最後に、第1の点と第2の点を通る線が検量線として求められる。こうして得られた検量線の一例を
図19に示す。
【0080】
(処理の一例)
以下、
図16~
図19に例示する処理の一例を説明する。
図20は、この処理の手順を示すフローチャートである。
図20の処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、
図2の施肥設計装置100により実行される。
【0081】
まず、
図16のマップを読み込み、
図16の画面を表示させる(ステップS401)。次に、生育値の平均値を算出し(ステップS402)、更にユーザーの入力による施肥量の平均値を受け付ける(ステップS403)。
【0082】
次に、ユーザーによるマップ上の1点以上の指定を受け付ける(ステップS404)。なお、
図18の場合は、最低2点以上を受け付ける。次に、ステップS403とS404の結果を受け、
図17または
図19に例示する検量線を作成する(ステップS405)。
【0083】
次に、得られた検量線に基づき、施肥マップを作成し(ステップS406)、更に作成した施肥マップのデータを出力する(ステップS407)。
【0084】
(その他)
検量線として、植物の生育の度合いを評価した生育データを用いる場合もある。この場合、検量線の横軸が生育データとなる。この場合に本実施形態を適用することもできる。この場合、生育データは、茎、葉、花、実等の生育の状態をセンサ等で評価したものに基づき、生育データが得られる。生育データを用いた検量線に関しては、第5の実施形態や第6の実施形態で利用することもできる。
【0085】
5.第5の実施形態
肥料は、袋に詰められ、20kg単位や50kgといった単位で売られえている。また、一度開封した肥料は、湿気を帯びたり、変質したりする可能性があるため、長期保存は避け、その都度使い切ることが望ましい。
【0086】
ところで、施肥マップを作成することで、対象となる圃場の肥料使用量やあるいは、すべての圃場における肥料の全量を知ることができる。例えば、有る圃場で肥料の使用量が510kgであったとする。この場合、手持ちの肥料が50kg詰めであり、肥料の無駄を抑えるために総量を500kgに納めたい場合が有り得る。なお、対象となる圃場は、1枚であっても複数枚であってもよい。
【0087】
ここで、
図6,
図17,
図19等の検量線を上下に平行移動することで、当該圃場で必要とされる肥料の総量を調整できる。例えば、検量線を下方に平行移動することで、使用する肥料の総量は少なくなる。また、検量線を上方に平行移動することで、使用する肥料の総量は多くなる。
【0088】
例えば、肥料の総量を考えずに作成した検量線に基づく必要な肥料の総量が510kgであったとする。ここで、使用したい肥料の総量が500kgであり、10kg足りないとする。この場合、上記の検量線を下方に少し平行移動させ、必要な肥料の総量が500kgとなるように調整する。こうすることで、圃場全体で不足する分の影響が均一化され、少し肥料が足りことによる悪影響(例えば、予定より収穫量が減少する問題)を最小限に抑えることができる。
【0089】
また、肥料の総量を考えずに作成した検量線に基づく必要な肥料の総量が480kgであったとする。ここで、使用したい肥料の総量が500kgであり、20kg多いとする。この場合、検量線を上方に少し平行移動させ、必要な肥料の総量が500kgとなるように調整する。こうすることで、圃場全体で肥料が過分となった影響が均一化される。
【0090】
具体的に以下のように処理が行なわれる。ここでは、検量線として横軸に土壌データの一例である窒素の含有量、縦軸に施肥量をとった検量線を用いる場合を説明する。まず、肥料の総量の規制がない条件で検量線を求める。次に、この検量線を用いて圃場各部における施肥量を算出する。これは、圃場各部の窒素含有量に基づき、該当する場所における施肥量を検量線から得ることで行なわれる。こうして施肥マップが得られる。次に得られた施肥マップに基づき、当該圃場における肥料の総量(計算値)を算出する。
【0091】
肥料の総量に係る規制がない状態で算出された検量線に基づく必要な肥料の総量(計算値)を算出したら、ユーザーの都合による肥料の使用総量(希望値)を施肥設計装置100に入力する。
【0092】
検量線修正部117は、上記の理想値と希望値とを比較し、希望値<計算値であれば、希望値≒計算値となるように、検量線を下方に平行移動(縦軸上で下方に平行移動)させる。ここで、両値の一致性は、例えば差が3%以下となる条件で判定する。この判定条件は、適宜設定できる。
【0093】
検量線を下方に平行移動させることで、圃場全域で施肥量が減少し、計算値が減少し、その値が希望値に近づく。
【0094】
他方で、希望値>計算値であれば、希望値≒計算値となるように、検量線を上方に平行移動(縦軸上で上方に平行移動)させる。検量線を上方に平行移動させることで、圃場全域で施肥量が増加し、計算値が増加し、その値が希望値に近づく。
【0095】
こうして、ユーザーが希望する肥料の総使用量となるように、検量線の上下が検量線調整部117で行われる。そして、得られた検量線に基づき、最終的な施肥マップが作成される。
【0096】
6.第6の実施の形態
作物によっては、収穫直前に実の重みで茎が倒れ、収穫物の品質に問題が生じたり、収穫ができなくなったりする場合がある。この問題を回避する方法として、元々生育力が高い場所には、肥料を計算より控え目に投入する方法がある。この処理は、検量線の傾を調整することで実現できる。
【0097】
図4に例示するように、検量線は右下がりであり、負の傾きを有する。上記の場合、得られた検量線の右端を下げ、左端が上げるように検量線の傾きを調整する。こうすることで、生育力の高い場所には、より控えめに施肥され、生育力の低い場所には、より多めに施肥が行なわれる。作物によっては、このような検量線の調整が有効な場合がある。この検量線の形状の調整が検量線調整部117で行われる。
【0098】
(その他)
以上説明した実施の形態の複数を組み合わせて利用することもできる。
【0099】
(優位性)
本発明の優位性は、技術的に表現が難しい、ユーザーの経験に基づく直感を簡便な装置構成で実現できる点、マップデータを用いるため、ユーザーが簡易かつ分かりやすい操作で扱える点、数値データをマップデータに変換できるため、多様なデータベースを参照できる点、GNSS位置特定装置を共に用いることで更に汎用性と操作性が増す点が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、圃場に散布する施肥量の検討および算出に利用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作成部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも少ない場合に、前記検量線を下方に平行移動させ、
前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作成部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも多い場合に、前記検量線を上方に平行移動させる請求項3に記載の施肥設計装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、施肥対象圃場の施肥量を算出する施肥設計装置であって、前記圃場の植物の生育度合いを示すデータである生育データまたは前記圃場の土壌が持つ植物の生育力を示すデータである土壌データのうち少なくとも一つと、前記圃場の位置座標情報である位置データを受け付けるデータベース受付部と、利用者が指定する任意の位置を受け付け、前記位置データに照合する指定位置受付照合部と、前記指定位置受付照合部によって照合された利用者が指定した任意の位置または利用者が指定した任意の位置を含む範囲に、利用者が任意に設定する施肥量値を受け付けるユーザー入力施肥量値受付部と、前記生育データまたは前記土壌データのうち少なくとも一つと、前記位置データおよび前記施肥量値を基に、横軸が前記生育データまたは前記土壌データであり、縦軸が施肥量である2次元座標系上で記述される検量線を作成する検量線作成部と、当該施肥対象圃場に使用予定の肥料の総量に対応させて前記検量線の平行移動および傾きの変更の少なくとも一方を行う検量線修正部とを備える施肥設計装置である。本発明において、前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作成部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも少ない場合に、前記検量線を下方に平行移動させ、前記使用予定の肥料の総量が前記検量線作成部で求めた検量線から得られる肥料の総量よりも多い場合に、前記検量線を上方に平行移動させる態様が挙げられる。