(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178925
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】防災シミュレーションシートおよび防災シミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20231211BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022100716
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】512118093
【氏名又は名称】保田 真理
(72)【発明者】
【氏名】保田 真理
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めてシミュレートして防災対策に資する防災シミュレーションシートおよび防災シミュレーションシステムを提供する。
【解決手段】防災シミュレーションシステムは、災害の種類と発生日時を設定する災害設定部11と、災害設定部11により設定された災害の発生日時の前後の時間軸を規定する縦時間軸を設定する縦時間軸設定部12と、縦時間軸における自分と関係を有する事象を入力可能な横関係軸を設定する横関係軸設定部13と、横関係軸に対して自分と関係を有する事象の入力を受け付ける入力受付部14と、横関係軸に入力された事象を検証する検証部15と、検証部15の検証結果に応じたレコメンドを行うレコメンド部16とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害を想定して、自分と関係を有する事象のシミュレーションを行う防災シミュレーションシートであって、
前記災害の種類と発生日時を設定する災害設定部と、
前記災害設定部により設定された災害の発生日時の前後の時間軸を規定する縦時間軸と、
前記縦時間軸における前記事象を入力可能な横関係軸と
を備えることを特徴とする防災シミュレーションシート。
【請求項2】
災害を想定して、自分と関係を有する事象のシミュレーションを行う防災シミュレーションシステムであって、
前記災害の種類と発生日時を設定する災害設定部と、
前記災害設定部により設定された災害の発生日時の前後の時間軸を規定する縦時間軸と、
前記縦時間軸における前記事象を入力可能な横関係軸と、
前記横関係軸に入力された前記事象を検証する検証部と
を備えることを特徴とする防災シミュレーションシステム。
【請求項3】
請求項2記載の防災シミュレーションシステムにおいて、
前記検証部の検証結果に応じたレコメンドを行うレコメンド部を備えることを特徴とする防災シミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害を想定して、自分と関係を有する事象のシミュレーションを行う防災シミュレーションシートおよび防災シミュレーションシステムに関する。
【0002】
従来この種の防災シミュレーションシステムとしては、下記特許文献1に示すように、災害発生直後の早い時点で行え、かつ、精度の高いシミュレーションを行う防災シミュレーション装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防災シミュレーション装置では、災害発生後にシミュレーションを行うものであり、災害発生以前の防災対策に寄与するものではないという問題があった。
【0005】
また、装置が想定する防災は、例えば、地域防災のような、各地域の人的・組織的関係を考慮したものはなっていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めてシミュレートして防災対策に資する防災シミュレーションシートおよび防災シミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の防災シミュレーションシートは、
災害を想定して、自分と関係を有する事象のシミュレーションを行う防災シミュレーションシートであって、
前記災害の種類と発生日時を設定する災害設定部と、
前記災害設定部により設定された災害の発生日時の前後の時間軸を規定する縦時間軸と、
前記縦時間軸における前記事象を入力可能な横関係軸と
を備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明の防災シミュレーションシートによれば、まず、想定される災害を設定することができる。例えば、台風による豪雨災害や地震などありとあらゆる災害を、その発生日時含めて設定することができる。
【0009】
そして、設定した災害の発生日時の前後の時間軸を縦時間軸として設定する。
【0010】
例えば、台風による豪雨災害であれば、その3時間後、1日後、3日後、30日後、3か月後のほか、3分前、1日前、それ以前の日常生活を縦時間軸として設定し、それぞれの縦時間軸に対して、自分と関係を有する事象を入力していくことができる。
【0011】
例えば、自分と関係を有する事象としては、自分(自分の行動と役割)のほか、周囲の状況や情報発信、家族の行動と役割、近所の人の行動と役割、行政職員の行動と役割が入力される。
【0012】
これにより、想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めて、時間軸に沿ったステージで同時に考えることができる。
【0013】
このように、第1発明の防災シミュレーションシートによれば、想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めてシミュレートして防災対策に資する防災シミュレーションシートを提供することができる。
【0014】
第2発明の防災シミュレーションシステムは、
災害を想定して、自分と関係を有する事象のシミュレーションを行う防災シミュレーションシステムであって、
前記災害の種類と発生日時を設定する災害設定部と、
前記災害設定部により設定された災害の発生日時の前後の時間軸を規定する縦時間軸と、
前記縦時間軸における前記事象を入力可能な横関係軸と、
前記横関係軸に入力された前記事象を検証する検証部と
を備えることを特徴とする。
【0015】
第2発明の防災シミュレーションシステムは、第1発明の防災シミュレーションシートを、例えば、同時に関係者が入力可能なようにシステム上構築したものであり、これにより、システム上で災害発生前後の関係者の行動を全体的にシミュレートすることができる。
【0016】
その中で、入力された自分と関係を有する事象(関係者の行動を含む)の整合性や空欄の存在などを検証して出力することができ、出力された検証結果を見ることで、防災対策の手薄な部分や一貫性を欠く部分をあぶり出すことができる。
【0017】
このように、第2発明の防災シミュレーションシステムによれば、想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めてシステム上でシミュレートして、より高い防災対策に資する防災シミュレーションシステムを提供することができる。
【0018】
第3発明の防災シミュレーションシステムは、第2発明において、
前記検証部の検証結果に応じたレコメンドを行うレコメンド部を備えることを特徴とする。
【0019】
第3発明の防災シミュレーションシステムによれば、検証結果に基づく防災上の問題点を解決するためのソリューションやソリューションのヒントをレコメンドすることができる。
【0020】
例えば、検証結果の問題箇所に対応した解答例を過去のシミュレーション結果や論文の蓄積データから参照してレコメンドすることのほか、防災アプリケーションの活用や防災コンテンツの視聴、さらに、手薄な部分を補填する保険商品の案内を行ってもよい。
【0021】
このように、第3発明の防災シミュレーションシステムによれば、想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めてシステム上でシミュレートして、ソリューションも含めたより高い防災対策に資する防災シミュレーションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の防災シミュレーションシートの一例を示す説明図。
【
図2】本実施形態の防災シミュレーションシートの変更例を示す説明図。
【
図3】本実施形態の防災シミュレーションシステムのシステム構成を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態の防災シミュレーションシート(Our Timeline シート)の例を
図1に示す。
【0024】
時間軸(縦軸):発災前から発災後の時間経過を示している。時間の区切り方は自由に設定できる。
図1の区切りは、日常、3日前、1日前、3時間前、発災、3分後、3時間後、1日後、3日後、30日後、3ヶ月後となっている。左端の時間変化の右隣には、周囲の状況と情報配信の欄が設けられている。
【0025】
関係軸(横軸):▲1▼自分の行動と役割、▲2▼家族の行動と役割、▲3▼近所の住民や職場の人の行動と役割、▲4▼市区町村の職員の行動と役割からなる。
【0026】
前提条件:シート最上部に災害の前提条件が示される。「想定災害」「発生時期や時間」「被害状況」の3種類があり、災害の種類は対象となる地域の特性に応じて設定する。二次災害・三次災害などの想定も導入可能である。
【0027】
シートへの記入は、周囲の状況と情報配信の欄にはそれらを予測して、関係軸の各行動・役割の欄についてはそれらを考えて、時間軸に沿って記載していく。どの部分から記入するかは、記入者の自由とすることもできるし、講師が指示を出すこともできる。
【実施例0028】
前提条件は、想定災害は台風の直撃、時間帯は夜間22:00頃、被害は地域の家屋一部浸水・破損であった。研修では、参加者は5~6人のグループに分かれ、各自がシートに記載した内容をグループ内で共有して意見交換を行った。その後、記載情報をグループで集約し、全体に対して発表した。発表会の後、各参加者は、他グループの発表も参考にしながら、再度自分のOur Timelineシートを完成させるという最終課題を課せられた。後日、提出されたシートに対して、研修を担当した講師が添削を施し、再び参加者にシートを返却した。
【0029】
講師が添削したシートを返却した際に、アンケートを同封し、任意で回答してもらった。その中には、OurTimelineの作成に対する感想を記述する欄を設けた。参加者からは「自分の事以外を想定するのは難しかった」「災害後は全く考えていなかった」「市職員がどのように動くのか全く考えていなかった」「高齢者を避難介助するには、日頃からの交流が大切だと思った」「自分で考えていたより、被害は時間で変化するし避難行動のタイミングもずれていた」などの感想が寄せられた。
【0030】
参加者の感想から、災害の時系列に沿って他者や行政の役割・行動を考えることのむずかしさとともに、その重要性や必要性が認識されたことが明らかとなった。Our Timeline シートは、地域全体を視野に入れた防災学習に非常に有用であったことが伺える。今後は、参加者に任意で回答したもらったアンケートの分析を行い、OurTimelineシートがどのような点で効果的であるのかをより詳細に検討していく予定である。
【0031】
また、Our Timeline シートは、記入者だけでなく、行政や講師にとっても有用性が高いものとなることがわかった。シートの記述量や内容は記入者の現在の知識や理解量を反映しており、記入できていない箇所は行政が十分に周知できていない内容であったり、講師がフォローアップすべき内容であったりする。したがって、行政は住民への広報活動の参考にすることができ、講師にとっては学習指導方法の改善につなげることができる。
【0032】
Our Timelineは地域防災リーダー育成のためのツールとして開発したものであるが、一般市民に対する防災教育ツールとしても利用可能である。今後は、発達段階に応じてシートを改良し、例えば中学生や高校生を対象とする講座や授業での利活用を検討したい。
【0033】
なお、中学生向けのOurTimelineシートの一例を
図2に示す。
【0034】
さらに、防災シミュレーションシートであるOurTimelineシートを、同時に関係者が入力可能なようにシステム上構築してもよい。
【0035】
より具体的には、
図3に示すように、本実施形態の防災シミュレーションシステムは、災害を想定して自分と関係を有する事象のシミュレーションを行う防災シミュレーションシステムであって、
前記災害の種類と発生日時を設定する災害設定部11と、
前記災害設定部11により設定された災害の発生日時の前後の時間軸を規定する縦時間軸を設定する縦時間軸設定部12と、
前記縦時間軸における自分と関係を有する事象を入力可能な横関係軸を設定する横関係軸設定部13と、
横関係軸に対して自分と関係を有する事象の入力を受け付ける入力受付部14と、
前記横関係軸に入力された事象を検証する検証部15と、
検証部15の検証結果に応じたレコメンドを行うレコメンド部16を備える。
【0036】
かかる防災シミュレーションシステムは、同時に関係者が入力可能なようにシステム上構築したものであり、これにより、システム上で災害発生前後の自分と関係を有する事象(関係者の行動を含む)全体をシミュレートすることができる。
【0037】
その中で、入力された自分と関係を有する事象(関係者の行動を含む)の整合性や空欄の存在などを検証して出力することができ、出力された検証結果を見ることで、防災対策の手薄な部分や一貫性を欠く部分をあぶり出すことができる。
【0038】
検証部15による不整合や空欄の検出は、ディープラーニングなどの機械学習により実行されてもよいが、より簡易には、逃げる⇔留まる など対概念の検出により実行されてもよい。
【0039】
さらに、レコメンド部16により、検証結果に基づく防災上の問題点を解決するためのソリューションやソリューションのヒントをレコメンドすることができる。
【0040】
例えば、検証結果の問題箇所に対応した解答例を過去のシミュレーション結果や論文の蓄積データから参照してレコメンドすることのほか、防災アプリケーションの活用や防災コンテンツの視聴、さらに、手薄な部分を補填する保険商品の案内を行ってもよい。
【0041】
また、これらデータベースは、防災シミュレーションシステム内に構築されてもよいが、外部サーバを参照することにより実現されてもよい。
【0042】
このように、本実施形態の防災シミュレーションシステムによれば、想定される災害の前後を自分と関係を有する事象を含めてシステム上でシミュレートして、ソリューションも含めたより高い防災対策に資する防災シミュレーションシステムを提供することができる。