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特開2023-178945カーボンナノ材料の精製のための試薬溶液および精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178945
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】カーボンナノ材料の精製のための試薬溶液および精製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/17 20170101AFI20231211BHJP
【FI】
C01B32/17
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069569
(22)【出願日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202221032397
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】セシュバブ、ナラヤナム
(72)【発明者】
【氏名】クマール、サーガル パル
(72)【発明者】
【氏名】サマラ、バヌムルシー
(72)【発明者】
【氏名】モハナスンダラム、パルヴァンナン
(72)【発明者】
【氏名】イルダヤラジ、デボッタ
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール、サンカラ スリ ベンカタ
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC03B
4G146AC07B
4G146AC27B
4G146BA12
4G146BC23
4G146BC43
4G146CA02
4G146CA11
4G146CB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境に優しい非鉱酸系の試薬溶液を使用して、最大15重量%の触媒金属を担持するカーボンナノ材料から触媒金属を除去するための試薬溶液および方法を提供する。
【解決手段】試薬溶液は過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムから選択される固体試薬を含み、固体試薬は脱イオン水に溶解される。試薬溶液は、カーボンナノ材料の構造的完全性を乱すことなく、カーボンナノ材料に存在する金属の除去を可能にする。非鉱酸系試薬溶液を用いたカーボンナノ材料の精製方法であって、試薬溶液を初期のカーボンナノ材料と混合してカーボンナノ材料スラリーを作成し、撹拌しながら、前記スラリーを徐々に加熱し、真空下で前記スラリーを濾過後脱イオン水で洗浄して、精製されたカーボンナノ材料ケーキを得、熱風オーブン内で乾燥させて、純度が99~99.5重量%を超えるカーボンナノ材料を得る、工程を含む、精製方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ材料の精製のための非鉱酸系試薬溶液であって、
(a)過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される固体試薬と、
(b)脱イオン水と、
を含み、
前記固体試薬は、0.01~1の範囲のモル比で前記脱イオン水に溶解され、
カーボンナノ材料は、0.01~0.2g/ccの範囲のかさ密度であり、
ヘテロ原子を含むまたは含まない前記カーボンナノ材料は、金属炭化物の形態で遷移金属と会合し、担体金属酸化物と共にカプセル化または挿入されている、
ことを特徴とする溶液。
【請求項2】
前記固体試薬が非鉱酸化合物である、非鉱物性および酸ベースの固体試薬である、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記カーボンナノ材料は、単層または二層または三層または薄層のカーボンナノ材料、多層のカーボンナノ材料、カーボンナノファイバー、カーボンナノリング等を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
請求項1に記載の非鉱酸系試薬溶液を用いたカーボンナノ材料の精製方法であって、
(a)試薬溶液を初期のカーボンナノ材料と混合して、カーボンナノ材料スラリーを作成し、
(b)撹拌しながら、前記カーボンナノ材料スラリーを室温から70~100℃の温度まで4~12時間かけて徐々に加熱し、
(c)真空下で前記カーボンナノ材料スラリーを濾過し、続いて脱イオン水で洗浄して、精製されたカーボンナノ材料ケーキを得、
(d)精製された前記カーボンナノ材料ケーキを熱風オーブン内で、120℃で12時間乾燥させて、純度が99~99.5重量%を超えるカーボンナノ材料を得る、
工程を含む、
精製方法。
【請求項5】
前記試薬溶液の濃度が前記初期のカーボンナノ材料の重量に対して1~50重量%の範囲である、請求項4に記載の精製方法。
【請求項6】
前記初期のカーボンナノ材料が、1~15重量%の範囲で存在する金属不純物を含む、請求項4に記載の精製方法。
【請求項7】
前記金属不純物は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンまたはモリブデンを含む、単金属または二金属または三金属または多金属の形態であり、前記金属は、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、または、それらの組み合わせなどの担体材料上に分散されている、請求項6に記載の精製方法。
【請求項8】
前記初期のカーボンナノ材料の純度が85~99重量%の範囲である、請求項4に記載の精製方法。
【請求項9】
前記試薬溶液対前記初期のカーボンナノ材料中の金属不純物の比率が0.1~1の範囲である、請求項4~8のいずれか1項に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しい非鉱酸系の試薬溶液を使用することにより、ヘテロ原子を含むまたは含まないカーボンナノ材料が埋め込まれた触媒金属を除去する方法に関する。より具体的には、本発明は、過硫酸塩のナトリウム塩またはアンモニウム塩またはカリウム塩を含む固体試薬を提供する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノ材料(CNM)は、単層カーボンナノ材料、二層カーボンナノ材料、多層カーボンナノ材料、カーボンナノファイバー、カーボンナノリングなどで構成されている。これらの中で、カーボンナノチューブ(CNT)は単層または多層のグラフェン構造で、さまざまな長さと直径のシームレスなシリンダーに巻き上げられている。CNTは、その構造とチューブのキラリティーにより、優れた熱的、電気的、および機械的特性を備えている。これらの特性は、CNTに存在する残留金属不純物の存在によって大きく影響される。さまざまな電気的、熱的、および機械的用途でCNTの特性を最大限に活用するには、最大限の純度を達成するためにCNTの精製が不可欠となる。
【0003】
CNMから金属不純物を除去するプロセスは、伝統的に、HCl、HNO、HSOおよびHFなどの強力な鉱酸ベースの液体試薬を使用して行われる。更に、高純度のCNMを実現するために、真空アニーリングプロセスも使用されている。
【0004】
従来技術では、過硫酸アンモニウムとアンモニア溶液の組み合わせが、電子プリント回路基板(PCB)部品からの銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属の浸出に使用されている。浸出プロセスは、炭素との化学結合を持たず、本質的に独立した貴金属を選択的に除去する。しかし、現在のアプローチは本質的に排他的であり、CNMは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)の金属酸化物の複数の組み合わせを特徴とする多価金属に関連付けられている。これらの金属不純物は、金属炭化物の形で炭素原子に強く埋め込まれている。したがって、CNMが埋め込まれたこれらすべての金属酸化物を単一ステップで前記試薬溶液を使用して除去することは、特に本発明に記載の前記プロセス条件を使用することによる先行技術ではまだ開示されていない。更に、前記固体試薬と共に、いかなる種類の酸または塩基も使用されていない。
【0005】
CNT製造プロセスには、目的のCNT構造に応じて大気圧または高圧で、500~1000℃の範囲の高温で、触媒基板上で炭化水素原料(窒素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含むまたは含まない)の分解が含まれる。このCNT製造方法では、触媒基板がCNT成長の核剤として機能し、調整されたプロセス条件と触媒の種類に応じて、チップまたはベースの成長メカニズムに従う。結果として得られるCNTの成長は、常にCNT構造に関連付けられている触媒粒子から発生する。
【0006】
触媒基質は、2つまたは3つの金属と適切な担体材料との組み合わせである。触媒中に存在する金属は、CNT製造プロセス中のCNTの成長を促進する。その結果、触媒の金属粒子はCNTチューブの先端または底部にそのまま残る。例えば、CNTの成長がベースの成長メカニズムに従う場合、金属粒子はチューブのベースにあり、先端の成長メカニズムでは先端に金属が結合したCNTが生成される。このようにして生成されたCNTは、常に触媒金属不純物と関連している。更に、異なるプロセスでは、使用する触媒の種類に応じて、また目的とする用途のCNTの構造要件に応じて、純度が70~99重量%の範囲のCNTが生成される。但し、電気/電子/ポリマー/金属複合材料、導電性インクなどの用途でCNTを使用するには、多くの場合、99.5%以上の高純度CNTが必要である。これは、CNTの構造を損なうことなく達成するための興味深い課題である。
【0007】
従来、上記のカーボンナノ材料またはCNTは、湿式化学法または金属の沸点に近い非常に高い温度での金属の高温真空蒸着によって精製されていたが、これは非常に扱いにくく、エネルギー集約的である。湿式化学法では、金属不純物を除去するために高濃度の腐食性酸を使用するが、酸処理を行うと必然的に構造欠陥が多くなり、一部のCNTの構造崩壊により、余分な炭素質物質と共に不要な酸素官能基が導入される。その結果、精製後のCNTの構造的完全性が損なわれる。
【0008】
物理的、化学的、および熱的処理を含む異なる精製戦略を用いた先行技術で概説された多数の報告がある。物理的処理、すなわち超遠心液体分散CNTが報告されているが、これらの粒子は炭素構造に強く付着しているため、触媒不純物は効果的に除去されない(非特許文献1)。
【0009】
ただし、各種CNTの分離は密度勾配に従って行われる。一方、熱処理は、触媒不純物の除去の可能性があるため、400~450℃程度の温度で残留空気雰囲気中でCNTを熱処理することを含むが、これにより、処理温度での固有の触媒粒子の触媒効果により、CNTの燃焼が促進される(例えば非特許文献2、3)。
【0010】
硝酸や過酸化水素などのさまざまな酸を単独で、または金属と組み合わせて、その場でヒドロキシルラジカルを生成する化学酸化もCNTの精製に採用されている。この方法では、残留触媒粒子が酸と反応し、対応する硝酸塩または水酸化物を形成し、続いて水溶液に溶解する。これらの積極的なプロセスは、通常、CNTに深刻な損傷と損失をもたらす。さらに、このプロセスは、多くの場合、少量のバッチ収率、低収率、および/または低純度に制限される。従って、これらの不純物を除去するための効率的な工業規模の精製プロセスが不可欠である。これは、CNTのアプリケーションの多くが高度に精製されたCNTを必要とするためである。
【0011】
特許文献1は、酸化剤の存在下で600から1000℃の範囲の温度で粉砕および加熱することにより、不純な炭素材料をカーボンナノ材料から分離するプロセスを開示している。この方法は、酸化されてガスに放出される不純な炭素材料を除去する。このように、ナノチューブは酸化されないままであるが、この方法は、チューブ先端からのいくらかの長さなど、結果として得られるCNTの物理的特性に妥協を要する。
【0012】
特許文献2は、金属触媒および金属酸化物担体を含有する粗いカーボンナノチューブ生成物のための真空高温プロセスによる精製技術を開示している。このプロセスにより、金属酸化物とサポートキャリアが効果的に除去される。精製プロセスでは、カーボン含有量86%のCNTサンプルを2300℃の高温で5時間処理し、高真空下で最高99.93%の純度に到達させる。
【0013】
特許文献3は、2回の湿式精製工程と1回の乾式精製工程からなる方法を開示しており、これらは順次実施される。第1の湿式精製は、粗製カーボンナノチューブを酸溶液で処理し、続いて第1の湿式精製プロセスからのカーボンナノチューブをアセトンおよび酸溶液を使用して精製する第2の湿式精製ステップを含む。乾燥工程は、カーボンナノチューブを精製するためのガスパージを伴う第2工程の後に実施される。
【0014】
特許文献4には、フェントン試薬を使用してカーボンナノチューブ内の残留金属不純物を除去することが記載されている。本発明は、過酸化水素とともに触媒スラリーを作るためにフェントン試薬で処理された不純なCNT材料の水性スラリーを調製することによる精製プロセスを扱い、Fe2+イオンはヒドロキシルラジカルの生成を触媒する。そして最後に、酸化スラリー中のヒドロキシルラジカルを利用して、CNT材料を精製し、精製されたCNTを提供する。
【0015】
特許文献5は、単層カーボンナノチューブおよび非晶質炭素を、酸化条件下で加熱することにより非晶質炭素を除去するのに十分な方法で除去し、続いて少なくとも約80重量%の単層カーボンナノチューブを含む生成物を回収することによって、混合物を精製する方法を開示している。
【0016】
特許文献6は、ニトロ化剤およびスルホン化剤などの酸化剤からなる群から選択される試薬を液相で使用してカーボンナノチューブを精製することにより、カーボンナノチューブを試薬と反応させて、カーボンナノチューブ以外の炭素不純物を除去する方法を開示している。
【0017】
特許文献7は、酸化剤溶液を加えてカーボンナノチューブスラリーを形成し、スラリーを110℃の高温で加熱して酸化剤の少なくとも一部を蒸発させることにより、遷移金属ナノ粒子と炭素質不純物を含むカーボンナノチューブを精製する方法を開示している。次いで、加熱されたカーボンナノチューブスラリーに酸を添加して、遷移金属粒子を溶解する。
【0018】
特許文献8は、活性金属剤、すなわちリチウム、ナトリウム、カルシウムなどの電気陽性金属、その有機誘導体と接触させ、その後、電子伝達系でさらに処理した後、一酸化炭素で処理することによる、カーボンナノチューブから金属ベースの触媒残留物を除去するためのカーボンナノチューブの脱金属化プロセスを、開示している。
【0019】
特許文献9は、650℃までの水素雰囲気で処理し、次いで、150~200℃下でCOガスで処理することにより、CNT中のCo、NiおよびFeを除去する方法を開示している。更に試料は、金属の高温真空蒸発下で処理される。
【0020】
非特許文献4は、HおよびHClの水性混合物と、40~70℃で4~8時間反応させることによる、35%の不純物を有する単層CNT(SWCNT)サンプルの処理を含むプロセスを開示している。
【0021】
特許文献10は、カーボンナノチューブから金属不純物を除去する方法を開示しており、この方法は、カーボンナノチューブを実質的に水分のない不活性雰囲気中において、蒸留臭素で処理することを含む。処理後、カーボンナノチューブから蒸留臭素が除去され、この方法によりCNTから2.5~3.5重量%の鉄分が除去される。
【0022】
特許文献11は、酸化、還元、およびハロゲン含有ガスの反応によって、SWCNTおよび金属含有残留触媒粒子から余分な炭素を除去する精製プロセスを開示している。この発明は、スケーラブルな高純度SWCNTを提供する。
【0023】
非特許文献5は、超音波照射と過硫酸アンモニウム(APS)の組み合わせにより、長く絡み合った多層カーボンナノチューブ(MWCNT)短く分散可能な断片に切断するための室温法に関する。これにおいては、低濃度の酸素含有基が、基本的なMWCNT構造に損傷を与えることなく、脱イオン水中での超音波照射後にMWCNTの表面に導入されていた。
【0024】
非特許文献6は、カーボンナノチューブの可溶化のさまざまな方法に関連している。方法の1つでは、再蒸留水45ml中の過硫酸カリウム(9.6mmol)の溶液をエチレングリコール溶液に加え、窒素雰囲気下で130℃で6時間撹拌する。次に、0.4gのMWCNTを溶液に加え、激しく攪拌しながら24時間反応させ、CNTの表面被覆高分子電解質を生成する。
【0025】
特許文献12は、SWCNTのカルボン酸官能化に関する。この方法では、未加工の(官能化されていない)SWCNTが過硫酸アンモニウムの水性組成物の浴に加えられ、典型的には、20~120℃の温度で、1時間から数日の処理時間にわたって適切に撹拌しながら、この混合物を還流すし、官能化されたSWCNTを取得する。適切な加熱の後、官能化されたSWCNTの乾燥粉末が得られる。
【0026】
特許文献13は、単層CNTの製造方法に関する。ここでは、単層カーボンナノチューブをHNOで処理して、金属不純物を除去し、分散性を向上させる。(NH/HSO溶液を切断試薬として使用し、25mgのHNO単層カーボンナノチューブ50mlの96%HSOに1時間予備分散させ、混合物を均質化した。次に、4gの過硫酸アンモニウム(NHを酸化剤として添加し、混合物をさらに35~40℃で4、8、20、30時間超音波処理した。最後に、得られたサンプルを120℃で24時間乾燥させた。
【0027】
特許文献14は、単層カーボンナノパイプの製造方法に関する。これは、単層カーボンナノパイプをHNOで処理して金属不純物を除去したものである。(NH/HSO溶液を切断試薬として使用し、25mgのHNO単層カーボンナノチューブを50mlの96%HSOに1時間予備分散させ、混合物を均質化した。次に、4gの過硫酸アンモニア(NHを酸化剤として加え、混合物をさらに35~40℃で4、8、20、30時間超音波処理した。最後に、得られたサンプルを120℃で24時間乾燥させた。
【0028】
特許文献15は、(i)酸化剤が存在する酸溶液中でグラファイトを40℃で1時間反応させること、(ii)ステップ(i)で得られた生成物を水で中性になるまで洗浄し、乾燥させること、を含むグラフェンの製造方法に関する。黒鉛:酸:酸化剤:溶媒の比率は、質量で1:0.1~50:0.1~50:0.1~100である。
【0029】
特許文献16は、ナノ流体の合成方法に関する。この方法では、0.01~0.1重量%の多層カーボンナノチューブを含む水性混合物を最初に10分間超音波処理し、次に、約20gのKPS(過硫酸カリウム)と10gのKOH(水酸化カリウム)を溶液に加え、周囲温度で10分間超音波にさらしました。次に、機能化されたカーボンナノチューブをフィルターで分離し、蒸留水で洗浄した。過硫酸塩の量は、水溶液中に存在する水の約5から約50重量%、約5から約20重量%、および約5から約10重量%の少なくとも1つである。
【0030】
先行技術は、カーボンナノ材料の精製のために一連の異なる方法論に従うことを示しており、これには、酸処理、高温真空アニーリングプロセス、さまざまな過酷な化学試薬によるサンプルの処理などが含まれる。引用された方法は、様々な障害を伴う。例えば、酸ベースの精製は酸廃棄物の生成につながり、したがって廃棄が懸念されるが、高温真空アニーリングプロセスの場合、非常に高いエネルギーが必要であり、小規模に限定される。この観点から、上述の方法に関連する問題を軽減するために、精製プロセスの代替方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】米国特許第5641466号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1436722号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1061040号明細書
【特許文献4】米国特許第7494639号明細書
【特許文献5】米国特許第6683783号明細書
【特許文献6】米国特許第5698175号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第20150225243号明細書
【特許文献8】米国特許第7868333号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第1485271号明細書
【特許文献10】米国特許第8128901号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20020159944号明細書
【特許文献12】米国特許第7645497号明細書
【特許文献13】特許第5228323号公報
【特許文献14】中国特許第101164872号明細書
【特許文献15】米国特許第9162894号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第20200087149号明細書
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Bandow et al., J. Phys. Chem. B, 1997, 101, 8839-8842
【非特許文献2】Chiang et al., J. Phys. Chem. B 2001, 105, 1157-1161
【非特許文献3】Chiang et al., J. Phys. Chem. B 2001, 105, 8297-8301
【非特許文献4】J. Phys. Chem. B, 2007, 111 (6), pp 1249-1252
【非特許文献5】Peng Liu et al.
【非特許文献6】Sergio Manzetti et al.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の発明者は、カーボンナノ材料構造の秩序を保ちながら、カーボンナノ材料の先端または基部にカプセル化された金属、または金属の選択的酸化によってカーボンナノ材料間にインターカレートされた金属を除去するために、試薬の選択が重要であることを発見した。本発明の過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムまたは過硫酸ナトリウム試薬溶液は、反応条件下で分解して過硫酸フリーラジカル種を生成し、これらの種はカーボンナノ材料からの金属の除去に関与し、したがって金属粒子がカーボンナノ材料を離れ、硫酸イオンと反応して溶液に溶解する。本発明は、適度なプロセス条件で水溶液中のカーボンナノ材料を精製することを可能にする、カーボンナノ材料の金属濃度に対して適切なモル比で過硫酸塩のアンモニウム塩またはナトリウム塩またはカリウム塩を含む非酸系の固体試薬アプローチを扱う。同じ方法は、ペットコークスを含む他のタイプの炭素材料の脱金属にも使用できる。
【0034】
本発明は、周辺温度から穏やかな温度の工程条件(ambient to moderate process conditions)でカーボンナノ材料を精製するための試薬溶液を開示する。開示された試薬溶液は、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムまたは過硫酸ナトリウムから選択される固体試薬を含み、所望のモル濃度で脱イオン水に溶解される。試薬溶液は、カーボンナノ材料に存在する金属不純物に対して適切なモル比で使用されており、0.1~1の等量か、わずかな比率で存在する。試薬溶液のモル比は、カーボンナノマテリアル(CNM)に存在する金属不純物の濃度に基づいて選択される。
【0035】
前記試薬溶液は、85~99重量%の範囲の純度の初期のカーボンナノ材料と混合されて、カーボンナノ材料のスラリーを作製し、その後、スラリーの均一な混合のために高トルクスターラーを備えた容器に充填される。スラリーを室温で撹拌し続けるか、または70~100℃の範囲の温度まで4~12時間徐々に加熱する。1~15wt%、好ましくは3~15wt%の範囲の触媒金属不純物を有する初期のカーボンナノ材料は、続いて試薬溶液で処理され、カーボンナノ材料に埋め込まれた残留金属が除去される。
【0036】
[本発明の技術的利点]
引用された先行技術に対する触媒の利点は以下の通りである。
(a)使用される固体試薬は、環境に優しい非鉱酸ベースの試薬である。
(b)カーボンナノ材料の精製プロセスは、プロセス温度が真空下で1400~2000℃の範囲に設定される真空アニーリングプロセスとは異なり、低温(40~90℃)で動作し、これは、カーボンナノ材料に存在する金属の沸点温度とほぼ同じである。さらに、真空アニーリングプロセスは、非常に高い温度を必要とするため、非常にエネルギー集約的である。
(c)99.5重量%までの高純度カーボンナノ材料は、カーボンナノ材料の構造的完全性を損なうことなく達成できる。
(d)カーボンナノ材料に酸素官能基が導入されていない。したがって、カーボンナノ材料の電気的特性は十分に保持される。
(e)カーボンナノ材料の一部が酸化される酸精製プロセスとは異なり、副生成物は生成されない。したがって、いくつかの官能基は、不要なカーボンススの形成と共にカーボンナノ材料の欠陥部位に常に導入されるので、カーボンナノ材料の電気的特性が損なわれる。
(f)試薬溶液は水性溶液であるため、環境や人体の健康への生態系への影響はない。更に、試薬は皮膚に接触しても皮膚の火傷を引き起こさないため、安全に取り扱うことができる。及び、
(g)非腐食性試薬であるため、反応器の冶金が保護されるが、濃縮鉱酸ベースの精製プロセスの場合、反応器の冶金が腐食される。または、ガラスベースの反応器を使用する必要があるが、壊れやすいため、これらのタイプの反応器は安全上の理由から工業規模での使用には適していない。
【0037】
[本発明の目的]
本発明の主な目的は、触媒金属不純物を有するヘテロ原子を含むまたは含まないカーボンナノ材料の精製のための試薬溶液を提供することである。試薬溶液は、0.01~1のモル比で脱イオン水に溶解した固体試薬を含む。
【0038】
本発明の別の目的は、試薬溶液を使用するカーボンナノ材料の精製方法を提供することである。
本発明の別の目的は、非官能化、非破壊的方法論を使用し、強酸を使用せずにCNMに埋め込まれた多価触媒金属を除去することである。
【0039】
[略語:]
CNT:カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)
CNM:カーボンナノ材料(carbon nanomaterial)
MWCNT:多層カーボンナノチューブ( multiwalled carbon nanotubes)
APS:過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)
SWCNT:単層カーボンナノチューブ(single walled carbon nanotubes)
KPS:過硫酸カリウム(potassium persulfate )
TGA:熱重量分析(thermogravimetric analysis)
ICP-AES:誘導結合プラズマ原子発光分光法(Inductive coupled Plasma-Atomic emission spectroscopy)
HiPCO:高圧一酸化炭素(high-pressure carbon monoxide)
CSTR:連続攪拌温度反応器(continuous stirring temperature reactor)
ANFD:攪拌ブフナー漏斗フィルター/ドライヤーリアクター(agitated nutsche filter/dryer reactor)
TEM:透過電子顕微鏡法(Transmission Electron Microscopy)
【図面の簡単な説明】
【0040】
(A)TEM画像
図1】(a)未精製の実施例2のCNTのTEM画像、(b)精製された実施例3のCNTのTEM画像
図2】(c)未精製の実施例4のCNTのTEM画像、(d)精製された実施例5のCNTのTEM画像
図3】(e)未精製の実施例6のCNTのTEM画像、(f)精製された実施例7のCNTのTEM画像
【0041】
(B)ラマンスペクトル画像
図4a】未精製の実施例2のCNTのラマンスペクトル
図4b】精製された実施例3のCNTのラマンスペクトル
図5c】未精製の実施例4のCNTのラマンスペクトル
図5d】精製された実施例5のCNTのラマンスペクトル
図6e】未精製の実施例6のCNTのラマンスペクトル(縦軸は強度(カウント)でスケール単位:50カウント、横軸はラマンシフト(cm-1)でスケール単位:500cm-1、ピークは1351.97cm-1、1579.62cm-1、2712.02cm-1
図6f】精製された実施例7のCNTのラマンスペクトル(縦軸は強度(カウント)でスケール単位:50カウント、横軸はラマンシフト(cm-1)でスケール単位:500cm-1、ピークは1354.02cm-1、1577.62cm-1、2724.14cm-1
【0042】
(C)熱重量分析(TGA)画像
図7】(a)未精製の実施例2のCNTのTGA曲線、(b)精製された実施例3のCNTのTGA曲線((a)、(b)ともに、縦軸は重量減少率でスケール単位:20%、横軸は温度でスケール単位:200℃、重量減少率は(a)0.6%、92.9%、(b)0.05%、99.75%)
図8】(c)未精製の試料2のCNTのTGA曲線、(d)精製された試料3のCNTのTGA曲線((c)、(d)ともに、縦軸は重量減少率でスケール単位:20%、横軸は温度でスケール単位:200℃、重量減少率は(c)0.3%、94.9%、(d)0.1%、99.7%)
図9】(e)未精製の実施例6のCNTサンプルのTGA曲線、(f)精製された実施例7のCNTサンプルのTGA曲線((e)、(f)ともに、縦軸は重量減少率でスケール単位:20%、横軸は温度でスケール単位:200℃、重量減少率は(e)0.3%、96.2%、(f)0.05%、99.85%)
【0043】
(D)XRD画像
図10】(a)未精製のサンプル2のCNTのXRD画像、(b)精製されたサンプル3のCNTのXRD画像((a)、(b)ともに、縦軸はカウントでスケール単位:1000、横軸は2θでスケール単位:10度)
図11】(c)未精製の実施例4のCNTサンプルのXRD画像、(d)精製された実施例5のCNTサンプルのXRD画像((c)、(d)ともに、縦軸はカウントでスケール単位:1000、横軸は2θでスケール単位:10度)
図12】(e)未精製の実施例4のCNTサンプルのXRD画像、(f)未精製の実施例5のCNTサンプルのXRD画像((e)、(f)ともに、縦軸はカウントでスケール単位:1000、横軸は2θでスケール単位:10度)
【発明を実施するための形態】
【0044】
[発明の詳細な説明]
当業者は、本開示が具体的に記載されたもの以外の変形および修正を受けることを認識することである。本開示は、そのようなすべての変形および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に参照または示されるプロセスのすべてのステップ、システムの特徴、およびそのようなステップまたは特徴のいずれかまたは複数のすべての組み合わせを含む。
【0045】
[定義]
便宜上、本開示をさらに説明する前に、本明細書で使用される特定の用語、および例をここにまとめる。これらの定義は、開示の残りの部分に照らして読まれるべきであり、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され知られている意味を有するが、便宜上および完全を期すために、特定の用語およびそれらの意味を以下に記載する。
【0046】
冠詞「a」、「an」および「the」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(即ち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0047】
「含む(comprise)」および「含んでいる(comprising)」という用語は、包括的でオープンな意味で使用され、追加の要素を含めることができることを意味する。「のみで構成されている」と解釈されることを意図したものではない。
【0048】
本明細書全体を通して、文脈上特に必要としない限り、「含む(comprise)」という単語、および「含む(comprise)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、述べられた要素またはステップまたは要素またはステップのグループを含むことを意味すると理解される。ただし、他の要素またはステップ、または要素またはステップのグループを除外するものではない。
【0049】
「含有する(including)」という用語は、「含有するが、それに限定されない(including but not limited to)」を意味するために使用される。「「含有する(including)」および「含有するが、含むがこれに限定されない(including but not limited to)」は、同じ意味で使用される。
【0050】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。本明細書で言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、例示のみを目的とするものである。本明細書に記載されているように、機能的に同等の製品およびプロセスは明らかに本開示の範囲内である。
【0052】
本発明は、周囲から中程度のプロセス条件でカーボンナノ材料を精製するための試薬溶液を開示する。開示された試薬溶液は、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムまたは過硫酸ナトリウムから選択される固体試薬を含み、所望のモル濃度で脱イオン水に溶解される。試薬溶液は、カーボンナノ材料(CNM)に存在する金属不純物に対して適切なモル比で、または、等量またはわずかな0.1~1の比率で使用されている。選択された試薬溶液のモル比は、カーボンナノ材料に存在する初期金属不純物に基づいている。前記カーボンナノ材料は、0.01から0.2g/ccの範囲のかさ密度であることを特徴とする。また、ヘテロ原子を含むまたは含まないカーボンナノ材料は、金属炭化物の形で遷移金属と結合し、キャリア金属酸化物とともにカプセル化またはインターカレートされる。
【0053】
別の実施形態では、カーボンナノ材料の精製のための試薬溶液は、
(a)過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される固体試薬、と(b)脱イオン水と、を含み、ここで、固体試薬は0.01~1のモル比で脱イオン水に溶解される。試薬のこのモル比は、カーボンナノ材料の初期純度に応じて0.01モル~1モルまで変化する。また、固体試薬は非鉱酸化合物である。
【0054】
別の実施形態では、規定の精製プロセス条件下で前述の試薬溶液を使用して精製するために、鉄、コバルトおよびニッケル、マンガン、マグネシウムからなる様々な担持触媒に由来するカーボンナノ材料が選択されている。前記試薬は、プロセス条件下でその場で形成される過硫酸ラジカル(SO )を生成し、前記生成された過硫酸ラジカルは、カーボンナノ材料内に埋め込まれた金属不純物と反応する。規定時間の精製処理後、カーボンナノ材料スラリーを真空濾過し、続いて脱イオン水で洗浄する。得られた精製されたカーボンナノ材料ケーキは、120℃の熱風オーブン内で12時間乾燥され、カーボンナノ材料から余分な水分が除去される。オーブンで乾燥したカーボンナノ材料は、熱重量分析(TGA)および誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)技術を使用してさらに特徴付けられ、カーボンナノ材料の残留金属含有量と金属濃度を監視する。
【0055】
さらに別の実施形態では、カーボンナノ材料の精製の方法は、
(a)試薬溶液を、炭化水素原料を使用した触媒化学気相成長工程によって生成された初期のカーボン ナノ材料と混合して、カーボン ナノ材料スラリーを作成し、
(b)撹拌しながら、前記カーボンナノ材料スラリーを室温から70~100℃の温度まで4~12時間かけて徐々に加熱し、
(c)真空下で前記カーボンナノ材料スラリーを濾過し、続いて脱イオン水で洗浄して、精製されたカーボンナノ材料ケーキを得、
(d)精製された前記カーボンナノ材料ケーキを熱風オーブン内で、120℃で12時間乾燥させて、純度が99~99.5重量%を超えるカーボンナノ材料を得る、
工程を含む。
【0056】
さらに別の実施形態では、開示された精製方法は、カーボンナノ材料の構造的完全性を損なうことなく、>99~99.5重量%の純度を有するカーボンナノ材料を提供する。カーボンナノ材料の構造的完全性は、レーザーラマン分光法によって明らかであり、カーボンバンドの強度は、精製された初期のカーボンナノ材料に類似するSp3からSp2に対応する。カーボンナノ材料の現在の精製方法は、腐食性の濃酸溶液の必要性を排除し、それによってカーボンナノ材料の構造的損傷は起こらない。
【0057】
実施形態の1つは、試薬溶液が、脱イオン水に溶解した過硫酸アンモニウム(APS)または過硫酸カリウム(KPS)または過硫酸ナトリウムなどの試薬の1つまたは組み合わせであると述べている。
【0058】
別の実施形態では、異なるモル濃度の試薬溶液が容器内で調製され、気密容器内に保存される。1~100重量%の0.01mol~1mol試薬溶液、好ましくは1~50重量%、より好ましくは1~30重量%の1mol試薬溶液は、初期のカーボンナノ材料を処理して、カプセル化/埋め込みされた過剰な金属不純物をカーボンナノ材料から除去するために使用された。
【0059】
別の実施形態において、前記カーボンナノ材料は、適切な反応器構成において高温で触媒基質の存在下で炭素数C1からC30を有する気体または液体の炭化水素供給原料から得られる。カーボンナノ材料は、初期流動化を伴う水平、垂直管型反応器、連続流動化、固定床または浮遊触媒反応器、高圧一酸化炭素(HiPCO)プロセス反応器など、さまざまなタイプの反応器での触媒化学蒸着に至るさまざまなプロセスによって得られる。
【0060】
別の実施形態では、前記カーボンナノ材料は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、モリブデンの単金属または二金属または三金属または多金属形態のいずれかの金属不純物を含み、金属は、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、またはそれらの組み合わせなどの担体材料上に分散されている。
【0061】
別の実施形態では、カーボンナノ材料は、好ましくは触媒の存在下で液体または気体の炭化水素供給原料を使用して、流動化プロセスから生成され、ここで、触媒は、好ましくは、マグネシアに担持された鉄-マンガン、マグネシアに担持されたニッケル-マンガン、またはマグネシアに担持されたコバルト-マンガンから選択される。
【0062】
別の実施形態では、カーボンナノ材料は、単層または二層または三層のカーボンナノ材料、多層カーボンナノ材料、カーボンナノファイバー、カーボンナノリングなどからなる群から選択されるカーボンナノチューブを含む。生成されたカーボンナノ材料は、直径が1~100nmの範囲で、チューブの長さが1~50μmの範囲で、かさ密度が0.01~0.25g/ccで、ベアリングメタルの含有量が0.1~15重量%、好ましくは0.1~10重量%の範囲で変化するチューブ構造の特性を持つ。
【0063】
別の実施形態では、このように生成されたカーボンナノチューブ(CNT)は、ボールミル粉砕されて微粉末に均質化される。さらに、連続撹拌温度反応器(CSTR)または攪拌ブフナー漏斗フィルター/ドライヤー(ANFD)内で、こうして形成された1~15重量%の金属濃度を有するCNT粉末を試薬溶液と混合することにより、CNTスラリーを調製する。CNTスラリーをANFD中の試薬溶液と混合し、室温~100℃、より好ましくは40~70℃の範囲の温度で、4~12時間攪拌する。処理されたCNTスラリーを、真空にさらして過剰な水溶液を除去し、続いて脱イオン水で洗浄する。このようにして得られたろ液ケーキを120℃で6~12時間オーブンで乾燥する。
【0064】
別の実施形態では、精製されたCNTは、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)、熱重量分析(TGA)、ラマン分光法、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって分析されて、金属プロファイリング、残留ミール含有量、構造欠陥、および構造形態をそれぞれ監視する。
【0065】
別の実施形態では、試薬でのCNTの精製処理の後、構造的完全性を保持しながら99.5重量%以上の炭素純度を有する精製CNTが得られる。
【0066】
[実施例]
本発明の基本的な態様を説明してきたが、以下の非限定的な例は、その特定の実施形態を説明するものである。当業者は、本発明の本質を変更することなく、本発明に多くの変更を加えることができることを理解するであろう。
【0067】
[実施例1:試薬溶液の調製]
228gの過硫酸アンモニウムを10リットルの脱イオン水に撹拌条件下で溶解させ、これを溶液Aとする。調製された溶液は、適切な濃度で金属を除去するためのCNT精製プロセスの精製剤として使用できるさまざまな密閉容器に保管される。
【0068】
[実施例2:Fe-Mn触媒を使用したカーボンナノチューブ(CNT)の製造工程]
MgO触媒上に担持された20重量%の鉄および22重量%のマンガン100gを垂直流動床反応器に充填し、次いで反応器を不活性ガス雰囲気下で650℃の温度まで加熱する。所望の温度に達した後、水素を窒素ガスと共に触媒上に通し、金属酸化物触媒を2時間還元する。還元工程の終了後、水素ガスを止め、窒素ガスを触媒上に連続的に通したままにする。石油炭化水素供給物は、連続高圧分配ポンプを使用して、毎時400gmの流速で反応器に供給される。液体供給物を400℃まで予熱し、供給蒸気を窒素ガスの補助により反応器に運ぶ。原料蒸気と窒素ガスは反応器に入り、そこで原料蒸気は触媒表面上を通り、その結果、原料は分解して固体炭素生成物を形成し始める。工程の8時間後、供給を停止し、反応器を窒素雰囲気で冷却する。重量が1.5kgの固体炭素生成物を反応器から排出する。CNTの理論上の純度は約93重量%である。
【0069】
炭素サンプルを、生成された炭素生成物の物理化学的特性を得るために、ICAP、XRD、TEM、ラマン分光法、およびTGAによって分析する。
【0070】
[実施例3:カーボンナノチューブ(CNT)の精製プロセス]
実施例2で製造された炭素純度93重量%のCNT1.5kgを20リットルのステンレス鋼容器に入れる。濃度範囲0.45molの全金属不純物を含むCNT。実施例1で調製した0.1M試薬溶液の100%試薬溶液を1.5kgのCNT粉末に加えてCNTスラリーを作製した。このように形成されたCNTスラリーを、容器が70℃の温度で12時間加熱している間、連続攪拌下に保持する。その後、ヒーターを止めて撹拌しながら容器を冷却し、スラリー溶液をしばらく静置して固体塊を底に沈降させ、過剰の溶液をデカントする。湿った固体CNTサンプルを真空下で水で洗浄し、100℃のオーブンで12時間乾燥させる。次に、得られたCNT材料を粉砕して粉末にし、ICAP、TGA、XRD、ラマン、TEM特性評価法によって分析する。
【0071】
[実施例4:Co-Mn触媒を使用したカーボンナノチューブ(CNT)の製造工程]
MgO触媒上に担持された20重量%のコバルトおよび22重量%のマンガン100gを垂直流動床反応器に充填し、次いで反応器を不活性雰囲気下で650℃の温度まで加熱する。所望の温度に達した後、水素を窒素ガスと共に触媒上に通し、金属酸化物触媒を2時間還元する。還元工程の終了後、水素ガスを止め、窒素ガスを触媒上に連続的に通したままにする。石油炭化水素供給物は、連続高圧分配ポンプを使用して、毎時400gmの流速で反応器に供給される。液体供給物を400℃まで予熱し、供給蒸気は窒素ガスの補助により反応器に運ぶ。原料蒸気と窒素ガスは反応器に入り、そこで原料蒸気は触媒表面を通り、その結果、原料は分解して固体炭素生成物を形成し始める。工程の8時間後、供給を停止し、反応器を窒素雰囲気で冷却する。重量が2.5kgの固体炭素生成物を反応器から排出する。CNTの理論上の純度は約96重量%である。
【0072】
生成された炭素生成物の物理化学的特性を得るために、炭素サンプルをICAP、XRD、TEM、ラマン分光法、およびTGAによって分析する。
【0073】
[実施例5:カーボンナノチューブ(CNT)の精製工程]
実施例4で製造された炭素純度96wt%のCNT2.5kgを20リットルのステンレス製容器に入れる。濃度範囲0.45molの全金属不純物を含むCNT。実施例1で調製した0.1M試薬溶液の100%試薬溶液を2.5kgのCNT粉末に添加してCNTスラリーを作製した。このように形成されたCNTスラリーを、容器を70℃の温度で12時間加熱している間、連続攪拌下に保つ。さらに、ヒーターをオフにして容器を冷却し、スラリー溶液をしばらく静置して固体塊を底に沈降させ、次いで過剰の溶液をデカントする。湿った固体CNTサンプルを真空下で水で洗浄し、オーブンで100℃で12時間乾燥させる。得られたCNT材料を、粉末に粉砕し、ICAP、TGA、XRD、ラマン、TEM/SEMの特性評価法によって分析する。
【0074】
[実施例6:Ni-Mn触媒用カーボンナノチューブ(CNT)の製造工程]
MgO触媒上に担持された20重量%のニッケルおよび22重量%の酸化マンガン100gを垂直流動床反応器に装填し、次いで反応器を不活性雰囲気下で650℃の温度まで加熱する。所望の温度に達した後、水素を窒素ガスと共に触媒上に通し、金属酸化物触媒を2時間還元する。還元工程の終了後、水素ガスを止め、窒素ガスを触媒上に連続的に通過させる。石油炭化水素供給物を、連続高圧分配ポンプを使用して、毎時400gmの流速で反応器に供給する。液体供給物を400℃まで予熱し、供給蒸気を窒素ガスの補助により反応器に運ぶ。原料蒸気と窒素ガスを反応器に入れ、そこで原料蒸気を触媒表面に通過し、その結果、原料は分解して固体炭素生成物を形成し始める。プロセスの8時間後、供給を停止し、反応器を窒素雰囲気で冷却する。固体炭素生成物を反応器から排出し、生成物の重量は2kgである。CNTの理論上の純度は約95重量%である。得られたCNTを、ICAP、TGA、XRD、ラマン、TEM/SEMの特性評価法によって分析する。
【0075】
[実施例7:カーボンナノチューブ(CNT)の精製工程]
実施例6で製造された炭素純度95重量%のCNT2kgを20リットルのステンレス製容器に入れる。濃度範囲0.45molの全金属不純物を含むCNT。実施例1で調製した0.1M試薬溶液の100%試薬溶液を2kgのCNT粉末に添加してCNTスラリーを作製した。このように形成されたCNTスラリーを、容器が70℃の温度で12時間加熱している間、連続攪拌下に保持する。その後、ヒーターをオフにして容器を冷却し、スラリー溶液をしばらく静置して固体塊を底に沈降させ、次いで過剰の溶液をデカントする。デカントされた溶液を、金属分析のためにICAPによって分析する。湿った固体CNTサンプルを真空下で水で洗浄し、オーブンで100℃で12時間乾燥させる。得られたCNT材料を、粉末に粉砕し、ICAP、TGA、XRD、ラマン、TEM/SEMの特性評価法によって分析する。
【表1】
【0076】
したがって、表1から、CNTの精製に関する実施例3、5、および7は、初期のCNTであり、金属の含有量がより高いそれらの対の実施例2、4、および6と比較して、金属の含有量がより低いことが分かる。
【0077】
(付記)
(付記1)
カーボンナノ材料の精製のための非鉱酸系試薬溶液であって、
(a)過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される固体試薬と、
(b)脱イオン水と、
を含み、
前記固体試薬は、0.01~1の範囲のモル比で前記脱イオン水に溶解され、
カーボンナノ材料は、0.01~0.2g/ccの範囲のかさ密度であり、
ヘテロ原子を含むまたは含まない前記カーボンナノ材料は、金属炭化物の形態で遷移金属と会合し、担体金属酸化物と共にカプセル化または挿入されている、
ことを特徴とする溶液。
【0078】
(付記2)
前記固体試薬が非鉱酸化合物である、非鉱物性および酸ベースの固体試薬である、付記1に記載の溶液。
【0079】
(付記3)
前記カーボンナノ材料は、単層または二層または三層または薄層のカーボンナノ材料、多層のカーボンナノ材料、カーボンナノファイバー、カーボンナノリング等を含む、付記1に記載の溶液。
【0080】
(付記4)
付記1に記載の非鉱酸系試薬溶液を用いたカーボンナノ材料の精製方法であって、
(a)試薬溶液を初期のカーボンナノ材料と混合して、カーボンナノ材料スラリーを作成し、
(b)撹拌しながら、前記カーボンナノ材料スラリーを室温から70~100℃の温度まで4~12時間かけて徐々に加熱し、
(c)真空下で前記カーボンナノ材料スラリーを濾過し、続いて脱イオン水で洗浄して、精製されたカーボンナノ材料ケーキを得、
(d)精製された前記カーボンナノ材料ケーキを熱風オーブン内で、120℃で12時間乾燥させて、純度が99~99.5重量%を超えるカーボンナノ材料を得る、
工程を含む、
精製方法。
【0081】
(付記5)
前記試薬溶液の濃度が前記初期のカーボンナノ材料の重量に対して1~50重量%の範囲である、付記4に記載の精製方法。
【0082】
(付記6)
前記初期のカーボンナノ材料が、1~15重量%の範囲で存在する金属不純物を含む、付記4に記載の精製方法。
【0083】
(付記7)
前記金属不純物は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンまたはモリブデンを含む、単金属または二金属または三金属または多金属の形態であり、前記金属は、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、または、それらの組み合わせなどの担体材料上に分散されている、付記6に記載の精製方法。
【0084】
(付記8)
前記初期のカーボンナノ材料の純度が85~99重量%の範囲である、付記4に記載の精製方法。
【0085】
(付記9)
前記試薬溶液対前記初期のカーボンナノ材料中の金属不純物の比率が0.1~1の範囲である、付記4~8のいずれか1つに記載の精製方法。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5c
図5d
図6e
図6f
図7
図8
図9
図10
図11
図12