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特開2023-178950難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178950
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システム
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20231211BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20231211BHJP
   G06K 7/12 20060101ALI20231211BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20231211BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G09F3/02 F
G06K19/06 037
G06K19/06 140
G06K7/12
G01B11/02 H
G01B11/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079937
(22)【出願日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2022091470
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 啓二
(72)【発明者】
【氏名】大川 晃次郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 正
(72)【発明者】
【氏名】大西 二郎
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065AA37
2F065BB28
2F065FF01
2F065FF42
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
(57)【要約】
【課題】マーカーの機能を維持したまま、表示する図形が人の目に見えにくい難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システムを提供する。
【解決手段】難視認性マーカー1は、可視光では不透明に観察される基材層10と、基材層10と積層され、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する材料によって図形を近赤外光により観察可能に表示する表示層30とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光では不透明に観察される基材層と、
前記基材層と積層され、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する材料によって図形を近赤外光により観察可能に表示する表示層と、
を備える難視認性マーカー。
【請求項2】
請求項1に記載の難視認性マーカーにおいて、
前記基材層は、近赤外光を透過すること、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項3】
請求項1に記載の難視認性マーカーにおいて、
前記基材層は、近赤外光を反射すること、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項4】
請求項1に記載の難視認性マーカーにおいて、
前記基材層と前記表示層との間には、前記表示層を前記基材層に接合する接合層が設けられていること、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の難視認性マーカーにおいて、
前記基材層の前記表示層とは反対側には、前記難視認性マーカーを貼り付け対象物へ貼り付けるための粘着層が設けられていること、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項6】
請求項1に記載の難視認性マーカーにおいて、
前記表示層が表示する図形は、独立した形状として観察可能な3個以上のマークと、固有情報を識別可能な識別マークとのうちの少なくとも一方を含むこと、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項7】
請求項6に記載の難視認性マーカーにおいて、
前記識別マークは、2次元バーコード、3次元バーコード、QRコード、ArUco、のいずれかであること、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項8】
請求項1に記載の難視認性マーカーにおいて、
可視光に対しては不透明であり、かつ、近赤外光に対しては透過性を有する隠蔽層を前記表示層よりも観察側に備えること、
を特徴とする難視認性マーカー。
【請求項9】
請求項1に記載の難視認性マーカーを作製するための難視認性マーカー印刷用転写シートであって、
離型性を有する離型性支持体と、
前記離型性支持体と積層され、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する層を含む転写層と、
を備える難視認性マーカー印刷用転写シート。
【請求項10】
請求項1に記載の難視認性マーカーと、
前記難視認性マーカーを撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された前記難視認性マーカーの画像に基づいて演算を行う演算部と、
を備える難視認性マーカーシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の難視認性マーカーシステムにおいて、
前記表示層が表示する図形は、独立した形状として観察可能な3個以上のマークと、固有情報を識別可能な識別マークとの双方を含み、
前記演算部は、
前記難視認性マーカーの画像に含まれる前記マークの画像に基づいて、前記撮影部と前記難視認性マーカーとの相対的な位置関係と、前記難視認性マーカーの近傍における物体の寸法又は指定位置間の距離と、複数配置された前記難視認性マーカーの間の距離と、前記難視認性マーカーの姿勢と、の内の少なくとも1つを演算する第1演算処理と、
前記難視認性マーカーの画像に含まれる前記識別マークの画像に基づいて、前記撮影部と前記難視認性マーカーとの相対的な位置関係と、前記難視認性マーカーの近傍における物体の寸法又は指定位置間の距離と、複数配置された前記難視認性マーカーの間の距離と、前記難視認性マーカーの姿勢と、の内の少なくとも1つを演算する第2演算処理と、
を実行可能であり、
前記演算部は、前記第1演算処理によって適切に演算が行える場合には、前記第1演算処理による演算結果を出力し、前記第1演算処理によって適切に演算が行えない場合には、前記第2演算処理による演算結果を出力すること、
を特徴とする難視認性マーカーシステム。
【請求項12】
請求項10に記載の難視認性マーカーシステムのプログラムであって、
コンピュータに、
前記撮影部が前記難視認性マーカーを撮影するステップと、
前記演算部が演算するステップと、
を実行させるための難視認性マーカーシステムのプログラム。
【請求項13】
請求項1に記載の難視認性マーカーを発行する難視認性マーカー発行システムであって、
前記基材層に対して前記表示層の図形を転写印刷するプリンターを備え、
前記プリンターは、可搬性を有しており、印刷する前記図形に関する可変情報の入力をオンデマンドで受け付ける入力部と、
前記入力部によって入力された情報に基づいて前記図形を転写印刷する印刷部と、
を備えること、
を特徴とする難視認性マーカー発行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外光を利用してマーカーの検出を行い、マーカーの位置と方向を計測する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-106238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のマーカーでは、マーカー模様が可視光でも明瞭に視認可能であった。そのため、目立ってしまって違和感を与えたり、美観を損ねたりするおそれがあり、使い難い場合があった。
【0005】
本開示の課題は、マーカーの機能を維持したまま、表示する図形が人の目に見えにくい難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
第1の開示は、可視光では不透明に観察される基材層(10、10B)と、前記基材層(10、10B)と積層され、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する材料によって図形を近赤外光により観察可能に表示する表示層(30)と、を備える難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)である。
【0008】
第2の開示は、第1の開示に記載の難視認性マーカー(1、1C、1D)において、前記基材層(10)は、近赤外光を透過すること、を特徴とする難視認性マーカー(1、1C、1D)である。
【0009】
第3の開示は、第1の開示に記載の難視認性マーカー(1B)において、前記基材層(10B)は、近赤外光を反射すること、を特徴とする難視認性マーカー(1B)である。
【0010】
第4の開示は、第1の開示から第3の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)において、前記基材層(10、10B)と前記表示層(30)との間には、前記表示層(30)を前記基材層(10、10B)に接合する接合層(20)が設けられていること、を特徴とする難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)である。
【0011】
第5の開示は、第1の開示から第4の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)において、前記基材層(10、10B)の前記表示層(30)とは反対側には、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)を貼り付け対象物へ貼り付けるための粘着層(11)が設けられていること、を特徴とする難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)である。
【0012】
第6の開示は、第1の開示から第5の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)において、前記表示層(30)が表示する図形は、独立した形状として観察可能な3個以上のマーク(2)と、固有情報を識別可能な識別マーク(5)とのうちの少なくとも一方を含むこと、を特徴とする難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)である。
【0013】
第7の開示は、第6の開示に記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)において、前記識別マーク(5)は、2次元バーコード、3次元バーコード、QRコード、ArUco、のいずれかであること、を特徴とする難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)である。
【0014】
第8の開示は、第1の開示から第7の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1D)において、可視光に対しては不透明であり、かつ、近赤外光に対しては透過性を有する隠蔽層(50)を前記表示層(30)よりも観察側に備えること、を特徴とする難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)である。
【0015】
第9の開示は、第1の開示から第8の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)を作製するための難視認性マーカー印刷用転写シート(330)であって、離型性を有する離型性支持体(332)と、前記離型性支持体と積層され、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する層を含む転写層(331)と、を備える難視認性マーカー印刷用転写シート(330)である。
【0016】
第10の開示は、第1の開示から第8の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)と、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)を撮影する撮影部(401)と、前記撮影部(401)により撮影された前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の画像に基づいて演算を行う演算部(402)と、を備える難視認性マーカーシステム(500)である。
【0017】
第11の開示は、第10の開示に記載の難視認性マーカーシステム(500)において、前記表示層(30)が表示する図形は、独立した形状として観察可能な3個以上のマーク(2)と、固有情報を識別可能な識別マーク(5)との双方を含み、前記演算部(402)は、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の画像に含まれる前記マーク(2)の画像に基づいて、前記撮影部(401)と前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)との相対的な位置関係と、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の近傍における物体の寸法又は指定位置間の距離と、複数配置された前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の間の距離と、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の姿勢と、の内の少なくとも1つを演算する第1演算処理と、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の画像に含まれる前記識別マーク(5)の画像に基づいて、前記撮影部(401)と前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)との相対的な位置関係と、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の近傍における物体の寸法又は指定位置間の距離と、複数配置された前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の間の距離と、前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)の姿勢と、の内の少なくとも1つを演算する第2演算処理と、を実行可能であり、前記演算部(402)は、前記第1演算処理によって適切に演算が行える場合には、前記第1演算処理による演算結果を出力し、前記第1演算処理によって適切に演算が行えない場合には、前記第2演算処理による演算結果を出力すること、を特徴とする難視認性マーカーシステム(500)である。
【0018】
第12の開示は、第10の開示又は第11の開示に記載の難視認性マーカーシステムのプログラムであって、コンピュータ(402)に、前記撮影部(401)が前記難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)を撮影するステップと、前記演算部(402)が演算するステップと、を実行させるための難視認性マーカーシステムのプログラムである。
【0019】
第13の開示は、第1の開示から第8の開示までのいずれかに記載の難視認性マーカー(1、1B、1C、1D)を発行する難視認性マーカー発行システム(200)であって、前記基材層(10、10B)に対して前記表示層(30)の図形を転写印刷するプリンター(310)を備え、前記プリンター(310)は、可搬性を有しており、印刷する前記図形に関する可変情報の入力をオンデマンドで受け付ける入力部(311)と、前記入力部(311)によって入力された情報に基づいて前記図形を転写印刷する印刷部(312、313)と、を備えること、を特徴とする難視認性マーカー発行システム(200)である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、マーカーの機能を維持したまま、表示する図形が人の目に見えにくい難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示による難視認性マーカーの第1実施形態を示す図であり、近赤外光で観察した場合の見え方を示す図である。
図2】難視認性マーカー1を図1中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。
図3】難視認性マーカー1を貼り付け対象物100に貼り付けて可視光で観察した場合の見え方を示す図である。
図4】難視認性マーカー発行システム200の構成例を示す図である。
図5】ブランク320と転写シート330とをサーマルヘッド313付近で切断した断面図である。
図6】第1実施形態の難視認性マーカー1を含む難視認性マーカーシステム500を示す図である。
図7】第1実施形態の難視認性マーカーシステム500を用いた自動搬送機400の制御動作の流れを示すフローチャートである。
図8】第2実施形態の難視認性マーカー1Bを図2と同様な位置で切断した断面図である。
図9】本開示による難視認性マーカーの第3実施形態を示す図であり、近赤外光で観察した場合の見え方を示す図である。
図10】第3実施形態の難視認性マーカーシステム500を用いた自動搬送機400の制御動作の流れを示すフローチャートである。
図11】障害物によってマーク2の一部が適切に撮影されていない状態を示す図である。
図12】第4実施形態の難視認性マーカー1Dを図2と同様な位置で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本開示による難視認性マーカーの第1実施形態を示す図であり、近赤外光で観察した場合の見え方を示す図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本明細書において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
また、本発明において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。例えば、仮に可視光を透過しないものであっても、赤外線を透過するものであれば、赤外線用途に用いる場合においては、透明として取り扱うものとする。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において規定する具体的な数値には、一般的な誤差範囲は含むものとして扱うべきものである。すなわち、±10%程度の差異は、実質的には違いがないものであって、本件の数値範囲をわずかに超えた範囲に数値が設定されているものは、実質的には、本件発明の範囲内のものと解釈すべきである。
【0024】
難視認性マーカー1は、図1に示すように後述する保護層40が設けられている表面の法線方向から見たときに、略正方形形状である板状に構成されており、識別マーク5が設けられている。本実施形態では、表面側から見た形状が80mm×80mmの略正方形形状(各角部に面取り形状あり)に形成されている。
【0025】
難視認性マーカー1は、例えば、商品を陳列する商品棚毎に貼り付けて、カメラを備えた自動搬送機(ロボット)等の自動運転制御に利用することができる。すなわち、カメラによる撮影結果から、自動搬送機と商品棚との相対位置関係を正確に把握することができ、その相対位置関係に基づいて自動搬送機の運転を制御可能である。そのような用途としては、難視認性マーカー1の表面側から見た寸法は、100mm×100mm以下の大きさが望ましいが、本実施形態の難視認性マーカー1によれば、そのような小さなサイズであっても、非常に高精度の位置検出を行うことが可能である。
なお、難視認性マーカー1の外形は、上記例に限らず、例えば、10mm×10mm、20mm×20mm、40mm×40mm、44mm×44mm、60mm×60mm等、適宜変更可能である。
【0026】
識別マーク5は、難視認性マーカー1の中央に設けられており、識別マーク5のパターンによって、特定の意味を関連付けられて固有の情報をパターンにより表示するパターン図形(固有情報を識別可能な識別マーク)である。例えば、識別マーク5は、異なるパターン毎に、固有の番号やアルファベット等を関連付けられている。なお、識別マーク5としては、例えば、2次元バーコード、3次元バーコード、QRコード(登録商標)、ArUco、等を利用することができる。なお、識別マーク5は、上述のように各種公知の識別コード等を利用可能であるが、パターン数を少なくして大きなパターンとした本実施形態のような識別マーク5とすることにより、カメラによる検出を容易に行うことができる。
【0027】
本実施形態では、識別マーク5には、ArUcoを用いている。ArUcoは、以下のインターネットURLにおいて公開されている技術である。“Detection of ArUco Markers”[令和4年3月23日検索]、インターネット<URL:https://docs.opencv.org/4.x/d5/dae/tutorial_aruco_detection.html>。このwebページには、ArUcoを用いて位置及び姿勢計測を行うことについても記載されている。このArUcoを用いた位置及び姿勢の計測によれば、撮影位置と難視認性マーカー1との相対的な位置関係(難視認性マーカー1の姿勢も含む)を検出(以下、単に位置検出とも呼称する)することができる。
【0028】
図2は、難視認性マーカー1を図1中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。図2(a)は、貼り付け対象物に貼り付ける前の未使用状態の難視認性マーカー1を示し、図2(b)は、壁面等の貼り付け対象物100に貼り付けた状態の難視認性マーカー1を示している。
難視認性マーカー1は、図2中の上方が観察側であり、図2中の下方が貼付け面側である。難視認性マーカー1は、貼付け面側から順に、セパレータ12と、粘着層11と、基材層10と、接合層20と、表示層30と、保護層40とを備えている。
【0029】
基材層10は、表示層30を設けるためのベースとなる層であり、可視光では不透明に観察され、かつ、近赤外光(波長780nm以上)を透過する(近赤外光では透明)。ここで、「可視光では不透明」とは、完全に可視光を遮断することを差すものではなく、基材層10の可視光における透過率(JIS K7136準拠して測定した全光線透過率)は、50%以下であることを差している。また、基材層10の可視光における透過率(JIS K7136準拠して測定した全光線透過率)は、30%以下であることがより望ましい。また、基材層10の近赤外光透過率(波長940nmの透過率)は、40%以上であることが望ましい。
また、基材層10は、可視光で不透明であればよく、可視光において観察される色は、壁面等の貼り付け対象物100の色に合わせて適宜選択することができる。
【0030】
基材層10に用いることができる材料、すなわち、可視光に対しては不透明であり、近赤外光に対しては透明な材料例を以下に例示する。
【0031】
(基材層の材料例1)
基材層10に用いることができる材料としては、例えば、特開2010-72616号公報に記載の赤外線通信用光学物品と同様な材料を用いることができる。特開2010-72616号公報に記載の材料は、透明なバインダー樹脂に同バインダー樹脂とは屈折率の異なる微粒子を均一に分散させて、同微粒子に可視光域の光を散乱反射させて白色を発色させるようにするとともに、長波長側の光の透過率が高くなるような波長依存性を有するように微粒子の平均粒径を設定し、赤外線の通信帯の波長域における透過率を12%以上に設定している。
【0032】
(基材層の材料例2)
基材層10に用いることができる材料としては、例えば、特開2019-207303号公報に記載の黒色顔料組成物と同様な材料を用いることができる。特開2019-207303号公報に記載の材料は、赤色顔料を含まない顔料と、バインダー樹脂と、有機溶剤とを含有し、顔料がC.I.ピグメントグリーン62、及びC.I.ピグメントグリーン63からなる群より選ばれる少なくとも1つと、紫色顔料と、黄色顔料とを含有する。これにより、この材料は、波長400~700nmの可視光領域の隠蔽性に優れて可視光では黒色に観察され、波長800nm以上の近赤外領域に高い透過率を有する。
【0033】
(基材層の材料例3)
基材層10に用いることができる材料としては、例えば、特開2018-44991号公報に記載の赤外線透過部材と同様な材料を用いることができる。特開2018-44991号公報に記載の材料は、黒色顔料以外の着色顔料及び樹脂バインダーを含有し、850nmの波長を持つ光及び940nmの波長を持つ光のうち少なくともいずれか一方の光の透過率が80%以上であり、かつ、380nmよりも大きく780nmよりも小さい波長を持つ光の透過率が0.01%以下である。この材料は、着色顔料の色を変えることにより、可視光において観察される色を様々な色に作り変えることができる。着色顔料の例としては、例えば、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料等を例示でき、これらの各色の顔料を混在させることができる。
【0034】
基材層10の可視光において観察される色は、上記材料例1~3を適宜選択することにより、白色、黒色、及び、その他の様々な色とすることができる。
【0035】
接合層20は、基材層10と表示層30との間に設けられており、基材層10と表示層30とを接合している。接合層20は、可視光を透過するが、近赤外光については後述する表示層30によって吸収されるので透明であっても不透明であってもよい。
接合層20の可視光における透過率(JIS K7136準拠して測定した全光線透過率)は、80%以上であることが望ましい。
接合層20は、例えば、エチレン―酢ビ共重合体、塩ビ―酢ビ共重合体、アクリル系、ポリ塩化ビニリデン等により構成することができる。本実施形態では、表示層30を後述する転写印刷によって基材層10に積層するために、接合層20を設けている。しかし、基材層10の上に表示層30を直接印刷したり、表示層30自体に転写性を設けたりする場合には、接合層20は、省略してもよい。
【0036】
表示層30は、接合層20を介して基材層10と積層され、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する材料によって図形(識別マーク5)を近赤外光により観察可能に表示する。表示層30の可視光における透過率(JIS K7136準拠して測定した全光線透過率)は、70%以上であることが望ましい。また、表示層30の近赤外光透過率(波長940nmの透過率)は、30%以下であることが望ましい。
【0037】
表示層30は、図形(識別マーク5)の形状となる領域にのみ形成されており、図形以外の領域には設けられていない。図2(b)において、実線で示した矢印は、可視光を示し、一点鎖線で示した矢印は、近赤外光を示している(他の実施形態の図でも同様)。図2(b)に示すように観察側から表示層30に到達した可視光は表示層30をそのまま透過して基材層10で反射して観察側へ戻るが、近赤外光は表示層30によって吸収されるので、観察側へは反射して戻らない。また、表示層30が設けられていない部分では、可視光は基材層10で反射して観察側へ戻るが、近赤外光は、基材層10及び粘着層11を透過して貼り付け対象物100で反射して観察側へ戻る。
【0038】
したがって、可視光については、識別マーク5上であるか否かに関わらずに難視認性マーカー1は、基材層10の色で観察される。よって、基材層10の色を貼り付け対象物100の色に近い色としておけば、可視光下では難視認性マーカー1が目立つことがない。
一方、近赤外光については、識別マーク5のパターン上の領域では表示層30によって吸収されて暗く(図1では黒く表現した)観察され、それ以外の領域では、貼り付け対象物100で反射された光が観察されるので、貼り付け対象物100をそのまま観察しているのと同様に観察される。よって、貼付け対象物100における近赤外光の吸収率が表示層30における近赤外光の吸収率と近くない限りは、識別マーク5のパターンの見え方と貼り付け対象物100の見え方とに違いが生じ(コントラストが生じ)、識別マーク5を観察できる。
【0039】
表示層30に用いることができる近赤外線吸収材料としては、例えば、セシウム酸化タングステン(住友金属鉱山株式会社製 CWO(登録商標))、六ホウ化ランタン(LaB6)、東洋ビジュアルソリューションズ株式会社製 OPTLION(登録商標)、特開2022-1632号公報に記載の材料、株式会社日本触媒製 近赤外線吸収色素 イーエクスカラー(登録商標)、等を挙げることができる。
近赤外線吸収材料を混合させる熱溶融性バインダーとしては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂等を挙げることができる。
【0040】
保護層40は、表示層30の観察側(最も観察側)に設けられており、表示層30を保護する。保護層40は、可視光を透過し、かつ、近赤外光を透過する。保護層40の可視光における透過率(JIS K7136準拠して測定した全光線透過率)は、80%以上であることが望ましい。また、保護層40の近赤外光透過率(波長940nmの透過率)は、80%以上であることが望ましい。
なお、表示層30が十分な強度を有している場合には、保護層40を省略してもよい。保護層40は、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン、フェノール樹脂、ポリエステル、塩ビ―酢ビ共重合体等により構成することができる。
【0041】
粘着層11は、基材層10の表示層30とは反対側に設けられており、難視認性マーカー1を壁面や柱等の貼付け対象物100へ貼り付けるための粘着剤により形成されている。
なお、接着剤等を別途用意して基材層10を貼り付け対象物100に接着等する場合には、粘着層11を省略してもよい。粘着層11は、例えば、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等により構成することができる。
壁面や柱等の貼付け対象物100には意匠性の観点から壁紙が貼られていることが多い。その様な場合、壁紙表面には凹凸形状があることが多いので、粘着剤11の厚みは20μm以上1000μm以下であることが好ましい。粘着剤11の厚みを20μm以上にすることによって、壁紙表面の凹凸形状を粘着剤11で吸収して滑らかにすることが可能だからである。
【0042】
セパレータ12は、易剥離性を備えており、粘着層11に仮接合している。難視認性マーカー1を壁面や柱等の貼付け対象物100へ貼り付ける場合には、セパレータ12を剥離して粘着層11を露出させる。セパレータ12としては、公知のセパレータ、剥離紙等を適宜用いることができる。
【0043】
なお、接合層20と、表示層30と、保護層40とが重なった3層全体での可視光における透過率(JIS K7136準拠して測定した全光線透過率)は、70%以上であることが望ましい。この3層全体での可視光における透過率が高いほど、可視光下で目視した場合の貼り付け対象物100と難視認性マーカー1との見た目の差異が生じにくくなるからである。
【0044】
図3は、難視認性マーカー1を貼り付け対象物100に貼り付けて可視光で観察した場合の見え方を示す図である。
図3の例では、基材層10の色を貼り付け対象物100の色と同色とした場合を示している。
難視認性マーカー1の識別マーク5以外の部分は、基材層10の色で観察されるので、基材層10の色を貼り付け対象物100の色と同色としてある図3の例では、貼り付け対象物100と同色で観察される。また、難視認性マーカー1の識別マーク5の部分については、表示層30が十分な可視光透過性を有していることから基材層10の表面が透けて見えている。よって、難視認性マーカー1の識別マーク5の部分についても、基材層10の色で観察されるので、基材層10の色を貼り付け対象物100の色と同色としてある図3の例では、貼り付け対象物100と同色で観察される。
【0045】
本実施形態の難視認性マーカー1は、利用者が必要とするIDを表す識別マーク5をその都度発行して印刷形成することにより作られるオンデマンド発行が可能な難視認性マーカー発行システム200によって発行することができる。ここで、オンデマンド発行とは、発行時に必要とされているIDを表す識別マーク5をその都度印刷して難視認性マーカー1を発行(作製)することである。なお、利用する目的によっては、工場等において予め決められたIDを表す識別マーク5を持つ形態で難視認性マーカー1を発行(作製)してもよい。
【0046】
図4は、難視認性マーカー発行システム200の構成例を示す図である。
図5は、ブランク320と転写シート330とをサーマルヘッド313付近で切断した断面図である。なお、図5では、理解を容易にするためにブランク320と転写シート(難視認性マーカー印刷用転写シート)330とサーマルヘッド313とを離間して示しているが、転写印刷が行われるときには、ブランク320と転写シート330とサーマルヘッド313とは、密着する。
【0047】
難視認性マーカー発行システム200は、プリンター310を備えており、プリンター310によってブランク320へ転写シート330を用いて転写印刷を行うことにより、難視認性マーカー1が作製(発行)される。なお、難視認性マーカー発行システム200は、プリンター310の他に、プリンター310と通信可能に設けられたスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピューター等の端末装置をさらに備えていてもよい。
プリンター310は、入力部311と、印刷制御部312と、サーマルヘッド313とを備えており、ブランク320に対して転写シート330を用いて識別マーク5を転写印刷して発行する。プリンター310は、可搬性を有しており、容易に持ち運びが可能である。ここで、可搬性を有しているとは、大きさ、形状や重量等が所持や運搬に適するように構成されており、少なくとも人力だけで移動させることができるものとする。プリンター310は、片手で容易に持ち運べる程度の大きさ、形状、及び、重量であることが望ましい。
【0048】
入力部311は、転写印刷する図形に関する可変情報の入力をオンデマンドで受け付ける。図形に関する可変情報とは、例えば、識別マーク5が表す固有のIDであり、例えば、任意の正の整数である。入力部311は、プリンター310に設けられたボタンやタッチパネル等の入力操作部から入力を受け付けてもよいし、不図示の端末装置から入力を受け付けてもよい。
【0049】
印刷制御部312は、入力部311によって入力された情報に基づいてサーマルヘッド313及び不図示の搬送機構を制御する。
サーマルヘッド313は、印刷制御部312によって制御されて、転写シート330を用いて識別マーク5をブランク320へ転写印刷する。
印刷制御部312とサーマルヘッド313とにより、入力部311によって入力された情報に基づいて図形を転写印刷する印刷部が構成されている。
【0050】
ブランク320は、基材層10と、粘着層11と、セパレータ12とを備えている。
基材層10、粘着層11、セパレータ12は、先に説明した難視認性マーカー1の基材層10、粘着層11、セパレータ12に相当するが、接合層20と、表示層30と、保護層40とが積層される前の状態であり、例えば、巻き取られたロール状態でプリンター310に装着されている。
【0051】
転写シート330は、離型性支持体332と、転写層331とが積層されている。
離型性支持体332は、一方の面に離型性を備えており、この離型性を備える面に転写層331を仮接合して保持している。離型性支持体332としては、セパレータ12と同様に、公知のセパレータ、剥離紙等を適宜用いることができる。本実施形態の離型性支持体332は、ベース層332aと、離型層332bとを備えた構成となっている。ベース層332aは、例えば、PET(polyethylene terephthalate)樹脂や、PEN(polyethylene naphthalate)樹脂等により構成することができ、離型層332bは、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂等により構成することができる。
【0052】
転写層331は、接合層20と、表示層30と、保護層40とを備えている。したがって、転写層331は、可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収する層(表示層30)を含む。
接合層20、表示層30、保護層40は、先に説明した難視認性マーカー1の接合層20、表示層30、保護層40に相当するが、セパレータ12と、粘着層11と、基材層10とに積層される前の状態であり、例えば、巻き取られたロール状態でプリンター310に装着されている。
【0053】
識別マーク5を印刷するときには、入力部311によって入力されたID等に相当する識別マーク5の形状に対応させてサーマルヘッド313及び不図示の搬送機構が駆動制御される。これにより、識別マーク5の形状に対応した位置のみが局所的に加熱され、接合層20の接着力が発現して基材層10へ転写層331が部分的に接合される。印刷及び搬送が進むと、ブランク320と転写シート330とが離間し、転写層331のうち接合層20が基材層10に対して接合されている領域のみブランク320側へ転写され、識別マーク5の転写印刷が完了する。なお、転写印刷後のブランク320と転写層331の一部とは、難視認性マーカー1を構成しており、プリンター310から排出される。このとき、セパレータが切断されて難視認性マーカー1が枚葉に校正されるようにしてもよい。
以上のようにして、難視認性マーカー1は、識別マーク5が所望のIDを表示する形態としてオンデマンドで発行される。
【0054】
図6は、第1実施形態の難視認性マーカー1を含む難視認性マーカーシステム500を示す図である。図6において棚Tに向かって左側の難視認性マーカー1は、可視光での見え方を示し、棚Tに向かって右側の難視認性マーカー1は、近赤外光での見え方を示している。
図6に示す例では、棚Tの棚板T1と棚Tの柱T2との交差位置(交点)に難視認性マーカー1を取り付けている。そして、難視認性マーカー1に設けられた識別マーク5としてのArUcoは、いずれも異なるIDが割り振られている。なお、基材層10の可視光での色は、棚Tの色と同色としている。
棚Tは、先に説明した貼り付け対象物100に相当し、棚Tに貼り付けられた難視認性マーカー1は、可視光で観察すると識別マーク5は略観察されることなく、基材層10の色で観察される。よって、可視光では、難視認性マーカー1は、棚Tと同色で観察されるので、難視認性マーカー1の存在が目立つことがない。
また、自動搬送機(ロボット)400には、カメラ(撮影部)401と、演算部402と、制御部403が設けられている。
【0055】
カメラ(撮影部)401は、自動搬送機400の前方を撮影可能に設けられており、難視認性マーカー1を撮影するために設けられている。本実施形態のカメラ401は、少なくとも近赤外領域(波長780nm以上)に感度を有しており、この近赤外領域の被写体からの光を撮影して画像化することができる。なお、カメラ401の近傍には、必要に応じて、近赤外光を被写体へ向けて照射する近赤外光照明を設けてもよい。
演算部402は、カメラ401により撮影された難視認性マーカー1の画像に含まれる識別マーク5の画像を用いて、カメラ401と難視認性マーカー1との相対的な位置関係を演算する。
演算部402が行う識別マーク5の撮影画像を用いて寸法又は識別マーク5の向きを演算する演算方法(測定方法)は、“Detection of ArUco Markers”[令和4年3月23日検索]、インターネット<URL:https://docs.opencv.org/4.x/d5/dae/tutorial_aruco_detection.html>において公開されている方法を用いる。
自動搬送機400の制御を行う本実施形態の場合には、演算部402は、カメラ401と難視認性マーカー1との相対的な位置関係を演算(測定)するが、他の演算(測定)も可能である。例えば、演算部402は、以下のような演算を行うことができる。
【0056】
(演算例1)
先ず、演算部402は、カメラ401と識別マーク5との相対的な位置関係を演算することができる。カメラ401と識別マーク5との相対的な位置関係とは、カメラ401から識別マーク5までの寸法(距離)だけでなく、識別マーク5(難視認性マーカー1)の正面がどの方向を向いているのか、すなわち、マークの姿勢(識別マーク5を含む難視認性マーカー1の姿勢)を含む。ここで、識別マーク5の姿勢とは、例えば、ロール、ヨー、ピッチで表すことができる。
【0057】
(演算例2)
また、演算部402は、識別マーク5の近傍にある物体等の寸法を演算することができる。例えば、識別マーク5を表示する難視認性マーカー1の近傍に立っている人の身長を測定することができる。人の認識は、自動的に認識することができる。また、人に限らず、例えば、木の高さや、動物の大きさ等であってもよいし、窓の大きさ等であってもよい。
【0058】
(演算例3)
また、演算部402は、識別マーク5の近傍において指定された位置間の寸法(指定位置間の距離)を演算することができる。識別マーク5の近傍において指定された位置とは、カメラ401が撮影する撮影画像上で識別マーク5とともに撮影されている範囲において、利用者が指定した位置である。
【0059】
(演算例4)
さらに、演算部402は、複数配置された難視認性マーカー1(識別マーク5)の間の寸法(距離)を演算することができる。難視認性マーカー1が複数配置されている場合に、カメラ401により複数の識別マーク5を1画面内で撮影することにより、複数配置された識別マーク5の間の寸法(距離)を演算することができる。また、先に説明したように、演算部402は、カメラ401と難視認性マーカー1(識別マーク5)との相対的な位置関係を演算することができる。したがって、カメラ401の位置を殆ど動かすことなく、複数配置された難視認性マーカー1を別々に撮影しても、複数配置された難視認性マーカー1(識別マーク5)の間の寸法(距離)を演算することができる。このとき、識別マーク5が表す固有の情報によって、各難視認性マーカー1を分けて認識することができるので、正しく演算を行うことが可能である。
【0060】
制御部403は、演算部402の演算結果に基づいて制御を行う。本実施形態で制御部403が行う制御は、自動搬送機400のフォーク400aの上下動作を含む運転の統括的な制御である。
制御部403は、棚Tの形状や大きさ、及び、棚Tのどの位置にどの識別マーク5を備える難視認性マーカー1が取り付けられているかといった情報を予め有している。よって、制御部403は、演算部402が演算した難視認性マーカー1とカメラ401との相対的な位置関係から、棚Tと自動搬送機400との相対的な位置関係を把握することができる。制御部403は、刻々と変化する棚Tと自動搬送機400との相対的な位置関係を正確に把握することにより、目的とする棚Tに対して正確に自動搬送機400を移動させて、フォーク400aを適切に動作させることが可能となる。ここで、難視認性マーカー1に識別マーク5が設けられているので、個々の棚板T1を識別することができる。
【0061】
本実施形態の演算部402及び制御部403は、コンピュータにコンピュータプログラムをインストールして構成されている。より具体的には、本実施形態の演算部402及び制御部403は、自動搬送機400の制御に用いられるコンピュータに本発明の難視認性マーカーシステム用のアプリケーションプログラムをインストールしたものである。自動搬送機400の制御に用いられるコンピュータは、汎用のスマートフォン、タブレット端末であってもよいし、ノートパソコン等であってもよいし、自動搬送機400の制御に特化した専用のコンピュータであってもよい。本発明でいうコンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいう。
【0062】
なお、本実施形態では、演算部402及び制御部403は、自動搬送機400に搭載されている例を例示したが、例えば、演算部402及び制御部403を自動搬送機400から離れた位置に設置されたサーバ等に設け、無線通信や有線通信を介して自動搬送機400の制御を行ってもよい。この場合、複数台の自動搬送機400からの情報を統括してより適切に各自動搬送機400の動作を制御することができる。なお、演算部402は自動搬送機400に搭載して、制御部403をサーバに設ける構成としてもよい。
【0063】
図7は、第1実施形態の難視認性マーカーシステム500を用いた自動搬送機400の制御動作の流れを示すフローチャートである。
ステップ(以下、単にSとする)11では、制御部403が、カメラ401による撮影と、自動搬送機400の移動を開始する。なお、この例では、簡単のため制御部403は、自動搬送機400の現在の位置を把握している状態から動作を開始しているものとして説明を行う。
S12では、制御部403が、撮影及び移動を継続する。
S13では、制御部403が、カメラ401により撮影されている画像に基づいて、難視認性マーカー1を検出したか否かを判断する。難視認性マーカー1を検出した場合には、S14へ進み、難視認性マーカー1を検出していない場合には、S12へ戻り難視認性マーカー1の検出動作を繰り返す。
S14では、制御部403が、図形(識別マーク5)が示すIDによって難視認性マーカー1がどの棚板T1に設けられた難視認性マーカー1であるのかを識別する。
S15では、演算部402が、カメラ401により撮影された画像中の識別マーク5に基づいて、カメラ401と難視認性マーカー1との相対位置を演算する。
S16では、制御部403が、演算部402の演算結果に基づいて自動搬送機400の動作を制御する。例えば、フォーク400aの上下位置を制御したり、自動搬送機400の位置を制御したりする。
S17では、制御部403が、動作を終了するか否か判断し、動作を継続する場合には、S12へ戻り、動作を継続しない場合には、動作を終了する場合。
以上の各ステップは、難視認性マーカーシステム用のアプリケーションプログラムがコンピュータに実行させるものである。
【0064】
上述した制御動作によって、自動搬送機400は、難視認性マーカー1を撮影して難視認性マーカー1の位置を計測することにより棚Tの柱T2との交差位置(交点)を正確に把握することができる。また、識別マーク5から得た情報により棚板を特定することができ、適切な位置まで自動搬送機400が自動制御されて移動して、棚Tに置かれている物品の補充や入れ替え、ピックアップ等を自動運転で行うことができる。なお、この構成は、例えば、店舗における商品棚に適用することもできるし、物流倉庫や工場の倉庫等にある棚等にも適用することができる。
【0065】
また、商品棚等に関するものに限らず、例えば、建物内部の壁面や柱等に難視認性マーカー1を取り付けて、自動運転車椅子の制御を行うようにしてもよい。この場合であっても、難視認性マーカー1は、可視光における基材層10の色を壁面等と同色にしておけば、目視では目立つことがない。よって、室内空間の美観を損ねることなく、難視認性マーカー1の利便性を享受することができる。
【0066】
以上説明したように、第1実施形態によれば、難視認性マーカー1は、表示層30については可視光を透過し、かつ、近赤外光を吸収するのに対して他の部分では可視光は透過せず(不透明)、近赤外光は透過するので、近赤外光で観察すればマーカーとしての機能を十分に発揮できる。また、難視認性マーカー1は、可視光における基材層10の色を壁面等の貼り付け対象物100と同色にしておけば、可視光では目立つことがなく、違和感を与えたり、美観を損ねたりすることがなく、使い勝手が良好である。
【0067】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の難視認性マーカー1Bを図2と同様な位置で切断した断面図である。図8(a)は、貼り付け対象物に貼り付ける前の未使用状態の難視認性マーカー1Bを示し、図8(b)は、壁面等の貼り付け対象物100に貼り付けた状態の難視認性マーカー1Bを示している。
第2実施形態の難視認性マーカー1Bは、基材層10Bの形態が第1実施形態の基材層10と異なる他は、第1実施形態の難視認性マーカー1と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0068】
第2実施形態の基材層10Bは、可視光については第1実施形態の基材層10と同様に不透明であり、かつ、近赤外光についても不透明である。すなわち、第2実施形態の基材層10Bは、可視光も近赤外光も反射する。したがって、基材層10Bは、ごくありふれた物質によって形成することができる。例えば、基材層10Bは、通常の白色の紙や樹脂板、金属板等であってもよい。特に基材層10Bを貼り付け対象物100の表面素材と同材料としたり、貼り付け対象物100の表面に塗装されている塗料で基材層10Bをコート(塗装)したりすれば、第2実施形態の難視認性マーカー1Bと貼り付け対象物100との一体感を高めることができ、難視認性マーカー1Bをさらに目立たなくすることができる。よって、基材層10Bには、近赤外光で観察したときに表示層30との間でコントラストが十分に得られるものであれば、様々な材料を用いることができる。基材層10Bとして好ましい材料としては、壁紙に一般的に使用されている塩化ビニール樹脂等を主原料とした「ビニールクロス」、パルプを主原料とした「紙クロス」、パルプやポリエステルやレーヨン等の化学繊維を絡み合わせて作られる「織物クロス」等を挙げることができる。
【0069】
以上説明したように、第2実施形態によれば、基材層10Bの選択肢が多いので、より安価に難視認性マーカー1Bを提供できる。また、基材層10Bの材料を貼り付け対象物100の材料と同じものとすれば、難視認性マーカー1Bをさらに目立たなくすることができる。
【0070】
(第3実施形態)
図9は、本開示による難視認性マーカーの第3実施形態を示す図であり、近赤外光で観察した場合の見え方を示す図である。
第3実施形態の難視認性マーカー1Cは、マーク2をさらに備えている点と、マーク2を用いた位置検出を行う点で異なる他は、第1実施形態の難視認性マーカー、難視認性マーカー印刷用転写シート、難視認性マーカーシステム、難視認性マーカーシステムのプログラム、難視認性マーカー発行システムと同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0071】
第3実施形態の難視認性マーカー1Cには、独立した形状として観察可能な円形状の図形であるマーク2が難視認性マーカー1Cの4隅付近に1つずつ、合計4つのマークが間隔を空けて配置されている。マーク2は、3個以上配置されていることが望ましい。マーク2の観察結果から、例えば、マーク2の重心位置を3点算出すれば、観察位置(カメラ等)と難視認性マーカー1Cとの相対的な位置、傾き、姿勢を正確に検出することができるからである。また、マーク2の数が3つよりも多くなれば、例えば、一部のマーク2が何らかの障害によって不鮮明に観察されるような場合に、残るマーク2の観察結果から、位置検出が可能である。また、複数のマーク2を利用することにより、位置検出の精度を高めることもできる。
【0072】
また、本実施形態では、マーク2は、円形状に構成したが、円形状に限らず、三角形や四角形等の多角形形状としてもよいし、その他の形状としてもよい。難視認性マーカー1Cは、このマーク2がどのように観察されるかによって、撮影位置と難視認性マーカー1Cとの相対的な位置関係を検出(以下、単に位置検出とも呼称する)するために用いられる。マーク2を用いた位置及び姿勢の計測は、ArUcoを用いた位置及び姿勢の計測よりも高い精度での計測が可能である。
マーク2は、識別マーク5と同様に表示層30によって形成される。したがって、マーク2の可視光、及び、近赤外光における観察され方(見え方)は、識別マーク5と同様である。
【0073】
また、マーク2を位置検出に用いることから、演算部402が行う演算手法は、第1実施形態と一部異なっている。具体的には、演算部402が行うマーク2の撮影画像を用いて寸法又はマーク2の向きを演算する演算方法(測定方法)は、田中秀幸「ARマーカ技術の基礎と最新動向」電気情報通信学会誌 Vol.97,No.8,2014、p.734-740に記載の手法を用いる。なお、識別マーク5を用いた位置検出については、第1実施形態と同様に行う。
【0074】
本実施形態の演算部402は、第1実施形態における演算例1から演算例4と同様な演算を行うことができる。このとき、マーク2を用いた位置及び姿勢の計測(第1演算処理)に加えて、識別マーク5(ArUco)を用いた位置及び姿勢の計測(第2演算処理)も並行して実行可能である。
マーク2を用いた位置及び姿勢の計測が適切に行うことができている場合には、演算部402は、マーク2を用いた位置及び姿勢の計測結果を出力する。
一方、マーク2の一部が隠れる等して適切に撮影できていない場合には、演算部402は、識別マーク5(ArUco)を用いた位置及び姿勢の計測結果を出力する。
【0075】
図10は、第3実施形態の難視認性マーカーシステム500を用いた自動搬送機400の制御動作の流れを示すフローチャートである。
S21では、制御部403が、カメラ401による撮影と、自動搬送機400の移動を開始する。なお、この例では、簡単のため制御部403は、自動搬送機400の現在の位置を把握している状態から動作を開始しているものとして説明を行う。
S22では、制御部403が、撮影及び移動を継続する。
S23では、制御部403が、カメラ401により撮影されている画像に基づいて、難視認性マーカー1Cを検出したか否かを判断する。難視認性マーカー1Cを検出した場合には、S24へ進み、難視認性マーカー1Cを検出していない場合には、S22へ戻り難視認性マーカー1Cの検出動作を繰り返す。
S24では、制御部403が、識別マーク5によって難視認性マーカー1Cがどの棚板T1に設けられた難視認性マーカー1Cであるのかを識別する。
【0076】
S25では、演算部402がマーク2を用いて難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算(以下、第1演算処理)を行う。
S26では、演算部402が識別マーク5を用いて難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算(以下、第2演算処理)を行う。
上記S25の第1演算処理とS26の第2演算処理とは、並行して演算処理が行われる。ここで、「並行して演算処理が行われる」とは、完全に同時並列的に行われる場合(いわゆる並列処理)に限らず、第1演算処理の次にすぐに第2演算処理が行われその後すぐに第1演算処理を行うといった実質的に略同時に行われている演算処理も含む意味である。すなわち、第1演算処理だけを継続的に行い、第2演算処理は通常は行わないという形態ではなく、双方の演算処理を継続的に行うことを意味している。このようにすることにより、第1演算処理及び第2演算処理の双方の演算結果をタイムラグなくすぐに出力することができる。
【0077】
S27では、演算部402が第1演算処理によって難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算ができたか否かを判断する。相対位置の演算ができている場合には、S28へ進み、相対位置の演算ができていない場合には、S29へ進む。
S28では、演算部402は、第1演算処理によって得られた難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算結果を制御部403へ出力する。
S29では、演算部402は、第2演算処理によって得られた難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算結果を制御部403へ出力する。
S30では、制御部403が、演算部402の演算結果に基づいて自動搬送機400の動作を制御する。例えば、フォーク400aの上下位置を制御したり、自動搬送機400の位置を制御したりする。
S31では、制御部403が、動作を終了するか否か判断し、動作を継続する場合には、S22へ戻り、動作を継続しない場合には、動作を終了する場合。
以上の各ステップは、計測システム用のアプリケーションプログラムがコンピュータに実行させるものである。
【0078】
図11は、障害物によってマーク2の一部が適切に撮影されていない状態を示す図である。
例えば、図11に示すように障害物Sによって2つのマーク2が適切に撮影できなかった場合には、演算部402は、マーク2を用いて難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算ができない。このような場合には、S29にフローが進んで、演算部402は、識別マーク5を用いて演算した難視認性マーカー1Cとカメラ401(自動搬送機400)との相対位置の演算結果を制御部403へ出力する。これにより、演算不能となって自動搬送機400の制御ができなくなる事態を回避できる。なお、その後の自動搬送機400の制御中に障害物Sが移動する等してマーク2を適切に撮影可能となれば、S27の判断が「YES」となるので、第1演算処理に基づいた制御に復帰できる。
【0079】
以上説明したように、第3実施形態によれば、マーク2を用いた位置及び姿勢の計測(第1演算処理)に加えて、識別マーク5を用いた位置及び姿勢の計測(第2演算処理)も並行して行うので、マーク2を適切に撮影できない状況であっても、位置及び姿勢の計測を途切れることなく継続できる。また、マーク2を用いた位置及び姿勢の計測が可能であるので、第1実施形態よりも精度の高い位置検出及び制御が可能である。また、第1実施形態と同様に、難視認性マーカー1Cは、可視光では目立つことがなく、違和感を与えたり、美観を損ねたりすることがなく、使い勝手が良好である。
【0080】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態の難視認性マーカー1Dを図2と同様な位置で切断した断面図である。
第4実施形態の難視認性マーカー1Dは、隠蔽層50を備えている他は、第1実施形態の難視認性マーカー1と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0081】
隠蔽層50は、保護層40よりも観察側の最表面に設けられている。なお、隠蔽層50は、表示層30よりも観察側に設けられていればよいので、例えば、隠蔽層50を表示層30と保護層40との間に設けてもよい。また、隠蔽層50の機能を保護層40に設けて隠蔽層と保護層との双方の機能を1つの層に設けてもよい。
【0082】
隠蔽層50は、可視光に対しては不透明であり、かつ、近赤外光に対しては透過性を有する層である。すなわち、隠蔽層50は、可視光に対しては隠蔽性があり、近赤外光に対しては隠蔽性がない。
隠蔽層50に用いることができる材料、すなわち、可視光に対しては隠蔽性があり、近赤外光に対しては隠蔽性がない材料例を以下に例示する。
【0083】
(隠蔽層の材料例1)
隠蔽層50に用いることができる材料としては、例えば、特開2010-72616号公報に記載の赤外線通信用光学物品と同様な材料を用いることができる。特開2010-72616号公報に記載の材料は、透明なバインダー樹脂に同バインダー樹脂とは屈折率の異なる微粒子を均一に分散させて、同微粒子に可視光域の光を散乱反射させて白色を発色させるようにするとともに、長波長側の光の透過率が高くなるような波長依存性を有するように微粒子の平均粒径を設定し、赤外線の通信帯の波長域における透過率を12%以上に設定している。
【0084】
(隠蔽層の材料例2)
隠蔽層50に用いることができる材料としては、例えば、特開2019-207303号公報に記載の黒色顔料組成物と同様な材料を用いることができる。特開2019-207303号公報に記載の材料は、赤色顔料を含まない顔料と、バインダー樹脂と、有機溶剤とを含有し、顔料がC.I.ピグメントグリーン62、及びC.I.ピグメントグリーン63からなる群より選ばれる少なくとも1つと、紫色顔料と、黄色顔料とを含有する。これにより、この材料は、波長400~700nmの可視光領域の隠蔽性に優れて可視光では黒色に観察され、波長800nm以上の近赤外領域に高い透過率を有する。
【0085】
(隠蔽層の材料例3)
隠蔽層50に用いることができる材料としては、例えば、特開2018-44991号公報に記載の赤外線透過部材と同様な材料を用いることができる。特開2018-44991号公報に記載の材料は、黒色顔料以外の着色顔料及び樹脂バインダーを含有し、850nmの波長を持つ光及び940nmの波長を持つ光のうち少なくともいずれか一方の光の透過率が80%以上であり、かつ、380nmよりも大きく780nmよりも小さい波長を持つ光の透過率が0.01%以下である。この材料は、着色顔料の色を変えることにより、可視光において観察される色を様々な色に作り変えることができる。着色顔料の例としては、例えば、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料等を例示でき、これらの各色の顔料を混在させることができる。
【0086】
隠蔽層50の可視光において観察される色は、上記材料例1~3を適宜選択することにより、白色、黒色、及び、その他の様々な色とすることができる。
隠蔽層50の可視光における平行光線透過率(波長555nmの透過率)は、30%以下であることが、表示層30の表示を人の目で認識できなくするために望ましい。また、隠蔽層50の近赤外光透過率(波長940nmの透過率)は、10%以上であることが、撮影部によって良好な撮影結果を得るために望ましい。
【0087】
上述した隠蔽層50に用いることができる材料は、第1実施形態の基材層10の説明で基材層10に用いることができる材料と同じである。したがって、隠蔽層50と基材層10とは、同じ材料を用いて構成することができる。そのため、隠蔽層50と基材層10との可視光における見た目を全く同じにすることができ、その場合には識別マーク5を完全に見えなくすることが可能である。
【0088】
本実施形態によれば、隠蔽層50を表示層30よりも観察側に配置したので、より確実に識別マーク等の図形を可視光では見えなくすることができる。特に、隠蔽層50と基材層10とを、同じ材料を用いて構成することにより、識別マーク等の図形を可視光では完全に見えなくすることができる。また、隠蔽層50と基材層10とは、上述したように可視光における見え方(色)を材料によって変えることができる。よって、貼付け対象物の色に近い色の隠蔽層50及び基材層10とすることにより、難視認性マーカー1Dは、可視光では目立つことがない。よって、難視認性マーカー1Dは、違和感を与えたり、美観を損ねたりすることがなく、使い勝手を良好にできる。
【0089】
(実施例1)
PETフィルム上に近赤外線を吸収するCWO(登録商標)を塗布し、転写フィルムとした。この転写フィルムをプリンターに入れて、可視光では不透明で、かつ、近赤外光を透過する基材層10として、特開2018-44991号公報に記載の赤外線透過部材と同様な材料をコーティングした第2のPETフィルムに識別マーク5(ArUco)を熱転写した。第2のPETフィルムの裏面には粘着層、セパレータがこの順で積層しており、識別マーク5(ArUco)を中心にして必要な大きさにカットした後、セパレータを剥いでから粘着層を介して建築物の壁紙に貼り付けた。近赤外線カメラで撮像したところ、識別マーク5(ArUco)が検出でき、近赤外線カメラから識別マーク5(ArUco)までの距離、識別マーク5(ArUco)の傾きを演算して表示することができた。また、識別マーク5(ArUco)のID番号を取得し表示することができた。可視光では不透明で、かつ、近赤外光を透過する基材層10の色を建築物の壁紙と同系色にしたので、壁紙に後貼りした部分が目立たなかった。
【0090】
(実施例2)
PETフィルム上に近赤外線を吸収するCWO(登録商標)を塗布し、転写フィルムとした。この転写フィルムをプリンターに入れて、可視光では不透明で、かつ、近赤外光を反射する基材層10Bとして、壁紙に一般的に使用されている塩化ビニール樹脂等を主原料とした「ビニールクロス」に識別マーク5(ArUco)を熱転写した。「ビニールクロス」の裏面には粘着層、セパレータがこの順で積層しており、識別マーク5(ArUco)を中心にして必要な大きさにカットした後、セパレータを剥いでから粘着層を介して建築物の壁紙に貼り付けた。近赤外線カメラで撮像したところ、識別マーク5(ArUco)が検出でき、近赤外線カメラから識別マーク5(ArUco)までの距離、識別マーク5(ArUco)の傾きを演算して表示することができた。また、識別マーク5(ArUco)のID番号を取得し表示することができた。「ビニールクロス」の色を建築物の壁紙と同系色にしたので、壁紙に後貼りした部分が目立たなかった。また、識別マーク5(ArUco)の周辺部の近赤外線反射は「ビニールクロス」からの反射になるので、建築物の壁紙の近赤外線反射率依存性がなくなり安定した計測が可能になった。
【0091】
(実施例3)
実施例2の識別マーク5(ArUco)の四隅に円状のマーク2を配置した以外は実施例2と同様に転写フィルムを作成し、可視光では不透明で、かつ、近赤外光を反射する基材層10Bとして、壁紙に一般的に使用されている塩化ビニール樹脂等を主原料とした「ビニールクロス」に識別マーク5(ArUco)と四隅に配置された円状のマーク2を熱転写した。「ビニールクロス」の裏面には粘着層、セパレータがこの順で積層しており、識別マーク5(ArUco)と四隅の円状のマーク2を中心にして必要な大きさにカットした後、セパレータを剥いでから粘着層を介して建築物の壁紙に貼り付けた。近赤外線カメラで撮像したところ、識別マーク5(ArUco)と四隅の円状のマーク2が検出でき、近赤外線カメラから四隅の円状のマーク2までの距離、四隅の円状のマーク2の傾きを演算して表示することができた。また、識別マーク5(ArUco)のID番号を取得し表示することができた。「ビニールクロス」の色を建築物の壁紙と同系色にしたので、壁紙に後貼りした部分が目立たなかった。また、識別マーク5(ArUco)の周辺部の近赤外線反射は「ビニールクロス」からの反射になるので、建築物の壁紙の近赤外線反射率依存性がなくなり安定した計測が可能になった。
【0092】
(実施例4)
実施例3と同様に転写フィルムを作成し、可視光では不透明で、かつ、近赤外光を反射する基材層10Bとして、壁紙に一般的に使用されている塩化ビニール樹脂等を主原料とした「ビニールクロス」に識別マーク5(ArUco)と四隅に配置された円状のマーク2を熱転写した。「ビニールクロス」の裏面には粘着層、セパレータがこの順で積層しており、識別マーク5(ArUco)と四隅の円状のマーク2を中心にして必要な大きさにカットした後、セパレータを剥いでから粘着層を介して建築物の壁紙に貼り付けた。その上に、さらに可視光に対しては不透明であり、かつ、近赤外光に対しては透過性を有する特開2018-44991記載の赤外線透過部材と同様な構成の隠蔽層を積層した。近赤外線カメラで撮像したところ、識別マーク5(ArUco)が検出でき、近赤外線カメラから識別マーク5(ArUco)までの距離、識別マーク5(ArUco)の傾きを演算して表示することができた。また、識別マーク5(ArUco)のID番号を取得し表示することができた。可視光では不透明で、かつ、近赤外光を透過する隠蔽層を識別マーク5(ArUco)と四隅に配置された円状のマーク2の建築物の壁紙側との反対側(建築物の空間側)に積層したので、壁紙に後貼りした識別マーク5(ArUco)と四隅に配置された円状のマーク2とが人間の目では視認困難となった。また、識別マーク5(ArUco)の周辺部の近赤外線反射は「ビニールクロス」からの反射になるので、建築物の壁紙の近赤外線反射率依存性がなくなり安定した計測が可能になった。
【0093】
(実施例5)
実施例2の識別マーク5(ArUco)の四隅の円状のマーク2のうち1個を手で隠すと、カメラから四隅の円状のマーク2までの距離、四隅の円状のマーク2の傾きを演算することができなくなった。しかし、実施例1と同様に、識別マーク5(ArUco)から演算した近赤外線カメラから識別マーク5(ArUco)までの距離、識別マーク5(ArUco)の傾きを演算して表示することができた。また、識別マーク5(ArUco)のID番号を取得し表示することができた。
【0094】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0095】
(1)各実施形態において、難視認性マーカー1は、識別マーク5を備える例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、マーク2のみを備えるマーカーであってもよい。また、表示層30が表示する図形は、実施形態において説明したマーク2及び識別マーク5のような機能を備える図形に限らず、その他の図形であってもよい。
【0096】
(2)各実施形態において、近赤外光において観察される色について、マーク2及び識別マーク5を黒色(近赤外光を吸収)とし、その周辺は近赤外光が基材層10又は貼り付け対象物100で反射される構成する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、マーク2及び識別マーク5の形状で基材層10又は貼り付け対象物100で反射され、その周辺を黒色(近赤外光を吸収)とした形態としてもよい。
【0097】
(3)各実施形態において、自動搬送機400の制御に本発明の測定システムを適用した例を挙げて説明した。これに限らず、制御部を備えずに、測定結果を得るだけの構成としてもよい。
【0098】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0099】
1、1B、1C、1D 難視認性マーカー
2 マーク
5 識別マーク
10 基材層
11 粘着層
12 セパレータ
20 接合層
30 表示層
40 保護層
50 隠蔽層
100 対象物
101 模様
200 難視認性マーカー発行システム
310 プリンター
311 入力部
312 印刷制御部
313 サーマルヘッド
320 ブランク
330 転写シート
331 転写層
332 離型性支持体
332a ベース層
332b 離型層
400 自動搬送機
400a フォーク
401 カメラ
402 演算部
403 制御部
500 難視認性マーカーシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12