(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178961
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】流体吐出デバイス及び携帯型流体吐出デバイス
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231211BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/165 305
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088721
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】17/805,499
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】キャリザーズ・アダム ディー.
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC22
2C056EC35
2C056JA01
2C056JA06
2C056JA16
2C056JB02
2C056JB04
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、流体吐出デバイスの流体吐出ヘッドを洗浄及び封止するための回転式メンテナンスステーションが用いられる流体吐出デバイス及び携帯型流体吐出デバイスを提供する。
【解決手段】流体吐出デバイスは、筐体と、筐体に設けられる流体リザーバと、流体吐出ヘッドとを含む。吐出ヘッドワイパーと吐出ヘッドキャッピングデバイスとを含む回転式メンテナンスステーションは、筐体に対して移動可能に取り付けられ、吐出ヘッドワイパー又は吐出ヘッドキャッピングデバイスを選択的に流体吐出ヘッドに隣接して配置するよう構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に設けられる流体リザーバと、流体吐出ヘッドと、
吐出ヘッドワイパーと吐出ヘッドキャッピングデバイスとを含む回転式メンテナンスステーションと
を含み、
前記回転式メンテナンスステーションは前記筐体に移動可能に取り付けられ、前記吐出ヘッドワイパー又は前記吐出ヘッドキャッピングデバイスを選択的に前記流体吐出ヘッドに隣接して配置するため回転するよう構成される、
流体吐出デバイス。
【請求項2】
前記吐出ヘッドキャッピングデバイスは、前記流体吐出ヘッドを保護し、前記流体吐出ヘッドに隣接した環境を維持して流体がその中から蒸発することを防止するよう構成される、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項3】
前記吐出ヘッドキャッピングデバイスはその中に通気孔を含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項4】
前記回転式メンテナンスステーションは、その内壁上に少なくとも1つのタブを更に含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項5】
前記筐体は、前記回転式メンテナンスステーションの前記少なくとも1つのタブと係合する少なくとも1つの溝をその外側部分上に有する環状壁を含む、
請求項4に記載の流体吐出デバイス。
【請求項6】
前記回転式メンテナンスステーションは、前記筐体に対して手動で回転されるよう構成される、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項7】
前記回転式メンテナンスステーションは、前記筐体に対して自動で回転するよう構成される、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項8】
前記吐出ヘッドワイパーは、エラストマーワイパーブレードを含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項9】
前記吐出ヘッドキャッピングデバイスは、エラストマーキャッピングデバイスを含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項10】
前記回転式メンテナンスステーションは、吸収性ワイパーブレードを更に含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項11】
前記回転式メンテナンスステーションは、その中に流体吐出ポートを更に含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項12】
前記筐体に対して前記回転式メンテナンスステーションを移動可能に取り付けるよう構成される中央シャフトを更に含む、
請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項13】
筐体と、前記筐体に設けられる流体リザーバと、流体吐出ヘッドと、
吐出ヘッドワイパーと、吐出ヘッドキャッピングデバイスと、その中にある流体吐出ポートとを含む回転式メンテナンスステーションと
を含み、
前記回転式メンテナンスステーションは前記筐体に移動可能に取り付けられ、前記吐出ヘッドワイパー、前記吐出ヘッドキャッピングデバイス、又は前記流体吐出ポートを選択的に前記流体吐出ヘッドに隣接して配置するため回転するよう構成される、
携帯型流体吐出デバイス。
【請求項14】
前記回転式メンテナンスステーションは、前記筐体に対して手動で回転されるよう構成される、
請求項13に記載の携帯型流体吐出デバイス。
【請求項15】
前記回転式メンテナンスステーションは、その内壁上に、少なくとも1つのV字状タブを更に含む、
請求項13に記載の携帯型流体吐出デバイス。
【請求項16】
前記筐体は、前記回転式メンテナンスステーションの前記少なくとも1つのV字状タブと係合する少なくとも1つのV字状溝をその外側部分上に有する環状壁を更に含む、
請求項13に記載の携帯型流体吐出デバイス。
【請求項17】
前記回転式メンテナンスステーションは、前記筐体に向け付勢される、
請求項16に記載の携帯型流体吐出デバイス。
【請求項18】
前記筐体に取り付けられる中央シャフト
を更に含み、
前記回転式メンテナンスステーションは、前記中央シャフトに移動可能に取り付けられる、
請求項13に記載の携帯型流体吐出デバイス。
【請求項19】
前記筐体上、前記回転式メンテナンスステーション上、又は前記筐体上及び前記回転式メンテナンスステーション上に設けられる、前記回転式メンテナンスステーションを選択的に配置するよう構成される磁石
を更に含む、
請求項13に記載の携帯型流体吐出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出デバイスの流体吐出ヘッドを洗浄及び封止するための回転式メンテナンスステーションを対象とする。
【背景技術】
【0002】
流体噴射吐出は、流体吐出デバイスの本体に含まれる噴射流体のための流体リザーバと流体連通している流体噴射吐出ヘッドの表面から、噴射流体の微小液滴を吐出することに依存している。流体噴射吐出ヘッドは、流体噴射吐出ヘッドの動作性を維持するため、チップ面のワイピングとキャッピングを含む吐出ヘッドのチップ面の「サービス」を必要とする。チップ面のワイピングは、流体噴射吐出ヘッドのノズルプレートから、噴射性能に影響するほこり、流体しぶき、及び乾燥物を除去する。吐出ヘッドのチップ面は、一度ワイピングされた後、流体噴射吐出ヘッドの作動不能をもたらすノズルプレートのノズルからの噴射流体の蒸発を防止するため、封止又は「キャッピングされる」必要がある。
【0003】
従来のインクジェット印刷は、様々な基板上へ画像と文字を印刷するために用いられてきた。基板上に二次元画像を形成するため、プリントヘッドは基板を横切る直線動作でプリントヘッドを移動させるプリンタに収容され、基板はプリントヘッドの動きに直交して移動する。デスクトッププリンタといった典型的なインクジェットプリンタシステムでは、サービス方法は確立されており、印刷の間にプリントヘッドを直線動作で移動させ、一度印刷ジョブが完了するとプリントヘッドをサービスステーションへと直線方向に更に移動させ、サービスステーションではごみを取り除くためプリントヘッドをワイピングブレードを横切るよう駆動する。一度ワイピングされると、プリントヘッドは更に、プリントヘッドのチップ面を封止するキャッピングステーションへ直線的に移動する。従来のデスクトッププリンタにおけるサービスステーションとキャッピングステーションは、典型的に互いに横方向に隣接している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体噴射技術が新たな産業に参入するにつれ、吐出ヘッドは今では、従来のメンテナンスデバイス及び方法を用いることが不可能な小さな携帯型デバイスに収容される可能性がある。従って、メンテナンスのための離れた位置への流体吐出ヘッドの直線的な動きに依存しないメンテナンスステーション及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の1つの実施形態は、筐体と、筐体に設けられる流体リザーバと、流体吐出ヘッドとを含む流体吐出デバイスを提供する。吐出ヘッドワイパーと吐出ヘッドキャッピングデバイスを含む回転式メンテナンスステーションが筐体に移動可能に取り付けられ、吐出ヘッドワイパー又は吐出ヘッドキャッピングデバイスを選択的に流体吐出ヘッドに隣接して配置するため回転するよう構成される。
【0006】
もう1つの実施形態において、筐体と、筐体に設けられる流体リザーバと、流体吐出ヘッドとを含む携帯型流体吐出デバイスを提供する。回転式メンテナンスステーションが提供され、吐出ヘッドワイパーと、吐出ヘッドキャッピングデバイスと、その中にある流体吐出ポートとを含む。回転式メンテナンスステーションは筐体に移動可能に取り付けられ、吐出ヘッドワイパー、吐出ヘッドキャッピングデバイス、又は流体吐出ポートを選択的に流体吐出ヘッドに隣接して配置するため回転するよう構成される。
【0007】
いくつかの実施形態において、吐出ヘッドキャッピングデバイスは、流体吐出ヘッドを保護し、流体吐出ヘッドに隣接した環境を維持して流体がその中から蒸発することを防止するよう構成される。他の実施形態において、吐出ヘッドキャッピングデバイスはその中に通気孔を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、その内壁上に少なくとも1つのタブを更に含む。他の実施形態において、筐体は、回転式メンテナンスステーションの少なくとも1つのタブと係合する少なくとも1つの溝をその外側部分上に有する環状壁を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、筐体に対して手動で回転されるよう構成される。他の実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、筐体に対して自動で回転するよう構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、吐出ヘッドワイパーは、エラストマーワイパーブレードを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、吐出ヘッドキャッピングデバイスは、エラストマーキャッピングデバイスである。
【0012】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、吸収性ワイパーブレードを更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、その中に流体吐出ポートを更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、その内壁上に、少なくとも1つのV字状タブを更に含む。他の実施形態において、筐体は、回転式メンテナンスステーションの少なくとも1つのV字状タブと係合する少なくとも1つのV字状溝をその外側部分上に有する環状壁を更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーションは、筐体に向け付勢される。
【発明の効果】
【0016】
回転式メンテナンスステーションの利点は、クレームに係るメンテナンスステーションが吐出ヘッドの乾燥又は詰まりを防止するために必要な全てのコンポーネントを含むことができ、メンテナンスステーションが、流体吐出デバイスの性能を維持するため手動又は自動で容易に操作可能であることにある。従来の回転式メンテナンスステーションとは異なり、本発明の実施形態の装置は、流体吐出ヘッドの面に垂直な、追加的な動作の軸を特徴とし、これにより吐出ヘッドキャッピングデバイスを上方に配置し、次いで流体吐出ヘッドの面上まで引き下げることを可能とする。キャッピングデバイスはまた、キャッピングデバイスと吐出ヘッドとの間の安全な封止を確保する機構を提供する。
【0017】
本発明の実施形態のもう1つの利点は、吐出ヘッドがワイピングされた後、ワイパーブレードが流体吐出ヘッドから分離されることである。代替的に、ワイパーブレードは、余分な流体が垂れて捕捉されるステーションの上方に配置されてよい、或いは、ワイパーブレードは流体吐出ヘッドの面をワイピングされた後に、余分な流体がワイパーブレードから除去されるよう吸収性材料上を引きずられてよい。よって、本発明の実施形態は、従来のワイパーとは異なり使用後にワイパーブレードが流体吐出ヘッドから分離されることから、粘着性流体が流体吐出ヘッドの面と接触したままとなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の1つの実施形態による回転式メンテナンスステーションを含む携帯型流体吐出デバイスの、縮尺通りでない、斜視図である。
【
図2】回転式メンテナンスステーションを取り外した
図1の携帯型流体吐出デバイスの吐出ヘッド端からの斜視図である。
【
図3】回転式メンテナンスステーションが流体噴射配置に配向された
図2の携帯型流体吐出デバイスの吐出ヘッド端からの斜視図である。
【
図4】回転式メンテナンスステーションが吐出ヘッドキャッピング配置に配向された
図2の携帯型流体吐出デバイスの吐出ヘッド端からの斜視図である。
【
図5】回転式メンテナンスステーションを取り外した
図1の携帯型流体吐出デバイスの一部の斜視図である。
【
図6】
図1の携帯型流体吐出デバイスのための回転式メンテナンスステーションの内部斜視図である。
【
図7】回転式メンテナンスステーションが吐出ヘッドキャッピングデバイスに対して引出し位置にある
図1の回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図8】回転式メンテナンスステーションが吐出ヘッドキャッピングデバイスに対して引込み位置にある
図7の回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図9】回転式メンテナンスステーションが流体吐出ポートに対して引出し位置にある
図1の回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図10】回転式メンテナンスステーションが流体吐出ポートに対して引込み位置にある
図1の回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図11】回転式メンテナンスステーションが流体噴射吐出ヘッドのワイピングのための引出し位置にある
図1の回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図12】本発明の他の実施形態による
図1の携帯型流体吐出デバイスのための回転式メンテナンスステーションの内部斜視図である。
【
図13】本発明の他の実施形態による
図1の携帯型流体吐出デバイスのための回転式メンテナンスステーションの内部斜視図である。
【
図14】本発明のもう1つ実施形態による回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図15】本発明のもう1つ実施形態による回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図16】本発明のもう1つ実施形態による回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図17】本発明のもう1つ実施形態による位置合わせのための磁石を含む回転式メンテナンスステーションの内部斜視図である。
【
図18】流体吐出デバイスの筐体に取り付けられた
図17の回転式メンテナンスステーションの断面図である。
【
図19】本発明のもう1つ実施形態による回転式メンテナンスステーションと流体吐出デバイスの断面図である。
【
図20】本発明のもう1つ実施形態による自動回転式メンテナンスステーションの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図4を参照し、回転式メンテナンスステーション12を含む携帯型流体吐出デバイス10を提供する。以下により詳細に説明するように、該メンテナンスステーションは、ワイパーと、吐出ヘッドキャッピング構造と、流体吐出ポート14とを含む。メンテナンスステーション12は、ワイピング、吐出ヘッドキャッピング、及び流体吐出機能を提供するため、筐体18に取り付けられる環状壁16の周りを矢印20の方向に回転可能である。
【0020】
携帯型流体吐出デバイス10は、印刷、潤滑、薬剤送達、ベイパーデバイス等を含むがこれらに限定されない様々な応用のために用いられる。流体吐出デバイスは、典型的に、筐体18と、流体リザーバ22と、制御回路板24と、電源26とを含む自己完結型デバイスである。
【0021】
図2は、回転式メンテナンスステーション12のための成型物が取り外されて流体吐出ヘッド28が露出した流体吐出デバイス10の端部斜視図である。
図3において、回転式メンテナンスステーション12は流体吐出配置へと回転され、流体吐出ヘッド28は流体吐出ポート14に隣接している。
図4は、流体吐出デバイス10の端部斜視図であり、回転式メンテナンスステーション12は吐出ヘッドキャッピング配置へと回転されている。
【0022】
回転式メンテナンスステーション12は、携帯型流体吐出デバイス10の筐体18に取り付けられる環状壁16と様々な方法にて係合されてよい。
図5~
図11に、環状壁16の外壁36上の溝34に嵌合可能な、その内壁32上に押し出されたタブ30(
図6)を回転式メンテナンスステーション12が含む、第1の実施形態を示す。代替的に、タブが筐体18の外壁36上に配置されてよく、溝が回転式メンテナンスステーション12の内壁32上に提供されてよいことを当業者は理解されたい。筐体18の外壁36における溝34は、回転式メンテナンスステーション12が環状壁16の周囲を回転し、流体吐出か、吐出ヘッドキャッピングデバイス38での流体吐出ヘッド28のキャッピングのいずれかのため、適切な位置に据えられることを可能とする。タブ30は、吐出ヘッドキャッピングデバイス38又は流体吐出ポート14のいずれかが流体吐出ヘッド28に隣接するよう、回転式メンテナンスステーション12上に筐体18の外壁36上の特定の溝34と係合する円形タブ30a及び矩形タブ30bを含んでよい。
【0023】
図5に示す実施形態において、タブ30を保持するため、環状壁16にレース(race)40が提供される。リテーナリング44中のスロット42は、回転式メンテナンスステーション12の部品を交換するため、回転式メンテナンスステーション12が環状壁16から取り外されることを可能とする。回転式メンテナンスステーション12の特筆すべき特徴は、メンテナンスステーション12は即座に交換可能であり、ワイパーブレード46とキャッピングデバイスが過度に劣化することがないことである。メンテナンスステーション組立体全体を交換するか、メンテナンスステーション12の本体を維持しつつワイパーブレード46とキャッピングデバイス38のみを交換するかのいずれかが可能である。交換可能なワイパーブレード46とキャッピングデバイス38は、使用者と製造元の双方に経済的及び環境的恩恵を提供する。従って、携帯型流体噴射吐出デバイス10の寿命を通してキャッピング及びワイピング動作が維持されることができるよう、ワイパーブレード46は使用者によりワイパーブレードホルダ48に取外し可能に取り付けられてよく、吐出ヘッドキャッピングデバイス38は使用者によりキャッピングデバイスホルダ50に取外し可能に取り付けられてよい。
【0024】
ワイパーブレード46と吐出ヘッドキャッピングデバイス38のそれぞれは、適切な拭き取り及び封止特性を提供する弾力エラストマー材料製であってよい。いくつかの実施形態において、ワイパーブレード46とキャッピングデバイス38は、天然ゴム製又は合成ゴム製である。従って、メンテナンスステーション12が動作位置にあるとき、メンテナンスステーション12の回転がワイパーブレード46の流体吐出ヘッド28の面との係合をもたらし、これにより流体吐出ヘッド28がキャッピングされる前にごみや余分な流体を除去するよう、ワイパーブレード46は配置される。第1の実施形態において、ステーションのいずれかの方向への回転がキャッピング前に所望されるクリーニング動作を提供するよう、ワイパーブレード46は配置される。
【0025】
いくつかの実施形態において、双方向ではなく単方向のワイピング動作が提供される。単方向ワイピングは、吐出ヘッド28を横切って戻る拭き取りが、ワイパーブレード46からのごみによる吐出ヘッド28の再汚染をもたらす可能性を防止する。従って、ワイピングが単方向となるようにメンテナンスステーション12が単一方向にのみ回転することを確実にするため、ラチェットのような機構が提供されてよい。単一方向の回転は、ワイパーブレード46のサイズを減少させ、
図12に示すように、ワイパーブレード46が流体吐出ポート14とキャッピングデバイス38との間でメンテナンスステーション12の片側のみに配置されることを可能とする。
【0026】
もう1つの実施形態において、
図13に示すように、吸収性材料製のワイパー52がワイパーブレード46の反対側に配置されてよい。吸収性ワイパー52は、流体吐出ポート14を吐出ヘッド28と位置合わせする前及びデバイスの操作前に、吐出ヘッド28の面に係合してよい。噴射される流体に対して吸い込み作用を提供することにより吐出ヘッド28をプライミングするため、吸収性ワイパー52の吸収特性が用いられてよい。従って、吸収性ワイパー52は、吐出ヘッド28との接触の持続期間を増加させるため、様々なサイズに製造されてよい。上記で説明した吸収性ワイパー52は、吸収性ブレードがワイピングブレードと直列に現れることしかできない従来のメンテナンスステーションに実装するには実用的ではない。
【0027】
いくつかの実施形態において、吐出ヘッドキャッピングデバイス38は、吐出ヘッド28の面を直接封止するか、流体吐出ヘッド28全体を覆ってよい。従って、吐出ヘッドキャッピングデバイス38は流体吐出ヘッド28のための保護を提供し、流体吐出ヘッド28のノズルから噴射される流体の蒸発を防ぐために局所的に湿気の高い環境を維持することを意図している。吐出ヘッドキャッピングデバイス38は、キャッピングデバイス38を流体吐出ヘッド28の上方の休止位置に据えたとき流体吐出ヘッド28上の圧力を解放するため、通気孔55もその中に備えてよい。また、メンテナンスステーション12の上面には、外部と連通する通気口54が形成されてよい。通気口54は、
図7に示すように、吐出ヘッドキャッピングデバイス38の通気孔55と共に流体が噴射されたとき回転メンテナンスステーション12内に真空が形成されないよう外部雰囲気から流体吐出ヘッド28への気流経路を提供してもよい。典型的に、そのような通気口54は、キャッピングデバイス38内側の湿気を比較的高く維持するのに十分な程度に小さい。
【0028】
いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーション12の位置を示すため、筐体18上に目印56(
図5)が提供される。使用者により手動で回転されるステーションにおいて、筐体18に位置する指示マークとメンテナンスステーション12の外壁に位置する対応する目印56は、使用者が吐出ヘッド28に対するメンテナンスステーション12の正しい回転配置を特定する助けとなる。使用者にメンテナンスステーション12の正しい配置を注意喚起するため、複数色や点滅光といった正しい位置を示す他の手段又は他の視認可能な手がかりが、単独又は組合せで用いられてよい。また、メンテナンスステーション12の配置の誤りが、上記の目印、光、又は音のいずれかにより示されてもよい。
【0029】
図7~
図11に示すように、回転式メンテナンスステーション12は、引出し位置(
図7)まで操作されて、吐出ヘッドキャッピングデバイス38が流体吐出ヘッド28に隣接する休止位置(
図8)に引き込まれてよい。回転式メンテナンスステーションはまた、引き出されて(
図9)、流体吐出ポート14が流体吐出ヘッド28に隣接する作動位置(
図10)まで回転されてよい。流体吐出ヘッド28から流体を吐出した後、
図11に示すようにワイパーブレード46が流体吐出ヘッド28を横切って掃除する間に、回転式メンテナンスステーションは再び引き出されて(
図9)休止位置(
図8)に戻るよう回転されてよい。いくつかの実施形態において、前記回転式メンテナンスステーションは使用者により手動で引き出され、回転され、引き込まれてよい。
【0030】
上述したように、回転式メンテナンスステーション12は、流体吐出ヘッド28の面に垂直な方向に引出し及び引込みされてよい。いくつかの実施形態において、回転式メンテナンスステーション12は回転の前に引き出されなければならないよう設計されてよい、或いは、回転式メンテナンスステーション12は、V字状溝とV字状タブを提供することにより、回転が回転式メンテナンスステーション12の引出しを駆動するよう設計されてよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、
図14~
図17に表すように、筐体18に搭載される第1端と環状壁16を超えて延伸する第2端とを有する中央シャフト58が提供されてよい。中央シャフト58の第1端はストッパ60に取り付けられてよく、中央シャフト58の第2端は回転式メンテナンスステーション64の中心に位置する孔又はボス62に係止されてよい。回転式メンテナンスステーション64の垂直移動を可能とするため、ストッパのための上限及び下限が提供され、回転式メンテナンスステーション64は、吐出ヘッドキャッピングデバイス38が流体吐出ヘッド28に隣接した状態で、引出されるか(
図14)休止位置へ引き込まれてよい(
図15)。
図16に示すように、回転式メンテナンスステーション64は、ワイパーブレード46が流体吐出ヘッド28を横切って掃除する間に引き出されて回転されてよい。いくつかの実施形態において、前記回転式メンテナンスステーションは使用者により手動で引き出され、回転され、引き込まれてよい。
【0032】
図17は、回転式メンテナンスステーション64及び中央シャフト58の内部斜視図である。メンテナンスステーション64の周縁部68上には、流体吐出デバイスの筐体70に対するメンテナンスステーション64の位置合わせを補助するため、1つ以上の埋込磁石66が提供されてよい。従って、
図18に示すように、筐体70には回転式メンテナンスステーション64の適切な配置及び位置合わせを維持するため磁石72又は金属製挿入物が含まれてよい。埋込磁石66と72が筐体70に対する回転式メンテナンスステーション64の位置合わせに用いられるとき、環状壁16又は溝34(
図5)は筐体70に対する回転式メンテナンスステーション64の位置合わせを提供する必要はない。従って、
図19に示すように、環状壁16を有さない筐体74が提供されてよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、中央シャフト76は、回転式メンテナンスステーション64の再配置に用いられるよう、筐体70の内部で浮遊するのではなく、ステッパモータ78(
図20)に取り付けられてよい。ステッパモータ78は、回転式メンテナンスステーション64の径方向運動を可能とする。ステッパモータ78は、回転式メンテナンスステーション64が次の位置まで回転して再度据えられる前に持ち上げられることを可能とするよう、中央シャフト76と同軸方向における回転式メンテナンスステーション64の動作を提供するため、リニアアクチエータ80に搭載されてもよい。リニアアクチエータ80は、メンテナンスステーション64を休止位置に保持する磁石66と72の抵抗を克服するのに十分なトルクを有して提供される。
【0034】
リニアアクチエータ80とステッパモータ78は、使用者により作動されるまで回転式メンテナンスステーション64の位置を保持するよう設計されてもよい、或いは、回転式メンテナンスステーション64の正しい位置を維持するため、タブ30と溝34、又は磁石66と72と組み合わせて用いられてよい。リニアアクチエータ80は、流体吐出ヘッド28とワイパーブレード46との間の係合を確実にするため、ワイパーブレード46が流体吐出ヘッド28の面を横切って移動する間に下向きの力を加えるようプログラムされてよい。更には、リニアアクチュエータ80は力センサと組み合わされてよく、ワイパーブレード46の製造公差又は経時的な劣化における誤差を軽減するのに役立つよう、ワイパーブレード46によって流体吐出ヘッド28に所定量の力を加えてよい。いくつかの実施形態において、自動メンテナンスステーションは単一方向にのみ回転するようプログラムされてよい。
【0035】
回転式メンテナンスステーション及びそのコンパクトな設計は主に携帯型流体吐出デバイスに向けたものであるが、ここで説明する回転式メンテナンスステーションは、より大きな定置式の流体噴射装置に用いられてよい。そのようなメンテナンスステーションは、典型的に流体吐出ヘッドを所望の流体吐出位置に並進させることから、流体吐出ポートを要する可能性が高い。一度吐出ヘッドがそのホームポジションに到達すると、回転式メンテナンスステーションが携帯型流体吐出デバイスのための自動メンテナンスステーションのための上述したような作動及び回転機構を用いて、吐出ヘッドをワイピング及びキャッピングするために用いられてよい。より大きな定置式の流体噴射装置のための流体吐出ポートを有さないメンテナンスステーションが存在し得る一方で、携帯型流体吐出デバイスにとって、流体を排出することのできる流体吐出ポートを含むことは便利でありコンパクト性がある。流体吐出ポートはまた、吐出される流体の挙動及び流れを変更するため様々なディフューザ及びアダプタを取り付けるための様々な手段を備えてもよい。そのような手段には、クリップ、圧入、スナップ嵌め、ねじ切り、又は磁石を含んでよい。
【0036】
従って、本発明の実施形態は、流体吐出ヘッドをワイピング及びキャッピングするための回転式メンテナンスステーションを用いる装置及び方法を提供する。携帯型流体吐出デバイスは、回転式メンテナンスステーション、流体吐出ヘッド、筐体、流体リザーバ、回路板、及び電源という、少数の部品のみを含む。流体吐出ヘッドと流体リザーバは、流体吐出ヘッドを作動させるために必要な全ての電気部品を伴って筐体の本体内に収容される。
【0037】
図示した実施形態は円形のメンテナンスステーションを示しているが、当業者は、様々な形状又はサイズを用いるメンテナンスステーションを備える同様のデバイスを想到することができることを理解されたい。開示した実施形態の独特の特徴は、流体噴吐出ヘッドの維持に必要な部品のコンパクトな配置を可能にする、機構の回転性に関する。上述したように、該機構は、使用者が手動又は自動で作動させることができ、容易に交換可能で維持可能な部品を含む。従来のサービスステーションとは異なり、回転式メンテナンスステーションには流体吐出ポートが組み込まれているため、流体を排出する前に吐出ヘッドを別の位置に並進させる必要がない。
【0038】
ここで説明している装置は、流体吐出ヘッドのためのメンテナンスステーション及び格納筐体の両方として機能する。メンテナンスステーションが回転すると、流体吐出ヘッドのプライミングと洗浄の両方を補助するため、複数の維持ステップがメンテナンスステーションの内壁周りに一連に配置される。
【0039】
特定の実施形態について説明したが、出願人又は他の当業者には、現在予測していない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、提出された添付の特許請求の範囲及び補正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0040】
10:流体吐出デバイス
12、64:回転式メンテナンスステーション
14:流体吐出ポート
16:環状壁
18、70、74:筐体
20:矢印
22:流体リザーバ
24:制御回路板
26:電源
28:流体吐出ヘッド
30:タブ
30a:円形タブ
30b:矩形タブ
32:内壁
34:溝
36:外壁
38:キャッピングデバイス
40:レース
42:スロット
44:リテーナリング
46:ワイパーブレード
48:ワイパーブレードホルダ
50:キャッピングデバイスホルダ
52:吸収性ワイパー
54:通気口
55:通気孔
56:目印
58、76:中央シャフト
60:ストッパ
62:ボス
66、72:磁石
68:周縁部
78:ステッパモータ
80:リニアアクチエータ