(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178963
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】包材および包材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 73/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B65D73/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089749
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022091350
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 和輝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅人
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA22
3E067AC01
3E067BA15A
3E067BA18A
3E067BA21A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA01
3E067CA24
3E067EC28
3E067FA01
3E067FB01
3E067FC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接着剤を用いることなく、熱収縮性フィルムを台紙に固定することができる包材を提供する。
【解決手段】この包材1は、一方面に熱溶融性薄膜110bが設けられた台紙110と、一方面に配置され、被包装物を収容する収容空間を有する熱収縮性フィルム100と、を備え、熱収縮性フィルム100は、台紙110の熱溶融性薄膜110bに、超音波溶着により固定されている。この構成によれば、接着剤を用いることなく、熱収縮性フィルムを台紙に固定することができる包材の提供が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面に熱溶融性薄膜が設けられた台紙と、 前記一方面に配置され、被包装物を収容する収容空間を有する熱収縮性フィルムと、 を備え、 前記熱収縮性フィルムは、前記台紙の前記熱溶融性薄膜に、超音波溶着により固定されている、包材。
【請求項2】
前記熱収縮性フィルムを筒状形態にすることで、前記収容空間が規定され、 筒状形態の前記収容空間が延びる方向に沿って、前記熱溶融性薄膜と前記熱収縮性フィルムとの超音波溶着領域が設けられている、 請求項1に記載の包材。
【請求項3】
筒状形態の前記収容空間が延びる方向において、 前記熱収縮性フィルムの少なくとも一方の端部には、前記超音波溶着領域が施されていない非溶着領域が設けられている、 請求項2に記載の包材。
【請求項4】
一方面に熱溶融性薄膜が設けられた台紙を準備する工程と、 前記一方面に配置され、被包装物を収容する開口部を含む収容空間を有するように熱収縮性フィルムを準備する工程と、 前記開口部および前記収容空間を維持した状態で、前記熱収縮性フィルムと前記熱溶融性薄膜とを超音波を用いて溶着する工程と、 を備える、包材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包材および包材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被包装物を包装するための熱収縮性フィルムが予め台紙に接着剤を用いて固定された包材が知られている。この包材の構成を開示した先行文献として、特開平08-244832号公報(特許文献1)、特開2012-121590号公報(特許文献2)、および、特開2014-12539号公報(特許文献3)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-244832号公報
【特許文献2】特開2012-121590号公報
【特許文献3】特開2014-12539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献に開示される包材の構成においては、以下に示すような課題があった。 1)接着剤としてホットメルトを台紙に塗工する際に、ホットメルトの糸曳が発生し、台紙に付着してしまう不具合があった。このため、糸曳の発生の有無についての検査工程が必要であった。
【0005】
2)熱収縮性フィルムを台紙に強固に接着する必要がある。そのために、ホットメルトを塗工した後に、反応のためのエージング時間が必要であった。エージング前は、ホットメルトによる接着力が弱いため、熱収縮性フィルムと台紙との間に位置ずれが発生する不具合があった。
【0006】
3)熱収縮性フィルムを台紙に貼り付ける際、位置に制限があった。台紙の端に熱収縮性フィルムを固定した場合には、ホットメルトが台紙からはみ出すおそれがあった。そのため、台紙と熱収縮性フィルムに包装される被包装物との組み合わせによっては、熱収縮性フィルムが台紙からはみ出した位置に貼り付けなければならない場合があった。その場合、輸送時に熱収縮性フィルムが箱に当接し、熱収縮性フィルムが曲がったり、熱収縮性フィルムに皺を発生させる不具合があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接着剤を用いることなく、熱収縮性フィルムを台紙に固定することができる、包材および包材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく包材は、一方面に熱溶融性薄膜が設けられた台紙と、上記一方面に配置され、被包装物を収容する収容空間を有する熱収縮性フィルムと、を備え、上記熱収縮性フィルムは、上記台紙の上記熱溶融性薄膜に、超音波溶着により固定されている。
【0009】
本発明の一形態における包材は、上記熱収縮性フィルムを筒状形態にすることで、上記収容空間が規定され、筒状形態の上記収容空間が延びる方向に沿って、上記熱溶融性薄膜と上記熱収縮性フィルムとの超音波溶着領域が設けられている。
【0010】
本発明の一形態における包材は、筒状形態の上記収容空間が延びる方向において、上記熱収縮性フィルムの少なくとも一方の端部には、上記超音波溶着領域が施されていない非溶着領域が設けられている。
【0011】
本発明に基づく包材の製造方法は、一方面に熱溶融性薄膜が設けられた台紙を準備する工程と、上記一方面に配置され、被包装物を収容する開口部を含む収容空間を有するように熱収縮性フィルムを準備する工程と、上記開口部および上記収容空間を維持した状態で、上記熱収縮性フィルムと上記熱溶融性薄膜とを超音波を用いて溶着する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接着剤を用いることなく、熱収縮性フィルムを台紙に固定することができる包材および包材の製造方法の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1の包材の構成を示す正面図である。
【
図2】
図1中のII-II線矢視に相当する断面図である。
【
図3】他の形態の
図1中のII-II線矢視に相当する断面図である。
【
図4】さらに他の形態の
図1中のII-II線矢視に相当する断面図である。
【
図5】実施の形態1の包材に被包装物を収容した状態の正面図である。
【
図6】実施の形態1の包材に被包装物を収容し熱収縮性フィルムを熱収縮させた後の斜視図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線矢視断面図である。
【
図8】比較技術における
図6中のVII-VII線矢視に対応する断面図である。
【
図9】実施の形態2の包材の構成を示す正面図である。
【
図10】実施の形態2の被包装物を収容した状態の正面図である。
【
図11】実施の形態3の包材の構成を示す正面図である。
【
図12】実施の形態4の包材の構成を示す正面図である。
【
図13】実施の形態5の包材の構成を示す、
図1中のII-II線矢視に相当する断面図である。
【
図14】実施の形態6の包材に被包装物を収容した状態の斜視図である。
【
図15】
図14中のXV-XV線矢視に対応する、被包装物を収容する前の断面図
【
図16】実施の形態に使用できるホーン先端の平面図である。
【
図17】
図16中のXVI-XVI線矢視に対応してホーン凸部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に基づいた各実施の形態の包材について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。図面においては、発明の理解を容易にするため、フィルムの厚みなどの尺度を変更して示している箇所がある。
【0015】
以下に示す各実施の形態では、被包装物として、円筒の胴体部を有する包装容器を一例に示している。たとえば、キャップ付き容器、スプレー式容器、ボトル型容器等が挙げられる。対象となる被包装物としては、これらの容器に限定されず、様々な商品が該当する。
【0016】
(実施の形態1:包材1)
図1から
図4を参照して、包材1の構造およびその製造方法について説明する。
図1は、包材1の構成を示す正面図、
図2は、
図1中のII-II線矢視に相当する断面図、
図3は、他の形態の
図1中のII-II線矢視に相当する断面図、
図4は、さらに他の形態の
図1中のII-II線矢視に相当する断面図である。なお、
図2中に示す熱超音波熱溶着用のホーン510およびアンビル520の
図1への図示は、説明の便宜上省略する。
【0017】
包材1は、台紙110および熱収縮性フィルム100を含む。台紙110は、基台110aと、その基台110aの一方面側に設けられた熱溶融性薄膜110bとを有する。
【0018】
図1に示すように、基台110aは、略矩形形状を有している。ただし、基台110aの形状は、矩形に限られない。基台110aの表面に対して、被包装物300(
図5参照。以下同様。)の周面の軸方向は平行である。被包装物300が、たとえば瓢箪形状などを有する場合、基台110aの表面に対して被包装物300の周面の軸方向は平行にならない。このように、被包装物300の形状によって、基台110aの表面と被包装物300の周面の軸方向とは必ずしも平行でなくてもよい。基台110aの表面および裏面の少なくとも一方に、被包装物300の製品情報が記載されていてもよい。基台110aは、たとえば、ボール紙で構成されている。
【0019】
熱溶融性薄膜110bには、熱溶融性のあるフィルムやコーティング膜が挙げられる。熱溶融性薄膜110bには、ポリエチレンテレフタレートやその変性物、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、スチレンブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂からなるフィルムを積層、又はこれらの樹脂を溶融状態や溶液の状態で塗布したコーティング膜が使用でき、各種材質の熱収縮性フィルムとの超音波溶着適性があるものを選定できる。
【0020】
台紙110の熱溶融性薄膜110bが設けられた一方面側には、被包装物を収容する収容空間100aを有する熱収縮性フィルム100が配置されている。熱収縮性フィルム100は、熱収縮性フィルム100を筒状形態にすることで、収容空間100aが規定される。この筒状形態の収容空間100aが延びる方向(
図1中の矢印Y方向)に沿って、熱溶融性薄膜110bと熱収縮性フィルム100との超音波溶着領域120が設けられている(図中のドットハッチングで示す領域)。この超音波溶着領域120により、熱収縮性フィルム100は、台紙110の熱溶融性薄膜110bに固定される。筒状形態を有する熱収縮性フィルム100には、その軸方向の両端部に被包装物300を収容する開口部100bが設けられている。
【0021】
超音波溶着領域120は、熱収縮性フィルム100の収容空間100aが延びる方向のの両端部には、超音波溶着領域120が施されていない非溶着領域120aが設けられている。本実施の形態では、熱収縮性フィルム100の両端部に、非溶着領域120aが設けられているが、いずれか一方の端部でもよい。この非溶着領域120aを設けておくことで、後に熱収縮性フィルム100を収縮させて被包装物300を保持した場合の、熱収縮性フィルム100への歪みの発生を抑制することを可能とする。詳細は、後述する。
【0022】
熱収縮性フィルム100には、収容空間100aに収容される被包装物300の周面の周方向に熱収縮する一軸延伸フィルであるとよい。熱収縮性フィルム100は、一軸延伸フィルに限られず、上記周方向と上記周面の軸方向との2つの方向に熱収縮する二軸延伸フィルムであってもよい。
【0023】
一軸延伸フィルムとは、実質的に一軸延伸されているフィルムをいい、上記周方向と上記軸方向との収縮率が互いに大きく異なるフィルムのことを意味している。具体的には、一軸延伸フィルムとしては、上記周方向および上記軸方向のいずれか一方向に収縮しないフィルムのみに限られず、たとえば、90℃で10秒間行なう熱水浸漬処理において上記周方向の熱収縮率が35%以上80%以下、かつ、上記軸方向の熱収縮率が-5%以上20%以下のフィルムが挙げられる。
【0024】
熱収縮性を有する熱収縮性フィルム100の具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)若しくはポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系、スチレンブタジエン共重合体などのポリスチレン系(PS)、または、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの、樹脂から構成されるフィルムが挙げられる。
【0025】
熱収縮性フィルム100は、これらの樹脂を2種類以上混合した樹脂混合物を含むフィルムであってもよいし、2種以上のフィルムを積層した積層フィルムであってもよい。特に、熱収縮性フィルム100は、適切な収縮応力と高い透明性を有することから、ポリエステル系またはポリスチレン系の一軸延伸フィルムが好ましい。
【0026】
熱収縮性フィルム100の厚みは、特に限定されないが、8μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上80μm以下、特に好ましくは15μm以上60μm以下である。
【0027】
熱収縮性フィルム100としては、上述の熱収縮性フィルムの構成に限られ
ず、着色された熱収縮性フィルム若しくは商品名およびデザインなどを表示するための印刷層が形成された熱収縮性フィルムであってもよい。印刷層を設ける場合は、熱収縮フィルムの内面の超音波溶着領域を除く位置に設け、超音波溶着領域はフィルム表面が露出しフィルム面同士が超音波溶着されることが好ましい。たとえば、熱収縮性フィルム100の印刷層に、被包装物300の各々に付されたデザインとは異なるデザインが表示されていてもよい。これにより、包材1に包装された状態と、包材1から取り出された状態とによって、被包装物300の外観のデザインを変化させることが可能となる。
【0028】
(包材1の製造方法)
図2に示すように、包材1の製造方法は、一方面に熱溶融性薄膜110bが設けられた台紙110を準備し、熱溶融性薄膜110b側に置され、被包装物を収容する開口部100bを含む収容空間100aを有するように筒状に形成した後、偏平に折り畳んだ熱収縮性フィルム100を準備する。
【0029】
次に、熱収縮性フィルム100の端部の重ねられた領域を、開口部100bおよび収容空間100aを維持した状態で、熱超音波熱溶着用のホーン510およびアンビル520により挟み込み超音波を印加する。これにより、熱収縮性フィルム100の内面同士と、熱収縮性フィルムの外面と熱溶融性薄膜110bが溶着されて超音波溶着領域120が形成される。超音波溶着領域120は例えば幅寸法が5mm~15mmであってよい。印加する超音波は、使用する熱収縮性フィルム100により適宜選択可能であるが、本実施の形態では、約20kHz~約40kHzの超音波を使用した。ホーン又はアンビルの表面に凹凸の刻み目を設けることにより溶着部分を刻み目模様にすることができる。刻み目は格子模様や各種線状、散点状等でよい。また、ホーンとアンビルの位置は逆でも良い。ホーン又はアンビルに刻み目模様等の凹凸を設ける場合は、熱収縮性フィルム100に接する側に凹凸を設け、基台110aに接する側を平面にすることで熱収縮性フィルム100の溶着強度が得られ易く、基台110aの表面に凹凸の圧着痕が生じ難くすることができる。特に熱収縮性フィルム100に接するホーン510の表面に凹凸を設け、基台110aに接するアンビル520を表面が平面で且つホーンに比べ広い面積(例えばホーンの2倍以上の面積や台紙の略全体を載置可能な面積)にするとよい。
【0030】
図2の断面に示すように、筒状形態の収容空間100aは、予め熱収縮性フィルム100の端部100tが接合された筒状に成形された構成でもよいし、
図3に示すように、超音波溶着領域120に、熱収縮性フィルム100の両側の端部100tが位置するようにしてもよい。さらには、
図4に示すように、熱収縮性フィルム100の一方側の端部100tが、収容空間100aを構成するように、予め熱収縮性フィルム100に熱溶着され、熱収縮性フィルム100の他方側の端部100tが、超音波溶着領域120を構成する構成であってもよい。なお、
図3、
図4の場合の端部シュリンク状態が
図1とは異なる。
図3は、端まで超音波溶着領域120を設け、非溶着領域120aを設けない構成となる。
図4は、端まで超音波溶着領域120を設ける構成となる。
【0031】
(被包装物300の包装状態)
図5から
図8を参照して、上記構成を備える包材1を用いて、被包装物300を包装する場合について説明する。
図5は、熱収縮性フィルム100の熱収縮前の、包材1に被包装物300を収容した状態の正面図、
図6は、包材1に被包装物300を収容し熱収縮性フィルム100を熱収縮させた後の斜視図、
図7は、
図6中のVII-VII線矢視断面図、
図8は、比較技術における
図6中のVII-VII線矢視に対応する断面図である。
【0032】
図5を参照して、熱収縮性フィルム100の収容空間100a(
図2参照)に、被包装物300を収容する。被包装物300は、収容空間100a内に収まる大きさで、
図5の例では、超音波溶着領域120の軸方向長さと同等の長さで超音波溶着領域120の位置に合せて配置する。次に、
図6を参照して、熱収縮性フィルム100を熱収縮させることにより、包材1に被包装物300が収容される。本実施の形態では、熱収縮性フィルム100の収容空間100aのサイズを、熱収縮性フィルム100の熱収縮後に被包装物300の天面および底面の周縁部に熱収縮性フィルム100が回り込み、中央部分に開放部100hが設けられる設計を行なっている。このサイズ設計を行なった場合、
図6中のZで囲まれた領域においても、熱収縮性フィルム100を収縮させて被包装物300を保持した場合に、被溶着領域の熱収縮フィルムも収縮するため、熱収縮性フィルム100が被包装物300の天面および底面の周縁部に熱収縮性フィルム100が回り込み、熱収縮性フィルム100への歪みの発生を抑制する。
【0033】
さらに、
図7を参照して、熱収縮性フィルム100の熱収縮後の被包装物300は、超音波溶着領域120を台紙110側に位置して起き上がるものの、熱収縮性フィルム100の熱収縮力(
図7中の矢印F1)により、被包装物300には、台紙110側に寄せ付けられる力が作用する。その結果、被包装物300は、台紙110に対しての揺れが抑制され、安定的に台紙110に保持される。
【0034】
他方、
図8の比較技術に示す、ホットメルト400を用いた被包装物300の台紙110への固定においては、接着幅が必要で、幅の両側で円筒状物品(被包装物300)と熱収縮性フィルム100との間に空間が生じ易くこれによりホットメルト400が施された箇所を回転中心として、被包装物300が左右方向(
図8中の矢印F2方向)に揺れ易い状態となる。その結果、比較技術の包材の場合は、被包装物300の搬送時、店舗での陳列時に、台紙110から被包装物300を包んだ熱収縮性フィルム100が剥がれるおそれがある。
【0035】
(作用・効果) このように、本実施の形態における包材1は、ホットメルト等の接着剤を用いることなく、熱収縮性フィルム100を台紙110に固定することができる。これにより、ホットメルトに糸曳に対する対策、ホットメルトの冷却固化やエージング時間の確保が不要となる。
【0036】
さらに、熱収縮性フィルム100の端部を台紙110の任意の箇所に超音波振動により固定することができ、台紙110の自由な位置に熱収縮性フィルム100を固定することができるため輸送時の熱収縮性フィルム100の曲がり、熱収縮性フィルム100への皺発生を抑制することができる。また、溶着方法として、加熱されたヒートシールバーを押し当てる熱溶着が考えられるが、ヒートシールバーでは、溶着箇所の周辺の熱収縮性フィルム100が一部収縮し歪みや寸法変化が起こり好ましくなく、超音波溶着は、溶着箇所のみを局所的に加熱することができる。局所的に加熱できるため、高温溶着が必要なポリエチレンテレフタレートやその変性樹脂からなる熱収縮フィルムにも好適である。
【0037】
(実施の形態2:包材1A)
図9および
図10を参照して、本実施の形態における包材1Aの形態について説明する。
図9は、包材1Aの構成を示す正面図、
図10は、被包装物300を収容した状態の正面図である。
【0038】
包材1Aの基本的構成は、実施の形態1における包材1と同じである。超音波溶着領域120が、筒状形態の熱収縮性フィルム100の収容空間100aが延びる方向(
図9中の矢印Y方向)の全体にわたり設けられ、非溶着領域120aが設けられていない点が相違する。
図10を参照して、包材1Aは、被包装物300の両端側が、熱収縮性フィルム100から露出するようにして保持されることを想定している。この包材1Aによっても、実施の形態1の包材1と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、
図1で示した非溶着領域120aを設けない構成の採用が可能となることから、被包装物300の天面、底面の周縁部を熱収縮フィルムで被覆することのない(例えば、物品の胴中央部のみ被覆する)場合等にも、超音波溶着により溶着部以外の熱収縮性フィルムの無用な収縮や歪みを起こすことが無い作用効果が得られる。
【0040】
(実施の形態3:包材1B)
図11を参照して、本実施の形態における包材1Bの形態について説明する。
図11は、実施の形態3の包材1Bの構成を示す正面図である。
【0041】
包材1Bの基本的構成は、実施の形態1における包材1と同じであるが、超音波溶着領域120が、筒状形態の熱収縮性フィルム100の収容空間100aが延びる方向にわたり複数に分けて設けられている。
図11では、超音波溶着領域120が三箇所に設けられているが、この数量は適宜変更可能である。この包材1Bによっても、実施の形態1の包材1と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
(実施の形態4:包材1C)
図12を参照して、本実施の形態における包材1Cの形態について説明する。
図12は、実施の形態5の包材1Cの構成を示す正面図である。
【0043】
包材1Cの基本的構成は、実施の形態1における包材1と同じであるが、上記各実施の形態における熱収縮性フィルム100の形態は、長方形、正方形、台形であったが、本実施の形態では、熱収縮性フィルム100の形態は台形であり、短辺側の全体に超音波溶着領域120が設けられている。この場合、台形に限定されることなく、上下の少なくとも一方が斜め方向(上端から斜め上方、または、下端から斜め下方)へカットされた形態でもよい。このように斜め方向へカットされた開口部100bを設けることで、非溶着領域120aを設けることなく、斜め方向へカットされた開口部100bで、被包装物の天面、底面の周縁部を被覆することが可能となる。これにより、天面および/または底面で被包装物を確実に保持することができる。この包材1Cによっても、実施の形態1の包材1と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
(実施の形態5:包材1D)
図13を参照して、本実施の形態における包材1Dの形態について説明する。
図13は、実施の形態5の包材1Dの
図1中のII-II線矢視に相当する断面図である。
【0045】
上記各実施の形態における包材はいずれも、超音波溶着領域120は、熱収縮性フィルム100の一方側の端部に設けられていた。本実施の形態では、超音波溶着領域120を、熱収縮性フィルム100の両方側の端部に設けるようにしたものである。
【0046】
図2に示したように、超音波溶着領域120は、ホーン510とアンビル520とにより、熱収縮性フィルム100を挟み込む必要がある。そこで、本実施の形態における熱収縮性フィルム100は、左右の幅方向において、台紙110側に長辺フィルム100dを配置し、台紙110とは反対側に短辺フィルム100uを配置し、両側に、折りたたみ可能な側壁フィルム100sを設けるようにしている。
【0047】
これにより、熱収縮性フィルム100の両側において、長辺フィルム100dの両端部(
図13中の矢印LBで示す箇所)を、ホーン510とアンビル520とにより上下方向から挟み込むことを可能とする。この構成によっても、熱収縮性フィルム100を台紙110に対して超音波溶着により固定することができる。2箇所により熱収縮性フィルム100を台紙110に対して固定することができることから、被包装物が比較的重量物の場合に好適である。この包材1Dによっても、実施の形態1の包材1と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
(実施の形態6:包材1E)
図14および
図15を参照して、本実施の形態における包材1Eの形態について説明する。
図14は、包材1Eに被包装物300を収容した状態の斜視図、
図15は、
図14中のXV-XV線矢視に対応する、被包装物を収容する前の断面図である。
【0049】
上記各実施の形態における包材はいずれも、1つの被包装物300を収容することに向けられた包材であるが、本実施の形態は、2つの被包装物300を収容することに向けられた包材である。なお、被包装物300の数量は2つに限定
されず、本実施の形態と同様の考えに基づけば、3つ以上の被包装物300を収容する形態への対応も可能である。
【0050】
この包材1Eにおいては、熱収縮性フィルム100の中央部に超音波溶着領域120が施され、超音波溶着領域120の両側に、被包装物を収容する収容空間100aが2つ設けられている。
【0051】
これにより、同種の被包装物、または、異なる種類の被包装物を1つの台紙110に保持することが可能となる。この包材1Eによっても、実施の形態1の包材1と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
(実施の形態に使用するホーン)
図16および
図17を参照して、
図2等に示した超音波溶着領域120を形成するホーン510の凹凸表面の具体的形状例を説明する。
図16は、ホーン510の先端側からみた表面の平面図であり、
図17は、
図16のXVI-XVI線断面のホーン先端部分を示している。ホーン510の幅(
図16の上下方向)は10mm、長さは超音波溶着領域120に合せて作成される。凸部511は平面視斜め45度方向に整列して設けられており、
図17に示すように断面台形形状(角錐台形状)の凸部511が1mmピッチで並んでいる。凸部511の高さは0.25mmに形成されている。凸部511の形状はこれに限定されないが、このようにホーン510の先端に多数の凸部511が設けられ、この凸部511を熱収縮性フィルムに接触させて超音波を印加することで凸部511の先端で効率よく強固に溶着することができる。
【0053】
なお、包材の他の形態としては、熱収縮性フィルムの収容空間100aの延びる方向が、台紙に対して傾斜して設けられていてもよいし、左右方向であってもよい。包材のさらに他の形態としては、台紙の両面に熱溶融性薄膜を設け、両面に熱収縮性フィルムを超音波溶着してもよい。
【0054】
以上、実施の形態において本開示の包材および包材の製造方法について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B,1C,1D,1E 包材、100 熱収縮性フィルム、100a 収容空間、100b 開口部、100h 開放部、100d 長辺フィルム、100s 側壁フィルム、100t 端部、100u 短辺フィルム、110 台紙、110a 基台、110b 熱溶融性薄膜、120 超音波溶着領域、120a 非溶着領域、300 被包装物、400 ホットメルト、510 ホーン、520 アンビル。