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特開2023-178964流体リザーバ、流体分注カートリッジと流体吐出ヘッドをプライミングするための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178964
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】流体リザーバ、流体分注カートリッジと流体吐出ヘッドをプライミングするための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20231211BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20231211BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20231211BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
G01N35/10 A
B01J4/00 101
B41J2/175 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090649
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】17/805,528
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】キャリザーズ・アダム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デボード・ブルース エー.
(72)【発明者】
【氏名】ノラサック・サム
【テーマコード(参考)】
2C056
2G052
2G058
4G068
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056FA02
2C056KC02
2C056KC09
2C056KC14
2G052AA30
2G052AD06
2G052AD46
2G052CA22
2G052CA29
2G052DA22
2G052EA03
2G058EA03
2G058EA14
2G058ED02
4G068AA04
4G068AB11
4G068AC20
4G068AD21
4G068AF40
(57)【要約】
【課題】流体吐出ヘッド構造のための流体リザーバ、流体分注カートリッジ及び流体分注装置のための流体吐出ヘッドをプライミングするための方法を提供する。
【解決手段】流体リザーバは、流体を収容するよう構成された密封型流体キャビティと、密封型流体キャビティと流体流れ連通している流体出口と、流体リザーバに流体出口とは反対側に取り付けられたフロー誘導ポンプとを含む。流体リザーバに取り付けられたポンプは、吐出ヘッドのプライミングの問題を最小化するのに効果的であり、また吐出ヘッドのノズルに捕捉される空気の量を最小化するのに効果的である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出ヘッド構造のための流体リザーバであって、
流体を収容するよう構成された密封型流体キャビティと、
前記密封型流体キャビティと流体流れ連通している流体出口と
前記流体リザーバに前記流体出口とは反対側に取り付けられたフロー誘導ポンプと
を含む、
流体リザーバ。
【請求項2】
流体吐出装置により分注される前記流体を更に含む、
請求項1に記載の流体リザーバ。
【請求項3】
前記密封型流体キャビティは背圧手段で満たされる、
請求項1に記載の流体リザーバ。
【請求項4】
前記背圧手段は流体透過発泡体を含む、
請求項3に記載の流体リザーバ。
【請求項5】
前記フロー誘導ポンプは、前記流体出口を通過する流体フローを誘導するため前記流体透過発泡体を圧縮するよう構成された変形可能ブラダを更に含む、
請求項4に記載の流体リザーバ。
【請求項6】
前記変形可能ブラダに所定圧力を提供するため、前記変形可能ブラダと流れ連通している圧力逃がし弁を更に含む、
請求項5に記載の流体リザーバ。
【請求項7】
前記流体リザーバが前記流体で再充填されることができるよう、前記変形可能ブラダから手動で圧力を解放するよう構成された二位置弁を更に含む、
請求項5に記載の流体リザーバ。
【請求項8】
前記背圧手段は、流体充填可能なバネ付勢式ブラダを含む、
請求項3に記載の流体リザーバ。
【請求項9】
前記フロー誘導ポンプは、前記流体出口を通過する流体フローを誘導するため前記バネ付勢式ブラダを圧縮するよう構成された変形可能ブラダを更に含む、
請求項8に記載の流体リザーバ。
【請求項10】
前記変形可能ブラダに所定圧力を提供するため、前記変形可能ブラダと流れ連通している圧力逃がし弁を更に含む、
請求項9に記載の流体リザーバ。
【請求項11】
前記流体リザーバを前記流体吐出ヘッド構造に確実に取り付けるよう構成されたタブを備える矩形柱状本体を更に含む、
請求項1に記載の流体リザーバ。
【請求項12】
前記流体リザーバを前記流体吐出ヘッド構造に螺着させるためのネジ山を備える円柱状本体を更に含む、
請求項1に記載の流体リザーバ。
【請求項13】
前記流体リザーバを前記流体吐出ヘッド構造に封止するよう構成されたOリングシールを更に含む、
請求項1に記載の流体リザーバ。
【請求項14】
前記流体リザーバを前記流体で充填又は再充填するための流体充填口を更に含む、
請求項1に記載の流体リザーバ。
【請求項15】
流体吐出ヘッドと、
請求項1に記載の前記流体リザーバを収容するよう構成された少なくとも1つの開放型チャンバと
を含む、
流体分注カートリッジ。
【請求項16】
流体分注装置のための流体吐出ヘッドをプライミングするための方法であって、
前記流体吐出ヘッドを含む流体分注構造を提供することと、
流体リザーバを前記流体分注構造に取り付けることであって、前記流体リザーバは、流体を収容する密封型流体キャビティと、前記密封型流体キャビティと流体流れ連通している流体出口と、前記流体リザーバに前記流体出口とは反対側に取り付けられたフロー誘導ポンプとを含むことと、
前記流体吐出ヘッドを前記流体リザーバからの前記流体でプライミングするため、前記流体を前記流体リザーバの前記流体出口から前記流体吐出ヘッド内へ流すため前記フロー誘導ポンプを作動させることと
を含む、
方法。
【請求項17】
前記流体リザーバは、前記流体分注装置により分注すべき前記流体で予め充填されている、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記流体リザーバを前記流体分注構造に取り付ける前に、前記流体分注装置により分注すべき前記流体で前記流体リザーバを充填すること
を更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記流体分注構造は1つ以上の開放型チャンバを含み、
前記流体リザーバを前記1つ以上の開放型チャンバの夫々に挿入することと、
各前記流体リザーバ上の前記フロー誘導ポンプを作動させることと
を更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
各前記流体リザーバは、異なる流体を含む、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出装置への流体の提供に用いられるセルフプライミング機能を具える流体リザーバに関するものである。流体リザーバは、吐出すべき流体が予め充填されているか、使用前に使用者により充填されることができる。
【背景技術】
【0002】
医療分野において特に、分析のための自動化された試料調製の必要性がある。分析は、比色分析、又は顕微鏡下で試料をより好ましく観察するため、試料の着色を要する可能性がある。そのような分析には、薬剤試料分析、血液試料分析等を含む。例えば、血液の分析において、血液は個人の健康を判定するために用いられるいくつかの異なる要因を提供するため分析される。血液試料分析を要する多くの患者がいる場合、分析のため試料を調製する手順は非常に時間がかかるものとなる。薬物スクリーニングといったアッセイ解析には、試料に対する効果及び性能を評価するため、微量の標的試薬を堆積させることが望ましい。従来、手動又は電気機械的に作動するピペットが、これらアッセイ試薬中に微量物質を堆積させるために用いられている。アッセイのために生成される試験流体の総ボリュームは、最少の試薬に対して、試薬の所望の割合を達成する能力により決定付けられる。ピペットの小規模なボリューム制約により、試薬の適切な割合を達成するために過剰な試験流体を作成することが度々必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サーマルインクジェット技術は噴射流体のピコリットルサイズの液滴を正確に分配できることが知られている。インクジェット技術が提供する精度と速度は、無駄な試料の量を削減しつつアッセイ試料のスループットを向上させるための有力候補である。従来のサーマルジェットプリンタでは、典型的に、噴射流体はエンドユーザに届く前にプリントヘッドに予め充填されている。しかし、現場で試験溶液を作成することが望ましいライフサイエンス分野では、予め充填されたカートリッジを使用することは現実的でない。
【0004】
インクジェット印刷が化学的及び生物学的アッセイ分析を管理する実行可能な方法である一方で、現在市場に存在しているインクジェット印刷製品は、一部の研究者にとってコストが高過ぎる特殊なプリンタ及び特別に設計されたプリントヘッドを使用している。製造コスト及びエンドユーザのコストを削減するには、特別に設計された印刷システムではなく、既存の標準的なインクジェットプリンタを使用することが望ましい。ライフサイエンス分野で標準的なインクジェットプリンタを使用できるようにするには、プリントヘッドの流体リザーバ本体を改変して、流体リザーバ本体を特製噴射流体で容易に充填することを可能としつつ、流体リザーバ本体の既存の流体リザーバ形状因子を維持する必要がある。
【0005】
製造時に流体が充填されない流体リザーバ本体の使用に伴う1つの問題は、後に充填される流体で噴射ヘッドをプライミングすることが困難である点である。後に充填される流体リザーバ本体に伴うもう1つ問題は、吐出ヘッド内の流体チャンバが微量の流体しか保持することができない点である。吐出ヘッドの流体チャンバは、吐出ヘッドのノズルプレートのノズル孔を通じて吐出される流体を提供し、流体がノズルプレートから垂れることを防ぐ適切な背圧を維持するのに重要である。従って、吐出ヘッドから正確な量の液体を吐出するには、吐出ヘッドに取り付けられた流体リザーバ又は流体タンクからの液体フローの一貫性が必要である。このため、一定の流体フローを維持しつつ分注すべき流体の十分な量を供給し、吐出ヘッドのノズルプレートから流体が垂れることを防ぐために流体に適切な背圧を提供する装置及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の実施形態は、流体吐出ヘッド構造のために流体吐出リザーバと、流体分注装置のための流体吐出ヘッドをプライミングするための方法を提供する。流体リザーバは、流体を収容するよう構成された密封型流体キャビティと、密封型流体キャビティと流体流れ連通している流体出口と、流体リザーバに流体出口とは反対側に取り付けられたフロー誘導ポンプとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、流体リザーバは流体吐出装置により分注される流体を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、密封型流体キャビティは背圧手段で満たされる。他の実施形態において、背圧手段は流体透過発泡体である。いくつかの実施形態において、フロー誘導ポンプは、流体出口を通過する流体フローを誘導するため流体透過発泡体を圧縮するよう構成された変形可能ブラダを含む。いくつかの実施形態において、背圧手段は流体充填可能なバネ付勢式ブラダである。いくつかの実施形態において、変形可能ブラダに所定圧力を提供するため、圧力逃がし弁が変形可能ブラダと流れ連通して提供される。
【0009】
いくつかの実施形態において、流体リザーバは、流体リザーバを流体吐出ヘッド構造に確実に取り付けるよう構成されたタブを備える矩形柱状本体を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、流体リザーバは、流体リザーバを流体吐出ヘッド構造に封止するよう構成されるOリングシールを備える。
【0011】
いくつかの実施形態において、流体リザーバは、流体リザーバを流体で充填又は再充填するための流体充填口を備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、流体吐出ヘッドと、流体リザーバを収容するよう構成された少なくとも1つの開放型チャンバとを備える流体分注カートリッジを提供する。流体リザーバは、流体を収容するよう構成された密封型流体キャビティと、密封型流体キャビティと流体流れ連通している流体出口と、流体リザーバに流体出口とは反対側に取り付けられたフロー誘導ポンプとを含む。
【0013】
本発明のもう1つの実施形態は、流体分注装置のための流体吐出ヘッドをプライミングするための方法を提供する。該方法は、流体吐出ヘッドを備える流体分注構造を提供することを含む。流体リザーバは、流体分注構造に取り付けられ、流体リザーバは、流体を収容する密封型流体キャビティと、密封型流体キャビティと流体流れ連通している流体出口と、流体リザーバに流体出口とは反対側に取り付けられたフロー誘導ポンプとを含む。フロー誘導ポンプは、流体吐出ヘッドを流体リザーバからの流体でプライミングするため、流体を流体リザーバの流体出口から流体吐出ヘッド内に流すために作動される。
【0014】
いくつかの実施形態において、流体リザーバは、流体分注装置により分注すべき流体で予め充填されている。
【0015】
いくつかの実施形態において、流体リザーバは、流体リザーバを流体分注構造に取り付ける前に、流体分注装置により分注すべき流体で充填される。
【0016】
いくつかの実施形態において、流体分注構造は1つ以上の開放型チャンバを含み、上記方法は、流体リザーバを1つ以上の開放型チャンバの夫々に挿入することと、各流体リザーバ上のフロー誘導ポンプを作動させることとを更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、各流体リザーバは異なる流体を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態の利点は、予め充填された流体リザーバを出荷するのではなく、流体を現場で充填することにより、劣化しやすい流体を使用することができることである。また、流体吐出ヘッドチップは従来の流体カートリッジ内に提供される量の流体よりも長い寿命を有することから、流体吐出ヘッドチップを含む予め充填された流体カートリッジを提供することよりも低コストな流体リザーバを提供することにより、流体吐出ヘッドチップを再利用することができる。吐出ヘッドチップの損傷を避けるため慎重な梱包及び扱いを要するカートリッジ及び吐出ヘッドチップの全体の輸送ではなく、流体リザーバのみを輸送することにより、梱包及び輸送コストも削減することができる。流体カートリッジには使用時まで流体が充填されていないことから、流体中の固形物が沈降して流体吐出器の性能に悪影響を与える問題が減る。また、流体は長時間ではなく使用直前に流体カートリッジに導入されるのみであることから、流体カートリッジ本体の膨張が少なく、よって流体を含む溶媒を吐出する際の吐出ヘッドのたわみが少ない。流体リザーバに取り付けられたポンプは、吐出ヘッドのプライミングの問題を最小化するのに効果的であり、また吐出ヘッドのノズルに捕捉される空気の量を最小化するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による流体リザーバのための流体分注装置の、縮尺通りでない、斜視図である。
図2図1の流体分注装置で用いられるトレイ及びマイクロウェルプレートの、縮尺通りでない、斜視図である。
図3】本発明による流体リザーバと共に用いられる流体分注カートリッジの、縮尺通りでない、斜視図である。
図4図3の流体分注カートリッジの、縮尺通りでない、上面図である。
図5】本発明による流体リザーバと共に用いられる2つの開放型チャンバを含む流体分注カートリッジの、縮尺通りでない、斜視図である。
図6図5の流体分注カートリッジの、縮尺通りでない、上面図である。
図7】本発明の実施形態による流体リザーバの斜視図である。
図8図7の流体リザーバの、縮尺通りでない、断面図である。
図9】4つの開放型チャンバを備える流体分注カートリッジに挿入された図7の流体リザーバの斜視図である。
図10図9の流体分注カートリッジと流体リザーバの断面図である。
図11】開放型チャンバに2つの流体リザーバのみを含む図7の流体分注カートリッジの上面図である。
図12】本発明のもう1つの実施形態による流体リザーバと流体分注構造の斜視図である。
図13図12の流体リザーバと流体分注構造の底部斜視図である。
図14図12の流体リザーバと流体分注構造の上部斜視図である。
図15】膨張可能ブラダを示す図12の流体リザーバと流体分注構造の断面図である。
図16】膨張可能ブラダを示す図12の流体リザーバと流体分注構造の断面図である。
図17】本発明の1つの実施形態による代替的な流体リザーバの斜視図である。
図18】本発明の1つの実施形態による代替的な流体リザーバの斜視図である。
図19】本発明のもう1つの実施形態による円筒状液体リザーバ及びそれのための流体分注構造の斜視図である。
図20】本発明のもう1つの実施形態による円筒状液体リザーバ及びそれのための流体分注構造の斜視図である。
図21図19図20の流体リザーバと流体分注構造の断面図である。
図22】プラグを含む図19図20の流体リザーバの斜視図である。
図23】本発明のもう1つの実施形態による流体リザーバの断面図である。
図24】本発明のもう1つの実施形態による流体リザーバの断面図である。
図25】本発明の実施形態による流体リザーバのための膨張可能ブラダのための圧力逃がし弁の概略図である。
図26】本発明の実施形態による流体リザーバのための膨張可能ブラダのための圧力逃がし弁の概略図である。
図27】再利用のため膨張可能ブラダを手動リセットするための手動作動式二位置弁の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図2を参照し、基板上に1つ以上の流体を正確に分注するための電子分注装置10を示している。高性能電子分注装置とは異なり、装置10は、流体分注動作の間に、第1のx方向に前後移動する吐出ヘッドと、第1の方向と直交する第2のy方向に前後移動する基板を移動させるためのトレイ14とに基づく。装置10は、開放型流体分注カートリッジだけでなく、開放型及び閉鎖型流体分注カートリッジを収容することができる。トレイ14は、マイクロウェルプレート、ガラススライド、回路板等を含むがこれに限定されない多様な基板に適応可能である。矩形柱状ボックス18には、流体吐出ヘッドとカートリッジ移動機構とを含む流体分注カートリッジが収容される。装置10を起動するための起動スイッチ20がボックス18に含まれる。
【0021】
図2は、流体をマイクロウェルプレートのウェル24中又はガラススライド上に分注するために電子分注装置10で用いられる、ウェル24を収容するマイクロウェルプレート22を保持するためのトレイ14を表す。トレイ14は、異なるサイズのマイクロウェルプレートのための、又は、流体を堆積するためのスライドや他の基板を保持するための、アダプタを含んでもよい。
【0022】
図1の電子分注装置10で用いるための流体分注カートリッジを図3図6に表す。図3は、本発明の1つの実施形態による単一チャンバの流体分注カートリッジ26の縮尺通りでない斜視図である。カートリッジ26は、単一の開放型チャンバ30を提供する一体成型本体28を備える。開放型チャンバ30は、チャンバ30から吐出ヘッドチップ34への流体のフローのための流体供給スロット32(図4)を備え、吐出ヘッドチップ34は流体供給スロット32に隣接して取り付けられる流体吐出器アレイ35を含む。吐出ヘッドチップ34は、一体成型本体28の前壁38に取り付けられるフレキシブル回路36に電気接続される。図4は、流体供給スロット32の位置を示す図3の単一チャンバカートリッジ26の上面図である。
【0023】
図5図6は、2つの開放型チャンバ42aと42bを備える流体分注カートリッジ40を表す。流体チャンバ42aと42bは、垂直分離壁44により互いに分離される。カートリッジ40の本体46は類似の一体成型本体であり、2つの流体吐出器アレイ50aと50bを含む吐出ヘッドチップ48が取り付けられる。図6に示すように、カートリッジ40の本体46は、2つの流体供給スロット52aと52bを伴って成形される。
【0024】
吐出ヘッドチップ34及び48により吐出すべき流体を流体供給スロット52aと52bに提供するため、個別の流体リザーバ60が提供される(図7図8)。流体リザーバ60は、流体キャビティ64を囲む剛性成型本体62を含み、流体キャビティ64は、流体で予め充填されているか、空であって使用者が流体で充填する準備ができている。キャビティ64が流体で充填されると、カバー又はキャップ66が流体リザーバ60の本体62に取り付けられる。流体をキャビティ64から流体分注カートリッジ26又は40の流体供給スロットへ移すため、流体出口68が提供される。流体キャビティ64から流体出口68を通過して流体分注カートリッジ26又は40の流体供給スロット内への流体のフローを誘導するため、ポンプ70が流体リザーバ60のためのカバー66に取り付けられる。ポンプ70は、ユーザにより押し込まれたとき流体キャビティ64に圧力を誘導する天然又は合成ゴム材料製の弾性ブラダであってもよい。流体分注カートリッジ26又は40のチャンバ内に液密シールを提供するため、弾性封止材72が本体62に取り付けられてもよい。流体分注カートリッジの本体28又は46内に流体リザーバ2を固定するため、タブ74(74a、74b)が流体リザーバ60の本体62に更に提供されてもよい。
【0025】
図9は、最大4つの流体リザーバ60を挿入するための4つの開放型チャンバを有する流体分注カートリッジ80を表す。図10は、図9の流体分注カートリッジ80に挿入された2つの流体リザーバ60を通る断面図である。分離壁82は、流体分注カートリッジの開放型チャンバを互いに分離する。出口68aと68bは、図11に示すような流体分注カートリッジ80の本体中の流体供給スロット86(86b、86c)により吐出ヘッド84と流れ連通している。図11は、開放型チャンバに2つの流体リザーバ60aと60dのみが設けられた図9図10の流体分注カートリッジ80の上面図である。開放型チャンバの底壁88(88a、88b、88c)は、図示されるように流体供給スロット86(86b、86c)に向かって傾斜している。
【0026】
各流体リザーバ60が分注すべき流体で充填されると、流体リザーバ60は流体分注カートリッジ80の開放型チャンバに挿入され、各流体リザーバ60からの流体で流体供給スロット86(86b、86c)(図11)を満たすようポンプ70(70a、70b)が押下される。典型的に、流体分注カートリッジ80の開放型チャンバは流体を有しておらず、このため吐出ヘッドチップ84は分注するための流体を有さない。従って、ポンプ70(70a、70b)が押下されると、流体が吐出ヘッドチップ84の上方の領域を満たして、流体がカートリッジ80から分注可能となる。ポンプ70(70a、70b)は、吐出ヘッドチップ84を流体でプライミングするのに十分な流体の正確な量を吐出ヘッドチップ84に提供するよう設計される。
【0027】
図10を再び参照し、ポンプ70(70a、70b)は、流体リザーバ60のキャビティ64(64a、64b)及びキャビティ64(64a、64b)内の流体を直接加圧するよう設計される。従って、各カバー66は、吸気口90a、90bと、流体リザーバ60のキャビティ64(64a、64b)と気体流れ連通している排出口92a、92bとを含む。吸気口90と排出口92を通過する一方通行の流れを提供するため、吸気口及び排出口のそれぞれは一方向弁を含んでもよい。図7図11に表した実施形態において、ポンプ70(70a、70b)はキャビティ64(64a、64b)内の流体を直接加圧する。いくつかの実施形態において、流体分注カートリッジはフィルタを含まない。
【0028】
いくつかの実施形態において、図12図16に表すように、1つ以上の流体リザーバ100が、吐出ヘッド104とフレキシブル回路106とを含む吐出ヘッド構造102に取り付けられる。吐出ヘッド構造102は、流体リザーバ100を保持するために要する材料の量を最小化するために用いられてもよい。流体リザーバ100は、吐出ヘッド構造102に取り付けられたフィルタタワー112に液密接続するため、出口110にOリング108を含んでもよい。フィルタタワー112は、流体をフィルタを通過させて流体供給スロットへと導き、流体供給スロットは吐出ヘッド104へ流体を導く。
【0029】
図12図16の実施形態において、流体リザーバ100のキャビティは、吐出ヘッド104上に背圧を誘導可能な流体透過性材料116で満たされる。流体透過性材料116は、メラミン製又は流体分注装置10により分注すべき流体と適合する他の材料製の発泡体又はフェルトから選択されてもよい。流体リザーバ100内に含まれる流体の量は、使用される特定の流体分注システムに応じて約1~約10グラム以上の範囲であってもよい。例えば、流体分注システムがインクジェットプリンタである場合、各流体リザーバ内の流体の量は10グラム以上であってもよい。
【0030】
本実施形態において、流体を流体透過性材料116からフィルタタワー112内へ流出させるため、図15図16の断面図のシーケンスに示すように、流体透過性材料116に圧力を加えるようブラダ118が用いられる。流体リザーバ100のキャビティ内の流体を直接加圧するのではなく、ブラダ118を膨張させるためにポンプ120が用いられる。図15においてブラダ118は収縮しており、図16においてポンプ120を用いてブラダ118を膨張させる。
【0031】
1つの代替的な実施形態において、図17図18に表すように、流体リザーバ122は、流体リザーバ122を充填又は再充填するための流体供給口124を含んでもよい。流体供給口124を通じて流体格納コンテナから流体リザーバ122に流体を提供するため、フレキシブル管(未図示)が用いられてもよい。流体供給口124が用いられないときは、カバー126が流体リザーバ122に取り付けられてもよい。
【0032】
もう1つの実施形態において、図19図22に表すように、流体リザーバ130を吐出ヘッド構造132に圧入するのではなく、流体リザーバ130を吐出ヘッド構造132に螺着させるため、流体リザーバ130は円柱形状を有する。従って、流体リザーバ130は構造132に取り付けられたフィルタタワー構造138上のネジ山136と嵌合するネジ山134を含む。流体リザーバ130が吐出ヘッド構造132上に締め付けられるときにフィルタタワー構造138に液密封止するため、流体リザーバ130にはOリングシール140が含まれてもよい。後の使用のために流体を有する流体リザーバ130を保管することが必要であるか望ましい場合、将来的な使用のために流体リザーバ130の出口を封止するため、プラグ142が用いられてもよい。
【0033】
もう1つの実施形態を図23図24に表す。本実施形態によると、流体リザーバ150は、前述した実施形態の流体透過性材料116ではなく、流体で充填可能なバネ付勢式ブラダ152を含む。バネ付勢式ブラダ152は、流体が吐出ヘッド154から垂れることを防ぐため、ブラダ内の流体に背圧を提供する。前述した実施形態と同様に、吐出ヘッド154をプライミングするため、バネ付勢式ブラダ152に圧力を加えるよう膨張可能なブラダ118を膨張させるためにポンプ120が用いられる。図23において、ブラダ118は収縮している。図24において、流体を吐出ヘッド構造162に取り付けられたフィルタタワー構造160に流入させるため、バネ付勢式ブラダ152に圧力を加えるようブラダ118を膨張させる。
【0034】
バネ付勢式ブラダ152は流体リザーバ150のフロア164に封止され、これにより吐出ヘッド154からの流体吐出の間に、空気が変位した流体のボリュームに置き換わることを防ぐ。流体吐出の間にバネ付勢式ブラダ152内の流体のボリュームが減少するにつれ、バネ付勢式ブラダ152はつぶれていく。ただし、バネ付勢式ブラダ152内部のバネ166は、バネ166がバネ付勢式ブラダ152がつぶれることにより圧縮されるにつれ、流体が吐出ヘッド154から垂れることを防ぐために必要な背圧を維持するよう校正される。膨張可能なブラダ118は、吐出ヘッド154をプライミングするため、流体をフィルタタワー構造160を通過して移動させるためバネ166に初期圧縮を提供する。
【0035】
流体を流体リザーバから流出させるために膨張可能なブラダ118が用いられる上述した実施形態において、再利用のためにブラダ118内部の圧力を解放してブラダ118をリセットするため、ブラダ118と気体流れ連通している圧力逃がし弁及び/又は手動作動させる二位置弁を含むことが望ましい。図25図26は、ブラダ118の過圧を防ぐために如何にして圧力弁をブラダ118に含めることができるかを概略的に表す。図25において、ポンプ120が作動され、周囲大気圧源170からの空気が第2の一方向弁172を通過してブラダ118に流入することを可能とするため、第1の一方向弁168が開放される。ブラダ118と気体流れ連通している圧力逃がし弁174は、所定の設定圧力を超える圧力を周囲大気圧源170に逃がすことにより、ブラダ118の過圧を防止する。図26において、固定圧力逃がし弁174ではなく、可変圧力逃がし弁176が提供される。使用者は、流体リザーバ内の流体の濃度及び粘度に応じて、可変圧力逃がし弁176のための逃がし圧を設定してもよい。
【0036】
図27は、通常は閉じられていて手動で作動される二位置弁178が可変圧力逃がし弁176と組み合わされてブラダ118と流れ連通して提供される、1つの代替的な実施形態を表す。使用者が空気をブラダ118から逃がすために二位置弁178を手動で作動させることで、ブラダ118はリセットされて再度使用されることができる。従って、上述した流体リザーバは、上述した流体分注装置10により分注すべき流体を提供するために複数回使用されることができる。
【0037】
上述したリザーバは、医療分析目的又は従来のインクジェット印刷応用のために用いられる様々な流体に用いることができる。医療分析流体の場合、開示された実施形態は、輸送や保管中に劣化する可能性のある予め充填された液体リザーバを用いるのではなく、使用者が必要に応じて流体をリザーバ内に挿入することを可能とする。同様に、顔料系インクを用いるインクジェット印刷応用において、リザーバは使用直前に充填されることができ、これにより予め充填されたカートリッジで輸送及び保管される顔料系インクに伴う顔料沈降の問題を回避することができる。そして、流体リザーバは、流体が流体吐出ヘッドによる吐出のために即座に利用可能であることを保証するため、上述したようにポンプを用いてプライミングされることができる。
【0038】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のため、特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、百分率又は比率を表す全ての数値及び他の数値は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも述べられた有効数字の数を考慮し、そして通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0039】
特定の実施形態について説明したが、出願人又は他の当業者には、現在予測していない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、提出された添付の特許請求の範囲及び補正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0040】
10:電子分注装置
14:トレイ
18:ボックス
20:起動スイッチ
22:マイクロウェルプレート
24:ウェル
26:流体分注カートリッジ
28:本体
30:チャンバ
32:流体供給スロット
34:吐出ヘッドチップ
35:流体吐出器アレイ
36:フレキシブル回路
38:前壁
40:流体分注カートリッジ
42a、42b:チャンバ
44:垂直分離壁
46:本体
48:吐出ヘッドチップ
50a、50b:流体吐出器アレイ
52a、52b:流体供給スロット
60、60a、60b、60c、60d:流体リザーバ
62:本体
64:流体キャビティ
66:カバー/キャップ
68、68a、68b:流体出口
70:ポンプ
72:弾性封止材
74:タブ
80:流体分注カートリッジ
82:分離壁
84:吐出ヘッド
86:流体供給スロット
88:底壁
90、90a、90b:吸気口
92、92a、92b:排出口
100:流体リザーバ
102:吐出ヘッド構造
104:吐出ヘッド
106:フレキシブル回路
108:Oリング
110:出口
112:フィルタタワー
114:フィルタ
116:流体透過性材料
118:ブラダ
120:ポンプ
122:流体リザーバ
124:流体供給口
126:カバー
130:流体リザーバ
132:吐出ヘッド構造
134、136:ネジ山
138:フィルタタワー構造
140:Oリングシール
142:プラグ
150:流体リザーバ
152:バネ付勢式ブラダ
154:吐出ヘッド
160:フィルタタワー構造
162:吐出ヘッド構造
164:フロア
166:バネ
168:第1の一方向弁
170:周囲大気圧源
172:第2の一方向弁
174:固定圧力逃がし弁
176:可変圧力逃がし弁
178:二位置弁
図1
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