(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178966
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】構造物用シート
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20231211BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20231211BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20231211BHJP
E04D 1/00 20060101ALI20231211BHJP
E04D 3/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
E04G23/02 A
E04B1/66 A
E04D1/00 A
E04D3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091408
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2022091700
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古永 利克
(72)【発明者】
【氏名】中島 由起
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】松野 有希
(72)【発明者】
【氏名】寺本 晃史
(72)【発明者】
【氏名】北里 辰範
(72)【発明者】
【氏名】西村 康男
(72)【発明者】
【氏名】二宮 晃
【テーマコード(参考)】
2E001
2E108
2E176
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA16
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2E001GA28
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2E001HD11
2E001KA02
2E001MA01
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4F100AE00D
4F100AK01D
4F100AK07C
4F100AK12C
4F100AK19C
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4F100AT00A
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4F100DG12C
4F100JK08C
4F100JM01A
(57)【要約】
【課題】取り扱い性に優れた構造物用シート2の提供。
【解決手段】構造物用シート2は、機能層4、中間層6、粘着層8及び補強体10を有している。補強体10は、中間層6に埋設されている。好ましくは、補強体10は、ファブリックである。ファブリックの典型的な材質は、合成樹脂組成物である。このファブリックの、引張試験によって測定される、引張強さは5.0MPa以上であり、伸びは15.0%以下である。中間層6の好ましい材質は、ポリマーとセメントとを含む複合材料である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層、粘着層及び補強体を備えた構造物用シート。
【請求項2】
上記補強体がファブリックである請求項1に記載の構造物用シート。
【請求項3】
上記ファブリックの材質が合成樹脂組成物であり、この合成樹脂組成物の基材樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ビニロン、ポリプロピレン、ポリスチレン又はポリフッ化ビニリデンである、請求項2に記載の構造物用シート。
【請求項4】
上記ファブリックの、引張試験によって測定される引張強さが、5.0MPa以上である、請求項2又は3に記載の構造物用シート。
【請求項5】
上記ファブリックの、引張試験によって測定される伸びが、15.0%以下である、請求項2又は3に記載の構造物用シート。
【請求項6】
上記機能層と上記粘着層との間に位置する中間層をさらに備えており、
上記中間層の材質が、ポリマーとセメントとを含む複合材料である、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項7】
上記粘着層、上記補強体、上記中間層及び上記機能層がこの順に積層されている、請求項6に記載の構造物用シート。
【請求項8】
上記補強体が上記中間層に埋設されている、請求項6に記載の構造物用シート。
【請求項9】
引張試験によって測定される引張強さが、5.0MPa以上である、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項10】
引張試験によって測定される伸びが、15.0%以下である、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項11】
シートによる構造物の補修又は補強の方法であって、
(1)機能層、粘着層及び補強体を有するシートを、準備する工程、
並びに
(2)上記粘着層の粘着力により、上記構造物の表面に上記シートを貼り付ける工程
を備えた、構造物の補修又は補強の方法。
【請求項12】
旧シートによって補修又は補強された構造物の、再補修又は再補強の方法であって、
(1)機能層、粘着層及び補強体を有する新シートを、準備する工程、
並びに
(2)上記粘着層の粘着力により、破損又は劣化した上記旧シートの表面に上記新シートを貼り付ける工程
を備えた、構造物の再補修又は再補強の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、構造物に貼り付けられて使用されるシートを開示する。
【背景技術】
【0002】
人造スレートの屋根が長期間風雨に曝されると、劣化が生じる。劣化した屋根からの雨漏りが、懸念される。雨漏りの防止の目的で、人造スレートに塗料が塗布される。しかし、人造スレートの劣化が激しい屋根の場合、塗料の塗布によっても雨漏りが防止されないことがある。
【0003】
国際特許公開2021/010456公報には、ポリマーセメント層と樹脂層とを有するシートが、開示されている。このシートが屋根に貼り付けられることで、屋根の雨漏りが抑制されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開2021/010456公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートは、作業者によって張力が付加されつつ、屋根に貼り付けられる。この張力により、シートは伸張しうる。過剰の伸張は、作業者によるシートの位置合わせを困難にする。伸張により、シートが損傷することもある。作業者は、破損を避ける目的で、慎重にシートを扱わなければならない。国際特許公開2021/010456公報に開示されたシートは、取り扱い性に劣る。取り扱い性に優れたシートが、望まれている。
【0006】
人造スレートの屋根以外の屋根の補修においても、シートに対する、優れた取り扱い性の要請がある。屋根以外の構造物の補修又は補強においても、シートに対する、優れた取り扱い性の要請がある。
【0007】
本出願人の意図するところは、取り扱い性に優れた構造物用シートの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書が開示する構造物用シートは、機能層、粘着層及び補強体を有する。
【発明の効果】
【0009】
この構造物用シートは、補強体を有しているので、張力が付加されても、伸びにくくかつ損傷しにくい。この構造物用シートは、取り扱い性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る構造物用シートの一部が示された斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2において符号IIIが付された部分が示された拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1の構造物用シートが屋根と共に示された正面図である。
【
図5】
図5は、
図4において符号Vが付された部分が示された拡大図である。
【
図6】
図6は、
図4において符号VIが付された部分が示された拡大図である。
【
図7】
図7は、
図1の構造物用シートに含まれる補強体の一部が示された拡大平面図である。
【
図8】
図8は、他の実施形態に係る構造物用シートの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0012】
[第一実施形態]
[層構造]
図1-3に、構造物用シート2が示されている。
図1において、矢印Xはシート2の幅方向を表し、矢印Yはシート2の長さ方向を表し、矢印Zはシート2の厚さ方向を表す。このシート2の平面形状は、概して矩形である。
図3から明らかなように、このシート2は、機能層4、中間層6、粘着層8及び補強体10を有している。補強体10は、中間層6に埋設されている。各層の材質等は、後に詳説される。このシート2は、構造物に貼り付けられる。シート2が、離型紙又は離型フィルムを有してもよい。離型紙及び離型フィルムは、粘着層8と積層される。
【0013】
[屋根の補修]
この構造物用シート2の典型的な用途は、屋根12の補修である。
図4-6に、補修された屋根12が示されている。これらの図には、屋根12と共に、2つのシート2(第一シート2a及び第二シート2b)が示されている。第二シート2bの仕様は、第一シート2aの仕様と同じである。屋根12として、人造スレート屋根、瓦屋根、鋼板屋根(折板屋根を含む)、銅板屋根、トタン板屋根、コンクリート屋根等が挙げられる。
【0014】
図4では、第一シート2aの下縁14aの位置は、屋根12の下端16の位置と概ね一致している。第一シート2aは、全体として、屋根12に貼られている。
図5に示されるように、この屋根12は、段差18を有している。第一シート2aは、この段差18の近傍において、湾曲している。この湾曲によって第一シート2aは、段差18に追従している。
【0015】
図6に示されるように、第二シート2bは、その下縁14bの近傍において、第一シート2aの上縁20aの近傍と重なっている。この重なりにより、継ぎ目22が形成されている。第二シート2bのうち、継ぎ目22以外の部分は、屋根12に貼られている。第一シート2aの上縁20aは、この第一シート2aと屋根12との間に段差24を形成している。第二シート2bは、この段差24の近傍において、湾曲している。この湾曲によって第二シート2bは、段差24に追従している。
【0016】
[プライマー層]
構造物用シート2は通常、プライマー層を介して屋根12に貼り付けられる。本明細書では、プライマー層等を介してシート2が屋根12に貼り付けられる場合も含め、「シートが屋根に貼り付けられる」と称される。
図5及び6では、プライマー層の図示が省略されている。
【0017】
好ましくは、プライマー層の材質は、硬化性樹脂組成物である。硬化性樹脂として、熱硬化樹脂及び光硬化樹脂が例示される。好ましい硬化性樹脂は、エポキシ化合物である。エポキシ化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物が、例示される。
【0018】
エポキシ化合物のための硬化剤として、多官能フェノール類、アミン類、ポリアミン類、メルカプタン類、イミダゾール類、酸無水物及び含リン化合物が例示される。多官能フェノール類として、単環二官能フェノールであるヒドロキノン、レゾルシノール及びカテコール;多環二官能フェノールであるビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフタレンジオール類及びビフェノール類並びにこれらのハロゲン化物;並びにアルキル基置換体が例示される。多官能フェノール類としてさらに、フェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック及びレゾールが、例示される。アミン類として、脂肪族又は芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩及び脂肪族環状アミン類;グアニジン類;並びに尿素誘導体が例示される。
【0019】
ビスフェノールA型エポキシ又はビスフェノールF型エポキシの主剤と、ポリアミン類又はメルカプタン類の硬化剤との組合せが、特に好ましい。エポキシ樹脂を含むプライマー層が、カップリング剤、粘度調整剤及び硬化促進剤のような添加剤を含んでもよい。
【0020】
プライマー層は、エポキシ化合物を含む溶液又はエマルションが屋根12に塗布されることで、形成されうる。好ましいエマルションとして、東亞合成社製2液反応硬化形水系エポキシ樹脂エマルション(商品名「アロンブルコートP-300」)が例示される。
【0021】
ウエットの状態でのプライマー層の厚さは、50μm以上300μm以下が好ましい。厚さが50μm以上であるプライマー層は、厚さの均質性に優れる。この観点から、厚さは70μm以上がより好ましく、80μm以上が特に好ましい。厚さが300μm以下であるプライマー層は、構造物用シート2の屋根12とのズレを抑制しうる。この観点から、厚さは270μm以下がより好ましく、250μm以下が特に好ましい。
【0022】
[シートの引張強さ及び伸び]
この構造物用シート2の引張強さは、5.0MPa以上が好ましい。引張強さが5.0MPa以上であるシート2は、張力がかかっても破れにくい。このシート2は、取り扱い性に優れる。この観点から、引張強さは5.6MPa以上がより好ましく、6.0MPa以上が特に好ましい。追従性の観点から、引張強さは10.0Mpa以下が好ましく、9.5MPa以下がより好ましく、9.0MPa以下が特に好ましい。
【0023】
この構造物用シート2の破断時の伸びは、15.0%以下が好ましい。伸びが15.0%以下であるシート2は、張力がかかっても変形しにくい。このシート2は、取り扱い性に優れる。この観点から、伸びは13.0%以下がより好ましく、11.0%以下が特に好ましい。追従性の観点から、伸びは5.0%以上が好ましく、7.0%以上がより好ましく、8.5%以上が特に好ましい。
【0024】
本明細書においてシート2の引張強さ及び伸びは、「JIS L1913:2010」に規定された一般不織布試験法に準拠して測定される。測定のための試験片は、構造物用シート2又はその原反から切り出される。その長さ方向が構造物用シート2又はその原反の長さ方向と一致する5個の試験片と、その長さ方向が構造物用シート2又はその原反の幅方向と一致する5個の試験片とが、測定に供される。10の測定値が平均されて、引張強さ及び伸びが算出される。シート2に含まれる全ての層(本実施形態では、機能層4、中間層6、粘着層8及び補強体10)が含まれるゾーンにて、試験片が切り出される。
【0025】
その長さ方向が、構造物用シート2又はその原反の幅方向と一致する試験片の切り出しが困難な場合、その長さ方向が構造物用シート2又はその原反の長さ方向と一致する10個の試験片が測定に供される。10の測定値が平均されて、引張強さ及び伸びが算出される。
【0026】
[水蒸気透過率]
構造物用シート2の水蒸気透過率は、10g/m2・day以上が好ましい。このシート2が構造物に貼り付けられた後、構造物に含まれる水分や、構造物とシート2との間に存在する水分が、シート2を通じて排出されうる。このシート2は、構造物中の金属の腐食を抑制しうる。このシート2は、水分を含む構造物(例えば乾燥が不十分なコンクリートを有する構造物)にも、適している。このシート2は、雨天時の施工にも適している。これらの観点から、水蒸気透過率は20g/m2・day以上がより好ましく、25g/m2・day以上が特に好ましい。水蒸気透過率は、50g/m2・day以下が好ましい。
【0027】
[機能層]
図3から明らかなように、本実施形態では、機能層4は、最も上に位置している。換言すれば、シート2が構造物に貼られたとき、機能層4は、この構造物から最も離れて位置する。機能層4は、シート2に望まれる機能に、寄与する。この機能として、耐光性、耐候性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、非透水性、非透湿性及び透湿性が例示される。機能層4は、1又は2以上の機能に寄与しうる。
【0028】
機能層4の好ましい材質は、ポリマー組成物である。この機能層4は、概して柔軟である。この機能層4を有するシート2は、下地の凹凸に追従しうる。ポリマー組成物は、基材ポリマーを含む。合成樹脂、合成ゴム及び天然ゴムが、基材ポリマーとして、組成物に含有されうる。基材ポリマーが合成樹脂である機能層4は、「樹脂層」とも称される。
【0029】
機能層4に耐光性が望まれる場合、紫外線で劣化しにくい基材ポリマーが好ましい。具体的には、紫外線(410KJ/mol)よりも強い結合エネルギーを有するポリマーが、好ましい。機能層4の耐光性及びシート2の柔軟性に寄与しうるポリマーとして、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂及びポリブタジエンが例示される。
【0030】
耐光性の観点から、機能層4の基材ポリマーに特に適した樹脂は、アクリルシリコーン樹脂である。アクリルシリコーン樹脂は、シロキサン結合を含む。アクリルシリコーン樹脂は、耐熱性及び耐寒性にも優れる。アクリルシリコーン樹脂を含む組成物の具体例として、大日精化社の商品名「クールライフSPブラック(CB1)P5-0」、藤倉化成社の商品名「ベルアース弾性黒」、東亞合成社の商品名「アロンブルコートT-1000」、並びに日本触媒社の商品名「アクリセットEMN325E」及び「ユーダブルEF008」が挙げられる。
【0031】
機能層4に非透水性及び透湿性が望まれる場合、機能層4の水蒸気透過率は、10g/m2・day以上50g/m2・day以下が好ましい。水蒸気透過率は、「JIS Z0208」の規定に準拠して測定される。
【0032】
機能層4のポリマー組成物は、必要に応じ、顔料、充填剤、補強材、防汚剤等の添加剤を含みうる。顔料を含む機能層4は、化粧性に優れる。有機顔料及び無機顔料を、ポリマー組成物は含みうる。充填剤として、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物粒子が例示される。補強材として、セルロールナノファイバーが例示される。それぞれの添加剤の含有率は、機能に応じ調整される。
【0033】
図3において矢印T1は、機能層4の厚さを表す。機能の観点から、厚さT1は10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましい。シート2の追従性、生産性及び軽量の観点から、厚さT1は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、150μm以下が特に好ましい。構造物用シート2が、2以上の機能層4を有してもよい。厚さT1の分布が±50μmの範囲内であることが、好ましい。
【0034】
[中間層]
中間層6は、シート2の剛性等に寄与する。中間層6の好ましい材質は、ポリマーとフィラーとの複合材料である。複合材料のポリマーとして、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びスチレン-ブタジエン共重合体が例示される。複合材料のフィラーとして、セメント、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム及びカーボンブラックが例示される。好ましい複合材料は、ポリマーセメントである。このポリマーセメントは、ポリマーとセメントとを含む。典型的なポリマーは、アクリル樹脂である。セメントとして、ポルトランドセメント及びアルミナセメント並びにこれらの混合物が例示される。ポルトランドセメントが、好ましい。材質がポリマーセメントである中間層6は、「ポリマーセメント硬化層」とも称される。
【0035】
中間層6がポリマーとセメントとを含む場合、中間層6の固形分に占めるポリマーの質量比率は、10%以上40%以下が好ましい。この比が10%以上である中間層6は、他の層(機能層4又は粘着層8)との密着性に優れる。この観点から、この比は15%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましい。この比率が40%以下である中間層6は、十分な量のセメントを含みうる。この観点から、この比は35%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。
【0036】
中間層6がポリマーとセメントとを含む場合、中間層6の固形分に占めるセメントの質量比率は、20%以上70%以下が好ましい。この比が20%以上である中間層6を有するシート2では、大きな引張強さ及び小さな伸びが達成されうる。このシート2は、取り扱い性に優れる。この観点から、この比は30%以上がより好ましく、35%以上が特に好ましい。この比率が70%以下である中間層6は、十分な量のポリマーを含みうる。この観点から、この比は60%以下がより好ましく、55%以下が特に好ましい。
【0037】
ポリマーとセメントとを含む中間層6は、水蒸気透過性に優れる。この中間層6を有するシート2で構造物が覆われても、この構造物中の金属は腐食しにくい。中間層6の水蒸気透過率は、20g/m2・day以上60g/m2・day以下が好ましい。水蒸気透過率は、「JIS Z0208」の規定に準拠して測定される。
【0038】
ポリマーを含む組成物と、セメントを含む組成物とから得られた混合液から、中間層6が形成されうる。基材がアクリル樹脂である場合の、ポリマーを含む好ましい組成物は、アクリル系エマルションである。このアクリル系エマルションは、モノマーが乳化重合されて得られる。乳化重合は、乳化剤によってなされうる。重合は、界面活性剤を含む水の中でなされうる。典型的なモノマーは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。アクリル系エマルションにおけるモノマー成分の含有量は、20質量%から100質量%である。
【0039】
中間層6に適したポリマーを含む組成物の具体例として、菊水化学工業社の商品名「スプリングコートハケ混和液」及び東亞合成社の商品名「アロンブルコートA450ベース」が挙げられる。中間層6に適したセメントを含む組成物の具体例として、菊水化学工業社の商品名「スプリングコートハケ粉体」及び東亞合成社の商品名「アロンブルコートA450セッター」が挙げられる。
【0040】
図3において矢印T2は、中間層6の厚さを表す。本実施形態では、前述の通り、補強体10が中間層6に埋設されている。従って、補強体10を含め、厚さT2が測定される。シート2の取り扱い性の観点から、厚さT2は100μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましく、500μm以上が特に好ましい。シート2の追従性、生産性及び軽量の観点から、厚さT2は1500μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、700μm以下が特に好ましい。厚さT2の分布が±100μmの範囲内であることが、好ましい。
【0041】
中間層6の材質が、樹脂組成物又はゴム組成物であってもよい。構造物用シート2が、2以上の中間層6を有してもよい。構造物用シート2が、互いの材質が異なる2つの中間層6を有してもよい。構造物用シート2が、中間層6を含まない層構造を有してもよい。
【0042】
中間層6の、機能層4との密着の観点から、中間層6の基材ポリマーが、機能層4の基材ポリマーと同種であることが好ましい。
【0043】
[粘着層]
粘着層8は、下地と当接する。粘着層8の粘着力により、シート2が構造物に貼り付けられうる。粘着層8の好ましい材質は、ポリマーを基材とする粘着剤組成物である。この粘着剤組成物に適したポリマーとして、アクリル樹脂、シリコーン、ポリウレタン、ポリエステル、天然ゴム及び合成ゴムが、例示される。基材として特に好ましいポリマーは、アクリル樹脂である。粘着剤組成物の具体例として、トーヨーケム社の商品名「オリバインBPS6574」、「オリバインBPS6554」及び「オリバインBPS5565K」が挙げられる。
【0044】
粘着剤組成物が、硬化剤を含んでもよい。基材がアクリル樹脂である場合の好ましい硬化剤は、イソシアネート硬化剤である。アクリル樹脂100質量部に対するイソシアネート硬化剤の比率は1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が特に好ましい。この比率は10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下が特に好ましい。
【0045】
粘着剤組成物は、粘着付与剤を含みうる。粘着付与剤として、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤及びフェノール樹脂系粘着付与剤が例示される。基材ポリマー100質量部に対する粘着付与剤の比率は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。この比率は15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、7質量部以下が特に好ましい。粘着付与剤の具体例として、荒川化学の商品名「エステルガム H」、「エステルガム AA-V」及び「エステルガム 105」が例示される。
【0046】
図3において矢印T3は、粘着層8の厚さを表す。粘着性の観点から、厚さT3は20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましい。シート2の生産性、軽量及び取り扱い性の観点から、厚さT3は300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下が特に好ましい。粘着層8の量は、20g/m
2以上250g/m
2以下が好ましい。構造物用シート2が、2以上の粘着層8を有してもよい。
【0047】
[補強体(Reinforcement)]
補強体10は、シート2の大きな引張強さに寄与しうる。補強体10はさらに、シート2の小さな伸びに寄与しうる。補強体10を含むシート2は、取り扱い性に優れる。前述の通り補強体10は、中間層6に埋設されている。補強体10が、機能層4に埋設されてもよい。補強体10が、粘着層8に埋設されてもよい。補強体10が、機能層4と中間層6との間に位置してもよい。補強体10が、中間層6と粘着層8との間に位置してもよい。本明細書において補強体10とは、この補強体10を有さない点を除いてシート2の層構造と同じ層構造を有する仮想のシートに比べ、大きな引張強さをシート2に付与しうる物体を、意味する。層状の補強体10は、「補強層」とも称される。
【0048】
[補強体の引張強さ及び伸び]
この補強体10の引張強さは、5.0MPa以上が好ましい。補強体10の引張強さが5.0MPa以上であるシート2は、張力がかかっても破れにくい。このシート2は、取り扱い性に優れる。この観点から、引張強さは5.5MPa以上がより好ましく、6.0MPa以上が特に好ましい。シート2の追従性の観点から、補強体10の引張強さは15.0MPa以下が好ましく、10.0MPa以下がより好ましく、7.0MPa以下が特に好ましい。
【0049】
この補強体10の破断時の伸びは、15.0%以下が好ましい。補強体10の伸びが15.0%以下であるシート2は、張力がかかっても変形しにくい。このシート2は、取り扱い性に優れる。この観点から、補強体10の伸びは13.0%以下がより好ましく、11.0%以下が特に好ましい。シート2の追従性の観点から、補強体10の伸びは5.0%以上が好ましく、7.0%以上がより好ましく、8.5%以上が特に好ましい。
【0050】
引張強さ及び伸びは、「JIS L1913:2010」に規定された一般不織布試験法に準拠して測定される。測定のための試験片は、補強体10又はその原反から切り出される。その長さ方向が補強体10又はその原反の長さ方向と一致する5個の試験片と、その長さ方向が補強体10又はその原反の幅方向と一致する5個の試験片とが、測定に供される。10の測定値が平均されて、引張強さ及び伸びが算出される。
【0051】
平面視における、構造物用シート2の面積に対する補強体10の輪郭の面積の比率は、60%以上が好ましい。この比率が60%以上である補強体10は、シート2の取り扱い性に寄与しうる。この観点から、この比率は70%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。この比率が、100%であってもよい。継ぎ目22における追従性の観点から、この比率は95%以下が好ましい。
【0052】
[ファブリック]
図7に、補強体10が示されている。この補強体10では、複数の縦糸26aと複数の横糸26bとが、織られている。換言すれば、補強体10は、織物(クロス)である。本実施形態では、この織物は、平織り組織を有する。織物は、ファブリックの一種である。ファブリックである補強体10には、中間層6の組成物が含浸しうる。この含浸は、シート2の大きな引張強さに寄与しうる。この含浸はさらに、シート2の小さな伸びに寄与しうる。補強体10が、織物以外のファブリックであってもよい。織物以外のファブリックとして、編み物(ニット)及び交点溶着メッシュが例示される。
【0053】
補強体10の材質として、合成樹脂組成物及び金属が例示される。合成樹脂組成物の好ましい基材樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ビニロン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリフッ化ビニリデンが例示される。好ましい金属として、アルミニウム合金、炭素鋼及び合金鋼が例示される。引張強さが大きい縦糸26a及び横糸26bが採用されることにより、シート2の、十分に大きい引張強さが達成されうる。伸びの小さい縦糸26a及び横糸26bが採用されることにより、シート2の、十分に小さい伸びが達成されうる。
【0054】
図7から明らかなように、この補強体10は、多くの目28を有している。本実施形態では、それぞれの目28の平面形状は、概して正方形である。中間層6は、この目28を貫通している。この貫通は、シート2の大きな引張強さに寄与しうる。この貫通はさらに、シート2の小さな伸びに寄与しうる。
【0055】
図7において矢印P1は、糸26のピッチを表す。ピッチP1は、1.0mm以上50mm以下が好ましい。ピッチP1が1.0mm以上である補強体10では、多くのポリマーセメント等が目28を貫通する。この補強体10は、シート2の、大きな引張強さ及び小さな伸びに寄与しうる。この観点から、ピッチP1は1.2mm以上がより好ましく、1.5mm以上が特に好ましい。ピッチP1が50mm以下である補強体10では、この補強体10が、シート2の、大きな引張強さ及び小さな伸びに寄与しうる。この観点から、ピッチP1は40mm以下がより好ましく、35mm以下が特に好ましい。
【0056】
図7において矢印D1は、糸26の太さを表す。太さD1が大きい糸26により、シート2の、大きな引張強さ及び小さな伸びが、達成されうる。この観点から、太さD1は0.05mm以上が好ましく、0.10mm以上がより好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。太さは、1.0mm以下が好ましい。
【0057】
ファブリック以外の補強体10を、構造物用シート2が含んでもよい。ファブリック以外の補強体10として、不織布、長繊維、樹脂フィルム及び金属箔が例示される。組成物に分散した多数の短繊維が、補強体10であってもよい。
【0058】
[他の層]
構造物用シート2が、機能層4の上に位置する他の層を有してもよい。典型的な他の層は、クリアーペイント層である。他の層が、意匠性、遮熱性等の機能を補強又は付加する層であってもよい。構造物用シート2が、機能層4と中間層6との間に位置する層を有してもよい。構造物用シート2が、中間層6と粘着層8との間に位置する層を有してもよい。
【0059】
[総厚さ]
図3において矢印Ttは、シート2の総厚さを表す。総厚さTtは、200μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましく、500μm以上が特に好ましい。この総厚さTtは、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。総厚さTtの分布が±100μmの範囲内であることが、好ましい。
【0060】
[製造方法]
以下、この構造物用シート2の製造方法の一例が、説明される。この製造方法では、機能層4のポリマー組成物が溶媒と混合され、第一塗料が得られる。この第一塗料がベースフィルムの上に塗工され、第一塗膜が得られる。この第一塗膜が加熱され、第一塗料から溶媒が揮発する。この加熱よって基材ポリマーが硬化し、機能層4が得られる。
【0061】
次ぎに、中間層6の複合材料が溶媒と混合され、第二塗料が得られる。この第二塗料が機能層4の上に塗工され、第二塗膜が得られる。この第二塗膜に、補強体10が押し当てられる。この第二塗膜が加熱され、第二塗料から溶媒が揮発する。この加熱よってポリマーが硬化し、補強体10を含む中間層6が得られる。
【0062】
次ぎに、粘着層8の粘着剤組成物が溶媒と混合され、第三塗料が得られる。この第三塗料が離型フィルムの上に塗工され、第三塗膜が得られる。この第三塗膜が加熱され、第三塗料から溶媒が揮発して、粘着層8が得られる。
【0063】
この粘着層8が、中間層6と重ねられる。さらに、機能層4からベースフィルムが剥離され、粘着層8から離型フィルムが剥離されて、構造物用シート2が得られる。離型フィルムが、構造物用シート2に残存してもよい。
【0064】
[効果]
この構造物用シート2は追従性に優れるので、前述の通り、段差が存在する屋根12にも適用されうる。複数のシート2が継ぎ貼りされることで、広い面積にて、屋根12の表面がシート2で覆われうる。シート2が粘着層8を有するので、屋根12への粘着剤の塗布は不要である。この粘着層8は粘着性に優れるので、屋根12の表面の材質が複合的である場合でも、広い面積にて、屋根12の表面がシート2で覆われうる。例えば、表面が金属及び人造スレートの両方を含む屋根12であっても、広い面積にて、屋根12の表面がシート2で覆われうる。
【0065】
屋根12の表面の全体が、シート2で覆われてもよい。本明細書において屋根12の表面とは、鉛直方向の上から屋根12が見られたとき、視認されうる面を意味する。屋根12の表面の全体が単一種類のシート2で覆われる補修方法は、従来の工法には見られない。
【0066】
このシート2は、鋼板、銅板、トタン板等に比べ、軽量である。従って、広い面積にて屋根12の表面がシート2で覆われても、建築物の耐震性への悪影響は、小さい。耐震性の観点から、シート2の密度は4.0g/cm3以下が好ましく、3.0g/cm3以下がより好ましく、2.5g/cm3以下が特に好ましい。この密度は、屋根12の補修に賞用されているアルミニウム-亜鉛合金メッキ鋼板(商品名「ガルバリウム鋼板」)の密度に比べ、はるかに小さい。
【0067】
[他の用途]
このシート2は、屋根12以外の構造物の補修又は補強に寄与しうる。屋根12以外の構造物として、住宅の壁、柱、軒、塀、門、扉、パラペット、笠木等が挙げられる。このシート2が、商用ビルディング、工場、倉庫、橋梁、下水施設、鉄道施設、トンネル等に用いられてもよい。
【0068】
[再補修及び再補強]
このシート2により構造物(屋根12等)が補修又は補強された後、経年変化により、シート2や構造物が破損又は劣化することがある。この破損箇所又は劣化箇所のシート2に、新たに用意された構造物用シート2が貼られることで、再補修又は再補強がなされうる。旧シート2に新シート2が重ね貼りされることで、極めて長い期間にわたり、構造物の価値が保全され、かつ維持されうる。この重ね貼りは、新シート2の粘着層8の粘着力によって、達成されうる。この再補修及び再補強では、旧シート2が廃棄される必要がない。この再補修及び再補強では、廃棄物の発生が抑制されうる。このシート2は、サーキュラーエコノミーの趣旨に沿う。密度の小さなシート2が積層されても、構造物の耐震性への悪影響は、小さい。
【0069】
[第二実施形態]
[層構造]
図8に、他の実施形態に係る構造物用シート30が示されている。このシート30は、機能層32、中間層34、粘着層36及び補強体38を有している。機能層32、中間層34、粘着層36及び補強体38の材質、厚さ等の仕様は、
図1-3に示された構造物用シート2の機能層4、中間層6、粘着層8及び補強体10の仕様と、それぞれ同じである。このシート30では、下から順に、粘着層36、補強体38、中間層34及び機能層32が積層されている。この層構造においても、補強体38が、シート30の大きな引張強さ及び小さな伸びに寄与しうる。
【0070】
[シートの引張強さ及び伸び]
この構造物用シート30の引張強さは、5.0MPa以上が好ましい。引張強さが5.0MPa以上であるシート30は、張力がかかっても破れにくい。このシート30は、取り扱い性に優れる。この観点から、引張強さは5.6MPa以上がより好ましく、6.0MPa以上が特に好ましい。シート30の追従性の観点から、引張強さは10.0Mpa以下が好ましく、9.5MPa以下がより好ましく、9.0MPa以下が特に好ましい。
【0071】
この構造物用シート30の破断時の伸びは、15.0%以下が好ましい。伸びが15.0%以下であるシート30は、張力がかかっても変形しにくい。このシート30は、取り扱い性に優れる。この観点から、伸びは13.0%以下がより好ましく、11.0%以下が特に好ましい。シート30の追従性の観点から、伸びは5.0%以上が好ましく、7.0%以上がより好ましく、8.5%以上が特に好ましい。
【実施例0072】
以下、実施例に係る構造物用シートの効果が明らかにされる。この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0073】
[実施例1]
アクリルシリコーン樹脂と溶媒とを混合し、第一塗料を得た。この第一塗料を離型シートの上に塗工し、第一塗膜を得た。この第一塗膜を加熱し、機能層を得た。この機能層の厚さは、100μmであった。
【0074】
アクリルエマルション(前述の商品名「スプリングコートハケ混和液」)とセメント組成物(前述の商品名「スプリングコートハケ粉体」)とを混合し、第二塗料を得た。この第二塗料を機能層の上に塗工し、第二塗膜を得た。この第二塗膜に、補強体としての織布(三広織布社の商品名「寒冷紗#40」)を押し当てた。この第二塗膜を加熱し、補強体を含む中間層を得た。この中間層の厚さは、300μmであった。前述の方法で測定された、この補強体の、引張強さは5.20MPaであり、破断時の伸びは11.0%であった。
【0075】
100質量部のアクリル樹脂を含む粘着剤(前述の商品名「オリバインBPS6574」)と、6質量部のイソシアネート系硬化剤(トーヨーケム社の商品名「BHS8515」)とを混合し、ゲル分率が57%である第三塗料を得た。この第三塗料を離型フィルムの上に塗工し、第三塗膜を得た。この第三塗膜を加熱し、粘着層を得た。この粘着層の厚さは、100μmであった。
【0076】
この粘着層を、中間層と重ねた。さらに、機能層から離型シートを剥がし、粘着層から離型フィルムを剥がして、
図1-3に示された層構造を有する、実施例1の構造物用シートを得た。
【0077】
[実施例2]
補強体として、不織布(旭化成社の商品名「ELTAS E01012」)を用いた他は実施例1と同様にして、実施例2の構造物用シートを得た。この補強体の、引張強さは0.54MPaであり、破断時の伸びは31.0%であった。
【0078】
[実施例3]
補強体として、織布(三広織布社の商品名「寒冷紗#20」)を用いた他は実施例1と同様にして、実施例3の構造物用シートを得た。この補強体の、引張強さは6.15MPaであり、破断時の伸びは10.3%であった。
【0079】
[比較例1]
補強体を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1の構造物用シートを得た。
【0080】
[シートの物性]
前述の方法にて、構造物用シートの引張強さと破断時伸びを測定した。この結果が、下記の表1に示されている。なお、比較例1のシートは、引張試験の初期において大きく伸張したので、客観的な引張強さと伸びとの測定は、不可能であった。
【0081】
[取り扱い性]
構造物用シートを屋根に貼る作業を、作業者に行わせた。この作業者に、取り扱い性について聞き取った。下記の基準に従って、格付けを行った。
A:極めて良好
B:良好
C:不良
この結果が、下記の表1に示されている。
【0082】
【0083】
表1から明らかな通り、各実施例の構造物用シートは、取り扱い性に優れている。この評価結果から、この構造物用シートの優位性は明らかである。
【0084】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0085】
[項目1]
機能層、粘着層及び補強体を備えた構造物用シート。
【0086】
[項目2]
上記補強体がファブリックである項目1に記載の構造物用シート。
【0087】
[項目3]
上記ファブリックの材質が合成樹脂組成物であり、この合成樹脂組成物の基材樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ビニロン、ポリプロピレン、ポリスチレン又はポリフッ化ビニリデンである、項目2に記載の構造物用シート。
【0088】
[項目4]
上記ファブリックの、引張試験によって測定される引張強さが、5.0MPa以上である、項目2又は3に記載の構造物用シート。
【0089】
[項目5]
上記ファブリックの、引張試験によって測定される伸びが、15.0%以下である、項目2から4のいずれかに記載の構造物用シート。
【0090】
[項目6]
上記機能層と上記粘着層との間に位置する中間層をさらに備えており、
上記中間層の材質が、ポリマーとセメントとを含む複合材料である、項目1から5のいずれかに記載の構造物用シート。
【0091】
[項目7]
上記粘着層、上記補強体、上記中間層及び上記機能層がこの順に積層されている、項目6に記載の構造物用シート。
【0092】
[項目8]
上記補強体が上記中間層に埋設されている、項目6に記載の構造物用シート。
【0093】
[項目9]
引張試験によって測定される引張強さが、5.0MPa以上である、項目1から8のいずれかに記載の構造物用シート。
【0094】
[項目10]
引張試験によって測定される伸びが、15.0%以下である、項目1から9のいずれかに記載の構造物用シート。
【0095】
[項目11]
シートによる構造物の補修又は補強の方法であって、
(1)機能層、粘着層及び補強体を有するシートを、準備する工程、
並びに
(2)上記粘着層の粘着力により、上記構造物の表面に上記シートを貼り付ける工程
を備えた、構造物の補修又は補強の方法。
【0096】
[項目12]
旧シートによって補修又は補強された構造物の、再補修又は再補強の方法であって、
(1)機能層、粘着層及び補強体を有する新シートを、準備する工程、
並びに
(2)上記粘着層の粘着力により、破損又は劣化した上記旧シートの表面に上記新シートを貼り付ける工程
を備えた、構造物の再補修又は再補強の方法。