IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図1
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図2
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図3
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図4
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図5
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図6
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図7
  • 特開-気体分離装置および気体分離方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178968
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】気体分離装置および気体分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092159
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2022091335
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022134032
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新名 清輝
(72)【発明者】
【氏名】武内 紀浩
(72)【発明者】
【氏名】広沢 洋帆
(72)【発明者】
【氏名】水野 耀介
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA41
4D006HA43
4D006HA61
4D006JA05Z
4D006JA06Z
4D006JA13C
4D006JA19C
4D006JA25C
4D006JA52A
4D006JA55C
4D006JA58Z
4D006JB06
4D006KA02
4D006KA12
4D006KA16
4D006KA31
4D006KA33
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA67
4D006KA69
4D006KB14
4D006KB30
4D006KD30
4D006KE16R
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA07
4D006MA10
4D006MA12
4D006MA25
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC39
4D006MC40
4D006MC47
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC56X
4D006MC58X
4D006MC59
4D006MC61
4D006MC62X
4D006MC63
4D006MC65X
4D006MC68
4D006NA03
4D006NA04
4D006NA41
4D006NA64
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB18
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB65
4D006PB66
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】
目的成分を効率的に分離可能な気体の分離装置を提供すること。
【解決手段】
気体分離装置であって、
(1) 分離膜モジュールに、2種以上の気体を含む流体を供給する機構と、
(2) 分離膜モジュールにおいて、少なくとも1種の気体を分離する機構と、
(3) 液体からなる駆動流体と、分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、分離膜モジュールの透過側を減圧する機構と、
(4) 合流した駆動流体と透過側気体とを分離する機構と、
を有する気体分離装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体分離装置であって、
(1) 第一の分離膜モジュールに、2種以上の気体を含む流体を供給する機構と、
(2) 前記第一の分離膜モジュールにおいて、少なくとも1種の気体を分離する機構と、
(3) 液体からなる駆動流体と、前記第一の分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、前記第一の分離膜モジュールの透過側を減圧する機構と、
(4) 合流した駆動流体と透過側気体とを分離する機構と、
を有する気体分離装置。
【請求項2】
前記駆動流体が水である、請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項3】
前記駆動流体の温度が、-20℃以上、80℃以下である、請求項2に記載の気体分離装置。
【請求項4】
前記駆動流体がイオン性物質を含む、請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項5】
前記駆動流体がイオン液体を含む、請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項6】
前記駆動流体が、2種類以上の液体である、請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項7】
前記駆動流体を、循環再利用する機構を有する、請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項8】
合流した駆動流体と透過側気体から分離された透過側気体を、第二の分離膜モジュールに供給し、除湿する機構を有する請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項9】
前記第二の分離膜モジュールの加湿側に、第一の分離膜モジュールの濃縮側気体を供給する、請求項8に記載の気体分離装置。
【請求項10】
前記第二の分離膜モジュールの加湿側から排出する気体を、タンクに循環し、第一の分離膜モジュールに供給する混合気体と合流する、請求項8に記載の気体分離装置。
【請求項11】
気体分離方法であって、
(1) 第一の分離膜モジュールに、2種以上の気体を含む流体を供給する工程と、
(2) 第一分離膜モジュールにおいて、少なくとも1種の気体を分離する工程と、
(3) 液体からなる駆動流体と、第一の分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、第一の分離膜モジュールの透過側を減圧する工程と、
(4) 合流した駆動流体と透過側気体とを分離する工程と、
を有する気体分離方法。
【請求項12】
前記駆動流体が水である、請求項11に記載の気体分離方法。
【請求項13】
前記駆動流体の温度が、-20℃以上、80℃以下である、請求項12に記載の気体分離方法。
【請求項14】
前記駆動流体がイオン性物質を含む、請求項11に記載の気体分離方法。
【請求項15】
前記駆動流体がイオン液体を含む、請求項11に記載の気体分離方法。
【請求項16】
前記駆動流体が、2種類以上の液体である、請求項11に記載の気体分離方法。
【請求項17】
前記駆動流体を、循環再利用する機構を有する、請求項11に記載の気体分離方法。
【請求項18】
合流した駆動流体と透過側気体から分離された透過側気体を、第二の分離膜モジュールに供給し、除湿する工程を有する請求項11に記載の気体分離方法。
【請求項19】
前記第二の分離膜モジュールの加湿側に、第一の分離膜モジュールの濃縮側気体を供給する、請求項18に記載の気体分離方法。
【請求項20】
前記第二の分離膜モジュールの加湿側から排出する気体を、タンクに循環し、第一の分離膜モジュールに供給する混合気体と合流する、請求項18に記載の気体分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種以上の気体を含む混合気体から、少なくとも一種の成分を効率的に分離する、気体の分離装置および気体分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年クリーンなエネルギー源として、水素が注目されている。水素は、天然ガス及び石炭等の化石燃料を改質・ガス化し、主成分として水素と二酸化炭素などを含む混合ガスから不要ガスを除去することによって得られている。また、近年では、光エネルギーや電気エネルギーを利用した水の分解によって、水素を得る技術が注目されている。特に水の分解によって水素を得る場合、水素と酸素が同時に発生し、さらには水蒸気も発生するため、水素と酸素および水蒸気の混合気体となる。水素が目的成分である場合、水蒸気の存在下で、水素と酸素を分離する必要がある。
【0003】
この様に混合気体から特定の気体を効率的に分離する技術開発が望まれている。効率的に混合気体から特定の気体を分離させる方法として、素材の持つ気体透過性の違いを利用して目的成分を選択的に透過させる膜分離法が注目されている。
【0004】
ここで膜分離法では、膜の透過側を減圧にする方法が採用されている。この減圧にする手段として真空ポンプがあげられる。
【0005】
しかし、真空ポンプの吐出側で圧が上昇するため、透過気体中に凝縮性成分が多いと、真空ポンプの吐出側で凝縮する成分があり、真空ポンプへの混入、さらには故障懸念があり、その凝縮物の蒸気圧の影響で、減圧度が低下する可能性もある。
【0006】
また、真空ポンプにオイルを使用する場合、オイルの酸化や漏れの懸念があげられる。
【0007】
他に、真空ポンプに関連する設備費や電力が、高い課題もある。可燃性ガスを、分離膜で透過する場合、安全性確保のため、爆発防止の対応が必要となる。
【0008】
特許文献1には、水蒸気や水素を、エゼクターの駆動流体に用い、分離膜の透過側を減圧し、混合気体から水素を分離し、駆動流体に水蒸気を用いる場合は、水蒸気を液体の水に凝縮させて、水素ガスを得る技術、また、駆動流体に水素を用いる場合は、分離膜の透過気体が水素なので、駆動流体と透過ガスの一部を回収する技術が開示されている。
【0009】
特許文献2には、凝縮性成分を対象に、アルコール水溶液の濃縮のため、分離膜の透過側を、エゼクターで減圧し、エゼクターの噴射源に、アルコール凝縮液を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015-186769
【特許文献2】特開昭63-248418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、分離膜で透過側を減圧にするための駆動流体について、特許文献1の技術では、駆動流体が水蒸気の場合は水に凝縮するため、駆動流体の再利用が困難である。そのため、水蒸気を確保できる用途に限定される。さらに水蒸気を使用するため、その蒸気圧分は透過気体の純度が低下する課題がある。
【0012】
駆動流体が水素の場合は、エゼクターで高速で通気する必要があるが、そのための動力が必要であり、安全性確保のため、爆発防止の対応が必要等の課題がある。
【0013】
特許文献2の技術では、分離膜を透過させる気体について、凝縮性の気体でない場合は、適用が困難な課題がある。アルコールの使用に際して、安全性確保のため、爆発防止の対応が必要等の課題がある。
【0014】
そこで本発明は、これらの課題を低減しつつ目的成分を効率的に分離可能な気体の分離装置および分離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 気体分離装置であって、
(1) 第一の分離膜モジュールに、2種以上の気体を含む流体を供給する機構と、
(2) 前記第一の分離膜モジュールにおいて、少なくとも1種の気体を分離する機構と、
(3) 液体からなる駆動流体と、前記第一の分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、前記第一の分離膜モジュールの透過側を減圧する機構と、
(4) 合流した駆動流体と透過側気体とを分離する機構と、
を有する気体分離装置。
(2) 前記駆動流体が水である、上記(1)に記載の気体分離装置。
(3) 前記駆動流体の温度が、-20℃以上、80℃以下である、上記(2)に記載の気体分離装置。
(4) 前記駆動流体がイオン性物質を含む、上記(1)に記載の気体分離装置。
(5) 前記駆動流体がイオン液体を含む、上記(1)に記載の気体分離装置。
(6) 前記駆動流体が、2種類以上の液体である、上記(1)に記載の気体分離装置。
(7) 前記駆動流体を、循環再利用する機構を有する、上記(1)に記載の気体分離装置。
(8) 合流した駆動流体と透過側気体から分離された透過側気体を、第二の分離膜モジュールに供給し、除湿する機構を有する上記(1)に記載の気体分離装置。
(9) 前記第二の分離膜モジュールの加湿側に、第一の分離膜モジュールの濃縮側気体を供給する、上記(8)に記載の気体分離装置。
(10) 前記第二の分離膜モジュールの加湿側から排出する気体を、タンクに循環し、第一の分離膜モジュールに供給する混合気体と合流する、上記(8)に記載の気体分離装置。
(11) 気体分離方法であって、
(1) 第一の分離膜モジュールに、2種以上の気体を含む流体を供給する工程と、
(2) 第一分離膜モジュールにおいて、少なくとも1種の気体を分離する工程と、
(3) 液体からなる駆動流体と、第一の分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、第一の分離膜モジュールの透過側を減圧する工程と、
(4) 合流した駆動流体と透過側気体とを分離する工程と、
を有する気体分離方法。
(12) 前記駆動流体が水である、上記(11)に記載の気体分離方法。
(13) 前記駆動流体の温度が、-20℃以上、80℃以下である、上記(12)に記載の気体分離方法。
(14) 前記駆動流体がイオン性物質を含む、上記(11)に記載の気体分離方法。
(15) 前記駆動流体がイオン液体を含む、上記(11)に記載の気体分離方法。
(16) 前記駆動流体が、2種類以上の液体である、上記(11)に記載の気体分離方法。
(17) 前記駆動流体を、循環再利用する機構を有する、上記(11)に記載の気体分離方法。
(18) 合流した駆動流体と透過側気体から分離された透過側気体を、第二の分離膜モジュールに供給し、除湿する工程を有する上記(11)に記載の気体分離方法。
(19) 前記第二の分離膜モジュールの加湿側に、第一の分離膜モジュールの濃縮側気体を供給する、上記(18)に記載の気体分離方法。
(20) 前記第二の分離膜モジュールの加湿側から排出する気体を、タンクに循環し、第一の分離膜モジュールに供給する混合気体と合流する、上記(18)に記載の気体分離方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、2種以上の気体を含む混合気体から、少なくとも1種の気体を、効率的に分離可能な気体の分離装置および分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明の気体分離装置の別の例を示す模式図である。
図3】本発明の気体分離装置の別の例を示す模式図である。
図4】本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
図5】本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
図6】本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
図7】本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
図8】本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、気体分離装置であって、
(1) 第一の分離膜モジュールに、2種以上の気体を含む流体を供給する機構と、
(2) 第一の分離膜モジュールにおいて、少なくとも1種の気体を分離する機構と、
(3) 駆動流体と、分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、分離膜モジュールの透過側を減圧する機構と、
(4) 駆動流体と透過側気体が合流した後、駆動流体と透過側気体を分離する機構と、
を有する気体分離装置である。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
本発明の気体分離装置は、供給機構、第一の分離膜モジュールによる膜分離機構、減圧機構及び駆動流体・透過気体分離機構を含む。
<第一の分離膜モジュールへの混合気体の供給機構>
本発明では、2種以上の気体を含む流体(以下「混合気体」ということがある)を第一の分離膜モジュールに供給する供給機構を有する。この供給機構では、配管等を、第一の分離膜モジュールの供給気体側の流路に接続し、混合気体を通気する。
【0021】
ここで、配管等の材質は、混合気体の性質に合わせて決めることができ、例えば、ステンレスや銅などの金属系、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂などの有機物系の材料を用いることができる。
【0022】
また、混合気体の通気状態を把握するための、流量計、圧力計、温度計、湿度計などの計器を設けることもできる。
【0023】
さらに、混合気体を通気する流量を制御するためのバルブなどの装置を設けることもできる。また、混合気体を通気する圧力を制御するための、コンプレッサーなどの圧力制御装置を設けることもできる。
【0024】
混合気体を貯蔵するための、タンクやボンベなどの貯蔵設備を設けることもできる。これらの貯蔵設備は、温度や圧力を制御することができる。
【0025】
貯蔵設備の圧力を高圧にすることで、少なくとも一部の混合気体を液体として貯蔵することもできる。この場合、第一の分離膜モジュールに供給する際には圧力を低下させて、液体から気体にする機構を有することができる。
【0026】
貯蔵設備で圧力を高めて、水蒸気のみを液化する場合は、液化した水を分離して除去することもできる。
【0027】
また、特に、タンクなどの貯蔵設備に、回収した気体を循環する場合、タンクなどに貯蔵している気体と、できるだけ均一に混合して、第一の分離膜モジュールに気体を供給するため、タンクなどの貯蔵設備内で、気体を混合するための攪拌翼などを保有することもできる。
【0028】
混合気体において、2種以上の気体は特に限定されず、ヘリウム、水素、アンモニア、窒素、酸素、アルゴン、メタン、二酸化炭素、水蒸気といった気体が挙げられる。
【0029】
なお、本明細書における「混合気体は、2種以上の気体を含む」とは、質量分析計を用いた分析によって、混合気体がそれぞれの気体を、0.001 mol%以上含むことを意味する。
【0030】
供給工程における混合気体の温度、圧力、流量などについて、特に制限はなく、供給工程や次工程の分離膜モジュールの仕様に適合する、いずれの条件も適用することができる。
【0031】
また、供給機構において、次の膜分離機構に混合気体を供給する前に、フィルター、吸湿、加湿などの前処理を行ってもよい。
<膜分離機構>
本発明では、分離膜モジュールにて少なくとも1種の気体を分離する膜分離機構を有する。
(分圧差)
膜分離機構において、気体分離膜を気体が透過する際の分離駆動力は、主に、気体分離膜の非透過側と透過側の分圧差である。
【0032】
本発明では、この分圧差を、分離膜の透過側を減圧することで生み出すことができる。減圧の程度は、目的の分離効率を得るために、分離膜の仕様等に合わせて設定することができる。
【0033】
一般的に、減圧度が大きいほど非透過側と透過側の分圧差は大きくなり、分離効率は向上する。真空ポンプを使用する場合、真空に近い減圧度が得られる一方で、ポンプの負荷やエネルギー消費が大きくなり、設備費や電力費が高い等の課題がある。真空ポンプの負荷やエネルギー消費を低減するため、20~50kPa程度で運転する場合もありうる。
【0034】
減圧の場合は、絶対真空以上の分圧差を得ることはできないが、所望の分圧差を得るために、非透過側を加圧することもできる。
【0035】
本発明では、駆動流体は液体である。例えば、駆動流体が液体の水である場合、運転する温度における水の蒸気圧により、分圧差が制限される。
例えば、水温25℃で約3kPa、水温20℃で約2kPaの水蒸気圧が発生する。ただ、90kPa程度の減圧をすれば、絶対真空とほぼ同レベルの分圧差を得られる。
【0036】
また、分離膜の透過側の減圧と、混合気体の供給側の加圧の両方を行うことでもよい。加圧の程度は、目的の分離効率を得るために、分離膜の仕様等に合わせて設定することができ、いずれの方法を適用することができる。
【0037】
加圧の方法は、コンプレッサーなど、一般に用いられるいずれの方法も適用することができる。
【0038】
以上のいずれかの手段で、目的の分離効率を得るために必要な分圧差を生み出すことができる。
(分離膜)
本発明においては、第一の分離膜モジュールとともに、第二の分離膜モジュールを用いることもできる。第一および第二の分離膜は、気体の種類や使用条件に応じて適宜選択できる。
【0039】
第一の分離膜モジュールの分離膜は、気体の種類に応じて適宜選択できる。分離膜としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などのゴム状ポリマー材料、芳香族ポリイミド、酢酸セルロース、ポリスルホン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子膜や、ゼオライトやシリカ、パラジウムなどの金属系を含む無機膜が挙げられる。
【0040】
また分離膜は、均質膜、均質層と多孔層とからなる非対称膜、微多孔質膜など、いずれであってもよい。
【0041】
水素やヘリウムなどの比較的サイズの小さい気体を透過させる場合、ポリアミド膜やポリイミド膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、グラフェン膜などを用いることができる。
【0042】
また、分離膜上に被覆層を有していてもよい。分離膜には、粗大孔や欠点等の気体透過度が著しく大きい領域がわずかながら存在する。このような領域においては分子ふるいによる分離の寄与が小さく、水素、ヘリウム、水蒸気、アンモニア等の分子径の小さなガスに対する選択分離性が低い。粗大孔や欠点等の選択分離性が低い領域の寄与を少なくすることが、膜全体の選択分離性の向上に好ましく、分離膜上に被覆層を形成することで、粗大孔・欠点からの気体透過を抑制することができる。酸素、窒素、メタン等の透過を大きく抑制するが、水素およびヘリウム等の軽ガスの透過への影響は小さいため、選択分離性を大きく向上させることができる。
【0043】
被覆層は、分離膜の必ずしも表面全体を覆う必要はなく、被覆層を形成する際のコーティングのムラなどにより部分的に被覆層が欠損している場合や、粗大孔・欠点が特に多い表面のみに被覆層を形成する場合もありうる。
【0044】
第二の分離膜は、駆動流体の蒸気を透過させるが、他の成分の気体は透過しにくい分離膜である。例えば駆動流体が水系のものであれば水蒸気を透過させるが、他の成分の気体は透過しにくい分離膜である。駆動流体が親水性液体や有機溶媒である場合にも膜を選定することにより、同様の効果を得ることができる。駆動流体が水系の場合は、火災の要因となる危険物に分類される有機溶媒などよりも取り扱いが容易であるため好ましい。また蒸気圧が高い液体を使用する場合、気体分離装置の系外に液体が流出し、補充などが必要になる可能性が高くなるが、水系の場合はその可能性は低減される。
この様な性質を有する膜としては、一例として、ポリイミド樹脂、フッ素系イオン交換膜、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂などを素材とした膜が知られており、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。
【0045】
分離機構としては、例えば、膜が、水蒸気を含むガスと接触すると、毛管凝縮により、細孔内部で水蒸気が水へと凝縮し、膜内表面側で再び水蒸気となる。膜内表面側に、水蒸気を含まないドライガスを供給することで、膜を透過した水蒸気を回収することができる。
この様な機構を発現するためには、膜素材と液体について、親和性があることが好ましいが、例えば、接触角を目安に、使用する液体に適した膜素材を選定することができる。接触角が、80°以下なら好ましく、さらに好ましくは、60°以下である。
(第一の分離膜モジュール)
第一の分離膜モジュールにおいては、供給機構で供給される混合気体が、第一の分離膜モジュールの入口から通気され、第一の分離膜モジュールの出口に向かって連続的に通気され、分離膜によりろ過が行われる。この際、分離膜の透過側に透過する成分があるため、分離膜を透過しない、または透過しにくい成分は、第一の分離膜モジュールの供給側入口から出口に通気していく中で、濃縮していくこととなる。そして、分離膜を透過する成分の分圧が低下するため、第一の分離膜モジュールの濃縮出口に近づくほど気体が透過しがたくなる。
【0046】
そのため、透過抵抗となる膜面での濃度分極を供給気体の高流速化により解消させることが好ましい。その手段としては供給側流路材を薄型化する方法や、平膜の場合では第一の分離膜モジュールの端面から供給気体を送り込み外周部から排出する方法などが挙げられる。
【0047】
第一の分離膜モジュール内は、供給気体の進行方向に対し、透過気体の進行方向が向流方向となる構造を有していてもよく、供給気体と透過気体の流れ方向が90°異なる十字流構造や供給気体と透過気体の流れ方向が一致する構造を有していてもよい。またこれらの組み合わせでもよく、いずれの流路構造も適用することができる。
【0048】
分離膜はモジュール化して、容器に収納して使用する。分離膜モジュールの形態は、平膜型、プレートアンドフレーム型、スパイラル型、中空糸型などいずれであってもよい。
(第二の分離膜モジュール)
第二の分離膜モジュールを用いた場合、混合気体の組成や分離条件、分離膜の性能次第ではあるが、第二の分離膜モジュールに供給される気体は、主に第一の分離膜モジュールの透過側気体と、その他の成分になる。その他の成分は、駆動流体に水を使用する場合、水蒸気が含まれる。
【0049】
本発明では、第二の分離膜モジュールを用いることで、第一の分離膜モジュールの透過側気体の蒸気を低減することができる。例えば、透過側気体が水素で、燃焼用に使用する場合、水蒸気を含むと、その分、単位体積あたりの熱量が少なくなる。
【0050】
ガス中の水蒸気を低減する手段としては、混合気体供給ラインを冷やす方法やモレキュラーシーブやシリカゲル等に吸着させる方法があげられる。一方で、電力費が高いことや、設備費用が高い等の問題点がある。
【0051】
これに対し、第二の分離膜モジュールを用いた場合、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構8から、第二の分離膜モジュールに対し、回収気体を供給し、第二の分離膜モジュールで水分を除去、除湿することができる。
【0052】
ここで、第二の分離膜モジュールでは、第二の分離膜モジュールへの回収気体を供給する分離膜の逆側の流路に、別の気体を供給する。この操作により、回収気体中の水分が、第二の分離膜を透過し、逆側の別の気体の供給側に透過する。逆側の別の気体は、加湿されて、第二の分離膜モジュールから排出されることとなる。
【0053】
第二の分離膜モジュールへの回収気体は、第二の分離膜モジュールの入口から通気され、第二の分離膜モジュールの出口に向かって連続的に通気されることで、分離膜により回収気体のろ過が行われる。この際、分離膜の透過側に透過する成分があるため、分離膜を透過しない、または透過しにくい成分は、第二の分離膜モジュールの供給側入口から出口に通気していく中で、濃縮していくこととなる。そして、分離膜を透過する成分の分圧が低下するため、第二の分離膜モジュールの濃縮出口に近づくほど気体が透過しがたくなる。
【0054】
そのため、透過抵抗となる膜面での濃度分極を供給気体の高流速化により解消させることが好ましい。その手段としては供給側流路材を薄型化する方法や、平膜の場合では第二の分離膜モジュールの端面から供給気体を送り込み外周部から排出する方法などが挙げられる。
【0055】
第二の分離膜モジュール内は、供給気体の進行方向に対し、透過気体の進行方向が向流方向となる構造を有していてもよく、供給気体と透過気体の流れ方向が90°異なる十字流構造や供給気体と透過気体の流れ方向が一致する構造を有していてもよい。またこれらの組み合わせでもよく、いずれの流路構造も適用することができる。
【0056】
分離膜はモジュール化して、容器に収納して使用する。第二の分離膜モジュールの形態は、平膜型、プレートアンドフレーム型、スパイラル型、中空糸型などいずれであってもよい。
(第一および第二の分離膜モジュールの配置)
膜分離工程の第一および第二の分離膜モジュールは、各々、1本で使用してもよく、複数を使用してもよい。各々について、複数の分離膜モジュールを使用する場合は、分離膜モジュールを並列または直列に配置してもよく、また、供給側1段目の分離膜モジュール数から、供給側2段目の分離膜モジュール数を減らした、ツリー状に配置してもよい。さらに、これらの分離膜モジュールに、例えば、第一の分離膜モジュールの一部または全ての透過気体を、第一の分離膜モジュールの供給気体に合流させる循環流を設けてもよい。
<減圧機構>
本発明は、第一の分離膜モジュールの透過側を減圧する減圧機構を有する。本発明では、駆動流体と、第一の分離膜モジュールの透過側気体を合流させて、駆動流体により、第一の分離膜モジュールの透過側を減圧する。いわゆるアスピレータやエゼクターの機構によるもので、駆動流体の流量・流速により減圧度を調整することができる。また、駆動流体と透過側気体の合流部の構造、例えば、合流部の断面積の大きさにより、減圧度を制御することができる。
【0057】
本発明は、例えば、上記のアスピレータと、第一の分離膜モジュールの透過側を、配管等で接続することにより、アスピレータで減圧した圧力状態を、第一の分離膜モジュールの透過側と連動することができる。
【0058】
また、アスピレータと第一の分離膜モジュールを接続する配管等を、加温または冷却することで、透過側気体の温度を変化させて、圧力を変更することもできる。
アスピレータは、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができ、金属製や樹脂製のものが知られている。使用する気体の耐久性や温度に応じて選択することができる。
【0059】
減圧度は、透過側気体のほとんどが、凝縮しない範囲で設定することが好ましい。また減圧度が大きいと、第一の気体分離膜で気体が透過する際の分離駆動力が大きくなるため好ましい。
【0060】
一方で、透過側気体を利用する場合、駆動流体の蒸気圧が高いと、透過側気体の純度が低下するため、蒸気圧は低めにすることが好ましい。
【0061】
前述の通り、混合気体の供給側を加圧することもできること含め、以上を考慮して、減圧度を調整してもよい。
<駆動流体・第一の分離膜モジュールの透過気体分離機構>
本発明は、減圧機構の後、駆動流体と第一の分離膜モジュールの透過気体を分離する、駆動流体・透過気体分離機構を有する。
【0062】
なお、本発明では、第一の分離膜モジュールの透過気体は気体として回収してもよい。または、活用する気体を供給側に、活用しない気体を分離膜に透過させて、供給側の気体を回収してもよい。
(駆動流体)
本発明では、駆動流体は、液体である。
【0063】
駆動流体である液体の種類は特に限定されず、水、アルコールやシリコーン、イオン液体、鉱油、ガソリンなどの有機系液体、水銀やナトリウムなどの金属系液体などの液体、他にも液体窒素など、エマルジョン、懸濁物、コロイドなど、またこれらの混合液体があげられる。
【0064】
好ましく使用される液体は、常圧でも液体であり、蒸気圧が低いもので、水、シリコーン、イオン液体などがあげられる。蒸気圧が高い液体では、第一の分離膜モジュールの透過側気体と混合するため、純度が低下するため、蒸気圧は低いことが好ましい。
(駆動流体の温度、組成)
駆動流体の温度は、分離対象の第一の分離膜モジュールの透過側気体および駆動流体などの仕様に合わせて調製することができる。
【0065】
分離対象の第一の分離膜モジュールの透過側気体を、駆動流体に溶解させ難くするため、駆動流体の温度を設定することができる。多くの気体は、液体の温度が高い方が溶解しにくいので、駆動流体の温度を高く設定してもよい。逆に駆動流体の温度を低く設定し、第一の分離膜モジュールの透過側気体の目的とする気体以外の、駆動流体との親和性を有する気体を駆動流体に溶解させて、目的とする透過側気体の純度を高めることもできる。また、駆動流体の蒸気圧を低くするため、駆動流体の温度を低く設定することができる。
【0066】
例えば、駆動流体が水で、分離膜モジュールの透過側気体に、水素と二酸化炭素を含み、水素を活用するプロセスの場合、水の温度を低めに設定し、より純度を高くするため、二酸化炭素を水に溶解することができる。この場合、二酸化炭素が溶解した水を別に回収して、バブリングなどで二酸化炭素を気化して回収することもできる。
【0067】
駆動流体は、イオン性物質を含む液体でも良い。イオン性物質は、例えば、ナトリウムイオンと水酸化物イオンで構成される水酸化ナトリウム、アンモニウムイオンと塩素イオンで構成される塩化アンモニウム、同様に酸化カルシウム、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、酢酸ナトリウムなど、金属元素と非金属イオンの組み合わせ、または非金属イオンのみで生じる物質があげられる。水に溶解して一部がイオン化する、酢酸、二酸化炭素(炭酸イオン)などもあげられる。
【0068】
また、いわゆるイオン液体を含む液体でもよい。イオン液体は、典型的には、アンモニウム、イミダゾリウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、グアニジニウム、ジエタノールアンモニウム、アルキルアンモニウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピペリジニウム、アルキルピリジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルスルホニウム、アルキルグアニジニウム、及びアルキルジエタノールアンモニウムの1つ又は複数のカチオン;及びニトラート、スルホナート、メタンスルホナート、アルキルスルホナート、フルオロアルキルスルホナート、スルファート、メチルスルファート、アルキルスルファート、フルオロアルキルスルファート、ホスファート、メチルホスファート、アルキルホスファート、フルオロアルキルホスファート、ホスフィナート、メチルホスフィナート、アルキルホスフィナート、フルオロアルキルホスフィナート、ハロゲン、トリフルオロメタンスルホナート、ジヒドロゲンホスファート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、アルキルイミド、アルキルアミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ホルマート、アセタート、トリフルオロアセタート、ジシアナミド、デカノアート、アルキルメチド、及びアルキルボラートの1つ又は複数のアニオンを含む。イオン液体は、例えば、エチルアンモニウムニトラート(又は硝酸エチルアンモニウム)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ブチルピリジニウムブロミド、及び2-ヒドロキシエチル-ジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、等が挙げられる。
【0069】
水の場合、塩類を含むと、凝固点が低下するため、液体のまま0℃以下を保持することができる。そのため、蒸気圧をさらに小さくすることができ、分離膜モジュールの透過側気体の純度低下を抑制することができる。
【0070】
ただし水が塩化ナトリウムの様な塩類を多量に含むと、送液する配管が金属系の場合、錆などが発生する懸念が高くなるため、気体分離装置に使用する材質に合わせて、濃度を調整することが好ましい。
【0071】
駆動流体が水の場合、温度は、-20℃以上、100℃以下が好ましい。常圧では沸騰する温度でも加圧することで、沸点を高くして、運転することができる。さらに好ましくは、-20℃以上、80℃以下にすることで、水の沸騰を抑制することができる。特に好ましくは5℃以上、50℃以下にすることで、蒸気圧を抑制することができる。
【0072】
駆動流体がイオン性物質を含む液体の場合、温度は、25℃以上、100℃以下が好ましい。高温では液体に溶解するイオン性物質の溶解度が大きくなるため、駆動流体との親和性を有する気体の吸収量を大きくすることができる。さらに好ましくは、50℃以上、100℃以下である。
【0073】
駆動流体がイオン液体の場合、温度は、-20℃以上、50℃以下が好ましく、0℃以上30℃以下がさらに好ましい。イオン液体は揮発性が低く、幅広い温度で液体状態をとることができる。また、イオン液体は駆動流体との親和性を有する気体の吸収量の温度依存性が大きく、例えば、イミダゾリウムや水酸基を持つイオン液体では、25℃近傍で吸収した駆動流体との親和性を有する気体の2/3以上を100℃以下で回収することができる。
【0074】
また、駆動流体は、2種類以上の液体でも良い。水の場合、水温25℃で約3kPa、水温20℃で約2kPaの水蒸気圧が発生するが、駆動流体・透過気体分離機構で、駆動流体の水を貯槽に貯留する場合、水層の上部に、低蒸気圧で水よりも低比重の液体、例えばシリコーンを使用すると、水の蒸発を抑制することができる。
【0075】
駆動流体・透過気体分離機構は、例えば、駆動流体の貯槽を兼ねても良い。減圧機構の後、駆動流体と第一の分離膜モジュールの透過気体が、駆動流体の貯槽に入り、駆動流体は貯槽に溜まり、第一の分離膜モジュールの透過気体は、透過気体は貯槽の上部に滞留し、気体として取り出すことができる。
【0076】
または、駆動流体・透過気体分離機構は、例えば、サイクロンでも良い。遠心力で駆動流体と第一の分離膜モジュールの透過気体を分けることができる。この様に、気液分離の装置を、駆動流体・透過気体分離機構に使用することができる。
(駆動流体の使用方法)
駆動流体は、循環再利用してもよい。一部の駆動流体を新たに追加し、その他の駆動流体を循環再利用することで、駆動流体に関する運転コストを低減することができる。
【0077】
循環再利用に際して、駆動流体について、フィルター、pH調製、温度調製などの処理を行ってもよい。またバブリングして溶解させた気体成分を回収してもよい。
【0078】
循環再利用に際しては、駆動流体の貯槽と送水用ポンプを設け、送水用ポンプから、減圧機構に送水することができる。
【0079】
なお、循環再利用する際、透過気体の一部が駆動流体に溶解するが、駆動流体が水の場合、水素などは溶解量が少ないために大きな問題とならず、循環再利用する中で、飽和濃度に近づくので、ロスも少なくなる。
【0080】
ここで、送水用ポンプを使用するが、駆動流体が水の場合、防爆対応を簡略化できるため、真空ポンプ使用に比べて、設備管理、運転コストなどを低減することができる。
【実施例0081】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
A.装置機構
(装置機構H)
図1は、本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
【0082】
混合気体供給ライン1により、第一の分離膜モジュール2に2種以上の気体を含む流体が供給される。第一の分離膜モジュール2では、一部の気体は、分離膜モジュールの分離膜を透過し、透過気体の通気ライン3に通気され、その他の気体は、第一の分離膜モジュールの濃縮気体の通気ライン4に通気される。
第一の分離膜モジュール2の透過側は、第一の分離膜モジュールの透過側気体と、駆動流体供給ライン5より供給される駆動流体との合流部6より減圧され、気体の透過の駆動力となる。第一の分離膜モジュール2における気体透過速度は、駆動流体の供給量で調整することができる。
【0083】
駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の合流部から、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体が合流したまま、通気ライン7を通り、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構8に送られる。ここで、駆動流体と分離膜モジュール透過気体は分離し、駆動流体は、分離機構内で貯留される。また、透過気体は分離機構の上部から、回収ライン10を通り、回収される。
(装置機構I)
図2は、本発明の気体分離装置の別の例を示す模式図である。
【0084】
図1に加えて、駆動流体と分離膜モジュール透過気体の分離機構8の底部より、貯留している駆動流体を抜き出すことができる。その後、駆動流体送水ポンプ11で、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の合流部6に、駆動流体供給ライン5を通して、駆動流体を送液し、駆動流体を再利用循環することができる。
(装置機構J)
図3は、本発明の気体分離装置の別の例を示す模式図である。
【0085】
図2に加えて、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構8に貯留する、駆動流体9の上部に、別の駆動流体12を貯留する。ここで、駆動流体9は水であり、駆動流体12はシリコーンである。
【0086】
シリコーンとして、シリコーンオイルKF-96-100CS(信越化学工業製)を用いた。比重(相対密度)0.97(25℃)で水層の上にシリコーン層を設けた。駆動流体9の水は、上部に駆動流体12があるため、蒸発しにくくなり、透過気体に水が含まれにくくなる。
【0087】
駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の通気ライン7より、駆動流体と分離膜モジュール透過気体の分離機構8へ、駆動流体と透過気体が合流したまま供給されるが、分離機構8に入る際、分離機構8に予め入れておいた駆動流体12の液面より下まで、送水配管を配置することにより、駆動流体12の下部で、駆動流体9と透過気体を分離することができた。
また、駆動流体送水ポンプ11への送水ラインを、分離機構8の下部に配置することで、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の合流部6に送水する駆動流体を、駆動流体9の水にすることができ、分離機構8での駆動流体9と駆動流体12の比重などによる分離をより容易にすることができた。
(装置機構K)
図4は、本発明の気体分離装置の一例を示す模式図である。
【0088】
図1に加えて、第一の分離膜モジュールの透過気体は分離機構の上部から、第二の分離膜モジュールへの回収気体供給ライン10を通り、第二の分離膜モジュール13に供給される。その後、第二分離膜モジュールの除湿側気体排出ライン14から排出される。
【0089】
第二の分離膜モジュール13では、第二の分離膜モジュール13への回収気体を供給する分離膜の逆側の流路である、第二の分離膜モジュール 加湿側気体供給ライン15に、別の気体として、窒素を供給する。
この操作において、回収気体中の水分が、第二の分離膜を透過し、逆側の気体、ここでは窒素側へ透過する。ここで逆側の別の気体、窒素は、加湿されて、第二の分離膜モジュール13から、第二の分離膜モジュール 加湿側気体排出ライン16を通って、排出される。
ここで、第二の分離膜モジュール 加湿側気体供給ライン15で供給される気体は、図7の様に、第一の分離膜モジュール2の濃縮側ライン4から供給してもよい。この様にすることで、新たな気体を準備することなく、対応することができる。
また、第二の分離膜モジュール 加湿側気体排出ライン16を通って排出される気体を、図8の様に、混合気体タンク17に送り、この混合気体タンク17から混合気体供給ライン1を通って、第一の分離膜モジュール2に供給してもよい。この様にすることで、第一の分離膜モジュール2で濃縮側に残った気体と、第二の分離膜モジュール13で、水蒸気と共に透過した気体を、回収・循環することができる。
(装置機構L)
図5は、本発明の気体分離装置の別の例を示す模式図である。
【0090】
図2に加えて、装置機構Kの特徴を有する装置機構にすることにより、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構8の底部より、貯留している駆動流体を抜き出すことができた。その後、駆動流体送水ポンプ11で、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の合流部6に、駆動流体供給ライン5を通して、駆動流体を送水し、駆動流体を再利用循環することができた。
(装置機構M)
図6は、本発明の気体分離装置の別の例を示す模式図である。
図3に加えて、装置機構Kの特徴を有する装置機構にすることにより、駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の合流部6に送水する駆動流体を、駆動流体9の水にすることができ、分離機構8での駆動流体9と駆動流体12の比重などによる分離をより容易にすることができた。
B.気体分離膜の作製
以下、特に言及しない場合は、温度条件は室温(25℃)である。
(第一の気体分離膜P)
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm/秒)上に、ポリスルホンの18質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)、塗布厚み190μmでキャストした後、直ちに純水中に5分間浸漬することによって、基材である不織布上に多孔性支持層を形成した。
【0091】
次に、2-エチルピペラジンが5.5質量%、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが500ppm(質量基準)、リン酸3ナトリウムが2.0質量%になるように溶解した水溶液に、多孔性支持層を形成した基材を10秒間浸漬した後、エアーノズルから窒素を吹き付けて、余分な水溶液を除去した。続いて70℃に加温した0.2質量%のトリメシン酸クロリドを含むn-デカン溶液を、多孔性支持体の表面に均一に塗布し、60℃の膜面温度で3秒間保持した後に、膜面温度を10℃まで冷却し、この温度を維持したまま空気雰囲気下で1分間放置し、分離機能層(ポリアミド膜)を形成した。得られた分離膜を垂直に保持して液切りし、60℃の純水で2分間洗浄して気体分離膜Pを得た。
(第一の気体分離膜Q)
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm/秒)上に、ポリスルホンの18質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)、塗布厚み190μmでキャストした後、直ちに純水中に5分間浸漬することによって、基材である不織布上に多孔性支持層を形成した。
【0092】
次に、m-フェニレンジアミンが4.0質量%の水溶液に、多孔性支持層を形成した基材を1分間浸漬した後、エアーノズルから窒素を吹き付けて、余分な水溶液を除去した。続いて45℃に加温した0.2質量%のトリメシン酸クロリドを含むn-ウンデカン溶液を、多孔性支持体の表面に均一に塗布し、100℃のオーブンで60秒間乾燥した。その後、空気雰囲気下で1分間放置し、分離機能層(ポリアミド膜)を得た。得られた分離膜を垂直に保持して液切りし、60℃の純水で2分間洗浄して第一の気体分離膜Qを得た。
(第一の気体分離膜R)
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)が30重量%のN-メチルピロリドン(NMP)溶液を窒素気流下で攪拌しているところに、2,3,5,6-テトラメチルフェニレンジアミンが0.02重量%、DABAが0.16重量%のNMP溶液を30分かけて、系内を40℃に保ちつつ滴下した。反応液を40℃で2.5時間攪拌した後、ピリジン、無水酢酸をそれぞれ加えて、さらに80℃で3時間攪拌した。その後、反応液にアセトンを加え、希釈した。メタノール、アセトンを加えて攪拌しているところに、反応液のアセトン希釈液を滴下した。次に、得られたポリマー結晶を吸引ろ過し、60℃で送風乾燥させてポリマーを得た。得られたポリマーが0.015重量%、架橋剤(2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン)が0.002重量%のメチルエチルケトン溶液となるように混合して30分攪拌したのち、テトラフェニルホスホニウムブロミドを加えて、更に30分攪拌した。ガラス板上に、ポリアクリロニトリル多孔質膜(GMT社製)を静置し、前記ポリマー液をアプリケータを用いて多孔質膜表面にキャストさせ、室温で5分ほど静置したのち、さらに70℃で15分反応させ、分離機能層(ポリイミド膜)を得た。得られた分離膜を60℃の純水で2分間洗浄して第一の気体分離膜Rを得た。
(第一の気体分離膜S)
ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社)に対し、ポリジメチルシロキサンを溶解し、4.0重量%のポリジメチルシロキサン溶液を調製した。該溶液を気体分離膜Qの表面に400mL/mとなるように10milのバーコーターを用いて表面に塗布し、被覆層を形成した。最後に40℃で12時間以上真空乾燥させることで第一の気体分離膜Sを得た。
(第二の気体分離膜)
第二の分離膜について、ポリスルホン樹脂(ソルベー社製P3500)18部、ポリビニルピロリドン(ISP社製K90)5部およびジメチルアセトアミド76部、水1部からなる製膜原液を50℃に保温し、1.0/0.7mmからなる2重管口金からジメチルアセトアミド40部、水60部からなる芯液と同時に吐出させ、350mmの乾式部を通り、水90部、ジメチルアセトアミド10部の凝固浴に浸漬させ、凝固させた。
次いで凝固させた中空糸膜を80℃の水洗浴で洗浄し、中空糸膜が湿潤状態のままカセに巻き取った。この時の製膜速度は、10m/minとし、中空糸膜内径は580μm、膜圧は100μmとした。
巻き取った中空糸膜を100本単位に小分けし、50℃の乾熱乾燥機で24時間乾燥を行い、中空糸膜を得た。
C.分離膜モジュール
(第一の分離膜モジュールP)
気体分離膜Pを幅300mmに裁断した後、25℃の温室下で風乾後に2つに折り畳み、供給側流路材(Diomesh PET-Screen 100-55PT(innovex社製))を折り畳まれた分離膜に挟んだ。気体分離膜の透過側面に、透過側流路材(Diomesh PET-Screen 100-55PT(innovex社製))を配置し、透過側流路材の端部3辺に接着剤を塗布し、これらの積層物(有効膜面積1.0m)を、ABS樹脂製集水管(長さ:300mm、径:17mm、壁面に直線に設けた孔80個×2列)にスパイラル状に巻囲し、直径2.5インチの分離膜モジュールを作製した。
(第一の分離膜モジュールQ)
気体分離膜をQとした以外は第一の分離膜モジュールPと同様にして分離膜モジュールを作製した。
(第一の分離膜モジュールR)
気体分離膜をRとした以外は第一の分離膜モジュールPと同様にして分離膜モジュールを作製した。
(第一の分離膜モジュールS)
気体分離膜をSとした以外は第一の分離膜モジュールPと同様にして分離膜モジュールを作製した。
(第二の分離膜モジュール)
第二の分離膜について、中空糸膜5本を用いて、ポリカーボネート製のパイプに挿入し、0.1m長のラボモジュールを製作した。この際、中空糸膜をポリカーボネート製パイプに固定するため、エポキシ系接着剤(セメダイン製。ハイスーパー5)を使用した。
【0093】
パイプ両端から中空糸膜内径部の通気を行った。中空糸膜外径部の通気は、パイプ両端から2cm部分で枝分かれ構造となっており、ここから通気を行った。
(実施例1)
図1に示す構成の気体分離装置を用い、ヘリウム50モル%及び酸素50モル%を含む混合気体(7L/分)を供給した。供給圧は、0.02MPaに調製した。
【0094】
ここで、分離膜モジュール2は、上記で試作した分離膜モジュールPを使用した。一部の気体は、分離膜モジュールPの分離膜を透過し、透過気体の通気ライン3に通気され、その他の気体は、分離膜モジュールPの濃縮気体の通気ライン4に通気された。
【0095】
分離膜モジュールPの透過側は、分離膜モジュールの透過側気体と、駆動流体供給ライン5より、マグネットポンプMD-6K-N(株式会社イワキ)を用いて供給される駆動流体との合流部6より減圧した。ここで、駆動流体には、水(25℃)を使用し、内径0.8cmの配管で、10L/minの流量で送液した。合流部6では、アスピレータ(サンゴバン社、”テフロン”製。型式A-1886)を用いた。これにより、分離膜モジュールPの透過側を減圧することができ、圧力を測定すると、10Torrであった。
【0096】
水と分離膜モジュールP透過気体の合流部6から、水と分離膜モジュールP透過気体が合流したまま、通気ライン7を通り、水と分離膜モジュール透過気体の分離機構8に送った。
ここで、水と分離膜モジュールP透過気体は分離し、水は、分離機構内で貯留した。また、透過気体は分離機構の上部から、回収ライン10を通り回収した。この回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表1に示した。高純度のヘリウムを得ることができた。
(実施例2)
図2は、本発明の、気体分離装置の別の例を示す模式図である。
【0097】
実施例1に加えて、駆動流体である水と分離膜モジュール透過気体の分離機構8の底部より、貯留している駆動流体を抜出し、その後、駆動流体送水ポンプ11で、水と分離膜モジュール透過気体の合流部6に、駆動流体供給ライン5を通して、水を10L/minで送水した。これにより、駆動流体である水を、99%以上、再利用循環することができた。この回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表1に示した。高純度のヘリウムを得ることができた。
(実施例3)
図3は、本発明の、気体分離装置の別の例を示す模式図である。
【0098】
実施例2に加えて、上記のシリコーンオイルKF-96-100CSを駆動流体12に使用した結果、水の蒸気圧による影響を低減することができた。ここで、水およびシリコーンオイルは、分離機構8において、25℃で温度を調整した。この回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表1に示した。高純度のヘリウムを得ることができた。
(実施例4)
分離膜モジュールをQとした以外は実施例1と同様にして気体分離装置での気体分離を行った。回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表1に示した。高純度のヘリウムを得ることができた。
(実施例5)
分離膜モジュールをRとした以外は実施例1と同様にして気体分離装置での気体分離を行った。回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表1に示した。高純度のヘリウムを得ることができた。
(実施例6)
分離膜モジュールをSとした以外は実施例1と同様にして気体分離装置での気体分離を行った。回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表1に示した。高純度のヘリウムを得ることができた。
【0099】
【表1】
【0100】
(実施例7)
ヘリウム50モル%及び二酸化炭素50モル%を含む混合気体(7L/分)を供給した以外は実施例1と同様にして気体分離装置での気体分離を行った。回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表2に示した。二酸化炭素が水に溶解することにより、高純度のヘリウムを得ることができた。
(実施例8)
ヘリウム50モル%及び二酸化炭素50モル%を含む混合気体(7L/分)を供給し、駆動流体にイオン性物質を含む液体として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いた以外は実施例1と同様にして気体分離装置での気体分離を行った。回収した透過気体について、ガス組成を測定した結果を表2に示した。二酸化炭素がイオン性物質を含む液体に溶解することにより、高純度のヘリウムを得ることができた。
【0101】
【表2】
【0102】
(実施例9)
図1に示す構成の気体分離装置について、ヘリウム50モル%及び窒素50モル%を含む混合気体(7L/分)を供給した。供給圧は、0.02MPaに調製した。
【0103】
ここで、第一の分離膜モジュール2は、上記で試作した第一の分離膜モジュールP1本を使用した。一部の気体は、分離膜モジュールPの分離膜を透過し、透過気体の通気ライン4に通気され、その他の気体は、第一の分離膜モジュールPの濃縮側ライン5に通気された。
【0104】
第一の分離膜モジュールPの透過側は、第一の分離膜モジュールPの透過側気体と、駆動流体供給ライン5より供給される駆動流体との合流部6より減圧した。ここで、駆動流体には、水(25℃)を使用し、内径0.8cmの配管で、10L/minの流量で送液した。これにより、分離膜モジュールの透過側を減圧することができ、圧力を測定すると、10Torrであった。
【0105】
ここで、第一の分離膜モジュールPの透過側気体と、駆動流体供給ライン5より供給される駆動流体との合流部6では、アスピレータ(サンゴバン社、”テフロン”製。型式A-1886)を用いた。
【0106】
水と第一の分離膜モジュールPの透過気体の合流部から、水と第一の分離膜モジュールPの透過気体が合流したまま、通気ライン7を通り、水と第一の分離膜モジュールPの透過気体の分離機構8に送った。
【0107】
ここで、水と第一の分離膜モジュールPの透過気体は分離し、水は、分離機構内で貯留した。また、透過気体は分離機構の上部から、回収ライン10を通り第二の分離膜モジュール13に供給し、除湿して回収した。なお、第二の分離膜モジュール13は、上記で製作した第二の分離膜モジュールを10本並列で使用した。
【0108】
なお、第二の分離膜モジュール13で、透過気体と逆側には、窒素を通気した。
【0109】
この回収した透過気体の組成を測定した結果を表3に示した。ヘリウムを高純度で得ることができた。さらに透過気体の水蒸気濃度を低減できた。
(実施例10)
装置機構Lを用いた。
【0110】
実施例9に加えて、駆動流体である水と分離膜モジュール透過気体の分離機構8の底部より、貯留している駆動流体を抜出し、その後、駆動流体送水ポンプ11で、水と分離膜モジュール透過気体の合流部6に、駆動流体供給ライン5を通して、水を10L/minで送水した。これにより、駆動流体である水を、99%以上、再利用循環することができた。この回収した透過気体の組成を測定した結果を表3に示した。ヘリウムを高純度で得ることができた。さらに透過気体の水蒸気濃度を低減できた。
(実施例11)
装置機構Mを用いた。
実施例10に加えて、上記のシリコーンオイルKF-96-100CSを駆動流体12に使用した結果、水の蒸気圧による影響を低減することができた。ここで、水およびシリコーンオイルは、分離機構8において、25℃で温度を調整した。以上の装置で、この回収した第二の分離膜モジュールの透過気体の組成を測定した結果を表3に示した。さらに透過気体の水蒸気濃度を低減できた。高純度のヘリウムを得ることができた。 以上の様に、実施例1~11における気体分離装置は、2種以上の気体を含む流体から、少なくとも1種の気体を、効率的に分離することができる。
【0111】
【表3】
【0112】
(比較例1)
定格出力5.0Wのマグネットポンプの代わりに、定格出力140Wのダイヤフラム真空ポンプN810FT.18(三商株式会社)を使用した以外は実施例1と同様にして気体分離装置での気体分離を行った。結果を表4に示した。性能に違いはないものの、消費電力が大きくなった。
【0113】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の気体分離装置は、2種以上の気体を含む流体から、少なくとも1種の気体を、効率的に分離可能な気体の分離装置を提供するができる。
【符号の説明】
【0115】
1 混合気体供給ライン
2 第一の分離膜モジュール
3 第一の分離膜モジュールの透過気体の通気ライン
4 第一の分離膜モジュールの濃縮気体の通気ライン
5 駆動流体供給ライン
6 駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の合流部
7 駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の通気ライン
8 駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構
9 駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構内の駆動流体
10 第一の分離膜モジュール透過気体の回収ライン・第二分離膜モジュールへの回収気体供給ライン
11 駆動流体送水ポンプ
12 駆動流体と第一の分離膜モジュール透過気体の分離機構内の別の駆動流体
13 第二の分離膜モジュール
14 第二の分離膜モジュール 除湿側気体排出ライン
15 第二の分離膜モジュール 加湿側気体供給ライン
16 第二の分離膜モジュール 加湿側気体排出ライン
17 混合気体タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8