(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178971
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】デジタルライトプロセッシング3Dプリントのための樹脂
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20231211BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20231211BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231211BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/124
B33Y70/00
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093092
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】17/833,144
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ユヤン
(72)【発明者】
【氏名】タナカ・マサト
(72)【発明者】
【氏名】ユエ・リアン
(72)【発明者】
【氏名】チー・ハン
【テーマコード(参考)】
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA42
4F213AA43
4F213AB04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL23
4J127AA03
4J127BA051
4J127BB031
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4J127BB221
4J127BC021
4J127BC121
4J127BD421
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BG271
4J127CA02
4J127CB151
4J127CB152
4J127CC022
4J127CC091
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デジタルライトプロセッシング(DLP)3Dプリントのための樹脂を提供する。
【解決手段】グレースケールDLP3Dプリントのための樹脂は、供与部位、受領部位、剛性部位、光開始剤、および光吸収剤を含む。供与部位は、遊離カルボニル、アクリレート上の第1級アミン、アクリレート上の第2級アミン、および/またはアクリレート上の第3級アミンである側基を有するアクリレートモノマーである。受領部位は、供与部位とは異なるものであり、遊離ヒドロキシ、第1級アミン、第2級アミン、および/またはイミンである側基を有するアクリレートモノマーである。そして、剛性部位は、シクロヘキシル、置換されたシクロヘキシル、または二環式構造である側基を有するアクリレートモノマーである。グレースケールDLP3Dプリントを使用して前記樹脂から形成されるモノリシック構造は、0.1MPa~100MPaの範囲のヤング率を有し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離カルボニル、アクリレート上の第1級アミン、アクリレート上の第2級アミン、およびアクリレート上の第3級アミンのうちの少なくとも1つを含む側基を有するアクリレートモノマーの形態である供与部位と、
前記供与部位とは異なる受領部位であって、遊離ヒドロキシ、第1級アミン、第2級アミン、およびイミンのうちの少なくとも1つを含む側基を有するアクリレートモノマーの形態である受領部位と、
シクロヘキシル、置換されたシクロヘキシル、および二環式構造のうちの1つ以上を含む側基を有するアクリレートモノマーの形態である剛性部位と、
光開始剤と、
光吸収剤と、を含む樹脂であって、前記樹脂は、グレースケールデジタルライトプロセッシング3Dプリントを使用して、0.1MPa~100MPaの範囲のヤング率を有する固体ポリマーを形成するように構成される、樹脂。
【請求項2】
前記供与部位および前記受領部位のうちの一方は、オリゴマー架橋剤である、請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記供与部位は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、および脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項4】
前記供与部位は、前記樹脂の組成全体の約10重量%~約30重量%である、請求項3に記載の樹脂。
【請求項5】
前記供与部位は、2-ヒドロキシエチルアクリレートである、請求項4に記載の樹脂。
【請求項6】
前記受領部位は、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項7】
前記受領部位は、前記樹脂の組成全体の約10重量%~約30重量%である、請求項6に記載の樹脂。
【請求項8】
前記受領部位は、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートである、請求項1に記載の樹脂。
【請求項9】
前記剛性部位は、イソボルニルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項10】
前記剛性部位は、前記樹脂の組成全体の約50重量%~約70重量%である、請求項9に記載の樹脂。
【請求項11】
前記剛性部位はイソボルニルアクリレートである、請求項10に記載の樹脂。
【請求項12】
前記供与部位は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、および脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートのうちの少なくとも1つから選択され、
前記受領部位は、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートのうちの少なくとも1つから選択され、かつ
前記剛性部位は、イソボルニルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項13】
前記供与部位は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、および脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートからなる群より選択され、
前記受領部位は、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選択され、かつ
前記剛性部位は、イソボルニルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートからなる群より選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項14】
前記供与部位は、前記樹脂の組成全体の約10重量%~約30重量%であり、
前記受領部位は、前記樹脂の組成全体の約10重量%~約30重量%であり、かつ
前記剛性部位は、前記樹脂の組成全体の約50重量%~約70重量%である、請求項13に記載の樹脂。
【請求項15】
前記供与部位は2-ヒドロキシエチルアクリレートであり、前記受領部位は脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートであり、前記剛性部位はイソボルニルアクリレートである、請求項14に記載の樹脂。
【請求項16】
2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、および脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートからなる群より選択される供与部位と、
脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選択される受領部位と、
イソボルニルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートからなる群より選択される剛性部位と、
光開始剤と、
光吸収剤と、を含む樹脂であって、前記樹脂は、グレースケールデジタルライトプロセッシング3Dプリントを使用して、0.1MPa~200MPaの範囲のヤング率を有する固体ポリマーを形成するように構成される、樹脂。
【請求項17】
前記供与部位は、前記樹脂の組成全体の約10重量%~約30重量%であり、
前記受領部位は、前記樹脂の組成全体の約10重量%~約30重量%であり、かつ
前記剛性部位は、前記樹脂の組成全体の約50重量%~約70重量%である、請求項13に記載の樹脂。
【請求項18】
前記供与部位は2-ヒドロキシエチルアクリレートであり、前記受領部位は脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートであり、かつ前記剛性部位はイソボルニルアクリレートである、請求項17に記載の樹脂。
【請求項19】
2-ヒドロキシエチルアクリレートを含む供与部位と、
脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートを含む受領部位と、
イソボルニルアクリレートを含む剛性部位と、
光開始剤と、
光吸収剤と、を含む樹脂であって、前記樹脂は、グレースケールデジタルライトプロセッシング3Dプリントを使用して、0.1MPa~300MPaの範囲のヤング率を有する固体ポリマーを形成するように構成される、樹脂。
【請求項20】
前記2-ヒドロキシエチルアクリレートは、前記樹脂の組成全体の約15重量%~約25重量%であり、
前記脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートは、前記樹脂の組成全体の約15重量%~約25重量%であり、かつ
前記イソボルニルアクリレートは、前記樹脂の組成全体の約55重量%~約65重量%である、請求項19に記載の樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、概して、樹脂に関し、特に、デジタルライトプロセッシング3Dプリントのための樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
デジタルライトプロセッシング三次元(digital light processing three dimensional、DLP 3D)プリントは、デジタルライトプロジェクタを使用して樹脂の層を一層ずつ硬化させることによって3D部品を構築するバット重合(vat polymerization)技術である。そして、グレースケールDLP 3D(g-DLP 3D)プリントは、グレースケールライトパターンを使用して傾斜機能材料を得るものである。しかしながら、現行の樹脂では、得られる硬さおよび弾性の範囲が限定されている。
【0003】
こうした問題と、g-DLP 3Dプリントに関連するその他の問題に対処するために、本開示は、g-DLP 3Dプリントのための樹脂を提案する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示の一形態において、3Dプリントのための樹脂は、供与部位、受領部位、および剛性部位を含む。供与部位は、遊離カルボニル、アクリレート上の第1級アミン、アクリレート上の第2級アミン、およびアクリレート上の第3級アミンのうちの少なくとも1つを含む側基を有するアクリレートモノマーの形態である。受領部位は、供与部位とは異なるものであり、遊離ヒドロキシ、第1級アミン、第2級アミン、およびイミンのうちの少なくとも1つを含む側基を有するアクリレートモノマーの形態である。そして、剛性部位は、シクロヘキシル、置換されたシクロヘキシル、および二環式構造のうちの1つ以上を含む側基を有するアクリレートモノマーの形態である。そして、樹脂は光開始剤、光吸収剤を含み、グレースケールデジタルライトプロセッシング3Dプリントを使用して、0.1MPa~100MPaの範囲のヤング率を有する固体ポリマーを形成するように構成される。
【0005】
本開示の別の一形態において、3Dプリントのための樹脂は、供与部位、受領部位、および剛性部位を含む。供与部位は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、および脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートからなる群より選択される。受領部位は、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選択される。そして、剛性部位は、イソボルニルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートからなる群より選択される。また、樹脂は、光開始剤、光吸収剤も含み、グレースケールデジタルライトプロセッシング3Dプリントを使用して、0.1MPa~200MPaの範囲のヤング率を有する固体ポリマーを形成するように構成される。
【0006】
本開示のさらに別の一形態において、3Dプリントのための樹脂は、供与部位、受領部位、および剛性部位を含む。供与部位は2-ヒドロキシエチルアクリレートを含み、受領部位は脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートを含み、剛性部位はイソボルニルアクリレートを含む。また、樹脂は、光開始剤、光吸収剤も含み、グレースケールデジタルライトプロセッシング3Dプリントを使用して、0.1MPa~300MPaの範囲のヤング率を有する固体ポリマーを形成するように構成される。
【0007】
上述される複合塩混合物およびその調製についての上述される特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明と、例示的であって限定的ではない図面および実施例とから明らかとなる。
【0008】
図面の簡単な説明
本発明の教示内容に対する理解は、詳細な説明と添付の図面とにより、さらに完全となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2A】供与部位、受領部位、および剛性部位の間に水素結合を有する、本開示の教示に係る樹脂を示す。
【
図2B】供与部位、受領部位、および剛性部位の間に架橋を有する、
図2A中の樹脂を示す。
【
図3A】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したカタツムリ構造の写真である。
【
図3B】400%伸びたまたは伸張した第1の軟らかい部分(首部)と、負荷を受けているが形状を維持している第2の軟らかい部分(殻)とを有する、
図3A中のカタツムリ構造の写真である。
【
図4A】本開示の教示に係る樹脂を使用して、g-DLP 3Dプリンタで、0%グレースケールレベル(「G0」と表示)、10%グレースケールレベル(「G10」と表示)、20%グレースケールレベル(「G20」と表示)、30%グレースケールレベル(「G30」と表示)、40%グレースケールレベル(「G40」と表示)、および50%グレースケールレベル(「G50」と表示)にてプリントして製造した引張試験試料についての、応力と歪みのプロットである。
【
図4B】本開示の教示に係る樹脂を使用して、g-DLP 3Dプリンタで、60%グレースケールレベル(「G60」と表示)および70%グレースケールレベル(「G70」と表示)にてプリントして製造した引張試料についての、応力と歪みのプロットである。
【
図4C】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリントで製造し、200%~300%の歪みサイクルに供した「G60」引張試料についての、応力とサイクル数のプロットである。
【
図5A】慣習的な材料から作製した引張試料と、本開示の教示に係る樹脂を使用して、g-DLP 3Dプリンタで、グレースケールレベルG0、G10、G20、G30、G40、G50、G60、G70にてプリントして製造した引張試料とについての、ヤング率およびガラス転移温度とグレースケールのパーセント値とのプロットである。
【
図5B】他の慣習的な材料と比較して、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリントで製造した引張試料の、ヤング率と弾性伸びのパーセント値とのプロットである。
【
図6A】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した一組の複合物様の構造についての、応力と歪みのプロットである(一組の複合物様の構造)。
【
図6B】
図6A中で試験した複合物様の構造に200グラム(g)の重りをかけた際の、一組の写真である。
【
図6C】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造したエアレスタイヤを示す、一連の写真である。
【
図7A】3つの異なる模倣動脈組織の概略図を示す。
【
図7B】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した3つの模倣動脈組織を引張試験に供した際の、応力と歪みのプロットである。
【
図8A】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した三区画構造についての負荷と変位のプロットであり、当該三区画構造は、G66マトリックスの第1の区画と、G56マトリックスの第2の区画と、G46マトリックスの第3の区画との中にばね形状のG0の硬い繊維が埋め込まれている。
【
図8B】
図8A中の三区画構造全体の変位に対する、当該三区画構造の各区画の歪みのプロットである。
【
図9】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した人工ヒト心臓弁を示す、一連の写真である。
【
図10】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した魚の鰭の構造についての、一連の写真とFEAシミュレーションである。
【
図11A】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリントで製造した3つのバイオミメティクス構造を示す、一連の写真である。
【
図11B】
図11A中の3つのバイオミメティクス構造についての、負荷と変位のプロットである。
【
図12A】膨らむ前後のフグを示す一組の写真である。
【
図12B】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造したバイオミメティクスフグを膨らませる前後を示す、一組の写真である。
【
図13A】本教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した、剛性のキャップと軟らかい膜とを有する膜構造についての、写真とFEAシミュレーションである。
【
図13B】本教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した、軟らかい膜の中に剛性のキャップと1つの同軸の硬いリングとを有する膜構造についての、写真とFEAシミュレーションである。
【
図13C】本教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した、軟らかい膜の中に剛性のキャップと4つの同軸の硬いリングとを有する膜構造についての、写真とFEAシミュレーションである。
【
図13D】本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した、軟らかい膜の中に剛性のキャップと3つの同軸の1/3円形の硬いリングとを有する膜構造についての、写真とFEAシミュレーションである。
【
図14A】水平方向の硬いリングを有する円筒形膜構造の概略図と、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した水平方向の硬いリングを有する円筒形膜構造を膨らませる前の写真と、当該水平方向の硬いリングを有する円筒形膜構造を膨らませた後の写真である。
【
図14B】水平方向の硬いリングと垂直方向の硬い繊維とを有する円筒形膜構造の概略図と、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した水平方向の硬いリングと垂直方向の硬い繊維とを有する円筒形膜構造を膨らませる前の写真と、当該水平方向の硬いリングと垂直方向の硬い繊維を有する円筒形膜構造を膨らませた後の写真である。
【
図14C】垂直方向の硬い繊維を有する円筒形膜構造の概略図と、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造した垂直方向の硬い繊維を有する円筒形膜構造を膨らませる前の写真と、当該垂直方向の硬い繊維を有する円筒形膜構造を膨らませた後の写真である。
【
図14D】らせん状の硬いリングを有する円筒形膜構造の概略図と、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造したらせん状の硬いリングを有する円筒形膜構造を膨らませる前の写真と、当該らせん状の硬いリングを有する円筒形膜構造を膨らませた後の写真である。
【
図15A】水平方向の硬いリングと垂直方向のらせん状の硬い繊維とを有する円筒形膜構造の概略図と、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造した水平方向の硬いリングと垂直方向のらせん状の硬い繊維とを有する円筒形膜構造を膨らませる前の写真である。
【
図15B】
図15A中の水平方向の硬いリングと垂直方向のらせん状の硬い繊維とを有する円筒形膜構造が、膨らませている間に触手形状を形成している様子を示す、一連の写真である。
【
図15C】
図15A中の水平方向の硬いリングと垂直方向のらせん状の硬い繊維とを有する円筒形膜構造がマーカーペンを握っている写真である。
【
図15D】
図15A中の水平方向の硬いリングと垂直方向のらせん状の硬い繊維とを有する円筒形膜構造がマーカーペンを握っている写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中において上述される図面は、具体的な態様について説明するという目的のもとで、本開示に係る技術における複合塩混合物および電解質の全般的な特徴の例を示すことを意図するものである。これらの図面は、任意の態様の特徴を正確に反映したものではない場合があり、必ずしも、具体的な形態または変形例を本技術の範囲内に規定または限定することを意図するものではない。
【0011】
詳細な説明
本開示は、単一バット単回硬化g-DLP 3Dプリント(single-vat single cure g-DLP 3D printing)のための樹脂を提供する。この樹脂は、1つのプリント層内において、伸張性が高く軟らかいオルガノゲル部分と硬い熱硬化部分とをもたらす組成を有する。これに加えて、当該樹脂は、異なる樹脂を入れた複数のバットの使用を必要とすることなく、1つ以上の伸張性(弾性)のある軟らかいオルガノゲル部分と1つ以上の硬い熱硬化部分とを有するモノリシックな3Dプリントコンポーネントを製造することを可能とする。
【0012】
いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約10MPa~約100MPaの範囲のヤング率を呈する。少なくとも1つの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約10MPa~約200MPaの範囲のヤング率を呈する。いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約10MPa~約300MPaの範囲のヤング率を呈する。そして、少なくとも1つの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約10MPa~約400MPa、または約10MPa~約478MPaの範囲のヤング率を呈する。
【0013】
いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約8MPa~約100MPaの範囲のヤング率を呈する。少なくとも1つの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約5MPa~約100MPaの範囲のヤング率を呈する。いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約2MPa~約100MPaの範囲のヤング率を呈する。そして、少なくとも1つの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約1MPa~約100MPa、または約0.5MPa~約100MPa、または約0.1MPa~約100MPaの範囲のヤング率を呈する。
【0014】
いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約5MPa~約200MPaの範囲のヤング率を呈する。少なくとも1つの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約2MPa~約200MPaの範囲のヤング率を呈する。いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約1MPa~約300MPaの範囲のヤング率を呈する。そして、少なくとも1つの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、約0.5MPa~約400MPa、または約0.1MPa~約475MPaの範囲のヤング率を呈する。
【0015】
いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、100%を上限とする弾性伸びを呈する。そして、いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したモノリシック構造は、200%を上限とする、300%を上限とする、400%を上限とする、450%を上限とする、または450%を上回る弾性伸びを呈する。言い換えれば、本開示の教示に係る樹脂を使用してg-DLP 3Dプリントで製造したモノリシック構造は、低い硬さと高い弾性とを有する少なくとも1つの部分と、高い硬さと高い強度とを有する少なくとも1つの部分とを有し、その詳細は以降に記載される。
【0016】
3Dプリントによれば、キャスティング、機械加工、低温加工、高温加工などの慣習的な製造技術では物理的および/または経済的に不可能であった幾何学的および材料的に複雑なコンポーネントおよび構造の作製が可能となることが理解されるべきである。そして、新しい3Dプリントの性能によって、展開可能な構造物、ソフトロボティクス、可撓性電気コンポーネント、およびバイオミメティクス設計などの機能的な用途または構造において使用できることが実証された。しかしながら、天然物のような構造、エアレスタイヤ、多安定吸収体(multi-stable absorbers)、および4Dプリントなどの多くの機能的用途には、特性が大幅に異なる複数の材料を使用する必要がある。すなわち、こうした構造では、異なる部分がそれぞれ大幅に異なる力学的および/もしくは物理的特性を有している、またはそうであることが必要とされる。
【0017】
また、DLP 3Dプリントは、近年ますます普及が進んでいる高速かつ高解像度のプリント方法であるということも理解されるべきである。デジタルライトプロセッシングは、プロジェクタを使用して、固体部品の事前に定めた断面を有する数百または数千層という樹脂の薄層に対して照射を行ない、これらの薄層を1層ずつ硬化させて、当該固体部品を1層ずつ製造する。典型的なDLPプリントプロセスでは、1つの樹脂バットを使用し、コンポーネントを形成するためにはビルドプレートのz方向の動きのみが必要であり、薄層の光重合(または光硬化)が数秒で生じる。したがって、DLP 3Dプリントは、最も高速の3Dプリント技術の1つである。しかしながら、1つの樹脂バットを使用するため、複数通りの材料特性を有する部品のプリントには、DLPは一般的に適していない。複数のバットを使用して、プリントが済んだ部品を複数のバット間で移動させることにより、2通り以上の材料をプリントする方法が開発されている。しかしながら、複数のバットの間で交差汚染が生じたり、異なる樹脂バットの間で切り換えたり、洗浄したりすることにより、プリント速度が大幅に遅くなる。
【0018】
g-DLPプリントにおいては、局所的なモノマー変換(硬化)の度合いを光の強度によって制御し、この光の強度を、入力するグレースケール画像によってピクセルレベルで操作する。たとえば、
図1を参照して、プロジェクタ100と、ビルドプラットフォーム120と、本開示の教示に係る樹脂150の入った1つの樹脂バット140とを有するg-DLP 3Dプリンタ10が示される。プロジェクタ100は、当該1つの樹脂バット140の透明底壁142に対してグレースケール画像を投影するように構成され、コンポーネント「C」の事前に定めた断面を有する樹脂150の層が照射を受けて硬化する。プロジェクタ100からのグレースケール曝露によって樹脂150の層が照射を受けると(そして硬化すると)、図示される+z方向にビルドプラットフォーム120が動いて、ほぼ硬化した樹脂層と透明底壁142の上面143との間に樹脂150が流れ込む。次いで、プロジェクタ100が、当該1つの樹脂バット140の透明底壁142に対して別のグレースケール画像を投影することにより、樹脂150の一番新しい層に、コンポーネント「C」の事前に定めた別の断面が照射される。コンポーネントCが一層ずつ製造されて完了するまで、このプロセスまたはサイクルが継続される。
【0019】
図2A~
図2Bを参照して、当該樹脂における樹脂150中に含まれる3つのモノマーについての非限定的な一例が示される。特に、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合供与性モノマー152(図示される2-ヒドロキシエチルアクリレート)と、少なくとも1つの水素結合受領性モノマー154(図示される脂肪族のウレタンに基づくジアクリレート)と、少なくとも1つの剛性モノマー156(図示されるイソボルニルアクリレート)とを含む。いくつかの変形例において、少なくとも1つの水素結合供与性モノマー152は少なくとも1つの水素結合受領性モノマー154とは異なる水素結合受領性モノマーであってもよく、および/または少なくとも1つの水素結合受領性モノマー154は少なくとも1つの水素結合供与性モノマー152とは異なる水素結合供与性モノマーであってもよい。
【0020】
いくつかの変形例において、少なくとも1つの水素結合供与性モノマー152(本明細書中において「供与体部位152」とも称される)は、遊離カルボニル(-C=O)基またはアクリレート上の第1級、第2級、もしくは第3級アミン側基を含む1つ以上の側基を有するアクリレートモノマーである。そして、少なくとも1つの変形例において、少なくとも1つの水素結合受領性モノマー154(本明細書中において「受領部位154」とも称される)は、遊離ヒドロキシ(-OH)、第1級もしくは第2級アミン(-N(H)-、たとえばウレタン(C(O)-N(H)-))、またはイミン(-N=)を含む1つ以上の側基を有するアクリレートモノマーである。そして、少なくとも1つの剛性モノマー156(本明細書中において「剛性部位156」とも称される)は、シクロヘキシル、置換されたシクロヘキシル、二環式の側基(とりわけイソボルニル、ノルボルニル、およびジシクロペンタニルなど)のうちの1つ以上を含む1つ以上の側基を有するアクリレートモノマーであってもよい。さらに、供与体部位152および/または受領部位154は、架橋剤として機能するオリゴマー(たとえば、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレート)である。
【0021】
少なくとも1つの水素結合供与性モノマー152の例は、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-hydroxyethyl acrylate;2-HEA)、カプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、および脂肪族のウレタンに基づくジアクリレートを含むが、これらに限定されない。少なくとも1つの水素結合受領モノマー154の例は、脂肪族のウレタンに基づくジアクリレート(aliphatic urethane-based diacrylate;AUD)および2-HEAを含むが、これらに限定されない。そして、少なくとも1つの剛性モノマー156の例は、イソボルニルアクリレート(isobornyl acrylate;IOBA)、4-アクリロイルモルホリン、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートを含むが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの変形例において、本開示の教示に係る樹脂(本明細書中において簡潔に「樹脂150」とも称される)は、少なくとも1つの水素結合供与体モノマー152を約5重量パーセント(重量%)~約35重量%含み、少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合供与体モノマー152を約10重量%~約30重量%含む。そして、いくつかの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合供与体モノマー152を約15重量%~約25重量%含む。たとえば、少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合供与体モノマー152を約20重量%含む。
【0023】
いくつかの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合受領モノマー154を約5重量%~約35重量%含み、少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合受領モノマー154を約10重量%~約30重量%含む。そして、いくつかの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合受領モノマー154を約15重量%~約25重量%含む。たとえば、少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの水素結合受領モノマー154を約20重量%含む。
【0024】
いくつかの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの剛性モノマー156を約45重量%~約75重量%含み、少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの剛性モノマー156を約50重量%~約70重量%含む。そして、いくつかの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの剛性モノマー156を約55重量%~約65重量%含む。たとえば、少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、少なくとも1つの剛性モノマー156を約60重量%含む。
【0025】
いくつかの変形例において、樹脂150は、光開始剤を含む。たとえば、いくつかの変形例において、樹脂は、光開始剤を約0.1重量%~約2重量%含み、たとえば、光開始剤を約0.4重量%~1.6重量%、または光開始剤を約0.7重量%~約1.3重量%含む。少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、光開始剤を約1.0重量%含む。光開始剤の例は、光開始剤819(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)酸化ホスフィン)およびカンファーキノンを含むが、これらに限定されない。
【0026】
いくつかの変形例において、樹脂150は、光吸収剤を含む。たとえば、いくつかの変形例において、樹脂は、光吸収剤を約0.01重量%~約1重量%含み、たとえば、光吸収剤を約0.025重量%~0.5重量%、または光吸収剤を約0.04重量%~約0.1重量%含む。少なくとも1つの変形例において、樹脂150は、光吸収剤を約0.05重量%含む。光吸収剤の例は、メチレン、コクシン(coccine)、およびタートラジンを含むが、これらに限定されない。
【実施例0027】
本開示の範囲を何ら限定することなく、樹脂150と、その特性と、広範囲の特性を有するモノリシック構造を製造するためのその可能性とをより分かりやすく説明するために、樹脂150の1つの例示的な組成、および非常に多くのモノリシック構造の例、および対応する特性について、以下に述べる。
【0028】
モノマーである2-ヒドロキシエチルアクリレート(Sigma-Aldrich、MO、米国)、イソボルニルアクリレート(Sigma-Aldrich)、およびAUD(Ebecryl 8413、Allnex、GA、米国)を重量比20:60:20で混合することにより、樹脂150を調製した。次いで、当該モノマー混合物に、1重量%の光開始剤(Irgacure 819、Sigma-Aldrich)および0.05重量%の光吸収剤(Sudan I、Sigma Aldrich)を添加した。
【0029】
理論に拘束されるものではないが、IBOAおよび2-HEAは直鎖ビルダーとして、AUDは架橋剤として含めた。AUDは、高分子量の脂肪族鎖およびウレタン単位を有する粘ちょうなオリゴマーであり、2-HEAモノマーおよびIOBAモノマーと相互作用するとH-N…O水素結合を形成する。また、2-HEAは豊富な-OH基をもたらし、これがさらなるO-H…O水素結合を形成する。
【0030】
硬化の度合い(「硬化度」としても知られ、本明細書中において「DoC」とも称される)が低いと、共有結合ネットワークと、硬化した樹脂の豊富な水素結合とによって、
図2A中に示されるようにゴム状となって伸張性が高くなり、一方、DoCが高いと、
図2B中に示されるように硬いIBOAが室温を上回るガラス転移温度(T
g)を示し、そのためにガラス様の挙動が生じて弾性が高くなる。
【0031】
図3A~
図3Bを参照して、バットの底部から光を投射するボトムアップDLPプリンタにおいて、樹脂150を使用した。このボトムアップDLPプリンタは、385nmのUV-LED光プロジェクタ(PRO4500、Wintech Digital Systems Technology社、Carlsbad、CA、米国)と直線移動ステージ(LTS150 Thorlabs、Newton、NJ、米国)とを使用するものであった。酸素透過性ウィンドウ(Teflon AF-2400、Biogeneral社、CA、米国)を備えた容器を樹脂バットとして使用した。
【0032】
設計した3D構造をスライスして、厚さ0.05mmの画像ファイルを複数枚得て、次いで、MATLAB(登録商標)スクリプトを使用して、グレースケール画像ファイルに変換した。連続液界面製造(continuous liquid interface production、CLIP)アプローチを、最適速度である3秒/層にて用いて、設計した当該3D構造をプリントした。プリントする前に、光度計(ILT1400-A Radiometer、International Light Technologies社、MA、米国)を用いて、プリンタの光の強度を較正した。
【0033】
万能試験機(Insight 10、MTS Systems社、Eden Prairie、MN、米国)をクロスヘッドスピード5mm/分にて用いて、一軸張力試験を行なった。DMA機(Q800、TA Instruments、New Castle、DE、米国)を用い、温度を10℃/分の速度で変化させて、動的熱力学的特性を調べた。正規化したFTIR(Nicolet iS50分光光度計、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、米国)によるアクリレートのピーク強度が809cm-1に現れることを利用して、硬化の度合いを調べた。各試料について試験を複数回行なって、再現性を確認した。
【0034】
図3Aを参照して、まず、設計したカタツムリ3D構造をスライスして複数枚の2D画像を得て、次いで、MATLABスクリプト(MathWorks、Natick、MA、米国)を用いて複数のグレースケール画像とした。これらのグレースケール画像を底部からインクバットウィンドウに対して投影して(+z方向、
図1)、樹脂のフリーラジカル重合を開始させ、UV強度に局所的に変化をつけておいた結果として、作製された部品の全体にわたって異なるDoCが得られ、したがって異なる力学的特性が得られた。
図3B中に示されるように、プリントされたカタツムリは、硬い殻(光の強度100%による)と軟らかい本体部分(光の強度40%による)とを有していた。この殻は、目に見える変形を生じることなく1kgの重りに耐えたが、本体部分(たとえば首部)はたやすく伸張した(400%)。
【0035】
UV投射のグレースケールレベルを0%(最大強度、G0と表示)から100%(最も暗い、G100と表示)で変動させたことによって異なる材料特性が定められたということが理解されるべきである。深度に依存するDoCと光の線量との相関関係を分析するために、Vitaleら(“Interfacial Profile and Propagation of Frontal Photopolymerization Waves”Macromolecules 2015,48(1),198-205)によって開示される光重合(photopolymerization、PP)モデルを用いて、光重合速度を調べた。スライスした厚みが50μmであることに基づいて、また、当該PPモデルと実験的試験とから理論的に予測される相関関係を用いて、G0レベルからG70(暗さ70%)の範囲のグレースケールを使用することにより、速いプリント速度と良好な形状忠実性とを確保した。G0において、光の強度は24.82mW/cm2、DoCは96%であり(FTIR測定により求めた)、G70においては、光の強度は0.85mW/cm2、DoCは55%であった。
【0036】
樹脂150からg-DLP 3Dプリンタを使用して異なるグレースケールレベルでプリントして形成した構造の力学的特性を一軸引張試験で評価して、熱力学的特性を調べた。
図4A~
図4B中に示されるように、プリントしたポリマーはG0からG50となるにつれて徐々に軟らかくなり、G0におけるヤング率は487MPaであった。また、この「硬い状態」(G0)は優れた靱性を示し、約109J/m
3であった。また、引裂き試験によって破壊靭性を測定したところ、650~10000J/m
2の範囲であった。変換度約50~60%のゴム状態G60およびG70(
図4B)は弾性がそれぞれ0.38MPaおよび0.1MPaであり、上限約450%まで伸張させることができた。架橋ネットワークを有する未硬化モノマー同士の間に水素結合が広範囲にわたって存在しているために、プリントした部品が安定なオルガノゲル状態となり、疲労サイクルを10,000回実施した後でも優れた弾性特性と復元性を呈し、歪みは200%~300%と大きかった(
図4C)。
【0037】
剛直性モノマーIOBAによって、高DoCにおけるTgが上昇してネットワークが硬くなり、異なるDoCにおいて異なる弾性が得られた。
図5Aは、異なるグレースケールにおけるヤング率およびT
gの概要を示すものであり、硬いG0と軟らかいG70とでヤング率の差異が4800倍を上回っていることを示している。また、
図5Bは、樹脂150と文献中に報告されるDLP材料とから形成したモノリシック構造の、ヤング率と伸びの比較を示す。
図5B中に示されるように、樹脂150は、広範囲にわたるヤング率と、文献中で報告されている既知の材料のうちいずれのものよりも大きな弾性伸びとをもたらす。よって、この実験結果は、水素結合によって硬化ネットワーク鎖を形成するモノマーを使用することによって低DoCにて高い伸張性がもたらされることを示している。
【0038】
図6A~
図6Cを参照して、樹脂150を用いて形成しg-LPD 3Dでプリントした構造が複合物様の特性を呈することが示される。特に、
図6A~
図6Bは、プリントした2つのモノリシックな複合物構造を示しており、一方は、垂直方向のG0の硬い繊維が可撓性のG60のマトリックス中に埋め込まれており、もう一方は、水平方向のG0の硬い繊維が可撓性のG60のマトリックス中に埋め込まれている。水平方向のG0の硬い繊維を有する方の構造は、非常に軟らかいために自重(約1g)を支えられず、200gの重りによって、当該複合物自体の長さの2倍を上回る長さにまで伸張した。対照的に、垂直方向のG0の硬い繊維を有する方の構造は、同じ200gの重りを支えて、変形は観察されなかった。また、
図6Cは、衝撃吸収のための圧縮可能なG60のゴム状の外周と、剛性のG0の内側ハブ構造とを有する、エアレスタイヤの試作を示す。このような一体型構造を有することによって、このタイヤは垂直方向の力(地面の隆起を模倣したもの)を受けた際に変形することができ、この力がなくなると完全に元の状態に戻ることができる。
【0039】
図7A~
図7Bを参照して、動脈組織を模倣して設計した複合物と、J字形状の曲線を描く応力-歪み挙動とが示される。このようなJ字形状の曲線は、低い圧力(または力学的負荷)で血流を制御する動脈組織の機能にとって重要であり得て、動脈を拡張させて血流を増大させるが、拡張が一定の限界を超えると動脈組織が硬くなって流量を制限する。この挙動は、硬くて曲がりくねったコラーゲン線維が埋め込まれた軟らかいエラスチンマトリックスを主要な構造成分として含む動脈組織の構造によるものである。組織の伸張度が小さい時には、まっすぐに伸びて大きな組織伸長率にて軸方向に伸張するまで、曲がりくねったコラーゲン線維は小さな変形抵抗をもたらす(湾曲していることによる)。
【0040】
図7A中に示される複合物構造では、樹脂150を使用してg-DLP 3Dプリントで作製した、G60の軟らかい弾性マトリックス中にG0の硬い繊維が埋め込まれた中空円筒形構造によって、動脈組織の構造を模倣している。特に、まっすぐなG0の硬い繊維を有する円筒形の試料(T0と表示)と、第1のピッチを有するらせん状のG0の硬い繊維を有する円筒形の試料(T2と表示)と、第1のピッチより大きい第2のピッチを有するらせん状のG0の硬い繊維を有する円筒形の試料(T10と表示)とについての概略図が、
図7A中に示される。T0、T2、T10複合物試料と、T6およびT8のピッチに対応する複合物試料と、繊維を全く有さない試料(Mと表示)とを、樹脂150を使用してg-LPD 3Dプリンタで製造して、一軸引張試験に供した。そして、
図7B中に示されるように、T8およびT10構造はJ字形状の挙動を呈した、すなわち、最初は低かった硬さが漸進的に増大して高くなっており、これは硬い繊維がまっすぐに伸びることに対応する。繊維のピッチサイズ(曲がりと同等)を調整することで、繊維がまっすぐに伸びる様子に合うように歪み範囲を調整し、T10構造が最も顕著なJ字形状の挙動を示す。よって、これらの結果は、樹脂150を使用したg-DLP 3Dプリントを、実際の組織の挙動を模倣する人工組織のフォトタイプに使用できるということを示す。
【0041】
図8A~
図8Bを参照して、樹脂150をg-DLP 3Dプリントに供している間に複数のグレースケールレベルを使用して、力のレベルを増大させながら連続的な変形反応を達成したことが示される。特に、
図8A中に示される試料は、3区画のゴム状マトリックス中にばね形状の硬い繊維(G0)が埋め込まれたものであった。試料の最も下の区画はG66マトリックスを、中間の区画はG56マトリックスを、上の区画はG46マトリックスを有するものであった。そして、
図8A中の3つの試料の画像から観察されるように、各区画の変形には明らかな時間の遅れが観察され、上のG46区画が最も硬く、比較的あとの段階で変形を示した。また、
図8Bは、構造全体の全般的な歪みの変化を負荷の関数として示す。
【0042】
図9を参照して、樹脂150を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造した軟らかい部分と硬い部分とを有する人工ヒト心臓弁の形態のバイオメトリクス構造が示される。この心臓弁は、G60の剛性の支持体と3つのG60の軟らかい弁フラップとを有しており、流体の流動状態が変わると、弁が閉じた位置と開いた位置との間で動くというものであった。g-DLPプリントした当該心臓弁の流体力学的性能を、フラップの内面への圧力負荷を用いて試験したところ、FEAシミュレーションの結果と実験とがよく合致した。よって、樹脂150は、手術前の計画を目的とした患者個体別の心臓弁モデルの作製にとって、効率的なアプローチを提供する。
【0043】
図10を参照して、樹脂150を使用してg-DLPプリンタで製造した魚の鰭の構造であって、G0の硬い骨様の鰭条が共通のG0の鰭基部にくっついていてG60の可撓性の組織膜によって支えられている構造の写真が示される。魚は、骨様の鰭条がついている基部を筋肉と腱によって押したり引いたりすることによって鰭の形状を変化させることができ、
図10中に示されるプリントしたモデルはこの形状変化を模倣している。基部に対して直角方向の圧力負荷を用いて開閉を引き起こすFEAによって、魚の鰭の動きをモデル化し、折りたたまれた状態における膜の面外湾曲と、広がった状態における骨様の鰭条の面内湾曲とが、実験結果とよく合致した。よって、樹脂150は、魚の鰭の構造のg-DLP 3Dプリントをもたらし、このような機構を正確に再現できるため、バイオミメティクスの軟らかいロボット構造の迅速な作製が容易となる。
【0044】
図11A~
図11Bを参照して、複雑な多材料構成を有する、設計したバイオミメティクス構造が示される。特に、樹脂150を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造した、真珠層構造、ブーリガン構造、およびバルクまたは単純構造が
図11B中に示され、3つの構造の破壊靭性試験における変位の関数としての負荷が
図11B中に示される。真珠層構造とブーリガン構造とは、g)一緒に保持または接合されている硬い薄片または繊維を有し、これらの間にはG70の軟らかい界面が存在していて、これが割れ伝播経路を伸ばして、エネルギーを放散する。薄片/繊維サイズ、アスペクト比、または二相の詳しい配置などといった当該構造の具体的なパラメータを変更することによって、プリントする複合物の靱性を調節または最適化することができる。
【0045】
特に
図11Bを参照して、プリントしたバイオミメティクス構造の三点湾曲の結果が示される。真珠層構造は寸法が48mm(L)、6mm(W)、6mm(t)であってG70の軟らかい材料を51%有し、ブーリガン構造は寸法が56mm(L)、6mm(W)、6mm(t)であってG70の軟らかい材料(G70)が48%であった。三点湾曲装置はスパンが32mmであり、真珠層構造およびブーリガン構造の破壊靭性はそれぞれ166Kpa m
0.5および146Kpa m
0.5であり、これと比較して、G0のバルク硬化試料の破壊靭性は42Kpa m
0.5であった。よって、真珠層構造およびブーリガン構造はG0の硬化バルク試料よりも約3~4倍大きな破壊靭性を呈し、樹脂150のg-DLP 3Dプリントは、様々なバイオミメティクス構造を試験する構想に適した性能を示すものである。
【0046】
図12~
図15を参照して、膨らませることのできる複雑な構造を形成するための樹脂150のg-DLP 3Dプリントが示される。膨らませることができるというのは、多くの用途において望ましい特性ではあるが、多くの場合には材料を1種だけ使用するために設計領域(design space)が限定され、複数種の材料を使用して3Dプリントによって複雑に膨らませるためには、典型的には複数の材料タンクが必要となる、または複数種の印刷プリント技術を組み合わせることが必要なこともある。一方、樹脂150は、1つの樹脂バットを使用して、軟らかくて伸張性のあるマトリックスの中のどこにでも硬い含有物を加えることができ、ひいては、他の技術では容易に達成できない、膨らませることのできる多様な設計を提供できる。
【0047】
図12A~
図12Bを参照して、実際のフグが膨らむ前後の写真が
図12A中に示され、樹脂150を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造したバイオミメティクスフグの写真が
図12B中に示される。
図12B中の黒い点線は材料切替領域を表しており、点線より上の材料はG0グレースケールでプリントし、点線より下の材料はG60グレースケールでプリントしてある。そして、バイオミメティクスフグの内側に30kPaの内圧がかかると、バイオミメティクスフグの剛性の本体部分(上部)が少し膨らみ、バイオミメティクスフグの軟らかい腹部(下部)は最初の体積の約10倍に膨らんで、実際のフグの挙動を模倣できた。
【0048】
図13A~
図13Dを参照して、樹脂150を使用してg-DLP 3Dプリンタで製造した4通りのパターンの膜構造についての、写真とFEAシミュレーションが示される。各設計とも、底部に剛性のキャップを有し上部に軟らかい膜を有する浅い剛性の円筒体を有していた。
図13Aは、軟らかい膜に剛性のパターンが加えられていないものを示しており、これは、デフォルトの膨張状態を表し、1種の材料で作製した膨らまし可能な膜では、典型的にはこれが限界である。
図13Bは、1つの硬いリングが軟らかい膜の中に埋め込まれた設計を示す。内圧によって、円筒体の端と硬いリングの外径との間で軟らかい材料が膨らみ、これによって、硬いリングが持ち上がった。この硬いリングは、弾性が比較的大幅に高いために、それ自体は変形しなかった。硬いリングの内側には軟らかい膜でできた別の区画があり、内圧によって、これも持ち上がった。
図13Cは、4つの薄くて硬い同軸リングを有する設計を示す。これらの硬いリングは、軟らかい膜が外に向かって膨らむのを妨げたが、軟らかい膜が上に向かって膨らむのは阻止しなかった。このために最終的な変形形状が比較的円錐形となり、これは、
図13A中に示される単純な軟らかい膜が球状となるのとは大きく異なっていた。
図13Dは、軟らかい膜上にプリントされた4つの同軸の硬い1/3円形を有する設計を示す。
図13D中に示される軟らかい膜の左側は硬い繊維を有し、そのために軟らかい膜の形状が概して線状となっており、一方、軟らかい膜の右側は自由であって球状となり、そのために非対称形に膨らんだ。この膨らまし実験はFEAシミュレーションとよく合致しており、
図13A~
図13D中には4通りの設計のみが示されているが、樹脂150を使用すれば、これら以外の膨らまし可能な膜加工も容易に達成できるということが理解されるべきである。
【0049】
図14A~
図14Dを参照して、g60の伸張性の気密円筒形マトリックスの中にG0の硬い繊維が埋め込まれた、4通りの異なる設計が示される。これらの4通りの設計は、30kPaの内圧をかけることによって、拡張、ねじれ、収縮、および湾曲という4通りの基本的な動きを達成できる。モノリシックなg-DLP 3Dプリントによる軟らかいアクチュエータ(樹脂150を使用)においてこれらの基本的な動きを重ねる順序とその組み合わせとによって、高度な変形をもたらすことができる。
図14Aは、G60の軟らかいチューブの長さに沿ってG0の硬いリングが配置されている拡張設計を示す。G0の硬いリングがないと、G60の軟らかいチューブは、膨らんだときに主として外に向かって変形すると考えられるが、薄いG0の硬いリングが、外に向かって膨らむのを妨げる。そして、このG0の硬いリング同士はつながっていないため、アクチュエータはその長さ方向に非常に容易に思い通りとなり、その結果、加圧下ではその長さが大幅に伸びた。
図14Bは、G60の軟らかいチューブの長さに沿ってG0の硬いリングが配置されていてアクチュエータが拡張できる、拡張設計の改変である。しかしながら、G60の軟らかいチューブの一方の側面に1本のG0の硬い繊維を加えることによって、非対称の抑制がアクチュエータにかかり、湾曲する動きが生じた。
【0050】
図14Cは、2つのG0のエンドキャップの間にG0の硬い繊維がまっすぐ伸びている縮み設計を提示する。加圧下において、G0の硬い繊維が外に向かって曲がったが、長さにおける変化には耐えた。これによって、図示されるように、湾曲しているG0の硬い繊維によって、2つのG0のエンドキャップが引っ張られて互いに近づいた。
【0051】
図14Dは、G60の軟らかいチューブの頂部と底部との間でらせんを描く2つのらせん状のG0の硬いリング(繊維)を有するねじれ設計を示す。こちらも、G60の軟らかいチューブが外に向かって放射状に膨らむのをG0の硬いリングが妨げ、らせん状部構造が巻き戻ることによって垂直方向に伸びるものであった。そして、図中の矢印で示されるように、らせん状部構造の「巻き戻り」によってねじれ設計アクチュエータがねじれた。これらのアクチュエータ設計を組み合わせることによって、ソフトロボティクスおよびバイオミミクリーなどの複雑な用途に使用できるということが理解されるべきである。
【0052】
図15A~
図15Dを参照して、湾曲およびねじれを呈する触手様のアクチュエータが示される。
図15A中に示されるアクチュエータを膨らませると、設計された通りにかつ
図15B中に示されるように、当該アクチュエータが徐々に巻いて2つの円形をつくり、このようにして、触手がものを掴む動きを模倣する。
図15Cには、マーカーペン(重量8.5g)を握っているアクチュエータ(重量5g)が示され、
図15Dには、重量14gのプラスチック遠心分離管を握っているアクチュエータが示され、よって、ゾウの鼻のように機能する。以前のグリッパー設計には典型的には2本または3本の指が必要であったが、それと比較して、樹脂150により実現したアクチュエータまたはグリッパーによれば、より単純な設計が可能となる、またはもたらされる。そして、繊維の向きおよび密度を容易に変更することによって、膨らませた触手の形状および動きを変えられるということが理解されるべきである
上述される説明は本質的に単なる例示であり、本開示または本開示の用途もしくは使用の限定を意図するものではない。本明細書中で用いられる、A、B、およびCの少なくとも1種(1つ)という表現は、非排他的な論理「または」を使用した「AまたはBまたはC」という論理を意味すると解釈されるべきである。ある方法に含まれる多様な工程が異なる順序で行なわれても本開示の原理は変更されないことが理解されるべきである。範囲の開示は、範囲全体に含まれる個々の範囲と個々の細分された範囲とのすべてが開示されていることを含む。
【0053】
本明細書中において用いられる見出し(たとえば「背景」および「概要」など)および小見出しは、本開示内容の範囲に含まれるトピックを概括的に整理することのみを意図するものであって、本技術またはその任意の態様の開示内容を限定することを意図するものではない。説明された特徴を有する複数の形態または変形例についての記載は、さらなる特徴を有する他の形態または変形例、または説明された特徴の別の組み合わせを組み込んだ他の形態または変形例の除外を意図するものではない。
【0054】
本明細書中において使用される場合、本明細書中における数値に関連する「約」および「一般的に」という用語は、言及されている量について知られている営利目的のおよび/または実験による測定におけるばらつきまたは公差を指す。いくつかの変形例において、このような既知の営利目的のおよび/または実験による測定公差は測定値+/-10%であり、その他の変形例においては、このような既知の営利目的のおよび/または実験による測定公差は測定値+/-5%であり、さらに他の変形例においては、このような既知の営利目的のおよび/または実験による測定公差は測定値+/-2.5%である。そして、少なくとも1つの変形例において、このような既知の営利目的のおよび/または実験による測定公差は測定値+/-1%である。
【0055】
本明細書で用いられる「備える」および「含む」という用語ならびにそれらの変形は非限定を意図しており、項目の連続的な記載または列記は、本技術のデバイスおよび方法において有用であってもよい他の類似の項目を除外するものではない。同様に、「できる(し得る)」「して(も)よい」という用語ならびにそれらの変形は非限定を意図しており、ある形態または変形例が特定の要素または特徴を含み得るまたは含んでよいという記載は、こうした要素または特徴を含んでいない、本発明に係る技術の他の形態または変形例を除外しない。
【0056】
本開示の広範な教示内容は、多様な形態において実施することができる。したがって、本開示は具体例を含むが、当業者が明細書および下記の請求項を研究することにより他の改変が明らかとなるため、本開示の真の範囲は、本開示に含まれる具体例に限定されるべきではない。本明細書中において一態様または多様な態様に対する言及は、ある形態または変形例に関連して記載される具体的な特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの形態または変形例に含まれることを意味する。「一変形例において」または「一形態において」という表現(またはその変形)が記載される場合、これは必ずしも同一の形態または変形例を指すものではない。また、本明細書中に記載される多様な方法ステップは、記載される順序と同じ順序での実施が必須というわけではないこと、および、方法ステップの各々が各形態または変形例において必要だというわけではないことが理解されるべきである。
【0057】
上述される形態または変形例の説明は、例示および説明の目的で提供される。網羅的であることも、本開示を限定することも意図していない。具体的な一形態または一変形例の個々の要素または特徴は、一般的にはその具体的な形態または変形例に限定されず、適切な場合には、具体的な表記または記載がなくても、交換可能であり、かつ選択された形態または変形例において使用できる。また、具体的な一形態または一変形例の個々の要素または特徴は、様々に変更されてもよい。このような変更は、本開示の範囲からの逸脱であるとみなされるべきではなく、このような改変はすべて、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0058】
具体的な形態または変形例が上述されているが、現時点では予見されていないまたは予見され得ない代替物、改変物、変更物、改善物、および実質的等価物が、出願人らまたはその他の当業者には想起され得る。したがって、出願時および補正後の付属の請求項は、このような代替物、改変物、変更物、改善物、および実質的等価物のすべてを包含することを意図する。