(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178972
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】キャピラリおよびマニピュレータシステム
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093501
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022091374
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023001178
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小口 寿明
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕基
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AA17
2F051AB09
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出すること。
【解決手段】キャピラリ7は、本体10と、本体10の周側面に配置されている膜状の電気抵抗体20と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の本体と、
前記本体の周側面に配置されている膜状の電気抵抗体と、を備える、
キャピラリ。
【請求項2】
前記電気抵抗体は、前記本体の周側面における周方向の一部に配置されている、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項3】
前記本体において、前記電気抵抗体が配置されている部位の外径は、前記電気抵抗体よりも基端側にある部位の外径以下である、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項4】
前記本体において、前記電気抵抗体が配置されている部位の外径は、基端側から先端側に向かうほど小さくなる、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項5】
前記本体は、前記電気抵抗体よりも先端側に折り曲げ部を有している、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項6】
前記本体は、先端に開口を有している、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項7】
前記電気抵抗体の材料は、窒化クロムである、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項8】
前記電気抵抗体は、前記電気抵抗体の電気抵抗の変化を検出する計測器と第1接続点および第2接続点で電気的に接続され、
前記第1接続点および前記第2接続点は、前記本体の軸線方向において前記電気抵抗体の両端より内側に位置する、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項9】
前記本体に生じるひずみが最大となる位置は、前記本体の軸線方向において前記第1接続点と前記第2接続点との間にある、
請求項8に記載のキャピラリ。
【請求項10】
前記本体に生じる最大ひずみに対する、前記本体の軸線方向において前記第1接続点と前記第2接続点との間にある前記本体に生じるひずみの割合は、80%以上である、
請求項8に記載のキャピラリ。
【請求項11】
前記本体において、前記電気抵抗体が配置されている部位、および、前記電気抵抗体が配置されている部位から先端側の部位は、前記本体の軸線に沿って延びており、
前記先端側の部位は、先端で周側面と交差し、前記本体の軸線に対して傾斜する傾斜面を有している、
請求項1に記載のキャピラリ。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載のキャピラリを有する、マニピュレータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャピラリおよびマニピュレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジ分野において、微小な対象物に微細な操作を行うマニピュレータシステムが知られている。例えば、特許文献1のマニピュレータシステムは、ハンドルを操作してピペットやキャピラリ等の操作部材の姿勢および移動などを制御する。
【0003】
特許文献1に開示されているマニピュレータシステムにおいて、微小な対象物の弾力などの計測を荷重計測によって行う際には、例えば、特許文献2に開示されているAFMカンチレバーを用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-205370号公報
【特許文献2】特開平11-14641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マニピュレータシステムにおいては、例えば、微小な対象物である細胞にキャピラリを差し込んでDNA(deoxyribonucleic acid)などを注入するインジェクションなどの操作が行われる。しかしながら、AFMカンチレバーでは、カンチレバーに作用する力を検出できるが、細胞にキャピラリを差し込む際のキャピラリに作用する力を直接的に検出することができず、精度よく検出することができない。
【0006】
本開示の態様は、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は、管状の本体と、前記本体の周側面に配置されている膜状の電気抵抗体と、を備える、キャピラリを提供する。
【0008】
本開示の態様によれば、キャピラリによる対象物の操作時に、キャピラリに作用する力によって本体が変形することで電気抵抗体の電気抵抗が変化する。よって、本体ひいてはキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【0009】
本開示の態様によれば、前記電気抵抗体は、前記本体の周側面における周方向の一部に配置されている。
【0010】
これにより、キャピラリによる対象物の操作時に、本体が屈曲して電気抵抗体に延びおよび圧縮の一方が生じるように、電気抵抗体を本体に配置することができる。よって、本体ひいてはキャピラリに作用する力に応じて、電気抵抗体の電気抵抗が適切に変化する。したがって、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【0011】
本開示の態様によれば、前記本体において、前記電気抵抗体が配置されている部位の外径は、前記電気抵抗体よりも基端側にある部位の外径以下である。
【0012】
これにより、キャピラリによる対象物の操作時に、電気抵抗体が配置されている本体の部位が確実に変形する。よって、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【0013】
本開示の態様によれば、前記本体において、前記電気抵抗体が配置されている部位の外径は、基端側から先端側に向かうほど小さくなる。
【0014】
これにより、キャピラリによる対象物の操作時に、電気抵抗体が配置されている本体の部位がより確実に変形する。よって、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。また、外径が基端側から先端側に向かうほど小さくなる先細り形状は、キャピラリの製造を簡便にすることができる。
【0015】
本開示の態様によれば、前記本体は、前記電気抵抗体よりも先端側に折り曲げ部を有している。
【0016】
これによれば、本体に折り曲げ部があることで、キャピラリによる対象物の操作時に、キャピラリに作用する力によって電気抵抗体が配置されている本体の部位を適切に変形させることができる。よって、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【0017】
本開示の態様によれば、前記本体は、先端に開口を有している。
【0018】
これによれば、キャピラリは、対象物が細胞である場合に、細胞に対してDNAを注入するインジェクションなどの操作を行うことができる。
【0019】
本開示の態様によれば、前記電気抵抗体の材料は、窒化クロムである。
【0020】
窒化クロムの電気抵抗は比較的大きく、電気抵抗体の発熱量を比較的小さくすることができる。よって、例えば対象物が細胞である場合におけるキャピラリに作用する力の検出時において、細胞および培養液への熱的影響を抑制することができる。したがって、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【0021】
本開示の態様によれば、前記電気抵抗体は、前記電気抵抗体の電気抵抗の変化を検出する計測器と第1接続点および第2接続点で電気的に接続され、前記第1接続点および前記第2接続点は、前記本体の軸線方向において前記電気抵抗体の両端より内側に位置する。
【0022】
キャピラリに力が作用した場合に電気抵抗体が配置されている本体の部位に生じるひずみは、軸線方向において電気抵抗体の両端側より電気抵抗体の中央部の方が大きい。よって、軸線方向において電気抵抗体の両端に第1接続点および第2接続点が位置する場合と比べて、軸線方向において電気抵抗体の両端より内側に第1接続点および第2接続点が位置する場合、キャピラリに作用する力に対する電気抵抗体の電気抵抗の変化が増大し、計測器の測定電圧を増大させることができる。つまり、キャピラリの感度を増大させることができる。したがって、キャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【0023】
本開示の態様によれば、前記本体に生じるひずみが最大となる位置は、前記本体の軸線方向において前記第1接続点と前記第2接続点との間にある。
【0024】
これによれば、キャピラリに作用する力に対する電気抵抗体の電気抵抗の変化が確実に増大し、キャピラリの感度を確実に増大させることができる。
【0025】
本開示の態様によれば、前記本体に生じる最大ひずみに対する、前記本体の軸線方向において前記第1接続点と前記第2接続点との間にある前記本体に生じるひずみの割合は、80%以上である。
【0026】
これによれば、キャピラリに作用する力に対する電気抵抗体の電気抵抗の変化がより確実に増大し、キャピラリの感度をより確実に増大させることができる。
【0027】
本開示の態様によれば、前記本体において、前記電気抵抗体が配置されている部位、および、前記電気抵抗体が配置されている部位から先端側の部位は、前記本体の軸線に沿って延びており、前記先端側の部位は、先端で周側面と交差し、前記本体の軸線に対して傾斜する傾斜面を有している。
【0028】
これによれば、本体において電気抵抗体が配置されている部位から先端までは、本体の軸線に沿って直線状に延びている。よって、本体が電気抵抗体よりも先端側に折り曲げ部を有している場合と比べて、キャピラリは本体の軸線に沿って対象物に荷重をかけ易くすることができ、対象物にかける荷重を大きくすることができる。また、先端側の部位が先端で周側面と交差する傾斜面を有することで、キャピラリを先鋭にすることができ、キャピラリの先端を対象物に差し込みやすくすることができる。
【0029】
本開示の態様によれば、マニピュレータシステムは、上記のキャピラリを有する。
【0030】
これによれば、マニピュレータシステムは、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示の態様によれば、キャピラリによる対象物の操作時にキャピラリに作用する力を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るマニピュレータシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るキャピラリを模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、キャピラリの先端部の部分拡大断面図である。
【
図4】
図4は、キャピラリの先端側から見たキャピラリの部分側面図である。
【
図5】
図5は、第3軸線に沿う検出部および電気抵抗体の断面図である。
【
図6】
図6は、キャピラリに力が作用することで検出部に生じるひずみを示す図である。
【
図7】
図7は、キャピラリおよび計測器の電気回路図を示す図である。
【
図8】
図8は、第3軸線と直交する検出部の断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の第1変形例に係るキャピラリの部分側面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の第2変形例に係るキャピラリの部分側面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の第3変形例に係るキャピラリの部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0034】
<マニピュレータシステム>
図1は、本実施形態に係るマニピュレータシステム1の構成を示す図である。マニピュレータシステム1は、例えば一対のマニピュレータ2,3、顕微鏡ユニット4、および、制御装置5を備えている。一対のマニピュレータ2,3および制御装置5は、作業台(不図示)に配置されている。
【0035】
マニピュレータ2は、キャピラリ6を先端部で保持するピペット2a、ピペット2aをZ軸方向に沿って移動させるZ軸テーブル2b、および、ピペット2aをX軸方向およびY軸方向に沿って移動させるX-Y軸テーブル2cを備えている。
【0036】
Z軸テーブル2bは、Z軸駆動装置2dによりピペット2aの先端にあるキャピラリ6を上下動させることができる。また、X-Y軸テーブル2cは、X-Y軸駆動装置2eによりピペット2aの先端にあるキャピラリ6をX方向及びY方向に移動させることできる。また、ピペット2aとZ軸テーブル2bとの間には、圧電アクチュエータ(不図示)が設けられており、ピペット2aをZ軸テーブル2bに対してピペット2aの軸線方向に沿って微動させることができる。
【0037】
マニピュレータ3は、マニピュレータ2と同様に、キャピラリ7、ピペット3a、Z軸テーブル3b、X-Y軸テーブル3c、Z軸駆動装置3d、X-Y軸駆動装置3eを備えている。マニピュレータ2は、例えばキャピラリ6によって後述する対象物Tを保持するために用いられ、マニピュレータ3は、例えばキャピラリ7によって対象物Tを操作するために用いられる。
【0038】
顕微鏡ユニット4は、例えば撮像手段としてのカメラ4a、および、顕微鏡4bを備えている。これにより、作業台上の対象物Tを撮影したり拡大して観察したりすることができる。なお、顕微鏡ユニット4に、対象物Tに光を照射する光源を設けてもよい。
【0039】
作業台は、マニピュレータ2、3の中央に設けられ、例えば対象物Tが収容されたシャーレ8などを固定できる。
【0040】
制御装置5は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、所定プログラムに基づいて各種制御を実行できる。例えば、制御装置5は、Z軸駆動装置2d,3d、X-Y軸駆動装置2e,3eを駆動させることで、キャピラリ6,7の移動を制御する。
【0041】
また、制御装置5は、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を算出する計測器5aを備えている。計測器5aの詳細は後述する。なお、マニピュレータシステム1は、計測器5aを制御装置5と別体に備えてもよい。
【0042】
<キャピラリ>
図2は、本実施形態に係るキャピラリ7を模式的に示す側面図である。
図2に示すキャピラリ7は、対象物Tを操作するためのキャピラリである。キャピラリ7は、細胞などの対象物Tに対する操作時において、キャピラリ7に作用する力を検出する。対象物Tは、細胞のほかに、例えば、シリコンゴムビーズなどの弾性体、ならびに、スフェロイドおよびオルガノイドなどの粘弾性体である。キャピラリ7は、本体10および電気抵抗体20を備えている。
【0043】
本体10は、中空の管状であり、例えばガラス製である。なお、本体10の材料は、ガラスに限定されず、電気絶縁性を有する材料であればよい。
【0044】
本体10は、基部11、検出部12、折り曲げ部13および先端部14を有している。基部11、検出部12、折り曲げ部13および先端部14は、本体10の基端側から先端側に向けてこの順に位置し、一体である。
【0045】
基部11は、本体10において、電気抵抗体20よりも基端側にある部位である。基部11は、第1基部11a、屈曲部11b、および、第2基部11cを有している。第1基部11a、屈曲部11bおよび第2基部11cは、キャピラリ7の基端側から先端側に向けてこの順に位置し、一体である。第1基部11aの外径と第2基部11cの外径とはほぼ等しい。第1基部11aの第1軸線A1と第2基部11cの第2軸線A2とは、側面視で交差している。第1基部11aは、第1基部11aの第1軸線A1とピペット3aの軸線とが互いにほぼ平行である状態で、ピペット3aに保持される。
【0046】
検出部12は、本体10において、電気抵抗体20が配置される部位である。検出部12の外径は、基部11の外径以下である。これにより、検出部12の曲げ剛性は、基部11の曲げ剛性より低い。また、検出部12の外径は、本体10の基端側から先端側に向かうほど小さくなる。つまり、検出部12は、先細り形状であり、検出部12の曲げ剛性は、本体10の基端側から先端側に向かうほど小さくなる。検出部12の第3軸線A3は、第2軸線A2とほぼ同軸であり、
図2において、第2軸線A2と重ねて示されている。
【0047】
折り曲げ部13は、本体10において、電気抵抗体20よりも先端側で、折れ曲がっている部位である。
【0048】
先端部14は、本体10による対象物Tの操作時に対象物Tと接触する。先端部14の外径は、本体10の基端側から先端側に向かうほど小さくなる。つまり、先端部14は、先細り形状である。先端部14の第4軸線A4は、第3軸線A3と側面視で交差(本実施形態では直交)しており、第1基部11aの第1軸線A1とほぼ平行である。また、上記のように、第1基部11aは、第1軸線A1とピペット3aの軸線とが互いにほぼ平行である状態で、ピペット3aに保持されている。これにより、第1基部11aを操作することで、先端部14の姿勢および位置を、直感的に所望の姿勢および所望の位置にすることができる。
【0049】
図3は、キャピラリ7の先端部14の部分拡大断面図である。先端部14の先端、すなわち、本体10の先端は、開口14aを有している。これにより、先端部14の先端に対象物Tを接触させた状態で本体10の内側を負圧にすることで対象物Tを保持したり、先端部14の先端を対象物Tに差し入れて、DNAなどを対象物Tに注入するインジェクションなどの操作をしたりすることができる。なお、先端部14の先端の外径は、およそ20μmであり、開口14aの内径は、およそ15μmである。
【0050】
本体10は、ガラス管に対して延伸加工および曲げ加工などの加工処理によって製造される。なお、本体10の形状は、上記の形状に限定されず、例えば、基部11は、屈曲部11bを有さずに、真っ直ぐな形状でもよい。また、本体10は、中空の管状でなくてもよく、例えば、中実の針状、および、柱状でもよい。この場合、本体10は、開口14aを有さない。さらに、本体10の断面形状は、角部を有してもよい。
【0051】
図2に示す電気抵抗体20は、膜状であり、検出部12に配置されている。電気抵抗体20の材料は、窒化クロムである。なお、電気抵抗体20の材料は、これに限定されず、例えば銅ニッケル合金やニッケルクロム合金の様な材料でもよい。
【0052】
電気抵抗体20は、検出部12の周側面に配置されている。電気抵抗体20は、検出部12の周側面における周方向の一部に配置されている。具体的には、電気抵抗体20は、
図2に示す側面視において、検出部12の周側面における先端部14が位置する側に配置されている。電気抵抗体20は、検出部12の第3軸線A3に沿って長手方向に延びるように配置されている。
【0053】
図4は、キャピラリ7の先端側から見たキャピラリ7の部分側面図である。キャピラリ7の先端側から見たキャピラリ7の側面視において、電気抵抗体20は、第3軸線A3を対称軸とするほぼ線対称形状である。電気抵抗体20は、例えばスパッタリング法によって検出部12の外表面に形成される。
【0054】
図2に示すように、電気抵抗体20は、第3軸線A3において互いに離れている第1接続点P1および第2接続点P2で第1配線L1および第2配線L2を介して計測器5aと電気的に接続されている。第1配線L1および第2配線L2は、例えばシールドケーブル、および、金属製(例えば金や銅)のワイヤなどである。第1配線L1および第2配線L2と電気抵抗体20との接続は、ワイヤボンディングによって行われる。なお、第1配線L1および第2配線L2と電気抵抗体20とを銀ペーストを用いて接続してもよい。
【0055】
図5は、第3軸線A3に沿う検出部12および電気抵抗体20の断面図である。
図4および
図5に示すように、第1接続点P1および第2接続点P2は、第3軸線A3において電気抵抗体20の両端より内側に位置する。
図5に示す第1端点20aは電気抵抗体20の基端側の端点、第2端点20bは電気抵抗体20の先端側の端点である。つまり、第1接続点P1および第2接続点P2は、第3軸線A3において第1端点20aと第2端点20bとの間に位置する。
【0056】
図6は、キャピラリ7に力が作用することで検出部12に生じるひずみを示す図である。
図6の横軸は検出部12における第3軸線A3方向(第3軸線A3に沿う方向)の位置を示している。また、
図6は、本体10をモデル化して行われる有限要素法(FEM:Finite Element Method)などの数値シミュレーションの結果を示している。
【0057】
当該数値シミュレーションでは、本体10の基端部を固定端とし、本体10の先端を自由端としており、キャピラリ7に作用する力を本体10の先端(すなわち先端部14の先端)に第4軸線A4に沿って作用させている。これにより、検出部12は先端部14側が凸となる状態で屈曲し、検出部12にひずみが生じる。
【0058】
検出部12において第1端点20aと第1接続点P1との間は、第1接続点P1と第2接続点P2との間より本体10の固定端側にある。よって、第1端点20aと第1接続点P1との間のひずみは、第1接続点P1と第2接続点P2との間のひずみより小さい。さらに、検出部12において第2接続点P2と第2端点20bとの間は、第1接続点P1と第2接続点P2との間より本体10の自由端側にある。よって、第2接続点P2と第2端点20bとの間のひずみは、第1接続点P1と第2接続点P2との間のひずみより小さい。
【0059】
また、キャピラリ7に力が作用することで検出部12に生じるひずみが最大となる位置(
図6の点M)は、第3軸線A3方向において第1接続点P1と第2接続点P2との間にある。なお、本実施形態において、キャピラリ7に作用する力が100nNである場合、最大ひずみは、およそ0.13×10
-6である。
【0060】
直線SLは、最大ひずみの80%を示す直線である。第1接続点P1および第2接続点P2は、検出部12のひずみを示す線と直線SLとの交点に対応する。キャピラリ7に力が作用した場合に、検出部12に生じる最大ひずみに対する、第3軸線A3方向において第1接続点P1と第2接続点P2との間にある検出部12に生じるひずみの割合は、80%以上である。
【0061】
なお、直線SLは、最大ひずみの85%を示す直線でもよい。この場合、第3軸線A3方向において第1接続点P1と第2接続点P2との間にある検出部12に生じるひずみの最大ひずみに対する割合は、85%以上である。また、直線SLは、最大ひずみの90%を示す直線でもよい。この場合、第3軸線A3方向において第1接続点P1と第2接続点P2との間にある検出部12に生じるひずみの最大ひずみに対する割合は、90%以上である。
【0062】
キャピラリ7に力が作用することで検出部12に生じる最大ひずみεmax(x)は、式(1)で算出することができる。
εmax(x)=4F(x-L)r1(x)/[πE(r1(x)4-r2(x)4)]…(1)
【0063】
式(1)において、xは、第3軸線A3の座標である。Lは、第1端点20aから第2端点20bまでの第3軸線A3に沿った検出部12の長さであり、
図6において第1端点20aは、x=0に相当し、第2端点20bは、x=Lに相当する。r
1(x)は、検出部12の外周面の形状を示す関数である。r
2(x)は、検出部12の内周面の形状を示す関数である。Eは、ヤング率である。Fは、検出部12の第2端点20bに作用する力の大きさであり、キャピラリ7の先端に作用する力の大きさに相当する。
【0064】
式(1)は、以下のように導出される。検出部12の断面二次モーメントI(x)は、式(2)で表される。
I(x)=π(r1(x)4-r2(x)4)/4 …(2)
【0065】
また、検出部12が変形したときの検出部12の外周面の変形曲線z(x)とした場合、変形曲線z(x)と断面二次モーメントI(x)との基本関係式は、式(3)、式(4)、および、式(5)で表される。
EI(x)z(x)’’=M(x) …(3)
[EI(x)z(x)’’]’=F(x) …(4)
[EI(x)z(x)’’]’’=ω(x) …(5)
【0066】
式(3)において、M(x)は曲げモーメントである。式(4)においてF(x)はせん断力である。式(5)において、ω(x)は分布荷重である。
【0067】
キャピラリ7に作用する力をFとすると、力Fは、キャピラリ7の先端に作用しており、集中荷重である。よって、ω(x)=0であり、F(x)=Fである。したがって、式(4)は、式(5)に基づいて式(6)のように表される。
[EI(x)z(x)’’]’=F …(6)
【0068】
さらに、第2端点20bは本体10の自由端側に相当するため、M(x=L)=0となる。よって、式(3)は、式(6)に基づいて式(7)のように表される。
EI(x)z(x)’’=F(x-L) …(7)
【0069】
さらに、式(2)および式(7)から、式(8)が導出される。
z(x)’’=4F(x-L)/[πE(r1(x)4-r2(x)4)] …(8)
【0070】
本実施形態では、検出部12の長さLに対して力Fによって生じる変位(検出部12の外周面の変位)が微小である。よって、式(8)のz(x)’’は、z(x)の曲率(すなわち曲率半径の逆数)に相当し、変位を表す。よって、検出部12の外周面での最大ひずみεmax(x)は、式(9)で表すことができる。式(8)および式(9)から式(1)を導出することができる。
εmax(x)=r1(x)z(x)’’ …式(9)
【0071】
図7は、キャピラリ7および計測器5aの電気回路図を示す図である。
図7に示す抵抗器Raは、電気抵抗体20を抵抗器として表したものであり、第1接続点P1および第2接続点P2との間の電気抵抗体20の電気抵抗を有する。計測器5aは、キャピラリ7に作用する力によって生じる電気抵抗体20の電気抵抗の変化すなわち抵抗器Raの電気抵抗の変化を検出する。計測器5aは、電気抵抗体20の電気抵抗の変化に基づいて、キャピラリ7に作用する力を算出する。計測器5aは、抵抗器Raとともにブリッジ回路5bを構成する複数の抵抗器Rbおよび記憶回路(不図示)を有する。
【0072】
ブリッジ回路5bは、例えばホイーストンブリッジ回路である。記憶回路には、電気抵抗体20のゲージ率、および、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力と検出部12のひずみとの相関関係が予め記憶されている。この相関関係は、例えば有限要素法(FEM:Finite Element Method)などの数値シミュレーションによって導出される。また、予めキャピラリ7に実際に力を作用させ、その力とひずみの関係を取得しておいても良い。
【0073】
計測器5aは、キャピラリ7による対象物Tの操作時に検出部12が変形することによって生じる抵抗器Raの電気抵抗の変化をブリッジ回路5bにける点aと点bとの間の電圧の変化として検出する。そして、計測器5aは、この抵抗器Raの電気抵抗の変化すなわち点aと点bとの間の電圧の変化、上記のゲージ率および相関関係を用いて、検出部12に生じたひずみ、ひいては、キャピラリ7に作用する力を算出する。
【0074】
次に、キャピラリ7に作用する力Fと測定電圧との関係の一例について説明する。
図8は、第3軸線A3と直交する検出部12の断面図である。キャピラリ7に作用する力Fは、第3軸線A3と交差する第4軸線A4に沿って本体10の先端に作用する。
【0075】
電気抵抗体20がスパッタリング法によって形成されている場合、
図8に示すように、電気抵抗体20の周方向中央部の厚みは、電気抵抗体20の周方向両端部の厚みより厚い。具体的には、
図8において第4軸線A4を基準方位とした第3軸線A3まわりの角度をθとした場合、電気抵抗体20の厚みtは、式(10)で表すことができる。なお、厚みtは、第3軸線A3に沿う方向において一定である。
t=dcosθ …(10)
【0076】
図8の時計回り方向がθの正の方向であり、
図8の反時計回り方向がθの負の方向である。式(10)において、θは-90°以上90°以下である。dは、θ=0°のときの電気抵抗体20の厚みである。
【0077】
第1接続点P1と第2接続点P2との間の電気抵抗体20の電気抵抗Rtotalは、式(11)で表すことができる。
Rtotal=(ρs/2d)∫[1/r1(x)]dx …(11)
【0078】
式(11)において、ρsは、電気抵抗体20の比抵抗である。式(11)の導出方法は後述する。
【0079】
さらに、検出部12にひずみが生じたときの電気抵抗Rtotalの電気抵抗変化ΔRtotalは、式(12)で表すことができる。
ΔRtotal/Rtotal
=K(2/π)∫[εmax(x)][r1(x)]-1dx/∫[r1(x)]-1dx…(12)
【0080】
式(12)において、Kは電気抵抗体20のゲージ率である。式(12)の導出方法は後述する。
【0081】
そして、
図7に示すブリッジ回路5bの入力電圧Vおよび測定電圧e(点aと点bとの間の電圧)を用いて、電気抵抗変化ΔR
totalは、式(13)で表すことができる。
e/V=(1/4)ΔR
total/R
total …(13)
【0082】
上記の式(1)、式(12)および式(13)を用いて力Fから測定電圧eを算出することができ、キャピラリ7の感度(すなわち力Fに対する測定電圧eの大きさ)を把握することができる。
【0083】
なお、式(11)は、以下のように導出される。検出部12の外表面のひずみは、式(14)で表される。式(14)において、εmax(x)は、検出部12におけるθ=0°の位置のひずみに相当する。
ε(x,θ)=εmax(x)cosθ …(14)
【0084】
また、電気抵抗体20の厚みは、上記の式(10)で表され、電気抵抗体20における第3軸線A3方向に沿う微小長さleの微小角度dθあたりの電気抵抗Re(x,θ)は、式(15)で表される。
Re(x,θ)=ρsle/[d・r1(x)cosθ・dθ] …(15)
【0085】
また、電気抵抗体20は、検出部12の周方向において微小角度dθあたりの電気抵抗体20が電気的に並列に接続されて一体となっている状態であり、θが-90°から90°までの微小長さleあたりの電気抵抗体20のコンダクタンスGeは、式(16)で表される。
Ge=∫d・r1(x)cosθ・dθ/(ρsle)=2r1(x)d/(ρsle)…(16)
【0086】
よって、微小長さleあたりの電気抵抗体20の電気抵抗Re(x)は、式(16)の逆数であり、式(17)で表される。
Re(x)=(ρsle)/[2r1(x)d] …(17)
【0087】
したがって、第1接続点P1から第2接続点P2まで式(17)を積分すること式(11)が導出される。
【0088】
また、式(12)は、以下のように導出される。ひずみεと電気抵抗Rと電気抵抗変化ΔRとの基本関係式は、式(18)で表される。式(18)において、Kは電気抵抗体20のゲージ率である。
ΔR/R=Kε …(18)
【0089】
また、電気抵抗体20の微小長さleあたりの電気抵抗変化ΔRe(x)は、式(15)および式(18)に基づいて導出される式(19)を変形させた式(20)で表される。
1/ΔRe(x)=1/K[εmax(x)ρsle]-1dr1(x)∫dθ
=π/K[εmax(x)ρsle]-1dr1(x) …(19)
ΔRe(x)=K[εmax(x)ρsle][πdr1(x)]-1 …(20)
【0090】
さらに、第1接続点P1から第2接続点P2まで式(20)を積分することで電気抵抗体20の電気抵抗変化ΔRtotalを示す式(21)が得られる。
ΔRtotal
=(Kρs/πd)∫[εmax(x)][r1(x)]-1dx …(21)
【0091】
上記の式(11)および式(21)から、式(12)を導出することができる。
【0092】
次に、対象物Tの操作時におけるキャピラリ7の動作について、
図2を用いて説明する。対象物Tが細胞であり、キャピラリ7の先端を細胞に差し込んで、例えばDNAを細胞に注入するインジェクションが行われる場合について説明する。
【0093】
第1基部11aがピペット3aによって保持された状態でキャピラリ7が操作される。具体的には、キャピラリ7は、先端部14の先端が対象物Tに向いた状態で第4軸線A4に沿って移動し、開口14aと対象物Tとが接触する。さらに、キャピラリ7が第4軸線A4に沿って移動することで、先端部14が対象物Tに差し込まれる。
【0094】
このとき、対象物Tからの力(すなわちキャピラリ7に作用する力)が第4軸線A4に沿って先端部14に作用する。先端部14は、第4軸線A4に沿う形状であり、変形することが抑制される。よって、対象物Tからの力は、先端部14の変形にはたらくことが抑制された状態で、先端部14を介して、折り曲げ部13ひいては検出部12に作用する。具体的には、対象物Tからの力は、第4軸線A4に沿って、すなわち、第3軸線A3と交差する方向に沿って、検出部12における折り曲げ部13側の端に作用する。
【0095】
また、上記のように検出部12の曲げ剛性は、基部11の曲げ剛性より低い。したがって、対象物Tからの力によって、基部11が屈曲することが抑制され、先端部14が位置する側が凸となるように検出部12が屈曲する。さらに検出部12は先細り形状である。これにより、検出部12にひずみが生じ、電気抵抗体20が基端側および先端側の両側に引っ張られて延びる。つまり、電気抵抗体20の電気抵抗すなわち抵抗器Raの電気抵抗は、大きくなる。この電気抵抗の変化によって、上記のように計測器5aによってキャピラリ7に作用する力が算出される。
【0096】
このように、対象物Tからの力によって検出部12ひいては電気抵抗体20が適切に変形することで、キャピラリ7は、対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を適切に検出する。また、電気抵抗体20の材料である窒化クロムの電気抵抗は比較的大きく、電気抵抗体20の発熱量は比較的小さい。よって、電気抵抗体20に生じる熱の対象物Tへの伝達は抑制される。
【0097】
以上、説明したように、本実施形態によれば、キャピラリ7は、管状の本体10と、本体10の周側面に配置されている膜状の電気抵抗体20と、を備える。
キャピラリ7は、対象物Tを直接的に操作する。よって、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。また、オルガノイドなどの不可逆的な変形をする粘弾性体が対象物Tであるときに、従来のAFMカンチレバーを用いて荷重測定する場合は、キャピラリ7に作用する力の再現性が低い。これに対し、本実施形態のキャピラリ7は、対象物Tを直接的に操作し、対象物Tが粘弾性である場合においても、キャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。
さらに、キャピラリ7は、キャピラリ7に作用する力を検出するとともに、細胞などの微小な対象物Tを操作することができる。例えば、キャピラリ7は、上記のインジェクションの他に、細胞の保持をすることができる。細胞の保持は、開口14aと細胞とが接触した状態で、キャピラリ7内の圧力が負圧となることで行われる。
【0098】
また、本実施形態によれば、電気抵抗体20は、本体10の周側面における周方向の一部に配置されている。
これにより、キャピラリ7による対象物Tの操作時に、電気抵抗体20が延びるように、電気抵抗体20を本体10に配置することができる。よって、キャピラリ7に作用する力に応じて、電気抵抗体20の電気抵抗が適切に変化する。したがって、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、本体10において、電気抵抗体20が配置されている部位すなわち検出部12の外径は、電気抵抗体20よりも基端側にある部位すなわち基部11の外径以下である。
これにより、基部11の曲げ剛性よりも検出部12の曲げ剛性が低くなり、キャピラリ7による対象物Tの操作時に、基部11の変形が抑制され、検出部12が適切に変形する。よって、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、本体10において、検出部12の外径は、基端側から先端側に向かうほど小さくなる。
これにより、検出部12の曲げ剛性は、基端側から先端側に向かうほど小さくなり、キャピラリ7による対象物Tの操作時に、検出部12がより適切に変形する。よって、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。また、外径が基端側から先端側に向かうほど小さくなる先細り形状は、キャピラリ7の製造を簡便にすることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、本体10は、電気抵抗体20よりも先端側に折り曲げ部13を有している。
これによれば、本体10に折り曲げ部13があることで、キャピラリ7による対象物Tの操作時に、先端部14の屈曲が抑制され、対象物Tからの力によって先端部14が位置する側が凸となるように検出部12が適切に屈曲することで、検出部12に適切にひずみを生じさせることができる。よって、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、本体10は、先端に開口14aを有している。
これによれば、キャピラリ7は、細胞へのDNAのインジェクションなどの操作を行うことができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、電気抵抗体20の材料は、窒化クロムである。
窒化クロムの電気抵抗は比較的大きく、電気抵抗体20の発熱量を比較的小さくすることができる。よって、例えば対象物Tが細胞である場合におけるキャピラリ7に作用する力の検出時において、細胞および培養液などへの熱的影響を抑制することができる。したがって、キャピラリ7による対象物Tの操作時にキャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。
【0104】
なお、本実施形態において、キャピラリ7は、電気抵抗体20を保護する電気絶縁性を有する保護膜をさらに備えてもよい。保護膜は、樹脂材料を用いてディップ成形によって形成されてもよいし、二酸化ケイ素および窒化ケイ素などを材料としてスパッタリング法によって形成されてもよい。
【0105】
また、本実施形態によれば、電気抵抗体20は、電気抵抗体20の電気抵抗の変化を検出する計測器5aと第1接続点P1および第2接続点P2で電気的に接続されている。第1接続点P1および第2接続点P2は、第3軸線A3方向において電気抵抗体20の両端より内側に位置する。
キャピラリ7に力が作用した場合に電気抵抗体20が配置されている検出部12に生じるひずみは、第3軸線A3方向において電気抵抗体20の両端側より電気抵抗体20の中央部の方が大きい。よって、第3軸線A3方向において電気抵抗体20の両端に第1接続点P1および第2接続点P2が位置する場合と比べて、第3軸線A3方向において電気抵抗体20の両端より内側に第1接続点P1および第2接続点P2が位置する場合、キャピラリ7に作用する力に対する電気抵抗体20の電気抵抗の変化が増大し、計測器5aの測定電圧を増大させることができる。つまり、キャピラリ7の感度を増大させることができる。したがって、キャピラリ7に作用する力を精度よく検出することができる。
【0106】
また、本実施形態によれば、本体10に生じるひずみが最大となる位置は、第3軸線A3方向において第1接続点P1と第2接続点P2との間にある。
これによれば、キャピラリ7に作用する力に対する電気抵抗体20の電気抵抗の変化が確実に増大し、キャピラリ7の感度を確実に増大させることができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、検出部12に生じる最大ひずみに対する、第3軸線A3方向において第1接続点P1と第2接続点P2との間にある検出部12に生じるひずみの割合は、80%以上である。
これによれば、キャピラリ7に作用する力に対する電気抵抗体20の電気抵抗の変化がより確実に増大し、キャピラリ7の感度をより確実に増大させることができる。
【0108】
次に、本開示の実施形態の変形例に係るキャピラリ7について説明する。
【0109】
図9は、本実施形態の第1変形例に係るキャピラリ7の部分側面図である。第1変形例に係るキャピラリ7の電気抵抗体120は、
図9の側面視において、検出部12の周側面における先端部14が位置する側とは反対側に配置されている。この場合、対象物Tからの力が先端部14に作用すると、検出部12は先細り形状であるため、電気抵抗体120が基端側および先端側の両側から圧縮されて縮むように検出部12が屈曲することで、電気抵抗体120の電気抵抗は小さくなる。
【0110】
なお、検出部12において電気抵抗体20、120が配置される位置および電気抵抗体20、120の形状は、上記の実施形態および第1変形例に示す位置および形状に限定されず、キャピラリ7による対象物Tの操作時に電気抵抗体20、120の電気抵抗すなわち抵抗器Raの電気抵抗に変化が生じる位置および形状であればよい。
【0111】
図10は、本実施形態の第2変形例に係るキャピラリ7の部分側面図である。
図10に示すように、第2変形例に係るキャピラリ7の本体210は、折り曲げ部13を有さない。この場合、検出部12および先端部14は、互いに連続しており、第3軸線A3に沿って延びているこれにより、上記の実施形態のキャピラリ7のように本体10が折り曲げ部13を有する場合と比べて、本第2変形例のキャピラリ7は、第3軸線A3に沿って対象物Tに荷重をかけ易くすることができる。
【0112】
また、先端部14は、先端部14の周側面と先端で交差し、第3軸線A3に対して傾斜する傾斜面214bを有している。傾斜面214bは、平面状である。先端部14が傾斜面214bを有することで、先端部14の先端は尖る。つまり、本第2変形例のキャピラリ7は先鋭である。上記の実施形態のキャピラリ7と比べて、本第2変形例のキャピラリ7は、対象物Tに対して先端を差し込みやすい。本第2変形例において、傾斜面214bは、第3軸線A3回りにおいて電気抵抗体20とは反対側に配置されている。なお、傾斜面214bの位置が上記の位置に限定されないことは言うまでもない。
【0113】
次に、基台Bに配置された対象物Tに先端部14が差し込まれる場合のキャピラリ7の動作について説明する。
【0114】
先端部14が対象物Tに差し込まれると、第3軸線A3と傾斜面214bとのなす角がキャピラリ7の側面視で第3軸線A3と先端部14の周側面とのなす角より大きいことで、先端部14は、傾斜面214b全体が対象物Tに近づく側に倒れる。これにより、第3軸線A3方向において電気抵抗体20が凹状となる状態で検出部12が屈曲(座屈)し、検出部12にひずみが生じる。検出部12に生じたひずみ、および、対象物Tからキャピラリ7に作用する力は、上記の実施形態と同様に算出される。
【0115】
また、上記のように、上記の実施形態のキャピラリ7と比べて本第2変形例のキャピラリ7は第3軸線A3に沿って対象物Tに荷重をかけ易く、キャピラリ7が対象物Tを貫通するまで荷重をかけることができる。よって、キャピラリ7が対象物Tを貫通したときの対象物Tからキャピラリ7に作用する力に基づいて、対象物Tの硬さを把握することができる。また、キャピラリ7が対象物Tに接触したときから対象物Tを貫通するまでの対象物Tの状態を観察することができる。
【0116】
本第2変形例によれば、本体10において、電気抵抗体20が配置されている部位(検出部12)、および、電気抵抗体20が配置されている部位から先端側の部位(先端部14)は、第3軸線A3に沿って延びている。先端部14は、先端で周側面と交差し、第3軸線A3に対して傾斜する傾斜面214bを有している。
これによれば、本体10において電気抵抗体20が配置されている部位(検出部12)から先端までは、第3軸線A3に沿って直線状に延びている。よって、本体10が電気抵抗体20よりも先端側に折り曲げ部13を有している場合と比べて、キャピラリ7は第3軸線A3に沿って対象物Tに荷重をかけ易くすることができ、対象物Tにかける荷重を大きくすることができる。また、先端部14が先端で周側面と交差する傾斜面214bを有することで、キャピラリ7を先鋭にすることができ、キャピラリ7の先端を対象物Tに差し込みやすくすることができる。
【0117】
図11は、本実施形態の第3変形例に係るキャピラリ7の部分側面図である。
図11に示すように、第3変形例に係るキャピラリ7の検出部312の外径は、基部11の外径とほぼ等しく、第3軸線A3に沿ってほぼ一定である。なお、検出部312の外径は、基部11の外径より大きくでもよい。
【0118】
なお、キャピラリ6の構成は、上記のキャピラリ7と同じ構成でもよいし、異なる構成でもよい。例えば、キャピラリ6は、本体10が屈曲部11bおよび折り曲げ部13を有さずに直状でもよいし、電気抵抗体20を有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 マニピュレータシステム
5a 計測器
6,7 キャピラリ
10 本体
11 基部
12 検出部
13 折り曲げ部
14 先端部
14a 開口
20 電気抵抗体
P1 第1接続点
P2 第2接続点
A3 第3軸線(軸線)