(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178977
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】油中水型乳化物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/42 20060101AFI20231211BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20231211BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231211BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231211BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20231211BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231211BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/06
A61K8/44
A61Q17/04
A61K8/31
A61K8/37
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023183579
(22)【出願日】2023-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】391066319
【氏名又は名称】高級アルコール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪内 悠
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB242
4C083AB332
4C083AC011
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC331
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC581
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD152
4C083AD162
4C083BB23
4C083BB24
4C083BB42
4C083BB43
4C083BB46
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】皮膚洗浄料で落としやすく、洗い上がりのすっきり感に優れた油中水型乳化物を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記成分(A)~(C)を含有することを特徴とした油中水型乳化物。
(A)アミドアルコール
(B)塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分
(C)紫外線吸収剤および/または粉体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(I)
【化1】
式中、
R1は、C6~C22炭化水素基であり、
R2は、H、またはC6~C22炭化水素基であり、
R3は、直鎖または分岐鎖C2~C21炭化水素基である、
で表されるアミドアルコール、および
(B)塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分、
(C)紫外線吸収剤および/または粉体
を含む、油中水型乳化物。
【請求項2】
成分(A):(B)のモル比が1:0.1~1:15である、請求項1に記載の油中水型乳化物。
【請求項3】
油性成分として、炭化水素油および/またはエステル油を含む、請求項2に記載の油中水型乳化物。
【請求項4】
成分(B)が1.0重量%以上のアルカリを含む、請求項3に記載の油中水型乳化物。
【請求項5】
成分(B)として塩を含む、請求項3に記載の油中水型乳化物。
【請求項6】
成分(B)として塩基性アミノ酸を含む、請求項3に記載の油中水型乳化物。
【請求項7】
水性成分を60重量%より多く含む、請求項4~6のいずれかに記載の油中水型乳化物。
【請求項8】
カルボキシ基含有高分子を含まないか、または0.01重量%未満のカルボキシ基含有高分子を含む、請求項7に記載の油中水型乳化物。
【請求項9】
界面活性剤を含まないか、または2.0質量%未満の界面活性剤を含む、請求項8に記載の油中水型乳化物。
【請求項10】
酸を含む、請求項9に記載の油中水型乳化物。
【請求項11】
成分(C)が無機顔料または有機顔料からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項10に記載の油中水型乳化物。
【請求項12】
(A)式(I)
【化2】
式中、
R1は、C6~C22炭化水素基であり、
R2は、H、またはC6~C22炭化水素基であり、
R3は、直鎖または分岐鎖C2~C21炭化水素基である、
で表されるアミドアルコール、
さらに(C)紫外線吸収剤および/または粉体を含む油相を調製する工程、
(B)塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む水相を調製する工程、
油相と水相とを撹拌する工程、
を含む、油中水型乳化物の製造方法。
【請求項13】
水相を調製する工程において、水相のpHが中性またはアルカリ性である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水相を調製する工程において、水相に酸を添加する、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
油相と水相とを撹拌する工程の後に、撹拌しながら酸を添加する工程を含む、請求項12または請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミドアルコールを用いた油中水型乳化物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料の乳化物としては、各種の油性および水性の原料を乳化したクリーム、乳液、美容液などが広く用いられている。このような乳化物の製造にあたっては、厳密に設定した各種条件のもとで原料を処理するだけでなく、乳化物の経時安定性を保証するために、界面活性剤を使用することが必須とされていた。しかしながら、近年、皮膚に対して低刺激の化粧料が求められる傾向にあり、界面活性剤の存在が問題とされることがある。
【0003】
特許文献1では、界面活性剤を用いない油中水型乳化物として、アミドアルコール、および塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む油中水型乳化物が提案され、界面活性剤フリーの化粧料が実現されている。
【0004】
特許文献2では、紫外線防御効果のある粉体を疎水化処理剤およびカチオン性界面活性剤で改質して分散することで、上記の様な問題を解決し、化粧持ちと洗浄性の両立を試みている技術である。また、特許文献3では、疎水化処理を施した酸化亜鉛粉末を配合することで、専用のクレンジング洗浄料を使う必要がなく、一般的な皮膚洗浄料で簡単に洗い落とすことができる、日焼け止め乳化化粧料の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-147379
【特許文献2】特開2007-217361
【特許文献3】特開2006-248999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚刺激という観点からは、特許文献1のように、界面活性剤を用いない油中水型乳化物が提案されているが、皮膚刺激の原因は界面活性剤だけではない。他にも紫外線や外気、皮膚への摩擦の影響があり、皮膚上に化粧料が残ることもまた、皮膚刺激の大きな要因となりうる。とりわけ油中水型化粧料は耐水性が高いが故に、石けんやボディソープのような皮膚洗浄料では落としにくく、しかも化粧料が皮膚に残りやすいといった懸念点がある。また、化粧料に配合される顔料のような粉体には、表面に疎水化処理を施されているものが多く、一般的には洗い落としにくいとされている。
【0007】
こうして落としきれない化粧料が皮膚上に残ったとき、化粧料特有のべたつきや、配合されている紫外線防御剤のきしみなどの不快感を覚えやすいだけでなく、皮膚の紅斑、浮腫、落屑といった皮膚そのものの疾患に繋がる恐れがある。前述した通り、これら化粧料の油性分や粉体成分を洗い流して除去するには専用のクレンジング化粧料が必要になることから、日常使いには不向きであるという印象を消費者に与えていた。翻って、洗浄性に優れた化粧料は一般的に耐水性が劣ることになるから、従来は洗浄性と耐水性との両方を兼ね備えることは困難であった。
【0008】
特許文献2および特許文献3においては、化粧料に添加する粉体に表面処理を行なう、もしくは指定の粉末を利用することで、粉体成分の洗い流し易さについて解決を試みている。ところが、これらの技術では特定の粉体に依存するために、結果的には化粧料の処方構築の自由度を妨げるものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの事情を鑑みて本発明者が鋭意検討を行なったところ、洗浄性と耐水性を両立しながらも、洗い上がりの良さをも同時に実現する油中水型乳化物およびその製造法を確立し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の(A)~(C)を含む油中水型乳化物である。
(A)式(I)
【化1】
式中、
R1は、C6~C22炭化水素基であり、
R2は、H、またはC6~C22炭化水素基であり、
R3は、直鎖または分岐鎖C2~C21炭化水素基である、
で表されるアミドアルコール、および
(B)塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分、
(C)紫外線吸収剤および/または粉体
【0011】
前記成分(B)で、特にアルカリの量は1.0重量%以上を含むことが好ましい。また、成分(A):(B)のモル比は1:0.1~1:15の範囲であることが好ましい。
【0012】
油中水型乳化物を構成する油性成分としては、炭化水素油および/またはエステル油を含むことが好ましい。水性成分は40重量%より多く含むことが好ましい。
【0013】
乳化に必要とされる他の添加物としては、界面活性剤やカルボキシ基含有高分子が従来使われているが、本発明においては、カルボキシ基含有高分子を含まないか、0.01重量%未満のカルボキシ基含有高分子を含むことが好ましい。上記課題に挙げたような皮膚刺激の観点から、界面活性剤を含まないか、または2.0重量%未満の界面活性剤を含む油中水型乳化物とすることが好ましい。
【0014】
本発明の油中水型乳化物において前記成分(C)は、除去困難性の観点から、粉体として無機顔料または有機顔料からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有する。
【0015】
本発明において、以下の(A)~(C)を用いた油中水型乳化物を製造する際には、以下の工程:
(A)式(I)
【化2】
式中、
R1は、C6~C22炭化水素基であり、
R2は、H、またはC6~C22炭化水素基であり、
R3は、直鎖または分岐鎖C2~C21炭化水素基である、
で表されるアミドアルコール、
さらに(C)紫外線吸収剤および/または粉体を含む油相を調製する工程、
(B)塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む水相を調製する工程、
油相と水相とを撹拌する工程、
を含む。
【0016】
水相を調製する工程においては、水相のpHが中性またはアルカリ性であり、水相に酸を添加する方法がとられる。そして、酸を添加する際には、油相と水相とを撹拌した後に、撹拌しながら添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
従来の油中水型乳化物は通常の洗浄剤では落としにくく、肌へ残ってしまうことが多かった点、上記(A)~(C)を用いた油中水型乳化物によって、一般的な石けんのような洗浄剤でも難なく落とすことができる。また、本発明の油中水型乳化物では、乳化状態を安定に保つための、いわゆる界面活性剤を使わないため、皮膚への刺激を低く抑えることができる。総じて、これらの特性を兼ね備えた油中水型乳化物によって、消費者が気軽に日常使いできるような化粧料を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の油中水型乳化物およびその製造方法について詳細に説明する。本発明における「油中水型乳化物」とは、油性成分を含む連続相に、水性成分が分散した組成物を意味する。油中水型乳化物は、アミドアルコールを含む油相に、アルカリまたは塩基性アミノ酸または塩を含む水相を分散させることにより調製することができる。
【0019】
本明細書において「炭化水素基」は特別の定めのない限り、飽和または不飽和の、直鎖、分岐鎖または環状であるか、または直鎖または分岐鎖と環状の組み合わせであり得、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などの直鎖または分岐鎖の炭化水素部分および環状の炭化水素部分とからなる炭化水素基を含む。すなわち、R1およびR2における、C6~C22炭化水素基は、直鎖、分岐鎖または環状のC6~C22炭化水素基、または直鎖または分岐鎖の炭化水素部分および環状の炭化水素部分とからなるC6~C22炭化水素基を含み、例として、シクロヘキシル、デカヒドロナフチル、テトラヒドロジシクロペンタジエン、ステロール、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどの環状基、エチルヘキシル、イソステアリル、オクチルドデシルなどの分岐アルキル基やジメチル、トリメチル、テトラメチルなどの多分岐アルキル基、ヘキシル、オクチル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、アラキル、ベヘニルなどの直鎖アルキル基、オレイル、エライジルなどのアルケニル基などが挙げられる。
【0020】
本発明において用いられる成分(A)のアミドアルコールは、式中、R1がC10~C22炭化水素基であり、R2がHであり、R3がC3~C12炭化水素基である式(I)のアミドアルコールが好ましく、R1がC12~18炭化水素基であり、R2がHであり、R3がC3~C5炭化水素基である式(I)のアミドアルコールが特に好ましい。
【0021】
本発明において、式(I)のアミドアルコールは、好ましくは下記式(I-1)~(I-4)の構造を有する:
【化3】
【0022】
式(I)内のR3における炭化水素基は、環状構造を有しない、直鎖または分岐鎖C2~C21炭化水素基であり、例としては、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エチルヘキシルなどアルキル基、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレンなどのアルケニル基が挙げられる。本発明の一態様において、R3は、プロピレン、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレンであることが好ましい。
【0023】
アミドアルコールは、公知の合成方法を使用して製造することができる。例えば、酸塩化物とアミンのアミノリシス反応(ショッテン・バウマン反応)、無水脂肪酸とアミンのアミノリシス反応、メチルエステルとアミンのアミノリシス反応、脂肪酸とアミンのアミノリシス反応、ラクトンとアミンのアミノリシス反応、等が挙げられる。
具体的には例えばWO2017/213177A1に記載されている方法により合成することができる。また、上記式(I-4)で表されるアミドアルコールは、高級アルコール工業株式会社より、アミナクトール OLHの商品名で市販されている。
【0024】
本明細書において「塩基性アミノ酸」は、分子内にアミノ基のほかに塩基性を示す残基を持つアミノ酸を意味し、特に限定されないが、例としてリシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
本明細書において「アルカリ」は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を意味する。化粧品などに一般的に用いられるアルカリであれば特に限定されないが、典型的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
本明細書において「塩」は、金属または塩基の陽性成分と、酸の陰性成分とからなる化合物を意味し、特に限定されないが、例として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機塩、EDTA-2Na、EDTA-3Na、EDTA-4Naなどの有機酸塩が挙げられる。
【0027】
塩基性アミノ酸、アルカリ、塩から選択される成分(B)は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができ、例えば、塩基性アミノ酸とアルカリとを組み合わせて、または塩基性アミノ酸と塩とを組み合わせて用いることができる。
【0028】
本明細書において「紫外線吸収剤」は、紫外線を吸収して、熱や赤外線などのエネルギーに変化させて放出する成分を意味し、特に限定されないが、例としてメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシルなどの有機紫外線吸収剤が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
本明細書において「粉体」は、着色顔料や白色顔料、パール顔料、体質顔料のような無機顔料または有機顔料のような、肌を彩るメイクアップ化粧品に用いられる原料を意味し、特に限定されないが、例としてケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、合成金雲母、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロムなどの金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルトなどの金属錯体;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤218号、赤223号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号などの合成有機顔料;オキシ塩化ビスマス、アルミニウム粉末、ベンガラ被覆雲母、酸化チタン被覆雲母などの真珠光沢顔料が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明の油中水型乳化物に用いられる油性成分は、化粧品などに一般的に用いられる成分であれば特に限定されないが、例としては、動植物油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油などの油剤が挙げられ、これらを単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
動植物油脂または水添動植物油脂としては、例えば、アボガド油、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カヤ種子油、キョウニン油、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、胚芽油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0032】
炭化水素油としては、例えば、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、イソパラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン(ミネラルオイル)、プリスタン、ポリイソブチレン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ワセリンなどが挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、水添ナタネ油アルコールなどが挙げられる。
【0033】
エステル油としては、例えば、モノエステルではイソノナン酸エステルであるイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルなど、2-エチルヘキサン酸であるエチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシルなど、ミリスチン酸エステルであるミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシルなど、イソステアリン酸エステルであるイソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステリルなど、乳酸エステルである乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシルなど、オレイン酸エステルであるオレイン酸オレイル、オレイン酸フィトステリル、オレイン酸オクチルドデシルなど、ネオペンタン酸エステルであるネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソステアリルなど、パルミチン酸エステルであるパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシルなど、ラウリン酸エステルであるラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソアミルなど、その他にはネオデカン酸オクチルドデシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、エルカ酸オクチルドデシル、ラウロイルサルコシンイソプロピルなどが挙げられる。
【0034】
ジエステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエチルヘキシル、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジリノール酸ジイソプロピル、ジオクタン酸エチレングリコール、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)などが挙げられる。
トリエステル油としては、トリエチルヘキサノイン、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
テトラエステル油としては、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチルなどが挙げられる。
【0035】
ポリエステル油としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2などが挙げられる。
高粘性のエステル油としては、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/ベヘニル/イソステアリル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ミリストイルメチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)などが挙げられる。
【0036】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、揮発性シリコーン、アルキルジメチコン、シクロペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0037】
本発明において、油中水型乳化物におけるアミドアルコールを含む油性成分の配合量は特に限定されないが、使用性、および安定性の観点から、0.5~70重量%、好ましくは0.5~30.0重量%、より好ましくは10.0~20.0重量%である。油中水型乳化物におけるアミドアルコールを含む油性成分の典型的な配合量は、0.5重量%以上であり、30重量%未満である。より長期に安定な乳化物を提供する観点から、成分(A)との相溶性が低い油剤などの油性成分、例えば炭化水素油、エステル油等を高い割合で使用することが好ましく、特にミネラルオイルを用いることがより好ましい。
【0038】
本発明の油中水型乳化物に用いられる水性成分は、化粧品などに一般的に用いられる成分であれば特に限定されないが、例としては、精製水、イオン交換水などの水;BG(1,3-ブチレングリコール)、PG(プロピレングリコール)、グリセリン、エタノールなどの低級アルコール、塩酸などのpH調整剤などが挙げられ、これらを単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。本発明において、油中水型乳化物における水性成分の配合量は特に限定されないが、使用性の観点から、10.0~90.0重量%、好ましくは20.0~85.0重量%、より好ましくは40.0~85.0重量%であり得る。
【0039】
本発明における水の配合量は特に限定されないが、使用性の観点から、10.0~90.0重量%、好ましくは20.0~85.0重量%、より好ましくは40.0~85.0重量%であり得る。
【0040】
本明細書において「界面活性剤」とは、一分子の中に親水基および疎水基の両方を有する界面活性能を有する化合物を意味し、「カチオン界面活性剤」とは、正に電荷した(カチオン性の)親水基を有する界面活性剤を意味し、これらは必要に応じて油中水型乳化物にも適宜添加することができる。
【0041】
本発明において、好ましくは油中水型乳化物は界面活性剤、特にカチオン界面活性剤を実質的に含まない。これにより、刺激の少ない乳化剤を提供することができる。ここで、「実質的に含まない」とは、油中水型乳化物全体の乳化に十分な量で界面活性剤を含まないことを意味する。また、本発明において「界面活性剤を実質的に含まない」、「カチオン界面活性剤を実質的に含まない」とは、界面活性剤、カチオン界面活性剤を全く含まないか、乳化しない量で含むこと意味する。乳化しない量は、当業者が組成にしたがって、適宜決定することができ、典型的には2.0重量%未満であり、別の態様においては、0.2重量%未満、0.02重量%未満などであり得る。
【0042】
本発明においては、カルボキシ基含有高分子を用いずに、油中水型乳化物を提供することができる。すなわち、本発明では、油中水型乳化物はカルボキシ基含有高分子を含まないか、0.01重量%未満で含むことができる。ここで、本明細書において「カルボキシ基含有高分子」は、分子中にカルボキシ基を有する高分子を意味し、具体的には、分子量が50万~300万である高分子、分子量中カルボキシ基含有量が50~70%程度である高分子が挙げられる。
【0043】
カルボキシ基含有高分子は、一般的には増粘剤として使用されている。したがって、本発明においても、内水相の増粘を目的として、カルボキシ基含有高分子を添加することもできる。例えば、アミドアルコールを含む油相に、アルカリまたは塩基性アミノ酸または塩を含む水相を分散させた後に、カルボキシ基含有高分子を添加することにより、油中水型乳化物を増粘させることができる。本発明では、油中水型乳化物の製造方法において、水相を調製する工程において、水相は、カルボキシ基含有高分子を含まないか、0.01重量%未満で含むことができる。
【0044】
カルボキシ基含有高分子の例としては、カルボキシビニルポリマー、およびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等のアルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキルポリオキシエチレンエステル共重合体、アクリル酸アルキル・イタコン酸アルキルポリオキシエチレンエステル共重合体、ステアレス-10アリルエーテル・アクリル酸アルキル共重合体等のアクリル系ポリマー、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸・デカジエン共重合体等の非アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0045】
カルボキシビニルポリマーは、カルボマー(INCI名:Carbomer)とも呼ばれ、以下の式(II)で表される構造を有するポリマーである:
【化4】
式中、
nは整数であり、典型的には40~100である。
【0046】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、それらのアクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルとの共重合体である。
アルキル変性カルボキシビニルポリマーの具体例としては、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(INCI名:Acrylates/C10-30Alkyl Acrylates Cross polymer、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とも呼ばれる)、以下の式(III)で表される構造を有するポリマーが挙げられる:
【化5】
式中、
RはC10~30アルキル基であり、
xおよびyは整数であり、それぞれ任意に1以上の整数から選択することができ、典型的には、x+y=40~100であり、
yが2以上である場合には、Rは同一であっても、異なっていてもよい。
【0047】
本発明の(B)成分としてアルカリを含む場合、油中水型乳化物はカルボキシ基含有高分子を含まないか、0.01重量%未満で含むことが好ましい。(B)成分としてアルカリ性の成分を含む場合、油中水型乳化物はカルボキシ基含有高分子を含まないか、0.01重量%未満で含むことが好ましい。
【0048】
本発明の油中水型乳化物は、化粧品などの外用剤に化粧品などに用いられるあらゆる成分を含み得る。これらの追加の成分の例としては、パルミチン酸デキストリン、キサンタンガムなど増粘剤・ゲル化剤;酸化防止剤、防腐剤などの品質保持成分;皮膚軟化剤(エモリエント);美白剤、抗シワ剤、抗酸化剤などの薬用成分・有効成分;香料、顔料、色素などの着色剤などが挙げられる。
【0049】
本発明では、油中水型乳化物の安定性向上のために、外油相を油ゲル化剤でオイルゲル化させることができる。オイルゲル化のために用いる成分としては、有機変性粘土鉱物および/または糖と脂肪酸による高分子エステルなどを用いることができる。本発明の油中水型乳化物の調製において用いられる油ゲル化剤は、化粧品などに一般的に用いられる成分であれば特に限定されない。
【0050】
有機変性粘土鉱物としては、水膨潤性粘土鉱物(例えばモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイトなど)の結晶層間に介在する変換性カチオンを、有機極性化合物や有機カチオン(例えば、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤)で置換したものが挙げられる。本発明において、市販されている有機変性粘土鉱物を用いることができ、例えば、Elementis Specialties社から、BENTONE 27V(ステアラルコニウムヘクトライト)、BENTONE 27VCG(ステアラルコニウムヘクトライト)、BENTONE 38V(ジステアルジモニウムヘクトライト)、BENTONE 38VCG(ジステアルジモニウムヘクトライト)などの商品名で市販されている。
【0051】
また、有機変性粘土鉱物はシリコーン油、エステル油および/またはその他の油剤に溶解したプレミックス品としても市販されており、本発明においてもプレミックスを用いてもよく、これは例えば、Elementis Specialties社から以下の商品名で市販されている。BENTONE GEL 1002V(シクロペンタシロキサン、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE GEL ABOV(クランベアビシニカ種子油、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE GEL CAO V(ヒマシ油、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE GEL EUG V(オクチルドデカノール、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE GTCC V(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE HSO V(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE IHD V(イソヘキサデカン、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE IPM V(ミリスチン酸イソプロピル、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE ISD V(イソドデカン、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE LOI V(液状ラノリン、パルミチン酸イソプロピル、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE MSO(V)(メドウフォーム油、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONENGD V(ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE OLV V(オリーブ果実油、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE OMS V((C11,12)イソパラフィン、ジステアルジモニウムヘクトライト、変性アルコール)、BENTONE PTISV(テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE SS71V(石油揮発物、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)BENTONE TMF V(メチルトリメチコン、ジステアルジモニウムヘクトライト、クエン酸トリエチル)、BENTONE TNV(安息香酸アルキル(C12-15)、ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)、BENTONE VS-5V(V)(シクロペンタシロキサン、ジステアルジモニウムヘクトライト、変性アルコール)、BENTONE VS-5PC V(HV)(シクロペンタシロキサン、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン)。
糖と脂肪酸による高分子エステルとしては、千葉製粉株式会社よりレオパールの商品名で市販されているものが挙げられる。
【0052】
本発明において、成分(A):成分(B)のモル比は1:0.1~1:15、好ましくは1:0.1~1:10、より好ましくは1:0.5~1:1.5、特に好ましくは約1:1である。油中水型乳化物における成分(A)のアミドアルコールの配合量は、使用する油剤の種類や量、求められる粘度等に依存して適宜選択することができるが、典型的には0.1~14.0重量%であり、好ましくは、0.5~10.0重量%、さらに好ましくは、1.0~8.0重量%である。
【0053】
本発明における成分(B)がアルカリである場合、その配合量は、使用する油剤の種類や量、求められる粘度等に依存して適宜選択することができるが、典型的には、0.1~2.0重量%であり、好ましくは、0.1~1.5重量%、さらに好ましくは、0.2~1.0重量%である。
【0054】
本発明における成分(B)が塩である場合、その配合量は、使用する油剤の種類や量、求められる粘度等に依存して適宜選択することができるが、典型的には、0.5~5.0重量%であり、好ましくは0.5~4.0重量%、さらに好ましくは1.0~3.0重量%である。
【0055】
本発明における成分(B)が塩基性アミノ酸である場合、その配合量は、使用する油剤の種類や量、求められる粘度等に依存して適宜選択することができるが、典型的には0.5~3.0重量%であり、好ましくは0.5~2.0重量%、さらに好ましくは0.5~1.5重量%である。
【0056】
本発明における成分(C)が紫外線吸収剤である場合、その配合量は、使用する油剤の種類や量、求められる粘度等に依存して適宜選択することができるが、典型的には、0.1~50.0重量%であり、好ましくは、0.1~30.0重量%、さらに好ましくは、0.2~20.0重量%である。
【0057】
本発明における成分(C)が粉体である場合、その配合量は、使用する油剤の種類や量、求められる粘度等に依存して適宜選択することができるが、典型的には、0.1~60.0重量%であり、好ましくは、0.1~40.0重量%、さらに好ましくは、0.2~30.0重量%である。
【0058】
なお、本発明の油中水型乳化物のpHは、目的とする製品に適した値を適宜選択できる。例えば、成分(B)の存在により水相がアルカリ性である場合、内水相がアルカリ性の油中水型乳化物を調製することもできるが、水相に酸性成分を追加するか、乳化後に酸性成分を追加することで、酸性または中性の油中水型乳化物を調製することもできる。同様に、成分(B)として酸性塩を含み、水相が酸性である場合、内水相が酸性の油中水型乳化物を調製することもできるが、水相にアルカリ性成分を追加するか、乳化後にアルカリ性成分を追加することで、アルカリ性または中性の油中水型乳化物を調製することもできる。
【0059】
さらに、成分(B)を含む水相のpHが中性である場合、中性の油中水型乳化物を調製することもできるが、水相にアルカリ性または酸性の成分を追加するか、乳化後にアルカリ性または酸性の成分を追加することで、アルカリ性または酸性の油中水型乳化物を調製することもできる。
【0060】
本発明の油中水型乳化物の粘度は、目的とする製品の特性に依存して適宜選択できる。クリーム状の乳化物を得る観点からは、10,000mP・sより高い粘度を有することが好ましく、安定性を有する乳液状の乳化物を得る観点からは、3,000~100,000mP・s程度の粘度を有することが好ましい。油中水型乳化物を化粧料として使用する観点から、乳化物の粘度は、3,000~1,000,000mP・sの範囲内で適宜選択できる。
【0061】
本発明は一態様において、
(A) 式(I)
【化6】
式中、
R1は、C6~C22炭化水素基であり、
R2は、H、またはC6~C22炭化水素基であり、
R3は、直鎖または分岐鎖C2~C21炭化水素基である、
で表されるアミドアルコール、
さらに(C)紫外線吸収剤および/または粉体を含む油相を調製する工程、
(B)塩基性アミノ酸、アルカリ、塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む水相を調製する工程、
油相と水相とを撹拌する工程、
を含む、油中水型乳化物を製造する方法を提供する。
【0062】
本発明では、水相を調製する工程において、水相が中性またはアルカリ性であることを特徴とする。また、水相のpHが中性またはアルカリ性である場合、酸を添加する工程をさらに含むことができる。本発明でとりうる別の方法として、水相を調製する工程において、酸を添加することができる。油相と水相とを撹拌する工程の後には、撹拌しながら酸を添加する工程を含めることができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的な思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書において、特に明示しない場合には、%は重量%を意味する。
【0064】
耐水性に優れながら洗浄性を兼ね備え、しかも高いSPF(Sun Protection Factor)値が必要な処方として、海水浴や水遊びの際に使われる日やけ止め化粧料への応用例を以下に挙げる。表1および表2に記載した処方を、下記の方法で調整した。
【0065】
〈表1記載処方の調整方法〉
(1)油相、水相をそれぞれ80℃で加熱し均一に溶解する。
(2)ホモディスパーを用いて水相を1,000rpmの速度で撹拌しながら油相を添加する。
(3)乳化後、ホモディスパーを用いて2,000rpmの速度で3分間撹拌する。
(4)ホモディスパーを用いて2,000rpmの速度で撹拌しながら室温まで徐冷する。
〈表2記載処方の調整方法〉
(1)油相、水相をそれぞれ80℃で加熱し均一に溶解する。
(2)油相に酸化亜鉛および酸化チタンを加え、ホモディスパーを用いて5,000rpmの速度で5分間分散する。
(3)ホモディスパーを用いて(2)を1,000rpmの速度で撹拌しながら水相を添加する。
(4)乳化後、ホモディスパーを用いて2,000rpmの速度で3分間撹拌する。
(5)ホモディスパーを用いて2,000rpmの速度で撹拌しながら室温まで徐冷する。
【0066】
〈紫外線防御効果(SPF)〉
国際規格であるISO 24444(2019)に則って、表1から表2に示される各試料のSPF値を測定し、以下の基準に従って評価した。
(表1の評価基準)
A:SPF値が実施例1よりも高い
B:SPF値が実施例1と同等
C:SPF値が実施例1より低い
(表2の評価基準)
A:SPF値が実施例2よりも高い
B:SPF値が実施例2と同等
C:SPF値が実施例2より低い
【0067】
〈耐水性評価〉
各試料を1.3mg/cm2の量で測定プレート(5×5cmのPMMAプレート、HELIOPLATE SB6)に計量し、10秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートを対照として、形成した塗膜の吸光度(250~450nm)をLabsphere社製UV-2000S型紫外線透過度測定装置にて測定し、得られた測定データから水浴前の吸光度積算値を求めた。
次いで、測定したプレートを水に浸漬し、5分間そのまま水中で撹拌した(スターラーで1,500rpm)。その後、表面の水滴がなくなるまで暗所で30分間程度乾燥させた後、再び吸光度を測定し、得られた測定データから水浴後の吸光度積算値を求めた。
以下の式から、耐水性、すなわち水浴後のSPF残存率(%)を算出した。
水浴後のSPF残存率(%)=
(水浴後の吸光度積算値)/(水浴前の吸光度積算値)×100
(表1の評価基準)
A:残存率が実施例1よりも高い
B:残存率が実施例1と同等
C:残存率が実施例1より低い
(表2の評価基準)
A:残存率が実施例2よりも高い
B:残存率が実施例2と同等
C:残存率が実施例2より低い
【0068】
〈皮膚洗浄料における洗い流し性〉
各試料を1.3mg/cm2の量で測定プレート(5×5cmのPMMAプレート、HELIOPLATE SB6)に計量し、10秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートを対照として、形成した塗膜の吸光度(250~450nm)をLabsphere社製UV-2000S型紫外線透過度測定装置にて測定し、得られた測定データから水浴前の吸光度積算値を求めた。
次いで、測定したプレートの上にハンドソープ(ミヨシ石鹸株式会社製、無添加泡のハンドソープ)を0.7g載せ、株式会社トリニティラボ製TL201Tt型静動摩擦試験機を用いてプレート全体にハンドソープを塗布した。プレートを流水で5秒間洗い流し、表面の水滴がなくなるまで暗所で30分間程度乾燥させた後、再び吸光度を測定し、得られた測定データから水浴後の吸光度積算値を求めた。
以下の式から、洗い流し性、すなわち洗い流し後のSPF残存率(%)を算出した。
洗い流し後のSPF残存率(%)=
(洗い流し後の吸光度積算値)/(洗い流し前の吸光度積算値)×100
(表1の評価基準)
A:残存率が実施例1よりも高い
B:残存率が実施例1と同等
C:残存率が実施例1より低い
(表2の評価基準)
A:残存率が実施例2よりも高い
B:残存率が実施例2と同等
C:残存率が実施例2より低い
【0069】
【0070】
【0071】
表1に示されるように、アミドアルコールの一種であるN-オレイルヒドロキシヘキサナミドを用いた試料(実施例1)は、一般的な油中水型乳化剤を用いた試料(比較例1~3)と比較して、高い紫外線防御効果が得られる。また、イソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた試料(比較例4)では耐水性に劣り、N-オレイルヒドロキシヘキサナミド、PEG-5水添ヒマシ油、イソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた例(実施例1、比較例1・2)では、同程度の高い耐水性を示す。皮膚洗浄料における洗い流し性については、N-オレイルヒドロキシヘキサナミドを用いた実施例1の試料が最も優れており、一般的な油中水型乳化剤を用いた試料(比較例1~3)はいずれも、皮膚洗浄剤では十分に洗い落とせない。
【0072】
さらに、表2で紫外線散乱剤を配合した例においては、N-オレイルヒドロキシヘキサナミドを用いた場合(実施例2)では、PEG-5水添ヒマシ油を用いた試料(比較例4)と同等の高い紫外線防御効果が得られ、その他2種類の界面活性剤を用いた場合(比較例5および比較例6)を上回る性能が得られる。また、イソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた場合(比較例6)を上回る耐水性能を示している。
皮膚洗浄料における洗い流し性については、N-オレイルヒドロキシヘキサナミドを用いた試料(実施例2)が最も優れており、一般的な油中水型乳化剤を用いた例(比較例4~6)では、いずれも皮膚洗浄剤では十分に洗い落とせない。
【0073】
このように、油中水型乳化物で使われるような従来の乳化剤の代わりに、新たに成分(A)のアミドアルコールを含ませることで、耐水性を確保し、紫外線防御効果を発揮しながらも、容易に洗い流すことができる油中水型乳化物を提供できる。洗い流す際には、石けん液によって水中油型の乳化状態へと転相し易くすることで、水で洗い流しやすくなると考えられる。このため、従来は落としにくいとされてきた、酸化亜鉛といった紫外線散乱剤の粉体を含むような化粧料に対しても、従来の技術と比べて石けん落ちに優れるものとなる。
【0074】
紫外線散乱剤の他にも、ファンデーションやリップスティックに使われる酸化鉄、酸化チタン、マイカのような他の無機顔料や金属酸化物、合成有機顔料にも本技術を適用することができ、通常の界面活性剤を使用したものと比べて、やはり同様に、石けん落ちに格段に優れた化粧料を実現できる。
【0075】
本発明は、上で例示した日やけ止め化粧料の他にも、あらゆる用途に応用することができるが、典型的には、紫外線吸収剤や粉体を乳化組成物として応用される、医薬品、医薬部外品、化粧品などの外用剤に用いることができる。さらには、薬剤を含む皮膚外用剤などの医薬品;薬用化粧品などの医薬部外品;乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、日中用保湿剤などのスキンケア化粧品;ファンデーション、メーキャップ下地、チーク、アイシャドウ、マスカラ、などのメイクアップ化粧品、ヘアトリートメントなどのヘアケア化粧品などの様々な形態の製品に使用することが可能である。
本発明の油中水型乳化物は、日焼け止め化粧料やメイクアップ化粧料の目的で使用できる。また、洗浄時に専用のクレンジング化粧料を用いることなく、皮膚洗浄料で簡便に洗い流すことができる。