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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179006
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】芳香族ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231212BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08J7/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091984
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信行
【テーマコード(参考)】
4F071
4F073
【Fターム(参考)】
4F071AA56
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE19
4F071AF04
4F071AF58
4F071AG17
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH13
4F071AH16
4F071AH17
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB07
4F071BC01
4F071BC15
4F073AA01
4F073BA30
4F073BB01
4F073CA21
(57)【要約】
【課題】芳香族ポリアミドが有する優れた耐熱性を活かし、表面自由エネルギーや濡れ張力を制御することによって、フィルムの密着性を向上することを目的とする。
【解決手段】芳香族ポリアミドフィルムであって、該フィルムの少なくとも片面のぬれ性が67以上であることを特徴とする芳香族ポリアミドフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に対して放電処理を施した芳香族ポリアミドフィルムであって、該フィルムの放電処理前後の最大断面高さRtの差が50nm以下であり、該フィルムの少なくとも片面のぬれ性が67以上であることを特徴とする芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項2】
該フィルムの少なくとも片面に対してE値が30を超え50W/m/分以下である放電処理を施した請求項1に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項3】
該フィルムの少なくとも片面の表面自由エネルギーにおける分散力成分が25dyn/cm以上である、請求項1または/および請求項2に記載の芳香族ポリアミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工業用に供給される耐熱性、取り扱い性に優れた工業用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミド、特にパラ配向性芳香族からなる芳香族ポリアミドは剛性や強度などの機械特性が高く、薄膜化に非常に有利であることから、磁気記録媒体として活用されている。また、ポリイミドに次ぐ耐熱性も有しており、耐熱工程紙、フレキシブル回路基板、スピーカー振動板、コンデンサなどの工業材料用途でも活用されている。
工業材料用途では、フィルムに樹脂を塗布し別基材と貼り合わせする場合がある。この際に、樹脂と芳香族ポリアミドフィルムの密着性を向上するため、表面自由エネルギーや濡れ張力を向上する方法(特許文献1、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-287447号公報(1996年11月1日公開)
【特許文献2】特開2001-302820号公報(2001年10月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のフィルムでは、樹脂の層間の密着性が十分でなく、微細な空隙が生じ、例えば高精度な容量を求められるコンデンサであれば、端面から湿潤空気が侵入し、歩留まりが悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は、芳香族ポリアミドが有する優れた耐熱性を活かし、表面自由エネルギーや濡れ張力を制御することによってフィルムの密着性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)少なくとも片面に対して放電処理を施した芳香族ポリアミドフィルムであって、該フィルムの放電処理前後の最大断面高さRtの差が50nm以下であり、該フィルムの少なくとも片面のぬれ性が67以上であることを特徴とする芳香族ポリアミドフィルム。
(2)
該フィルムの少なくとも片面に対してE値が30を超え50W/m/分以下である放電処理を施した(1)に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
(3)
該フィルムの少なくとも片面の表面自由エネルギーにおける分散力成分が25dyn/cm以上である、(1)または(2)に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、芳香族ポリアミドが有する優れた耐熱性を活かし、表面自由エネルギーや濡れ張力を制御することでフィルムの密着性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、例えば、次の化学式(1)及び/又は化学式(2)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
ここで、Ar1、Ar2、Ar3の基としては、例えば、次の化学式(3)で表されるもの等が挙げられる。
【0012】
【化3】
【0013】
また、上記X、Yの基は、-O-、-CH2-、-CO-、-CO2-、-S-、-SO2-、-C(CH3)2-等から選ばれるが、これらに限定されるものではない。更に、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ、湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めていることが好ましい。ここでいうパラ配向性とは、芳香環上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸又は平行にある状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、フィルムの剛性及び耐熱性が不十分となる場合がある。更に、芳香族ポリアミドが次の化学式(4)で表される繰り返し単位を60モル%以上含有する場合、延伸性及びフィルム物性が特に優れることから好ましい。
【0014】
【化4】
【0015】
また、本発明のフィルムは、波長領域400nmから750nmの範囲の光線透過率の平均が70%以上100%以下とすることでフィルムの黄色味が抑えられ、ガラス代替用途として好ましい。
【0016】
波長領域400nmから750nmの範囲の光線透過率の平均が70%以上100%以下とするため、下記化学式(5)~(9)のいずれかで示される構造単位を有することが好ましい。
【0017】
【化5】
【0018】
R1、R2は、-H、炭素数1~5の脂肪族基、-CF3、-CCl3、-OH、-F、-Cl、-Br、-OCH3、シリル基、または芳香環を含む基である。好ましくは、-CF3、-F、-Cl、または芳香環を含む基である。
【0019】
【化6】
【0020】
R3は、Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、芳香環を含む基、またはエーテル結合を含む基(ただし、分子内において、これらの基を有する構造単位が混在していてもよい)である。好ましくは、Siを含む基、ハロゲン化炭化水素基、芳香環を含む基、またはエーテル結合を含む基である。
【0021】
【化7】
【0022】
R4は任意の基である。特に限定されないが、好ましくは、-H、-Cl、-Fである。
【0023】
【化8】
【0024】
R5は任意の芳香族基、任意の脂環族基である。特に限定されないが、より好ましくはフェニル、ビフェニル、シクロヘキサン、デカリンである。
【0025】
また、上記のなかでも、化学式(5)あるいは(6)で示される構造単位を有すると、薄膜でも剛性に優れるフィルムが得られやすく、かつ中間層が形成されやすいため、硬化層を設けた後に優れた表面硬度、耐衝撃性および耐屈曲性を実現しやすい。
上記のなかでも特に好ましくは、下記化学式(9)で示される構造単位を有することである。
【0026】
【化9】
【0027】
R6は任意の基である。特に限定されないが、好ましくは、-H、-Cl、-Fである。
上記化学式(9)で示される構造単位が、本発明のフィルムを構成する芳香族含窒素ポリマーの20~100モル%であることが好ましい。より好ましくは50~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。
【0028】
本発明のフィルムの製造方法について、以下に芳香族ポリアミドフィルムを例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
芳香族ポリアミドを得る方法は例えば、酸クロリドとジアミンから得る場合には、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合したり、水系媒体を使用する界面重合などで合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸クロリドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応から芳香族ポリアミドを得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行われる。
これらのポリマー溶液はそのまま製膜原液として使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶剤に再溶解して製膜原液を調製してもよい。
【0030】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度ηinh(ポリマー0.5gを98%硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5(dl/g)以上であることが好ましい。
【0031】
粒子の添加方法は、粒子を予め溶媒中に十分スラリー化した後、重合用溶媒または希釈用溶媒として使用する方法や、製膜原液を調製した後に直接添加する方法などがある。
製膜原液には溶解助剤として無機塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを添加する場合もある。また、製膜原液としては、中和後のポリマー溶液をそのまま用いてもよいし、一旦、ポリマーを単離後、溶剤に再溶解したものを用いてもよい。溶剤としては、取り扱いやすいことからN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒が好ましいが、濃硫酸、濃硝酸、ポリリン酸等の強酸性溶媒を用いてもかまわない。製膜原液中のポリマー濃度は2~40質量%程度が好ましい。
【0032】
上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、ポリマー溶液中に無機塩が含まれる場合には、これを抽出するために湿式工程が必要であり乾湿式法を用いる。
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金から支持体であるエンドレスベルトの上に押し出してシート状とし、次いでかかるシートから溶媒を飛散させシートが自己支持性をもつポリマー濃度(PC)35~60質量%まで乾燥する。乾式工程を終えたシートは冷却された後、支持体から剥離されて次の湿式工程の湿式浴に導入され、脱塩、脱溶媒が行われる。湿式浴組成は、ポリマーに対する貧溶媒であれば特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いることができる。この際、シート中の不純物を減少させるために有機溶媒/水混合系の組成比(以下の数値は質量基準)は、有機溶媒/水=70/30~0/100であるが、好ましくは60/40~30/70、浴温度40℃以上であることが好ましい。湿式浴中には無機塩が含まれていてもよいが最終的には多量の水でシート中に含まれる溶媒や無機塩を抽出することが好ましい。
【0033】
湿式工程を通ったシートは、続いて、テンター内で水分の乾燥と熱処理が行なわれるが、テンター内で熱処理されるまでにシート中の溶媒含有量が5質量%未満になるまで乾燥させることが好ましい。溶媒含有量が5質量%以上の状態で熱処理工程に入ると、熱処理ムラが生じやすく、フィルム幅方向で物性に斑が生じたり、延伸工程中にシートが破断しやすくなる。この溶媒含有量は少ない方がより好ましく、0質量%付近まで完全に乾燥させることが望ましい。
【0034】
以上のようにして形成されるシートは、湿式工程中、熱処理工程で目的とする機械的性質、寸法安定性向上のため延伸が行なわれる。延伸は、最初にシート長手方向、次いで幅方向に延伸、あるいは最初に幅方向、次いで長手方向に延伸する逐次二軸延伸法や長手方向、幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法などを用いることができる。これらの延伸方法は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルム化で行われている溶融製膜における延伸法としてよく知られているが、本発明のような溶液製膜で得るフィルムの場合には、シート中に溶媒や湿式浴成分が含有されており、またそれらはシート外への移動を含んだプロセスであるため目的とするフィルムを得るためには後述する手法を採ることが好ましい。
【0035】
延伸方法としては、逐次二軸延伸法が装置上および操作性の点から好ましい。延伸条件としては、ポリマー組成等により適正な条件を選択することが必要であるが、シートの長手方向の延伸倍率は1.0~1.5倍、幅方向の延伸倍率は1.2~2.0倍であることが、目的の寸法安定性を得るうえで好ましい。また、延伸温度は270℃以上の温度で3秒以上行われるのが好ましく、270~320℃の温度で3秒以上行われることがより好ましい。延伸温度が270℃未満であると結晶化不足となり、十分な吸湿率及び抗張力性等の寸法特性が得られないことがある。なお、延伸温度が320℃を超えると結晶化度が上がりすぎるためフィルムが脆くなり、フィルム破れが生じ易くなる。また、延伸の際のシート中の溶媒含有量は5質量%未満であることが好ましい。なお、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが熱収縮率を低減させるのに有効である。
なお、本発明における芳香族ポリアミドフィルムはもちろん単層フィルムでもよいが、積層フィルムであってもよい。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後、積層する方法が一つの例として挙げられる。さらに3層以上の場合も同様である。これら積層の方法としては、たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいて、その上に他の層を形成する方法などがある。
【0036】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムのぬれ性は、少なくとも片面のぬれ性が67以上であることが重要である。ぬれ性が67未満であると、フィルムに塗布した樹脂の密着性が十分でなく、微細な空隙が生じ、例えば高精度な容量を求められるコンデンサであれば、端面から湿潤空気が侵入し、歩留まりが悪化する場合がある。
【0037】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムのぬれ性を得るために、該フィルムの少なくとも片面に対して放電処理を施すことが重要である。
放電処理においては、E値が30を超え50W/m/分以下であることが好ましい。E値が30W/m/分以下であると、フィルムのぬれ性が67未満となる場合がある。
E値が50W/m/分を超えると、フィルムのぬれ性が67以上となるが、放電処理により芳香族ポリアミドフィルムの表面があれてしまう場合があり好ましくない。
ここで、E値は、W/(D×V)で求められ、Wは処理強度(W)、Dは処理幅(m)、Vはフィルム速度(m/分)である。
【0038】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの表面自由エネルギーにおける分散成分は、少なくとも片面の表面自由エネルギーにおける分散力成分が25dyn/cm以上であることが好ましい。表面自由エネルギーにおける分散力成分が25dyn/cm未満であると、フィルムに塗布した樹脂の密着性が十分でなく、微細な空隙が生じ、例えば高精度な容量を求められるコンデンサであれば、端面から湿潤空気が侵入し、歩留まりが悪化する場合がある。
【0039】
本発明の本発明の芳香族ポリアミドフィルムの最大断面高さRtの放電処理前後の差が50nm以下であることが好ましい。更に好ましくは、40nm以下である。芳香族ポリアミドフィルムの最大断面高さRtの放電処理前後の差が、50nmを超えると、磁気記録媒体として使用する場合、磁気層側では電磁変換特性不良が発生する場合があり、また、非磁性層側ではその粗悪な形状が磁性層側に転写され電磁変換特性不良が発生する場合があるため好ましくない。
【実施例0040】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものでは無い。
【0041】
(フィルム表面の濡れ性の測定)
和光純薬工業株式会社製の濡れ張力試験用混合液(No.45、46、48、50、52、54、56、58、59、60、61、62、63、64,65,67,70,73)をフィルム表面に綿棒などを用いて塗り、フィルム上で試薬がはじけるときの試薬の表面張力の値とした。
【0042】
(表面自由エネルギー)
表面自由エネルギーおよびその各成分が既知の4種の液体(本発明ではPanzerによる方法(日本接着協会誌vol.15、No.3、p96に記載の水、エチレングリコール、ホルムアミド、ヨウ化メチレンの数値を用いた)を用い、20℃、50%RHの条件下で接触角計CA-D型(協和界面化学株式会社製)にて各液体のフィルム表面上での接触角を測定した。この値を拡張Fowkes式より導き出される下記式を用いて各成分を計算した。
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2= γL(1+COS θ)/2
ここで、γLd、γLp、γLh、γL は、測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分および各成分のトータルの表面自由エネルギーを示し、γSd、γSp、γShは、測定面上の分散力、極性力、水素結合力の各成分を示す。また、θは測定面上での測定液の接触角を表す。1つの測定面に対して5回の測定を行い、その平均値をθとした。既知の値およびθを上記の式へ代入し、連立方程式により測定面の分散力、極性力、水素結合力の各成分を求める。なお計算は、数値計算ソフトである「Mathematica 」の「FindMinimum 」のコマンドを用いた。
【0043】
(最大断面高さRt)
JIS B0601-1976に従い、(株)小坂研究所製の表面粗さ計SE3500を用いて最大断面高さRtを測定した。触針先端半径5μm、測定長4mm、カットオフ0.08mmとした。
【0044】
(密着性評価)
芳香族ポリアミドフィルムロールの放電処理を行った面に、接着剤としてポリウレタン樹脂系接着剤セメダイン株式会社製品名1500を15μmの厚さにロールコートした後、別に用意した同水準の芳香族ポリアミドフィルムロールの放電処理を行った面を接着剤に向けて積層し、80℃の加圧ロールを介して50kg/cm2で張り合わせを行った。その後80℃の環境下で5日間エージング処理した。
エージング処理した積層フィルムサンプルを、プレス機を用いて、加重6.0t、プレス速度750mm/秒の条件で打抜加工し、打抜加工したサンプルの端部を確認し、密着性を次の指標で評価した。
○:剥離無し
△:部分剥離
×:剥離。
【0045】
(芳香族ポリアミド溶液A)
N-メチル-2-ピロリドン(以下NMP)に、85モル%に相当する2-クロロパラフェニレンジアミン(以下CPA)と15モル%に相当するジフェニルエーテル(以下DPE)を溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するクロロテレフタル酸クロライド(以下CTPC)を添加して、重合前に平均粒径80nmのシリカ粒子を芳香族ジアミン成分に対して0.02質量%、平均粒径100nmの有機粒子を芳香族ジアミン成分に対して6.0質量%になるように添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い、重合ポリマーを得た。
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8質量%の芳香族ポリアミド溶液Aを得た。
【0046】
(芳香族ポリアミド溶液B)
NMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い、重合ポリマーを得た。
【0047】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、平均1次粒径が16nmのシリカ(日本アエロジル株式会社製“AEROSIL”R972タイプ)をポリマーに対して1.6質量%添加して1時間の攪拌を行った後、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8質量%の芳香族ポリアミド溶液Bを得た。
(芳香族ポリアミドフィルムロール)
次に、芳香族ポリアミド溶液Aを濾過精度1.2μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通し、また、芳香族ポリアミド溶液Bを濾過精度5.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通した後に口金内部で積層した。この時の芳香族ポリアミド溶液AとBの積層比率(厚み比)は、50%ずつになるようにした。次に、積層したポリマー溶液を表面が鏡面状のステンレス製ベルト上にキャストし、口金より走行方向下流側のベルト上において180℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得た膜体をベルトから連続的に剥離した。この時ステンレス製ベルトに接する層として芳香族ポリアミド溶液Bとなるように積層した。
【0048】
次に、溶媒抽出処理装置の槽内へ膜体を導入して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行いながらMD方向に1.10倍延伸した。
【0049】
その後、得られた膜体を横延伸機のクリップに把持させて水分の乾燥と熱処理を行なって、280℃で1.5分間乾燥と熱処理とTD方向に1.22倍の延伸を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷し、フィルムエッジを除去し、オシレーション60mmでコア上に巻き取って平均厚みが4.4μmの芳香族ポリアミドフィルムのジャンボロールを得た。
次いで、スリッターにて、巻き取り速度30m/min、巻き取り面圧200N/m、巻き取り張力100N/mで小幅(1,014mm)にスリットし、円筒度が0.05mm幅方向弾性率が14.5GPa、曲げ強度が210MPa、表面硬度が85、外径167mm、内径152.5mmの繊維強化プラスチック(FWP)コアA(天龍工業株式会社製)FWP10)の円筒コア上にロール状に、芳香族ポリアミド溶液Aが巻き内面になるように巻き取り、円筒状コア上にフィルムが巻かれた芳香族ポリアミドフィルムロールAを採取した。
【0050】
(実施例1)
得られた芳香族ポリアミドフィルムロールAを、巻き返しの途中で、巻き内面および巻き外麺のそれぞれの表面に大気中でコロナ放電処理をE値41.7W/m/分で行った。
結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
コロナ放電処理をE値35.0W/m/分で行った以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
コロナ放電処理をE値45.0W/m/分で行った以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
コロナ放電処理をE値55W/m/分で行った以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
コロナ放電処理をE値25W/m/分で行った以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】