(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179007
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】検知装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/26 20210101AFI20231212BHJP
A61B 5/282 20210101ALI20231212BHJP
A61B 5/0533 20210101ALI20231212BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20231212BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20231212BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20231212BHJP
A61B 5/18 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
A61B5/26 200
A61B5/282
A61B5/0533
A61B5/33 200
A61B5/352
B62D1/06
A61B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091987
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岳山 基之
(72)【発明者】
【氏名】石井 康二
(72)【発明者】
【氏名】山田 匠
【テーマコード(参考)】
3D030
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
3D030DB15
4C038PP01
4C038PP03
4C038PQ04
4C038PS00
4C038PS01
4C127AA02
4C127AA06
4C127BB05
4C127DD03
4C127FF02
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG18
(57)【要約】
【課題】運転者の発汗状態と運転者の心拍数とを同時に検知することができる検知装置を提供する。
【解決手段】検知装置1は、ステアリングホイール10に配置される第1電極11と、第1電極11と電気的に接続されないようにステアリングホイール10に配置された第2電極12と、ステアリングホイール10において、第1電極11及び第2電極12から離間して配置される第3電極13と、第1電極11が出力した信号、又は、第2電極12が出力した信号が少なくとも入力される発汗検知回路30と、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とが入力される心拍検知回路40とを備える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに配置される第1電極と、
前記第1電極と電気的に接続されないように前記ステアリングホイールに配置された第2電極と、
前記ステアリングホイールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極から離間して配置される第3電極と、
前記第1電極が出力した信号、又は、前記第2電極が出力した信号が少なくとも入力される発汗検知回路と、
前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される心拍検知回路とを備える
検知装置。
【請求項2】
前記第3電極と電気的に接続されないように前記ステアリングホイールに配置された第4電極を備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記ステアリングホイールの一方側において、前記ステアリングホイールの周方向に沿って配置され、
前記第3電極及び前記第4電極は、前記ステアリングホイールの他方側において、前記ステアリングホイールの周方向に沿って配置されている
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記第2電極及び前記第4電極に交流電圧又は直流電圧を印加する信号源を備え、
前記発汗検知回路及び前記心拍検知回路には、前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される
請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第3電極に交流電圧又は直流電圧を印加する信号源を備え、
前記発汗検知回路には、前記第2電極が出力した信号と前記第4電極が出力した信号とが入力され、
前記心拍検知回路には、前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される
請求項2に記載の検知装置。
【請求項5】
前記信号源が前記第2電極及び前記第4電極に交流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、
第1ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、
第2ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
前記ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続される
請求項3に記載の検知装置。
【請求項6】
前記信号源が前記第2電極及び前記第4電極に直流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、
第1ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、
第2ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
前記ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続される
請求項3に記載の検知装置。
【請求項7】
前記信号源が前記第1電極及び前記第3電極に交流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第2電極は、第1ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、前記ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第4電極は、第2ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続される
請求項4に記載の検知装置。
【請求項8】
前記信号源が前記第1電極及び前記第3電極に直流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第2電極は、第1ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、前記ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第4電極は、第2ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続される
請求項4に記載の検知装置。
【請求項9】
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極及び前記第4電極のそれぞれは、櫛歯状、メアンダ状、三角波状、又は、螺旋状である
請求項2~4のいずれか1項に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、車両に搭載され、乗員の心電波形を検出する車両用心電検出装置が開示されている。車両用心電検出装置は、ステアリングホイールの表面を被覆する被覆材の下層に設けられた第1電極部と、ステアリングホイールの被覆材と所定の厚さを有する絶縁材との下層に設けられた第2電極部と、第1電極部と接地領域との差動電圧を検出する第1検出部と、第2電極部と接地領域との差動電圧を検出する第2検出部と、第1検出部で検出した差動電圧と、第2検出部で検出した差動電圧とに基づいて心電信号を生成する信号処理部と、を含んでいる。
【0003】
また、従来技術として、特許文献2には、生体の汗、例えば車両の搭乗者における汗を検出する汗検出装置が開示されている。汗検出装置は、主面を絶縁被覆した第1電極および第2電極と誘導素子とを含む検出回路を用いて生体の汗を検出する汗検出装置であって、液体の吸収量に応じて抵抗値を変える抵抗可変部材と、検出回路の共振抵抗値を測定する共振抵抗測定部と、共振抵抗測定部で測定された共振抵抗値に基づいて発汗量を判定する汗判定部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-153721号公報
【特許文献2】特開2020-44129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ステアリングホイールを用いて、特許文献1の発汗量の計測と、特許文献2の心電位に基づく心拍の計測とをする場合、発汗量を計測するための電極と、心拍を計測するための電極とを別々の個所に配置することになる。このため、発汗量と心拍との計測を同時に行うことができないという課題がある。
【0006】
そこで、本開示では、運転者の発汗状態と運転者の心拍数とを同時に検知することができる検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る検知装置は、ステアリングホイールに配置される第1電極と、前記第1電極と電気的に接続されないように前記ステアリングホイールに配置された第2電極と、前記ステアリングホイールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極から離間して配置される第3電極と、前記第1電極が出力した信号、又は、前記第2電極が出力した信号が少なくとも入力される発汗検知回路と、前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される心拍検知回路とを備える。
【0008】
なお、この包括的又は具体的な態様は、システム、方法又は集積回路などの任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の検知装置では、運転者の発汗状態と運転者の心拍数とを同時に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る検知装置が搭載された車両の車室の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、実施の形態1に係る検知装置を示すブロック図である。
【
図2B】
図2Bは、実施の形態1に係る別の検知装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る検知装置の第1電極、第2電極、第3電極及び第4電極の形状を示す側面図である。
【
図4】
図4は、ストレス要因毎の生体指標の変化量をプロットした図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態2に係る検知装置を示すブロック図である。
【
図5B】
図5Bは、実施の形態2に係る別の検知装置を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、その他変形例に係る検知装置を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、その他変形例に係る別の検知装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0013】
また、以下の実施の形態において、T字状等の表現を用いている。例えば、T字状は、完全にT字であることを意味するだけでなく、実質的にT字である、すなわち数%程度の誤差を含むことも意味する。また、T字状は、本開示による効果を奏し得る範囲においてT字という意味である。他の「状」を用いた表現についても同様である。
【0014】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
<構成及び機能>
[検知装置1]
まずは、車両に備えられた検知装置の構成及び機能について、
図1~
図4を用いて説明する。
【0016】
図1は、実施の形態1に係る検知装置1が搭載された車両の車室の一例を示す図である。
図2Aは、実施の形態1に係る検知装置1を示すブロック図である。
図2Bは、実施の形態1に係る別の検知装置1bを示すブロック図である。
図3は、実施の形態1に係る検知装置1の第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14の形状を示す側面図である。
図4は、ストレス要因毎の生体指標の変化量をプロットした図である。
【0017】
図1に示すように、車両は、ステアリングホイール10、スピーカ、及び、液晶ディスプレイ等の表示装置、検知装置1等を備えている。スピーカ及び表示装置は、例えば注意喚起装置として構成されている。
【0018】
ステアリングホイール10は、車両の操舵輪に対して操舵角を与える。ステアリングホイール10は、リムと、リムの内周面に一体的に形成されたT字状のスポークと、スポークの中央部分に配置されたホーンスイッチ(図示せず)を覆うホーンスイッチカバーとを有している。
【0019】
リムは、運転者(人)の手で握るためのグリップ部分であり、リング形状をなしている。リムには、ステアリングカバーが巻き付けられている。
【0020】
検知装置1は、車両に搭載され、ステアリングカバーの表面、つまりステアリングホイール10への運転者の手の発汗状態(発汗の有無、発汗量等)を検知したり、運転者の生体情報である心拍数を検知したりする。手の発汗状態は、第1電極11及び第3電極13が出力した信号に示される発汗検知信号に基づいて検知される。心拍数は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれが出力した2つの信号(心拍検知信号)の電位差に基づいて検知される。
【0021】
検知装置1は、第1電極11及び第2電極12と、第3電極13及び第4電極14と、信号源60と、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32と、発汗検知回路30と、ローパスフィルタ41と、心拍検知回路40と、情報処理装置50とを備える。
【0022】
[第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14]
第1電極11及び第2電極12は、ステアリングホイール10に配置されるステアリングカバーの内部に設けられ、ステアリングホイール10に接触した運転者の手における発汗状態及び心拍数を検知するセンサ電極である。第1電極11は、ステアリングホイール10の一方側かつステアリングホイール10の外周側において、ステアリングホイール10の周方向に沿って配置されている。また、第2電極12は、ステアリングホイール10における第1電極11と異なる箇所に配置され、ステアリングホイール10の一方側において、第1電極11つまりステアリングホイール10の周方向に沿って、ステアリングホイール10の内周側に配置されている。つまり、第2電極12は、第1電極11と電気的に接続されないようにステアリングホイール10に配置されている。また、第1電極11はステアリングホイール10における車両の進行方向側に配置されてもよく、第2電極12はステアリングホイール10における運転者側に配置されてもよい。また、第1電極11における運転者側に配置されてもよく、第2電極12における車両の進行方向側に配置されてもよい。
【0023】
例えば、ステアリングホイール10と対向した状態で見た場合、第1電極11及び第2電極12は、右側に配置されているが、左側に配置されていてもよい。
【0024】
第3電極13及び第4電極14は、ステアリングホイール10に配置されるステアリングカバーの内部に設けられ、ステアリングホイール10に接触した運転者の手における発汗状態及び心拍数を検知するセンサ電極である。第3電極13は、ステアリングホイール10の他方側かつステアリングホイール10の外周側において、ステアリングホイール10の周方向に沿って配置されている。また、第4電極14は、ステアリングホイール10における第3電極13と異なる箇所に配置され、ステアリングホイール10の他方側において、第3電極13つまりステアリングホイール10の周方向に沿って、ステアリングホイール10の内周側に配置されている。つまり、第4電極14は、第3電極13と電気的に接続されないようにステアリングホイール10に配置されている。また、第3電極13はステアリングホイール10における車両の進行方向側に配置されてもよく、第4電極14はステアリングホイール10における運転者側に配置されてもよい。また、第3電極13における運転者側に配置されてもよく、第4電極14における車両の進行方向側に配置されてもよい。
【0025】
例えば、ステアリングカバーをリムに巻き付けたときのステアリングホイール10を見た場合、第3電極13及び第4電極14は左側に配置されているが、右側に配置されていてもよい。また、第3電極13及び第4電極14は、電気的に接続されないように、第1電極11及び第2電極12から離間して配置されている。
【0026】
ここで、接触とは、運転者の手がステアリングカバーに直接的に接触するだけでなく、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14が人の手を検知可能であれば、物を介する間接的な接触、及び、ステアリングカバーから離間している状態をも含む意味である。
【0027】
また、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれは、導体又は抵抗体による面状構造のべた電極であり、薄板状金属からなる長尺な板状又はシート状の導電性の電極である。なお、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14をべた電極とすることで、手との対向面積を最大化することができるので、運転者の手における発汗状態及び心拍数の検知のいずれも高感度化することができる。また、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれは、べた電極に限定されない。例えば、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれは、導電性の糸を用いた電極であってもよく、導電性の糸又は繊維を平面的に配置したメッシュ状の電極であってもよい。
【0028】
第1電極11、及び、第3電極13は、配線21、22を介して第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32と電気的に接続されている。配線22は、配線21と電気的に接続され、配線21の途中で分岐している。
【0029】
また、第1電極11は、第1ハイパスフィルタ31を介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続されている。また、第3電極13は、第2ハイパスフィルタ32を介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続されている。第1電極11及び第3電極13が運転者の手によるステアリングカバーへの接触を検知すると、第1電極11及び第3電極13が出力した信号(発汗検知信号)が第1ハイパスフィルタ31に、第3電極13が出力した信号(発汗検知信号)が第2ハイパスフィルタ32に入力された後に、発汗検知回路30に発汗検知信号が入力されるとともに、ローパスフィルタ41に第1電極11及び第3電極13が出力した信号(心拍検知信号)が入力された後に心拍検知回路40に心拍検知信号が入力される。つまり、第1電極11及び第3電極13は、運転者の手がステアリングカバーに接触すると、信号を出力することで、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32とローパスフィルタ41とに、実質的に同時かつ同一の信号を入力させる。
【0030】
また、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれの表面は、表層部(不図示)で覆われている。表層部は、運転者の手が触れる部分であり、ステアリングカバーの表面を構成している。つまり、表層部は、運転者がリムを握る際に、ユーザの手と直接接触する部分である。表層部は、革、木材、又は、樹脂等からなる。
【0031】
第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれは、櫛歯状、メアンダ状、三角波状、又は、螺旋状等をなしている。具体的には、
図3の(a)~(d)に示すように、これらの電極が櫛歯状、メアンダ状、三角波状、及び、螺旋状の場合、ステアリングホイール10を側面から見たとき、ステアリングホイール10の周方向と交差する方向にこれら電極が延びることで、第1電極11と第2電極12、及び、第3電極13と第4電極14が噛み合っている又は絡み合っている。このため、運転者がステアリングホイール10を手で把持した場合、ステアリングホイール10の周方向と交差する方向にその手がズレても、手に対する第1電極11と第2電極12との検知面積(接触面積)、及び、手に対する第3電極13と第4電極14との検知面積はさほど変わらない。このため、運転者の手の発汗状態を検知する場合の精度を確保することができる。
【0032】
第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれの裏面は、基材(不図示)で覆われている。基材は、弾性、柔軟性及び延性を有する材質によって長尺のシート状に形成された不織布である。例えば、基材は、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂によって構成されている。
【0033】
また、本実施の形態ではステアリングホイール10の右側に第1電極11及び第2電極12と、左側に第3電極13及び第4電極14とを配置しているが、第2電極12及び第4電極14が単一化された1つの電極であってもよい。つまり、ステアリングホイール10には、3つ以上の電極が用いられているだけでよい。
【0034】
[信号源60]
信号源60は、第2電極12及び第4電極14と電気的に接続され、第2電極12及び第4電極14に交流電圧又は直流電圧を印加する。本実施の形態の
図2Aでは、信号源60が第2電極12及び第4電極14に交流電圧を印加する場合を例示している。
【0035】
また、信号源60が第2電極12及び第4電極14に直流電圧を印加する場合、
図2Bに示すように、検知装置1bでは、第1ハイパスフィルタ及び第2ハイパスフィルタの代わりに、第1ローパスフィルタ31a及び第2ローパスフィルタ32aが用いられてもよい。また、ローパスフィルタ41の代わりにハイパスフィルタ41aが用いられてもよい。具体的には、信号源60が第2電極12及び第4電極14に直流電圧を印加する場合、第1電極11は、第1ローパスフィルタ31aを介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続されてもよい。また、第3電極13は、第2ローパスフィルタ32aを介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続されてもよい。この場合、第1ローパスフィルタ31a及び第2ローパスフィルタ32aは、第1所定周波数以下の発汗検知信号を、発汗検知回路30に入力してもよい。ここで、第1所定周波数とは、例えば約0(Hz)であってもよい。また、ハイパスフィルタ41aは、第2所定周波数以上の心拍検知信号を、心拍検知回路40に入力してもよい。ここで、第2所定周波数とは、例えば約5(Hz)であってもよい。なお、第1所定周波数及び第2所定周波数の数値はあくまでも一例であり、本実施の形態には限定されない。なお、第1ローパスフィルタ31a、第2ローパスフィルタ32a、ハイパスフィルタ41aは、バンドパスフィルタを用いて実現してもよい。
【0036】
[第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32]
第1ハイパスフィルタ31は、第1電極11と発汗検知回路30とを電気的に接続する配線21、22上(本実施の形態では配線22上)に配置され、第2ハイパスフィルタ32は、第1ハイパスフィルタ31と別体のフィルタであり、第2電極12と発汗検知回路30とを電気的に接続する配線21、22上(本実施の形態では別の配線22上)に配置されている。第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32のそれぞれは、配線22を介して発汗検知回路30と電気的に接続されている。
【0037】
第1ハイパスフィルタ31は、第1電極11の発汗検知信号の低周波成分を除去することで、所定周波数以上の検知信号を取り出すフィルタ装置である。また、第2ハイパスフィルタ32は、第2電極12の発汗検知信号の低周波成分を除去することで、所定周波数以上の検知信号を取り出すフィルタ装置である。第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32のそれぞれは、所定周波数以上の検知信号を発汗検知回路30に入力する。ここで、所定周波数とは、例えば約1(kHz)以上である。
【0038】
第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32は、バンドパスフィルタを用いて実現してもよい。
【0039】
[発汗検知回路30]
発汗検知回路30は、ステアリングホイール10に接触した運転者の手における発汗状態を検知できる発汗検知器である。発汗検知回路30は、第1電極11及び第3電極13等と電気的に接続されている。具体的には、発汗検知回路30は、第1ハイパスフィルタ31を介して第1電極11と電気的に接続され、第2ハイパスフィルタ32を介して第3電極13と電気的に接続されている。発汗検知回路30には、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32が出力した2つの発汗検知信号が入力される。つまり、発汗検知回路30には、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とが入力される。なお、発汗検知回路30には、第1電極11が出力した信号又は第3電極13が出力した信号だけが入力されてもよく、少なくとも第2電極12が出力した発汗検知信号が入力されてもよく、少なくとも第4電極14が出力した発汗検知信号が入力されてもよい。
【0040】
また、発汗検知回路30は、A/D変換器33を有している。本実施の形態では、発汗検知回路30は、複数のA/D変換器33を有している。複数のA/D変換器33は、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32のそれぞれの出力側と一対一で対応するように電気的に接続されている。
【0041】
発汗検知回路30は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれが検知してデジタル化した発汗検知信号に基づいて、ステアリングホイール10に接触した運転者の手における発汗状態を検知する。
【0042】
具体的には、信号源60が第2電極12及び第4電極14に交流電圧又は直流電圧を印加する。本実施の形態では、信号源60が第2電極12及び第4電極14に交流電圧を印加する。この際に、運転者の手がステアリングホイール10の表面に接触すると、接触部位に対応する第1電極11及び第2電極12の間の抵抗値と、第3電極13及び第4電極14の間の抵抗値とが変化する。このため、発汗検知回路30は、信号源60が第2電極12及び第4電極14に流す交流電圧の電圧値に基づいて、第1電極11及び第2電極12の間の抵抗値の変化と、第3電極13及び第4電極14の間の抵抗値の変化とを測定する。運転者の手がステアリングホイール10に近付く又は接触すると、第1電極11と第2電極12とを接続する運転者の手が介在し、第3電極13と第4電極14とを接続する運転者の手が介在するため、それぞれの抵抗値が変化する。発汗検知回路30は、この抵抗値が変化に応じて発汗状態を検知することができる。また、発汗検知回路30は、抵抗値の大きさに応じて運転者の手の発汗状態を判断してもよく、検知された抵抗値が規定値以下となれば、運転者の手が発汗している発汗状態であると判断してもよい。
【0043】
発汗検知回路30は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれが独立して信号を出力する。具体的には、発汗検知回路30は、第1ハイパスフィルタ31を介して第1電極11から入力された発汗検知信号に基づいて発汗状態を検知した結果と、第2ハイパスフィルタ32を介して第3電極13から入力された発汗検知信号に基づいて発汗状態を検知した結果とをそれぞれ独立して出力する。発汗検知回路30は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれが出力した発汗検知信号に基づく検知結果を示す信号を、情報処理装置50に出力する。
【0044】
なお、本実施の形態では、発汗検知回路30は、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32を有していてもよい。なお、発汗検知回路30には、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32を介さずに発汗検知が入力されてもよい。つまり、検知装置1において、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32は必須の構成要素ではない。
【0045】
[ローパスフィルタ41]
ローパスフィルタ41は、第1電極11及び第3電極13と心拍検知回路40とを電気的に接続する配線21上に配置されている。ローパスフィルタ41は、第1電極11及び第3電極13と電気的に接続され、かつ、心拍検知回路40と電気的に接続されている。
【0046】
ローパスフィルタ41は、第1電極11及び第3電極13の心拍検知信号の高周波成分を除去することで、所定周波数以下の心拍検知信号を取り出すフィルタ装置である。ローパスフィルタ41のそれぞれは、所定周波数以下の心拍検知信号を、心拍検知回路40に入力する。ここで、所定周波数とは、例えば約100(Hz)である。
【0047】
なお、ローパスフィルタ41は、バンドパスフィルタを用いて実現してもよい。
【0048】
[心拍検知回路40]
心拍検知回路40は、第1電極11及び第3電極13から出力されるそれぞれの心拍検知信号に基づいて、運転者の身体の心拍数を検知する心拍計測器である。心拍検知回路40は、ローパスフィルタ41を介して、第1電極11及び第3電極13と電気的に接続されている。心拍検知回路40には、ローパスフィルタ41が出力した2つの心拍検知信号が入力される。つまり、心拍検知回路40には、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とが入力される。つまり、発汗検知回路30及び心拍検知回路40には、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とが入力される。このため、発汗検知回路30及び心拍検知回路40は、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とを実質的に同時に取得することができる。
【0049】
具体的には、心拍検知回路40は、増幅回路43と、A/D変換器44とを有する。
【0050】
増幅回路43は、ローパスフィルタ41と電気的に接続され、かつ、A/D変換器44の入力側と電気的に接続される。増幅回路43は、ローパスフィルタ41から入力された2つの心拍検知信号の差分を増幅する差動アンプである。具体的には、増幅回路43は、ローパスフィルタ41が出力した2つの電極の電位差を差動利得で増幅した差動増幅信号(増幅信号の一例である)を生成する。増幅回路43は、生成した差動増幅信号をA/D変換器44に入力する。
【0051】
A/D変換器44は、増幅回路43の出力側と電気的に接続され、情報処理装置50の入力側と電気的に接続される。A/D変換器44は、入力された差動増幅信号をアナログデジタル変換する。デジタル化された差動増幅信号が生成されることで、心拍検知回路40は、差動増幅信号に基づいて運転者の心拍数を検知することができる。そして、心拍検知回路40は、A/D変換器44によってデジタル化された差動増幅信号を情報処理装置50に入力する。
【0052】
なお、本実施の形態では、心拍検知回路40は、増幅回路43及びA/D変換器44を有するが、さらに、ローパスフィルタ41を有していてもよい。
【0053】
[情報処理装置50]
情報処理装置50は、車両の各部を統括制御するECU(Electronic Control Unit)等の車両制御ユニットであり、例えば運転席に内蔵されている。情報処理装置50は、発汗検知回路30から取得した運転者の手の発汗状態を示す発汗検知信号と、心拍検知回路40から取得した運転者の心拍数を示す心拍検知信号とに基づいて、運転者の精神的状態であるストレス状態を推定する。ストレス状態とは、苛立たしく神経が高ぶるイライラした状態、焦り、集中、緊張等である。
【0054】
具体的には、情報処理装置50は、心拍検知信号に示される心拍間隔(R-R intervals:RRI)と、発汗検知信号に示される指先の皮膚コンダクタンス(Skin Conductance:SC)とを用いた生体指標の変化量から、運転者のストレス状態を推定する。
図4に示すように、運転者における生体指標の変化量は、被験者の安静時の生体指標を基準とするタスク実行中に測定された被験者の生体信号から算出された変化量である。ここで、生体指標とは、CvRR(Coefficient of Variation of R-R intervals)の変化量、RRIの変化量、皮膚コンダクタンスの変化量等である。また、タスクとは、人に関するストレス、痛みに関するストレス、思考による疲労に関するストレス等である。このため、情報処理装置50は、生体指標の変化量によるストレスの要因に基づいて、ストレス状態を推定することができる。情報処理装置50は、推定した運転者のストレス状態を車両に搭載されている表示装置に表示させる。
【0055】
このように、情報処理装置50は、発汗検知回路30の検知結果を示す発汗検知信号及び心拍検知回路40の検知結果を示す心拍検知信号に基づいて、運転者の精神的状態であるストレス状態を推定して、表示装置に表示させることで、ドライバモニタリングとしての機能を有する。
【0056】
[動作]
次に、検知装置1の動作について説明する。
【0057】
本動作では、運転者が車室内で座席に座って両手でハンドルを握っている状態を想定している。本実施の形態の検知装置1では、第1電極11及び第3電極13は、ステアリングホイール10への運転者の手の接触を検知した信号を第1ハイパスフィルタ31、第2ハイパスフィルタ32及びローパスフィルタ41に入力させる。具体的には、第1電極11及び第3電極13のそれぞれが出力した信号は、発汗検知信号として第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32のそれぞれに入力されると同時に、心拍検知信号としてローパスフィルタ41に入力される。
【0058】
まず、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32のそれぞれは、第1電極11及び第3電極13のそれぞれから入力された発汗検知信号の低周波成分を除去し、所定周波数以上の検知信号を発汗検知回路30に入力させる。
【0059】
次に、発汗検知回路30は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれから取得した発汗検知信号に基づいて、ステアリングホイール10に接触した運転者の手における発汗状態を検知する。具体的には、発汗検知回路30は、信号源60が第2電極12及び第4電極14に流す交流電圧の電圧値に基づいて、第1電極11及び第2電極12の間の抵抗値の変化と、第3電極13及び第4電極14の間の抵抗値の変化とを測定する。発汗検知回路30は、この抵抗値が変化を計測することで、運転者の手の発汗状態を検知することができる。発汗検知回路30は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれが出力した発汗検知信号に基づく検知結果を示す信号を、情報処理装置50に出力する。
【0060】
また、ローパスフィルタ41は、第1電極11及び第3電極13のそれぞれから入力された心拍検知信号の高周波成分を除去し、所定周波数以下の心拍検知信号を心拍検知回路40に入力させる。
【0061】
心拍検知回路40の増幅回路43は、ローパスフィルタ41から出力された2つの心拍検知信号に示される電位の電位差を差動利得で増幅する。心拍検知回路40のA/D変換器44は、増幅した差動増幅信号をデジタル化することで、デジタル化された差動増幅信号を情報処理装置50に入力する。
【0062】
このように、本実施の形態における検知装置1では、発汗状態の検知と心拍数の検知とを同時に行うことができる。このため、情報処理装置50には、発汗検知回路30から検知結果を示す信号と、心拍検知回路40からデジタル化された差動増幅信号とを実質的に同時に取得することができる。その結果、情報処理装置50は、発汗検知回路30から検知結果を示す信号と、心拍検知回路40からデジタル化された差動増幅信号とに基づいて運転者の精神状態を精度よく推定することができる。このため、検知装置1は、運転者の精神状態を推定する精度を高めることができる。
【0063】
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置1の作用効果について説明する。
【0064】
以上のように、本実施の形態における検知装置1は、ステアリングホイール10に配置される第1電極11と、第1電極11と電気的に接続されないようにステアリングホイール10に配置される第2電極12と、ステアリングホイール10において、第1電極11及び第2電極12から離間して配置される第3電極13と、第1電極11が出力した信号、又は、第2電極12が出力した信号が少なくとも入力される発汗検知回路30と、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とが入力される心拍検知回路40とを備える。
【0065】
これによれば、運転者がステアリングホイール10を把持する際に、運転者の手が第1電極11、第2電極12及び第3電極13と同時に接触することができる。
【0066】
したがって、この検知装置1では、第1電極11及び第2電極12によって運転者の手の発汗状態と、第1電極11及び第3電極13によって運転者の心拍数とを同時に検知することができる。
【0067】
特に、運転者の手の発汗状態を検知する電極と、心拍数を検知する電極とを別々の電極にしなくても、本実施の形態では、第1電極11、第2電極12及び第3電極13によって、運転者の手の発汗状態と運転者の心拍数とを同時に検知することができる。このため、検知装置1の構成の複雑化を抑制するとともに、電極を共通化することで、電極数の増大による検知装置1の大型化と製造コストの高騰化とを抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態における検知装置1は、第3電極13と電気的に接続されないようにステアリングホイール10に配置された第4電極14を備える。また、第1電極11及び第2電極12は、ステアリングホイール10の一方側(右側又は左側)において、ステアリングホイール10の周方向に沿って配置される。そして、第3電極13及び第4電極14は、ステアリングホイール10の他方側(左側又は右側)において、ステアリングホイール10の周方向に沿って配置されている。
【0069】
例えば、運転者が車両を運転する際、ステアリングホイール10の両側を把持すると想定される。このため、本実施の形態では、運転者がステアリングホイール10を把持し易い一方側に第1電極11及び第2電極12を配置し、他方側に第3電極13及び第4電極14を配置することで、運転者の手の発汗状態と、運転者の心拍数とを同時に検知することができる。
【0070】
また、さらに、検知装置1に第4電極14を設けることで、ステアリングホイール10を把持する運転者の両手の発汗状態を検知することができる。このため、運転者の手の発汗状態を精度よく検知することができるようになる。
【0071】
また、本実施の形態における検知装置1は、第2電極12及び第4電極14に交流電圧又は直流電圧を印加する信号源60を備える。そして、発汗検知回路30及び心拍検知回路40には、第1電極11が出力した信号(発汗検知信号及び心拍検知信号)と第3電極13が出力した信号(発汗検知信号及び心拍検知信号)とが入力される。
【0072】
これによれば、発汗検知回路30には、印加された交流電圧に応じて、第1電極11が出力した信号(発汗検知信号)と第3電極13が出力した信号(発汗検知信号)とが入力される。また、心拍検知回路40には、運転者の両手が第1電極11と第3電極13とに接触するため、第1電極11が出力した信号(心拍検知信号)と第3電極13が出力した信号(心拍検知信号)とが入力される。これにより、運転者の手の発汗状態を検知するための第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14と、心拍数を検知するための第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14とを共通化することができる。
【0073】
また、本実施の形態における検知装置1において、信号源60が第2電極12及び第4電極14に交流電圧を印加する場合、第1電極11は、第1ハイパスフィルタ31を介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続される。そして、第3電極13は、第2ハイパスフィルタ32を介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続される。
【0074】
これによれば、交流電圧が印加されない出力側の第1電極11及び第3電極13と電気的に接続されるため、人の手が介在しない交流電圧が印加される入力側の第2電極12及び第4電極14から信号を取得する場合に比べて、心拍検知回路40に入力される心拍検知信号の振幅が小さくなりやすい。このため、心拍検知回路40に入力されるノイズが小さくなることで、心拍検知回路40における心拍数の検知精度を高めることができる。
【0075】
また、第1ハイパスフィルタ31及び第2ハイパスフィルタ32によって発汗検知回路30に入力されるノイズを小さくすることができるため、発汗検知回路30における発汗状態の検知精度を高めることができる。
【0076】
また、本実施の形態における検知装置1において、信号源60が第2電極12及び第4電極14に直流電圧を印加する場合、第1電極11は、第1ローパスフィルタ31aを介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第3電極13は、第2ローパスフィルタ32aを介して発汗検知回路30と電気的に接続され、かつ、ハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続される。
【0077】
このように、簡易な構成の直流信号源を用いても、発汗検知回路30が発汗状態を検知することができるとともに、心拍検知回路40が心拍数を検知することができる。
【0078】
また、本実施の形態における検知装置1において、第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14のそれぞれは、櫛歯状、メアンダ状、三角波状、又は、螺旋状である。
【0079】
例えば、これらの電極がステアリングホイールの周方向に沿って単に帯状に配置されている場合、運転者がステアリングホイールを手で把持したときに、その手がステアリングホイールの周方向と交差する方向にズレると、手に対する電極との検知面積が変わり、発汗検知回路が検知する精度に変化が生じてしまう。
【0080】
しかしながら、本実施の形態によれば、運転者がステアリングホイール10を手で把持した場合、その手がステアリングホイール10の周方向と交差する方向にズレても、一方の手に対する第1電極11と第2電極12との検知面積(接触面積)、及び、他方の手に対する第3電極13と第4電極14との検知面積の変化を、帯状に配置した電極の場合に比べて小さくすることができる。このため、運転者がステアリングホイール10のどの位置を把持しても、運転者の手の発汗状態を精度よく検知することができる。
【0081】
(実施の形態2)
本実施の形態では、信号源60及びローパスフィルタ41が第1電極11及び第3電極13と電気的に接続され、第1ハイパスフィルタ31が第2電極12、第2ハイパスフィルタ32が第4電極14と電気的に接続されている点等で、実施の形態1と相違する。本実施の形態の検知装置1cの構成は、特に明記しない場合、実施の形態1の検知装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0082】
本実施の形態では、車両に備えられた検知装置1cの構成及び機能について、
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
【0083】
図5Aは、実施の形態2に係る検知装置1cを示すブロック図である。
図5Bは、実施の形態2に係る別の検知装置1dを示すブロック図である。
【0084】
本実施の形態の検知装置1cでは、第2電極12は配線22を介して第1ハイパスフィルタ31と電気的に接続され、第4電極14は別の配線22を介して第2ハイパスフィルタ32と電気的に接続されている。また、第1電極11及び第3電極13はそれぞれの配線21を介してローパスフィルタ41と電気的に接続されている。
【0085】
つまり、第2電極12及び第4電極14のそれぞれは、ハイパスフィルタとも電気的に接続されており、ローパスフィルタ41と電気的に接続されていない。また、第1電極11及び第3電極13は、ローパスフィルタ41と電気的に接続されており、いずれのハイパスフィルタとも電気的に接続されていない。
【0086】
本実施の形態では、第1電極11及び第3電極13はステアリングホイール10の内周側に配置され、第2電極12及び第4電極14はステアリングホイール10の外周側に配置されている。
【0087】
なお、本実施の形態では、第2電極12及び第4電極14が単一化された1つの電極であってもよい。
【0088】
本実施の形態では、発汗検知回路30には、第2電極12が出力した信号である発汗検知信号と、第4電極14が出力した信号である発汗検知信号とが入力される。
【0089】
本実施の形態では、心拍検知回路40には、第1電極11が出力した信号である心拍検知信号と、第3電極13が出力した信号である心拍検知信号とが入力される。
【0090】
信号源60は、第1電極11及び第3電極13と電気的に接続され、第1電極11及び第3電極13に交流電圧又は直流電圧を印加する。本実施の形態の
図5Aでは、信号源60が第1電極11及び第3電極13に交流電圧を印加する場合を例示している。信号源60が第1電極11及び第3電極13に交流電圧を印加する場合、第1電極11はローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第2電極12は第1ハイパスフィルタ31を介して発汗検知回路30と電気的に接続され、第3電極13はローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第4電極14は第2ハイパスフィルタ32を介して発汗検知回路30と電気的に接続される。
【0091】
また、信号源60が第1電極11及び第3電極13に直流電圧を印加する場合、
図5Bに示すように、第1ハイパスフィルタ及び第2ハイパスフィルタの代わりに、第1ローパスフィルタ31a及び第2ローパスフィルタ32aが用いられてもよい。また、ローパスフィルタ41の代わりにハイパスフィルタ41aが用いられてもよい。具体的には、信号源60が第1電極11及び第3電極13に直流電圧を印加する場合、第1電極11はハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続されてもよく、第2電極12は第1ローパスフィルタ31aを介して発汗検知回路30と電気的に接続されてもよく、第3電極13はハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続されてもよく、第4電極14は第2ローパスフィルタ32aを介して発汗検知回路30と電気的に接続されてもよい。
【0092】
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置1cの作用効果について説明する。
【0093】
以上のように、本実施の形態における検知装置1cは、第1電極11及び第3電極13に交流電圧又は直流電圧を印加する信号源60を備える。また、発汗検知回路30には、第2電極12が出力した信号(発汗検知信号)と第4電極14が出力した信号(発汗検知信号)とが入力される。そして、心拍検知回路40には、第1電極11が出力した信号(心拍検知信号)と第3電極13が出力した信号(心拍検知信号)とが入力される。
【0094】
これによれば、発汗検知回路30には、印加された交流電圧に応じて、第2電極12が出力した信号と第4電極14が出力した信号とが入力される。また、心拍検知回路40には、運転者の両手が第1電極11と第3電極13とに接触するため、第1電極11が出力した信号と第3電極13が出力した信号とが入力される。これにより、運転者の手の発汗状態を検知するための第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14と、心拍を検知するための第1電極11、第2電極12、第3電極13及び第4電極14とを共通化することができる。
【0095】
また、本実施の形態における検知装置1cにおいて、信号源60が第1電極11及び第3電極13に交流電圧を印加する場合、第1電極11は、ローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第2電極12は、第1ハイパスフィルタ31を介して発汗検知回路30と電気的に接続され、第3電極13は、ローパスフィルタ41を介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第4電極14は、第2ハイパスフィルタ32を介して発汗検知回路30と電気的に接続される。
【0096】
これによれば、発汗検知回路30が入力する信号の電極と、心拍検知回路40に入力する電極とを異ならせることができるため、ローパスフィルタ41を急峻にすることで心拍検知回路40で発生したサーマルノイズが発汗検知回路30に入力されてしまうことを抑制することができる。このため、発汗検知回路30における発汗状態の検知精度を高めることができる。
【0097】
また、本実施の形態における検知装置1cにおいて、信号源60が第1電極11及び第3電極13に直流電圧を印加する場合、第1電極11は、ハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第2電極12は、第1ローパスフィルタ31aを介して発汗検知回路30と電気的に接続され、第3電極13は、ハイパスフィルタ41aを介して心拍検知回路40と電気的に接続され、第4電極14は、第2ローパスフィルタ32aを介して発汗検知回路30と電気的に接続される。
【0098】
このように、簡易な構成の直流信号源を用いても、発汗検知回路30が発汗状態を検知することができるとともに、心拍検知回路40が心拍数を検知することができる。
【0099】
(その他変形例等)
以上、本開示について、各実施の形態1、2に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態1、2に限定されるものではない。
【0100】
例えば、上記各実施の形態1に係る検知装置1eは、3つの電極を用いる場合、
図6のように構成されていてもよい。
図6は、その他変形例に係る検知装置1eを示すブロック図である。
図6に示すように、3つの電極は、例えば、第1電極11、第2電極12及び第3電極13であってもよい。この場合、第3電極13は、配線21を介してローパスフィルタ41と電気的に接続されているだけでよい。第3電極13とローパスフィルタ41とを電気的に接続する配線21が、発汗検知回路30と電気的に接続されないため、第2ハイパスフィルタが検知装置1eに設けられていなくてもよい。これにより、発汗検知回路30は、第1電極11から出力された発汗検知信号が入力される1つのA/D変換器33を有していてもよい。また、信号源60は第2電極12に交流電圧又は直流電圧を印加してもよい。また、第2電極12に直流電圧を印加する場合、第2ローパスフィルタが検知装置1eに設けられていなくてもよい。なお、図示は省略するが、3つの電極が第1電極11、第3電極13及び第4電極14であってもよい。この場合、信号源60は第4電極14に交流電圧又は直流電圧を印加してもよい。
【0101】
また、上記各実施の形態2に係る検知装置1fは、3つの電極を用いる場合、
図7のように構成されていてもよい。
図7は、その他変形例に係る別の検知装置1fを示すブロック図である。
図7に示すように、3つの電極は、例えば、第1電極11、第2電極12及び第3電極13であってもよい。この場合、第2ハイパスフィルタは検知装置1fに設けられていなくてもよい。これにより、発汗検知回路30は、第2電極12から出力された発汗検知信号が入力される1つのA/D変換器33を有していてもよい。また、信号源60は第1電極11に交流電圧又は直流電圧を印加してもよい。第1電極11に直流電圧を印加する場合、第2ローパスフィルタが検知装置1fに設けられていなくてもよい。なお、図示は省略するが、3つの電極が第1電極11、第3電極13及び第4電極14であってもよい。この場合、信号源60は第4電極14に交流電圧又は直流電圧を印加してもよい。
【0102】
また、上記各実施の形態1、2に係る検知装置を実現するプログラムは、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0103】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続及び設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0104】
なお、上記各実施の形態1、2の検知装置は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0105】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の各実施の形態1、2は例示された数字に制限されない。
【0106】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0107】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0108】
以下に、上記各実施の形態1、2に基づいて説明した検知装置の特徴を示す。
<技術1>
ステアリングホイールに配置される第1電極と、
前記第1電極と電気的に接続されないように前記ステアリングホイールに配置された第2電極と、
前記ステアリングホイールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極から離間して配置される第3電極と、
前記第1電極が出力した信号、又は、前記第2電極が出力した信号が少なくとも入力される発汗検知回路と、
前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される心拍検知回路とを備える
検知装置。
<技術2>
前記第3電極と電気的に接続されないように前記ステアリングホイールに配置された第4電極を備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記ステアリングホイールの一方側において、前記ステアリングホイールの周方向に沿って配置され、
前記第3電極及び前記第4電極は、前記ステアリングホイールの他方側において、前記ステアリングホイールの周方向に沿って配置されている
技術1に記載の検知装置。
<技術3>
前記第2電極及び前記第4電極に交流電圧又は直流電圧を印加する信号源を備え、
前記発汗検知回路及び前記心拍検知回路には、前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される
技術2に記載の検知装置。
<技術4>
前記第1電極及び前記第3電極に交流電圧又は直流電圧を印加する信号源を備え、
前記発汗検知回路には、前記第2電極が出力した信号と前記第4電極が出力した信号とが入力され、
前記心拍検知回路には、前記第1電極が出力した信号と前記第3電極が出力した信号とが入力される
技術2に記載の検知装置。
<技術5>
前記信号源が前記第2電極及び前記第4電極に交流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、
第1ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、
第2ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
前記ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続される
技術3に記載の検知装置。
<技術6>
前記信号源が前記第2電極及び前記第4電極に直流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、
第1ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、
第2ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、かつ、
前記ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続される
技術3に記載の検知装置。
<技術7>
前記信号源が前記第1電極及び前記第3電極に交流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第2電極は、第1ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、前記ローパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第4電極は、第2ハイパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続される
技術4に記載の検知装置。
<技術8>
前記信号源が前記第1電極及び前記第3電極に直流電圧を印加する場合、
前記第1電極は、ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第2電極は、第1ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続され、
前記第3電極は、前記ハイパスフィルタを介して前記心拍検知回路と電気的に接続され、
前記第4電極は、第2ローパスフィルタを介して前記発汗検知回路と電気的に接続される
技術4に記載の検知装置。
<技術9>
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極及び前記第4電極のそれぞれは、櫛歯状、メアンダ状、三角波状、又は、螺旋状である
技術2~8のいずれか1に記載の検知装置。
【0109】
その他、各実施の形態1、2に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態1、2における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本開示の検知装置は、例えば、車両のステアリングホイール若しくはバイクのグリップ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1、1b、1c、1d、1e、1f 検知装置
10 ステアリングホイール
11 第1電極
12 第2電極
13 第3電極
14 第4電極
30 発汗検知回路
31 第1ハイパスフィルタ
31a 第1ローパスフィルタ
32 第2ハイパスフィルタ
32a 第2ローパスフィルタ
40 心拍検知回路
41 ローパスフィルタ
41a ハイパスフィルタ
60 信号源