(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179009
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/095 20060101AFI20231212BHJP
B23K 9/10 20060101ALI20231212BHJP
B23K 9/32 20060101ALI20231212BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B23K9/095 515A
B23K9/10 A
B23K9/32 Z
B23K31/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091994
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】302066294
【氏名又は名称】東和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 義博
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA03
4E082AA04
4E082EA04
(57)【要約】
【課題】 溶接個所を効率的に撮影できる溶接システムを提供する。
【解決手段】 溶接システム1は、溶接トーチ3022と、前記溶接トーチを三次元空間上で移動させる多関節ロボット30と、前記溶接トーチに固定され、前記溶接トーチによる溶接個所を撮影するカメラ350と、前記溶接トーチによる溶接個所と、前記カメラとの間で遮熱する透明な遮熱体3502と有する。前記溶接トーチ3022は、くの字状に屈曲した形状を有し、前記カメラ350は、屈曲した前記溶接トーチの凹部側の面に固定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチと、
前記溶接トーチを三次元空間上で移動させる多関節ロボットと、
前記溶接トーチに固定され、前記溶接トーチによる溶接個所を撮影するカメラと
を有する溶接システム。
【請求項2】
前記溶接トーチによる溶接個所と、前記カメラとの間で遮熱する透明な遮熱体
をさらに有する請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記溶接トーチは、くの字状に屈曲した形状を有し、
前記カメラは、屈曲した前記溶接トーチの凹部側の面に固定されている
請求項1に記載の溶接システム。
【請求項4】
安全柵の中に設置された無線通信中継機と、
前記安全柵の外に設置され、前記カメラにより撮影された画像データを、前記無線通信中継機を介して受信するコンピュータと
をさらに有し、
前記多関節ロボットは、前記安全柵の中に設置されている
請求項1に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、被溶接部材の間に形成された狭開先内に、電極部材を備えた溶接トーチと溶加材を供給するワイヤーフィーダとの先端部を溶接進行方向に所定間隔で挿入し、前記被溶接部材と電極部材との間にアークを発生させて狭開先を溶接する狭開先溶接監視装置であって、前記アークを発生させる溶接部を撮像する撮像手段を備え、前記撮像手段は、前記ワイヤーフィーダに対して溶接トーチと反対側の狭開先上方から前記溶接部を撮像するように配置されたレンズ部材を有し、前記レンズ部材は、前記ワイヤーフィーダの幅寸法よりも大きいレンズ面を有すると共に、レンズ面と前記溶接部との間にアーク光の光路が確保されるように、前記ワイヤーフィーダの近傍に配置されていることを特徴とする狭開先溶接監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、溶接個所を効率的に撮影できる溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る溶接システムは、溶接トーチと、前記溶接トーチを三次元空間上で移動させる多関節ロボットと、前記溶接トーチに固定され、前記溶接トーチによる溶接個所を撮影するカメラとを有する。
【0006】
好適には、前記溶接トーチによる溶接個所と、前記カメラとの間で遮熱する透明な遮熱体をさらに有する。
【0007】
好適には、前記溶接トーチは、くの字状に屈曲した形状を有し、前記カメラは、屈曲した前記溶接トーチの凹部側の面に固定されている。
【0008】
好適には、安全柵の中に設置された無線通信中継機と、前記安全柵の外に設置され、前記カメラにより撮影された画像データを、前記無線通信中継機を介して受信するコンピュータとをさらに有し、前記多関節ロボットは、前記安全柵の中に設置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶接個所を効率的に撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における溶接システム1の構成を例示する図である。
【
図2】溶接システム1における撮影画像通信設備を例示する図である。
【
図3】溶接装置3の溶接トーチ3022近傍を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態における溶接システム1の構成を例示する図である。
図2は、溶接システム1における撮影画像通信設備を例示する模式図である。
図1に例示すように、溶接システム1は、溶接装置3、無線通信中継機5、ビデオエンコーダー7、及びユーザ端末9を有する。溶接装置3及び無線通信中継機5は、安全柵Fの内側に配置され、ビデオエンコーダー7及び及びユーザ端末9は、安全柵Fの外側に配置される。なお、本例の安全柵Fは、鉄製の柵である。
【0012】
溶接装置3は、溶接ロボット30、及び、撮影装置35を有する。
溶接ロボット30は、溶接現場で用いられる産業用ロボットである。溶接ロボット30は、多関節型溶接ロボット本体302と、制御装置304と、ティーチングペンダント306とを含む。
多関節型溶接ロボット本体302(以下ロボット本体302)は、先端に設けた溶接トーチ3022を三次元空間上で移動させる多関節型の溶接ロボット本体である。ロボット本体302は、例えば垂直多関節型、水平多関節型、又は、パラレルリンク型である多関節型の溶接ロボット本体であり、本例のロボット本体302は、6軸(6自由度)である垂直多関節型の溶接ロボット本体である。また、ロボット本体302は、アーク溶接ロボットであり、例えば、シールドガスとして炭酸ガスを使用するCO2溶接、シールドガスとしてアルゴンガスとCO2との混合ガスを使用するMAG溶接、シールドガスとしてアルゴンガスを使用するMIG溶接であり、本例のロボット本体302は、MIG溶接である。また、ロボット本体302の設置形態としては、床置き設置、天つり設置、壁掛け設置、傾斜設置が可能である。
【0013】
制御装置304は、ロボット本体302を制御する制御装置である。制御装置304は、ティーチングペンダント306を介して読み込んだプログラムに従って処理する処理部、及びロボット本体302と通信するインターフェース回路等を含む。
ティーチングペンダント306は、ロボット本体302に接続され、ロボット本体302を動作させるプログラムの作成、及び、ティーチング作業のための入力・操作装置である。
【0014】
図2に例示すように、撮影装置35は、カメラ350、コントローラ352、及びACアダプター354を含む。
カメラ350は、ロボット本体302の先端に設けた溶接トーチ3022に固定され、溶接トーチ3022による溶接個所を撮影する撮影装置である。カメラ350は、溶接トーチ3022の先端を撮影範囲内に含むように、溶接トーチ3022の基端に固定されているため、溶接時における溶接トーチ3022の角度が、例えば水平状態、垂直状態、又は回転しても、溶接トーチ3022の先端との離隔距離や離間角度は一定となる。これにより、カメラ350は、溶接個所が直線状及び曲線状であっても、溶接トーチ3022の先端を撮影することができる。なお、カメラ350の詳細な構成は後述する。
コントローラ352は、カメラ350のカメラ設定の操作を行う操作装置である。コントローラ352は、コントローラ用ケーブルにより、カメラ350と操作可能に接続される。また、コントローラ352は、LANケーブルにより無線LANコンバータ装置及び無線LAN送信機と接続している。
アダプター354は、カメラ350及びコントローラ352に対して、外部電源から電力を供給する電子機器である。本例のアダプター354は、ACアダプターである。
無線LANコンバータ装置356は、有線LANの接続端子を備えている機器を無線通信可能にする変換装置である。
無線LAN送信機357は、無線通信用の電波を送信する送信装置であり、例えば無線LANルーターである。無線LAN送信機357は、インターネット回線を介して、カメラ350に撮影された画像データを、ビデオエンコーダー7及びユーザ端末9に対して送信する。
【0015】
無線通信中継機5(以下、中継機5)は、無線LAN送信機357から、ビデオエンコーダー7およびユーザ端末9に送信する電波を中継する中継機である。本例の中継機5は、安全柵Fの内側に位置する無線LAN送信機357から、安全柵Fの外側に位置するビデオエンコーダー7及びユーザ端末9に対して、良好な電波状態で通信するよう中継ぎする。
【0016】
ビデオエンコーダー7は、カメラ350により撮影された画像データを、中継機5を介して受信する情報処理装置である。ビデオエンコーダー7は、カメラ350により撮影された画像データ、例えば静止画像や動画像を記録する機能を備える。なお、画像データを中継機5を介して受信し、かつ、受信した画像データを記録する機能を備えた装置であれば、PC(パーソナルコンピュータ)でも既存のレコーダーであってもよい。ビデオエンコーダー7は、本発明に係るコンピュータの一例である。
【0017】
ユーザ端末9は、カメラ350により撮影された画像データを、無線通信中継機を介して受信する携帯可能な情報端末装置であり、例えば、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等である。
このように、溶接システム1は、安全柵Fの内側から外側に対して、中継機5を介して画像データを送信することにより、良好な電波状態で画像データを、ビデオエンコーダー7及びユーザ端末9に送信することができる。
【0018】
図3は、溶接装置3の溶接トーチ3022近傍を例示する図である。
図3(A)は、正位置である溶接トーチ3022を例示する図であり、
図3(B)は、逆位置である溶接トーチ3022を例示する図である。
図3(A)及び
図3(B)に例示するように、溶接トーチ3022は、くの字状に屈曲した形状を有し、カメラ350は、屈曲した溶接トーチ3022の凹部側の面のうち、溶接トーチ3022の基端に固定されている。
【0019】
カメラ350は、溶接トーチ3022の先端近傍を撮影する小型の撮影装置本体であり、後述する遮熱体3502の内部に位置する。カメラ350は、アーク溶接時に発生するアーク光を減光するフィルター(減光フィルター)を備えるカメラであってもよいし、減光フィルターを備えていないカメラであってもよい。なお、本例のカメラ350は、減光フィルターを備える溶接可視用のカメラであり、具体的には、ワイドダイナミックレンジCMOS撮像素子を採用し、アーク溶接時に発生するアーク光等によるハレーションを低減した小型Cマウントカメラである。また、カメラ350の大きさは、縦44mm×横34mm×奥行き40mmである大きさである。
【0020】
遮熱体3502は、溶接時において、溶接トーチ3022による溶接個所と、カメラ350との間を遮熱する金属製の遮熱体である。本例の遮熱体3502は、カメラ350を収納できる大きさの直方体の形状に構成された金属製の収納ケースであり、溶接トーチ3022の基端に固定される。遮熱体3502は、溶接個所とカメラ350との間に位置する板材3502A、換言すると、カメラ350のレンズと対向する板材3502Aを熱間圧延軟鋼板で形成し、それ以外の板材をアルミニウム板で形成する。また、遮熱体3502は、カメラ350のレンズと対向する位置の板材3502Aの一部に、フィルター3503を含む。
【0021】
フィルター3503は、カメラ350のレンズを保護する透光部材、又は、減光フィルターである。フィルター3503は、減光フィルター付きのカメラ350を遮熱体3502に収納し撮影する場合、透光部材である透明なガラス板である。また、フィルター3503は、減光フィルターなしのカメラ350を遮熱体3502に収納し撮影する場合、減光フィルターである。このように、フィルター3503は、カメラ350における減光フィルターの有無により適宜選択することができる。
【0022】
図4は、溶接システム1の概要を説明する図である。
以下、溶接システム1のティーチング中の動作状態を説明するにあたり、溶接ロボット30は、ティーチングペンダント306を介して読み込んだプログラムに従って動作するものとし、撮影装置35は、プログラムに従って溶接中のところを撮影するものとする。
図4に例示するように、まず、溶接ロボット30は、溶接トーチ3022の先端とワークWの表面との間にアークを発生させ溶接を行う。撮影装置35は、カメラ350で溶接トーチ3022の先端とワークWの表面とを撮影する。撮影装置35は、中継機5に対してカメラ350により撮影された画像データを無線通信用の電波で送信する。
【0023】
次に、中継機5は、撮影装置35により送信された画像データを、安全柵Fの外側に位置するビデオエンコーダー7及びユーザ端末9に送信する。中継機5は、金属部材により形成された安全柵Fにより、無線通信用電波の電波強度が弱まらないよう、中継ぎを行う。
【0024】
次に、ビデオエンコーダー7は、中継機5を介して受信した画像データを記録する。即ち、ビデオエンコーダー7は、カメラ350により撮影されたティーチング作業中の撮影画像を記録する。また、ユーザ端末9は、ティーチング作業中におけるカメラ350に撮影された撮影画像をで表示する。これによりユーザは、ティーチング作業中の撮影画像をリアルタイムで、溶接状態を確認する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態における溶接システム1によれば、溶接トーチ3022とカメラ350が一体化しているため、焦点位置等の調整が不要であり、ティーチング作業中である溶接トーチ3022の位置や角度が変化しても、カメラ350で溶接トーチ3022の先端を撮影することができる。なお、溶接トーチ3022の基端にカメラ350を一体化することができれば、他の溶接装置の溶接トーチにも適応可能である。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 溶接システム
3 溶接装置
30 溶接ロボット
302 多関節型溶接ロボット本体
3022 溶接トーチ
304 制御装置
306 ティーチングペンダント
35 撮影装置
350 カメラ
3502 遮熱体
3503 フィルタ―
352 コントローラ
354 アダプター
356 無線LANコンバータ装置
357 無線LAN送信機
5 無線通信中継機
7 ビデオエンコーダー
9 ユーザ端末9