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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179010
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】養殖用水槽
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A01K63/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091996
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000140074
【氏名又は名称】株式会社羽根
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】平山 正
(72)【発明者】
【氏名】羽根 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】森 健剛
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA01
2B104CB23
2B104CB30
(57)【要約】
【課題】排水口の周囲に残る異物が少なくなるように、前記異物を排水口から効果的に排出できる養殖用水槽を提供する。
【解決手段】魚介類の養殖に用いる水槽1の底部2の中央部には排水口Hが形成される。底部2の上面2Aは、排水口Hに近づくにつれて下降する傾斜面E3を含む。排水口Hに装着される軸受部材Bにより排水口Hの鉛直中心軸Aまわりに回転可能に支持され、排水口Hを流下する水流F2により鉛直中心軸Aまわりに回転する回転部材5と、回転部材5に取り付けられ、鉛直中心軸Aに直交する径方向Dへ延びる径方向延出部材6とを備える。回転部材5とともに回転する径方向延出部材6により、排水口Hの周囲の上面2A上の異物を水中に浮遊させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類の養殖に用いる水槽であって、
前記水槽の底部の中央部には排水口が形成され、
前記底部の上面は、前記排水口に近づくにつれて下降する傾斜面を含み、
前記排水口に装着される軸受部材により前記排水口の鉛直中心軸まわりに回転可能に支持され、前記排水口を流下する水流により前記鉛直中心軸まわりに回転する回転部材と、
前記回転部材に取り付けられ、前記鉛直中心軸に直交する径方向へ延びる径方向延出部材と、
を備え、
前記回転部材とともに回転する前記径方向延出部材により、前記排水口の周囲の前記上面上の異物を水中に浮遊させる、
養殖用水槽。
【請求項2】
前記軸受部材は、滑り軸受であり、前記回転部材を支持する第1円環部、及び前記第1円環部から前記径方向の外方へ離間する第2円環部、並びに、前記第1円環部と前記第2円環部とを繋ぐ、前記鉛直中心軸の周方向へ離間する複数の連結部からなり、
前記回転部材は、前記第1円環部の通孔に遊嵌する回転軸、及び前記回転軸の下端部に取り付けられる羽根部材からなる、
請求項1に記載の養殖用水槽。
【請求項3】
前記径方向延出部材は、略水平の棒状体、及び前記棒状体から下方へ突出する毛状体又は板状体からなり、
前記毛状体又は前記板状体の先端部が前記底部の上面を摺動する、
請求項1又は2に記載の養殖用水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の養殖に用いる水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類の養殖に用いる水槽として、平面視多角形又は円形を成し、底部の中央部に排水口(例えば、特許文献1の排水口2参照)を設けるとともに、底部の上面を排水口に近づくにつれて下降する傾斜面としたものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。このような養殖用水槽は、前記傾斜面を設けること、及び魚介類の生育を促進するための渦巻き状の水流を起こすことで、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻並びに残餌等の水中の異物を排水口に向けて集めやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-224217号公報
【特許文献2】実開昭56-111768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、養殖用水槽の底部の上面を排水口に近づくにつれて下降する傾斜面にすること、及び渦巻き状の水流を起こすことだけでは、排水口の周囲の前記傾斜面上に前記異物が残る場合がある。
【0005】
本発明は、排水口の周囲に残る前記異物が少なくなるように、前記異物を排水口から効果的に排出できる養殖用水槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る養殖用水槽は、魚介類の養殖に用いる水槽であって、前記水槽の底部の中央部には排水口が形成される。前記底部の上面は、前記排水口に近づくにつれて下降する傾斜面を含む。前記排水口に装着される軸受部材により前記排水口の鉛直中心軸まわりに回転可能に支持され、前記排水口を流下する水流により前記鉛直中心軸まわりに回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられて、前記鉛直中心軸に直交する径方向へ延びる径方向延出部材とを備える。前記回転部材とともに回転する前記径方向延出部材により、前記排水口の周囲の前記上面上の異物を水中に浮遊させる。
【0007】
このような構成によれば、排水口を流下する水流により鉛直中心軸まわりに回転する回転部材とともに径方向延出部材が回転し、それにより排水口の周囲の水槽の底部の上面に付着している異物を水中に浮遊させる。水中に浮遊した前記異物は、排水口に向かう水流によって排水口へ誘導されるので、前記異物を排水口から効果的に排出できる。
【0008】
ここで、前記軸受部材は、滑り軸受であり、前記回転部材を支持する第1円環部、及び前記第1円環部から前記径方向の外方へ離間する第2円環部、並びに、前記第1円環部と前記第2円環部とを繋ぐ、前記鉛直中心軸の周方向へ離間する複数の連結部からなるのが好ましい実施態様である。前記回転部材は、前記第1円環部の通孔に遊嵌する回転軸、及び前記回転軸の下端部に取り付けられる羽根部材からなるのが好ましい実施態様である。
【0009】
このような構成によれば、回転部材の回転軸を滑り軸受に遊嵌させ、前記回転軸を滑り軸受で支持した状態で、滑り軸受の周方向に隣り合う連結部間の隙間から排水口を水が流下し、回転軸の下端部の羽根部材を回転させる。それにより、回転部材及び径方向延出部材の回転動作が円滑になるとともに、前記回転動作を長期間にわたって安定させることができる。
【0010】
また、前記径方向延出部材は、略水平の棒状体、及び前記棒状体から下方へ突出する毛状体又は板状体からなり、前記毛状体又は前記板状体の先端部が前記底部の上面を摺動するのが好ましい実施態様である。
【0011】
このような構成によれば、径方向延出部材が回転する際に、下方へ突出する毛状体又は板状体の先端が水槽の底部の上面を摺動しながら、前記上面に付着している異物を掃くので、排水口の周囲の前記上面上の異物をより効率的に水中に浮遊させて、前記異物を排水口からより効果的に排出できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の養殖用水槽によれば、排水口を流下する水流により回転部材及び径方向延出部材が回転し、排水口の周囲の水槽の底部の上面に付着している異物を水中に浮遊させるので、前記異物が少なくなるように、前記異物を排水口から効果的に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る養殖用水槽の平面図である。
図2】前記養殖用水槽の縦断面正面図である。
図3】軸受部材、回転部材及び径方向延出部材の要部拡大縦断面正面図である。
図4図2及び図3から、軸受部材、回転部材及び径方向延出部材を取り出して示す要部拡大斜視図である。
図5】軸受部材の斜視図である。
図6】軸受部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本明細書において、養殖用水槽の底部の中央部に形成された排水口の鉛直中心軸(図1及び図2中の符号A参照)に直交する方向を「径方向」(図1中の矢印D参照)という。前記鉛直中心軸を基準にして「周方向」(図1中の矢印C参照」を定義する。養殖用水槽の径方向の外方から養殖用水槽を見た図を正面図とする。
【0016】
<養殖用水層>
図1の平面図、及び図2の縦断面正面図に示すように、本発明の実施の形態に係る養殖用水槽1は、平面視円形状で、底部2及び側部3があり、魚介類の養殖に用いる。水槽1の底部2の中央部には排水口Hが形成され、底部2の上面2Aは、排水口Hに近づくにつれて下降する傾斜面E1,E2,E3を含む。排水口Hから排出された水Wは、排水管8を通って図示しない濾過槽で浄化された後に水槽1内に戻される。
【0017】
養殖用水槽1の平面形状は、図1のような円形状に限定されるものではなく、多角形状、矩形状、楕円形状、又は角丸長方形状等であってもよく、あるいはその他の形状であってもよい。
【0018】
水槽1内の水Wには、例えば、水又は空気等を水槽1内に供給する図示しない水流発生装置により発生した渦巻き状に循環する水流F1がある。水流F1があることにより、水槽1内で養殖する魚介類の生育を促進できる。養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻並びに残餌等の水中の異物は、傾斜面E1,E2,E3があること、及び水流F1があることで、排水口Hに向けて集めやすくなる。
【0019】
<回転部材、及び径方向延出部材>
図2の縦断面正面図、図3の要部拡大縦断面正面図、及び図4の要部拡大斜視図に示すように、水槽1は、回転部材5及び径方向延出部材6を備える。回転部材5は、排水口Hに装着される軸受部材Bにより排水口Hの鉛直中心軸Aまわりに回転可能に支持される。径方向延出部材6は、回転部材5に取り付けられて径方向Dへ延びる。
【0020】
回転部材5は、回転軸5A、及び回転軸5Aの下端部に取り付けられる羽根部材5Bからなる。図3に示すように排水口Hを流下する水流F2により羽根部材5Bが回転方向Rに回転するので、回転軸5A及び径方向延出部材6も回転方向Rに回転する。
【0021】
径方向延出部材6は、略水平の棒状体6Aと、棒状体6Aから下方へ突出する毛状体とからなり、毛状体6Bの先端部が底部2の上面2Aを摺動する。毛状体6Bは、例えば、合成樹脂若しくは金属等の線材、又は合成繊維若しくは天然繊維等を撚りあわせたもの等であり、刷毛状であってもよい。あるいは、毛状体6Bに換えて、棒状体6Aから下方へ突出する、扁平な板状のヘラを複数設けた板状体としてもよい。毛状体6B又は板状体は、底部2の上面2Aに付着している異物を掃くための所要の可撓性及び剛性を有する。
【0022】
<軸受部材>
軸受部材Bは、上下の滑り軸受4,4であり、上下の滑り軸受4,4の間にはスペーサ7がある。上下に離間した滑り軸受4,4で回転軸5Aを支持することにより、モーメント荷重を受けながら回転する回転軸5Aの支持が安定する。
【0023】
図5の斜視図、及び図6の平面図に示すように、滑り軸受4は、第1円環部4A、第2円環部4B、及び連結部4Cからなる。第2円環部4Bは、第1円環部から径方向Dの外方へ離間し、第1円環部4Aと第2円環部4Bとは連結部4Cにより繋がれる。連結部4Cは、鉛直中心軸Aの周方向Cへ離間して複数(本実施の形態では3個)ある。周方向Cに隣り合う連結部4C,4C間には隙間Gがある。第1円環部4Aの径方向Dの内方には通孔Iがある。
【0024】
滑り軸受4に隙間Gがあるので、図3に示すように、水が排水口Hを流下することができ、排水口Hを流下する水流F2により羽根部材5Bが回転方向Rに回転する。第1円環部4Aの通孔Iには、回転軸5Aが遊嵌する。滑り軸受4の、少なくとも第1円環部4Aの通孔Iを形成する内周面は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂、又は炭化ケイ素等のセラミックス等であり、自己潤滑性を有する。
【0025】
<作用効果>
本発明の実施の形態に係る養殖用水槽1によれば、排水口Hを流下する水流F2により鉛直中心軸Aまわりに回転する回転部材5とともに径方向延出部材6が回転し、それにより排水口Hの周囲の水槽1の底部2の上面2Aに付着している異物を水中に浮遊させる。水中に浮遊した前記異物は、排水口Hに向かう水流によって排水口Hへ誘導されるので、前記異物を排水口Hから効果的に排出できる。
【0026】
また、回転部材5の回転軸5Aを滑り軸受4の通孔Iに遊嵌させ、回転軸5Aを上下の滑り軸受4,4で支持した状態で、滑り軸受4の周方向Cに隣り合う連結部4C,4C間の隙間Gから排水口Hを水Wが流下し、回転軸5Aの下端部の羽根部材5Bを回転させる。それにより、回転部材5及び径方向延出部材6の回転動作が円滑になるとともに、前記回転動作を長期間にわたって安定させることができる。
【0027】
さらに、径方向延出部材6が回転する際に、下方へ突出する毛状体6B又は板状体の先端が水槽1の底部2の上面2Aを摺動しながら、上面2Aに付着している異物を掃くので、排水口Hの周囲の上面2A上の異物をより効率的に水中に浮遊させて、前記異物を排水口Hからより効果的に排出できる。
【0028】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 養殖用水槽
2 底部
2A 上面
3 側部
4 滑り軸受
4A 第1円環部
4B 第2円環部
4C 連結部
5 回転部材
5A 回転軸
5B 羽根部材
6 径方向延出部材
6A 棒状体
6B 毛状体
7 スペーサ
8 排水管
A 鉛直中心軸
B 軸受部材
C 周方向
D 径方向
E1,E2,E3 傾斜面
F1,F2 水流
G 隙間
H 排水口
I 通孔
R 回転方向
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6