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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179023
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】配筋検査支援システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/08 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01B11/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092029
(22)【出願日】2022-06-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】598123334
【氏名又は名称】ダットジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】羽田 典久
(72)【発明者】
【氏名】太田 毅
(72)【発明者】
【氏名】小山 一人
(72)【発明者】
【氏名】洞口 克彦
(72)【発明者】
【氏名】香川 明慧
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA22
2F065AA26
2F065BB27
2F065CC14
2F065DD02
2F065DD06
2F065EE05
2F065FF01
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ03
2F065QQ23
2F065QQ26
(57)【要約】
【課題】
構造物の建設などにおける配筋検査を支援する配筋検査支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
配筋検査を支援する配筋検査支援システムであって、配筋検査支援システムは、配筋検査箇所と、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、画像情報を用いて、鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出し、あらかじめ記憶されている配筋検査情報と対比することで配筋検査を行う配筋検査処理部と、を有する配筋検査支援システムである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配筋検査を支援する配筋検査支援システムであって、
前記配筋検査支援システムは、
配筋検査箇所と、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、
前記画像情報を用いて、鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出し、あらかじめ記憶されている配筋検査情報と対比することで配筋検査を行う配筋検査処理部と、
を有することを特徴とする配筋検査支援システム。
【請求項2】
前記配筋検査処理部は、
前記画像情報に写る前記計測用マーカーにおける前記基準交点を用いて仮想平面を推定し、
前記画像情報における座標値に対応する、前記推定した仮想平面上の座標値を算出することで、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配筋検査支援システム。
【請求項3】
前記配筋検査処理部は、
前記画像情報に写る前記計測用マーカーにおける前記基準交点を用いて推定した仮想平面における前記画像情報の座標値を推定し、
前記計測用マーカー若しくは前記基準交点を形成するマークの実際の大きさと、前記画像情報に写る計測用マーカー若しくは前記基準交点を形成するマークの大きさとを用いて比率を算出し、
前記推定した座標値に基づく2点間の距離と前記比率とを用いて、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の配筋検査支援システム。
【請求項4】
前記配筋検査処理部は、
前記画像情報から特定した鉄筋と、前記鉄筋に反射する光とが重畳している箇所を特定し、
前記特定した箇所における座標値を推定してその距離を算出することで、前記鉄筋の径を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の配筋検査支援システム。
【請求項5】
前記配筋検査処理部は、
前記画像情報から特定した鉄筋と、前記鉄筋に反射する光とが重畳している箇所を特定し、
隣り合う鉄筋の各端部の座標値を推定してその距離を算出することで、前記鉄筋の配置間隔を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の配筋検査支援システム。
【請求項6】
前記計測用マーカーは、
L字形状に形成されており、各辺にそれぞれ基準交点が示されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の配筋検査支援システム。
【請求項7】
前記配筋検査支援システムは、
前記撮像装置で前記配筋検査を行う場所の画像情報を撮像する際に、前記撮像装置の画面において、前記計測用マーカーを写す位置を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配筋検査支援システム。
【請求項8】
コンピュータを、
配筋検査箇所と、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部、
前記画像情報を用いて、鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出し、あらかじめ記憶されている配筋検査情報と対比することで配筋検査を行う配筋検査処理部、
として機能させることを特徴とする配筋検査支援プログラム。
【請求項9】
配筋検査を行う配筋検査方法であって、
建設現場における配筋検査箇所に、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーが設置されており、前記配筋検査箇所と前記計測用マーカーとが写るように画像情報を撮像装置により撮像するステップと、
前記撮像した画像情報の入力を受け付けるステップと、
前記画像情報に写る前記計測用マーカーにおける前記基準交点を用いて、前記画像情報における座標値に対応する仮想平面上の座標値を推定して、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出するステップと、
前記算出した値と、あらかじめ記憶されている配筋検査情報とを対比するステップと、
を有する配筋検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の建設などにおける配筋検査を支援する配筋検査支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物については法令で定められている基準にしたがって工事が行われているかを測定し、検査することが求められている。たとえば鉄筋コンクリート構造物の工事を行う際には、鉄筋が図面に従って正しく配置されているかを確認する配筋検査が行われている。
【0003】
このような検査は、従来は人が行うことが多く、非常に時間がかかる作業となっている。たとえば配筋検査の場合には、作業員が物差しを使って鉄筋の間隔を測定し、それをカメラで撮影するなどの作業を行わなければならず、時間がかかる作業となっている。そこでこの作業を簡略化する器具として、鉄筋の定着の長さを測定する測定器(特許文献1)、磁石を用いた装置(特許文献2)、寸法を簡便に計測する装置(特許文献3)などがある。
【0004】
しかし特許文献1乃至特許文献3の器具や装置を用いることで検査の作業効率を図ることができるが、結局は、作業員が鉄筋を一本ごとに計測する必要があることに変わりはない。
【0005】
そこで、特許文献4に示すように、画像解析を用いて検査を行うシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-309896号公報
【特許文献2】特開2016-089358号公報
【特許文献3】特開2020-112513号公報
【特許文献4】特開2006-135862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4は、建設現場に、あらかじめ寸法を計測した縦、横の寸法が既知の白板または黒板を設置し、スタッフ(物差し)がない状態で検査箇所を撮影し、白板または黒板の四隅の位置を用いて正射投影画像に変換する。そして、変換後の画像に仮想的なスタッフを配置することで、鉄筋の径、配置間隔などを測定する発明である。
【0008】
本発明によって、物理的なスタッフを検査箇所に設置する必要がなくなる点では有益であるが、白板または黒板を設置してその四隅の座標に基づいて正射投影画像に射影変換をして画像補正処理を実行していることから、画像補正処理が正確に行えなければ誤差が生じてしまう課題がある。とくに白板または黒板の四隅の座標のみに基づいて変換をしていることから、奥行き方向への傾き、レンズ歪みなどにより、射影変換が正確に行えず、正確な寸法測定ができなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、配筋検査に要する現場の負担を軽減しながら、測定をより正確に行える配筋検査支援システムを発明した。
【0010】
第1の発明は、配筋検査を支援する配筋検査支援システムであって、前記配筋検査支援システムは、配筋検査箇所と、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、前記画像情報を用いて、鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出し、あらかじめ記憶されている配筋検査情報と対比することで配筋検査を行う配筋検査処理部と、を有する配筋検査支援システムである。
【0011】
本発明の配筋検査支援システムを用いることで、建設現場では計測用マーカーを設置して写真を撮像するだけであるので、配筋検査に要する現場の負担を軽減することができる。また、従来とは異なり、非矩形状の計測用マーカーを用いることで、画像情報に占める計測用マーカーの領域を狭くするとともに、座標を精度よく推定できるので、測定をより正確に行うことができる。
【0012】
上述の発明において、前記配筋検査処理部は、前記画像情報に写る前記計測用マーカーにおける前記基準交点を用いて仮想平面を推定し、前記画像情報における座標値に対応する、前記推定した仮想平面上の座標値を算出することで、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0013】
上述の発明において、前記配筋検査処理部は、前記画像情報に写る前記計測用マーカーにおける前記基準交点を用いて推定した仮想平面における前記画像情報の座標値を推定し、前記計測用マーカー若しくは前記基準交点を形成するマークの実際の大きさと、前記画像情報に写る計測用マーカー若しくは前記基準交点を形成するマークの大きさとを用いて比率を算出し、前記推定した座標値に基づく2点間の距離と前記比率とを用いて、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0014】
これらの発明の処理を実行することで、座標を精度よく推定できるので、測定をより正確に行うことができる。
【0015】
上述の発明において、前記配筋検査処理部は、前記画像情報から特定した鉄筋と、前記鉄筋に反射する光とが重畳している箇所を特定し、前記特定した箇所における座標値を推定してその距離を算出することで、前記鉄筋の径を算出する、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0016】
上述の発明において、前記配筋検査処理部は、前記画像情報から特定した鉄筋と、前記鉄筋に反射する光とが重畳している箇所を特定し、隣り合う鉄筋の各端部の座標値を推定してその距離を算出することで、前記鉄筋の配置間隔を算出する、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0017】
鉄筋の径、配置間隔は本発明のような処理により算出すると良い。
【0018】
上述の発明において、前記計測用マーカーは、L字形状に形成されており、各辺にそれぞれ基準交点が示されている、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0019】
計測用マーカーがL字形状に形成されることで、画像情報に占める計測用マーカーの領域を減らすとともに、計測用マーカーに表示される基準交点を分散することができるので、座標の推定の精度を上げることができる。
【0020】
上述の発明において、前記配筋検査支援システムは、前記撮像装置で前記配筋検査を行う場所の画像情報を撮像する際に、前記撮像装置の画面において、前記計測用マーカーを写す位置を表示する、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0021】
本発明のように計測用マーカーを写す位置を表示(ガイド)すれば、撮像時に、計測用マーカーをどこに写しこめばよいかが明確になり、作業負担が軽減される。
【0022】
第1の発明は、本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで、実現することができる。すなわち、コンピュータを、配筋検査箇所と、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部、前記画像情報を用いて、鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出し、あらかじめ記憶されている配筋検査情報と対比することで配筋検査を行う配筋検査処理部、として機能させる配筋検査支援プログラムである。
【0023】
建設現場で配筋検査を行う場合には、本発明のような方法を用いることが良い。すなわち、配筋検査を行う配筋検査方法であって、建設現場における配筋検査箇所に、基準交点が表示された非矩形状の計測用マーカーが設置されており、前記配筋検査箇所と前記計測用マーカーとが写るように画像情報を撮像装置により撮像するステップと、前記撮像した画像情報の入力を受け付けるステップと、前記画像情報に写る前記計測用マーカーにおける前記基準交点を用いて、前記画像情報における座標値に対応する仮想平面上の座標値を推定して、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出するステップと、前記算出した値と、あらかじめ記憶されている配筋検査情報とを対比するステップと、を有する配筋検査方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の配筋検査支援システムを用いることで、配筋検査に要する現場の負担を軽減しながら、測定をより正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の配筋検査支援システムの全体の構成の一例を模式的に示す図である。
図2】本発明の配筋検査支援システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
図3】本発明の配筋検査支援システムにおける全体の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の配筋検査支援システムにおける配筋検査の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図5】従来の計測用マーカーの一例を示す図である。
図6】本発明で用いる計測用マーカーの一例を示す図である。
図7】基準点が近く、推定する点から離れている場合の座標値の推定を示す図である。
図8】基準点が分散しており、推定する点から近い場合の座標値の推定を示す図である。
図9】工事選択画面の一例を示す図である。
図10】フロア選択画面の一例を示す図である。
図11】検査箇所選択画面の一例を示す図である。
図12】検査項目選択画面の一例を示す図である。
図13】計測用マーカーを設置した配筋検査箇所を撮像装置で撮像する状態の一例を示す図である。
図14】工事選択画面の一例を示す図である。
図15】フロア選択画面の一例を示す図である。
図16】検査箇所選択画面の一例を示す図である。
図17】検査項目選択画面の一例を示す図である。
図18】選択した画像の一例を示す図である。
図19】測定をする画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の配筋検査支援システム1の全体のシステム構成の一例を図1に、配筋検査支援システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を図2に示す。
【0027】
配筋検査支援システム1は撮像装置3と管理端末2とを用いる。撮像装置3は、建設現場で配筋検査を行う箇所の写真を撮像する装置である。撮像装置3としては、スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末が好ましいが、通常のデジタルカメラであってもよい。
【0028】
管理端末2は、撮像装置3で撮像した画像情報を用いて、配筋検査の処理を実行するコンピュータである。
【0029】
コンピュータは、プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と、情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と、ディスプレイなどの表示装置72と、情報の入力を行う入力装置73と、演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報を通信する通信装置74とを有している。なお、コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは、たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが、それに限定するものではない。
【0030】
タッチパネルディスプレイは、そのディスプレイ上で、直接、所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で、表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0031】
なお、撮像装置3においても、演算装置70、記憶装置71、表示装置72、入力装置73、通信装置74を備えていてもよい。
【0032】
また、管理端末2は、一台のコンピュータによって実現されていてもよいが、その一部または全部の機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして、たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0033】
本発明の配筋検査支援システム1における各手段は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0034】
配筋検査支援システム1における管理端末2は、配筋検査情報入力受付処理部20と配筋検査情報記憶部21と画像情報入力受付処理部22と配筋検査処理部23とを有する。
【0035】
配筋検査情報入力受付処理部20は、配筋検査に関する情報(配筋検査情報)を所定のコンピュータから入力を受け付け、後述する配筋検査情報記憶部21に記憶させる。配筋検査情報としては、紙の図面またはデジタル化された図面から、検査対象の場所、鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔などの情報を抽出し、所定のデータ形式とした上で、配筋検査情報記憶部21に記憶させる。検査対象の場所としては、工事、建物やフロア、検査箇所などの情報が該当する。検査箇所については、デジタル化された図面から指定可能となっていてもよい。紙の図面の場合には、所定のデータ形式でデジタル化した図面に変換したうえで処理を実行する。
【0036】
配筋検査情報記憶部21は、配筋検査情報入力受付処理部20で入力を受け付けた配筋検査情報を記憶する。検査対象の場所、鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔などを記憶する。
【0037】
画像情報入力受付処理部22は、撮像装置3で撮像した配筋検査を行う箇所の画像情報の入力を受け付ける。画像情報の入力を受け付けた後、その画像情報に対して、所定の画像補正処理、たとえばレンズ歪みや射影変換などの所定の画像変換処理を実行してもよい。画像変換処理を実行した後の画像情報を、配筋検査処理部23における処理で用いる。
【0038】
配筋検査処理部23は、画像情報入力受付処理部22で入力を受け付けた画像情報に対して、配筋検査の処理を実行する。配筋検査処理部23は、画像情報入力受付処理部22で入力を受け付けた画像情報のうち、配筋検査を行う画像情報の選択を受け付け、その画像情報から輪郭を検出し、検出した輪郭のうち、鉄筋箇所について物体検出処理によって検出する。また、画像情報におけるマーカー箇所を検出し、鉄筋箇所とマーカー箇所の重なった箇所を計測箇所として特定し、その両端の2座標を推定する。そして、この2座標間の距離を算出することで、鉄筋の径を算出する。鉄筋の配置間隔については、各鉄筋の端部同士の座標に基づいて距離を算出することで算出できる。鉄筋の本数については、鉄筋箇所から特定することができる。
【0039】
配筋検査処理部23は、以上のようにして算出した鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔と、配筋検査情報入力受付処理部20における配筋検査情報とを比較することで、合否判定を行う。判定結果は、配筋検査情報記憶部21に、当該配筋検査情報に対応づけて、配筋検査の結果の情報として記憶させればよい。
【実施例0040】
つぎに本発明の配筋検査支援システム1を用いた配筋検査を実行する場合を図3および図4のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
まず建築を施工する施工会社などの担当者は、紙の図面またはデジタル化された図面を、所定のコンピュータから入力を受け付け、その図面データから、検査対象の場所、鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔などの情報を抽出し、配筋検査情報として配筋検査情報記憶部21に記憶させる(S100)。配筋検査情報を登録する処理については、各種の公知技術を用いることができる。
【0042】
つぎに配筋検査を行う場合、建設現場では、従来、格子模様のマーカーとしては図5に示すような長方形のマーカーを用いていることが多かった。格子模様を用いたマーカーでは、基準交点の数が多いほど精度が向上するが、基準交点の数を多くすると、長方形の従来のマーカーでは、マーカーが画像上に占める領域が大きくなってしまう問題がある。たとえば図5のように、長方形のマーカーの場合、一定の精度を得るためには、縦7、横10の合計70個程度の基準交点が求められていた。なお、基準交点とは、マーカーに表示された格子が交わる点である。
【0043】
そこで、本発明の配筋検査支援システム1では、図6に示すような非矩形型計測用マーカー100(以下、「計測用マーカー100」)を用いる。なお、図6では、非矩形の一例としてL字型としているが、L字型に限るものではなく、撮影領域に基準交点を満遍なく配置できる計測用マーカー100であればよい。たとえばコの字型、ロの字型、S字型、T字型などであってもよい。また、計測用マーカー100の第1部材、第2部材には、所定の大きさの正方形が連続した格子模様が形成されている場合を示しているが、それに限定されるものではなく、所定の間隔で配置された基準交点があれば格子模様に限定するものではない。また、格子模様以外にも、三角形、平行四辺形、台形、菱型などであってもよいし、基準交点のみであってもよい。すなわち、所定の基準交点のパターンが計測用マーカー100に表示されていればよい。
【0044】
図6に示す計測用マーカー100は、所定の大きさの正方形が連続した格子模様(市松模様)が非矩形状、たとえばL字状に形成されており、金属、プラスチック、樹脂、木材など任意の素材により、薄い平板状に形成されている。強度が確保できる程度の厚さであることが好ましく、たとえば1cm以下であることがよいが、それに限定するものではない。計測用マーカー100は、第1部材1001と第2部材1002とを有しており、第1部材1001と第2部材1002とは90度に形成されている。第1部材1001と第2部材1002の格子の大きさは同じである。第1部材1001の上下端部のいずれかの辺若しくはその延長線上の位置に第2部材1002の上下端部のいずれかの辺が位置する。図6の場合、第1部材1001の上辺の延長線上の位置に第2部材1002の下辺が位置しており、第1部材1001の上辺と第2部材1002の下辺とが同一直線上に位置している。また第1部材1001の左右端部のいずれかの辺若しくはその延長線上の位置に第2部材1002の左右端部のいずれかの辺が位置する。図6の場合、第1部材1001の右辺の延長線上に、第2部材1002の左辺が位置しており、第1部材1001の右辺と第2部材1002の左辺とが同一直線上に位置している。また計測用マーカー100の第1部材1001、第2部材1002の大きさ、格子の大きさはあらかじめ記憶されている。
【0045】
図6に示すような本発明の計測用マーカー100の場合、第1部材1001は縦3、横10の30個の基準交点、第2部材1002は縦7、横3の21個の基準交点で,合計で51個の基準交点を有している。
【0046】
本発明における非矩形状の計測用マーカー100を用いて、実空間における座標を推定する処理は、各種の技術を用いることができる。たとえば、画像情報に写った計測用マーカー100の各基準交点の座標値(図6の場合、51個の基準交点の座標値)から、この各基準交点が同一平面上に位置するような仮想平面を推定することで、実空間(仮想平面)上における計測用マーカー100の各基準交点の座標値が推定できる。仮想平面の推定によって、画像情報に写った任意の座標値から、実空間(仮想平面)における対応する座標値へ変換するための射影変換行列が算出できる。この射影変換行列を用いて、画像情報における任意の座標値を、実空間(仮想平面)における対応する座標値を算出(推定)することができる。
【0047】
そして、本発明における非矩形状の計測用マーカー100が、従来の図5に示すような長方形のマーカーよりも座標推定の精度が良くなるのは、以下のような理由による。
【0048】
計測用マーカー100が写った画像情報がある場合、実空間(3次元空間)内で計測用マーカー100がどのように位置しているかという情報(3次元座標値)を与えると、計測用マーカー100の姿勢を演算することができる。具体的には、実空間内の座標値(3次元空間の座標値)と、画像上(2次元空間)の座標値(2次元座標値)を対応づけて、その3次元-2次元の対応付けを満たす姿勢(回転と平行移動)を演算する問題となる。
【0049】
3次元-2次元の対応付けを行う場合には4点以上の座標値が必要となり、3次元-2次元の対応点から離れた領域の推定座標は誤差が大きくなるため、3次元-2次元の対応点は、画像情報上に満遍なく配置されていることが精度に影響を与える。そして、本発明の情報処理システム1の適用場面である配筋検査の計測用マーカー100のように実空間でも平板状の場合には、すべての3次元-2次元の対応点は同一平面に存在することとなるため、結果、すべての対応点を含む平面を求める問題になる。すなわち、当てはめる平面と各対応点との誤差が最小となる問題を解くこととなる。
【0050】
たとえば、基準点として3つの点が与えられており、この3点を通る直線を推定して、x=10の座標値を推定する。このとき、図7に示すように、基準点となるx=1、2、3の3点の座標値から直線を推定してx=10の座標値を推定するよりも、図8に示すように、基準点となるx=1、4、8の3点の座標値から直線を推定してx=10の座標値を推定した方が、精度よくx=10の座標値を推定できる。なぜならば、図7の場合、基準点と推定する点の位置との間に距離があるため、基準点の座標の誤差がより大きく位置推定に影響を与えるためである。そのため、図8のように、基準点が満遍なく配置されている方が直線の推定の精度が上がり、その結果、推定するx=10の点の座標値の精度が上がることとなる。図7図8はわかりやすさのため直線の推定で示したが、本発明の計測用マーカー100の基準交点からの平面(仮想平面)の推定でも同様である。
【0051】
以上のように、本発明の情報処理システム1で用いる非矩形状の計測用マーカー100のほうが基準交点を、従来の矩形状の計測用マーカーよりも満遍なく配置することができるため、仮想平面の推定が精度よく行えるので、その結果、仮想平面における座標値の推定も精度よく行うことができる。
【0052】
したがって、後述する処理において、配筋検査処理部23は、画像上における第1部材1001、第2部材1002の各基準交点を用いて推定した仮想平面への射影変換行列を用いることで、画像情報における任意の点の実空間(仮想平面)での座標を推定できる。また、計測用マーカー100の実際の大きさと、画像上での計測用マーカー100の大きさ(画素数)とを用いて、実際の距離と画像情報の単位距離(たとえば一画素)の大きさとの比率を算出できる。そして、特定した座標間の距離と、比率とを用いて、鉄筋の径、配置間隔を算出できる。
【0053】
そこで、配筋検査を行う建設現場では、配筋検査を行う箇所に、本発明の計測用マーカー100を設置する(S110)。そして、撮像を行う者は、可搬型通信端末から所定の操作を行うことで、図9に示す工事選択画面から工事を選択し、また図10に示すフロア選択画面からフロアを選択する。また、図11に示す検査箇所選択画面から検査箇所を選択し、図12に示す検査項目選択画面から検査項目を選択する。そして図12の検査項目選択画面から、所定の撮像を行う画面を行うことで、可搬型通信端末の撮像装置3が起動するので、計測用マーカー100を含み、配筋検査箇所を撮像装置3で撮像する(S120)。計測用マーカー100を含めて配筋検査箇所を撮像装置3で撮像する状態の一例を図13に示す。なお、この際に、鉄筋に向けて、鉄筋の配設方向とは垂直方向(縦方向に鉄筋が配設されている場合には横方向)に平行光(コメリート光)を照射し、それが撮像装置3で撮像する画像情報に写るようにするとよい。コメリート光としては、赤色光、緑色光、白色光など、周囲の環境光に応じて適切な色の光を選択するとよい。
【0054】
撮像装置3で撮像した画像情報は、所定の操作によって、所定の記憶領域にアップロードされる(S130)。上述の流れによって、撮像した画像情報は、工事、フロア、検査箇所、検査項目と特定されているので、どの検査箇所の検査項目かを対応づけて、記憶させることができる。アップロードされた画像情報は、管理端末2の画像情報入力受付処理部22で入力を受け付け、レンズ歪み、射影変換などの所定の画像変換処理を実行し、画像情報を正対した位置となるように画像補正処理を実行しておくとよい。
【0055】
以上のようにして配筋検査箇所の画像情報がアップロードされることで、所定の担当者、好ましくは、建設現場ではない建設会社の担当者が配筋検査処理を実行することができる(S140)。
【0056】
配筋検査を行う担当者は、所定のタイミングで、所定のコンピュータから管理端末2にアクセスをして図14に示すような工事選択画面から工事を選択する。そして図15に示すフロア選択画面からフロアを選択し、図16に示す検査箇所選択画面から検査箇所を選択する。また図17に示す検査項目選択画面から検査項目を選択して所定の操作を行うことで、その操作を管理端末2の配筋検査処理部23で受け付けて、検査処理を実行する。すなわち、配筋検査を行う検査箇所の画像情報の選択を受け付け(S200)、その画像情報を用いた検査処理を配筋検査処理部23が実行する。選択され画像情報の一例を図18に示す。
【0057】
配筋検査処理部23は、S200で選択された画像情報から輪郭を検出する(S210)。輪郭の検出処理としては各種の処理方法を用いることができるが、たとえば画像情報を入力値とし、機械学習した学習モデルに入力することで輪郭を抽出した画像情報を出力するようにしてもよい。この場合、中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して、S200で選択された画像情報を入力し、出力値として輪郭を抽出した画像情報を出力を得るように構成してもよい。また学習モデルとしては、さまざまな画像情報から輪郭を抽出した画像情報を正解データ(学習データ)として与えたものを用いることができる。
【0058】
このように輪郭を抽出した画像情報から、鉄筋箇所を物体検出する(S220)。鉄筋箇所を物体検出の処理方法としては、各種の処理方法を用いることができるが、たとえば輪郭を抽出した画像情報を入力値とし、機械学習した学習モデルに入力することで、鉄筋箇所の物体検出した画像情報を出力することができる。この場合、中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して、S210で出力した輪郭を抽出した画像情報を入力し、出力値として鉄筋箇所を物体検出した画像情報を出力として得るように構成してもよい。また学習モデルとしては、さまざまな輪郭を抽出した画像情報から鉄筋箇所を物体検出した画像情報を正解データ(学習データ)として与えたものを用いることができる。なお、S210、S220の処理は同時に行ってもよい。
【0059】
配筋検査処理部23は、以上のようにして画像情報から鉄筋箇所を検出すると、当該画像情報から鉄筋にコメリート光(たとえば赤色光)が照射されている箇所を検出する(S230)。たとえばS200の画像情報から所定の色彩、たとえばコメリート光と同系統の色彩のある箇所を検出する、機械学習した学習モデルにS200の画像情報を入力値として入力し、コメリート光の照射箇所を出力値として出力するなど、各種の処理により検出できる。たとえばS200で選択された画像情報を入力とし、機械学習した学習モデルに入力することで、鉄筋にコメリート光が照射されている箇所を検出した画像情報を出力することができる。この場合、中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して、S200で選択した画像情報を入力し、出力値として鉄筋に照射されたコメリート光の照射箇所を検出した画像情報を出力として得るように構成してもよい。また学習モデルとしては、さまざまな画像情報において鉄筋に照射されたコメリート光が照射されている箇所を検出した画像情報を正解データ(学習データ)として与えたものを用いることができる。なお、S210乃至S230の処理は同時に行ってもよい。
【0060】
そして配筋検査処理部23は、上述のように、画像情報における計測用マーカー100の各基準交点から推定した実空間(仮想平面)に座標変換するための射影変換行列を用いて、画像情報における鉄筋箇所と鉄筋に照射されたコメリート光の箇所とのうち、重なった箇所の左右両端の2箇所の実空間(仮想平面)における座標値を推定する(S240)。そして推定した2箇所の座標値を用いて、配筋検査処理部23は鉄筋に関する計測を実行する(S250)。たとえば、この2座標間の距離を算出することで、鉄筋の径を算出する。また各鉄筋の端部同士、たとえば隣り合う鉄筋の右端部の座標と、左端部の座標との距離を算出することで、鉄筋の配置間隔を算出する。さらにS220で検出した鉄筋箇所から鉄筋の本数を特定することができる。これを模式的に示すのが図19の画面である。
【0061】
そして配筋検査処理部23は、S250で計測した結果と、配筋検査情報記憶部21に記憶した配筋検査情報とを比較し、それが許容値内であるかを比較して、合否判定を行う(S260)。合否判定は、配筋検査処理部23が自動的に行ってもよいし、S250の計測結果と、配筋検査情報記憶部21に記憶した配筋検査情報とを画面上に表示させることで、人間が合否判定を行い、その結果の入力を受け付けてもよい。合否判定の結果は、配筋検査情報記憶部21に、当該配筋検査情報に対応づけて、配筋検査の結果の情報として記憶させる。
【0062】
以上のような処理を実行することで、配筋検査を容易に行うことができる。
【実施例0063】
実施例1では配筋検査処理部23が自動的に鉄筋の径、配置間隔、本数を求める場合を説明したが、担当者が、画面上で鉄筋の幅、配置間隔などを指定することで、その間の値を自動的に配筋検査処理部23が算出するように構成してもよい。
【0064】
この場合、担当者の指定した画像上の位置を座標に変換し、その座標の距離を実施例1と同様に算出することで、鉄筋の径、配置間隔を算出することができる。
【実施例0065】
実施例1および実施例2の別の変形例として、建設現場で配筋検査箇所を計測用マーカー100とともに撮像装置3で撮像する場合に、計測用マーカー100を写り込ませる位置を、撮像装置3の画面上に示す表示を行ってもよい。この場合、この表示位置に計測用マーカー100が位置するように撮像装置3を調整し、撮像を行う。計測用マーカー100を写り込ませる表示方法としては、たとえば計測用マーカー100の半透明の透かしを表示する、計測用マーカー100の輪郭を表示するなど、何らかの視覚的効果を示すことで、計測用マーカー100を写り込ませる位置を表示するとよい。
【0066】
本発明の配筋検査支援システム1における構成、処理は、本発明の技術的思想の範囲内で適宜、設計変更をすることが可能であり、本明細書に記載した実施例に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の配筋検査支援システム1を用いることで、配筋検査に要する現場の負担を軽減しながら、測定をより正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1:配筋検査支援システム
2:管理端末
3:撮像装置
20:配筋検査情報入力受付処理部
21:配筋検査情報記憶部
22:画像情報入力受付処理部
23:配筋検査処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
100:計測用マーカー
図1
図2
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