(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179032
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】インク供給装置の圧力検知機構及びその調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B41J2/175 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092067
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】小栗 崇嘉
(72)【発明者】
【氏名】松場 喜久男
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056KB35
2C056KC14
2C056KC20
2C056KC27
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】部品寸法のばらつきやセンサ位置のばらつきによって生じるインクの圧力制御のばらつきを抑えることができるインク供給装置の圧力検知機構及びその調整方法を提供する。
【解決手段】基台80に固定設置され、インクを貯留する貯留室32と、前記貯留室に形成された開口を覆い、前記貯留室内のインク圧によって変動する可撓性部材34と、前記可撓性部材の変位に伴って変位するレバー部材42と、前記基台に固定設置され、前記レバー部材の変位状態を検知するセンサ44と、を備え、前記センサの検知結果に基づいて前記貯留室にインクを供給するインク供給装置20の圧力検知機構において、前記センサと前記基台との間に設けられ、前記センサを前記基台に係合させた状態で前記センサを前記レバー部材の変位方向へ移動可能なセンサ位置調整部49を備えた。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に固定設置され、インクを貯留する貯留室と、
前記貯留室に形成された開口を覆い、前記貯留室内のインク圧によって変動する可撓性部材と、
前記可撓性部材の変位に伴って変位するレバー部材と、
前記基台に固定設置され、前記レバー部材の変位状態を検知するセンサと、を備え、
前記センサの検知結果に基づいて前記貯留室にインクを供給するインク供給装置の圧力検知機構において、
前記センサと前記基台との間に設けられ、前記センサを前記基台に係合させた状態で前記センサを前記レバー部材の変位方向へ移動可能なセンサ位置調整部を備えたことを特徴とするインク供給装置の圧力検知機構。
【請求項2】
前記センサ位置調整部は、
前記基台又は前記センサのいずれか一方に形成され、前記レバー部材の変位方向へ伸長するガイド部と、
前記基台又は前記センサのいずれか他方に設けられ、前記ガイド部と係合して前記センサを前記ガイド部に沿って摺動可能な係合部と、
前記センサを前記基台に固定する固定具と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置の圧力検知機構。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力検知機構の調整方法であって、
前記センサは、前記レバー部材の位置によってON状態とOFF状態とに判定可能に構成されており、
前記貯留室内を所定の基準圧力にした状態で、前記センサ位置調整部によって前記レバー部材に対する前記センサの位置を変化させて、前記センサのON/OFF状態が切り替わる位置で前記センサの位置を固定する工程を含むことを特徴とする圧力検知機構の調整方法。
【請求項4】
請求項1に記載の圧力検知機構の調整方法であって、
前記センサは、前記レバー部材の位置によってON状態とOFF状態とに判定可能に構成されており、
前記レバー部材を前記貯留室内が所定の基準圧力となる基準位置に設定する工程と、
前記センサ位置調整部により前記レバー部材に対する前記センサの位置を変化させて、前記センサのON/OFF状態が切り替わる位置で前記センサを前記基台に固定する工程と、を含むことを特徴とする圧力検知機構の調整方法。
【請求項5】
前記センサを前記基台に固定した後に、前記貯留室内を大気解放する工程と、
前記貯留室内を再び前記基準圧力にして、前記センサによる検知動作を確認する工程と、を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の圧力検知機構の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンクからインクを供給するインク供給装置に設けられインクの貯留室内の圧力を検知する圧力検知機構及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクをインク吐出ヘッドから吐出して媒体に印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インク容量の多いインクカートリッジを搭載したものでは、プリンタ内に、インクタンクからインク吐出ヘッドにインクを供給するインク供給装置を備えたものが存在する。インク供給装置では、インクタンクとインク吐出ヘッドとの間に、インクを一時的に貯留する貯留室を設け、この貯留室内のインク圧を調整してインクの圧力変動を緩和することで、インク吐出ヘッドのインク吐出動作を安定化させている。また、インクタンクから貯留室へのインクの供給は、貯留室内のインク圧を圧力検知機構などにより検知し、圧力が低下したときにインクが貯留室に供給される。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクタンクとインク吐出ヘッドとの間に、インクの貯留室と、貯留室内のインク量に応じて変位するレバー部材と、レバー部材の位置に基づいて貯留室内の圧力を検知する圧力検知用のセンサとを設けたインク供給装置が記載されている。このインク供給装置では、貯留室の開口がフィルムで閉塞されており、レバー部材は、フィルムに当接した状態でフィルムに追随して変位する。貯留室内のインク量が減少して、レバー部材が変位すると、センサがこれを検知して、インクタンクから貯留室へインクを供給する。
【0004】
例えば、特許文献1には、インクタンクとインク吐出ヘッドとの間に、インクの貯留室と、貯留室内のインク量に応じて変位するレバー部材と、レバー部材の位置に基づいて貯留室内の圧力を検知する圧力検知用のセンサとを設けたインク供給装置が記載されている。このインク供給装置では、貯留室の開口がフィルムで閉塞されており、レバー部材は、フィルムに当接した状態でフィルムに追随して変位する。貯留室内のインク量が減少して、レバー部材が変位すると、センサがこれを検知して、インクタンクから貯留室へインクを供給する。
【0005】
特許文献1に記載のインク供給装置では、センサに対するレバー部材の相対的な位置関係から、貯留室内のインク量の減少、すなわち、フィルムで閉塞された貯留室内の圧力の低下を検知しており、センサによって圧力が所定値以下になったと検知された場合に、貯留室内へインクを供給することで、貯留室内の圧力を所定の範囲内に保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のインク供給装置では、レバー部材の自体の寸法や、レバー部材に対するセンサの位置の微妙なばらつきによって、センサが検知する貯留室内の圧力にばらつきが生じるという問題があった。例えば、センサの固定位置が、組立誤差により正規位置からずれていると、貯留室内の圧力が所定値以下になっても、センサが検知しないという事態が生じる。
【0008】
このように、部品寸法やセンサ位置のばらつきによってセンサにより制御したい圧力にばらつきが生じてしまうと、インク圧がインク吐出ヘッドの適正圧力の範囲から外れて吐出不良を起こす原因となったり、インク吐出ヘッドの特性を生かすことができなくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、部品寸法のばらつきやセンサ位置のばらつきによって生じるインクの圧力制御のばらつきを抑えることができるインク供給装置の圧力検知機構及びその調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るインク供給装置の圧力検知機構は、基台に固定設置され、インクを貯留する貯留室と、前記貯留室に形成された開口を覆い、前記貯留室内のインク圧によって変動する可撓性部材と、前記可撓性部材の変位に伴って変位するレバー部材と、前記基台に固定設置され、前記レバー部材の変位状態を検知するセンサと、を備え、前記センサの検知結果に基づいて前記貯留室にインクを供給するインク供給装置の圧力検知機構において、前記センサと前記基台との間に設けられ、前記センサを前記基台に係合させた状態で前記センサを前記レバー部材の変位方向へ移動可能なセンサ位置調整部を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る圧力検知機構の調整方法は、前記圧力検知機構の調整方法であって、前記センサは、前記レバー部材の位置によってON状態とOFF状態とに判定可能に構成されており、前記貯留室内を所定の基準圧力にした状態で、前記センサ位置調整部によって前記レバー部材に対する前記センサの位置を変化させて、前記センサのON/OFF状態が切り替わる位置で前記センサの位置を固定する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る圧力検知機構の調整方法は、前記圧力検知機構の調整方法であって、前記センサは、前記レバー部材の位置によってON状態とOFF状態とに切り替え可能に構成されており、前記レバー部材を前記貯留室内が所定の基準圧力となる基準位置に設定する工程と、前記センサ位置調整部により前記レバー部材に対する前記センサの位置を変化させて、前記センサのON/OFF状態が切り替わる位置で前記センサを前記基台に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
上記インク供給装置の圧力検知機構及び圧力検知機構の調整方法によれば、レバー部材の寸法のばらつきや、圧力検知用のセンサの固定位置にばらつきがある場合であっても、部品を組み立てた後に、センサと基台との間に設けたセンサ位置調整部によって、センサを基台に係合させながら、センサとレバー部材との相対的な位置関係を調整することができる。これにより、センサによるレバー部材の変位状態の検知精度を向上させることができ、その結果、インク供給装置におけるインクの圧力制御のばらつきを抑えて、インク圧がインク吐出ヘッドの適正圧力の範囲内となるようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るインク供給装置の圧力検知機構及びその調整方法によれば、部品寸法のばらつきやセンサ位置のばらつきによって生じるインクの圧力制御のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態である圧力検知機構を有するインク供給装置を備えたインクジェットプリンタの斜視図である。
【
図2】プリンタの内部構造を説明する平面図である。
【
図4】インク吐出ヘッドのノズル面を示す図である。
【
図7】ダンパユニットの要部を説明する模式図であり、貯留室の圧力が所定の基準圧力以下である状態を示す図である。
【
図8】ダンパユニットの要部を説明する模式図であり、貯留室の圧力が所定の基準圧力よりも大きい状態を示す図である。
【
図9】センサの位置を調整する前の状態を示す模式図である。
【
図10】センサ調整部を説明する図であって、ダンパユニットを下方側から見た斜視図である。
【
図9】圧力検知機構の調整方法を説明する図である。
【
図10】圧力検知機構の調整方法のフローチャートである。
【
図11】圧力検知機構の調整方法のフローチャートである。
【
図12】ダンパユニットの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図13】センサ位置調整部を説明する図であって、ダンパユニットの一部を示す正面図である。
【
図14】圧力検知機構の調整方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明に係る圧力検知機構を有するインク供給装置20を備えたインクジェットプリンタ10(以下、単に「プリンタ10」とも称する)の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態であるプリンタ10の斜視図であり、
図2は、プリンタ10の内部構造を説明する平面図である。プリンタ10は、印刷対象物である媒体100を載置台19上に載置して、インクによる印刷を実施可能な装置である。プリンタ10は、インクタンク22からキャリッジ62に搭載されたインク吐出ヘッド50へインクを供給するインク供給装置20を備えている。
【0017】
図1において、符号U及びDは上方及び下方、符号Fr及びRrは前方及び後方、符号L及びRは左方及び右方を示している。ここで、前方及び後方とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見て作業者に向かう方向及び作業者から遠ざかる方向を意味し、左方及び右方とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左方向及び右方向を意味する。また、本実施形態では、プリンタ10のインク吐出ヘッド50の移動方向を主走査方向Yといい、主走査方向と平面視で直交する方向を副走査方向Xという。本実施形態において、主走査方向Yは左右方向と一致し、副走査方向Xは前後方向と一致している。
【0018】
プリンタ10は、筐体を有するプリンタ本体12と、プリンタ本体12の下方に設けられてプリンタ本体12を支持する脚部16と、プリンタ本体12の前方に設けられてプリンタ本体12の排出口13から排出された媒体100を案内するガイド18と、を備えている。プリンタ本体12は、筐体の上部開口を覆うカバー14と、筐体の上部表面に設けられた操作パネル15と、を備えている。プリンタ10による印刷対象である媒体100は、例えば、ロール状やシート状の記録紙、樹脂製のシート等とすることができる。
【0019】
図2に示すように、プリンタ10は、内部に、ガイドレール60と、キャリッジ62と、キャリッジ62をガイドレール60に沿って移動させるキャリッジ移動機構64と、を備える。ガイドレール60は、主走査方向Yに延びている。プリンタ10は、さらに、媒体100を載置する載置台19と、媒体を移動させる媒体移動機構70と、キャリッジ62に搭載されたインク吐出ヘッド50にインクを供給するインク供給装置20と、を備える。
【0020】
キャリッジ62は、キャリッジ移動機構64によって、ガイドレール60に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。キャリッジ移動機構64は、プーリ65a,65bとベルト66と、モータ67と、を備えている。プーリ65a,65bは、ガイドレール60の左右の両端部に設けられおり、モータ67の駆動に伴って駆動する。各プーリ65a,65bには、キャリッジ62が取付けられた無端状のベルト66が巻き掛けられている。このキャリッジ移動機構64では、モータ67の駆動によってベルトがプーリ65a,65b間を走行し、これに伴ってキャリッジ62が主走査方向Yへ移動する。
【0021】
媒体移動機構70は、載置台19上の媒体100を副走査方向Xに移動させる。媒体移動機構70は、上下一対のローラ72と、ローラ72を駆動する図示していないモータと、を備えている。一対のローラ72のうち、一方はモータによって駆動するグリッドローラであって他方はピンチローラであり、各ローラ間に媒体100を挟み込んで媒体を副走査方向Xへ送り出す。一対のローラ72の数は限定されない。
図2では、上下一対のローラ72のうち、上方のローラ72を図示している。
【0022】
インク供給装置20は、
図3に示すように、インクタンク22と、インク流路24と、開閉バルブ26と、送液ポンプ28と、ダンパユニット30と、インク吐出ヘッド50と、制御装置29と、を備える。また、インク供給装置20は、インク吐出ヘッド50のノズル面52に装着されるキャップ54と、キャップ54を移動させるキャッピング機構55と、排出流路56と、吸引ポンプ57と、排液タンク58と、を備える。
【0023】
インクタンク22は、例えばインクカートリッジなどのインクを貯留する容器であり、インクの種類(例えばインクの色ごと等)に応じて1つ以上設けられる。
図1では、一例として4つのインクタンク22-1~22-4が記載されている。インクタンク22の形状は任意に設定でき、例えばパウチ状や箱状とすることができる。本実施形態において、インク供給装置20はインクタンク22毎に設けられている。
【0024】
インク流路24は、インクタンク22、ダンパユニット30及びインク吐出ヘッド50を連通する流路である。開閉バルブ26及び送液ポンプ28は、インクタンク22とダンパユニット30の間のインク流路24上に配置されている。インク流路24は例えばチューブで形成することができる。後述するように、ダンパユニット30はインクを一時的に貯留する貯留室32(
図5参照)を有しており、インク吐出ヘッド50は貯留室32の下流側に接続されている。開閉バルブ26は、インク流路24を開閉自在に構成されている。送液ポンプ28は、インクタンク22からインク吐出ヘッド50へインクを供給するためのポンプである。
【0025】
インク吐出ヘッド50は、キャリッジ62に搭載されており、
図4に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が形成されたノズル面52を有する。ノズル面52は、インク吐出ヘッド50の下面を形成している。図示例では、1つのキャリッジ62に、主走査方向Yに並ぶ4つのインク吐出ヘッド50-1~50-4のノズル面52が形成されている状態を示している。本実施形態において、4つのインク吐出ヘッド50-1~50-4は、
図2に示す4つのインクタンク22-1~22-4に対応して設けられている。インク吐出ヘッド50のノズル面52は、インクタンク22よりも下方に配置されている。
【0026】
インク吐出ヘッド50のノズル面52は、印刷が行われていない非印刷時に、キャップ54によって覆われる。キャップ54は、
図2に示すように、平面視でガイドレール66の右端部に設定されたホームポジション位置に配置されており、キャッピング機構55によって駆動されてノズル面52に対して装着・取り外しされる。ここでホームポジション位置とは、非印刷時にインク吐出ヘッド50が待機する位置である。ホームポジション位置の近傍には、ノズル面52を拭うワイパ59が配置されており、インク吐出ヘッド50を主走査方向Yへ移動させることにより、ノズル面52にワイパ59に接触させてノズル面52のクリーニングを行うことができる。キャッピング機構55は、キャップ54を支持して、キャップ54を上下方向へ移動させる機構であり、ホームポジション位置まで移動したインク吐出ヘッド50のノズル面52に対して、非印刷時にキャップ54を装着し、印刷開始時にノズル面52からキャップ54を取り外す。このように、非印刷時にノズル面52がキャップ54で覆われることにより、インク吐出ヘッド50に付着したインクが硬化してノズル51が詰まることを防止することができる。
【0027】
キャップ54には、インク排出流路56が連結されており、このインク排出流路56の下流側には廃液タンク58が接続されている。インク排出流路56は例えばチューブで形成することができる。インク排出流路56には吸引ポンプ57が配置されており、キャップ54内のインクは、吸引ポンプ57によって吸引され、インク排出流路56を通って廃液タンク58に排出される。
【0028】
制御装置29は、開閉バルブ26、送液ポンプ28、後述するダンパユニット30の検知機構40のセンサ44(
図5参照)、キャッピング機構55及び吸引ポンプ57と通信可能に接続されており、これらの動作を制御する。また、制御装置29は、操作パネル15、キャリッジ移動機構64のモータ67、媒体移動機構70のモータと通信可能に接続されており、操作パネル12で入力された指示に従って、インク供給機構20、キャリッジ移動機構64及び媒体移動機構70の動作を制御することができる。
【0029】
ダンパユニット30は、インク吐出ヘッド50のインク吐出動作を安定させるために、インクの圧力変動を緩和するものである。本実施形態において、ダンパユニット30は、インク圧を検知する圧力検知機構を構成している。
図5及び
図6に示すように、ダンパユニット30は、基台80と、基台80に固定設置された貯留室32と、貯留室32に形成された開口を覆う可撓性部材であるフィルム34と、貯留室32内の圧力を検知するための検知機構40と、を備える。検知機構40は、レバー部材42と、レバー部材42を支持する支持バネ43と、基台80に固定設置されたセンサ44と、センサ44と基台80との間に設けられたセンサ位置調整部49と、を備えている。ここで、センサ44と基台80との間とは、基台80の一部がセンサ位置調整部49を構成しているものも含む概念である。
【0030】
図5及び
図6に示すダンパユニット30では、基台80に対して1つの中空箱状のダンパ本体33が固定設置されている。
図6に示すように、ダンパ本体33は、区画壁33aにより内部が左右に二分割されており、区画壁33aと対向するダンパ本体33の両側壁面に開口が形成されている。この開口は、
図5に示すように薄膜状のフィルム34で覆われて封止されている。貯留室32は、ダンパ本体33と、区画壁33aとフィルム34とで囲まれた空間で形成されている。
図5及び
図6に示す例では、1つのダンパユニット30において、ダンパ本体33の内部を区画壁33で二分割することにより、区画壁33の左右両側にほぼ左右対称に2つの貯留室32-1,32-2が形成されており、各貯留室32-1,32-2に対して検知機構40-1,40-2が設けられている。本実施形態のプリンタ10では、2つのダンパユニット30によって、4つの貯留室32が形成しており、4つの貯留室32は、4つのインクタンク22及び4つのインク吐出ヘッド50に対応している。各貯留室32の上部には、インクの流入口32aが形成されており、下部にはインクの流出口32b(
図3参照)が形成されている。インクタンク22から供給されたインクは、流入口32aから貯留室32内に入って一時的に貯留された後、流出口32bからインク吐出ヘッド50へ流出する。以下の説明では、
図7及び
図8を用いて、区画壁33aの右側に形成された貯留室32と、この貯留室32の内部圧力を検知する検知機構40について詳細に説明する。
【0031】
図7及び
図8は、ダンパユニット30の要部である貯留室32及び検知機構40の構造を説明する模式図であり、
図7は、貯留室32の内部圧力が所定の基準圧力である状態、
図8は、貯留室32の内部圧力が所定の基準圧力よりも大きい状態を示している。貯留室30及び検知機構40を構成しているセンサ44は、基台80に固定設置されている。貯留室32の内部には、バネ38が圧縮された状態で配置されており、このバネ38によって、フィルム34には弾性力が付与されている。バネ38は例えばコイルバネとすることができるが、これに限定されない。本実施形態では、フィルム34において、バネ38及び後述するレバー部材42の当接部42bが当接する部位に、フィルム34よりも硬質の板状の押圧体36を設けている。図示例では、押圧体36をフィルム34の外側(貯留室32の外側)に設けているが、内側(貯留室32側)に設けられていてもよい。
図7及び
図8に示すように、フィルム34は、貯留室32内のインク圧に応じて、貯留室32の内側及び外側に撓むように変動することが可能な程度の張力で貯留室32の開口を覆っている。押圧体36は、フィルム34とともに貯留室32の内側及び外側に移動可能に構成されている。フィルム34及び押圧体36は、検知機構40を構成している。なお、本実施形態では、薄膜状の樹脂製のフィルム34を用いているが、これに限られず、例えば、ゴム膜など、圧力の変化により変位する可撓性部材であればよい。
【0032】
検知機構40は、貯留室32内の圧力を検知する機構である。本実施形態のダンパユニット30では、検知機構40によって貯留室32内の圧力に応じた膜(ここでは、フィルム34)の変位を検知することで、
図3に示すインク流路24内の圧力を間接的に検知している。既述のとおり、検知機構40は、フィルム34と、押圧体36と、レバー部材42と、支持バネ43と、センサ44と、センサ位置調整部49と、を備えている。なお、
図7~
図9では、ダンパユニット30の下面側に設けられたセンサ位置調整部49の要部を模式的に破線で示している。
【0033】
レバー部材42は、一部が押圧体36又はフィルム34に接触した状態でダンパ本体33に設けられており、フィルム34の変動に伴って変位する。レバー部材42は、レバー本体42aと、レバー本体42aから突出してフィルム34に当接する当接部42bと、を備える。レバー本体42aは、フィルム34から離隔してフィルム34の表面に沿って前後方向に伸長している。レバー部材42は、レバー本体42aの基端部(後方側の端部)に、ダンパ本体33側に延びる支持部42eを有し、レバー本体42aの先端部(前方側の端部)に、センサ44によって検知される被検知部42cを有する。支持部42eは、ダンパ本体33に一端が固定された支持バネ43によって支持されている。レバー本体42aと支持部42eとの間には軸42dが設けられている。レバー部材42は、この軸42dを中心として回動可能に構成されており、支持バネ43の付勢力によってレバー本体42aがフィルム34側に付勢されている。これらの構成により、レバー部材42の被検知部42cは、
図7及び
図8に示すように、フィルム34の変動に伴ってて矢印Aの方向へ揺動可能に構成されている。
【0034】
センサ44は、レバー部材42の変位状態を検知するものである。本実施形態のインク供給機構20では、センサ44によって貯留室32内の圧力を検知し、この検知結果に基づいて貯留室32にインクを供給する。センサ44としては、例えば、ON状態とOFF状態とに判定可能なセンサ44を用いることができる。本実施形態では、センサ44の一例として、対を成す発光部44aと受光部44bとを有するフォトインタラプタを用いている。
【0035】
図7は、レバー部材42の被検知部42cが、センサ44のON/OFF判定位置にある状態を示している。
図8に示すように、センサ44は、貯留室32内の圧力が高くなると、被検知部42cが貯留室32の外側方向へ移動して検知位置Sから外れ、OFF状態と判定される。また、この状態から貯留室32内の圧力が低くなってくると、被検知部42cの貯留室32の内側方向へ移動し、
図7に示すように被検知部42cが検知位置Sに達するとセンサ44がON状態と判定される。このように、センサ44は、被検知部42cが検知位置Sから貯留室32側にある場合にON状態となり、検知位置Sよりも貯留室32の外側方向に位置している場合にOFF状態となる。以下の説明では、センサ44がON状態の時に「レバー部材42がヒットしている」といい、センサ44がOFF状態の時に「レバー部材42がアンヒットしている」という。
【0036】
上述したダンパユニット30では、貯留室32内が所定の基準圧力以下になった場合に、レバー部材42がヒットし、基準圧力を超える場合にレバー部材42がアンヒットとなるように設定されている。しかしながら、レバー部材42の寸法誤差や、センサ44の固定位置のばらつき等の組立誤差により、センサ44が検知する貯留室32内の圧力には、ばらつきが生じる。
図9は、貯留室32内が基準圧力にある状態であって、センサ44が組立誤差によって正規の位置よりも左側にずれている状態を示している。このような位置ずれが生じている場合、貯留室32内が基準圧力以下になっても、レバー部材42がアンヒットとなってしまう。本実施形態の圧検知機構では、ダンパユニット30を組み立てた後、センサ位置調整部49によってレバー部材42とセンサ44との相対的な位置関係を調整することで、誤差を修正し、センサ44による圧力の検知精度を高めることができる。
【0037】
図10は、センサ位置調整部49を説明する図であって、ダンパユニット30を下方側から見た斜視図である。
図10では、1つのダンパユニット30において、右側に配置された1つのセンサ44-1に対して設けられたセンサ位置調整部49-1と、左側に配置されたもう1つのセンサ44-2に対して設けられたセンサ位置調整部49-2とが記載されている。センサ位置調整部49は、基台80に形成された第1のガイド部82a及び第2のガイド部82bと、センサ44に設けられた第1の係合部46a及び第2の係合部46bと、センサ44を基台80に固定するための固定具84と、を備える。
【0038】
本実施形態において、第1及び第2のガイド部82a,82bは、それぞれ、
図10に示すように、基台80において、レバー部材42の被検知部42cが変位する方向である矢印Aの方向へ伸長する貫通孔である。本実施形態では、基台80において、センサ44が取付けられる領域に、基台80の裏面側が窪んだ窪み部81a,81bが形成されており、第1及び第2のガイド部82a,82bは、この窪み部81a,81bに設けられている。第1及び第2のガイド部82a,82bは、前後方向に離隔して設けられており、図示例では、前方側を第1のガイド部82aとしている。
【0039】
第1及び第2の係合部46a,46bのそれぞれは、第1及び第2のガイド部82a,82bのそれぞれと係合する部位であり、係合した状態で、センサ44をガイド部82a,82bの伸長方向に沿って摺動可能に構成されている。本実施形態において、係合部46a,46bは、センサ44の裏面側に設けられ、裏面から突出する筒状の突起である。なお、ガイド部82a,82b及び係合部46a,46bは、少なくとも1つのセンサ44に対して1つずつ設けられていればよい。本実施形態のように、前後方向に長く形成されたセンサ44の両端部に、ガイド部82a,82b及び係合部46a,46bを設けることで、センサ44の位置ずれをより抑制することができる。固定具84は、センサ44を基台80に対して固定するものであり、本実施形態では、固定具84として、周面に螺子溝が形成された第1の係合部46aと螺合する固定用ナットを用いている。
【0040】
上述したセンサ位置調整部49では、固定具84を緩めて、第1及び第2のガイド部82a,82bに、センサ44の第1及び第2の係合部46a,46bを係合させた状態で、センサ44を各ガイド部82a,82bの伸長方向に移動させることができる。このセンサ44の移動は、作業者の手作業で簡易に行うことができるが、センサ44部品が小さい場合、微細な移動が困難になる。本実施形態では、
図11に示すように、治具90を用いることで、センサ44の移動操作を容易にしている。
【0041】
図11に示す治具90は、ダンパユニット30を載置するダンパ載置台91と、センサ44を把持する把持部材92と、把持部材92を移動させる調整用ネジ94と、を備える。ダンパ載置台91には、ダンパユニット30を載置させた状態で、ガイド部82a,82bの伸長方向と同一方向に延びるガイド溝91aが形成されている。把持部材92は、略コ字状に形成されており、センサ44の側面と当接可能な側面当接部92aと、側面当接部92aから延出する2つの腕部92b,92cとを有する。2つの腕部92b,92cは、側面当接部92aをセンサ44の側面に当接させた状態で、センサ44の前端部及び後端部を把持可能に形成されている。把持部材92は、センサ44を把持した状態で、一方の腕部92bの側辺93が、ダンパ載置台91のガイド溝91aに当接する。調整用ネジ94は、把持部材92に形成された調整用ナット95と螺合しており、一端部に、調整用ネジ94を回転操作するためのネジ頭部94aを有している。この治具90では、センサ位置調整部49の固定具84を緩め、第1及び第2のガイド部82a,82bに、第1及び第2の係合部46a,46bを係合させた状態で、把持部材92によってセンサ44を把持し、調整用ネジ94を回転操作することで、センサ44をガイド部82a,82bに沿って移動させることができる。
【0042】
次に、
図12のフローを用いて、上述したインク供給装置20の圧力検知機構の調整方法について説明する。圧力検知機構の調整は、ダンパユニット30をプリンタ10に組み付ける前に行うことができる。
【0043】
まず、貯留室32内の圧力を所定の基準圧力に減圧する(ステップS11)。貯留室32内を基準圧力にする手順は、例えば、貯留室32の流入口32aを封止した状態で、流出口32b側から貯留室32内を減圧していく。減圧する際、貯留室32内の圧力を図示していない圧力センサで測定し、貯留室32内が所定の基準圧力となった状態で減圧を停止する。これにより、貯留室32内が基準圧力に設定される。
【0044】
次に、貯留室32内が基準圧力にある状態で、センサ位置調整部49によってレバー部材42に対するセンサの位置を変化させることにより、レバー部材42に対してセンサ44がONとなる位置までセンサを移動させる(ステップS12)。具体的には、センサ位置調整部49の固定具84を緩めて、ガイド部82a,82bに係合部46a,46bを係合させた状態で、治具90を用いて、センサ44がONと判定される方向(すなわち、レバー部材42がヒットする方向)へ移動させる。
【0045】
次に、センサ位置調整部49により、センサ44がOFFとなるON/OFF切り替え位置へセンサ44を移動させ(ステップS13)、この状態で固定具84によって、センサ44の位置を固定する(ステップS14)。
【0046】
次に、貯留室32内を大気解放する(ステップS15)。その後、貯留室32内を再び基準圧力まで減圧し(ステップS16)、この基準圧力状態で、センサ44による検知動作、すなわちON/OFFの判定動作が行われるか、を確認する(ステップS17)。
【0047】
図12に示す圧力検知機構の調整方法では、貯留室32内を所定の基準圧力に設定した状態で、センサ44がレバー部材42の被検知部42cを検知するように、センサ44とレバー部材42の相対的な位置関係を調整することで、貯留室32内が基準圧力となった場合にセンサ44によってレバー部材42が検知されるように、貯留室32内の圧力と、レバー部材42及びセンサ44の位置関係とを設定することができる。これにより、レバー部材42の寸法やセンサ44の初期設置位置にばらつきがあった場合であっても、貯留室32内が所定の基準圧力となった場合にセンサ44によってレバー部材42の被検知部42cが検知されるようにセンサ44の検知精度を向上させることができる。その結果、インク供給装置20におけるインクの圧力制御のばらつきを抑えて、インク圧がインク吐出ヘッド50の適正圧力の範囲内となるようにすることができる。
【0048】
次に、
図13のフローを用いて、圧力検知機構の調整方法の他の実施例について説明する。圧力検知機構の調整は、ダンパユニット30をプリンタ10に組み付ける前に行うことができる。
【0049】
まず、レバー部材42を貯留室32内が所定の基準圧力となる基準位置に設定する(ステップS21)。貯留室32内の圧力が基準圧力にある時のレバー部材42の被検知部42cの位置は、設計時に予め定められている。この調整方法では、この予め設定された、貯留室32内が基準圧力にある際のレバー部材の位置を基準位置としている。
【0050】
次に、貯留室32内が基準圧力にある状態で、センサ位置調整部49によってレバー部材42に対するセンサの位置を変化させることにより、レバー部材42に対してセンサ44がONとなる位置までセンサを移動させる(ステップS22)。次に、センサ位置調整部49により、センサ44がOFFとなるON/OFF切り替え位置へセンサ44を移動させ(ステップS23)、この状態で固定具84によって、センサ44の位置を固定する(ステップS24)。
【0051】
次に、貯留室32内を大気解放する(ステップS25)。その後、貯留室32内を再び基準圧力まで減圧し(ステップS26)、この基準圧力状態で、センサ44による検知動作、すなわちON/OFFの切り替え動作が行われるか、を確認する(ステップS27)。
【0052】
図13に示す圧力検知機構の調整方法では、レバー部材42の被検知部42cが、貯留室32内が所定の基準圧力であることを示す基準位置に設定された状態で、センサ44がレバー部材42の被検知部42cを検知するように、センサ44とレバー部材42の相対的な位置関係を調整している。これにより、貯留室32内が基準圧力となった場合にセンサ44によってレバー部材42の被検知部42cが検知されるように、貯留室32内の圧力と、レバー部材42及びセンサ44の位置関係とを設定することができる。このような調整を行うことで、レバー部材42の寸法やセンサ44の初期設置位置にばらつきがあった場合であっても、貯留室32内が所定の基準圧力となった場合にセンサ44によってレバー部材42の被検知部42cが検知されるようにセンサ44の検知精度を向上させることができる。その結果、インク供給装置20におけるインクの圧力制御のばらつきを抑えて、インク圧がインク吐出ヘッド50の適正圧力の範囲内となるようにすることができる。
【0053】
また、
図12及び
図13に示した調整方法では、センサ位置調整部49によってセンサ44の取付け位置を調整して固定した後、貯留室32内を大気解放から再び基準圧力にして、センサ44がこの基準圧力を検知するか否かを確認することで、センサ44の検知精度をより確実なものにすることができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図14は、圧力調整機構であるダンパユニット30の第2の実施形態を示す斜視図である。第2の実施形態のダンパユニット30は、第1の実施形態で説明したプリンタ10に搭載することができる。
図14において、第1の実施形態と対応する部位には同一符号を付している。以下に説明する第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態のダンパユニット30は、基台85の形状と、レバー部材42に対するセンサ44の配置位置が、第1の実施形態と相違している。基台85は、ダンパ本体33が固定設置される板状の第1の基台部85aと、第1の基台部85aの前端部から上方に略垂直に延びる板状の第2の基台部85bと、を有する。ダンパ本体33は、第1の実施形態と同様に、区画壁33aを介して左右に2つの貯留室32-1,32-2を有している。
図14では、右側の貯留室32-1のみが示されており、この貯留室32-1に対して設けられたレバー部材42-1と、図示されていない左側の貯留室32-2に対して設けられたレバー部材42-2とが記載されている。
【0056】
ダンパユニット30において、2つのセンサ44は、基台85の第2の基台部85bに上下方向に並んで固定設置されている。
図14に示す例では、右側の貯留室32-1に対するセンサ44-1が、第2の基台部85bの下側に配置され、左側の貯留室32-2に対するセンサ44-2が、第2の基台部85bの上側に配置されている。
図15に示すように、センサ44は、発光部44a及び受光部44bを有するセンサ本体45と、センサ本体45が固定されるセンサ固定板47と、を有する。図示していないが、各レバー部材42-1,42-2の被検知部42cは、各センサ44-1,44-2の位置に対応するように、第1の基台部85aの左右方向の中央部にて、上下方向に並ぶように形成されている。被検知部42cは、貯留室32内のインク圧の変化に応じてダンパユニット30の左右方向に変位する。センサ44は、基台85に固定するためのセンサ固定板47を有している。
【0057】
次に、本実施形態のセンサ位置調整部49について説明する。
図15は、センサ位置調整部49を説明する図であって、第2の基台部85bの上方側に取付けられたセンサ44-2を正面から見た図である。センサ位置調整部49は、センサ44のセンサ固定板47に形成された第1のガイド部48a及び第2のガイド部48bと、基台85の第2の基台部85bに設けられた第1の係合部86a及び第2の係合部86bと、センサ44を基台85に固定するための固定具89と、を備えている。
図15では、ガイド部48a,48bと係合部86a,86bとの係合状態が理解しやすいように、固定具89を仮想線で示している。
【0058】
第1及び第2のガイド部48a,48bは、それぞれ、基台85において、レバー部材42の被検知部42cが変位する方向である矢印Aの方向へ伸長する貫通孔である。本実施形態では、センサ固定板47において、センサ本体45を挟んで左右両側にガイド部48a,48baを設けており、図示例では、右側を第1のガイド部48a、左側を第2のガイド部48bとしている。
【0059】
第1及び第2の係合部86a,86bのそれぞれは、第1及び第2のガイド部48a,48bのそれぞれと係合する部位であり、係合した状態で、ガイド部48a,48bの伸長方向に沿って摺動可能に構成されている。本実施形態において、係合部86a,86bは、基台85の第2の基台部85bの裏面側(
図14に示すダンパユニット30の正面側)に設けられ、裏面から突出する筒状の突起である。なお、ガイド部48a,48b及び係合部86a,86bは、少なくとも1つのセンサ44に対して1つずつ設けられていればよい。固定具89は、センサ44を基台85に対して固定するものであり、本実施形態では、固定具89として、周面に螺子溝が形成された各係合部86a,86bと螺合する固定用ナットを用いている。
【0060】
上述したセンサ位置調整部49では、固定具89を緩めて、第1及び第2のガイド部48a,48bに、基台85の第1及び第2の係合部86a,86bを係合させた状態で、センサ44をガイド部48a,48bの伸長方向に移動させることができる。本実施形態では、
図16に示すように、治具96を用いることで、センサ44の位置調整操作を容易にしている。
【0061】
図16に示す治具96は、直線状に延びる軸部97と、軸部97の一方の端部に設けられた操作部98と、軸部の他方の端部から突出する嵌合突起99と、を備える。操作部98は、軸部97を貫通して径方向に延びる棒状部材で構成されている。嵌合突起99は、軸部97の端面に形成され、軸部97の中心軸に対して偏心した偏心位置から軸部97の軸方向に突出する円柱状に形成されている。
図15及び
図16に示すように、本実施形態では、センサ44のセンサ固定板47に、治具96の軸部97が挿通可能な貫通孔47aが形成されており、第2の基台部85bにおいて、この貫通孔47aと重なる領域に、嵌合孔87が形成されている。貫通孔47aは、上下方向に長い長孔であって、長孔の幅は、軸部97の直径とほぼ等しくなっている。嵌合孔87は、治具96の嵌合突起部99が嵌合するように円形に形成されている。なお、治具96の嵌合突起99の形状は、円柱状に限られず、嵌合孔87の形状に合わせて、これと嵌合可能な形状に形成される。
【0062】
この治具96は、
図16に示すように、嵌合突起99を基台85の嵌合孔87に嵌合させた状態で、作業者が操作部98によって軸部97を回転させると、治具96の軸部97がセンサ固定板47の貫通孔47aの内周面を押圧して、センサ44の位置を基台85に対して移動させることができる。
【0063】
上述した第2の実施形態のダンパユニット30では、センサ位置調整部49を用いることで、第1の実施形態のダンパユニット30と同様に、
図12及び
図13に示す圧力検知機構の調整方法に従って、レバー部材42に対するセンサ44の位置を調整することができる。
【0064】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 インクジェットプリンタ
12 プリンタ本体
18 ガイド
19 載置台
20 インク供給装置
22 インクタンク
30 ダンパユニット(圧力調整機構)
32 貯留室
34 フィルム(可撓性部材)
36 押圧体
38 バネ
40 検知機構
42 レバー部材
42a レバー本体
42c 被検知部
44 センサ
46a,46b,86a,86b 係合部
47 センサ固定板
48a,48b,82a,82b ガイド部
49 センサ位置調整部
80,85 基台
82a,82b ガイド部
84,89 固定用ナット(固定具)
S 検知位置
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態である圧力検知機構を有するインク供給装置を備えたインクジェットプリンタの斜視図である。
【
図2】プリンタの内部構造を説明する平面図である。
【
図4】インク吐出ヘッドのノズル面を示す図である。
【
図7】ダンパユニットの要部を説明する模式図であり、貯留室の圧力が所定の基準圧力以下である状態を示す図である。
【
図8】ダンパユニットの要部を説明する模式図であり、貯留室の圧力が所定の基準圧力よりも大きい状態を示す図である。
【
図9】センサの位置を調整する前の状態を示す模式図である。
【
図10】センサ調整部を説明する図であって、ダンパユニットを下方側から見た斜視図である。
【
図11】圧力検知機構の調整方法を説明する図である。
【
図12】圧力検知機構の調整方法のフローチャートである。
【
図13】圧力検知機構の調整方法のフローチャートである。
【
図14】ダンパユニットの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図15】センサ位置調整部を説明する図であって、ダンパユニットの一部を示す正面図である。
【
図16】圧力検知機構の調整方法を説明する図である。