(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179050
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】接触式プローブのスタイラス
(51)【国際特許分類】
G01B 5/016 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01B5/016
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092094
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】永田 淳士
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA21
2F062AA51
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF02
2F062HH01
2F062HH12
2F062HH13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、強度に優れ且つ複雑な形状の加工製品を測定することが可能な接触式プローブのスタイラスを説明する。
【解決手段】接触式プローブのスタイラスは、所定の第1の方向に沿って延びる柱形状を呈する基端部と、基端部に接続された先端部とを備える。先端部は、基端部から先端部の先端側に向かうにつれて先細りとなる略三角柱形状を呈しており、第1の方向に沿って延びる第1の主面と、第1の方向と直交する第2の方向において第1の主面とは反対側に位置し、且つ、第1の方向に対して傾斜して延びる、第2の主面と、先端に位置する接触子とを含む。第1の主面と第2の主面とが成す傾斜角が鋭角である。接触子の表面は、第1の方向及び第2の方向の双方に直交する第3の方向から見たときに、略円弧状を呈している。接触子のうち第1の主面側の部分は、第1の主面よりも第2の主面から第1の主面に向かう方向に突出している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1の方向に沿って延びる柱形状を呈する基端部と、
前記基端部に接続された先端部とを備え、
前記先端部は、
前記基端部から前記先端部の先端側に向かうにつれて先細りとなる略三角柱形状を呈しており、
前記第1の方向に沿って延びる第1の主面と、
前記第1の方向と直交する第2の方向において前記第1の主面とは反対側に位置し、且つ、前記第1の方向に対して傾斜して延びる、第2の主面と、
先端に位置する接触子とを含み、
前記第1の主面と前記第2の主面とが成す傾斜角が鋭角であり、
前記接触子の表面は、前記第1の方向及び前記第2の方向の双方に直交する第3の方向から見たときに、略円弧状を呈しており、
前記接触子のうち前記第1の主面側の部分は、前記第1の主面よりも前記第2の主面から前記第1の主面に向かう方向に突出している、接触式プローブのスタイラス。
【請求項2】
前記接触子の表面は、前記第3の方向から見たときに、半径が15μm~200μmの略円弧状を呈している、請求項1に記載のスタイラス。
【請求項3】
前記傾斜角は5°~35°である、請求項2に記載のスタイラス。
【請求項4】
前記第1の主面は、前記基端部のうち前記第1の主面側の第1の部分及び前記接触子のうち前記第1の主面側の第2の部分に対して窪んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載のスタイラス。
【請求項5】
前記第1の部分は、前記第1の方向から見たときに、前記第2の部分と重なり合っている、請求項4に記載のスタイラス。
【請求項6】
前記第3の方向から見たときに、前記接触子と前記第2の主面との交点において、前記接触子の接線と前記第2の主面とが一致している、請求項5に記載のスタイラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触式プローブのスタイラスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、工作機械によって加工された加工製品の形状及び寸法を測定するためのプロービング装置を開示している。当該装置は、加工製品の表面に接触して加工製品を測定するように構成されたスタイラスと、スタイラスを保持して移動させるように構成された送り装置とを備える。スタイラスの先端には、略球形状の接触子(先端チップ)が設けられている。送り装置がスタイラスを加工製品に近づけていき、接触子が加工製品に接触したときの位置を取得することで、加工製品の形状及び寸法が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、強度に優れ且つ複雑な形状の加工製品を測定することが可能な接触式プローブのスタイラスを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
接触式プローブのスタイラスの一例は、所定の第1の方向に沿って延びる柱形状を呈する基端部と、基端部に接続された先端部とを備える。先端部は、基端部から先端部の先端側に向かうにつれて先細りとなる略三角柱形状を呈しており、第1の方向に沿って延びる第1の主面と、第1の方向と直交する第2の方向において第1の主面とは反対側に位置し、且つ、第1の方向に対して傾斜して延びる、第2の主面と、先端に位置する接触子とを含む。第1の主面と第2の主面とが成す傾斜角が鋭角である。接触子の表面は、第1の方向及び第2の方向の双方に直交する第3の方向から見たときに、略円弧状を呈している。接触子のうち第1の主面側の部分は、第1の主面よりも第2の主面から第1の主面に向かう方向に突出している。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る接触式プローブのスタイラスによれば、強度に優れ且つ複雑な形状の加工製品を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、加工装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、接触式プローブのスタイラスの一例を背面側からみた斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のスタイラスを正面側からみた斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線における部分断面図である。
【
図5】
図5は、接触式プローブのスタイラスが加工製品を測定する際の、スタイラス先端の移動軌跡の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
図1には、X軸、Y軸及びZ軸により規定される直交座標系が例示されている。当該直交座標系において、Y軸は鉛直上向き(第1の方向)に延びており、X軸はY軸に直交するように水平方向(第3の方向)に延びており、Z軸はX軸及びY軸の双方に直交するように水平方向(第2の方向)に延びている。
【0009】
[加工装置の構成]
まず、
図1を参照して、接触式プローブ10が搭載される加工装置1について説明する。加工装置1は、加工対象物W(例えば、金属製のブロックなど)を加工する機能と、加工対象物Wを加工して得られた加工製品Pの形状及び寸法を測定する機能とを有する。加工製品Pは、例えば、金型部品であってもよい。当該金型部品は、例えば、シート状の母材(金属板など)を打ち抜く打抜装置を構成する部品であってもよい。加工製品Pの形状は、例えば、直方体形状、円柱形状、多角柱形状、その他の異形状であってもよい。
【0010】
加工装置1は、
図1に示されるように、ベースユニット2と、加工ユニット3と、測定ユニット4と、ディスプレイ5と、コントローラCtr(制御部)とを備える。加工装置1は、これらの一部又は全部を収容可能に構成された筐体(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0011】
ベースユニット2は、ベース2aと、ガイド機構2bと、ステージ2cとを含む。ベース2aは、ガイド機構2b及びステージ2cを下側から支持するように構成されている。ガイド機構2bは、ベース2a上に取り付けられている。ガイド機構2bは、例えば、リニアアクチュエータであってもよい。ガイド機構2bは、例えば、レール2dと、ブロック(図示せず)とを含んでいてもよい。当該ブロックは、コントローラCtrからの指示に基づいて、レール2d(Z軸)に沿って往復移動可能に構成されていてもよい。
【0012】
ステージ2cは、上面(載置面)に載置された加工対象物W又は加工製品Pを吸着保持するように構成されている。ステージ2cは、例えば、マグネットチャックであってもよいし、真空チャックであってもよい。ステージ2cは、少なくとも一つの加工対象物W又は加工製品Pを保持してもよいし、複数の加工対象物W又は加工製品Pを保持してもよい。ステージ2cは、ガイド機構2bのブロックに接続されていてもよい。そのため、ブロックがレール2dを往復移動すると、ステージ2cに保持されている加工対象物W又は加工製品Pも共にレール2d(Z軸)に沿って往復移動する。
【0013】
加工ユニット3は、加工対象物Wが所定形状の加工製品Pとなるように加工対象物Wを加工する機能を有する。加工ユニット3は、ベースユニット2の上方に配置されていてもよい。加工ユニット3は、工具3aと、シャフト3bと、カバー部材3cと、駆動機構3dとを含む。
【0014】
工具3aは、加工対象物Wに接触した状態で加工対象物Wを加工するように構成されている。例えば、加工装置1が研削装置である場合には、工具3aは、加工対象物Wを研削加工する砥石であってもよい。当該砥石は、例えば、回転ホイールに砥粒層が設けられた研削ホイールなどであってもよい。当該研削ホイールの形状は、例えば、JIS B 4141:1998にて定められる形状記号「4B2」(いわゆる片Vフェイス)であってもよいし(
図1参照)、「1EE1」(いわゆるVフェイス)であってもよい。当該研削ホイールの先端径は、仕上げ加工用の場合に例えば30μm~60μm程度であってもよいし、粗加工用の場合に50μm~200μm程度であってもよい。当該研削ホイールの先端角度は、例えば、10°~40°程度であってもよい。
【0015】
シャフト3bは、X軸に沿って延びている。シャフト3bの一端には、工具3aが取り付けられている。シャフト3bの中心軸と工具3aの中心軸とは略一致していてもよい。シャフト3bの他端には、駆動機構3dが取り付けられている。
【0016】
カバー部材3cは、工具3aによる加工対象物Wの加工に伴い発生する切り屑や粉塵が周囲に飛散するのを抑制するように構成されている。カバー部材3cは、工具3aの周囲を覆うように、プレート3eを介して駆動機構3dに取り付けられている。カバー部材3cは、
図1に例示されるように、工具3aの背面を覆う背板と、工具3aの各側面をそれぞれ覆う一対の側板とを含んでおり、Y軸方向から見たときに略C字形状を呈していてもよい。カバー部材3c及びプレート3eには、シャフト3bが挿通可能な貫通孔又は切欠部が設けられていてもよい。
【0017】
駆動機構3dは、コントローラCtrからの指示に基づいて、シャフト3bを支持して回転させるように構成されている。シャフト3bの回転に伴い、シャフト3bの中心軸を回転軸として、工具3aも回転する。駆動機構3dは、コントローラCtrからの指示に基づいて、シャフト3b及びカバー部材3cをY軸に沿って上下動させるように構成されている。このとき、シャフト3bに取り付けられている工具3aも共に上下方向に往復移動する。駆動機構3dは、コントローラCtrからの指示に基づいて、シャフト3b及びカバー部材3cをX軸に沿って進退させるように構成されている。このとき、シャフト3bに取り付けられている工具3aも共に水平方向に往復移動する。駆動機構3dによるシャフト3b及びカバー部材3cの動作タイミング及び動作速度、シャフト3bの回転数などは、例えば、コントローラCtrに記憶されている加工製品Pの設計データ(例えば、CADデータなど)に基づいて設定されてもよい。
【0018】
測定ユニット4は、加工ユニット3によって加工された加工対象物W、すなわち、加工製品Pの形状及び寸法を測定するように構成されている。測定ユニット4は、支持部材4aと、接触式プローブ10とを含む。
【0019】
支持部材4aは、プレート3eに取り付けられている。このように、比較的剛性の高いプレート3eに支持部材4aが設けられることで、支持部材4aに振動が伝わり難くなるので、測定ユニット4による測定精度が向上する。支持部材4aは、
図1に例示されるように、カバー部材3cの側方に隣接して位置していてもよい。支持部材4aは、接触式プローブ10を吊り下げた状態で支持している。そのため、接触式プローブ10は、ステージ2cの上方に位置している。
【0020】
支持部材4aは、図示しない駆動機構を含んでおり、コントローラCtrからの指示に基づいて、接触式プローブ10を上下動させるように構成されていてもよい。支持部材4aは、例えば、加工ユニット3によって加工対象物Wが加工されているときには接触式プローブ10を上昇させ、加工ユニット3によって加工対象物Wが加工されておらず加工製品Pを測定するときには接触式プローブ10を下降させてもよい。
【0021】
接触式プローブ10は、ハウジング11と、スタイラス20とを含む。ハウジング11は、支持部材4aに支持されている。ハウジング11は、図示しない弾性部材(例えば、コイルバネなど)を介してスタイラス20を弾性的に保持している。そのため、スタイラス20が加工製品Pに接触すると、スタイラス20がハウジング11側に押し込まれる。ハウジング11内には図示しないセンサが設けられており、スタイラス20の位置変化をセンサが検出することにより、スタイラス20が加工製品Pに接触したと判断される。
【0022】
スタイラス20は、超硬合金(例えば、タングステンカーバイド)で構成されていてもよい。スタイラス20は、
図2~
図4に例示されるように、基端部21と、先端部22と、接触子23とを含む。
【0023】
基端部21は、ハウジング11に取り付けられた状態で、上下方向(Y軸)に沿って延びている。基端部21は、四角柱形状を呈していてもよいし(
図2及び
図3参照)、他の形状(例えば、その他の角柱状、円柱状など)を呈していてもよい。基端部21は、水平方向(X軸)において対向する一対の主面S1,S2を含む。主面S1,S2は、上下方向(Y軸)に沿って延びている。主面S1は、基端部21の下部において主面S2側に向けて窪んでいてもよい(
図2及び
図4参照)。すなわち、主面S1は、階段状を呈していてもよい。この場合、基端部21の上部のうち主面S1側の部分21a(第1の部分)は、基端部21の下部のうち主面S1側の部分21bよりも外方に向けて突出している。
【0024】
先端部22は、基端部21の先端(下端)に一体的に接続されている。先端部22は、基端部21から先端部22の先端側に向かうにつれて先細りとなる三角柱形状を呈している。そのため、先端部22は、側方(Z軸)から見たときに、三角形状を呈している。
【0025】
先端部22は、水平方向(X軸)において対向する一対の主面S3,S4を含む。主面S3(第1の主面)は、上下方向(Y軸)に沿って延びている。すなわち、主面S3は、主面S1と一体的に連続して延びている。主面S4は、水平方向(X軸)において主面S3とは反対側に位置している。主面S4は、上下方向(Y軸)に対して傾斜して延びている。そのため、主面S4は、主面S2の下端から屈曲して延びている。
【0026】
主面S3,S4がなす傾斜角θ(
図4参照)は、鋭角である。傾斜角θは、加工対象物Wの加工に用いた研削ホイールの先端角度よりも小さく設定されていてもよい。傾斜角θは、例えば、5°~35°程度であってもよいし、8°~28°程度であってもよい。
【0027】
接触子23は、先端部22の先端(下端)に設けられている。接触子23は、側方(Z軸)から見たときに、扇形を呈している。すなわち、接触子23の表面は、側方(Z軸)から見たときに、略円弧状を呈している。換言すれば、接触子23は、円柱がその中心軸方向において部分的に切除された形状(略半円柱状)を呈している。接触子23の半径rは、例えば、15μm~200μm程度であってもよいし、25μm~150μm程度であってもよい。接触子23の半径rは、加工対象物Wの加工に用いた研削ホイールの先端径よりも小さく設定されていてもよいし、加工製品Pの表面形状のうち最小の曲率半径よりも小さく設定されていてもよい。接触子23の中心角φは、例えば、150°~200°程度であってもよい。この場合、スタイラス20のコンパクト化を図りつつ、スタイラス20の剛性を高めることが可能となる。
【0028】
図2及び
図4に例示されるように、接触子23のうち主面S3側の部分23a(第2の部分)は、主面S3よりも外方に向けて突出している。すなわち、接触子23のうち主面S3側の部分23aは、主面S3よりも、主面S4から主面S3に向かう方向(X軸の負側)に突出している。換言すれば、主面S3は、基端部21の上部のうち主面S1側の部分21a及び接触子23のうち主面S3側の部分23aに対して窪んでいる。そのため、主面S3と、部分21a,23aとによって凹部Cが形成されている。
【0029】
部分23aは、上下方向(Y軸)から見たときに、部分21aと重なり合っている。この場合、平板を加工してスタイラス20を作成する際に、加工が容易となる。
【0030】
図4に例示されるように、側方(Z軸)から見たときに、接触子23と主面S4とは、交点Qにおいて接続されている。側方(Z軸)から見たときに、交点Qにおける接触子23の接線は、主面S4と略一致していてもよい。この場合、接触子23から主面S4にかけて連続的に延びるので、スタイラス20の剛性を確保しやすくなる。また、この場合、平板を加工してスタイラス20を作成する際に、加工が容易となる。
【0031】
ディスプレイ5は、コントローラCtrからの指示に基づいて、種々の情報を画面上に表示する機能を有する。ディスプレイ5に表示される情報は、例えば、加工対象物W又は加工製品Pのサイズ、加工対象物W又は加工製品Pの位置、加工条件、測定条件、後述する移動経路T(
図5参照)などを含んでいてもよい。
【0032】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、加工装置1の各部(ガイド機構2b、駆動機構3d、測定ユニット4)をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。コントローラCtrは、測定ユニット4によって測定された加工製品Pの測定データを、測定ユニット4から受信するように構成されている。
【0033】
[接触式プローブによる加工製品の測定方法]
次に、接触式プローブ10による加工製品Pの測定方法について、
図5を参照して説明する。まず、コントローラCtrが、加工製品Pの設計データを読み込み、加工製品Pの形状に基づいて、スタイラス20の移動経路Tを算出する。
【0034】
移動経路Tは、
図5に例示されるように、加工製品Pの直線状部分を測定するための測定点Mと、加工製品Pの曲線状部分を測定するための測定点Nとを含んでいてもよい。加工製品Pの曲線状部分の長さに対する測定点Nの数の割合は、加工製品Pの直線状部分の長さに対する測定点Mの数の割合よりも多く設定されていてもよい。あるいは、測定点Mの数は、一つの直線状部分に対して1点~3点程度であり、測定点Nの数は、曲線状部分の角度を基準角度(例えば、5°~20°)で除算して得られた数であってもよい。
【0035】
次に、コントローラCtrが加工装置1の各部(ガイド機構2b、駆動機構3d、測定ユニット4)に指示して、スタイラス20を移動経路Tに沿って移動させる。スタイラス20が測定点M,Nの始点に到達した場合には、コントローラCtrが駆動機構3dに指示して、カバー部材3cと共に接触式プローブ10を加工製品Pに向けて降下させ、測定点の垂直方向から接触させる。
【0036】
スタイラス20が加工製品Pに接触した場合には、そのときの位置情報を接触式プローブ10がコントローラCtrに送信すると共に、コントローラCtrが駆動機構3dに指示して、カバー部材3cと共に接触式プローブ10を上昇させる。その後は同様に、スタイラス20を移動経路Tに沿って移動させ、スタイラス20が測定点M,Nに到達したときに、接触式プローブ10を昇降又は水平方向に移動させることにより、加工製品Pの形状及び寸法が測定される。
【0037】
[作用]
以上の例によれば、先端部22が三角柱形状を呈しているので、接触子23のうち主として主面S3側から頂部にわたる部分23aが加工製品Pと接触することで、接触時の荷重(反力)が分散しやすい。そのため、スタイラスシャフトの先端に球形状の接触子が取り付けられた従来のスタイラスと比較して、強度に優れたスタイラス20が得られる。また、接触子23の表面が、半径が15μm~200μmの略円弧状を呈している。そのため、接触子23の先端径が、一般的に用いられている加工工具の先端径よりも小さい。したがって、極小の加工領域を測定することが可能となる。さらに、接触子23のうち主面S3側の部分23aが、主面S3よりも主面S4から主面S3に向かう方向に突出している。そのため、接触子23の部分23aが加工製品Pに接触する際に、主面S3が加工製品Pに接触し難い。したがって、接触子23の表面の面積が大きくなるので、複雑な形状の加工製品Pの測定が可能となる。
【0038】
以上の例によれば、傾斜角θは、例えば、5°~35°程度であってもよい。傾斜角θが5°以上の場合、スタイラス20の強度がより高まるので、スタイラス20の長寿命化を図れる傾向にある。傾斜角θが35°以下の場合、接触子23の表面の面積がより大きくなるので、より複雑な形状の加工製品Pを測定できる傾向にある。
【0039】
以上の例によれば、主面S3は、基端部21のうち主面S3側の部分21a及び接触子23のうち主面S3側の部分23aに対して窪んでいてもよい。この場合、接触子23のうち主面S3側の部分23aが、主面S3よりも主面S4から主面S3に向かう方向に突出した状態を、窪み(凹部C)によって容易に作出することが可能となる。
【0040】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0041】
(1)主面S1は階段状を呈していていなくてもよい。すなわち、基端部21の上部のうち主面S1側の部分21aと、基端部21の下部のうち主面S1側の部分21bとが、平坦な平面とされていてもよい。この場合、スタイラス20には凹部Cが存在していなくてもよい。
【0042】
[他の例]
例1.接触式プローブのスタイラスの一例は、所定の第1の方向に沿って延びる柱形状を呈する基端部と、基端部に接続された先端部とを備える。先端部は、基端部から先端部の先端側に向かうにつれて先細りとなる略三角柱形状を呈しており、第1の方向に沿って延びる第1の主面と、第1の方向と直交する第2の方向において第1の主面とは反対側に位置し、且つ、第1の方向に対して傾斜して延びる、第2の主面と、先端に位置する接触子とを含む。第1の主面と第2の主面とが成す傾斜角が鋭角である。接触子の表面は、第1の方向及び第2の方向の双方に直交する第3の方向から見たときに、略円弧状を呈している。接触子のうち第1の主面側の部分は、第1の主面よりも第2の主面から第1の主面に向かう方向に突出している。この場合、先端部が三角柱形状を呈しているので、接触子のうち主として第1の主面側から頂部にわたる部分が加工製品と接触することで、接触時の荷重(反力)が分散しやすい。そのため、スタイラスシャフトの先端に球形状の接触子が取り付けられた従来のスタイラスと比較して、強度に優れたスタイラスが得られる。また、接触子のうち第1の主面側の部分が、第1の主面よりも第2の主面から第1の主面に向かう方向に突出している。そのため、接触子の当該部分が加工製品に接触する際に、第1の主面が加工製品に接触し難い。したがって、接触子の表面の面積が大きくなるので、複雑な形状の加工製品の測定が可能となる。
【0043】
例2.例1のスタイラスにおいて、接触子の表面は、第3の方向から見たときに、半径が15μm~200μmの略円弧状を呈していてもよい。この場合、接触子の先端径が、一般的に用いられている加工工具の先端径よりも小さい。そのため、極小の加工領域を測定することが可能となる。
【0044】
例3.例1又は例2のスタイラスにおいて、傾斜角は5°~35°であってもよい。傾斜角が5°以上の場合、スタイラスの強度がより高まるので、スタイラスの長寿命化を図れる傾向にある。傾斜角が35°以下の場合、接触子の表面の面積がより大きくなるので、より複雑な形状の加工製品を測定できる傾向にある。
【0045】
例4.例1~例3のいずれかのスタイラスにおいて、第1の主面は、基端部のうち第1の主面側の部分及び接触子のうち第1の主面側の部分に対して窪んでいてもよい。この場合、接触子のうち第1の主面側の部分が、第1の主面よりも第2の主面から第1の主面に向かう方向に突出した状態を、窪みによって容易に作出することが可能となる。
【0046】
例5.例4のスタイラスにおいて、第1の部分は、第1の方向から見たときに、第2の部分と重なり合っていてもよい。この場合、平板を加工してスタイラスを作成する際に、加工が容易となる。
【0047】
例6.例4又は例5のスタイラスにおいて、第3の方向から見たときに、接触子と第2の主面との交点において、接触子の接線と第2の主面とが一致していてもよい。この場合、接触子から第2の主面にかけて連続的に延びるので、スタイラスの剛性を確保しやすくなる。また、この場合、平板を加工してスタイラスを作成する際に、加工が容易となる。
【符号の説明】
【0048】
1…加工装置、10…接触式プローブ、20…スタイラス、21…基端部、21a…部分(第1の部分)、22…先端部、23…接触子、23a…部分(第2の部分)、C…凹部、r…半径、S3…主面(第1の主面)、S4…主面(第2の主面)、θ…傾斜角。