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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179051
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092097
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB25
(57)【要約】
【課題】圧電素子の振動が阻害されることを抑制できる超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサ1は、収容空間Sを画成している音響整合部材2と、収容空間Sに配置されている圧電素子4と、圧電素子4の主面40b上に配置されている制振層10と、制振層10上に配置されいている配線部材9と、を備える。制振層10は、圧電素子4と配線部材9とを電気的に接続している導電経路11を有している。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を画成しているケースと、
前記収容空間に配置されている圧電素子と、
前記圧電素子の主面上に配置されている制振層と、
前記制振層上に配置されいている配線部材と、を備え、
前記制振層は、前記圧電素子と前記配線部材とを電気的に接続している導電経路を有している、
超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記制振層は、前記圧電素子の主面に沿う方向に延在し、前記方向における前記圧電素子の第一端部と第二端部とを接続している、
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記導電経路は、前記第一端部上に配置された第一導電経路と、前記第二端部上に配置された第二導電経路と、を含み、
前記配線部材は、前記第一導電経路上に配置された第一配線部材と、前記第二導電経路上に配置された第二配線部材と、を含んでいる、
請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記制振層は、前記主面の全体を覆っている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記配線部材の厚さは、前記制振層の厚さよりも厚い、
請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有底筒状のキャップ体と、キャップ体内部の底面に形成される圧電素子と、内部枠体と、制振材と、を備える超音波トランスデューサが記載されている。この超音波トランスデューサでは、超音波成分の残響が制振材によって抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/069609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波トランスデューサでは、圧電素子の振動が配線部材により阻害される場合がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、圧電素子の振動が阻害されることを抑制できる超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態に係る超音波トランスデューサは、収容空間を画成しているケースと、収容空間に配置されている圧電素子と、圧電素子の主面上に配置されている制振層と、制振層上に配置されいている配線部材と、を備え、制振層は、圧電素子と配線部材とを電気的に接続している導電経路を有している。
【0007】
上記一つの態様では、制振層が導電経路を有し、配線部材と圧電素子との間に介在している。配線部材が圧電素子に直接接続されていないので、圧電素子の振動に対する配線部材の影響が緩和される。よって、圧電素子の振動が配線部材により阻害されることを抑制できる。
【0008】
上記一つの態様では、制振層は、圧電素子の主面に沿う方向に延在し、方向における圧電素子の第一端部と第二端部とを接続していてもよい。この場合、超音波成分の残響が制振層によって確実に抑制される。
【0009】
上記一つの態様では、導電経路は、第一端部上に配置された第一導電経路と、第二端部上に配置された第二導電経路と、を含み、配線部材は、第一導電経路上に配置された第一配線部材と、第二導電経路上に配置された第二配線部材と、を含んでいてもよい。この場合、配線部材は圧電素子の第一端部及び第二端部と接続されているので、制振層のうち、圧電素子の中央部に配置された部分では、制振効果が発揮され易い。よって、圧電素子の中央部の制振効果を積極的に得ることができる。
【0010】
上記一つの態様では、制振層は、主面の全体を覆っていてもよい。この場合、超音波成分の残響が制振層によって更に確実に抑制される。
【0011】
上記一つの態様では、配線部材の厚さは、制振層の厚さよりも厚くてもよい。この場合、制振層が圧電素子の振動を阻害し難い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、圧電素子の振動が阻害されることを抑制できる超音波トランスデューサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る超音波トランスデューサを示す斜視図である。
図2図2は、超音波トランスデューサの分解斜視図である。
図3図3は、超音波トランスデューサの断面図である。
図4図4は、ケース、圧電素子、配線部材、及び保持部材を示す斜視図である。
図5図5は、圧電素子、配線部材、及び保持部材を示す斜視図である。
図6図6は、圧電素子及び配線部材を示す斜視図である。
図7図7(a)は圧電素子の底面図であり、図7(b)は圧電素子の側面図であり、図7(c)は圧電素子の平面図である。
図8図8は、保持部材の斜視図である。
図9図9は、超音波トランスデューサの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1図9を参照して、実施形態に係る超音波トランスデューサ1の構成を説明する。超音波トランスデューサ1は、音響整合部材2(ケース)と、フレーム部材3と、圧電素子4と、制振層10と、一対のリード線51,52と、一対の端子金具61,62と、保持部材7と、発泡部材8と、を備える。一対のリード線51,52及び一対の端子金具61,62は、配線部材9を構成している。
【0016】
超音波トランスデューサ1は、圧電素子4によって、超音波を発する、又は、受けた超音波を検出する超音波送受装置である。超音波トランスデューサ1が超音波を発する場合には、たとえば、圧電素子4に交流電圧が印加され、当該交流電圧によって圧電素子4が連続的に変位する。圧電素子4の変位に応じて、超音波トランスデューサ1から超音波が発せられる。超音波トランスデューサ1が超音波を検出する場合には、たとえば、受けた超音波に起因する圧電素子4の変位によって圧電素子4に起電力が発生する。起電力の発生によって超音波を受けたか否かが検出され、発生した起電力の大きさによって超音波の音圧又は音圧レベルなどが検出される。超音波トランスデューサ1は、たとえば、車載用超音波センサ、ガスセンサとして用いられる。
【0017】
音響整合部材2は、圧電素子4を収容している収容空間Sを形成している。本実施形態では、たとえば、音響整合部材2が、収容空間Sを画成しているケースを構成する。音響整合部材2は、少なくとも圧電素子4の一部及び各端子金具61,62の少なくとも一部を覆って、圧電素子4の音響インピーダンスを補整する。音響整合部材2は、その形状、構造、及び材料によって、圧電素子4の音響インピーダンスと、音響整合部材2の周囲に存在する媒質のインピーダンスとの整合を図る。媒質は、たとえば、空気又は空気以外のガスを含む。
【0018】
音響整合部材2は、有底筒状を呈している。音響整合部材2は、底部23及び側部24を有している。本実施形態では、底部23及び側部24は、一体に形成されている。音響整合部材2は、たとえば、アルミニウム等の金属からなる。音響整合部材2が金属からなる構成では、音響整合部材2が樹脂からなる構成に比べて、音響整合部材2が振動し易いので、超音波の送受信感度を向上させることができる。音響整合部材2は、たとえば、エポキシ等の樹脂からなってもよい。音響整合部材2が樹脂からなる構成によれば、音響整合部材2が金属からなる構成に比べて、音響整合部材2の残響成分が抑制され易い。よって、超音波成分の残響を十分に低減することができる。
【0019】
底部23は、円盤形状を呈している。底部23は、圧電素子4の変位に応じて超音波を発する、又は、外部からの超音波を受けて圧電素子4に振動を伝達する部分である。底部23は、収容空間Sに臨むように位置している内面23aと、上記媒質に臨むように位置している外面23bと、を有している。内面23aと外面23bとは、図3にも示されているように、第一方向D1で互いに対向している。本実施形態では、第一方向D1は、内面23aに直交する方向と一致していると共に、外面23bに直交する方向と一致している。
【0020】
内面23a及び外面23bは、第一方向D1から見て、たとえば、円形状を呈している。本実施形態では、内面23aは略平坦である。外面23bは、超音波トランスデューサ1における超音波の発信面及び受信面を構成している。底部23には、テーパー部23cが設けられている。テーパー部23cは、内面23aから外面23b側に向かって先細りになっている。
【0021】
側部24は、筒形状を呈している。本実施形態では、側部24は、円筒形状を呈している。側部24は、底部23から、底部23と交差する方向に延在している。本実施形態では、側部24は、第一方向D1に延在している。側部24は、収容空間Sに臨むように位置している内面24aと、上記媒質に臨むように位置している外面24bと、を有している。内面24aと外面24bとは、図3にも示されているように、第一方向D1に直交する方向で互いに対向している。
【0022】
フレーム部材3は、音響整合部材2に取り付けられている。フレーム部材3は、たとえば、ゴムで形成されている。フレーム部材3は、音響整合部材2と共に収容空間Sを形成している。フレーム部材3は、本体部31と、フランジ部32と、を有している。本体部31及びフランジ部32は、一体に形成されている。
【0023】
本体部31は、略円筒形状を呈している。本体部31は、音響整合部材2の側部24に取り付けられている。本体部31は、側部24の上部の外周面を取り囲むと共に、側部24の上部に配置されている。本体部31は、収容空間Sに連通する開口部Kを形成している。本体部31の内径は、少なくとも側部24の外径より小さい。本体部31の内面には、一対の端子金具61,62が配置される一対の凹部33が設けられている。本体部31の内径は、凹部33が設けられていない部分では、側部24の内径よりも小さい。フランジ部32は、本体部31の上端部に設けられている。フランジ部32は、円枠状を呈している。フランジ部32は、本体部31の外周面から径方向の外側に張り出している。
【0024】
圧電素子4は、音響整合部材2内において底部23の内面23a上に配置されている。圧電素子4は、収容空間Sに配置されている。圧電素子4は、内面23aに接着部材(不図示)で固定されている。圧電素子4は、側部24からは離間して設けられている。
【0025】
図7に示されるように、圧電素子4は、圧電素体40と、一対の電極41,42と、を有している。圧電素体40は、円板形状を呈している。圧電素体40は、互いに対向している一対の主面40a,40bと、主面40aと主面40bとを連結している側面40cと、を有している。一対の主面40a,40bは、第一方向D1で互いに対向している。主面40a,40bは、円形状を呈している。
【0026】
圧電素体40は、複数の圧電体層(不図示)が積層されて構成されている。各圧電体層は、圧電材料からなる。本実施形態では、各圧電体層は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料には、たとえば、PZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)が用いられる。各圧電体層は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の圧電素体40では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。圧電素体40内には、複数の内部電極(不図示)が配置されていてもよい。各内部電極は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。
【0027】
電極41は、主面40a、主面40b、及び側面40cに配置されている。電極41は、主面40a、側面40c及び主面40bにわたって配置されている。電極41は、電極部分41a、電極部分41b、及び電極部分41cを含んでいる。電極部分41aは、主面40aに配置され、略円形状を呈している。電極部分41bは、主面40bに配置されている。電極部分41cは、側面40cに配置され、電極部分41aと電極部分41bとを接続している。電極42は、電極部分41bから離間して主面40bに配置されている。電極42は、円形が一部切り欠かれた形状を呈している。
【0028】
電極41と電極42とは、互いに離間している。主面40a,40bの対向方向(第一方向D1)から見て、電極部分41bの面積は、電極42の面積より小さい。電極41及び電極42は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。電極41及び電極42は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0029】
圧電素子4は、第二方向D2における第一端部43及び第二端部44を有している。第二方向D2は、主面40bに沿い、第一方向D1に直交する方向である。第一端部43では、主面40a,40b及び側面40cがいずれも電極41に覆われている。第一端部43は、電極部分41aの一部と、電極部分41bと、電極部分41cと、を含む。第二端部44では、主面40aは電極41に覆われ、主面40bは電極42に覆われ、側面40cは電極から露出している。第二端部44は、電極部分41aの一部と、電極42の一部と、を含む。
【0030】
制振層10は、主面40b上に配置されている。制振層10は、主面40bに沿う第二方向D2に延在している。制振層10は、第二方向D2における圧電素子4の第一端部43と第二端部44とを接続している。本実施形態では、制振層10は、第二方向D2を長手方向とする矩形シート状を呈し、主面40bの一部を覆っている。制振層10は、第一端部43から第二端部44まで架けわたって配置されている。制振層10は、少なくとも圧電素子4の中央部、第一端部43、及び第二端部44上に配置されている。制振層10は、電極部分41bの一部、電極42の一部、及び、主面40bのうち電極部分41b及び電極42から露出した部分の一部にそれぞれ接して設けられている。制振層10は、主面40bのうち電極部分41b及び電極42から露出した部分と接していなくてもよい。
【0031】
制振層10は、導電性を有し、圧電素子4と配線部材9とを電気的に接続している導電経路11を有しいる。導電経路11は、第一端部43上に配置された第一導電経路11aと、第二端部44上に配置された第二導電経路11bと、を含んでいる。制振層10は、導電経路11以外の部分では絶縁性を有している。第一導電経路11aと第二導電経路11bとは、互いに離間し、電気的に接続されていない。制振層10は、たとえば、○○からなる樹脂層であり、導電経路11には、金属粒子などの導電性粒子又は導電性ビーズが含まれている。制振層10は、たとえば、異方性導電ペースト又は異方性導電性膜が硬化することにより形成されてもよい。
【0032】
配線部材9は、制振層10上に配置されている。配線部材9は、第一配線部材9a及び第二配線部材9bを含んでいる。第一配線部材9aは、第一導電経路11aにより電極41と電気的に接続されている。第一配線部材9aは、リード線51及び端子金具61を含んでいる。第二配線部材9bは、第二導電経路11bにより電極42と電気的に接続されている。第二配線部材9bは、リード線52及び端子金具62を含んでいる。
【0033】
リード線51,52は、端子金具61,62を介して圧電素子4と電気的に接続されている。リード線51,52は、圧電素子4と間接的に接続されている。リード線51,52は、音響整合部材2及びフレーム部材3によって形成される収容空間Sからフレーム部材3の開口部Kを介して収容空間Sの外部に延在している。リード線51は、電極41に電気的に接続されている。リード線52は、電極42に電気的に接続されている。各リード線51,52は、芯線53及び被覆54を含む。芯線53は、各リード線51,52の先端部分において、被覆54から露出している。
【0034】
端子金具61,62は、保持部材7に保持された状態で収容空間Sに配置されている。端子金具61,62は、音響整合部材2から離間して配置されている。端子金具61,62は、制振層10上に配置されている。第一配線部材9aの端子金具61は、第一導電経路11a上に配置され、第一導電経路11aと物理的及び電気的に接続されている。第二配線部材9bの端子金具62は、第二導電経路11b上に配置され、第二導電経路11bと物理的及び電気的に接続されている。
【0035】
端子金具61は、電極41とリード線51とを電気的に接続している。端子金具62は、電極42とリード線52とを電気的に接続している。端子金具61,62は、圧電素子4の主面40bに主面40bの縁に沿って設けられている。端子金具61,62は、主面40bに沿う第二方向D2で互いに離間すると共に、互いに対向している。
【0036】
各端子金具61,62は、第一部分63及び第二部分64を有している。第一部分63及び第二部分64は、互いに電気的に接続されている。本実施形態では、第一部分63及び第二部分64は、一体に形成されている。端子金具61,62の材料は、導電性を有し、金属で構成されている。端子金具61,62を構成する金属は、たとえば、リン青銅、無酸素銅、又は銅合金などである。本実施形態では、端子金具61,62はリードフレームである。
【0037】
第一部分63は、リード線51,52に物理的に接続され、圧電素子4から離間している。第一部分63は、主面40a,40bの対向方向(第一方向D1)に延在している。第一部分63は、第一方向D1、又は、第一方向D1から見て圧電素子4の重心から離れる方向に延在している。本実施形態では、第一部分63は、第一方向D1に延在している。
【0038】
リード線51,52は、圧電素子4及び第二部分64から離間して、第一部分63に物理的に接続されている。本実施形態では、端子金具61の第一部分63がリード線51の芯線53に物理的に接続されており、端子金具62の第一部分63がリード線52の芯線53に物理的に接続されている。本明細書において、「物理的に接続されている」とは、直接的に当接している場合に加えてハンダ又は導電性樹脂などの導電性接着材料を介して接続されている場合を含むが、導電性接着材料以外の他の部材を介する場合を含まない。
【0039】
第一部分63及び第二部分64は、それぞれ板形状を呈する板部65,66を含む。第一部分63は板部65を含み、第二部分64は板部66を含む。板部65と板部66とは、互いに交差する方向に延在している。板部65は、電極41,42から離れる方向に延在している。本実施形態において、板部65と板部66とは、互いに直交する方向に延在している。換言すれば、本実施形態において、端子金具61,62は、L字形状を呈している。板部65は、第一方向D1に延在している。板部66は、主面40bに沿う第二方向D2に延在している。
【0040】
板部65は、図3に示されるように、保持部材7の外側に配置され、音響整合部材2の側部24と対向している。板部65及び側部24とは、主面40bに沿う第二方向D2において互いに離間している。板部65と側部24の内面24aとの間には、発泡部材8が配置されている。板部65と側部24とは、発泡部材8によって電気的に絶縁されている。
【0041】
第二部分64の板部66は、平面視で矩形状である。第一方向D1から見て、板部66の面積は、電極部分41bの面積よりも小さい。端子金具61の板部66は、制振層10の第一導電経路11a上に配置され、第一導電経路11aと物理的及び電気的に接続されている。端子金具62の板部66は、制振層10の第二導電経路11b上に配置され、第二導電経路11bに物理的及び電気的に接続されている。板部66の厚さ(板部66の第一方向D1の長さ)は、制振層10の厚さ(制振層10の第一方向D1の長さ)よりも長い。
【0042】
第一部分63は、板部65に接続された保持部67と、係合部68と、をさらに含む。保持部67及び係合部68は、板部65に対して一体に接続されており、板部65に対して折れ曲がっている。換言すれば、保持部67及び係合部68は、板部65から突出している。
【0043】
保持部67は、各リード線51,52の先端部分を保持している。本実施形態では、保持部67は、カシメ加工によって、各リード線51,52を固定している。保持部67は、各リード線51,52の長さ方向に並んで配置されている一対のピン部分67a,67bを含んでいる。一対のピン部分67a,67bのうち、一方のピン部分67aは、他方のピン部分67bよりもリード線51,52の先端側に配置されている。
【0044】
ピン部分67a,67bが折れ曲がることで各リード線51,52が保持される。各リード線51,52の芯線53は、保持部67によって端子金具61,62の板部65に物理的に接続されている。本実施形態では、保持部67は、少なくとも一つのピン部分67aによって各リード線51,52の芯線53の露出部を保持し、当該露出部と接続されている。ピン部分67bは、各リード線51,52の被覆54が設けられた部分を保持している。
【0045】
係合部68は、一対のピン部分68a,68bを含み、保持部材7に係合している。一対のピン部分68a,68bは、主面40bに沿う方向で互いに離間している。一対のピン部分68a,68bは、主面40bに沿う方向で互いに対向している。一対のピン部分68a,68bの対向方向は、一対の端子金具61,62の対向方向と交差している。保持部材7と係合部68との係合によって、端子金具61,62は保持部材7に固定されている。ここで、「固定」とは、ガタを有するように係合されている状態を含む。
【0046】
一対のピン部分68a,68bは、保持部材7に対し、一対のピン部分68a,68bの対向方向(すなわち、主面40bに沿う方向)における端子金具61,62の動きを制限している。つまり、係合部68は、主面40bに沿う方向における端子金具61,62の動きを制限する第一ストッパとして機能している。さらに、一対のピン部分68a,68bは、板部65と共に、保持部材7に対し、第一方向D1における端子金具61,62の動きを制限している。つまり、係合部68及び板部66は、第一方向D1における端子金具61,62の動きを制限する第二ストッパとして機能している。
【0047】
保持部材7は、収容空間Sに配置されている。保持部材7は、圧電素子4及び制振層10上に配置されている。保持部材7は、樹脂からなる。保持部材7は、端子金具61,62を保持し、端子金具61,62の姿勢を安定させている。図8に示されているように、保持部材7は、枠状を呈している。保持部材7の厚さ方向は、第一方向D1と一致する。保持部材7は、第一方向D1に延在する軸周りに形成されている。保持部材7は、音響整合部材2に囲まれている。保持部材7は、側部24の内側に位置している。保持部材7は、圧電素子4の外周に沿って設けられている。保持部材7は、圧電素子4の主面40bの縁に沿って延在している。保持部材7は、第一方向D1から見て主面40bの重心を囲うように延在している。
【0048】
保持部材7は、厚さ方向(第一方向D1)における圧電素子4と反対側の端部7aに一対の欠落部71を有している。端子金具61の係合部68が一方の欠落部71の縁に係合する。端子金具62の係合部68が他方の欠落部71の縁に係合する。これによって、端子金具61,62は、保持部材7に固定される。保持部材7は、係合部68と板部66とに挟まれている。係合部68は、端子金具61,62に対し、保持部材7の外周方向における動きを制限しているとも言える。係合部68及び板部66は、端子金具61,62に対し、保持部材7の厚さ方向における動きを制限しているとも言える。保持部材7の材料は、たとえば、PBT、LCPなどの熱可塑性成形材料を含む。
【0049】
各欠落部71には、対応するリード線51,52の先端が収容されている凹部73が設けられている。凹部73は、圧電素子4側に窪んだ窪みである。凹部73の深さ方向は、第一方向D1と一致している。リード線51の先端は、一方の欠落部71に設けられた凹部73に収容されている。リード線52の先端は、他方の欠落部71に設けられた凹部73に収容されている。
【0050】
保持部材7には、スリット75が設けられている。保持部材7は、スリット75によって一部断絶した枠状を呈している。保持部材7は、平面視でC字形状を呈している。保持部材7は、スリット75が設けられた形状によって、主面40bに沿う方向に弾性を有している。保持部材7は、外周を囲む音響整合部材2の内面(内面24a)に弾性的に当接した状態で、収容空間Sに配置されている。保持部材7が内面24aに当接することで、音響整合部材2に対して圧電素子4が保持部材7及び端子金具61,62を介して位置決めされる。
【0051】
保持部材7の外周面には、第一方向D1に延びる複数の溝77が設けられている。溝77は、保持部材7をチャック装置によりチャックする際に用いられる。複数の溝77は、保持部材7の周方向において互いに等間隔で設けられている。本実施形態では、4つの溝77が設けられている。4つの溝77は、各欠落部71の両側に設けられている。
【0052】
発泡部材8は、収容空間Sに充填され、制振材及び吸音材として機能する。発泡部材8は、圧電素子4、制振層10、配線部材9の一部、及び保持部材7と共に収容空間Sに収容されている。発泡部材8は、音響整合部材2、フレーム部材3、圧電素子4、制振層10、配線部材9の一部、及び保持部材7に接する。発泡部材8は、収容空間Sに圧電素子4、制振層10、配線部材9の一部、及び保持部材7が収容された後に充填される。発泡部材8は、圧電素子4、制振層10、配線部材9の一部、及び保持部材7を覆っている。発泡部材8は、凹部73にも充填されている。
【0053】
発泡部材8は、たとえば、シリコンスポンジである。発泡部材8は、熱可塑性樹脂を主体とする発泡体であってもよい。熱可塑性樹脂は、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を含む。発泡部材8は、制振層10とは異なる材料により構成されている。発泡部材8は、導電性を有さない。
【0054】
以下、実施形態に係る超音波トランスデューサ1の効果について説明する。
【0055】
超音波トランスデューサ1では、制振層10が導電経路11を有し、配線部材9の端子金具61,62と圧電素子4との間に介在している。制振層10は、樹脂を含む材料により構成されているので、端子金具61,62よりも軟らかく弾性を有する。このような制振層10によれば、圧電素子4の振動に対する配線部材9の影響が緩和される。すなわち、端子金具61,62が圧電素子4に直接接続されていないので、圧電素子4が端子金具61,62に押さえつけられて、圧電素子4の振動が阻害されることを抑制できる。
【0056】
制振層10は、圧電素子4の主面40bに沿う第二方向D2に延在し、第二方向D2における圧電素子4の第一端部43と第二端部44とを接続している。このため、超音波成分の残響が制振層10によって確実に抑制される。
【0057】
導電経路11は、第一端部43上に配置された第一導電経路11aと、第二端部上に配置された第二導電経路11bと、を含む。配線部材9は、第一導電経路11a上に配置された第一配線部材9aと、第二導電経路11b上に配置された第二配線部材9bと、を含んでいる。制振層10のうち、配線部材9が配置された部分では、制振効果が低下するおそれがある。本実施形態では、制振層10のうち、圧電素子4の中央部に配置された部分には、配線部材9が配置されていない。よって、残響が最も発生し易い圧電素子4の中央部に対して、制振層10の制振効果を積極的に得ることができる。
【0058】
配線部材9の板部66の厚さは、制振層10の厚さよりも厚い。このため、制振層10は、残響を抑制しつつ、圧電素子4の振動を阻害し難い。
【0059】
以上、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0060】
上記実施形態では、制振層10は、主面40bの一部を覆っているが、主面40bの全体を覆っていてもよい。この場合、超音波成分の残響が制振層10によって更に確実に抑制される。
【0061】
上記実施形態では、配線部材9は、一対のリード線51,52及び一対の端子金具61,62により構成されるが、配線部材9は、フレキシブル基板により構成されてもよい。フレキシブル基板は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。この場合、超音波トランスデューサ1は、保持部材7を備えなくてもよい。
【0062】
上記実施形態では、電極41は、圧電素体40の主面40b上に配置された電極部分41aを含んでいるが、電極41は、電極部分41aのみからなり、音響整合部材2を介して配線部材9と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、主面40bにおける電極42の形成領域を拡大することができる。これにより、圧電素子4の活性領域を拡大し、圧電素子4の変位量を増大させることができる。
【0063】
上記実施形態では、発泡部材8が制振層10と接して設けられているが、発泡部材8は制振層10と接していなくてもよい。すなわち、制振層10と発泡部材8との間に空間が形成されていてもよい。
【0064】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0065】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
収容空間を画成しているケースと、
前記収容空間に配置されている圧電素子と、
前記圧電素子の主面上に配置されている制振層と、
前記制振層上に配置されいている配線部材と、を備え、
前記制振層は、前記圧電素子と前記配線部材とを電気的に接続している導電経路を有している、
超音波トランスデューサ。
(付記2)
前記制振層は、前記圧電素子の主面に沿う方向に延在し、前記方向における前記圧電素子の第一端部と第二端部とを接続している、
付記1に記載の超音波トランスデューサ。
(付記3)
前記導電経路は、前記第一端部上に配置された第一導電経路と、前記第二端部上に配置された第二導電経路と、を含み、
前記配線部材は、前記第一導電経路上に配置された第一配線部材と、前記第二導電経路上に配置された第二配線部材と、を含んでいる、
付記2に記載の超音波トランスデューサ。
(付記4)
前記制振層は、前記主面の全体を覆っている、
付記1~3のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサ。
(付記5)
前記配線部材の厚さは、前記制振層の厚さよりも厚い、
付記1~4のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサ。
【符号の説明】
【0066】
1…超音波トランスデューサ、2…音響整合部材、4…圧電素子、9…配線部材、9a…第一配線部材、9b…第二配線部材、10…制振層、11…導電経路、11a…第一導電経路、11b…第二導電経路、40b…主面、43…第一端部、44…第二端部、S…収容空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9