(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179052
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20231212BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092099
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊彦
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CA02
3B087CA08
3B087CA14
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車室壁面に沿うように跳ね上げた状態に保持可能な乗物用シートにおいて、見栄えと組付作業性の両立を図った構造を提供する。
【解決手段】車室壁面に跳ね上げた状態に保持することが可能な自動車用シートである。車室壁面に配設の雌型バックル11に対してシートに配設の雄型バックルを係合させ保持する。雌型バックル11は、ケース12の中に配置され、一対の第1側壁部12dを貫通する軸体15の両端部を支持するブラケット16がボデーに対し固定されて回動可能とされ、車室壁面に沿った収納位置と跳ね上げたシートの方向を向く使用位置とを選択的に採れる。雌型バックル11とケース12の底面の間には軸体15を中心に回動可能な蓋体14が配設されている。蓋体14は、雌型バックル11が使用位置のとき雌型バックル11と重なって配置され、雌型バックル11が収納位置のとき底面を外部から視認不可能にケース12に対して固定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックをシートクッションに対して折り畳んだ状態又はシートバックをシートクッションに対して略同一平面状に展開した状態で、車室壁面に沿う位置に跳ね上げた状態に保持することが可能な乗物用シートであって、
前記車室壁面に配設された被係合部材に対して前記乗物用シートから延びるウェビングの先端部に配設された係合部材を係合させることで跳ね上げた状態の前記乗物用シートを保持するものであり、
前記被係合部材は、車室方向に開口する容器状のケースの中に配置された状態で、該ケースの側壁部を貫通する軸体の両端部を前記ケースの前記側壁部の外側で支持するブラケットが乗物ボデーに対し前記ケースの底面部分に設けられた貫通孔を通してボルト締め固定されることで前記ケースに対して回動可能とされているとともに、前記車室壁面に沿った収納位置と跳ね上げた状態の前記乗物用シートの方向を向く使用位置とを選択的に採れるように構成されており、
前記被係合部材と前記底面部分との間には前記軸体を中心に前記被係合部材とともに回動可能な蓋体が配設されており、
該蓋体は、前記被係合部材が前記車室壁面に取付けられる前で前記使用位置にあるとき前記被係合部材と重なって配置され、前記ブラケットが乗物ボデーに対し固定されたのち前記被係合部材が前記収納位置に回動されると前記被係合部材とともに回動して前記底面部分を外部から視認できない位置で前記ケースに対して固定されるように構成されている乗物用シート。
【請求項2】
請求項1において、前記蓋体を前記被係合部材とともに前記被係合部材の前記収納位置に回動させたとき、前記蓋体に形成された係止部が前記ケースに形成された被係止部に係合することによって、前記蓋体は前記ケースに対して固定される乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記蓋体は、前記被係合部材が前記車室壁面に取付けられる前で前記使用位置にあるとき前記蓋体に形成された仮係止部が前記ケースに形成された仮被係止部に係合することによって、前記蓋体は前記ケースに対して前記軸体を中心に回動不能に仮固定される乗物用シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、前記被係合部材の前記蓋体と反対側には、前記被係合部材と重ねられた状態で前記ケースに対して前記軸体を中心に回動可能に取付けられた装飾カバーを有し、
該装飾カバーには、前記被係合部材が前記収納位置にあるとき前記被係合部材を前記使用位置の方向に回動させるための前記車室壁面から車室方向に突出する凸部が前記軸体から径方向に離隔した位置に形成されている乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。詳しくは、シートバックをシートクッションに対して折り畳んだ状態又は展開した状態で、車室壁面に沿う位置に跳ね上げた状態に保持する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用シートにおいて、シートバックをシートクッションに対して折り畳んだ状態又はシートバックをシートクッションに対して略同一平面状に展開した状態で、車室の側壁に沿う位置に跳ね上げた状態に保持するものがあった。特許文献1に記載された自動車用シートは、シートバックをシートクッションに対して折り畳んだ状態で、車室の側壁に沿う位置に跳ね上げた状態にする。そして、その状態で車室の側壁に配設された雌型バックルに対してシートクッションから延びるウェビングの先端部に取付けられた雄型バックルを係合させることによって自動車用シートを跳ね上げ位置に保持している。ここで、雌型バックルは、バックルの本体部を室内側に開口する凹状の容器体の中に配置し、この容器体の側壁を貫通する軸体で本体部を回動可能に支持するとともに、軸体の両端を容器体の側壁の外側でブラケットを介して車体のインナパネルに結合した構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された自動車用シートにおいては、雌型バックルの本体部を回動させて使用位置にしたとき、容器体の底面部をブラケットとともにインナパネルに対して固定しているボルトの頭部分が外部から視認されて見栄えを損なうという問題があった。そこで、ボルトの頭部分を隠すカバーを取付けるという手段も考えられるが、容器体の底面部の狭い箇所での取付け作業が必要となるため取付け作業性が悪いという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、車室壁面に沿うように跳ね上げた状態に保持可能な乗物用シートにおいて、見栄えと組み付け作業性の両立を図った構造の乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、シートバックをシートクッションに対して折り畳んだ状態又はシートバックをシートクッションに対して略同一平面状に展開した状態で、車室壁面に沿う位置に跳ね上げた状態に保持することが可能な乗物用シートであって、前記車室壁面に配設された被係合部材に対して前記乗物用シートから延びるウェビングの先端部に配設された係合部材を係合させることで跳ね上げた状態の前記乗物用シートを保持するものであり、前記被係合部材は、車室方向に開口する容器状のケースの中に配置された状態で、該ケースの側壁部を貫通する軸体の両端部を前記ケースの前記側壁部の外側で支持するブラケットが乗物ボデーに対し前記ケースの底面部分に設けられた貫通孔を通してボルト締め固定されることで前記ケースに対して回動可能とされているとともに、前記車室壁面に沿った収納位置と跳ね上げた状態の前記乗物用シートの方向を向く使用位置とを選択的に採れるように構成されており、前記被係合部材と前記底面部分との間には前記軸体を中心に前記被係合部材とともに回動可能な蓋体が配設されており、該蓋体は、前記被係合部材が前記車室壁面に取付けられる前で前記使用位置にあるとき前記被係合部材と重なって配置され、前記ブラケットが乗物ボデーに対し固定されたのち前記被係合部材が前記収納位置に回動されると前記被係合部材とともに回動して前記底面部分を外部から視認できない位置で前記ケースに対して固定されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、被係合部材と蓋体は重ねられいずれもケースに対して軸体を中心に回動可能に取付けられて被係合部材が使用位置とされた状態で、ブラケットが乗物ボデーに対してボルト固定されたのち、被係合部材を収納位置とすると蓋体はケースに対し固定される。この状態から被係合部材を使用位置に回動させると蓋体はケースの底面部分を隠した状態で固定され回動しないので、被係合部材を使用位置にしてもボルトの頭を外部から視認できなくすることができる。これによって、蓋体を作業性良く取付けてボルトの頭が外部から視認されることによる外観品質の悪化を抑制できる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記蓋体を前記被係合部材とともに前記被係合部材の前記収納位置に回動させたとき、前記蓋体に形成された係止部が前記ケースに形成された被係止部に係合することによって、前記蓋体は前記ケースに対して固定されることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、蓋体は、被係合部材に対して重ねられた状態で被係合部材とともに被係合部材の収納位置に回動させられることで、係止部が被係止部に係合してケースに対して固定されることができる。これによって、簡便な作業で蓋体をケースに対して固定することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記蓋体は、前記被係合部材が前記車室壁面に取付けられる前で前記使用位置にあるとき前記蓋体に形成された仮係止部が前記ケースに形成された仮被係止部に係合することによって、前記蓋体は前記ケースに対して前記軸体を中心に回動不能に仮固定されることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、蓋体は、被係合部材が車室壁面に取付けられる前で使用位置にあるとき、ケースに対して軸体を中心に回動不能に仮固定されているので、ブラケットを乗物ボデーに対してボルト締め固定する作業がし易い。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記被係合部材の前記蓋体と反対側には、前記被係合部材と重ねられた状態で前記ケースに対して前記軸体を中心に回動可能に取付けられた装飾カバーを有し、該装飾カバーには、前記被係合部材が前記収納位置にあるとき前記被係合部材を前記使用位置の方向に回動させるための前記車室壁面から車室方向に突出する凸部が前記軸体から径方向に離隔した位置に形成されていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、被係合部材は収納位置にあるとき装飾カバーで覆われているので見栄えが良いとともに、装飾カバーの凸部を押圧することによって被係合部材を使用位置方向に回動させることができるので被係合部材の収納位置と使用位置との切替えが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における、跳ね上げられた状態の自動車用シートの斜視図である。
【
図2】上記実施形態における雌バックル装置の車体に取付けられる前の状態の斜視図である。
【
図3】上記実施形態における雌バックル装置の分解斜視図である。
【
図4】上記実施形態における雌バックル装置の車体に取付けられた後の状態の斜視図である。雌バックルが収納位置にある状態を示す。
【
図5】上記実施形態における雌バックル装置の車体に取付けられた後の状態の斜視図である。雌バックルが使用位置にある状態を示す。
【
図6】上記実施形態における雌バックル装置の車体に取付けられる前の状態の平面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII矢視線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図9に基づき、本発明の一実施形態の自動車用シート1について説明する。
図1において、矢印により自動車用シート1を自動車に取付けたときの各方向を示している。ここで、自動車用シート1が、特許請求の範囲の「乗物用シート」に相当する。
【0016】
図1は、車室側壁面2に沿うように跳ね上げられた状態の自動車用シート1を示す。自動車用シート1は、着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション3と、着座者の腰部及び背部を支持するシートバック4と、を有する。自動車用シート1は、シートクッション3に対して、着座面を対向させるようにシートバック4を重ね合わせて折り畳んだ状態で、車室側壁面2にシートバック4の背面部が対向するように跳ね上げることができる。この状態で、保持するためにシートクッション3の後上部には、先端部に雄型バックル5が取付けられたウェビング6が取付けられ、車室側壁面2の取付開口2aには雌型バックル11が配設された雌型バックル装置7が取付けられている。雌型バックル11に雄型バックル5を係合することによって自動車用シート1は、跳ね上げ状態に保持される。ここで、車室側壁面2、雄型バックル5、雌型バックル11が、それぞれ、特許請求の範囲の「車室壁面」、「係合部材」、「被係合部材」に相当する。
【0017】
図1に示すように、雄型バックル5は、ベース部51と係合部52とを有し、ベース部51がシートクッション3から延びるウェビング6の先端部に連結されている。係合部52は、ベース部51から延びる一対の棒状体53を有し、一対の棒状体53の外側にはそれぞれ爪部54が形成されている。雄型バックル5は、一対の棒状体53が後述する雌型バックル11の角筒部11aの内部に挿入されたとき内側に向けて弾性変形したのち元の状態に戻り各爪部54が角筒部11aの係合孔部11a2の周縁部に係止することによって雌型バックル11に連結される。すると、車室側壁面2に連結された雌型バックル11に対してウェビング6が緊張状態で連結され、自動車用シート1は車室内方向に倒れることなく車室側壁面2に沿った跳ね上げ状態に保持される。
【0018】
図1に示すように、雌型バックル11が内部に配置された雌型バックル装置7は、車室側壁面2における取付開口2aを塞ぐように配設されている。
【0019】
図2、
図3、
図6及び
図7に示すように、雌型バックル装置7は、車室内方向に開口した容器状のケース12と、ケース12の中に配置される雌型バックル11、装飾カバー13、蓋体14及び軸体15と、軸体15を自動車ボデーの一部であるインナパネル(図示せず)に固定するブラケット16と、を有している。雌型バックル11、装飾カバー13及び蓋体14は、軸体15を中心にケース12に対して回動可能に取付けられており、軸体15の両端部がブラケット16を介してインナパネルに固定されることによって、雌型バックル装置7は、インナパネルに固定されている。
【0020】
図3、
図6及び
図7に示すように、ケース12は、車室内方向に矩形状に開口する開口部12aを有し、開口部12aの反対側に底面部12bを有する容器状をしている。開口部12aの外周縁部には底面部12bと平行に外側方向に延びるフランジ部12cが形成されている。開口部12aの長軸方向の部分と底面部12bの外周縁部の一部とを連結する一対の第1側壁部12dにおける長軸方向の一端部側の部分には、短軸方向に貫通し軸体15が通される軸孔12d1が形成されている。開口部12aの短軸方向の部分と底面部12bの外周縁部の一部とを連結する一対の第2側壁部12eにおける長軸方向の他端部側(一対の軸孔12d1から遠い側)の第2側壁部12eには、短軸方向の中央かつ底面部12bに近い部分に一対の軸孔12d1の方向に突出する係合凸部12e1が形成されている。係合凸部12e1は、後述する蓋体14の係合凹部14b1が係合して、蓋体14の回転を止めてケース12に固定する機能を有する。さらに、長軸方向の一端部側(一対の軸孔12d1に近い側)の第2側壁部12eには、短軸方向の中央に開口部12aの方向に延びる係合突起部12e2が形成されている。係合突起部12e2は、
図2に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態において、後述する蓋体14の突起部14a2と係合して、蓋体14を
図2及び
図7に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態に仮保持する機能を有する。加えて、長軸方向の他端部側(一対の軸孔12d1から遠い側)の第2側壁部12eには、短軸方向の中央かつ係合凸部12e1より開口部12aに近い側に係止角部12e3が形成されている。係止角部12e3は、後述する雌型バックル11の係止凸部11a3が係止して、雌型バックル11の回転を止める機能を有する。フランジ部12cの外周縁部には、底面部12bの方向に延びて車室側壁面2に形成された取付開口2a(
図1参照)の周縁部に係合してケース12を車室側壁面2に固定する係止部12c1が複数形成されている。底面部12bには、ブラケット16をボルトBでインナパネルに対して締結固定するための工具を挿入することができる貫通孔12b1が形成されている。ここで、第1側壁部12d、底面部12b、係合凸部12e1、係合突起部12e2が、それぞれ、特許請求の範囲の「側壁部」、「底面部分」、「被係止部」、「仮被係止部」に相当する。
【0021】
図3、
図5~
図7に示すように、雌型バックル11は、角筒部11aと、角筒部11aの軸方向一端部側に形成された一対の連結部11bと、を有する。角筒部11aの軸方向他端部側(一対の連結部11bと反対の側)は、雄型バックル5の係合部52を挿入可能な受入開口部11a1とされている。角筒部11aにおいて、受入開口部11a1における短軸方向の側面部にはそれぞれ係合孔部11a2が形成されている。係合孔部11a2の外周縁部には、角筒部11aの中に受入開口部11a1から雄型バックル5の係合部52が挿入されたとき、一対の棒状体53の爪部54が係合して雌型バックル11と雄型バックル5が連結状態とされる。受入開口部11a1の外周縁部における、
図4に示す収納位置にある状態で底面部12bに対向した側の長軸方向中央部には、角筒部11aの軸方向他端部側(一対の連結部11bと反対の側)に突出する係止凸部11a3が形成されている。係止凸部11a3は、雌型バックル11が
図4に示す収納位置にあるとき、ケース12の係止角部12e3に係止される部分である。一対の連結部11bには、それぞれ貫通する軸孔11b1が同軸で形成されており、一対の軸孔11b1に軸体15が通されることによって雌型バックル11がケース12に対し回動可能に取付けられるようになっている。
【0022】
図3~
図7に示すように、装飾カバー13は、雌型バックル11が
図4に示す収納位置にある状態で、雌型バックル11の外側面に重ね合わされた状態で取付けられている矩形状をした略板状の部材である。矩形の長軸方向の外周縁部の一端部側に、
図4に示す収納位置にある状態で、ケース12の内側方向に延びる一対の立壁部13aが形成され、各立壁部13aには、それぞれ貫通する軸孔13a1が同軸で形成されている。装飾カバー13における、矩形の長軸方向の他端部側(一対の軸孔13a1と反対の側)の短軸方向に延びる外周縁部には、ケース12の内側方向に延びるとともに途中から一対の軸孔13a1の方向に折り返されて延びる折返し部13bが形成されている。装飾カバー13は、雌型バックル11に重ね合わされたとき、折返し部13bが雌型バックル11の角筒部11aにおける受入開口部11a1の他端部側の外周縁部に係止されている。そして、雌型バックル11の一対の連結部11bを外側から覆うように一対の立壁部13aが被せられ、各軸孔11b1と各軸孔13a1とが一致させられた状態で軸体15が通されている。これによって、装飾カバー13は、雌型バックル11と一体となって軸体15を中心にケース12に対し回動可能に取付けられるようになっている。装飾カバー13における、矩形の長軸方向の一端部側(一対の軸孔13a1の側)の短軸方向に延びる外周縁部には、
図4に示す収納位置にある状態で、ケース12の外側方向に膨出する膨出部13cが形成されている。膨出部13cは、
図4に示す収納位置にある状態で押圧されることにより、装飾カバー13と一体となった雌型バックル11を
図5に示す使用位置に向けて起こし上げるように回動させるのに寄与する。ここで、膨出部13cが、特許請求の範囲の「凸部」に相当する。
【0023】
図2、
図3、
図5~
図7に示すように、蓋体14は、
図2に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態において、雌型バックル11の装飾カバー13が取付けられた面と反対側の面に重ね合わされて配置される矩形状をした平板状の部材である。矩形の短軸方向の外周縁部の一端部側に、
図2に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態において、雌型バックル11の一対の軸孔11b1の軸線の延びる方向に雌型バックル11の一対の連結部11bの間の間隔より若干短い寸法だけ延びる取付部14aが形成されている。取付部14aの先端部側には、矩形の長軸方向に延びる軸孔14a1が形成されている。蓋体14は、取付部14aが雌型バックル11の一対の連結部11bの間に配置され、各軸孔11b1と軸孔14a1とが一致させられた状態で軸体15が通されている。これによって、蓋体14は、軸体15を中心にケース12に対し回動可能に取付けられるようになっている。取付部14aの先端部側の軸方向中央部には、径方向に延びる突起部14a2が形成されている(
図7参照)。突起部14a2は、
図2に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態において、ケース12の係合突起部12e2と係合して蓋体14を、
図2及び
図7に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態に仮保持する機能を有する。矩形の短軸方向の他端部側(取付部14aと反対の側)の取付部14aが取付けられた面と反対側の面には、
図2に示す雌型バックル装置7がインナパネルに固定される前の状態において、雌型バックル11と反対方向に突出する係合凹部14b1を有する突出部14bが形成されている。ここで、係合凹部14b1、突起部14a2が、それぞれ、特許請求の範囲の「係止部」、「仮係止部」に相当する。
【0024】
図2、
図3、
図5~
図7に示すように、ブラケット16は、基板部16aと、基板部16aの両端部から基板部16aに対して垂直に立ち上がる一対の側板部16bと、を有し、略U字形状に形成されている。基板部16aには、インナパネルに対して固定するためのボルトBを通す一対のボルト孔16a1が形成されている。基板部16aと一対の側板部16bの内側にケース12を配置したとき、一対の側板部16bは、ケース12の一対の第1側壁部12dに外側から重なった状態となる。この状態で、各側板部16bには各第1側壁部12dに形成された軸孔12d1と一致する軸孔16b1が形成されている。各側板部16bの軸孔16b1と、各第1側壁部12dの軸孔12d1と、装飾カバー13の軸孔13a1と、雌型バックル11の軸孔11b1と、蓋体14の軸孔14a1と、に軸体15が通されることによって、ブラケット16とケース12と装飾カバー13と雌型バックル11と蓋体14は、軸体15を中心に相対回動可能に一体化されている。
【0025】
図2、
図4、
図5~
図9を参照して、雌型バックル装置7を車室側壁面2に配設する手順について説明する。
図2及び
図7には、車室側壁面2に配設する前の状態の雌型バックル装置7が示されている。一体化された装飾カバー13と雌型バックル11に対して、雌型バックル11の側に蓋体14が重ね合わされた状態で、一体としてケース12に対し軸体15を中心に開方向(雌型バックル11の使用位置方向)に回動させられている。そして、
図7に示すように、蓋体14の突起部14a2がケース12の係合突起部12e2と係合して蓋体14を、軸体15を中心に閉方向に回動不能に仮保持している。これによって、装飾カバー13と雌型バックル11も蓋体14と一体となって雌型バックル11のケース12に対する使用位置に仮保持される。この状態で、雌型バックル装置7を車室側壁面2の取付開口2a(
図1参照)の位置に配置し、ケース12の複数の係止部12c1を車室側壁面2の取付開口2aの周縁部に係合させるとともに、ブラケット16の各ボルト孔16a1にボルトBを通してインナパネルに対して締結固定する。各ボルトBの締結作業は、ケース12の貫通孔12b1に工具を通して行う。これによって、ケース12は、車室側壁面2とインナパネルに固定され、この状態で装飾カバー13と雌型バックル11と蓋体14は、軸体15を中心に回動可能となる。
【0026】
図7に示す開状態(雌型バックル11の使用位置の状態)から装飾カバー13と雌型バックル11と蓋体14を軸体15を中心に回動させて装飾カバー13がケース12の開口部12aを塞いだ
図4及び
図8に示す雌型バックル11の収納位置の状態とする。具体的には、蓋体14の突起部14a2はケース12の係合突起部12e2との仮保持状態を解消して装飾カバー13と雌型バックル11と蓋体14は、
図4及び
図8に示す雌型バックル11の収納位置の方向に回動し、係合凹部14b1がケース12の係合凸部12e1に係合した状態で回動が止まる。このとき、蓋体14はケース12の底面部12b及びブラケット16の基板部16aとほぼ平行状態にあり、底面部12bを覆っている。また、このとき、雌型バックル11の係止凸部11a3は、ケース12の係止角部12e3に係止して所定の力を加えないと使用位置の方向に回動しないように保持している。
【0027】
図8に示す閉状態から装飾カバー13の膨出部13cをケース12の方向に押圧すると、雌型バックル11の係止凸部11a3のケース12の係止角部12e3に対する係合が外れて装飾カバー13と雌型バックル11は一体となって開方向に回動し
図5及び
図9に示す雌型バックル11の使用位置の状態となる。このとき、蓋体14は、雌型バックル11と一体とはなっておらず係合凹部14b1がケース12の係合凸部12e1に係合した状態となっているため装飾カバー13と雌型バックル11とともには回動せず、
図8及び
図9に示す状態のままとされる。これによって、ケース12の底面部12bは外部から視認不能に隠され、それに伴ってブラケット16をインナパネルに締結固定する各ボルトBの頭も外部から視認不能に隠される。これ以後、
図4及び
図8に示す雌型バックル11の収納位置と、
図5及び
図9に示す雌型バックル11の使用位置との間で装飾カバー13と雌型バックル11を回動操作しても蓋体14はケース12の底面部12bを外部から視認不能に隠した状態に維持される。
【0028】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。雌型バックル装置7は、車室側壁面2に取付けられる前の状態において、雌型バックル11と蓋体14は、重ねられた状態で、雌型バックル11の使用位置で軸体15を中心とした回動が止められている。この状態で、雌型バックル装置7を車室側壁面2の取付開口2aに挿入してブラケット16をボルトBでインナパネルに対して締結固定する。つぎに、装飾カバー13と雌型バックル11と蓋体14を軸体15を中心に回動させて雌型バックル11の収納位置とすると、蓋体14は、係合凹部14b1がケース12の係合凸部12e1に係合してケース12に対して固定される。この状態から、装飾カバー13と雌型バックル11を、雌型バックル11の使用位置に回動させると蓋体14は、ケース12の底面部12bを隠した状態で固定され回動しないので、各ボルトBの頭を外部から視認できなくすることができる。これによって、蓋体14を作業性良く取付けて各ボルトBの頭が外部から視認されることによる外観品質の悪化を抑制できる。具体的には、蓋体14は、雌型バックル11に対して重ねられた状態で装飾カバー13と雌型バックル11とともに雌型バックル11の収納位置に回動させられることでケース12に対して固定されることができるので、ケース12の中に手を入れて蓋体14を取付けるといった作業性の悪い作業を回避することができる。
【0029】
また、雌型バックル11は、収納位置にあるとき装飾カバー13で覆われているので、見栄えが良いとともに、装飾カバー13の膨出部13cを押圧することによって使用位置に回動させられることができる。これによって、雌型バックル11の収納位置と使用位置との切替が容易となる。
【0030】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0031】
1.上記実施形態においては、雌型バックル11を「被係合部材」として車室側壁面2に配設し、雄型バックル5を「係合部材」として自動車用シート1の側に配設するように構成した。しかし、これに限らず、雄型バックル5を「被係合部材」として車室側壁面2に配設し、雌型バックル11を「係合部材」として自動車用シート1の側に配設するように構成してもよい。
【0032】
2.上記実施形態においては、雌型バックル11と装飾カバー13を別部品として構成したが、雌型バックル11の収納位置において外側に現れる部分の見栄えを良くして一部品として構成することもできる。
【0033】
3.上記実施形態においては、本発明を自動車用シート1に適用したが、これに限らず、航空機、船、電車等に搭載のシートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 自動車用シート(乗物用シート)
2 車室側壁面(車室壁面)
3 シートクッション
4 シートバック
5 雄型バックル(係合部材)
6 ウェビング
7 雌型バックル装置
11 雌型バックル(被係合部材)
12 ケース
12b 底面部(底面部分)
12b1 貫通孔
12e1 係合凸部(被係止部)
12e2 係合突起部(仮被係止部)
12e3 係止角部
12d 第1側壁部(側壁部)
13 装飾カバー
13c 膨出部(凸部)
14 蓋体
14b1 係合凹部(係止部)
14a2 突起部(仮係止部)
15 軸体
16 ブラケット
B ボルト