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特開2023-179055スラリー組成物の製造方法、および全固体電池の製造方法
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  • 特開-スラリー組成物の製造方法、および全固体電池の製造方法 図1
  • 特開-スラリー組成物の製造方法、および全固体電池の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179055
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】スラリー組成物の製造方法、および全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20231212BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20231212BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M10/0585
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092107
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】田村 隆明
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ22
5H029CJ30
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029DJ16
5H029EJ07
5H029EJ14
5H029HJ03
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA15
5H050EA28
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA03
(57)【要約】
【課題】斑点状のムラを低減すること。
【解決手段】バインダと溶媒とが混合されることにより、バインダ溶液が形成される。バインダ溶液がろ過されることにより、ろ液が形成される。ろ液と固体電解質とが混合されることにより、スラリー組成物が製造される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バインダと溶媒とを混合することにより、バインダ溶液を形成すること、
(b)前記バインダ溶液をろ過することにより、ろ液を形成すること、および
(c)前記ろ液と固体電解質とを混合することにより、スラリー組成物を製造すること
を含む、
スラリー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(b)は、前記バインダ溶液をろ材に通すことを含み、
前記ろ材は、20μm以下の目開きを有する、
請求項1に記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ろ材は、2μm以下の目開きを有する、
請求項2に記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(b)において、ろ過の残渣はゲル粒子を含む、
請求項1に記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(c)は、活物質と前記ろ液と前記固体電解質とを混合することにより、スラリー組成物を製造することを含む、
請求項1に記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項6】
(d)請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスラリー組成物の製造方法により製造されたスラリー組成物を、基材の表面に塗工することにより、塗工層を形成すること、
(e)前記塗工層を含む発電要素を形成すること、および
(f)前記発電要素を含む全固体電池を製造すること
を含む、
全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラリー組成物の製造方法、および全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-014285号公報(特許文献1)は、樹脂溶液をフィルタカートリッジで処理することにより、未溶解樹脂およびコンタミを取り除くことを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-014285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルク型の全固体電池が検討されている。全固体電池は発電要素を含む。発電要素は、電極層とセパレータ層とが交互に積層されることにより形成され得る。発電要素に含まれる各層は、スラリー組成物の塗工により形成され得る。
【0005】
スラリー組成物は、バインダ溶液と、粉末成分(活物質、固体電解質等)とが混合されることにより形成され得る。スラリー組成物の塗工時、斑点状のムラが発生することにより、生産性が低下することがある。
【0006】
本開示の目的は、斑点状のムラを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0008】
1.スラリー組成物の製造方法は、下記(a)~(c)を含む。
(a)バインダと溶媒とを混合することにより、バインダ溶液を形成する。
(b)バインダ溶液をろ過することにより、ろ液を形成する。
(c)ろ液と固体電解質とを混合することにより、スラリー組成物を製造する。
【0009】
本開示の新知見によると、斑点状のムラは、ゲル粒子によって引き起こされる。バインダ溶液は、バインダと溶媒とが混合されることにより形成され得る。バインダ溶液は、一見、均一であっても、ゲル粒子を含み得る。ゲル粒子は、バインダの不溶解分を含み得る。一旦溶解したバインダが、ゲル粒子として析出することもある。ゲル粒子を含むバインダ溶液が、スラリー組成物に使用されることにより、斑点状のムラが発生し得る。
【0010】
上記「1.」の製造方法においては、スラリー組成物の形成に先立って、バインダ溶液がろ過される。すなわち、バインダ溶液(ろ液)と、ゲル粒子(残渣)とが分離され得る。ろ液(ろ過後のバインダ溶液)がスラリー組成物に使用されることにより、斑点状のムラが低減され得る。
【0011】
バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴムを含んでいてもよい。
溶媒は、例えば、テトラリンを含んでいてもよい。
【0012】
なお、スラリー組成物は、電極層用であってもよいし、セパレータ層(固体電解質層)用であってもよい。
【0013】
2.上記「1.」に記載のスラリー組成物の製造方法において、(b)は、バインダ溶液をろ材に通すことを含んでいてもよい。ろ材は、例えば、20μm以下の目開きを有していてもよい。
【0014】
3.上記「2.」に記載のスラリー組成物の製造方法において、ろ材は、例えば、2μm以下の目開きを有していてもよい。
【0015】
4.上記「1.」~「3.」のいずれか1項に記載のスラリー組成物の製造方法において、(b)における、ろ過の残渣はゲル粒子を含んでいてもよい。
【0016】
5.上記「1.」~「4.」のいずれか1項に記載のスラリー組成物の製造方法において、(c)は、活物質とろ液と固体電解質とを混合することにより、スラリー組成物を製造すること、を含んでいてもよい。
【0017】
活物質を含むスラリー組成物が塗工されることにより、電極層が形成され得る。
【0018】
6.全固体電池の製造方法は、下記(d)~(f)を含む。
(d)上記「1.」~「5.」のいずれか1項に記載のスラリー組成物の製造方法により製造されたスラリー組成物を、基材の表面に塗工することにより、塗工層を形成する。
(e)塗工層を含む発電要素を形成する。
(f)発電要素を含む全固体電池を製造する。
【0019】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態における製造方法の概略フローチャートである。
図2図2は、本実施形態における発電要素を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<用語およびその定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0022】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0023】
各種方法に含まれる複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0024】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0025】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0026】
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0027】
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0028】
「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%に達する粒子径を示す。
【0029】
「固形分率」は、溶媒以外の成分の合計質量分率を示す。
【0030】
「電極」は、正極または負極の総称である。例えば、電極層は、正極層または負極層の総称である。電極層は、正極層であってもよいし、負極層であってもよい。
【0031】
「中空粒子」は、粒子の断面画像(例えば電子顕微鏡画像)において、中心部の空洞の面積が、粒子全体の断面積の30%以上である粒子を示す。「中実粒子」は、粒子の断面画像において、中心部の空洞の面積が、粒子全体の断面積の30%未満である粒子を示す。
【0032】
<製造方法>
図1は、本実施形態における製造方法の概略フローチャートである。以下「本実施形態における製造方法」が「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「スラリー組成物の製造方法」、「電極層の製造方法」、「セパレータ層の製造方法」、「全固体電池の製造方法」を含む。
【0033】
スラリー組成物の製造方法は、「(a)バインダ溶液の形成」、「(b)ろ過」および「(c)スラリー組成物の製造」を含む。
【0034】
電極層の製造方法、またはセパレータ層の製造方法は、(a)~(c)に加えて、「(d)塗工層の形成」を含む。
【0035】
全固体電池の製造方法は、(a)~(d)に加えて、「(e)発電要素の形成」および「(f)全固体電池の製造」を含む。
【0036】
《(a)バインダ溶液の形成》
本製造方法は、バインダと溶媒とを混合することにより、バインダ溶液を形成することを含む。本製造方法においては、任意の混合装置が使用され得る。バインダが溶媒に溶解し得る限り、混合条件は任意である。混合温度は、例えば、10~40℃であってもよい。混合時間は、例えば、8~24時間であってもよい。
【0037】
(バインダ)
バインダは、電極層またはセパレータ層において固体材料を結合し得る。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ゴム系バインダ、およびフッ素系バインダからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ゴム系バインダは、例えば、ブタジエンゴム(BR)、水素化ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム、およびエチレンプロピレンゴム(EPM)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。フッ素系バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダは、ここに例示される各材料のポリマーブレンド、ポリマーアロイ、共重合体等を含んでいてもよい。SBR由来成分を含むバインダは「SBR系バインダ」とも記される。SBR系バインダは、質量分率で、例えば10%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、30%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、50%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、70%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、90%以上のSBR由来成分を含んでいてもよい。SBR系バインダは、SBRからなっていてもよい。
【0038】
バインダは、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。例えば、熱可塑性樹脂を含む発電要素に対して、ホットプレス加工が施されることにより、熱可塑性樹脂が液状化し得る。プレス加工中、熱可塑性樹脂が流動し得ることにより、発電要素が緻密になることが期待される。発電要素が緻密になることにより、電池特性(例えば入出力特性等)の向上が期待される。熱可塑性樹脂は、例えばSBR等を含んでいてもよい。SBRは、ホットプレス加工に好適な軟化点を有し得る。
【0039】
バインダ溶液におけるバインダ濃度は、質量分率で、例えば、1~20%であってもよいし、5~15%であってもよい。
【0040】
(溶媒)
溶媒は、バインダが溶解し得る限り、任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、ケトン、およびラクタムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、テトラリン、酪酸ブチル、およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0041】
酪酸ブチルは、例えば、NMP等に比して、硫化物固体電解質を劣化させ難いことが期待される。テトラリンは、例えば、酪酸ブチルおよびNMP等に比して、硫化物固体電解質を劣化させ難いことが期待される。
【0042】
《(b)ろ過》
本製造方法は、バインダ溶液をろ過することにより、ろ液を形成することを含む。ろ液は「ろ過済みバインダ溶液」とも称され得る。残渣は、ゲル粒子を含んでいてもよい。すなわち、ろ過により、ゲル粒子の少なくとも一部がバインダ溶液から分離され得る。バインダ溶液は、一見、均一であっても、ゲル粒子を含み得る。ゲル粒子の低減により、斑点状のムラの低減が期待される。
【0043】
例えば、バインダ溶液がろ材に通されることにより、ろ液が形成され得る。ろ材は、例えば、スクリーンフィルタ、デプスフィルタ等を含んでいてもよい。デプスフィルタは、例えば、プリーツ構造を有していてもよい。ろ材は、例えば、20μm以下の目開きを有していてもよいし、2μm以下の目開きを有していてもよい。ろ材は、例えば、0.2μm以上の目開きを有していてもよいし、1μm以上の目開きを有していてもよい。ろ材は、例えば、2~20μmの目開きを有していてもよい。
【0044】
目開きが小さくなる程、斑点状のムラの低減が期待される。ただし目開きが小さくなる程、ろ過抵抗が増大し得る。例えば、ポンプ等によってバインダ溶液が加圧されることにより、バインダ溶液が圧送されてもよい。
【0045】
《(c)スラリー組成物の製造》
本製造方法は、ろ液(ろ過済みバインダ溶液)と固体電解質とを混合することにより、スラリー組成物を製造することを含む。本製造方法においては、任意の混合装置が使用され得る。例えば、超音波ホモジナイザ等が使用されてもよい。
【0046】
スラリー組成物は、セパレータ層用であってもよい。セパレータ層用のスラリー組成物は、ろ液と固体電解質とが混合されることにより形成され得る。スラリー組成物に溶媒が追加されることにより、スラリー組成物の固形分率が調整されてもよい。すなわち、ろ液と固体電解質と溶媒とが混合されることにより、スラリー組成物が製造されてもよい。追加溶媒は、バインダ溶液の溶媒と同種であってもよいし、異種であってもよい。スラリー組成物の固形分率は、例えば、30~50%であってもよいし、35~45%であってもよい。
【0047】
スラリー組成物は、電極層用であってもよい。電極層用のスラリー組成物は、活物質とろ液と固体電解質とが混合されることにより形成され得る。バインダおよび溶媒がさらに追加されてもよい。電極層用のスラリー組成物は、例えば、活物質と、ろ液と、固体電解質と、導電材と、バインダと、溶媒とが混合されることにより形成されてもよい。各材料は、一括して混合されてもよいし、混合中に段階的に追加されてもよい。
【0048】
追加溶媒は、バインダ溶液の溶媒と同種であってもよいし、異種であってもよい。スラリー組成物の固形分率は、例えば、30~50%であってもよいし、35~45%であってもよい。追加バインダは、バインダ溶液のバインダと同種であってもよいし、異種であってもよい。最終的なバインダの配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば、0.1~10質量部であってもよい。
【0049】
スラリー組成物は、例えば、分散剤、安定剤等をさらに含んでいてもよい。分散剤は、例えば、アミノアマイド、アンモニウム塩、カルボン酸エステル等を含んでいてもよい。
【0050】
(活物質)
活物質は、粉末状であってもよい。活物質は、例えば、1~30μmのD50を有していてもよい。活物質は、例えば、中空粒子を含んでいてもよい。活物質は、例えば、中実粒子を含んでいてもよい。
【0051】
活物質は、正極活物質を含んでいてもよい。すなわちスラリー組成物は正極層用であってもよい。正極活物質は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMnAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.4Co0.3Mn0.32、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.5Co0.3Mn0.22、LiNi0.5Co0.4Mn0.12、LiNi0.5Co0.1Mn0.42、LiNi0.6Co0.2Mn0.22、LiNi0.6Co0.3Mn0.12、LiNi0.6Co0.1Mn0.32、LiNi0.7Co0.1Mn0.22、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、およびLiNi0.9Co0.05Mn0.052からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Li(NiCoAl)O2は、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.052等を含んでいてもよい。
【0052】
正極活物質は、例えば下記式(α)により表されてもよい。
Li1-yNixMe1-x2…(α)
0.5≦x≦1
-0.5≦y≦0.5
Meは、例えば、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含む。xは、例えば、0.6以上であってもよいし、0.7以上であってもよいし、0.8以上であってもよいし、0.9以上であってもよい。
【0053】
正極活物質の表面に、金属の単体、酸化物、炭化物、ハロゲン化物等が付着していてもよい。例えば、Zr、W等の酸化物等が付着していてもよい。付着物は、例えば、正極活物質の表面に島状に分布していてもよい。
【0054】
正極活物質は、例えば、酸化物層によって被覆されていてもよい。酸化物層はバッファ層とも称される。酸化物層は、正極活物質と硫化物固体電解質との直接接触を阻害し得る。酸化物層は、例えば、5~50nmの厚さを有していてもよい。酸化物層は、例えば、Li、Nb、Ti、P、O、F等を含んでいてもよい。
【0055】
活物質は、負極活物質を含んでいてもよい。すなわちスラリー組成物は負極層用であってもよい。負極活物質は、任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si、SiOx(0<x<2、例えばMg等がドープされていてもよい。)、Si基合金、Sn、SnOx(0<x<2)、Li、Li基合金、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。合金系活物質(例えばSi等)が、炭素系活物質(例えば黒鉛等)に担持されることにより、複合材料が形成されてもよい。
【0056】
(固体電解質)
固体電解質は、電極層およびセパレータ層内にイオン伝導パスを形成し得る。固体電解質は、粉末状であってもよい。固体電解質は、例えば、0.1~5μmのD50を有していてもよい。固体電解質の配合量は、100体積部の活物質に対して、例えば、1~200体積部であってもよい。固体電解質は、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、および水素化物固体電解質からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0057】
硫化物固体電解質は、Sを含む。硫化物固体電解質は、例えば、Li、P、およびSを含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、O、Ge、Si等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばハロゲン等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばI、Br等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばガラスセラミックス型であってもよいし、アルジロダイト型であってもよい。硫化物固体電解質は、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-GeS2-P25、Li2S-P25、およびLi3PS4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0058】
例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成された硫化物固体電解質を示す。例えば、メカノケミカル法により硫化物固体電解質が生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
【0059】
(導電材)
導電材は、電極層内に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック(CB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレーク(GF)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。CBは、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびサーマルブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0060】
《(d)塗工層の形成》
本製造方法は、スラリー組成物を基材の表面に塗工することにより、塗工層を形成することを含んでいてもよい。本製造方法においては、任意の塗工装置が使用され得る。例えば、ダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。
【0061】
図2は、本実施形態における発電要素を示す概念図である。基材11は、導電性を有していてもよい。基材11は、集電体として機能してもよい。基材11は、例えば、シート状であってもよいし、網状であってもよい。基材11は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。基材11は、例えば、金属箔、金属メッシュ、多孔質金属体等を含んでいてもよい。基材11は、例えば、Al、Cu、Ni、Cr、Ti、およびFeからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。基材11は、例えば、Al箔、Al合金箔、Ni箔、Cu箔、Cu合金箔、Ti箔、SUS箔等を含んでいてもよい。金属箔の表面を炭素層が被覆していてもよい。炭素層は、例えば、導電性炭素材料(例えばCB等)を含んでいてもよい。
【0062】
塗工層は、例えば電極層であってもよい。例えば、電極層用のスラリー組成物が、基材11の表面に塗工されてもよい。スラリー組成物が乾燥することにより、第1電極層10が形成され得る。本製造方法においては、任意の乾燥装置が使用され得る。例えば、ホットプレート、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等が使用されてもよい。
【0063】
第1電極層10の乾燥後、第1電極層10にプレス加工が施されてもよい。例えば、ホットプレス加工が施されてもよいし、コールドプレス加工が施されてもよい。例えば、50~150℃のホットプレス加工が施されてもよい。本製造方法においては、任意のプレス加工装置が使用され得る。例えば、ロールプレス機等が使用されてもよい。プレス加工後の第1電極層10は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。
【0064】
塗工層は、例えばセパレータ層であってもよい。例えば、セパレータ層用のスラリー組成物が、第1電極層10の表面に塗工されることにより、セパレータ層30が形成されてもよい。セパレータ層30の乾燥後、セパレータ層30にプレス加工が施されてもよい。
【0065】
例えば、セパレータ層用のスラリー組成物が、仮支持体(例えば金属箔等)の表面に塗工されることにより、セパレータ層30が形成されてもよい。セパレータ層30の形成後、セパレータ層30が第1電極層10の表面に転写されてもよい。
【0066】
《(e)発電要素の形成》
本製造方法は、塗工層を含む発電要素を形成することを含む。例えば、セパレータ層30の表面に、第2電極層20が形成されることにより発電要素50が形成され得る。第2電極層20も、スラリー組成物の塗工により形成され得る。第2電極層20は、第1電極層10と異なる極性を有する。例えば、第1電極層10が負極層である時、第2電極層20は正極層である。例えば、第1電極層10が正極層である時、第2電極層20は負極層である。セパレータ層30は、第1電極層10と第2電極層20との間に介在する。セパレータ層30は、第1電極層10を第2電極層20から分離し得る。
【0067】
第2電極層20の表面に集電体21が接続されてもよい。例えば、接着剤等により、集電体21が第2電極層20の表面に貼り付けられてもよい。集電体21は、前述の基材11と同様の構成を有し得る。
【0068】
発電要素50は、第1電極層10、セパレータ層30および第2電極層20を、それぞれ単独で含んでいてもよい。発電要素50は、第1電極層10、セパレータ層30および第2電極層20を、それぞれ複数含んでいてもよい。例えば、電極層とセパレータ層とが交互に積層されることにより、発電要素50が形成されてもよい。発電要素50に含まれる塗工層の層数は任意である。発電要素50は、例えば、3~100層の塗工層を含んでいてもよい。
【0069】
発電要素50にプレス加工が施されてもよい。発電要素50に、例えばホットプレス加工が施されてもよい。
【0070】
《(f)全固体電池の製造》
本製造方法は、発電要素50を含む全固体電池を製造することを含む。例えば、発電要素50にリードタブ、外部端子等が接続されてもよい。発電要素50が外装体(不図示)に収納されてもよい。外装体は密封されてもよい。外装体は、任意の形態を有し得る。外装体は、例えば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体は、例えば、金属製のケース等であってもよい。外装体は、例えば、Al等を含んでいてもよい。外装体は、1個の発電要素50を単独で収納していてもよいし、複数個の発電要素50を収納していてもよい。複数個の発電要素50は、直列回路を形成していてもよいし、並列回路を形成していてもよい。
【実施例0071】
<製造例1>
《(a)バインダ溶液の形成》
下記材料が準備された。
バインダ:SBR系バインダ(密度 0.9g/cm3
溶媒:テトラリン
【0072】
バインダおよび溶媒が秤量された。ガラス容器内で、バインダと溶媒とが攪拌されることにより、バインダが溶媒に溶解した。すなわちバインダ溶液が形成された。攪拌時間は、16時間であった。バインダ溶液において、バインダの質量分率は10%であった。
【0073】
《(b)ろ過》
ロキテクノ社製のフィルタカートリッジ(品番 SHP 200XS)が準備された。フィルタカートリッジは、プリーツ構造を有するデプスフィルタ(ろ材)を含む。ろ材の目開きは、20μmであった。
【0074】
ポンプで加圧されたバインダ溶液が、フィルタカートリッジに通されることにより、ろ液が形成された。
【0075】
《(c)スラリー組成物の製造》
下記材料が準備された。
活物質:Li4Ti512(密度 3.5g/cm3
導電材:VGCF(密度 2g/cm3
バインダ:SBR系バインダ(密度 0.9g/cm3
固体電解質:硫化物固体電解質(密度 2g/cm3
分散剤:アルキロールアミノアマイド型
溶媒:テトラリン
【0076】
SMT社製の超音波ホモジナイザ(型式 UH-50)により、102質量部の活物質と、34質量部の固体電解質と、0.5質量部の分散剤と、1.1質量部の導電材と、93質量部の溶媒とが混合されることにより、懸濁液が形成された。8.8質量部のろ液(上記で得られたもの)が、懸濁液に追加された。懸濁液が均一になるまで、懸濁液が超音波ホモジナイザにより攪拌された。これによりスラリー組成物が製造された。
【0077】
《(d)塗工層の形成》
基材としてAl箔が準備された。Al箔の表面には、炭素層が形成されていた。ブレード法により、スラリー組成物が基材の表面に塗工された。塗膜が110℃で30分間乾燥されることにより、負極層が形成された。ロールプレス機により、負極層にプレス加工が施された。プレス温度は室温であった。線圧は0.3t/cmであった。
【0078】
以上の条件により、複数個の負極層が形成された。各負極層の表面において、1mm以上の最大フェレ径を有する斑点が、目視によりカウントされた。斑点の個数がサンプル数(負極層の個数)で除されることにより、斑点状のムラの発生率が求められた。
【0079】
さらに、負極層の表面に、2μm以上の最大フェレ径を有する斑点があった場合、該負極層は不良と判定された。不良の個数がサンプル数で除されることにより、不良率(百分率)が求められた。
【0080】
<製造例2>
ロキテクノ社製のフィルタカートリッジ(品番 SHP 020XS)により、バインダ溶液のろ過が実施されることを除いては、製造例1と同様に、スラリー組成物が製造され、負極層が形成された。製造例2のろ材は、2μmの目開きを有していた。
【0081】
<製造例3>
バインダ溶液がろ過されずに使用されることを除いては、製造例1と同様に、スラリー組成物が製造され、負極層が形成された。
【0082】
【表1】
【0083】
<結果>
バインダ溶液がろ過されることにより、斑点状のムラが低減する傾向がみられる。ろ材の目開きが小さい程、斑点状のムラが低減する傾向がみられる。
【0084】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0085】
10 第1電極層、11 基材、20 第2電極層、21 集電体、30 セパレータ層、50 発電要素。
図1
図2