(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179058
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】通信システム、通信装置および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/42 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H04L12/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092110
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨山 純恵
【テーマコード(参考)】
5K031
【Fターム(参考)】
5K031AA08
5K031EA01
5K031EA04
5K031EB03
5K031EB05
(57)【要約】
【課題】上位装置に接続され、かつリング網を構成する通信システムにおいて、耐障害性を向上させる。
【解決手段】本開示の通信システムは、リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置を備える。冗長経路が正常である場合、複数の通信装置のうちの1つの通信装置が冗長経路を介した上位装置との間のフレームの伝送を担うように、複数の通信装置が連携してフレームの伝送を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって前記上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置を備え、
前記冗長経路が正常である場合、前記複数の通信装置のうちの1つの通信装置が前記冗長経路を介した前記上位装置との間のフレームの伝送を担うように、前記複数の通信装置が連携してフレームの伝送を制御する、通信システム。
【請求項2】
前記通信装置は、自身の装置情報を含む制御信号を前記リング網内で送受信することにより、自身と連携すべき他の通信装置の有無を判断する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記複数の通信装置のうちの前記1つの装置が、前記上位装置と前記リング網との間のフレームの中継を担うプライマリ装置に設定され、前記複数の通信装置のうちの他の装置は、前記リング網内でフレームの中継を担うセカンダリ装置に設定され、
前記プライマリ装置および前記セカンダリ装置は、前記制御信号に含められた前記装置情報に基づいて前記複数の通信装置の間で決定され、
前記プライマリ装置および前記セカンダリ装置は、各々に対応して定められた転送規則に従って、受信したフレームを転送する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記セカンダリ装置は、前記プライマリ装置と前記上位装置との間の通信異常を検出した場合に、新たなプライマリ装置を選出する、請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記プライマリ装置は、前記上位装置へのアクセスが不可となったことを検出した場合に、自身の送信する前記制御信号に前記通信異常を示す情報を含めて、前記セカンダリ装置に前記制御信号を送信し、
前記セカンダリ装置は、前記制御信号を受信することにより前記プライマリ装置の前記通信異常を検出する、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
通信装置であって、
ネットワーク上の2つの通信機器と通信可能にそれぞれ接続するための第1のポートおよび第2のポートと、
上位装置に通信可能に接続するための第3のポートと、
前記上位装置と前記ネットワークとの間で転送されるべきフレームの転送を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1のポートまたは前記第2のポートを介して、前記ネットワーク上の他の通信装置と通信し、前記通信装置と前記他の通信装置とが前記上位装置に接続されていると判定した場合に、前記通信装置および前記他の通信装置のうちのいずれか1つを、前記通信装置と前記他の通信装置とによって形成される冗長経路を介して前記上位装置との間でフレームの伝送を担う通信装置に決定するように構成される、通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記通信装置の装置情報を含む制御信号を送受信するように構成され、受信した前記制御信号に基づいて、前記通信装置をプライマリ装置およびセカンダリ装置のいずれか一方に決定し、前記プライマリ装置および前記セカンダリ装置の各々に対応して定められた転送規則に従って、受信したフレームを転送するように構成される、請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記通信装置が前記プライマリ装置であり、かつ、前記上位装置とのアクセスが不可となった場合には、自身の送信する前記制御信号に前記通信装置の異常を示す情報を含めて、前記セカンダリ装置に前記制御信号を送信し、
前記通信装置が前記セカンダリ装置であり、かつ、前記プライマリ装置から、前記プライマリ装置と前記上位装置との間の通信異常を示す前記制御信号を受信した場合には、新たなプライマリ装置を選出する、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって前記上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置による通信制御方法であって、
前記複数の通信装置が自身の装置情報を含む制御信号を、前記複数の通信装置の間で送受信するステップと、
前記制御信号に基づいて、前記複数の通信装置のうちの1つをプライマリ装置に決定するステップと、
前記冗長経路が正常である場合、前記プライマリ装置に対応して定められた転送規則に従って、前記プライマリ装置が、受信したフレームを前記上位装置または前記リング網に転送するステップとを備える、通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、通信装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リング網を形成する複数の通信装置のうちの1つが監視制御網に接続された構成が提案されている(非特許文献1を参照)。この構成によれば、監視制御網に接続された通信装置がゲートウェイの役割を担う。リング網の他の通信装置は、ゲートウェイの役割を担う通信装置を介して、上位装置(監視制御網に接続された監視装置)と通信することができる。これにより監視装置は、リング網のすべての通信装置を監視することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"Cisco ONS 15454 DWDM リファレンス マニュアルRelease 7.2"、[Online]、2017年6月8日、[2022年4月1日検索]、インターネット <URL:https://www.cisco.com/c/ja_jp/td/docs/on/metrocore/ons15400/sysrep/004/17738-02/17738-02-8.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によれば、ゲートウェイの役割を担う装置が故障した場合、上位装置である監視装置は、リング網上のすべての通信装置に対して監視を行うことが不可能となる。しかし上記の文献は、このような課題および、その課題への対策を何ら説明していない。
【0005】
本開示の目的は、上位装置に接続され、かつリング網を構成する通信システムにおいて、耐障害性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の通信システムは、リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置を備える。冗長経路が正常である場合、複数の通信装置のうちの1つの通信装置が冗長経路を介した上位装置との間のフレームの伝送を担うように、複数の通信装置が連携してフレームの伝送を制御する。
【0007】
本開示の通信装置は、ネットワーク上の2つの通信機器と通信可能にそれぞれ接続するための第1のポートおよび第2のポートと、上位装置に通信可能に接続するための第3のポートと、上位装置とネットワークとの間で転送されるべきフレームの転送を制御する制御部とを備える。制御部は、第1のポートまたは第2のポートを介して、ネットワーク上の他の通信装置と通信し、通信装置と他の通信装置とが上位装置に接続されていると判定した場合に、通信装置および他の通信装置のうちのいずれか1つを、通信装置と他の通信装置とによって形成される冗長経路を介して上位装置との間でフレームの伝送を担う通信装置に決定するように構成される。
【0008】
本開示の通信制御方法は、リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置による通信制御方法であって、複数の通信装置が自身の装置情報を含む制御信号を、複数の通信装置の間で送受信するステップと、制御信号に基づいて、複数の通信装置のうちの1つをプライマリ装置に決定するステップと、冗長経路が正常である場合、プライマリ装置に対応して定められた転送規則に従って、プライマリ装置が、受信したフレームを上位装置またはリング網に転送するステップとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、上位装置に接続され、かつリング網を構成する通信システムにおいて、耐障害性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態の前提となる構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る通信システムの構成を示した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す構成に基づいて想定される課題を説明する図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態による、フレームの転送制御を説明するための図である。
【
図5】
図5は、プライマリ装置およびセカンダリ装置のそれぞれのフレーム転送規則を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る通信装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】
図7は、監視制御網に接続された通信装置の通常時の動作を説明する第1のフローチャートである。
【
図8】
図8は、監視制御網に接続された通信装置の通常時の動作を説明する第2のフローチャートである。
【
図9】
図9は、定常監視時または障害発生時における通信システム100の処理の流れを説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
(1) 本開示の一実施態様に係る通信システムは、リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置を備える。冗長経路が正常である場合、複数の通信装置のうちの1つの通信装置が冗長経路を介した上位装置との間のフレームの伝送を担うように、複数の通信装置が連携してフレームの伝送を制御する。
【0013】
上記の構成によれば、複数の通信装置が上位装置に接続されることにより冗長経路が形成される。したがって、複数の通信装置のうち、ある通信装置が上位装置との間で通信することができない場合であっても、他の通信装置が上位装置と通信可能であれば、上位装置は、その通信装置を介してリング網の他の通信装置との間での通信が可能となる。したがって、上位装置に接続され、かつリング網を構成する通信システムにおいて、耐障害性を向上させることができる。
【0014】
複数の通信装置は上位装置に並列に接続されており、かつ、リング網の一部である。冗長経路が正常な場合、すなわち、複数の通信装置のいずれも上位装置と正常に接続されている場合、伝送されるフレームの種類によってはループが発生する(複数の通信装置の間でフレームが循環する)可能性がある。上記の構成によれば、複数の通信装置のうちの1つの通信装置のみが冗長経路を介した上位装置との間のフレームの伝送を担うように、複数の通信装置が連携してフレームの伝送を制御する。これにより、ループの発生を回避することができる。
【0015】
(2) 上記(1)の構成において、通信装置は、自身の装置情報を含む制御信号をリング網内で送受信することにより、自身と連携すべき他の通信装置の有無を判断する。
【0016】
上記の構成によれば、通信装置は、他の通信装置が上位装置に接続されていることを自身で確認することができる。これにより通信装置と、他の通信装置との間での連携が容易になる。なお、制御信号は、たとえば一定の周期で繰り返し送受信されてもよい。これにより、通信装置は、上位装置に接続された他の通信装置の有無を定期的に確認することができる。
【0017】
(3) 上記(2)の構成において、複数の通信装置のうちの1つの装置が、上位装置とリング網との間のフレームの中継を担うプライマリ装置に設定され、複数の通信装置のうちの他の装置は、リング網内でフレームの中継を担うセカンダリ装置に設定される。プライマリ装置およびセカンダリ装置は、制御信号に含められた装置情報に基づいて複数の通信装置の間で決定される。プライマリ装置およびセカンダリ装置は、各々に対応して定められた転送規則に従って、受信したフレームを転送する。
【0018】
上記の構成によれば、複数の通信装置の間でプライマリ装置とセカンダリ装置とを自動的に決定することができる。さらに、プライマリ装置およびセカンダリ装置の各々は、その転送規則に従って受信したフレームを転送する。これによってプライマリ装置のみが上位装置とリング網との間のフレームの中継を担うので、ループの発生を防止することができる。なお、プライマリ装置およびセカンダリ装置を設定するための手法、アルゴリズム等は特に限定されない。
【0019】
(4) 上記(3)の構成において、セカンダリ装置は、プライマリ装置と上位装置との間の通信異常を検出した場合に、新たなプライマリ装置を選出する。
【0020】
上記の構成によれば、プライマリ装置に異常が発生した場合、新しいプライマリ装置が選出されることによって、上位装置とリング網との間の通信を継続することができる。プライマリ装置およびセカンダリ装置が1台ずつ設定されており、かつ、そのプライマリ装置に異常が発生した場合、当該セカンダリ装置が新しいプライマリ装置に選出されることができる。また、プライマリ装置が1台であり、セカンダリ装置が複数台の場合には、複数のセカンダリ装置の中から新たなプライマリ装置を選出することができる。
【0021】
(5) 上記(4)の構成において、プライマリ装置は、上位装置へのアクセスが不可となったことを検出した場合に、自身の送信する制御信号に通信異常を示す情報を含めて、セカンダリ装置に制御信号を送信する。セカンダリ装置は、制御信号を受信することによりプライマリ装置の通信異常を検出する。
【0022】
上記の構成によれば、セカンダリ装置がプライマリ装置の通信異常を検出することにより、新たなプライマリ装置を選出することができる。
【0023】
(6) 本開示の一実施態様に係る通信装置は、ネットワーク上の2つの通信機器と通信可能にそれぞれ接続するための第1のポートおよび第2のポートと、上位装置に通信可能に接続するための第3のポートと、上位装置とネットワークとの間で転送されるべきフレームの転送を制御する制御部とを備える。制御部は、第1のポートまたは第2のポートを介して、ネットワーク上の他の通信装置と通信し、通信装置と他の通信装置とが上位装置に接続されていると判定した場合に、通信装置および他の通信装置のうちのいずれか1つを、通信装置と他の通信装置とによって形成される冗長経路を介して上位装置との間でフレームの伝送を担う通信装置に決定するように構成される。
【0024】
上記の構成によれば、上位装置に接続され、かつリング網を構成する通信システムにおいて、耐障害性を向上させることができる。さらに、上位装置とリング網との間のフレームの伝送において、ループの発生を回避することができる。
【0025】
(7) 上記(6)の構成において、制御部は、通信装置の装置情報を含む制御信号を送受信するように構成され、受信した制御信号に基づいて、通信装置をプライマリ装置およびセカンダリ装置のいずれか一方に決定し、プライマリ装置およびセカンダリ装置の各々に対応して定められた転送規則に従って、受信したフレームを転送するように構成される。
【0026】
上記の構成によれば、プライマリ装置のみが上位装置とリング網との間のフレームの中継を担うので、ループの発生を防止することができる。なお、プライマリ装置およびセカンダリ装置を設定するための手法、アルゴリズム等は特に限定されない。
【0027】
(8) 上記(7)の構成において、制御部は、通信装置がプライマリ装置であり、かつ、上位装置とのアクセスが不可となった場合には、自身の送信する制御信号に通信装置の異常を示す情報を含めて、セカンダリ装置に制御信号を送信する。制御部は、通信装置がセカンダリ装置であり、かつ、プライマリ装置から、プライマリ装置と上位装置との間の通信異常を示す制御信号を受信した場合には、新たなプライマリ装置を選出する。
【0028】
上記の構成によれば、プライマリ装置に異常が発生した場合、新しいプライマリ装置が選出されることによって、上位装置とリング網との間の通信を継続することができる。
【0029】
(9) 本開示の一実施態様に係る通信制御方法は、リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成し、かつ、上位装置に対して互いに並列に接続されることによって上位装置との間に冗長経路を形成する複数の通信装置による通信制御方法であって、複数の通信装置が自身の装置情報を含む制御信号を、複数の通信装置の間で送受信するステップと、制御信号に基づいて、複数の通信装置のうちの1つをプライマリ装置に決定するステップと、冗長経路が正常である場合、プライマリ装置に対応して定められた転送規則に従って、プライマリ装置が、受信したフレームを上位装置またはリング網に転送するステップとを備える。
【0030】
上記の構成によれば、上位装置に接続され、かつリング網を構成する通信システムにおいて、耐障害性を向上させることができる。さらに、上位装置とリング網との間のフレームの伝送において、ループの発生を回避することができる。
【0031】
[本開示の実施形態の前提となる構成]
図1は、本開示の実施形態の前提となる構成を示す図である。
図1に示す通信システム10は、リング状のEthernet(登録商標)ネットワークを構成する複数の通信装置を含む。
図1には、リング網を構成する複数の通信装置として、通信装置101,102,103,104を例示する。
【0032】
通信装置101~104は、たとえばL2(レイヤ2)スイッチあるいはL3(レイヤ3)スイッチ等のデータ転送装置である。リング網を構成する通信装置の数は4であると限定されない。また、リング網を構成する通信装置の種類は特に限定されるものではない。
【0033】
リング網内でのパケットのループを回避するため、リング網上の1つのリンクが閉塞される。通信システム10は、たとえばITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector) G.8032に規定されたEthernet(登録商標)リングプロテクション(ERP)に準拠したシステムであってもよい。ITU-T G.8032 ERPに従うと、リング網の複数のリンクの中から、RPL(Ring Protection Link)と呼ばれる、閉塞するリンクが設定される。
【0034】
図1に示した例では、RPL105が、通信装置102と通信装置103との間に設定される。なお、通信装置102および通信装置103の一方は、RPLオーナーノードである。RPLオーナーノードは、リング網に障害が発生したときにRPLの閉塞を解除する。その障害が解消すると、RPLオーナーノードは、RPLを再び閉塞する。
【0035】
通信システム10は、通信システム10を監視および制御するための監視制御網1に接続される。監視制御網1は、たとえば通信事業者網でありえる。遠隔監視装置2は、監視制御網1に接続される上位装置である。遠隔監視装置2から通信システム10を監視および制御することが可能である。
【0036】
遠隔監視装置2と通信システム10(リング網)との間の通信を可能とするために、監視制御網1と通信システム10とはゲートウェイ3を介して接続される。ゲートウェイ3は、たとえばルータによって実現可能である。
【0037】
なお、
図1では、各装置のIPアドレスおよびMAC(Media Access Control)アドレスを示しているが、これらのアドレスは説明の便宜のために示したものであり、本開示の実施の形態を限定することを意図するものではない。ゲートウェイ3のIPアドレスについては、通信システム10のインターフェイス側のIPアドレスのみを示す。また、
図1では、各装置のMACアドレスは簡略化して示されている(以後説明する図においても同様)。
【0038】
通常、通信装置には、主信号のための配線と、監視制御するための監視制御網に接続するための配線との2種類の配線が必要である。配線を節約するために、たとえばリングトポロジを構成している装置のうち、1つの通信装置(
図1の例では、通信装置101)が監視制御網1に接続される。
【0039】
通信装置101は、遠隔監視装置2と直接的に通信可能である。一方、リング網内の通信装置のうち通信装置101以外の通信装置は、通信装置101を介して遠隔監視装置2と通信可能である。この場合、通信装置101は、通信装置101以外の通信装置と遠隔監視装置2との間でフレームを中継する役割を担う。これにより遠隔監視装置2は、通信装置101~104のすべてを監視することができる。
【0040】
一方、
図1に示した構成では、通信装置101が故障した場合、あるいは通信装置101とゲートウェイ3とをつなぐ通信経路(通信経路4)に障害が発生した場合、遠隔監視装置2は、通信装置101~104のいずれにもアクセスすることができない。したがって通信装置101の故障あるいは通信経路4の障害の発生時には、遠隔監視装置2は、通信装置101~104のすべてを監視することができない。
【0041】
[本開示の実施形態の詳細]
図2は、本開示の実施の形態に係る通信システムの構成を示した図である。
図2に示すように、本開示の実施の形態では、通信システム100は、リング網を構成する複数のノードとして、通信装置101,102,103,104を有する。また、RPL105が、通信装置102と通信装置103との間に設定される。この点では通信システム100は、
図1に示す通信システム10と同じである。
【0042】
本開示の実施の形態では、ゲートウェイ3と、通信システム100との間にL2スイッチ(L2SW)5を設置し、L2スイッチ5に少なくとも2つの通信装置を接続する。
図2では、通信装置101,104がL2スイッチ5に接続される。リング網の通信装置のうち3つ以上の通信装置がL2スイッチ5に接続されていてもよい。
【0043】
L2スイッチ5は、通信装置101,104のMACアドレスを学習して、L2スイッチ5のポートと、そのポートに接続された通信装置のMACアドレスとを対応付けるテーブルを作成する。L2スイッチ5は、受信したフレームに格納された宛先MACアドレスがテーブルに登録されている場合、その登録されたポートにフレームを転送する。
【0044】
図2に示す構成によれば、L2スイッチ5とゲートウェイ3とが通信経路4により接続される。通信装置101,104は、それぞれ、通信経路6,7を介してL2スイッチ5に接続される。通信装置101,104は、リング網内の複数のノードのうちの少なくとも一部を構成する通信装置であり、かつ、上位装置である遠隔監視装置2に対して互いに並列に接続される。したがって通信装置101,104は、遠隔監視装置2との間に冗長経路(通信経路6,7)を形成する。
【0045】
図2に示す構成によれば、通信装置101が故障した場合、あるいは通信経路6に障害が発生した場合、RPL105の閉塞が解除された状態になる。遠隔監視装置2は、通信経路7および通信装置104を介して通信装置102,103にアクセスすることができる。同様に、通信装置104が故障した場合、あるいは、通信経路7に障害が発生した場合にも、RPL105の閉塞が解除された状態になり、遠隔監視装置2は、通信経路6および通信装置101を介して通信装置102,103にアクセス可能である。このように、本開示の実施の形態では、通信システム100と監視制御網1との間の接続を冗長化する。これにより、耐障害性を物理的に向上させることができる。
【0046】
一方、冗長経路が正常である場合、すなわち通信経路6,7のいずれも正常である場合には、以下に説明する問題が生じる可能性がある。
【0047】
図3は、
図2に示す構成に基づいて想定される課題を説明する図である。たとえば、遠隔監視装置2(監視制御網1上の別の端末でもよい)から、通信システム100にブロードキャストフレームが送信されたとする。L2スイッチ5は、そのフレームをすべてのポートから出力する。したがって通信装置101,104は、それぞれ通信経路6,7を介してブロードキャストフレームを受信する。
【0048】
通信装置101,104は、受信したブロードキャストフレームを、各々の全ポートに転送する。したがって、通信装置101は、通信経路6にブロードキャストフレームを転送するだけでなく、通信装置101と通信装置104とを接続する通信経路8にもブロードキャストフレームを転送する。同様に、通信装置104は、通信経路7および通信経路8にブロードキャストフレームを転送する。この結果、
図3に示すように、L2スイッチ5と、通信装置101と、通信装置104との間には、フレームの伝送のループが発生する。
【0049】
転送されるフレームがユニキャストフレームであっても、ループの問題は発生しうる。ユニキャストフレームに格納された宛先MACアドレスが、L2スイッチ5において未学習のアドレスである場合、L2スイッチ5は、そのフレームを受信したポート以外のポートに転送する(フラッディング)。通信装置101,104の各々においても同様に、ユニキャストフレームに格納された宛先MACアドレスが未学習のアドレスである場合、通信装置101,104の各々は、そのフレームをフラッディングする。したがって、L2スイッチ5および通信装置101,104のすべてが未学習のMACアドレスを含むユニキャストフレームが伝送される場合、L2スイッチ5および通信装置101,104がフラッディングを行う結果、L2スイッチ5および通信装置101,104の間でループが発生する。
【0050】
上記のようなループの発生を回避する方法として、たとえば、L2スイッチ5と、通信装置101,104との間で、IEEE802.1AX-2008に従うMC-LAG(Multi-Chassis Link Aggregation)を形成することが考えられる。MC-LAGは、複数の物理リンクを論理的に1つのリンクに束ねる技術である。しかし、MC-LAGを実現するためには、L2スイッチ5に適用されるスイッチとして、より高機能のスイッチが必要となる。高機能のスイッチを導入することによるコストの増加が懸念される。
【0051】
ループの発生を防ぐ別の方法として、IEEE802.1ADに従うSTP(Spanning Tree Protocol)を適用することが考えられる。STPの適用により、あるポートが自動的にブロッキング状態になるので、ループの発生を防止できる。しかし、遠隔監視装置2と通信システム100との間では、プロトコルに応じた、複数の種類のフレームが伝送されうる。したがって、通信装置101,104が複数の種類のフレームの各々を正しく転送するためには、単にループを防止するだけでなく、プロトコルごとにフレームの転送規則を定める必要がある。プロトコルごとにフレームの転送を制御する点において、STPは不十分である。
【0052】
図4は、本開示の実施の形態による、フレームの転送制御を説明するための図である。
図4に示すように、本開示の実施の形態では、複数の通信装置(すなわち通信装置101および通信装置104)のうちの1つの装置を「プライマリ装置」に設定し、複数の通信装置(通信装置101,104)のうちの他の通信装置を「セカンダリ装置」に設定する。この実施の形態において、「プライマリ装置」とは、遠隔監視装置2とリング網との間のフレームの中継を担う装置である。「セカンダリ装置」とは、リング網内でのフレームの中継を担う装置である。したがって、冗長経路が正常である(通信経路6,7の両方が正常である)場合、プライマリ装置とセカンダリ装置とが連携して、遠隔監視装置2とリング網内の通信装置との間でフレームを中継する。ただし、遠隔監視装置2に対してフレームを送受信するのは、プライマリ装置のみである。
【0053】
通信装置101と通信装置104とは互いに制御信号を送受信して、通信装置101と通信装置104のいずれを「プライマリ装置」および「セカンダリ装置」に決定する。一実施形態では、通信装置から送信される制御信号に、その通信装置の装置情報が含められる。通信装置101と通信装置104とは、装置情報に基づき、所定の規則に従って、「プライマリ装置」および「セカンダリ装置」を設定する。
【0054】
「プライマリ装置」および「セカンダリ装置」を設定する方法は特に限定されない。たとえば装置情報がIPアドレスを含み、所定の規則が、IPアドレスの値の小さい装置をプライマリ装置に定めるというものであってもよい。
図4に示す例では、通信装置101のIPアドレス(192.168.101.101)のほうが通信装置104のIPアドレス(192.168.101.104)よりも小さい。したがって、
図4に示す例では、通信装置101が「プライマリ装置」に設定され、通信装置104が「セカンダリ装置」に設定される。別の例では、装置情報がMACアドレスを含み、所定の規則が、MACアドレスの値の小さい装置をプライマリ装置に定めるというものでもよい。
【0055】
L2スイッチ5は、受信したフレームに格納された宛先MACアドレスが学習済みの場合には、MACアドレス学習テーブルに従って、そのフレームを該当のポートに転送する。一方、L2スイッチ5は、MACアドレスが未学習であるフレーム、マルチキャストフレーム、ブロードキャストフレームをフラッディングさせる。プライマリ装置およびセカンダリ装置は、各々に対応して定められた転送規則に従って、受信したフレームを遠隔監視装置2またはリング網に転送する。プライマリ装置およびセカンダリ装置が各々の転送規則に従ってフレームを転送することにより、L2スイッチ5には、市販されている標準品を用いることができる。
【0056】
図5は、プライマリ装置およびセカンダリ装置のそれぞれのフレーム転送規則を説明するための図である。なお、以下に説明する転送規則は、通信経路6,7が正常である場合の規則である。
図5を参照して、
図4に示す通信システム100におけるフレームの転送を具体的に説明する。
【0057】
(1) ユニキャストフレームの場合
L2スイッチ、プライマリ装置およびセカンダリ装置でMACアドレスが学習済みであるとする。監視制御網1からリング網へのユニキャストフレームをプライマリ装置が受信した場合、プライマリ装置は、当該受信フレームをリング網へ転送する。同様に、リング網から監視制御網1へのユニキャストフレームをプライマリ装置が受信した場合、プライマリ装置は、受信したフレームを監視制御網1へ転送する。
【0058】
監視制御網1からリング網へのユニキャストフレームをセカンダリ装置が受信した場合、セカンダリ装置は、当該受信フレームをリング網へ転送する。なお、プライマリ装置が正常であり、かつ通信経路6に障害が無い場合には、プライマリ装置が監視制御網1からユニキャストフレームを受信するため、セカンダリ装置が監視制御網1からユニキャストフレームを受信する可能性は低い。ただし、
図5に示すように、監視制御網1からユニキャストフレームを受信する場合のセカンダリ装置のフレーム転送規則も定められる。
【0059】
一方、リング網から監視制御網1へのユニキャストフレームをプライマリ装置が受信した場合、セカンダリ装置は、そのフレームを監視制御網1へは転送せずにリング網に転送する。したがって、プライマリ装置がそのフレームを監視制御網1に送信する。
【0060】
ユニキャストフレームは特定の相手に送られるフレームである。したがって、ユニキャストフレームに含まれるMACアドレスがL2スイッチ、プライマリ装置およびセカンダリ装置で学習済みであれば、L2スイッチ、プライマリ装置およびセカンダリ装置の間のループは発生しない。
【0061】
(2) ARP(Address Resolution Protocol)ブロードキャストの場合
ARPとは、IPアドレスからMACアドレスを動的に知るためのプロトコルである。まず、送信元から、送信元のIPアドレスおよびMACアドレスおよび通信相手のIPアドレスの情報を格納したARPリクエストがブロードキャストで送信される。ARPリクエストを受け取ったノードは、ARPリクエストに格納されたIPアドレスが自分のIPアドレスと同一であれば、ARPリプライを返信して、自分のMACアドレスを送信元に通知するとともに、自分のARPテーブルに、相手のIPアドレスと相手のMACアドレスとのペアを登録する。
【0062】
監視制御網1から受信したフレームがARPブロードキャストフレームの場合、プライマリ装置およびセカンダリ装置のいずれも、当該フレームをL2スイッチ5から受信する。この場合、プライマリ装置およびセカンダリ装置の各々は、ARPブロードキャストフレームをリング網へ転送する。プライマリ装置およびセカンダリ装置のいずれも、受信したフレームをL2スイッチ5には転送しない。これによりループの発生を回避することができる。
【0063】
リング網から受信したARPブロードキャストフレームの場合、プライマリ装置は、そのフレームを監視制御網1およびリング網へ転送する。一方、セカンダリ装置は、当該フレームをリング網のみに転送する。セカンダリ装置がフレームをL2スイッチ5に転送しないため、ループの発生を回避することができる。
【0064】
なお、本開示の実施の形態によれば、リング網の各通信装置がARPブロードキャストフレームを二重に受信する可能性がある。しかしARPリクエストに格納されたIPアドレスが自分のIPアドレスと同一でなければ、通信装置は受信したARPリクエストを無視する。したがって、通信装置がARPブロードキャストフレームを二重に受信することによる特段の問題は発生しない。
【0065】
プライマリ装置およびセカンダリ装置によってARPフレームがブロードキャストされる。これにより、リング網内の各通信装置にARPリクエストをより早く届けることができるようになる。この結果、ARPリクエストに応答すべき通信装置からARP応答を早く返すことができるので、アドレス解決を早くすることができる。なお、ARP応答はユニキャストフレームであるため、ARP応答フレームは、上記(1)の制御に従って転送される。
【0066】
(3)DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)の場合
DHCPは、特定のIPアドレスを持っていないデバイスが、DHCPサーバから一元管理されたIPアドレスを付与してもらうためのプロトコルである。「DHCP」との用語は、一般的には、IPv4ネットワークで使用されるネットワーク管理プロトコル(DHCPv4)を指すが、本開示の実施の形態では、「DHCP」との用語を、DHCPv4のみを指すと限定せず、IPv6ネットワークで使用されるネットワーク管理プロトコル(DHCPv6)も含むものとして使用する。
【0067】
監視制御網1から受信したDHCPブロードキャストフレームの場合、プライマリ装置は、当該フレームをリング網へ転送する。一方、セカンダリ装置は、当該フレームを転送しない。セカンダリ装置は、監視制御網1から受信したDHCPブロードキャストフレームが自分宛のフレームである場合、当該フレームを処理する。プライマリ装置およびセカンダリ装置のいずれも監視制御網1から受信したフレームをL2スイッチ5に転送しないので、ループの発生を回避することができる。
【0068】
リング網から受信したDHCPブロードキャストフレームの場合、プライマリの通信装置は、当該受信フレームを監視制御網1へ転送する。一方、セカンダリの通信装置は、当該受信フレームをリング網に転送する。セカンダリの通信装置がL2スイッチ5にフレームを転送しないので、ループの発生を回避することができる。
【0069】
(4)その他のブロードキャストフレーム、マルチキャストフレームの場合
上記(1)~(3)以外のブロードキャストフレームあるいはマルチキャストフレームを監視制御網から受信した場合、プライマリ装置は、当該受信フレームをリング網へ転送する。一方、セカンダリ装置は、当該受信フレームをリング網に転送しない。プライマリ装置およびセカンダリ装置のいずれも監視制御網1から受信したフレームをL2スイッチ5に転送しない。さらに、セカンダリ装置は、受信したフレームを転送しない。これによりループの発生を回避することができる。
【0070】
一方、上記(1)~(3)以外のブロードキャストフレームあるいはマルチキャストフレームをリング網から受信した場合、プライマリの通信装置は、当該受信フレームを監視制御網1およびリング網へ転送する。一方、セカンダリの通信装置は、当該受信フレームをリング網のみに転送する。この場合、フレームはプライマリの通信装置に転送される。セカンダリの通信装置は、L2スイッチ5にフレームを転送しないので、ループの発生を回避することができる。
【0071】
図6は、本開示の実施の形態に係る通信装置の構成を説明するためのブロック図である。
図6に示すように、通信装置101は、リングポート20(「リングポート0」とも表記する)と、リングポート21(「リングポート1」とも表記する)と、監視制御網ポート30と、フレーム中継部40と、監視制御網フレーム中継部50と、制御部60とを含む。監視制御網フレーム中継部50は、監視フレーム処理部51と、フレーム転送部52とを含む。制御部60は、遠隔監視装置監視制御部61と、フレームパス設定部62と、監視制御網フレーム制御部63とを含む。
【0072】
リングポート20,21は、リング網上の隣接する2つのノード(通信装置)に通信可能にそれぞれ接続するための第1および第2のポートであり、リング網を構成するポートである。監視制御網ポート30は、監視制御網1(遠隔監視装置2)に通信可能に接続するための第3のポートである。なお、
図6では、L2スイッチ5およびゲートウェイ3の図示を省略している。
【0073】
フレーム中継部40は、リング網内でフレームを転送するスイッチとして機能する。なお、フレーム中継部40は、監視制御網1へ転送すべきフレームをリングポート20またはリングポート21を介して受信した場合、当該フレームを監視制御網フレーム中継部50に転送する。また、フレーム中継部40は、監視制御網1からリング網へと転送されるべきフレームを、監視制御網フレーム中継部50から受信して、当該フレームをリングポート20またはリングポート21に転送する。
【0074】
監視制御網フレーム中継部50は、監視制御網1とリング網との間で監視フレームの転送を担うスイッチとして機能する。ここでの「監視フレーム」とは、上述したユニキャストフレーム、マルチキャストフレーム、ブロードキャストフレームなど、各プロトコルに従うフレームを含む。
【0075】
具体的には、監視フレーム処理部51は、監視制御網1と通信装置101との間でのフレームの送受信を担う。フレーム転送部52は、監視制御網1宛のフレームおよび監視制御網1から受信したフレームを、その宛先に応じて、監視フレーム処理部51または、フレーム中継部40に振り分ける。フレーム転送部52は、受信したフレームが自分(通信装置101)宛のフレームである場合は、当該フレームを監視制御網フレーム制御部63へと転送する。
【0076】
制御部60は、フレーム転送部52によるフレームの転送を制御する制御部である。具体的には、遠隔監視装置監視制御部61は、他の遠隔監視装置の検索ならびに監視を行う。さらに、遠隔監視装置監視制御部61は、通信装置101がプライマリ装置およびセカンダリ装置のどちらになるかを決定するために、優先順位を計算する。優先順位の計算の方法としては、たとえば、通信装置101,104のうち、IPアドレスの小さいほうがプライマリに決定される。あるいは、通信装置101,104のうち、MACアドレスの小さいほうがプライマリに決定されてもよい。遠隔監視装置監視制御部61は、決定した優先順位をフレームパス設定部62に渡す。
【0077】
フレームパス設定部62は、遠隔監視装置監視制御部61により決定した優先順位に基づいて、監視制御網フレーム中継部50に対して、フレーム転送規則を設定する。具体的には、通信装置101の優先順位がプライマリに決定された場合、フレームパス設定部62は、プライマリ装置のフレーム転送規則(
図5を参照)を、監視制御網フレーム中継部50に設定する。一方、通信装置101の優先順位がセカンダリに決定された場合、フレームパス設定部62は、セカンダリ装置のフレーム転送規則(
図5を参照)を、監視制御網フレーム中継部50に設定する。これらのフレーム転送規則は、通信装置101の内部に予め記憶されており、フレームパス設定部62は、記憶されているフレーム転送規則のうち、優先順位に対応したフレーム転送規則を選択する。
【0078】
監視制御網フレーム制御部63は、自装置が処理すべきフレームを処理する。
【0079】
通信装置102,103,104の構成は、通信装置101の構成と同一であるので説明は繰り返さない。ただし通信装置102,103の監視制御網ポート30は監視制御網1に接続されていない点で異なる。
【0080】
図7は、監視制御網に接続された通信装置の通常時の動作を説明する第1のフローチャートである。
図7に示す処理は、たとえば通信装置の初期起動時に実行される。以下では、通信装置101を例に
図7のフローチャートを説明する。なお、以下に説明する図では「プライマリ装置」および「セカンダリ装置」をそれぞれ「プライマリ」および「セカンダリ」と表記する。なお、監視制御網に接続されていないリング網内の通信装置は、そのリング網において他の通信装置との間でフレームを送受信する通信装置として機能する。
【0081】
処理が開始されると、ステップS1において、通信装置101は、監視制御網1からの遠隔監視を有効に設定する。この処理は、遠隔監視装置監視制御部61(
図6を参照)によって実行される。ステップS2において、通信装置101は、自身のIPアドレスを取得する。
【0082】
次に、ステップS10において、通信装置101は、監視制御網1からの遠隔監視が有効である、リング網内の他の通信装置の検索を開始する。具体的には、通信装置101は、LLDPフレームをリング網に送信する。この場合のLLDPフレームはマルチキャストフレームである。機器およびポートの識別情報、情報の有効期間などを含むLLDPフレームがマルチキャストアドレス宛に定期的に送信される。
【0083】
ステップS11において、通信装置101は、自身が送信したLLDPフレームに対する応答フレームを受信したかどうかを確認する。応答フレームを受信していない場合(ステップS11においてNO)、ステップS12において、通信装置101は、自身をプライマリ装置として動作させる。さらに処理はステップS10に戻される。したがって、監視制御網1からの遠隔監視が有効な他の通信装置がリング網上に無い場合には、通信装置101は、LLDPフレームの送信を繰り返す。
【0084】
LLDPフレームに対する応答フレームを受信した場合(ステップS11においてYES)、ステップS13において、通信装置101は、応答フレームに格納された情報に基づいて、プライマリ装置が既に存在するかどうかを判断する。具体的には、他の通信装置からの応答フレームに、当該装置がプライマリ装置であるという情報が格納される。この場合(ステップS13においてYES)、通信装置101は、自身をセカンダリ装置として動作させる(ステップS14)。一方、プライマリ装置が存在しない場合(ステップS13においてNO)、通信装置101および他の通信装置は、プライマリ選択アルゴリズムに従ってプライマリ装置を選択する(ステップS15)。上記の通り、プライマリ選択アルゴリズムとは、自装置と他の通信装置(たとえば通信装置104)との間で優先順位を計算するためのアルゴリズムである。たとえば、通信装置101および他の通信装置のうち、IPアドレスの小さいほうがプライマリに決定される。あるいは、通信装置101および他の通信装置のうち、MACアドレスの小さいほうがプライマリに決定されてもよい。
【0085】
ステップS14またはステップS15の処理に続き、ステップS16の処理が実行される。ステップS16において、通信装置101は、プライマリ装置またはセカンダリ装置のいずれか一方を選択した結果を、LLDPフレームにより、他の通信装置(すなわち通信装置104)に通知する。なお、このLLDPフレームは、通信装置104を宛先とするユニキャストフレームである。
【0086】
一方、ステップS17において、通信装置101は、他の通信装置(通信装置104)からLLDPフレームを送信する。このLLDPフレームは、自身(すなわち通信装置101)を宛先とするユニキャストフレームであり、他の通信装置が、プライマリ装置またはセカンダリ装置のうちの他方を選択した結果を格納する。
【0087】
ステップS18において、通信装置101は、他の通信装置(すなわち通信装置104)との間で、LLDPフレームの送受信を開始する。これにより、通信装置101は、他の通信装置との間で自身の状態を定期的に通知し合う。
【0088】
図8は、監視制御網に接続された通信装置の通常時の動作を説明する第2のフローチャートである。
図8に示す処理は、たとえば通信システム100の動作中に、監視制御網1に接続される(遠隔監視が有効となる)他の通信装置が追加された場合の処理である。以下では、通信装置101を例に
図8のフローチャートを説明する。
【0089】
まずステップS21において、通信装置101は、監視制御網1に接続される他の通信装置を検索するフレームをリング網内で受信したかどうかを確認する。具体的には、このフレームはLLDPフレーム(この場合はマルチキャストフレーム)である。通信装置101が、他の通信装置を検索するフレームを受信していない場合(ステップS21においてNO)、処理は終了する。一方、通信装置101が他の通信装置を検索するフレームを受信した場合(ステップS21においてYES)、処理はステップS22に進む。
【0090】
ステップS22において、通信装置101は、自身の状態を、LLDPフレームによって他の通信装置に通知する。このLLDPフレームは、ユニキャストフレームである。ステップS23において、通信装置101は、LLDPフレームにより、他の通信装置からの通知を受信する。このLLDPフレームもユニキャストフレームである。
【0091】
ステップS24において、通信装置101は、他の通信装置との間で、LLDPフレームの送受信を開始する。さらに通信装置101は、他の通信装置との間で自身の状態を定期的に通知し合う。
【0092】
図7および
図8のフローチャートによって説明されるように、通信装置は、自身の装置情報を含む制御信号(LLDPフレーム)をリング網内で送受信することにより、自身と連携すべき他の通信装置の有無を判断する。通信装置は、他の通信装置が上位装置に接続されていることを自身で確認することができる。これにより通信装置と、他の通信装置との間での連携が容易になる。
【0093】
さらに、複数の通信装置の間でプライマリ装置とセカンダリ装置とを自動的に決定することができる。プライマリ装置およびセカンダリ装置の各々は、その転送規則に従ってフレームを転送する。これによってプライマリ装置のみが上位装置とリング網との間のフレームの中継を担うので、ループの発生を防止することができる。
【0094】
図9は、定常監視時または障害発生時における通信システム100の処理の流れを説明したフローチャートである。
図9に示す処理は繰り返し実行される。以下では、通信装置101を例に
図9のフローチャートを説明する。
【0095】
ステップS31において、通信装置101は、監視制御網1に接続される他の通信装置の状態を定期的に受信しているかどうかを確認する。他の通信装置の状態を定期的に受信している場合(ステップS31においてYES)、処理はステップS32に進む。ステップS32において、通信装置101は、ポートの状態が変化しているかどうかを確認する。ポートの状態に変化が無い場合(ステップS32においてNO)、処理はステップS31に戻される。
【0096】
一方、通信装置101が他の通信装置の状態を定期的に受信できていない場合(ステップS31においてNO)、処理はステップS33に進む。同様に、ポートの状態が変化したと判断される場合(ステップS32においてYES)にも処理はステップS33に進む。
【0097】
ステップS33において、通信装置101は、プライマリ装置に障害が発生したかどうかを判断する。なお、通信装置101がプライマリ装置である場合には、通信装置101は自身の障害を検知する。この場合、通信装置101は遠隔監視装置2へのアクセスが不可となったことを検出して、自身の送信する制御信号(たとえばLLDPフレーム)に遠隔監視装置2への通信異常を示す情報を含めて、他の通信装置に、そのLLDPフレームを送信する。一方、通信装置101がセカンダリ装置である場合には、通信装置101はプライマリ装置から、当該プライマリ装置の通信異常を示す情報を含むLLDPフレームを受信することにより、プライマリ装置の異常を検出する。
【0098】
プライマリ装置に障害が発生したと判断される場合(ステップS33においてYES)、ステップS34において、通信装置101は、プライマリ選択アルゴリズムによりプライマリ装置を再選択する。処理はステップS35に進む。なお、プライマリ装置には障害が発生していないと判断される場合(ステップS33においてNO)、ステップS34の処理はスキップされて、処理はステップS35に進む。
【0099】
ステップS35において、通信装置101は、自装置以外に、監視制御網1に接続された通信装置(遠隔監視装置)がいないかどうかを判断する。自装置以外に遠隔監視装置がいない場合(ステップS35においてYES)、処理は、初期起動フローチャートのステップS10(
図7を参照)に進む。したがって通信装置101は、遠隔監視が有効である他装置の検索を開始する。自装置以外に遠隔監視装置がいる場合(ステップS35においてNO)、通信装置101は、その装置をプライマリ装置に選択する。たとえば通信装置104が他の遠隔監視装置である場合、通信装置104がプライマリ装置に選択される。
【0100】
ステップS36において、通信装置101は、自装置以外の遠隔監視装置(たとえば通信装置104)に、選択結果を通知する。この場合、通信装置101は、LLDPフレーム(この場合はユニキャストフレーム)を通信装置104に送信して、通信装置104をプライマリ装置に選択したことを通知する。これにより、通信装置104がプライマリ装置に切り替わる。
【0101】
図9のフローチャートにより説明されるように、本開示の実施の形態では、プライマリ装置に異常が発生した場合、プライマリ装置からの通知により、セカンダリ装置は、プライマリ装置の通信異常を検出する。セカンダリ装置は、新しいプライマリ装置を選出する。これによって上位装置とリング網との間の通信を継続することができる。
【0102】
なお、
図4に示した実施の形態では、リング網内のプライマリ装置およびセカンダリ装置の数はともに1である。しかし本開示の実施の形態では、プライマリ装置の数が1であり、セカンダリ装置の数が複数であってもよい。当該プライマリ装置に異常が発生した場合、
図9のフローチャートに従って、複数のセカンダリ装置の中から新たなプライマリ装置を選出することができる。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 監視制御網
2 遠隔監視装置
3 ゲートウェイ
4,6,7,8 通信経路
5 L2スイッチ
10,100 通信システム
20,21 リングポート
30 監視制御網ポート
40 フレーム中継部
50 監視制御網フレーム中継部
51 監視フレーム処理部
52 フレーム転送部
60 制御部
61 遠隔監視装置監視制御部
62 フレームパス設定部
63 監視制御網フレーム制御部
101,102,103,104 通信装置
S1,S2,S10~S18,S21~S24,S31~S36 ステップ