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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179059
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ベンダー機器
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/06 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B21D7/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092111
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】390023401
【氏名又は名称】BBKテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 行宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 和久
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA04
4E063AA16
4E063BB03
4E063CA02
4E063EA05
4E063GA02
4E063MA02
(57)【要約】
【課題】被覆配管をベンディングする際に、被覆材に加わる負荷を軽減する。
【解決手段】被覆配管を曲げるベンダー機器であって、押し出し棒と、前記押し出し棒の先端に設けられ、ベンディングする際に前記被覆配管を挟み込むホイール溝部が形成されたホイールと、ベンディングする際に、前記被覆配管を支持する左右一対のローラ部と、を有することを特徴とする。前記ホイール溝部は、テーパ状に形成された第1ホイール溝部と、前記第1ホイール溝部に連接する連接溝部を備え、前記連接溝部の幅が前記被覆配管に含まれる配管の外直径よりも大きい第2ホイール溝部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆配管を曲げるベンダー機器であって、
押し出し棒と、
前記押し出し棒の先端に設けられ、ベンディングする際に前記被覆配管を挟み込むホイール溝部が形成されたホイールと、
ベンディングする際に、前記被覆配管を支持する左右一対のローラ部と、
を有することを特徴とするベンダー機器。
【請求項2】
前記ホイール溝部は、
テーパ状に形成された第1ホイール溝部と、
前記第1ホイール溝部に連接する連接溝部を備え、前記連接溝部の幅が前記被覆配管に含まれる配管の外直径よりも大きい第2ホイール溝部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項3】
前記連接溝部の幅をW、前記配管の外直径をRと定義したとき、
幅Wと外直径Rとの差は、5mm以上20mm以内である、
ことを特徴とする請求項2に記載のベンダー機器。
【請求項4】
前記第2ホイール溝部は、前記連接溝部に連接し、曲率半径が前記配管と略同一の円弧溝部を有することを特徴とする請求項2又は3の記載のベンダー機器。
【請求項5】
前記ホイールは、平面視略半円状に形成されており、
前記ホイール溝部は、該ホイールの外縁に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項6】
前記ローラ部は、複数の小ローラを、上下に積層することにより構成されており、
前記複数の小ローラは、上下方向に延びる共通軸部を回転軸として、それぞれ独立して回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項7】
前記回転軸と各前記小ローラとの間には、クリアランスが形成されていることを特徴とする請求項6に記載のベンダー機器。
【請求項8】
前記押し出し棒の長手方向に対して略直交する方向に延びる板部を有し、
前記ローラ部は、前記板部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項9】
前記押し出し棒の押し出し機構は、ラチェット式であることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項10】
前記押し出し機構に連結されたレバーを有し、
前記レバーを開き位置から閉じ位置に回動させることによって、前記押し出し棒は繰り出されることを特徴とする請求項9に記載のベンダー機器。
【請求項11】
前記レバーを前記閉じ位置から前記開き位置に向かって付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項10に記載のベンダー機器。
【請求項12】
前記被覆配管は、配管と、前記配管の外周を覆う断熱性の被覆材と、からなることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項13】
前記ホイールは、前記押し出し棒の先端に着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆配管を曲げるために使用されるベンダー機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調装置等の配管の曲げに用いられる機器として、ベンダー機器が知られている。従来、ベンディング時に配管に割れ等が発生することを防止するために、配管の中にコイル状のスプリングを配設していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2には、外管の内部に内管が介装される二重管の製造方法であって、芯金を前記内管の内部のみに挿入して前記内管及び前記外管を共に曲げることを特徴とする二重管の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、塑性変形可能な金属製のパイプの側面を両側より挟持するロールおよびクランプと、パイプの半径方向の移動を阻止するプレッシャとを備え、前記ロールと前記クランプとの間でパイプを挟持した状態で、前記ロールを支点として前記ロールとともに前記クランプを回動駆動してパイプを曲げるパイプ曲げ装置において、前記プレッシャは、パイプの長手方向に沿ってパイプを転動可能に支持する複数のローラを備え、この複数のローラを用いてパイプの半径方向の移動を阻止することを特徴とするパイプ曲げ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3172929号公報
【特許文献2】特開2019-75622号公報
【特許文献3】特開2010―5653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1~3では、配管を被覆材で被覆した被覆配管をベンディングするときの技術課題が何ら考慮されていない。すなわち、被覆配管をベンディングする際に、被覆材に加わる負荷が過度に大きくなると、被覆材が破れるおそれがあるため、当該技術課題を解決し得るベンダー機器が求められている。
また、特許文献1の手法では、ベンディング後に配管からスプリングを引き抜く際に、スプリングが配管に引っ掛かり、抜けなくなったり、スプリングが破断するなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るベンダー機器は、(1)被覆配管を曲げるベンダー機器であって、押し出し棒と、前記押し出し棒の先端に設けられ、ベンディングする際に前記被覆配管を挟み込むホイール溝部が形成されたホイールと、ベンディングする際に、前記被覆配管を支持する左右一対のローラ部と、を有することを特徴とするベンダー機器。
【0008】
(2)前記ホイール溝部は、テーパ状に形成された第1ホイール溝部と、前記第1ホイール溝部に連接する連接溝部を備え、前記連接溝部の幅が前記被覆配管に含まれる配管の外直径よりも大きい第2ホイール溝部と、を有することを特徴とする上記(1)に記載のベンダー機器。
【0009】
(3)前記連接溝部の幅をW、前記配管の外直径をRと定義したとき、幅Wと外直径Rとの差は、5mm以上20mm以内である、ことを特徴とする上記(2)に記載のベンダー機器。
【0010】
(4)前記第2ホイール溝部は、前記連接溝部に連接し、曲率半径が前記配管と略同一の円弧溝部を有することを特徴とする上記(2)又は(3)の記載のベンダー機器。
【0011】
(5)前記ホイールは、平面視略半円状に形成されており、前記ホイール溝部は、該ホイールの外縁に沿って形成されていることを特徴とする上記(1)乃至(4)のうちいずれか一つに記載のベンダー機器。
【0012】
(6)前記ローラ部は、複数の小ローラを、上下に積層することにより構成されており、前記複数の小ローラは、上下方向に延びる共通軸部を回転軸として、それぞれ独立して回転可能であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載のベンダー機器。
【0013】
(7)前記回転軸と各前記小ローラとの間には、クリアランスが形成されていることを特徴とする上記(6)に記載のベンダー機器。
【0014】
(8)前記押し出し棒の長手方向に対して略直交する方向に延びる板部を有し、前記ローラ部は、前記板部に固定されていることを特徴とする上記(1)乃至(7)のうちいずれか一つに記載のベンダー機器。
【0015】
(9)前記押し出し棒の押し出し機構は、ラチェット式であることを特徴とする上記(1)乃至(8)のうちいずれか一つに記載のベンダー機器。
【0016】
(10)前記押し出し機構に連結されたレバーを有し、前記レバーを開き位置から閉じ位置に回動させることによって、前記押し出し棒は繰り出されることを特徴とする上記(9)に記載のベンダー機器。
【0017】
(11)前記レバーを前記閉じ位置から前記開き位置に向かって付勢する付勢部材を有することを特徴とする上記(10)に記載のベンダー機器。
【0018】
(12)前記被覆配管は、配管と、前記配管の外周を覆う断熱性の被覆材と、からなることを特徴とする上記(1)乃至(11)のうちいずれか一つに記載のベンダー機器。
【0019】
(13)前記ホイールは、前記押し出し棒の先端に着脱可能に装着されることを特徴とする上記(1)乃至(12)のうちいずれか一つに記載のベンダー機器。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被覆材に加わる負荷が小さいベンダー機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ベンダー機器の上面斜視図である(ホイール装着状態)。
図2】ベンダー機器の上面斜視図である(ホイール非装着状態)。
図3】ベンダー機器の裏面斜視図である(レバーの閉じ状態)。
図4】ベンダー機器の裏面斜視図である(レバーの開き状態)。
図5】ラチェット機構の動作説明図である。
図6】ホイールの正面図である(実施形態)。
図7】ホイールの正面図である(比較例)。
図8】ホイールの正面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態のベンダー機器100は、被覆配管のベンディングに用いることができる。被覆配管とは、エアコンの室外機と室内機との間で循環する冷媒を移送する配管のことであり、銅管(配管)の周りを保温材(断熱材)で覆うことによって構成されている。保温材には、一般的にポリエチレン等が用いられる。銅管を保温材で覆うことによって、結露などを防止することができる。
【0023】
図1は、ベンダー機器の上面斜視図(ホイール装着状態)である。図2は、ベンダー機器の上面斜視図(ホイール非装着状態)である。図3は、レバーを閉じたときのベンダー機器の裏面斜視図である。図4は、レバーを開いたときのベンダー機器の裏面斜視図である。これらの図を参照して、ベンダー機器100は、機器本体10と、押し出し棒15と、レバー20と、止め金25と、片寄スプリング(付勢部材に相当する)30と、固定ボルト35と、板部45と、ローラ部50と、ホイール60とを含む。なお、図3及び図4は、ホイール60を取り外した状態で、ベンダー機器100を図示する。
【0024】
機器本体10は長尺に形成されており、一端側には本体平板部11が形成されている。レバー20は、機器本体10に対して所定範囲において回動できるように取り付けられている。レバー20の長手方向における一端部には、ドーナツ状のスプリング引掛部21が形成されている。片寄スプリング30の一端には第1スプリングフック部31が形成され、他端には第2スプリングフック部32が形成されている。第1スプリングフック部31は、レバー20のスプリング引掛部21に引っかけられており、第2スプリングフック部32は、機器本体10に締結されるボルト10A及び機器本体10の裏面に挟まれることによって、固定されている。
【0025】
ここで、図4に図示するレバー20の開き状態において、レバー20を機器本体10に向かって回動させると(言い換えると、閉じ位置に向かって回動させると)、片寄スプリング30が伸長して、レバー20を開き位置に復帰させるためのバネ力がチャージされる。
【0026】
止め金25は、コの字状に形成されており、両端には機器本体10の側面に向かって突出する凸部が形成されている。これらの凸部は、機器本体10の側面に形成された開口部に対してスナップフィットしている。なお、スナップフィットとは、材料の弾性を利用して、はめ込む固定方式のことである。止め金25は、凸部を回転軸として機器本体10に対して回動させることができる。
【0027】
図3は、止め金25によってレバー20を閉じ位置にホールドした状態を示している。同図において、止め金25をレバー20と干渉しない位置まで回動させると、片寄スプリング30にチャージされたバネ力によって、レバー20は閉じ位置(図3参照)から開き位置(図4参照)に復帰する。
【0028】
押し出し棒15は、機器本体10の長手方向に沿って延びるガイド溝10Bに収められており、押し出し棒15の裏面には、ラック15Aが形成されている。レバー20を開き位置から閉じ位置に回動させる度に、押し出し棒15は、ラック15Aのピッチに従って、繰り出される。つまり、本実施形態では、押し出し棒15の繰り出し機構としてラチェット機構が採用されており、レバー20を操作することによって、押し出し棒15をガイド溝10Bに沿って、間欠的に繰り出すことができる。
なお、以下の説明において、押し出し棒15の繰り出し方向を押し出し方向と言い換えることがある。
【0029】
図5は、ラチェット機構の動作説明図である。説明の便宜上、押し出し棒15のラック15Aにおいて、押し出し方向に隣接する一方の歯を前段歯15A1、他方の歯を後段歯15A2と定義するものとする。レバー20の先端には、押し出し棒15に向かって突出するボックス部20Aが形成されており、このボックス部20Aにはバネ20Bが伸縮可能な状態で収められている。バネ20Bの上端には、爪部20Cが取り付けられており、この爪部20Cは、ボックス部20Aの上面から突出している。
【0030】
図5に図示する状態において、レバー20を閉じ位置に向かって回動させると、前段歯15A1に爪部20Cが当接して、押し出し棒15が押し出し方向に向かって押し出される。上述した通り、閉じ位置に回動したレバー20は、片寄スプリング30のバネ力によって、閉じ位置から開き位置に向かって自動復帰する。レバー20が開き位置に自動復帰する際に、爪部20Cは、押し出し方向前方側から後段歯15A2に衝突する。この際、バネ20Bが縮むことによって、爪部20Cは、後段歯15A2を乗り越え、元の位置(図5に示す位置)に復帰する。レバー20を操作して、これらの動作を繰り返すことによって、押し出し棒15を間欠的に押し出し方向に繰り出すことができる。
【0031】
本実施形態では、押し出し棒15の繰り出し機構としてラチェット機構を採用したが、本発明はこれに限るものではなく、油圧式、電動式であってもよい。
【0032】
図6は、ホイールの正面図である。ホイール60には、被覆配管をベンディングする際に、被覆配管を挟み込むホイール溝部61が形成されている。ホイール溝部61は、第1ホイール溝部61A及び第1ホイール溝部61Aに連接する第2ホイール溝部61Bから構成される。第1ホイール溝部61Aは、上下に隙間を隔てて対向する一対のテーパ面によって構成されており、平面視において、これらのテーパ面は周状に延在している。上部側のテーパ面は、テーパ面の上端部が下端部よりもホイール60の外側に向かって張り出しており、下部側のテーパ面は、テーパ面の下端部が上端部よりもホイール60の外側に向かって張り出している。
【0033】
本実施形態では、平面視において、テーパ面が半円状となるように第1ホイール溝部61Aを形成している。ただし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、半円に満たない(つまり、中心角が180°未満)弧形状であってもよい。
【0034】
ここで、対向する一対のテーパ面の最大距離(言い換えると、上部側のテーパ面の上端部と、下部側のテーパ面の下端部との距離)は、被覆配管の外直径と略同一に設定することが望ましい。被覆配管の外直径とは、被覆材の外周面の直径を意味する。
当該最大距離と被覆配管の外直径とを略同一に設定することにより、被覆配管の外面を第1ホイール溝部61Aのテーパ面に押し当てた状態でベンディングを開始させることができるため、被覆材に加わる負荷を小さくすることができる。
【0035】
第2ホイール溝部61Bは、押し出し方向と平行な方向に延びる一対の平坦部61B1(連接溝部に相当する)と、一対の平坦部61B1の終端を繋ぐ円弧部61B2(円弧溝部に相当する)とからなる。一対の平坦部61B1は、上下に隙間を隔てて対向しており、離間距離が一定である。つまり、一対の平坦部61B1によって形成される溝幅Wは一定である。円弧部61B2は、曲率半径が配管の外直径と略一致している。配管の外直径とは、配管の外周面の直径を意味する。
【0036】
ここで、配管の外直径をRと定義したとき、溝幅Wは外直径Rより大きい。好ましくは、溝幅Wと外直径Rとの差は、5mm以上20mm以内である。溝幅Wと外直径Rとの差を5mm以上に設定することによって、被覆配管をホイール溝部61に挟み込んでベンディングする際に、被覆材を第2ホイール溝部61Bに圧入させるためのスペースが確保されるため、被覆材が破れるなどの不具合を、防止することができる。また、溝幅Wと外直径Rとの差を20mm以下に制限することによって、ベンディング中に被覆配管が溝幅Wの範囲内で揺動して、意図した形状とは異なる形状にベンディングされること等を防止することができる。
【0037】
ホイール60の後端面には、ホイール着脱開口部(不図示)が形成されており、このホイール着脱開口部に対して押し出し棒15を圧入することにより、ホイール60及び押し出し棒15を互いに連結することができる。ただし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール60は、押し出し棒15に対して着脱不能に固着されていてもよい。
【0038】
機器本体10の先端には、機器本体10の幅方向に向かって延びる板取り付け溝部10Cが形成されており、この板取り付け溝部10Cの底面には、不図示のネジ穴が形成されている。板部45は、機器本体10の板取り付け溝部10Cに収められている。板部45の板厚は、板取り付け溝部10Cの深さと略同じに設定されている。したがって、板部45を板取り付け溝部10Cに収めると、板部45及び機器本体10の上面は互いに、略面一となる。
【0039】
板部45には、ネジ穴45Aが形成されており、板取り付け溝部10Cのネジ穴と板部45のネジ穴45Aとを位置合わせして、機器本体10の底面側から固定ボルト35を締結することによって、板部45を機器本体10に対して固定することができる。固定ボルト35とこれらのネジ穴との締結を解除することによって、板部45を機器本体10から取り外すことができる。
【0040】
左右一対のローラ部50は、板部45に対して固定されている。機器本体10の長手方向から視たとき、機器本体10を挟んで略対称となる位置にローラ部50は配設されている。ローラ部50は、複数の小ローラ51からなり、これらの小ローラ51は、上下に積層されており、上下方向に延びる軸部(共通軸部に相当する)に挿入されている。軸部と各小ローラ51との間には若干のクリアランスが形成されている。
ローラ部50は、被覆配管の外径を超える高さを有することが望ましい。被覆配管の外径を超える高さを有するローラ部50であれば、ベンディングする際に、被覆配管を確実にローラ部50に当接させることができるからである。
【0041】
ローラ部50の軸部の下端は、板部45を貫通して、板部45の裏面にカシメられている。ただし、板部45を貫通した軸部の部分にナット等の締結部材を締結することによって、軸部を固定してもよい。
ローラ部50の軸部の上端には、ローラ抜け止め部52が設けられている。ローラ抜け止め部52の径は、小ローラ51の径よりも大きく設定されている。これにより、小ローラ51が軸部から抜け落ちることが防止される。ローラ抜け止め部52には、軸部の上端に締結される締結部材(例えば、ボルト、ナット)を用いることができる。ローラ抜け止め部52がボルトである場合、当該ボルトとして、ボルト頭部に六角穴を有する六角穴付きボルト、ボルト頭部にマイナス溝を有するマイナス溝付きボルト、ボルト頭部にプラス溝を有するプラス溝付きボルトなどを用いることができる。図1及び図2では、ローラ抜け止め部52の一例として六角穴付きボルトを示している。
【0042】
隣接する小ローラ51は互いに、軸方向端面が接触している。各小ローラ51は、互いに独立して回転させることができる。本実施形態では、小ローラ51を4つ組み合わせることによって、一つのローラ部50を構成したが、4つ以外の複数であってもよい。小ローラ51の個数を複数とすることにより、ベンディング時に被覆材に加わる負荷が小さくなり、被覆材の破れなどを防止することができる。ただし、一つのローラによってローラ部50を構成してもよい。
【0043】
次に、ベンダー機器100の動作について説明する。初期状態において、レバー20は閉じ位置(図3参照)に位置するものとする。被覆配管を板部45の長手方向と略平行な向きに配設して、第1ホイール溝部61Aのテーパ面とローラ部50との間に被覆配管を挟み込む。
【0044】
被覆配管のセット後に、止め金25を解除する。止め金25を解除すると、片寄スプリング30のバネ力によってレバー20が閉じ位置から開き位置に回動する。なお、被覆配管をセットする前に、止め金25を解除して、レバー20を閉じ位置から開き位置に予め回動させておいてもよい。
【0045】
次に、手作業によってレバー20を開き位置から閉じ位置に向かって回動させ、押し出し棒15の先端に装着されたホイール60を被覆配管に向かって押し込む。
被覆配管は、左右一対のローラ部50に支持されて、押し込み方向における移動が妨げられているため、被覆配管の被覆材は、第1ホイール溝部61Aのテーパ面に押し付けられて変形する。
【0046】
ホイール60を被覆配管に向かってさらに押し込むと、被覆配管は第1ホイール溝部61Aのテーパ面からこれに連接する第2ホイール溝部61Bに向かって徐々に押し込まれ、被覆配管全体がベンディングされる。
【0047】
本実施形態によれば、第1ホイール溝部61Aのテーパ面に被覆材を押し当てて、圧縮変形させた後に、第2ホイール溝部61Bに被覆配管を圧入しているため、ベンディング時に被覆材に加わる負荷を軽減できる。
ここで、仮に、第1ホイール溝部61Aを省略した、第2ホイール溝部61Bのみを備えたホイール(図7参照)を用いて被覆配管をベンディングした場合、第2ホイール溝部61Bの平坦部61B1のエッジに被覆材が接触して、破れるおそれがある。本実施形態では、第2ホイール溝部61Bに被覆配管を押し込む前に、被覆材を、第1ホイール溝部61Aのテーパ面に押し当てることによって、第2ホイール溝部61Bに入りやすい形状に変形させているため、かかる不具合を防止することができる。
【0048】
また、ベンディングする際に、各小ローラ51が軸部との間に形成されたクリアランスの範囲で傾いたり、小ローラ51自身が回転することによって、ローラ部50から被覆材に対して過度な負荷が加わることが防止される。これにより、ベンディングする際に、被覆材が破れることなどが防止される。
【0049】
このように、本実施形態のベンダー機器によれば、被覆配管をベンディングする際に、コイル状のスプリングを配管に挿入するなどの作業が不要となるため、ベンディングする際の作業負担を軽減することができる。また、ベンディング後にスプリングを配管から引く抜く必要がないため、上述したスプリングの破断等の問題を無くすことができる。また、ベンディングする際に、被覆配管の被覆材が破れるなどの不具合をなくすことができる。
【0050】
上述の実施形態では、ホイール60の第2ホイール溝部61Bを、平坦部61B1及び円弧部61B2によって構成したが、本発明はこれに限るものではなく、図8に図示するように、円弧部61B2を省略してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 機器本体
10A ボルト
10B ガイド溝
10C 板取り付け溝部
11 本体平坦部
15 押し出し棒
15A ラック
20 レバー
21 スプリング引掛部
25 止め金
30 片寄スプリング
31 第1スプリングフック部
32 第2スプリングフック部
35 固定ボルト
45 板部
50 ローラ部
51 小ローラ
52 ローラ抜け止め部
60 ホイール
61 ホイール溝部
61A 第1ホイール溝部
61B 第2ホイール溝部
61B1 平坦部
61B2 円弧部
100 ベンダー機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管及び前記配管の外周を覆う断熱性の被覆材からなる被覆配管を曲げるベンダー機器であって、
押し出し棒と、
前記押し出し棒の先端に設けられ、ベンディングする際に前記被覆配管を挟み込むホイール溝部が形成されたホイールと、
ベンディングする際に、前記被覆配管を支持する左右一対のローラ部と、
を有し、
前記ホイール溝部は、
上下に間隔を隔てて対向する一対のテーパ面を備えてテーパ状に形成された第1ホイール溝部と、
前記一対のテーパ面の終端に繋がり前記第1ホイール溝部に連接する連接溝部を備え、前記連接溝部の幅が前記配管の外直径よりも大きく、ベンディングする際に、前記一対のテーパ面によって前記被覆材が圧縮変形した前記被覆配管が圧入される第2ホイール溝部と、を有することを特徴とするベンダー機器。
【請求項2】
前記連接溝部は、前記一対のテーパ面の終端に繋がり上下に一定の間隔を隔てて対向する一対の平坦部を有することを特徴とするベンダー機器。
【請求項3】
前記一対の平坦部間の幅をW、前記配管の外直径をRと定義したとき、
幅Wと外直径Rとの差は、5mm以上20mm以内である、
ことを特徴とする請求項2に記載のベンダー機器。
【請求項4】
前記第2ホイール溝部は、前記連接溝部に連接し、曲率半径が前記配管と略同一の円弧溝部を有することを特徴とする請求項2又は3記載のベンダー機器。
【請求項5】
前記ホイールは、平面視略半円状に形成されており、
前記ホイール溝部は、該ホイールの外縁に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項6】
前記ローラ部は、複数の小ローラを、上下に積層することにより構成されており、
前記複数の小ローラは、上下方向に延びる共通軸部を回転軸として、それぞれ独立して回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項7】
前記回転軸と各前記小ローラとの間には、クリアランスが形成されていることを特徴とする請求項6に記載のベンダー機器。
【請求項8】
前記押し出し棒の長手方向に対して略直交する方向に延びる板部を有し、
前記ローラ部は、前記板部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項9】
前記押し出し棒の押し出し機構は、ラチェット式であることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。
【請求項10】
前記押し出し機構に連結されたレバーを有し、
前記レバーを開き位置から閉じ位置に回動させることによって、前記押し出し棒は繰り出されることを特徴とする請求項9に記載のベンダー機器。
【請求項11】
前記レバーを前記閉じ位置から前記開き位置に向かって付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項10に記載のベンダー機器。
【請求項12】
前記ホイールは、前記押し出し棒の先端に着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1に記載のベンダー機器。