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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179063
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20231212BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20231212BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20231212BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/18
F16C35/067
B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092117
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩水
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【テーマコード(参考)】
3J117
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J117AA01
3J117DA01
3J117DB01
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB03
3J216BA30
3J216CA02
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB13
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC15
3J216CC33
3J216CC41
3J216DA09
3J216EA01
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA73
3J701BA80
3J701EA72
3J701EA78
3J701FA60
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】車体に帯電した静電気を車輪に流しやすいハブユニット軸受を提供する。
【解決手段】ハブユニット軸受1は、外輪2と、ハブ4と、複数個の転動体6と、外輪2の内周面とハブ4の外周面との間に存在する内部空間7の軸方向端部開口を塞ぐシールリング8とを備える。シールリング8は、外輪2に支持される芯金9と、芯金9に結合されたシール材10とを備える。シール材10は、ハブ4またはハブ4に支持された摺接環11に先端部を摺接させたシールリップ33を有する。ハブユニット軸受1は、該ハブユニット軸受1の表面のうち外輪2のナックル46に接触する部分からシールリップ33までの連続した範囲を覆う親水性コート層12を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置のナックルに取り付けられる、外輪と、
外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に車輪が取り付けられるハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数個の転動体と、
前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向端部開口を塞ぐシールリングと、を備え、
前記シールリングは、前記外輪に支持される芯金と、該芯金に結合されたシール材とを備え、該シール材は、前記ハブまたは前記ハブに支持された摺接環に先端部を摺接させたシールリップを有する、
ハブユニット軸受であって、
前記ハブユニット軸受の表面のうち前記外輪の前記ナックルに接触する部分から前記シールリップまでの連続した範囲を覆う親水性コート層を備える、
ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記シール材が導電性ゴムにより構成されており、該シール材のシールグリースとして導電性グリースが用いられる、請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項3】
アルミニウム合金製のナックルに組み合わされる、請求項1または2に記載のハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
ハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、シールリングとを備える。外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置のナックルに取り付けられる。ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に車輪が取り付けられる。複数個の転動体は、複列の外輪軌道と複列の内輪軌道との間に転動自在に配置される。シールリングは、外輪の内周面とハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向端部開口を塞ぐ。これにより、該開口を通じて、外部空間から内部空間に泥水などの異物が侵入したり、内部空間から外部空間に潤滑剤が漏洩したりすることを防止する。シールリングは、外輪に支持される芯金と、該芯金に結合されたシール材とを備える。該シール材は、ハブまたはハブに支持された摺接環に先端部を摺接させたシールリップを有する。
【0003】
近年、車両のばね下重量を軽減するために、鉄製のナックルに代え、アルミニウム合金製のナックルを採用することが普及している。アルミニウム合金製のナックルは、軽量化に寄与する反面、鉄製の外輪との間で、異種金属同士の電位差を生じる関係となる。このため、外輪におけるナックルとの当接面に泥塩水などがかかると、電池が形成され、電極腐食が発生する。電極腐食が発生すると、その当接面で固着することがあり、補修点検時の作業性が阻害される。
【0004】
この点に関して、特開2004-100887号公報には、鉄製の外輪の表面のうち、アルミニウム合金製のナックルとの接触部に絶縁被膜層を形成することにより、ナックルと外輪との間で電極腐食が発生することを防止する技術が記載されている。
【0005】
ところで、自動車の車体には、走行時に生じる空気との摩擦などに起因して、静電気が帯電する。そして、車体にある程度電荷が溜まると、絶縁破壊を起こし、放電現象、すなわちスパークが発生することが知られている。このようなスパークが発生すると、ラジオノイズを生じさせるほか、車載コンピュータに損傷を与える可能性がある。
【0006】
車体に静電気が帯電する要因の1つとして、ハブユニット軸受のうち、外輪軌道および内輪軌道と転動体との間に、自動車の走行時に、絶縁性の高い不導体のEHL油膜が形成されることが挙げられる。すなわち、自動車の停止時には、外輪軌道および内輪軌道と転動体とが、EHL油膜を介さずに直接金属接触して互いに導通するため、車体に帯電した静電気を、ハブユニット軸受を介して車輪へと流し、地面に放電することができる。これに対し、自動車の走行時には、外輪軌道および内輪軌道と転動体との間にEHL油膜が形成されるため、帯電した静電気を車体からタイヤへと流すことができなくなる。つまり、EHL油膜が、車体と車輪との間を絶縁してしまう。この結果、走行時に、車体に静電気が帯電しやすくなる。
【0007】
この点に関して、特開2004-100887号公報には、ハブユニット軸受のシールリングを構成するシール材の素材として、導電性ゴムを用いることにより、車体に帯電した静電気を、ナックル、該ナックルと外輪とを結合するボルト、前記外輪、シールリング、ハブ、および車輪の順に流し、地面に放電することで、スパークの発生を防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-100887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2004-100887号公報に記載された従来構造では、シールリングにおいて、導電性ゴム製のシール材と芯金とを接着する接着剤が絶縁体であるため、芯金とシール材との間の電気抵抗値が大きい。また、走行中は、シール材のシールリップの先端部と相手面との間に絶縁体であるシールグリースの油膜が形成されるため、シール材と相手面との間の電気抵抗値が大きくなる。さらに、シール材の素材である導電性ゴムは、シールリップの摺接による振動などにより揺すられると電気抵抗値が増す。したがって、走行中に、外輪からシールリングを介してハブに、十分に静電気を流すことができない可能性がある。
【0010】
なお、外輪軌道および内輪軌道と転動体との間の転がり接触部を潤滑するグリースとして、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性グリースを使用することにより、EHL油膜による絶縁を改善して、転動体を介した導電を行うことも考えられる。しかしながら、転がり接触部における面圧は非常に高いため、使用に伴い、導電材の粉末が凝集しやすく、導電効果が長続きしない可能性がある。さらには、ゴリ感、すなわち該粉末の凝集物が転がり接触部に噛み込まれることによる転がり抵抗の急激な変化が出る可能性もある。
【0011】
本発明は、車体に帯電した静電気を車輪に流しやすいハブユニット軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、シールリングとを備える。
【0013】
前記外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置のナックルに取り付けられる。
【0014】
前記ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に車輪が取り付けられる。
【0015】
前記複数個の転動体は、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置される。
【0016】
前記シールリングは、前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向端部開口を塞ぐ。前記シールリングは、前記外輪に支持される芯金と、該芯金に結合されたシール材とを備え、該シール材は、前記ハブまたは前記ハブに支持された摺接環に先端部を摺接させたシールリップを有する。
【0017】
本発明の一態様のハブユニット軸受は、該ハブユニット軸受の表面のうち前記外輪の前記ナックルに接触する部分から前記シールリップまでの連続した範囲を覆う親水性コート層を備える。
【0018】
本発明の一態様のハブユニット軸受では、前記シール材を導電性ゴムにより構成することができ、該シール材のシールグリースとして導電性グリースを用いることができる。
【0019】
本発明の一態様のハブユニット軸受は、アルミニウム合金製のナックルに組み合わされることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様のハブユニット軸受によれば、車体に帯電した静電気を車輪に流しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例のハブユニット軸受の断面図である。
図2図2は、図1の右上部の拡大図である。
図3図3は、図1の左上部の拡大図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の第2例のハブユニット軸受の断面図である。
図5図5は、図4の左上部の拡大図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の第3例に関する、図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図3を用いて説明する。
【0023】
本発明のハブユニット軸受は、各種構造のハブユニット軸受に適用可能であるが、本例では、従動輪用のハブユニット軸受に、本発明を適用する場合について説明する。
【0024】
本例のハブユニット軸受1に関する以下の説明中、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図1の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図1の右側である。
【0025】
本例のハブユニット軸受1は、内周面に複列の外輪軌道3を有し、使用時に懸架装置のナックル46に取り付けられる外輪2と、外周面に複列の内輪軌道5を有し、使用時に車輪が取り付けられるハブ4と、複列の外輪軌道3と複列の内輪軌道5との間に転動自在に配置された複数個の転動体6と、外輪2の内周面とハブ4の外周面との間に存在する内部空間7の軸方向端部開口を塞ぐシールリング8とを備える。
【0026】
シールリング8は、外輪2に支持される芯金9と、該芯金9に結合されたシール材10とを備える。シール材10は、ハブ4に支持された摺接環(スリンガ)11に先端部を摺接させたシールリップ(33)を有する。
【0027】
さらに、本例のハブユニット軸受1では、該ハブユニット軸受1の表面のうち外輪2のナックル46に接触する部分からシールリップ(33)までの連続した範囲を覆う親水性コート層12を備える。そして、親水性コート層12上に雨水、泥水などの導電性を有する水の膜を作ることで、該水の膜を利用して、車体に帯電した静電気を車輪に流しやすくする。
【0028】
以下、本例のハブユニット軸受1について、より具体的に説明する。
【0029】
本例では、外輪2は、中炭素鋼などの鉄合金製で、略円筒形状を有する。外輪2は、内周面に、複列の外輪軌道3を有し、外周面の軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した静止フランジ13を有する。静止フランジ13は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔14を有する。外輪2は、外周面のうち静止フランジ13よりも軸方向内側に位置する軸方向内端部に、円筒面状の嵌合面部15を有する。さらに、外輪2は、静止フランジ13の軸方向内側面16と嵌合面部15との接続部に逃げ溝17を全周にわたり有する。
【0030】
本例では、ハブ4は、外輪2の径方向内側に外輪2と同軸に配置され、外周面のうち複列の外輪軌道3と対向する部分に、複列の内輪軌道5を有する。ハブ4は、外輪2よりも軸方向外側に位置する部分に径方向外側に向けて突出した回転フランジ18、および、軸方向外側の端部に円筒状のパイロット部19を有する。回転フランジ18は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔20を有する。
【0031】
本例では、ハブ4は、内輪21とハブ輪22とを組み合わせてなる。
【0032】
内輪21は、軸受鋼などの鉄合金により構成されている。内輪21は、外周面に、軸方向内側の内輪軌道5を備える。
【0033】
ハブ輪22は、中炭素鋼などの鉄合金により構成されている。ハブ輪22は、軸方向外側の内輪軌道5と、回転フランジ18と、パイロット部19とを備える。
【0034】
ハブ輪22は、軸方向外側の内輪軌道5よりも軸方向内側に位置する部分に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さく、内輪21が外嵌される小径段部23を有する。さらに、ハブ輪22は、小径段部23の軸方向外側の端部に、軸方向内側を向いた段差面24を有し、かつ、小径段部23の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がったかしめ部25を有する。
【0035】
ハブ4は、ハブ輪22の小径段部23に内輪21を外嵌し、かつ、ハブ輪22の段差面24とかしめ部25との間で内輪21を軸方向両側から挟持することにより、内輪21とハブ輪22とを結合固定することで構成されている。なお、本発明を実施する場合には、ハブ輪のうちで内輪よりも軸方向内側に突出した軸方向内側の端部にナットを螺合することで、ハブ輪と内輪とを結合することもできる。
【0036】
本発明を実施する場合には、軸方向外側の内輪軌道が、ハブ輪に外嵌された第2の内輪の外周面に備えられた構造を採用することもできる。
【0037】
本例のハブユニット軸受1は、従動輪用であるため、ハブ4は、中実に構成されている。ただし、本発明のハブユニット軸受は、駆動輪用のハブユニット軸受に適用することもできる。この場合、ハブは、径方向中心部に、軸方向に貫通するスプライン孔を有する。スプライン孔は、エンジンや電動モータを駆動源として回転駆動する駆動軸の先端部がスプライン係合される部位である。自動車の走行時には、駆動軸によりハブを回転駆動することで、ハブの回転フランジに結合固定された車輪および制動用回転体を回転駆動する。
【0038】
転動体6は、軸受鋼などの鉄合金製あるいはセラミックス製で、複列の外輪軌道3と複列の内輪軌道5との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、保持器26により保持された状態で転動自在に配置されている。これにより、ハブ4は、外輪2の径方向内側に回転自在に支持される。
【0039】
本例のハブユニット軸受1は、軸方向内側列の転動体6のピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体6のピッチ円直径とが等しい、等径PCD型の構造を備える。ただし、本発明のハブユニット軸受は、軸方向内側列の転動体のピッチ円直径が、軸方向外側列の転動体のピッチ円直径よりも大きいか、または、小さい、異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。また、本例のハブユニット軸受1では、転動体6として玉を使用しているが、玉に代えて円すいころを使用することもできる。
【0040】
本例では、シールリング8は、図2に示すように、摺接環11と組み合わされて、組み合わせシールリング27を構成する。
【0041】
組み合わせシールリング27は、外輪2の軸方向内側の端部内周面とハブ4の軸方向内側の端部外周面との間に装着され、内部空間7の軸方向内側の端部開口を塞ぐ。これにより、該開口を通じて、外部空間から内部空間7に泥水などの異物が侵入したり、内部空間7から外部空間に潤滑用のグリースが漏洩したりすることを防止する。なお、外部空間とは、ハブユニット軸受1の周囲に存在する空間をいう。
【0042】
摺接環11は、導電性を有する材料により造られており、具体的には、ステンレス鋼板などの防錆性を持つ金属板を曲げ成形することにより、全体を円環状に構成されている。摺接環11は、ハブ4の軸方向内側の端部外周面に締り嵌めで外嵌固定された摺接円筒部28と、摺接円筒部28の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった、円輪状の摺接側板部29とを有する。
【0043】
シールリング8は、芯金9と、シール材10とを備える。
【0044】
芯金9は、軟鋼板などの金属板を曲げ成形することにより、全体を円環状に構成されている。芯金9は、外輪2の軸方向内側の端部内周面に締り嵌めで内嵌固定された芯金円筒部30と、芯金円筒部30の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった、略円輪状の芯金側板部31とを有する。
【0045】
本例では、シール材10は、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性ゴムにより構成されている。すなわち、シール材10は、導電性を有する。ただし、本発明を実施する場合には、シール材10を、導電性を有しないゴムにより構成することもできる。シール材10は、芯金9に接着により固定されている。本例では、芯金9にシール材10を接着するための接着剤として、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性接着剤を用いている。これにより、芯金9とシール材10との間の電気抵抗値を低減している。ただし、本発明を実施する場合には、芯金9にシール材10を接着するための接着剤として、導電性を有しない一般的な接着剤を用いることもできる。
【0046】
シール材10は、基部32、および、先端部が相手部材に摺接する複数本(本例では3本)のシールリップ(33、34、35)を備える。本例では、シールリップとして、アキシアルリップ33、ラジアルリップ34、およびラジアルリップ35を有する。
【0047】
基部32は、芯金9の表面、具体的には、芯金円筒部30の外周面の軸方向内側の端部、軸方向内側の端面、および内周面と、芯金側板部31の軸方向内側面、内周面、および軸方向外側面の径方向内側の端部とを覆っている。
【0048】
アキシアルリップ33は、摺接側板部29の軸方向外側面に対して傾斜する方向に伸長し、具体的には、基部32のうちで芯金側板部31の軸方向内側面の径方向中間部を覆う部分から軸方向内側かつ径方向外側に向かう方向に伸長している。アキシアルリップ33の先端部は、摺接側板部29の軸方向外側面に全周にわたって摺接している。
【0049】
ラジアルリップ34は、摺接円筒部28の外周面に対して傾斜する方向に伸長し、具体的には、基部32のうちで芯金側板部31の径方向内側の端部を覆う部分から軸方向内側かつ径方向内側に向かう方向に伸長している。ラジアルリップ34の先端部は、摺接円筒部28の外周面に全周にわたって摺接している。
【0050】
ラジアルリップ35は、摺接円筒部28の外周面に対して傾斜する方向に伸長し、具体的には、基部32のうちで芯金側板部31の径方向内側の端部を覆う部分から軸方向外側かつ径方向内側に向かう方向に伸長している。ラジアルリップ35の先端部は、摺接円筒部28の外周面に全周にわたって摺接している。
【0051】
アキシアルリップ33、ラジアルリップ34、およびラジアルリップ35のそれぞれの先端部と、摺接環11の表面との摺接部に、該摺接部を潤滑するためのシールグリースが塗布されている。本例では、該シールグリースとして、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性グリースを用いている。これにより、シール材10と摺接環11との間の電気抵抗値を低減している。ただし、本発明を実施する場合には、該シールグリースとして、導電性を有しない一般的なシールグリースを用いることもできる。
【0052】
本例のハブユニット軸受1は、摺接環11に支持されたエンコーダ36をさらに備える。エンコーダ36は、磁性ゴムもしくは磁性プラスチックなどの磁性材により中空円輪板状に構成されており、軸方向内側面にN極とS極とが円周方向に関して交互に配置されている。エンコーダ36は、摺接側板部29の軸方向内側面および外周面を覆うように、摺接環11に接着により固定されている。懸架装置のナックル46などに支持される図示しない回転速度センサを、エンコーダ36に軸方向内側から対向させることで、車輪の回転速度を検出することが可能になり、検出した回転速度に基づいて、ABSなどの車両制御装置を制御することが可能になる。
【0053】
本例のハブユニット軸受1は、シールリング37をさらに備える。
【0054】
シールリング37は、内部空間7の軸方向外側の端部開口を塞ぐ。これにより、該開口を通じて、外部空間から内部空間7に泥水などの異物が侵入したり、内部空間7から外部空間に潤滑用のグリースが漏洩したりすることを防止する。
【0055】
シールリング37は、図3に示すように、芯金38と、シール材39とを備える。
【0056】
芯金38は、軟鋼板などの金属板を曲げ成形することにより、全体を円環状に構成されている。芯金38は、外輪2の軸方向外側の端部に締り嵌めで内嵌固定された嵌合筒部40と、嵌合筒部40の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった支持板部41とを有する。
【0057】
本例では、シール材39は、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性ゴムにより構成されている。すなわち、シール材39は、導電性を有する。ただし、本発明を実施する場合には、シール材39を、導電性を有しないゴムにより構成することもできる。シール材39は、芯金38の支持板部41に接着により固定されている。本例では、芯金38にシール材39を接着するための接着剤として、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性接着剤を用いている。これにより、芯金38とシール材39との間の電気抵抗値を低減している。ただし、本発明を実施する場合には、芯金38にシール材39を接着するための接着剤として、導電性を有しない一般的な接着剤を用いることもできる。
【0058】
シール材39は、基部42、および、先端部が相手部材に摺接する複数本(本例では3本)のシールリップ(43、44、45)を備える。本例では、シールリップとして、アキシアルリップ43、ラジアルリップ44、およびラジアルリップ45を有する。
【0059】
基部42は、支持板部41の表面、具体的には、支持板部41の軸方向外側面、内周面、および軸方向内側面の径方向内側の端部を覆っている。
【0060】
アキシアルリップ43は、回転フランジ18の軸方向内側面の径方向内端部に対して傾斜する方向に伸長し、具体的には、基部42のうちで支持板部41の軸方向外側面の径方向中間部を覆う部分から軸方向外側かつ径方向外側に向かう方向に伸長している。アキシアルリップ43の先端部は、回転フランジ18の軸方向内側面の径方向内端部に全周にわたって摺接している。
【0061】
ラジアルリップ44は、ハブ4の外周面のうち軸方向外側の内輪軌道5の軸方向外側に隣接する部分に対して傾斜する方向に伸長し、具体的には、基部42のうちで支持板部41の径方向内側の端部を覆う部分から軸方向外側かつ径方向内側に向かう方向に伸長している。ラジアルリップ44の先端部は、ハブ4の外周面のうち軸方向外側の内輪軌道5の軸方向外側に隣接する部分に全周にわたって摺接している。
【0062】
ラジアルリップ45は、ハブ4の外周面のうち軸方向外側の内輪軌道5の軸方向外側に隣接する部分に対して傾斜する方向に伸長し、具体的には、基部42のうちで支持板部41の径方向内側の端部を覆う部分から軸方向内側かつ径方向内側に向かう方向に伸長している。ラジアルリップ45の先端部は、ハブ4の外周面のうち軸方向外側の内輪軌道5の軸方向外側に隣接する部分に全周にわたって摺接している。
【0063】
アキシアルリップ43、ラジアルリップ44、およびラジアルリップ45のそれぞれの先端部と、ハブ4の表面との摺接部に、該摺接部を潤滑するためのシールグリースが塗布されている。本例では、該シールグリースとして、カーボンなどの導電材の粉末が混入した導電性グリースを用いている。これにより、シール材39とハブ4との間の電気抵抗値を低減している。ただし、本発明を実施する場合には、該シールグリースとして、導電性を有しない一般的なシールグリースを用いることもできる。
【0064】
親水性コート層12は、表面に付着した水滴の接触角度が40度以下、すなわち表面に水滴がなじむ性質を持つコート層である。本発明を実施する場合、親水性コート層12を構成するコーティング剤の種類は特に限定されないが、たとえば、ガラスコーティング剤、セラミックコーティング剤などを採用することができる。
【0065】
本例では、親水性コート層12は、ハブユニット軸受1の表面のうち、回転フランジ18の軸方向内側面16からアキシアルリップ33の外周面までの連続した範囲を覆っている。すなわち、親水性コート層12は、それぞれが外輪2のうちナックル46に接触する部分の表面である回転フランジ18の軸方向内側面16および嵌合面部15と、逃げ溝17の表面と、外輪2の軸方向内側の端面と、シール材10のうち芯金円筒部30を覆う部分の軸方向内側の端面および内周面と、シール材10のうち芯金側板部31を覆う部分の軸方向内側面と、アキシアルリップ33の外周面とを、全周にわたり覆っている。
【0066】
本例では、親水性コート層12の径方向内側の終端部、具体的には親水性コート層12のうちアキシアルリップ33の外周面を覆う部分の軸方向内端部は、摺接側板部29の軸方向外側面に全周にわたり摺接している。
【0067】
ハブユニット軸受1の表面に対する親水性コート層12の形成方法は、特に限定されることはないが、たとえば、ディッピングまたはスプレーによる形成方法を採用することができる。ディッピングまたはスプレーによる形成方法を採用すれば、シール材10の表面のうち、シールリング8と摺接環11との間に挟まれた空間内に存在する部分、具体的には、シール材10のうち芯金円筒部30を覆う部分の内周面と、シール材10のうち芯金側板部31を覆う部分の軸方向内側面と、アキシアルリップ33の外周面とに、親水性コート層12を形成しやすい。
【0068】
なお、親水性コート層12の厚さは、特に限定されることはないが、たとえば、ガラスコートの場合は0.05μm~0.15μm程度、セラミックコートの場合は0.2μm~0.4μm程度とすることができる。
【0069】
本例のハブユニット軸受1は、ハブユニット軸受1の表面のうち、親水性コート層12が形成された範囲に対して隣接する範囲に形成された、親水性コート層12aをさらに備える。
【0070】
親水性コート層12aは、ハブユニット軸受1の表面のうち、摺接側板部29の軸方向外側面の径方向外端部からかしめ部25の内周面までの連続した範囲を覆うように形成されている。具体的には、親水性コート層12aは、摺接側板部29の軸方向外側面のうちアキシアルリップ43の先端部および親水性コート層12の径方向内側の終端部が摺接する部分よりも径方向外側に位置する径方向外端部と、エンコーダ36の外周面および軸方向内側面と、かしめ部25の外周面、軸方向内側面、および内周面とを、全周にわたり覆っている。
【0071】
親水性コート層12の径方向内側の終端部と、親水性コート層12aの径方向外側の終端部とは、境界部Xにおいて互いに摺接あるいは近接している。
【0072】
親水性コート層12aの材質および形成方法は、親水性コート層12と同じであり、親水性コート層12aは、親水性コート層12と同時に、つまり同じ工程で形成される。これらの親水性コート層12、12aは、形成直後は互いにつながっているが、その後、外輪2とハブ4とを相対回転させることによって、境界部Xで破断あるいは切断される。親水性コート層12aの厚さは、親水性コート層12と実質的に同じである。
【0073】
本例のハブユニット軸受1の使用時には、図1に示すように、外輪2を懸架装置のナックル46に取り付ける。具体的には、外輪2の嵌合面部15をナックル46に備えられた支持孔47の内周面に、親水性コート層12を介して径方向のがたつきなく内嵌し、かつ、外輪2の回転フランジ18の軸方向内側面16をナックル46の軸方向外側面48に、親水性コート層12を介して当接させる。この状態で、ナックル46の円周方向複数箇所に備えられた通孔49に挿通されたボルト50を、外輪2の回転フランジ18に備えられた取付孔14に螺合することにより、外輪2を懸架装置のナックル46に取り付ける。
【0074】
さらに、この状態で、ハブ4に車輪および制動用回転体を取り付ける。具体的には、車輪を構成するホイールおよび制動用回転体をハブ4のパイロット部19に外嵌する。この状態で、ホイールおよび制動用回転体の円周方向複数箇所に備えられた通孔を挿通したハブボルトを、ハブ4の回転フランジ18に備えられた取付孔20に螺合することにより、ハブ4に車輪および制動用回転体を取り付ける。なお、取付孔20に圧入したスタッドを、ホイールおよび制動用回転体の通孔に挿通した状態で、該スタッドの先端部にハブナットを螺合することにより、ハブ4に車輪および制動用回転体を取り付けることもできる。
【0075】
本例のハブユニット軸受1は、該ハブユニット軸受1の表面のうち外輪2のナックル46に接触する部分からシール材10のシールリップ(33)までの連続した範囲を覆う親水性コート層12を備える。すなわち、本例の構造では、鉄合金製の外輪2は、アルミニウム合金製のナックル46に対し、直接当接せず、絶縁体である親水性コート層12を介して当接する。このため、外輪2とナックル46との間で電極腐食が発生することを抑制できる。また、本例の構造では、親水性コート層12上の水分を介して、ナックル46と摺接環11とを導通させることで、車体に帯電した静電気を車輪に向けて流すことができる。
【0076】
本例の構造では、シールリング8を構成するシール材10の材質を、導電性ゴムとしている。このため、車体に帯電した静電気を、ナックル46、ボルト50、外輪2、シールリング8を含む組み合わせシールリング27、ハブ4、および車輪の順に流すことができる。すなわち、本例の構造では、このルートでも、車体に帯電した静電気を車輪に向けて流すことができる。したがって、車体に帯電した静電気を車輪に向けて、より流しやすい。
【0077】
本例では、芯金9にシール材10を接着するための接着剤として、導電性接着剤を用いることにより、芯金9とシール材10との間の電気抵抗値を低減している。アキシアルリップ33、ラジアルリップ34、およびラジアルリップ35のそれぞれの先端部と摺接環11の表面との摺接部を潤滑するためのシールグリースとして、導電性グリースを用いることにより、シール材10と摺接環11との間の電気抵抗値を低減している。したがって、これらの低減効果の分、車体に帯電した静電気を車輪に向けて、より流しやすい。
【0078】
なお、シール材(10)のシールリップの先端部と相手面(摺接環11の表面)との摺接部における面圧は、軌道面と転動面との転がり接触部における面圧に比べて非常に小さいため、使用に伴い、導電性グリースに混入した導電材の粉末の凝集は起きにくい。したがって、導電効果が長続きしやすく、かつ、シールトルク変動が発生しにくい。しかも、シール材の先端部ににじんだ導電性グリースを介して、前記摺接部だけでなく、該摺接部の近傍も含めて、導電が可能になる。
【0079】
なお、本発明を実施する場合で、仮に、親水性コート層12、12aの形成後、外輪2とハブ4とを相対回転させることによって、親水性コート層12と親水性コート層12aとが互いの境界部で破断する際に、破断の位置が所望の位置からずれて、親水性コート層12の径方向内側の終端部が、摺接環11の摺接側板部29の軸方向外側面に対し、非接触になった場合でも、摺接環11に流れ込む静電気の量を、確保しやすい。
【0080】
すなわち、この場合には、親水性コート層12上の水分をアキシアルリップ33の先端部外周面に付着させるとともに摺接環11の摺接側板部29の軸方向外側面に接触させることができる。このため、該水分を通じて摺接環11に静電気を流し込むことができる。また、本例の構造では、ナックル46から親水性コート層12上の水分の径方向内側の終端部まで流れてきた静電気は、その後、アキシアルリップ33の先端部に流れ込み、さらに該先端部から、該先端部と摺接側板部29の軸方向外側面との摺接部を通じて、摺接環11に流れ込むといった、経路Cを辿る。ここで、シール材10の素材である導電性ゴムは、アキシアルリップ33の摺接による振動などにより揺すられると電気抵抗値が増大するが、経路Cにおいては、静電気は、シール材10のうち、アキシアルリップ33の先端部しか通過しない。このため、該静電気がシール材10を通過する際の電気抵抗値を小さく抑えられる。したがって、摺接環11に流れ込む静電気の量を、確保しやすい。
【0081】
本例の構造において、親水性コート層12の径方向内側の終端部と、親水性コート層12aの径方向外側の終端部とが、境界部Xにおいて互いに摺接している場合には、親水性コート層12a上の水分が、親水性コート層12上の水分とハブ4とを導通させる。このため、車体に帯電した静電気を、親水性コート層12上の水分から親水性コート層12a上の水分を介してハブ4に流すこともできる。したがって、車体に帯電した静電気を車輪に向けて、より流しやすい。なお、本発明を実施する場合には、マスキング技術などを用いて、親水性コート層12aの形成を省略することもできる。
【0082】
本例の構造では、シールリング37を構成するシール材39の材質も、導電性ゴムとしている。このため、車体に帯電した静電気を、ナックル46、ボルト50、外輪2、シールリング37、ハブ4、および車輪の順に流すことができる。すなわち、本例の構造では、このルートでも、車体に帯電した静電気を車輪に向けて流すことができる。したがって、車体に帯電した静電気を車輪に向けて、より流しやすい。
【0083】
本例では、芯金38にシール材39を接着するための接着剤として、導電性接着剤を用いることにより、芯金38とシール材39との間の電気抵抗値を低減している。アキシアルリップ43、ラジアルリップ44、およびラジアルリップ45のそれぞれの先端部とハブ4の表面との摺接部を潤滑するためのシールグリースとして、導電性グリースを用いることにより、シール材39とハブ4との間の電気抵抗値を低減している。したがって、これらの低減効果の分、車体に帯電した静電気を車輪に向けて、より流しやすい。
【0084】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図4および図5を用いて説明する。
【0085】
本例では、親水性コート層12は、ハブユニット軸受1の表面のうち、第1例よりも広い範囲(連続した範囲)を覆っている。
【0086】
すなわち、本例では、親水性コート層12は、ハブユニット軸受1aの表面のうち、第1例の形成範囲だけでなく、回転フランジ18の外周面から軸方向外側のシールリング37を構成するアキシアルリップ43の外周面までの連続した範囲を覆うように形成されている。具体的には、親水性コート層12は、追加的に、回転フランジ18の外周面および軸方向外側面と、外輪2の外周面のうち回転フランジ18よりも軸方向外側に位置する部分と、外輪2の軸方向外側の端面と、それぞれがシール材39のうち外部空間に存在する部分の表面である、シール材39のうち支持板部41を覆う部分の軸方向外側面の径方向外側部と、アキシアルリップ43の外周面とを、全周にわたり覆っている。親水性コート層12の軸方向外側の終端部、具体的には親水性コート層12のうちアキシアルリップ43の外周面を覆う部分の軸方向外端部は、回転フランジ18の軸方向内側面の径方向内端部に全周にわたり摺接している。本例では、軸方向内側のシールリング8だけでなく、軸方向外側のシールリング37も、本発明のシールリングに相当する。
【0087】
本例のハブユニット軸受1aは、ハブユニット軸受1aの表面のうち、親水性コート層12が形成された範囲に対して隣接する範囲に形成された、導電性を有する親水性コート層12bをさらに備える。
【0088】
親水性コート層12bは、回転フランジ18の軸方向内側面のうち、アキシアルリップ43の先端部および親水性コート層12の軸方向外側の終端部が摺接する部分よりも径方向外側に位置する部分を全周にわたり覆っている。
【0089】
親水性コート層12の軸方向外側の終端部と、親水性コート層12bの径方向内側の終端部とは、境界部Yにおいて互いに摺接あるいは近接している。
【0090】
親水性コート層12bの材質および形成方法は、親水性コート層12と同じであり、親水性コート層12bは、親水性コート層12と同時に、つまり同じ工程で形成される。これらの親水性コート層12、12bは、形成直後は互いにつながっているが、その後、外輪2とハブ4とを相対回転させることによって、境界部Yで破断あるいは切断される。親水性コート層12bの厚さは、親水性コート層12と実質的に同じである。なお、本発明を実施する場合には、マスキング技術などを用いて、親水性コート層12bの形成を省略することもできる。
【0091】
本例のハブユニット軸受1aでは、親水性コート層12上の水分を介して、ナックル46と回転フランジ18とを導通させることで、車体に帯電した静電気を車輪に向けて流すことができる。すなわち、本例の構造では、このルートでも、車体に帯電した静電気を車輪に向けて流すことができる。したがって、車体に帯電した静電気を車輪に向けて、より流しやすい。
【0092】
なお、本発明を実施する場合で、仮に、親水性コート層12、12bの形成後、外輪2とハブ4とを相対回転させることによって、親水性コート層12と親水性コート層12bとが互いの境界部で破断する際に、破断の位置が所望の位置からずれて、親水性コート層12の軸方向外側の終端部が、回転フランジ18の軸方向内側面の径方向内端部に対し、非接触になった場合でも、第1例と同様の理由により、ハブ4に流れ込む静電気の量を、確保しやすい。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0093】
なお、本発明を実施する場合には、たとえば、第2例の親水性コート層12のうち、外輪2の軸方向内側の端面からアキシアルリップ33の外周面までの連続した範囲を覆う部分を省略することもできる。
【0094】
[第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図6を用いて説明する。
【0095】
本例では、軸方向内側のシールリング8aのシール材10aは、ナックル46に当接する補助リップ51を備えており、該補助リップ51の表面が親水性コート層12により覆われている。
【0096】
具体的には、本例では、シール材10aは、芯金円筒部30を覆う部分の軸方向内側の端部の径方向外端部にその基端部が接続された補助リップ51を備える。補助リップ51は、シール材10aのうち、芯金円筒部30を覆う部分の軸方向内側の端部の径方向外端部から軸方向内側に伸長し、かつ、中間部が径方向外側かつ軸方向外側に折り返された形状を有しており、先端部が外輪2の軸方向内側の端面に全周にわたり当接している。補助リップ51の表面のうち、該補助リップ51の基端部内周面から先端部外周面までの連続した範囲は、親水性コート層12により全周にわたり覆われている。補助リップ51のうち、軸方向内側に最も張り出した軸方向中間部は、親水性コート層12を介して、ナックル46の支持孔47の軸方向内側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった段差面52の径方向内端部に全周にわたり当接している。
【0097】
本例では、このような構成を採用することにより、親水性コート層12上の水分を介して導通されるナックル46と摺接環11との間の導通路を、第1例の場合よりも短くすることで、車体に帯電した静電気の除去性能を向上させている。なお、本発明を実施する場合、補助リップの形成位置および形状などは、本例の構造に限らず、任意に決定することができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0098】
本発明は、上述した各実施の形態の構造を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
1、1a ハブユニット軸受
2 外輪
3 外輪軌道
4 ハブ
5 内輪軌道
6 転動体
7 内部空間
8、8a シールリング
9 芯金
10、10a シール材
11 摺接環
12、12a、12b 親水性コート層
13 静止フランジ
14 取付孔
15 嵌合面部
16 軸方向内側面
17 逃げ溝
18 回転フランジ
19 パイロット部
20 取付孔
21 内輪
22 ハブ輪
23 小径段部
24 段差面
25 かしめ部
26 保持器
27 組み合わせシールリング
28 摺接円筒部
29 摺接側板部
30 芯金円筒部
31 芯金側板部
32 基部
33 アキシアルリップ
34 ラジアルリップ
35 ラジアルリップ
36 エンコーダ
37 シールリング
38 芯金
39 シール材
40 嵌合筒部
41 支持板部
42 基部
43 アキシアルリップ
44 ラジアルリップ
45 ラジアルリップ
46 ナックル
47 支持孔
48 軸方向外側面
49 通孔
50 ボルト
51 補助リップ
52 段差面
図1
図2
図3
図4
図5
図6