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  • 特開-ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179081
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092141
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 充弘
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS10
3C707HS27
3C707KS33
3C707KW03
3C707KX10
3C707MS14
3C707MS15
(57)【要約】
【課題】ツールの荷重を検出する力センサの故障を簡単な構成かつ短時間にて検出することができるロボットを提供する。
【解決手段】本発明にかかるロボット100は、アーム102と、アームに備えられた力センサ104と、アームに力センサを介して装着されるツール106と、アームの動作を制御するロボット制御装置108と、を備え、ロボット制御装置は、力センサの出力値を取得すると共に、ツールおよび力センサの合計質量とアームの動作による加速度とから力センサにかかる慣性力の算出値を求め、出力値と算出値とを比較して、その差分が所定の閾値を超えた場合に力センサの故障を検出することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、
前記アームに備えられた力センサと、
前記アームに前記力センサを介して装着されるツールと、
前記アームの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記力センサの出力値を取得すると共に、前記ツールおよび前記力センサの合計質量と前記アームの動作による加速度とから前記力センサにかかる慣性力の算出値を求め、前記出力値と前記算出値とを比較して、その差分が所定の閾値を超えた場合に前記力センサの故障を検出することを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記制御装置は、前記出力値と前記算出値との比較を、前記力センサを用いた作業の前に実施することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記制御装置は、前記出力値と前記算出値との差分を検出可能な加速度で前記アームを動作させて、前記出力値と前記算出値とを比較することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項4】
前記制御装置は、前記力センサが検出可能な全方向に前記アームを動作させて、前記出力値と前記算出値とを比較することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームに備えられた力センサの故障を検出するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
一例として工場等の生産現場では、アームを有するロボットが用いられている。アームは、その各関節に設けられたアクチュエータである電動モータを有する。電動モータは、駆動信号によって駆動され、アームの目標とする動作を実現する。またアームの先端には、ツールが装着されている。ツールは、例えばワークの研磨や面取りなどの作業を行うためのエンドエフェクタである。
【0003】
従来からツール(エンドエフェクタ)にかかる力を測定する力センサを設ける場合があり、さらに力センサの故障(異常)を検出するための構成が知られている。特許文献1には、ロボットが記載されている。ロボットは、ロボットアームと、ロボットアームの先端に装着され把持力センサを有するエンドエフェクタと、ロボットアームの基台と被設置部との間に配置されている第1部材および第2部材と、第1部材および第2部材の双方に接する第1力センサおよび第2力センサとを備える。このロボットでは、第1力センサの出力と第2力センサの出力との差に基づいて、第1力センサまたは第2力センサの異常を検出する。
【0004】
特許文献2には、脚式移動ロボットが記載されている。脚式移動ロボットは、基体と、基体に連結される複数本の脚部と、複数本の脚部のそれぞれの先端に連結される足部と、力センサとを備えている。この力センサは、足部と脚部との間に配置され、足部が接地する床面から作用する床反力を示す出力を生じる。
【0005】
特許文献2に記載の脚式移動ロボットでは、ロボットを起動させるときに足踏み動作を行うようにロボットの動作を制御し、足踏み動作のときの力センサの出力が所定の範囲内にあるか否か判定し、その判定結果に基づいて力センサの異常を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-019067号公報
【特許文献2】特開2006-082201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のロボットは、ロボットアームの基台と被設置部との間に配置されている第1部材および第2部材に接する第1力センサまたは第2力センサの異常を検出するものである。よって、このロボットでは、全く同じ力を検出するセンサが2つ必要になってしまう。
【0008】
特許文献2の脚式移動ロボットは、足部と脚部との間に配置された力センサの故障を検出するものである。この脚式移動ロボットでは、力センサの故障を検出するために、力センサを用いた作業をする必要があるため、仮に力センサが故障していた場合、床の反力が正常に検出できず、ロボットが転倒するおそれがある。さらに足踏み動作という本来不必要な動作をさせる必要があるため、余計な時間がかかってしまう。
【0009】
さらに特許文献1、2は、ツールの荷重を検出する力センサの故障を検出する点については考慮されていない。ツールの荷重を検出する力センサとは、研磨や面取りなど、荷重によって加工を制御するためのセンサである。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、ツールの荷重を検出する力センサの故障を簡単な構成かつ短時間にて検出することができるロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかるロボットの代表的な構成は、アームと、アームに備えられた力センサと、アームに力センサを介して装着されるツールと、アームの動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、力センサの出力値を取得すると共に、ツールおよび力センサの合計質量とアームの動作による加速度とから力センサにかかる慣性力の算出値を求め、出力値と算出値とを比較して、その差分が所定の閾値を超えた場合に力センサの故障を検出することを特徴とする。
【0012】
上記の制御装置は、出力値と算出値との比較を、力センサを用いた作業の前に実施するとよい。
【0013】
上記の制御装置は、出力値と算出値との差分を検出可能な加速度でアームを動作させて、出力値と算出値とを比較するとよい。
【0014】
上記の制御装置は、力センサが検出可能な全方向にアームを動作させて、出力値と算出値とを比較するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ツールの荷重を検出する力センサの故障を簡単な構成かつ短時間にて検出することができるロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態におけるロボットを説明する図である。
図2図1のロボットの動作を示すフローチャートである。
図3図2のフローチャートに示すアームの加速度と力センサ出力値とをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態におけるロボット100を説明する図である。ロボット100は、例えば工場などの生産現場で用いられ、ロボットアーム(アーム102)と、力センサ104と、ツール106と、ロボット制御装置108とを備える。
【0019】
力センサ104は、アーム102に備えられている。ツール106は、図示のように、アーム102に力センサ104を介して装着されていて、力センサ104のみに支持されている。なおツール106は、例えば所定のワークの研磨や面取りなどの作業を行うエンドエフェクタである。
【0020】
アーム102は、ロボット制御装置108により動作制御され、その各関節に設けられたアクチュエータである電動モータ(サーボモータ110)を駆動することにより、ツール106を所定の位置に移動させることができる。
【0021】
ロボット100では、ツール106が力センサ104のみに支持されている。このため、力センサ104は、アーム102の動作に伴って発生するツール106にかかる荷重を受けて、この荷重を検出する。仮に、力センサ104が故障したことに気付かず、故障した力センサ104を用いて作業を行うと加工精度が低下したり加工を失敗したりして、ワークを無駄にすることもあり得る。このため、力センサ104からの情報は、ワークの研磨や面取りなどの作業を行う上で重要となる。
【0022】
そこでロボット100では、力センサ104がアーム102の動作に伴って発生するツール106および力センサ104にかかる慣性力に応じた値を出力する点に着目し、力センサ104の故障を検出する構成を採用した。以下、具体的に説明する。
【0023】
ロボット制御装置108は、図1に示すようにロボット位置・加速度監視装置112と、力センサ監視装置114と、力センサ故障判定装置116とを有する。ロボット位置・加速度監視装置112は、サーボモータ110に取り付けられたエンコーダに接続されていて、エンコーダからの情報を取得する。力センサ監視装置114は、力センサ104に接続されていて、力センサ104からの情報を取得する。力センサ故障判定装置116は、ロボット位置・加速度監視装置112および力センサ監視装置114からの情報に基づいて、力センサ104の故障を検出する。
【0024】
図2は、図1のロボット100の動作を示すフローチャートである。図2に示すロボット100の動作は、力センサ104の故障を検出するための動作であり、一定の制御周期毎に実行される。この故障検出の動作は、一例として力センサ104を用いた作業の前、例えばワークにツール106が接近しつつ未だ接していないとき、いわゆるエアカット動作中に行われる。なおエアカット動作では、タクトタイムを短縮させるためにワークへの接近動作を高速で行っている。
【0025】
また、故障検出の動作を開始する条件としては、作業者がティーチングプログラムの中で指定してもよいし、ロボット制御装置108がロボット100の加速度、すなわちアーム102の加速度に基づいて自動的に実行するようにしてもよい。
【0026】
ロボット100では、まず、ロボット制御装置108のロボット位置・加速度監視装置112がサーボモータ110に取り付けられたエンコーダからアーム102の軸角度θを取得する(ステップS100)。つぎに、ロボット位置・加速度監視装置112は、軸角度θに基づいてロボット100の手先位置、すなわちアーム102の位置rを計算する(ステップS102)。
【0027】
さらに、ロボット位置・加速度監視装置112は、適宜のメモリに記憶していた前回のアーム102の位置r´を読み出し、今回のアーム102の位置rとの差分に基づいてアーム102の速度vを計算する(ステップS104)。
【0028】
続いて、ロボット位置・加速度監視装置112は、適宜のメモリから前回のアーム102の速度v´を読み出し、今回のアーム102の速度vとの差分に基づいてアーム102の加速度aを計算する(ステップS106)。
【0029】
つぎに、ロボット位置・加速度監視装置112は、以下の式(1)で示されるアーム102の加速度aと、ツール106および力センサ104の合計質量Mとに基づく慣性力Fを計算する(ステップS108)。なおツール106の質量と力センサ104の質量は、予め測定して適宜のメモリに記憶されている。このようにステップS108では、力センサ104にかかる慣性力Fを力学的に算出する。
F=Ma …式(1)
【0030】
ここで力センサ104は、アーム102の動作に伴って発生するツール106および力センサ104にかかる慣性力Fに応じた値を出力する。また力センサ104の出力値は、ロボット制御装置108の力センサ監視装置114にリアルタイムで入力される。そこで力センサ監視装置114は、ステップS108で慣性力Fを計算した瞬間における力センサ出力値Fsを、力センサ104から取得する(ステップS110)。
【0031】
図3は、図2のフローチャートに示すアーム102の加速度aと力センサ出力値Fsとをプロットしたグラフである。図3(a)は、時間に対するアーム102の加速度aのX成分を例示している。このようにロボット100では、アーム102を一定の制御周期で動作させていて、加速度aのX成分が周期的に変化している。
【0032】
図3(b)は、図3(a)のアーム102の動作に応じて力センサ104から出力された時間に対する力センサ出力値Fsを例示している。このように力センサ出力値Fsは、アーム102の加速度aのX成分に対応して変化している。ただし、力センサ出力値Fsは、力センサ104の固有の座標系基準の値であるため、そのままでは力センサ104にかかる慣性力Fとは比較することができない。
【0033】
そこで、図2に戻って示すように、ロボット制御装置108の力センサ故障判定装置116は、両者の座標系を統一するために、以下の式(2)で示される力センサ出力値Fsと、アーム102の軸角度θと、センサ座標系からロボット座標系に変換する回転行列rRsとに基づくロボット座標系基準の力センサ出力値Frを計算する(ステップS112)。
Fr=rRs(θ)・Fs …式(2)
【0034】
このようにステップS112では、力センサ出力値Fsをロボット座標系基準の力センサ出力値Frに変換する。なお上記のアーム102の加速度a、力センサ104にかかる慣性力F、力センサ出力値Fs、Frはいずれも、3次元空間では(x、y、z)成分を持つ3次元ベクトルである。
【0035】
続いて、力センサ故障判定装置116は、以下の式(3)を用いて、ステップS108で力学的に算出した力センサ104にかかる慣性力Fと、ステップS112で計算したロボット座標系基準の力センサ出力値Frとを比較し、その差分が所定の閾値sを超えているか否かを判定する(ステップS114)。また閾値sは、力センサ104が故障していると判断される閾値である。
|F-Fr|>s …式(3)
【0036】
そして力センサ故障判定装置116は、慣性力Fと力センサ出力値Frの差分が、閾値sよりも大きい場合(ステップS114、Yes)、力センサ104が故障していることを表示し(ステップS116)、両者の差分が閾値s以下であれば(ステップS114、No)、故障検出の動作を終了する。
【0037】
したがってロボット100によれば、ロボット制御装置108がロボット座標系基準の力センサ出力値Frと、力学的に算出した算出値である力センサ104にかかる慣性力Fとを比較することにより、ツール106の荷重を検出する力センサ104の故障を簡単な構成かつ短時間にて検出することができる。
【0038】
またロボット制御装置108は、ロボット座標系基準の力センサ出力値Frと、力センサ104にかかる慣性力Fとの比較を、力センサ104を用いた作業の前、すなわちエアカット動作中に実施している。
【0039】
これにより、ロボット100では、力センサ104を用いた作業の前に力センサ104の故障を検出することができる。このため、故障した力センサ104を用いて作業してしまう事態を回避することができ、ワークが無駄になることがない。さらに、力センサ104の故障を検出するために、通常の作業とは異なる動作を行う必要がないため、余計な時間もかからない。
【0040】
また上記の式(1)に示すように、加速度aが大きいほど慣性力Fが大きくなる。このため、ワークへの接近動作を高速で行うエアカット動作中に、力センサ104にかかる慣性力Fと、ロボット座標系基準の力センサ出力値Frとを比較することにより、両者の差分が十分に検出され易くなる。これにより、ロボット100では、力センサ104の故障をより正確に検出することができる。
【0041】
仮に、慣性力Fと力センサ出力値Frとの差分が十分に検出され難い場合(有意な差が表れない場合)には、ロボット制御装置108は、慣性力Fと力センサ出力値Frとを比較するために、意図的に、本来必要な加速度より大きな加速度でアーム102を動作させてもよい。このようにすれば、慣性力Fが大きくなり、両者の差分を確実に検出して、力センサ104の故障をより正確に検出することができる。
【0042】
さらにロボット制御装置108は、慣性力Fと力センサ出力値Frとを比較するために、力センサ104が検出可能な全方向にアーム102を動作させてもよい。このようにすれば、本来の動作プログラムではアーム102の動作しない軸方向があったとしても、この軸方向に沿った力センサ104の故障を検出することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、アームに備えられた力センサの故障を検出するロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100…ロボット、102…アーム、104…力センサ、106…ツール、108…ロボット制御装置、110…サーボモータ、112…ロボット位置・加速度監視装置、114…力センサ監視装置、116…力センサ故障判定装置
図1
図2
図3