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特開2023-179084クレーン装置、及びクレーン制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179084
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】クレーン装置、及びクレーン制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/46 20060101AFI20231212BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20231212BHJP
   B66C 13/18 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B66C13/46 G
B66C13/00 Z
B66C13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092144
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】及川 裕吾
(72)【発明者】
【氏名】大槻 真弘
(72)【発明者】
【氏名】田上 達也
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA01
3F204AA02
3F204BA02
3F204GA00
(57)【要約】
【課題】クレーン装置の最新の稼動情報をデータサーバに蓄積でき、更に情報量が多い動作情報や緊急情報を、必要に応じて可搬型の情報表示端末で閲覧できるクレーン装置、及びクレーン制御システムを提供する。
【解決手段】少なくとも巻上用電動機と移動用電動機を含む複数の駆動用電動機と、夫々の駆動用電動機を制御するクレーン制御部と、クレーン制御部に接続された通信部を備えたクレーン装置において、通信部は、クラウドサーバに対して遠距離通信網を介して稼動情報を定期的に送信する機能と、可搬型の情報表示端末に対して近距離通信網を介して情報表示端末からの要請に応じて稼働情報を送信する機能を備えている。クレーン装置の最新の稼動情報をデータサーバに蓄積でき、更に稼動情報を必要に応じて可搬型の情報表示端末で閲覧できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも巻上用電動機と移動用電動機を含む複数の駆動用電動機と、夫々の前記駆動用電動機を制御するクレーン制御部と、前記クレーン制御部に接続された通信部を備えたクレーン装置において、
前記通信部は、
遠距離通信網を介して前記クレーン装置の稼動情報を定期的にクラウドサーバに対して送信する機能と、
近距離通信網を介して前記稼動情報を可搬型の情報表示端末からの要請に応じて前記情報表示端末に対して送信する機能と
を備えていることを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン装置において、
前記遠距離通信網は、インターネット通信網、電話回線通信網、及び前記インターネット通信網と前記電話回線通信網を組み合せた通信網の何れかであり、
前記近距離通信網は、Wi-Fi通信網、或いはBluetooth通信網の何れかである
ことを特徴とするクレーン装置。
【請求項3】
請求項2に記載のクレーン装置において、
前記通信部は、前記稼動情報を所定時間毎に定期的に前記クラウドサーバに送信し、
前記通信部は、前記情報表示端末からの要請に基づいて、前記稼動情報としての前記駆動用電動機の動作瞬時値を前記情報表示端末に送信する
ことを特徴とするクレーン装置。
【請求項4】
請求項1に記載のクレーン装置において、
前記通信部は、電源から直接的に電力が供給されている
ことを特徴とするクレーン装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクレーン装置において、
前記通信部には、前記駆動用電動機の電源である3相電源から電力供給線で電力が供給されるか、バッテリー電源から電力が供給される
ことを特徴とするクレーン装置。
【請求項6】
少なくとも巻上用電動機と移動用電動機を含む複数の駆動用電動機と、夫々の前記駆動用電動機を制御するクレーン制御部と、前記クレーン制御部に接続された通信部を備えたクレーン装置と、
前記通信部と遠距離通信網を介して接続され、前記クレーン装置の稼動情報を定期的に受信するクラウドサーバと、
前記通信部と近距離通信網を介して接続され、前記稼動情報の取得の要請を行い、この要請に応じた前記稼動情報を受信する可搬型の情報表示端末と
を備えていることを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記遠距離通信網は、インターネット通信網、電話回線通信網、及び前記インターネット通信網と前記電話回線通信網を組み合せた通信網の何れかであり、
前記近距離通信網は、Wi-Fi通信網、或いはBluetooth通信網の何れかである
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記通信部は、前記クレーン装置の前記稼動情報を所定時間毎に定期的に前記クラウドサーバに送信し、
前記通信部は、前記情報表示端末からの要請に基づいて、前記稼動情報としての前記駆動用電動機の動作瞬時値を前記情報表示端末に送信する
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項9】
請求項6に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記クラウドサーバと前記情報表示端末は、遠距離通信網で接続されている
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記遠距離通信網は、インターネット通信網、電話回線通信網、及び前記インターネット通信網と前記電話回線通信網を組み合せた通信網の何れかである
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項11】
少なくとも巻上用電動機と移動用電動機を含む複数の駆動用電動機と、夫々の前記駆動用電動機を制御するクレーン制御部と、前記クレーン制御部に接続された通信部を備えた、複数のクレーン装置と、
複数の前記クレーン装置の前記通信部と第1の近距離通信網で接続された情報集約通信部と、
前記情報集約通信部と遠距離通信網を介して接続され、前記クレーン装置の稼動情報を定期的に受信するクラウドサーバと、
複数の前記クレーン装置の前記通信部と第2の近距離通信網で接続され、前記稼動情報の取得の要請を行い、この要請に応じた前記稼動情報を受信する可搬型の情報表示端末と
を備えていることを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項12】
請求項11に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記遠距離通信網は、インターネット通信網、電話回線通信網、及び前記インターネット通信網と前記電話回線通信網を組み合せた通信網の何れかであり、
前記第1の近距離通信網、及び前記第2の近距離通信網は、Wi-Fi通信網、或いはBluetooth通信網の何れかである
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記情報集約通信部は、複数の前記クレーン装置の前記稼動情報を所定時間毎に定期的に前記クラウドサーバに送信し、
前記情報集約通信部は、前記情報表示端末からの要請に基づいて、前記稼動情報としての前記駆動用電動機の動作瞬時値を前記情報表示端末に送信する
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項14】
請求項11に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記クラウドサーバと前記情報表示端末は、前記遠距離通信網で接続されている
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項15】
請求項14に記載のクレーン制御システムにおいて、
前記遠距離通信網は、インターネット通信網、電話回線通信網、及び前記インターネット通信網と前記電話回線通信網を組み合せた通信網の何れかである
ことを特徴とするクレーン制御システム。
【請求項16】
少なくとも巻上用電動機と移動用電動機を含む複数の駆動用電動機と、夫々の前記駆動用電動機を制御するクレーン制御部と、前記クレーン制御部に接続された通信部を備えた、複数のクレーン装置と、
複数の前記クレーン装置の前記通信部と第1の近距離通信網で接続された情報集約通信部と、
前記情報集約通信部と遠距離通信網を介して接続され、前記クレーン装置の稼動情報を定期的に受信するクラウドサーバと、
前記情報集約通信部と第2の近距離通信網で接続され、前記稼動情報の取得の要請を行い、この要請に応じた前記稼動情報を受信する可搬型の情報表示端末と
を備えていることを特徴とするクレーン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーン装置、及びクレーン制御システムに係り、特に外部の情報機器と稼動情報等を送受信するクレーン装置、及びクレーン制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場等の建屋内には、製造された構造部品等の吊荷を鉛直方向に移動させる巻上用電動機、及び吊り下げた吊荷を天井側に設置されたレールに沿って移動させる移動用電動機を装備したクレーン装置が設置されている。
【0003】
巻上用電動機は建屋の天井に沿って敷設されたレールに沿って走行されるもので、巻上用電動機にはワイヤロープを巻き付けるロープドラムを備えている。このロープドラムは、巻上用電動機によって回転させられ、吊荷に連結されたワイヤロープを巻き取り、繰り出す機能を備えている。
【0004】
また、クレーン装置には、レール上を走行させるための移動用電動機が備えられており、この移動用電動機を駆動することにより、レールに沿って巻上用電動機が移動される。尚、以下では、巻上用電動機、移動用電動機の一方、或いは両方を、駆動用電動機とまとめて表記する場合もある。
【0005】
このようなクレーン装置においては、クレーン装置の稼動状況を把握して保守、管理を行うことが必要である。ところで、巻上用や移動用の駆動用電動機は、主に工場の天井に設置されており、その制御部も駆動用電動機と一体となっているのが一般的である。点検やトラブル対応等の保守、管理で、駆動用電動機の稼動情報を確認する場合、駆動用電動機の設置場所である天井に保守管理作業者が登る必要がある。このため、駆動用電動機の設置場所によっては、高所作業車を準備するなど、安全性の確保に時間を要することになる。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば特開2014-34260号公報(特許文献1)に記載されたクレーン管理システムが知られている。特許文献1では、駆動用電動機に設けた第1の情報処理装置で稼動情報を取得し、第1の制御装置の近傍に持ち運ばれた可搬型の第2の情報処理装置へ、収集した稼動情報を送信することで、駆動用電動機の設置場所である天井まで登らなくても、駆動用電動機の近傍の床面から、駆動用電動機の稼動情報を確認することができる。
【0007】
この特許文献1のクレーン管理システムにおいては、クレーン装置には巻上用、横行用、走行用のそれぞれの用途に応じた動作制御が可能な第1の情報処理装置が取り付けられており、第2の情報処理装置は、第1の情報処理装置の動作に関する情報の送信を第1の情報処理装置に対して要求し、この要求に応じて第1の情報処理装置から送信されてきた情報を受信すると共に、受信した情報をクレーン装置の動作情報として関連付けて自己の記憶手段に記憶する構成とされている。更に、第2の情報制御装置は、クラウドサーバ等の第3の制御装置と通信可能に設定する構成も可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-34260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1においては、第1の情報処理装置と第2の制御装置は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)といった近距離通信が可能な無線通信モジュールを搭載した通信機器を備えている。このため、第1の情報処理装置が送信する電波が届く範囲に、第2の情報処理装置を持ち運ばないと、各種の情報を収集することができない。例えば、第2の情報処理装置に搭載されている、クレーン装置の構成部品の残存寿命の演算を常時行うことができなく、クレーン装置の構成部品の寿命が経過した状態を見逃す恐れがある。
【0010】
また、第3の情報処理装置としてのクラウド等のデータサーバとインターネット通信によって通信を行なうことができるが、第3の情報処理装置は、第2の情報処理装置とのみ通信できる構成なので、第2の情報処理装置が、第1の情報処理装置から稼動情報を取得しないと、第3の情報処理装置に最新情報を送ることができず、第3の情報処理装置が最新の稼動情報を逐次取得できないという課題がある。
【0011】
例えば、上述のデータサーバの側で残存寿命の演算を行うにしても、第2の情報処理装置を第1の情報処理装置が送信する電波が届く範囲に、第2の情報処理装置を持ち運ばないと、残存寿命の演算を行うことができない。
【0012】
本発明の目的は、クレーン装置の稼動情報を逐次データサーバに蓄積でき、更に稼動情報を必要に応じて可搬型の情報表示端末で閲覧できるクレーン装置、及びクレーン制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも巻上用電動機と移動用電動機を含む複数の駆動用電動機と、夫々の駆動用電動機を制御するクレーン制御部と、クレーン制御部に接続された通信部を備えたクレーン装置において、通信部は、クラウドサーバに対して遠距離通信網を介してクレーン装置の稼動情報を定期的に送信する機能と、可搬型の情報表示端末に対して近距離通信網を介して情報表示端末からの要請に応じて稼働情報を送信する機能を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クレーン装置の最新の稼動情報をデータサーバに蓄積でき、更に稼動情報を必要に応じて可搬型の情報表示端末で閲覧できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用されるクレーン装置の全体構成を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態になるクレーン制御システムの構成を示すブロック図である。
図3図2に示すクレーン制御システムを簡略化した構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第2に実施形態になるクレーン制御システムを簡略化した構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第3に実施形態になるクレーン制御システムを簡略化した構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第4に実施形態になるクレーン制御システムを簡略化した構成を示すブロック図である。
図7】無線通信部への電源供給方法を示す回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0017】
図1は本発明が適用されるインバータ式クレーン装置の全体構成を示し、図2は本発明の実施形態になるクレーン制御システムの構成を示している。
【0018】
図1において、インバータ式クレーン装置は、クレーンフック1、ワイヤロープ2、巻上誘導電動機3、巻上用ドラム4、横行誘導電動機5、横行用車輪6、横行用ガーダ7、走行誘導電動機8、走行用車輪9、走行用ガーダ10、巻上・横行インバータ制御装置11、ケーブルに吊り下げられた操作入力装置12、走行用インバータ制御装置13等から構成されている。また、巻上誘導電動機3、横行誘導電動機5、及び走行誘導電動機8には、誘導電動機用ブレーキ14(図2参照)が各々に内蔵されている。
【0019】
インバータ式クレーン装置は、クレーンフック1に取り付けた吊荷を、巻上誘導電動機3によって回転する巻上用ドラム4により、ワイヤロープ2を巻き上げ/巻き下げすることで鉛直方向(Y方向、-Y方向の矢印で示す)、即ち上下方向に吊荷を移動する。また、横行用車輪6を横行誘導電動機5が回転させ、横行用ガーダ7に沿って左右方向(X方向、-X方向の矢印で示す)に移動する。更に、走行用車輪9を走行誘導電動機8が回転させ、走行用ガーダ10に沿って前後方向(Z方向、-Z方向の矢印で示す)に移動する。
【0020】
図2に示すように、巻上・横行インバータ制御装置11は、巻上・横行インバータ制御部15、巻上用インバータ16、横行用インバータ17が内蔵されている。また、走行用インバータ制御装置13には、走行インバータ制御部18、及び走行用インバータ19が内蔵されている。また、巻上・横行インバータ制御部15と走行インバータ制御部18とは通信線(有線)20によって接続されている。
【0021】
巻上誘導電動機3と横行誘導電動機5は、巻上・横行用インバータ制御装置11に格納された巻上・横行インバータ制御部15により制御される。即ち、オペレータが操作入力装置12から所定の指示を入力すると、巻上・横行インバータ制御部15は、巻上用インバータ16と横行用インバータ17を制御するため、巻上用インバータ16と横行用インバータ17に制御に必要な動作情報を与える。尚、巻上誘導電動機3には、エンコーダ21が取り付けられており、巻上誘導電動機3の回転情報を巻上・横行インバータ制御部15に入力している。
【0022】
そして、巻上用インバータ16と横行用インバータ17は、巻上誘導電動機3と横行誘導電動機5に必要な周波数、電圧、電流を加え、同時に誘導電動機用ブレーキ14を開放制御する。これによって、巻上用ドラム4の場合、クレーンフック1に取り付けられた吊荷が、落下することなく鉛直方向に移動させられ、また、横行用車輪6の場合、横行用ガーダ7に沿って横行用車輪6を左右方向に移動させる。
【0023】
同様に走行用車輪9に取り付けてある走行誘導電動機8は、オペレータが操作入力装置12からの所定の指示を入力すると、走行用インバータ制御装置13に格納された走行インバータ制御部18が走行用インバータ19を制御し、走行用インバータ19は走行誘導電動機8に必要な周波数、電圧、電流を加え、同時に誘導電動機用ブレーキ14を開放制御することで、走行用ガーダ10に沿って走行用車輪9を前後方向に移動させる。
【0024】
更に巻上・横行インバータ制御装置15には無線通信部22が設けられており、この無線通信部22は、通信線23によって巻上・横行インバータ制御部15と接続されている。また、走行インバータ制御部19は通信線20によって巻上・横行インバータ制御装置15に接続されている。したがって、走行インバータ制御部19、巻上・横行インバータ制御装置15におけるクレーン装置の稼動情報や、電動機の稼動情報(電流値や電流瞬時値等の動作情報)は無線通信部22に送られることになる。
【0025】
無線通信部22は、遠距離(遠隔)通信を行う遠距離通信部と、近距離通信を行う近距離通信部を備えており、定期的にクラウドサーバ24と通信を実行し、必要に応じて可搬型の情報表示端末26からの要請で情報表示端末26と通信を実行する。また、無線通信部22は遠距離通信を行う通信アンテナ22Lと近距離通信を行なう通信アンテナ22Sとが備えられている。
【0026】
無線通信部22は遠距離通信網によって、演算機能を備えるデータサーバから構成されたクラウドサーバ24の通信部25の通信アンテナ25Aに対して双方向で接続されている。また、このクラウドサーバ24の通信アンテナ25Aは、通信部を備えた可搬型の情報表示端末26とも遠距離通信網で接続されている。更に、無線通信部22は、近距離通信網によって、可搬型の情報表示端末26に対して双方向で接続されている。情報表示端末25の通信部27は、遠距離通信を行う通信アンテナ27Lと近距離通信を行なう通信アンテナ27Sとが備えられている。
【0027】
遠距離通信網としては、インターネット通信網、電話回線通信網、及びこれらを組み合わせた通信網を使用することができる。また、近距離通信網としては、Wi-Fi通信網やBluetooth通信網を使用することができる。
【0028】
次に、クレーン装置の巻上・横行インバータ制御部15と、クラウドサーバ24と、情報表示端末25との稼動情報等の流れについて、簡略化した図3図4に基づいて説明を加える。図3図4は実質的に同じ構成であるが、異なるのは走行インバータ制御部18が、無線通信部22と直接的に通信線20で接続されている点である。このため、以下では図3を用いて説明を進める。
【0029】
図3において、クラウドサーバ24の通信部25は、特許文献1に示されている管理システムとは異なり、巻上・横行インバータ装置15や走行インバータ制御部18が設置されている工場に赴くことなく、工場とは離れた遠隔地に設置されているクラウドサーバ24でクレーン装置の稼動情報を取得することができる。
【0030】
クラウドサーバ24は、所定時間毎に定期的にクレーン装置の最新の稼動情報を取得して記憶部(図示せず)に更新、記憶する機能を備えている。更には、編集機能をも備えており、グラフ等の作成を行うことができる。このように、クラウドサーバ24は、クレーン装置の最新の稼動情報を保持することが可能となる。
【0031】
クレーン装置の側の無線通信部22とクラウドサーバ24の側の通信部25とは、遠距離通信網28で通信が行われる。遠距離通信網としては、上述の通りインターネット通信網、電話回線通信網、及びこれらを組み合わせた通信網を使用することができる。尚、これ以外の遠距離通信ができる通信網を使用することも可能である。
【0032】
情報表示端末27は2系統の通信機能を備えており、1つは遠距離通信網28であり、この通信網は、インターネット通信網、電話回線通信網、及びこれらを組み合わせた通信網を使用することができる。もう1つの通信網は、近距離通信網29であり、Wi-Fi通信網やBluetooth通信網を使用することができる。
【0033】
近距離通信網29は、保守管理作業者が情報表示端末26をクレーン装置まで持ち運ぶことによって、通信を確立することができる。尚、この近距離通信網29は通信費用が発生しないので、多量の稼動情報を送信するのに適している。また、直接的に情報表示端末26で表示させる稼動情報を伝送することができる。情報表示端末26としては、タブレット端末や、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等を使用することができる。
【0034】
以上において、クレーン装置の稼動情報は巻上・横行インバータ制御部15や走行インバータ制御部18で取得される。取得した稼動情報は、図3に示すように有線の通信線23により、無線通信部21へ送信される。ここで、走行インバータ制御部18で取得した稼動情報は、有線の通信線20を介し、巻上・横行インバータ制御部15へ送信しても良いし、図4に示すように、直接的に無線通信部22へ送信しても良い。
【0035】
無線通信部22は、取得した稼動情報を遠隔通信網28でクラウドサーバ24へ送信される。ここで、稼動情報は、クレーン装置の稼働時間、クレーン装置の稼動回数、クレーン装置のエラー情報等のような比較的長い時間間隔でサンプリングされる稼動情報であり、これらは所定時間毎に定期的にクラウドサーバ24に送信される。尚、これらの稼動情報は、単位時間当たりの情報量としては少ないものであり、遠距離通信網28の通信費用を低く抑えることができる。
【0036】
クラウドサーバ24は、受信した稼動情報を保存すると共に、稼動情報から表示用の画面データやグラフデータを編集、作成することができる。そして、クラウドサーバ24で作成された画面データやグラフデータは、保守管理作業者の情報表示端末26からの要求によって、遠距離通信網28を介して情報表示端末26に送信される。
【0037】
情報表示端末26においては、受診された画面データやグラフデータを保守管理作業者が閲覧できるように、情報表示端末26の表示画面に表示する。また、例えば、クレーン装置の仕様などを情報表示端末26で編集し、遠距離通信網28を介して、この編集情報をクラウドサーバ24へ送信して保存することもできる。
【0038】
一方、稼動情報として運転時の電動機の電流値等の動作瞬時値は、保守、管理を行う上で、保守管理作業者がオンラインで必要に応じて把握したい情報である。仮に、特許文献1のように、クレーン装置から遠距離通信網28を介してクラウドサーバ24に電動機の動作瞬時値を送信し、更にクラウドサーバ24から遠距離通信網28を介して情報表示端末26に送信する場合、無線通信部22とクラウドサー24の間の通信頻度を上げるか、動作瞬時値を無線通信部21に蓄積させ、ある程度まとめてクラウドサーバ24へ送信することが考えられる。しかしながら、このような方法だと通信で送る情報量が大きくなり、情報の即時性の低下や通信費用が高騰するという課題を生じる。
【0039】
そこで、情報表示端末26とクレーン装置の無線通信部22とを、Wi-Fi通信網やBluetooth通信網等の近距離通信網29で接続し、上述の動作瞬時値については、情報表示端末26からの要請に応じて直接的に情報表示端末26へ送信する構成とされている。これによって、情報の即時性の低下や通信費用の高騰といった課題を解決することができる。
【0040】
ここで、情報表示端末26が近距離通信網29で接続するクレーン装置側の無線通信部22の選択は、情報表示端末26の側で設定しても良いし、クラウドサーバ24から遠隔通信網28で取得した切換情報から設定しても良い。
【0041】
このように、本実施形態によれば、クレーン装置の稼動情報を遠距離通信で、定期的にデータサーバに送信して稼動情報をデータサーバに蓄積、更新し、更に近距離通信で、情報表示端末26からの要請に応じて情報表示端末に送信して必要に応じて稼動情報を閲覧できる。
【0042】
これによれば、クレーン装置の最新の稼動情報をデータサーバに定期的に蓄積可能となり、クレーン装置の稼働状態を常時監視することができるので、遠隔での監視を精度良く実施することができ、更に電動機の電流値の動作瞬時値のような情報量が多い動作情報を、必要に応じて可搬型の情報表示端末で閲覧でき、情報の即時性を向上すると共に、通信費用を可及的に低減できるという効果を奏する。
【0043】
以上の説明は、個々のクレーン装置に外部の情報機器を接続する形態であったが、複数のクレーン装置をまとめて外部の情報機器と接続することも可能である。この方法だと通信費用を総合的に低く抑えることが可能となる。以下その具体例を説明する。
【0044】
図5において、図2に示す巻上・横行インバータ制御装置11と走行用インバータ制御装置13からなるクレーン制御部30は、Wi-Fi通信網やBluetooth通信網等の近距離通信網31によって情報集約通信部32と接続されている。したがって、夫々のクレーン制御部30の稼動情報は、近距離通信網31を介して情報集約通信部32で収集される。この情報集約通信部32は、例えば工場の通信を妨害されない位置(家屋の天井付近)に配置される。
【0045】
また、情報集約通信部32は、先に説明した通り遠距離通信網28を介してクラウドサーバ24と接続されている。更に、夫々のクレーン制御部30は、これも先に説明した通り近距離通信網29を介して情報表示端末26に接続されている。
【0046】
情報集約通信部32は、夫々のクレーン制御部30の個別の識別情報を付加してクレーン装置の稼動情報をクラウドサーバ24に送信する。稼動情報は先に説明した通り、クレーン装置の稼働時間、クレーン装置の稼動回数、クレーン装置のエラー情報等のような比較的長い時間間隔でサンプリングされる動作情報であり、これらは所定時間毎に定期的にクラウドサーバ24に送信される。そして、クラウドサーバ24では、識別情報を参考にして夫々のクレーン装置毎に稼動情報を蓄積、記憶し、更に編集を行うことができる。
【0047】
また、情報表示端末26は、近距離通信網29を介して夫々のクレーン制御部30と接続されている。そして、情報表示端末26の側でクレーン制御部30を指定することで、指定されたクレーン制御部30と近距離通信網29を介して通信を実行することができる。この場合は、先に述べた通り保守、管理を行う上で、保守管理作業者がオンラインで把握したい運転時の電動機の電流値等の動作瞬時値が情報表示端末26に送信される。
【0048】
上述の図5に示す実施形態では、保守管理作業者がオンラインで把握したい運転時の電動機の電流値等の動作瞬時値が情報表示端末26に送信されるが、情報集約通信部32に送ることも可能である。
【0049】
図6において、クレーン装置の稼動情報に加えて、保守管理作業者がオンラインで把握したい運転時の電動機の電流値等の動作瞬時値も情報集約通信部32に送信されている。この状態で情報表示端末26から動作瞬時値の送信要求があると、情報集約通信部32は、求められたクレーン装置の動作瞬時値を情報表示端末26に送信する。この実施例でも、近距離通信網31、29を利用しているので通信費用は発生せず、また情報の即時性も損なうことがないものである。
【0050】
次に、クレーン装置における無線通信部22の電源供給方式について説明する。インバータ式クレーン装置は、運転操作を実施しないときは入力装置のオフボタンを操作することで、インバータ式クレーン装置の電源供給部に設置されている主電源開閉器を操作して、インバータ式クレーン装置への電源供給を遮断するのが一般的である。
【0051】
ただ、この場合は無線通信部22の電源も遮断されるので、クラウドサーバ24との遠距離通信網28の実行タイミングによっては、最新の稼動情報をクラウドサーバ24に送信できないという現象が発生する。
【0052】
本実施形態では、この現象を解消するために図7に示す構成を採用している。図7に示すように、クレーン制御部30は主電源開閉器33を介して3相電源に接続されている。したがって、3相電源34からの電力は、クレーン制御部30に供給される。主電源開閉器33は、電磁リレー35によって制御され、電磁リレー35は、入力装置(起動ボタン)35の操作によって動作される。
【0053】
したがって、入力装置35をオフすると、電磁リレー35によって主電源開閉器がオフされ、クレーン制御部30の電力供給が遮断される。一方、無線通信部22は、3相電源34と無線通信部22を繋ぐ電力供給線37によって電力が直接的に供給されるので、通信が可能な状態に維持される。これによって、クレーン装置の最新の稼動情報をクラウドサーバ24に送信することが可能となる。
【0054】
尚、上述の電力供給線37とは別に、入力装置36の操作によっても電源が遮断されない構成、例えばバッテリー電源を設け、そこから直接的に無線通信部22に電力を供給する構成にしても良い。
【0055】
以上述べた通り、クラウドサーバによってクレーン装置の最新の稼動情報をいつでも取得可能になり、クレーン装置の状態を常時監視することができるので、遠隔での状態監視を精度良く実施することができる。更に、同一の場所に設置された複数台のクレーン装置の夫々の状態を監視する場合、クラウドサーバと通信を実施する情報集約通信部を設け、クレーン装置と情報集約通信部を近距離通信網で接続して集約することで、総合的に通信費用を抑えることができる。
【0056】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
11…巻上・横行インバータ装置、12…入力装置、13…走行用インバータ装置、14…誘導電動機用ブレーキ、15…巻上・横行インバータ制御部、16…巻上用インバータ、17…横行用インバータ、18…走行インバータ制御部、19…走行用インバータ、20…通信線、22…無線通信部、23…通信線、24…クラウドサーバ、25…通信部、26…情報表示端末、27…通信部、28…遠距離通信網、29…近距離通信網、30…クレーン制御部、31…近距離通信網、32…情報集約通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7