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特開2023-179090炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179090
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G21C17/00 220
G21C17/00 210
G21C17/00 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092154
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山路 和也
(72)【発明者】
【氏名】小池 啓基
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075CA08
2G075EA08
2G075FB07
2G075FB18
2G075FC05
2G075GA16
(57)【要約】
【課題】短時間で効率よく炉心計算を実行する方法を提供する。
【解決手段】炉心計算方法は、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、
前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、
を有する炉心計算方法。
【請求項2】
前記所定の収束条件は、前記簡易な核熱反復計算で算出した前記出力分布の実効増倍率の残差が所定の閾値以下となることである、
請求項1に記載の炉心計算方法。
【請求項3】
簡易な熱水力モデルはクローズドチャネルモデル、簡易な共鳴計算モデルは非均質断面積テーブルである、
請求項1又は請求項2に記載の炉心計算方法。
【請求項4】
詳細な熱水力モデルはオープンチャネルモデル、詳細な共鳴計算モデルはRSE(Resonance Calculation using Energy Spectral Expansion based on Reduced Order Model)法である、
請求項1又は請求項2に記載の炉心計算方法。
【請求項5】
前記簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップでは、前記簡易な熱水力モデル、前記簡易な共鳴計算モデルおよび簡易な3次元輸送計算モデルに基づいて前記簡易な核熱反復計算を行い、前記出力分布を算出し、
前記詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップでは、前記詳細な熱水力モデル、前記詳細な共鳴計算モデルおよび詳細な3次元輸送計算モデルに基づいて、前記詳細な核熱反復計算を行い、前記出力分布を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の炉心計算方法。
【請求項6】
簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出する手段と、
前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出する手段と、
を有する炉心計算装置。
【請求項7】
コンピュータに、
簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、
前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の状態を評価するために炉心計算が行われる(例えば、特許文献1)。炉心計算では、熱水力計算、共鳴計算、3次元輸送計算などを繰り返し実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-133581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炉心計算の計算負荷は高く、最終的な計算結果が得られるまでに多くの時間が必要になる。効率よく短時間で炉心計算を実行する方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る炉心計算方法は、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、を有する。
【0007】
本開示に係る炉心計算装置は、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出する手段と、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出する手段とを有する。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムによれば、短時間で炉心計算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る炉心計算装置の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る炉心計算の一例を示すフローチャートである。
図3】実施形態の炉心計算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の炉心計算装置について、図1図3を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る炉心計算装置の一例を示すブロック図である。
炉心計算装置10は、短時間で精度よく炉心計算を行う。炉心計算装置10は、入力受付部11と、制御部12と、記憶部13と、を備える。
【0012】
入力受付部11は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等の入力装置を用いて入力された情報や指示などを受け付ける。例えば、入力受付部11は、炉心計算に必要なパラメータの入力を受け付ける。入力受付部11は、受け付けた情報を記憶部13に記録したり、制御部12へ出力したりする。
【0013】
制御部12は、PWR(Pressurized Water Reactor:加圧水型原子炉)の炉心計算を実行する。炉心計算では、後に図2を用いて説明するように、3次元輸送計算で算出した出力分布などに基づいて燃料温度や減速材密度などを算出する熱水力計算と、熱水力計算によって算出した燃料温度や減速材密度などに基づいて原子炉内の実効断面積などを算出する共鳴計算と、共鳴計算によって算出した実効断面積などに基づいて、原子炉内の出力分布や実効倍増率などを計算する3次元輸送計算を繰り返し実行する(核熱反復計算)。制御部12は、核熱反復計算を繰り返す過程で、計算負荷が低い簡易な核熱反復計算と、簡易な核熱反復計算に比べて計算負荷は高くなるが計算精度を向上することができる詳細な核熱反復計算を適宜使い分け、計算精度を確保しつつ短時間で、効率よく炉心計算を実行する。
【0014】
制御部12は、簡易計算部121と、詳細計算部122と、選択部123と、を有している。簡易計算部121は、簡易な熱水力モデルに基づく簡易熱水力計算と、簡易な共鳴計算モデルに基づく簡易共鳴計算と、3次元輸送計算とを実行する。簡易熱水力計算とは、例えば、原子炉内における燃料の周辺の冷却水の流れについて、垂直方向(下から上)の流れのみに注目したクローズドチャンネルモデルに基づいて熱水力計算を行う方法である。簡易共鳴計算とは、例えば、単一集合体計算にて、予め装荷される燃料パターンに基づいて計算しておいた断面積を登録した非均質断面積テーブルを参照して共鳴計算を行う方法である。
【0015】
詳細計算部122は、詳細な熱水力モデルに基づく詳細熱水力計算と、詳細な共鳴計算モデルに基づく詳細共鳴計算と、3次元輸送計算とを実行する。詳細熱水力計算とは、例えば、燃料周辺の冷却水の流れについて、垂直方向だけではなく水平方向の流れを考慮して炉心の熱的な挙動を解析するオープンチャンネルモデルに基づいて熱水力計算を行う方法である。詳細共鳴計算とは、例えば、装荷される燃料パターンに基づいて全炉心体系で共鳴計算を行うことが可能なRSE(Resonance Calculation using Energy Spectral Expansion based on Reduced Order Model)法である。3次元輸送計算については、簡易計算部121が実行する計算方法と同様である。
【0016】
なお、上記した簡易熱水力計算、簡易共鳴計算、詳細熱水力計算、詳細共鳴計算、3次元輸送計算を実行するコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する。)は何れも公知である。また、上記した簡易熱水力計算、簡易共鳴計算、詳細熱水力計算、詳細共鳴計算の内容は一例であって、これに限定されない。水力計算を行うプログラムを任意に2つ用意して、相対的に計算負荷は高くなるが精度よく計算できるプログラムを詳細熱水力計算用のプログラム、精度は劣るが計算負荷が低いプログラムを簡易熱水力計算用のプログラムとすることができる。共鳴計算を行うプログラムについても相対的に精度の良いプログラムを詳細共鳴計算用のプログラム、精度が劣っても計算負荷が低いプログラムを簡易共鳴計算用のプログラムとすることができる。
【0017】
選択部123は、切り替え条件に基づいて、簡易な核熱反復計算と詳細な核熱反復計算の何れを用いて炉心計算を実行するかを選択する。例えば、N回とM回の割合で、簡易な核熱反復計算と詳細な核熱反復計算を実行するような切り替え条件が設定されている場合、選択部123は、簡易な核熱反復計算がN回連続して実行されると、その後、詳細な核熱反復計算をM回連続して実行すると判定する。また、選択部123は、核熱反復計算の初期には簡易な核熱反復計算を行い、炉心計算(核熱反復計算)がある程度収束した段階で詳細な核熱反復計算を行うよう計算方法を選択する。例えば、選択部123は、核熱反復計算の1回ごとに実効倍増率を比較し、残差が所定の閾値以下(例えば1E-4以下)となるまでは簡易な核熱反復計算を実行すると判定し、残差が所定の閾値以下となった以降は詳細な核熱反復計算を実行すると判定する。残差とは、核熱反復計算n回目の実効倍増率とn-1回目の実効倍増率の差である。制御部12は、選択部123が選択した方法で、炉心計算を行う。
【0018】
記憶部13は、炉心計算に必要な各種データ、簡易熱水力計算、簡易共鳴計算、詳細熱水力計算、詳細共鳴計算、3次元輸送計算の各プログラム、計算中のデータなどを記憶する。
【0019】
(動作)
次に図2を用いて、本実施形態の炉心計算の流れを説明する。
図2は、実施形態に係る炉心計算の一例を示すフローチャートである。
まず、オペレータが炉心計算に必要な各種のパラメータ(初期状態の原子炉に関するパラメータ等)を炉心計算装置10に入力し、炉心計算の開始を指示する。入力受付部11は、入力されたパラメータを取得して、記憶部13に記録するとともに、制御部12へ炉心計算の開始を指示する。制御部12は、炉心計算を開始する。図2に示す炉心計算の処理フローでは、計算に必要な初期パラメータを適切に与えることで、熱水力計算、共鳴計算、3次元輸送計算のどこからでも開始することが可能であるが、ここでは、便宜的に熱水力計算から開始することとして説明を行う。また、事前にオペレータは、簡易な核熱反復計算と詳細な核熱反復計算の切り替え条件を設定し、この条件は記憶部13に記録されている。
【0020】
まず、選択部123が、これから実行する核熱反復計算の計算方法を選択する(ステップS1)。選択部123は、記憶部13に事前に設定された切り替え条件を参照して、計算方法の選択を行う。炉心計算の開始時には、選択部123は、簡易な核熱反復計算を選択する。制御部12は、選択部123の選択に基づいて、簡易計算部121に簡易な核熱反復計算の実行を指示する。簡易計算部121は、簡易熱水力計算を実行する(ステップS2)。簡易計算部121は、簡易熱水力計算によって算出された燃料温度と減速材密度などを出力し(ステップS3)、記憶部13にこれらの値を記録する。次に簡易計算部121は、ステップS2の計算結果である燃料温度と減速材密度などを利用して、簡易共鳴計算を実行する(ステップS4)。簡易計算部121は、簡易共鳴計算によって算出された実効断面積などを出力し(ステップS8)、出力した値を記憶部13に記録する。次に簡易計算部121は、ステップS4の計算結果である実効断面積などを利用して、3次元輸送計算を実行する(ステップS9)。簡易計算部121は、3次元輸送計算によって算出された原子炉内の出力分布、その出力分布における実効倍増率などを出力し(ステップS10)、出力した値を記憶部13に記録する。以上で簡易な核熱反復計算による1回の核熱反復計算が完了する。
【0021】
次に選択部123は、次に実行する核熱反復計算の計算方法を選択する(ステップS1)。例えば、切り替え条件として、(A)5回簡易な核熱反復計算を実行し、その後、1回詳細な核熱反復計算を実行するように設定されている場合、選択部123は、2回目も簡易な核熱反復計算を選択する。この場合、簡易計算部121は、S9の計算結果である出力分布などを利用して、簡易熱水力計算(S2)を実行し、上記と同様にして簡易な核熱反復計算を実行する。(A)の切り替え条件の場合、選択部123は、3~5回目についても簡易な核熱反復計算を選択し、6回目については詳細な核熱反復計算を選択し、その後も同様にして5:1の割合で計算方法の選択を行う。また、切り替え条件として、(B)実効倍増率の残差が所定の閾値以下の場合に詳細な核熱反復計算を行うように設定されている場合、選択部123は、前回(今回をn回目とするとn-1回目)の3次元輸送計算で算出された実効倍増率を記憶部13から読み出して、今回(n回目、つまり直前のステップS9~S10)で計算・出力された実効倍増率の差を計算し、その差が閾値以下であれば、炉心計算(核熱反復計算)が収束しつつあると判断して、詳細な核熱反復計算を選択する。また、切り替え条件として(A)と(B)の両方が設定されている場合、選択部123は、炉心計算(核熱反復計算)の初期の段階では(A)の切り替え条件に基づいて、計算方法の選択を行い、実効倍増率が(B)の切り替え条件を満たすようになると、それ以降は詳細な核熱反復計算を選択する。
【0022】
詳細な核熱反復計算が選択された場合、制御部12は、詳細計算部122に詳細な核熱反復計算の実行を指示する。詳細計算部122は、ステップS9の計算結果である出力分布などを利用して、詳細熱水力計算を実行する(ステップS5)。詳細計算部122は、詳細熱水力計算によって算出された燃料温度と減速材密度などを出力し(ステップS6)、記憶部13にこれらの値を記録する。次に詳細計算部122は、ステップS5の計算結果である燃料温度と減速材密度などを利用して、詳細共鳴計算を実行する(ステップS7)。詳細計算部122は、詳細共鳴計算によって算出された実効断面積などを出力し(ステップS8)、出力した値を記憶部13に記録する。次に詳細計算部122は、ステップS7の計算結果である実効断面積などを利用して、3次元輸送計算を実行する(ステップS9)。詳細計算部122は、3次元輸送計算によって算出された炉内の出力分布、実効倍増率などを出力し(ステップS10)、出力した値を記憶部13に記録する。以上で詳細な核熱反復計算による1回の核熱反復計算が完了する。
【0023】
以降も同様にして、選択部123が計算方法を選択し(ステップS1)。制御部12は、その選択結果に応じて、簡易な核熱反復計算又は詳細な核熱反復計算を実行する。そして、所定の終了条件を満たすようになると、制御部12は、図2のフローチャートの処理を終了する。例えば、制御部12は、詳細な核熱反復計算の結果(減速材密度、出力分布、実効倍増率などの値)が収束(例えば、各パラメータの値の残差が閾値以下となる。)すると、炉心計算(核熱反復計算)を終了する。このように、簡易な核熱反復計算によって、炉心計算がある程度の収束するまで計算し、その後は、詳細な核熱反復計算によって精度よく計算を行う。これにより、炉心計算の精度を低下させることなく、計算負荷、計算時間を低減することができる。
【0024】
(効果)
以上、説明したように、本実施形態によれば、簡易な核熱反復計算と詳細な核熱反復計算を組み合わせて炉心計算を行う。これにより、詳細な核熱反復計算だけを実行する場合と比べて、炉心計算を短時間で完了することができる。また、簡易な核熱反復計算だけを実行する場合と比べて、高精度に炉心計算を実行することができる。つまり、本実施形態によれば、計算精度を確保しつつ短時間で、効率よく炉心計算を実行することができる。実際に出願人が本実施形態の炉心計算を検証したところ、計算時間を大幅に短縮しつつ、詳細な核熱反復計算だけを行った場合と比較しても同程度の精度で計算結果(出力分布など)が得られることが確認できた。
【0025】
なお、上記の実施形態では、3次元輸送計算については、簡易な核熱反復計算と詳細な核熱反復計算とで同様の計算を実行することとしたが、3次元輸送計算についても簡易な計算方法(簡易な3次元輸送計算モデルに基づく簡易3次元輸送計算)と詳細な計算方法(詳細な3次元輸送計算モデルに基づく詳細3次元輸送計算)を用意して、簡易熱水力計算、簡易共鳴計算、簡易3次元輸送計算によって、簡易な核熱反復計算を構成し、詳細熱水力計算、詳細共鳴計算、詳細3次元輸送計算によって、詳細な核熱反復計算を構成してもよい。また、BWR(Boiling Water Reactor:沸騰水型原子炉)についても、本実施形態と同様の考え方で、簡易な核熱反復計算と詳細な核熱反復計算を組み合わせた炉心計算を適用することができる。また、(B)の切り替え条件として、実行倍増率の残差が閾値以下となることとしたが、収束状況を判断する条件として、他のパラメータ(例えば、燃料温度、減速材密度、実効断面積、出力分布など)に注目し、他のパラメータの残差を実行倍増率と同様に計算して、残差が閾値以下であれば簡易な核熱反復計算から詳細な核熱反復計算へ切り替えることとしてもよい。また、上記の実施形態では、簡易計算部121と詳細計算部122の各々が、同様の3次元輸送計算を実行する(ステップS9)こととしたが、例えば、3次元輸送計算部124といった機能部を設け、簡易計算部121が簡易熱水力計算(ステップS2)と簡易共鳴計算(ステップS4)を実行し、詳細計算部122が詳細熱水力計算(ステップS5)と詳細共鳴計算(ステップS7)を実行し、3次元輸送計算部124が、3次元輸送計算(ステップS9)を実行し、出力分布や実効倍増率を出力(ステップS10)するように構成してもよい。
【0026】
図3は、炉心計算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の炉心計算装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。また、炉心計算装置10は、複数のコンピュータ900によって構成されてもよい。例えば、図1の詳細計算部122だけを別体のコンピュータに実装した2台構成としてもよいし、簡易熱水力計算、簡共鳴計算、詳細熱水力計算、詳細鳴計算、3次元輸送計算の各プログラムをそれぞれ1台ずつのコンピュータに実装した構成としてもよい。
【0027】
炉心計算装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0028】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0029】
<付記>
実施形態に記載の炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0030】
(1)第1の態様に係る炉心計算方法は、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、を有する。
これにより、計算精度の低下を防ぎつつ短時間で炉心計算を実行することができる。例えば、N回の簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づく簡易な核熱反復計算の後に、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算をM回行うことで、常に詳細な核熱反復計算を行う場合よりも高速に(短時間で)炉心計算を進めることができる。また、簡易な核熱反復計算によって計算が収束しつつあると判断された後(例えば、出力分布の実効増倍率の残差が所定の閾値以下となった後)には、詳細な核熱反復計算を行うことで、計算精度を確保することができる。
【0031】
(2)第2の態様に係る炉心計算方法は、(1)の炉心計算方法であって、前記所定の収束条件は、前記簡易な核熱反復計算で算出した前記出力分布の実効増倍率の残差が所定の閾値以下となることである。
これにより、簡易な核熱反復計算の収束状況を判断し、詳細な核熱反復計算へ切り替えることができ、計算精度を維持することができる。
【0032】
(3)第3の態様に係る炉心計算方法は、(1)~(2)の炉心計算方法であって、簡易な熱水力モデルはクローズドチャネルモデル、簡易な共鳴計算モデルは非均質断面積テーブルである。
これにより、計算負荷を小さくして高速に炉心計算を実行することができる。
【0033】
(4)第4の態様に係る炉心計算方法は、(1)~(3)の炉心計算方法であって、詳細な熱水力モデルはオープンチャネルモデル、詳細な共鳴計算モデルはRSE(Resonance Calculation using Energy Spectral Expansion based on Reduced Order Model)法である。
これにより、高精度に炉心計算を実行することができる。
【0034】
(5)第5の態様に係る炉心計算方法は、(1)~(4)の炉心計算方法であって、前記簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップでは、前記簡易な熱水力モデル、前記簡易な共鳴計算モデルおよび簡易な3次元輸送計算モデルに基づいて前記簡易な核熱反復計算を行い、前記出力分布を算出し、前記詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップでは、前記詳細な熱水力モデル、前記詳細な共鳴計算モデルおよび詳細な3次元輸送計算モデルに基づいて、前記詳細な核熱反復計算を行い、前記出力分布を算出する。
これにより、炉心計算の計算時間をさらに短縮化することができる。
【0035】
(6)第6の態様に係る炉心計算装置は、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出する手段と、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出する手段と、を有する。
【0036】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータに、簡易な熱水力モデルおよび簡易な共鳴計算モデルに基づいて簡易な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、前記簡易な核熱反復計算の計算結果が所定の収束条件を満たすか、又は、前記簡易な核熱反復計算N回の実行後にM回、詳細な熱水力モデルおよび詳細な共鳴計算モデルに基づいて詳細な核熱反復計算を行い、出力分布を算出するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0037】
10・・・炉心計算装置
11・・・入力受付部
12・・・制御部
121・・・簡易計算部
122・・・詳細計算部
123・・・選択部
13・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3