(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179096
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】異音解析方法及び異音解析システム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231212BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20231212BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01M17/007 J
G01M99/00 Z
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092161
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくする。
【解決手段】コンピュータ(120)に異音を含む入力音を入力する工程(ステップS201)と、コンピュータが推定異音の原因とその確率を出力する工程(ステップS203)と、ユーザが異音を確認するためにコンピュータが推定異音のみを原因の確率に応じて出力する工程(ステップS204)と、を備える異音解析方法を提供する。さらに、ユーザが確認した推定異音のみを除去した合成入力音に異音が含まれないことを、ユーザが聞いて確認するためにコンピュータが合成入力音を出力する工程(ステップS206)と、を備える異音解析方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに異音を含む入力音を入力する工程と、
前記コンピュータが推定異音の原因とその確率を出力する工程と、
ユーザが前記異音を確認するために前記コンピュータが前記推定異音のみを原因の確率に応じて出力する工程と、を備える異音解析方法。
【請求項2】
さらに、前記ユーザが確認した前記推定異音のみを除去した合成入力音に前記異音が含まれないことを、前記ユーザが聞いて確認するために前記コンピュータが前記合成入力音を出力する工程と、を備える請求項1に記載の異音解析方法。
【請求項3】
前記推定異音のみを出力する工程において、前記コンピュータが前記推定異音を前記入力音の前記異音より大きくして出力する、請求項1に記載の異音解析方法。
【請求項4】
前記合成入力音を出力する工程において、前記ユーザが、前記異音が含まれないことを確認できないとき、前記コンピュータが前記原因を半確定にし、別の原因があることを示唆する、請求項2に記載の異音解析方法。
【請求項5】
前記合成入力音を出力する工程において、前記ユーザが、前記異音が含まれないことを確認できたとき、前記コンピュータが前記原因を確定する、請求項2に記載の異音解析方法。
【請求項6】
前記入力音は、暗騒音を含む、請求項1に記載の異音解析方法。
【請求項7】
前記コンピュータは、暗騒音を含まない前記異音の原因が特定されている音で教師あり機械学習されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異音解析方法。
【請求項8】
異音を含む入力音が入力され、推定異音の原因とその確率を出力するコンピュータであって、ユーザが前記異音を確認するために前記推定異音のみを原因の確率に応じて出力するコンピュータと、を備える異音解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異音解析方法及び異音解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周囲の音から注目する音を解析するための音解析システムが開発されてきた。特許文献1では、時間/周波数変換手段で入力信号をフレーム毎に分析し振幅スペクトルと位相スペクトルに変換することが記載されている。さらに、特許文献1では、雑音らしさ分析手段が判定した入力信号フレームの雑音らしさの結果に基づき、雑音振幅スペクトル算出手段で、そのフレームの入力振幅スペクトルを用い雑音振幅スペクトルを算出する。また、スペクトル補正ゲイン算出手段で、入力振幅スペクトルと雑音振幅スペクトルとそれぞれの所定係数を用いて雑音振幅スペクトル補正ゲインと雑音除去スペクトル補正ゲインを算出する。また、スペクトル減算手段で、雑音振幅スペクトルに雑音振幅スペクトル補正ゲインを乗じ、入力振幅スペクトルから減算して第1の雑音除去スペクトルを出力する。そして特許文献1は、スペクトル振幅減圧手段が第1の雑音除去スペクトルに、雑音除去スペクトル補正ゲインを乗じて出力した第2の雑音除去スペクトルを周波数/時間変換手段で時間軸信号に変換することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように雑音信号を除去し、注目する音を明瞭化することがなされてきた。自動車の車内で取得した音にも暗騒音が含まれ、異音の原因を特定するには、暗騒音を除去した方が特定しやすいとの考えに基づくものである。そこで、本開示の目的は、ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくするために、コンピュータが推定異音のみを原因の確率に応じて出力する異音解析方法を提供することである。
【0005】
さらに、ユーザが異音と感じている音は大きさだけで特定できるものではなく、ユーザが暗騒音を含む異音を直接識別して特定する方が確実である。そこで、本開示のさらなる目的は、さらにユーザが異音を確認するために、ユーザが確認した推定異音のみを除去した合成入力音を出力する異音解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の異音解析方法は、
コンピュータに異音を含む入力音を入力する工程と、
前記コンピュータが推定異音の原因とその確率を出力する工程と、
ユーザが前記異音を確認するために前記コンピュータが前記推定異音のみを原因の確率に応じて出力する工程と、を備える異音解析方法である。
【0007】
上記構成によれば、コンピュータが推定異音のみを異音の原因の確率に応じて出力することで、ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくすることができる。
【0008】
また、本開示の異音解析方法は、
さらに、前記ユーザが確認した前記推定異音のみを除去した合成入力音に前記異音が含まれないことを、前記ユーザが聞いて確認するために前記コンピュータが前記合成入力音を出力する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ユーザが確認した推定異音のみを除去した合成入力音をユーザが聞いて、さらにユーザが異音を確認することができる。
【0010】
また、本開示の異音解析方法は、
前記推定異音のみを出力する工程において、前記コンピュータが前記推定異音を前記入力音の前記異音より大きくして出力することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、推定異音を入力音の異音より大きくして出力することで、ユーザが異音を確認しやすくなる。
【0012】
また、本開示の異音解析方法は、
前記合成入力音を出力する工程において、前記ユーザが、前記異音が含まれないことを確認できないとき、前記コンピュータが前記原因を半確定にし、別の原因があることを示唆することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、ユーザが、合成入力音に異音が含まれないことを確認できないとき、原因を半確定にし、別の原因があることが示唆することができる。
【0014】
また、本開示の異音解析方法は、
前記合成入力音を出力する工程において、前記ユーザが、前記異音が含まれないことを確認できたとき、前記コンピュータが前記原因を確定することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、ユーザが、合成入力音に異音が含まれないことを確認できたとき、原因を確定することができる。
【0016】
また、本開示の異音解析方法は、
前記入力音は、暗騒音を含むことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ユーザは、異音が発生した使用中の状態の異音を確認することができる。
【0018】
また、本開示の異音解析方法は、
前記コンピュータは、暗騒音を含まない前記異音の原因が特定されている音で教師あり機械学習されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、理想的な状態で機械学習されたコンピュータを用いて異音を推定できる。
【0020】
本開示の異音解析システムは、
異音を含む入力音が入力され、推定異音の原因とその確率を出力するコンピュータであって、ユーザが前記異音を確認するために前記推定異音のみを原因の確率に応じて出力するコンピュータと、を備える異音解析システムである。
【0021】
上記構成によれば、コンピュータが推定異音のみを原因の確率に応じて出力することで、ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示により、ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくするために、コンピュータが推定異音のみを異音の原因の確率に応じて出力する異音解析方法を提供できる。本開示により、さらにユーザが異音を確認するために、ユーザが確認した推定異音のみを除去した合成入力音を出力する異音解析方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態にかかる異音解析システムのブロック図である。
【
図2】実施の形態にかかる異音解析方法のフローチャートである。
【
図3】実施の形態にかかる暗騒音に対する異音の一例の図である。
【
図4】実施の形態にかかる異音の発生原因の一例の図である。
【
図5】実施の形態にかかる原因Aによる推定異音の一例の図である。
【
図6】実施の形態にかかる原因Bによる推定異音の一例の図である。
【
図7】実施の形態にかかる原因Aによる異音を除去した合成入力音の一例の図である。
【
図8】実施の形態にかかる原因Bによる異音を除去した合成入力音の一例の図である。
【
図9】実施の形態にかかる教師あり機械学習の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0025】
(実施の形態にかかる異音解析システムの説明)
図1は、実施の形態にかかる異音解析システムのブロック図である。
図1を参照しながら、実施の形態にかかる異音解析システムを説明する。
【0026】
異音解析システム10は、車両(図示せず)と、車両に備えられた電子制御装置100と、運転支援設定スイッチ群101と、シフトセンサ102と、ステアリングセンサ103と、自車位置情報検出装置104と、車速センサ105と、アクセル開度センサ106と、表示装置107と、スピーカ・ブザー108と、エンジン制御装置109と、ステアリング制御装置110と、ブレーキ制御装置111と、AT(Automatic Transmission)変速制御装置112と、車両と別個のコンピュータ120と、を備える。
【0027】
電子制御装置100には、車両に備えられた各種センサ等(例えば運転支援設定スイッチ群101、シフトセンサ102、ステアリングセンサ103、自車位置情報検出装置104、車速センサ105、アクセル開度センサ106など)による検出値に基づく各種信号が供給される。各種信号は、例えば、スイッチ信号、シフト位置、操舵角、GPS(Global Positioning System)信号(軌道信号)、ナビ情報などの自車位置情報検出装置104からの信号、通信信号、車速V、アクセル開度などである。
【0028】
電子制御装置100は、車両に備えられた各装置(表示装置107、スピーカ・ブザー108、エンジン制御装置109、ステアリング制御装置110、ブレーキ制御装置111、AT変速制御装置112)に指令信号を出力する。
【0029】
スイッチ信号は、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御のための運転者による設定を示す信号である。シフト位置は、車両に備えられたシフトレバーの操作ポジションである。操舵角は、車両に備えられたステアリングホイールの操舵角である。
【0030】
GPS信号は、GPS衛星が発信する信号に基づく地表又は地図上における車両の位置を示す自車位置情報を含んでいる。ナビ情報は、例えばナビゲーションシステムに予め記憶された地図データに基づく道路情報及び施設情報などの地図情報を含んでいる。道路情報は、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速自動車道路などの道路の種類、道路の分岐や合流、道路の勾配、制限車速などの情報を含んでいる。施設情報は、スーパ、商店、レストラン、駐車場、公園、自宅、高速自動車道路のサービスエリアなどの拠点の種類、所在地、名称などの情報を含んでいる。
【0031】
ナビゲーションシステムは、表示装置107及びスピーカ・ブザー108を有する公知のナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステムは、GPS信号に基づいて予め記憶された地図データ上に自車位置を特定する。ナビゲーションシステムは、表示装置107に表示した地図上に自車位置を表示する。ナビゲーションシステムは、目的地が入力されると、出発地から目的地までの走行経路を演算し、表示装置107及びスピーカ・ブザー108等で運転者に走行経路などの指示を行う。
【0032】
通信信号は、コンピュータ120との間で送受信された車両状態情報、道路交通情報通信システムとの間で送受信された道路交通情報、車両の近傍にいる他車両との間で直接的に送受信された車車間通信情報などを含む。車両状態情報は、例えば各種センサ等により検出された車両の走行に関わる車両状態を示す情報である。この車両状態は、例えばアクセル開度、車速Vなどである。
【0033】
道路交通情報は、例えば道路の渋滞、事故、工事、所要時間、駐車場などの情報を含む。車車間通信情報は、例えば車両情報、走行情報、交通環境情報などを含む。車両情報は、例えば乗用車、トラック、二輪車などの車種を示す情報を含む。走行情報は、例えば車速V、位置情報、ブレーキペダルの操作情報、ターンシグナルランプの点滅情報、ハザードランプの点滅情報などを含む。交通環境情報は、例えば道路の渋滞、工事などの情報を含む。
【0034】
アクセル開度は、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量である。
【0035】
エンジン制御装置109は、エンジン(図示せず)の作動を制御する。ハイブリッド自動車の場合、エンジン制御装置109は、ハイブリッド制御装置(図示せず)に含まれる。ハイブリッド制御装置は、エンジン制御装置の他に、インバータを介して第1回転機(図示せず)、第2回転機(図示せず)の作動を制御する回転制御装置(図示せず)を含む。ハイブリッド制御装置は、エンジン、第1回転機、第2回転機を用いてハイブリッド制御を実行する。AT(Automatic Transmission)車及びMT(Manual Transmission)車の場合、エンジンのみを備え、第1回転機及び第2回転機を備えない。したがって、AT車及びMT車の場合、エンジンは、エンジン制御装置109を用いて制御される。
【0036】
ステアリング制御装置110は、例えば車速V、操舵角及び操舵方向、ヨーレートなどに応じたアシストトルクを車両の操舵系に付与する。ステアリング制御装置110は、例えば自動運転制御時などでは、前輪の操舵を制御するトルクを車両の操舵系に付与する。
【0037】
ブレーキ制御装置111は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクを付与する。ホイールブレーキには、ホイールシリンダが設けられている。ブレーキ制御装置111は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込み操作に応じて、ホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。ブレーキ制御装置111は、通常時において、ブレーキマスタシリンダから発生するマスタシリンダ油を直接的にブレーキ油圧としてホイールシリンダに供給する。マスタシリンダ油圧は、ブレーキペダルの踏力に対応した大きさとなっている。一方で、ブレーキ制御装置111は、例えばABS制御時、横滑り抑制制御時、車速制御時、自動運転制御時などにおいて、ホイールブレーキを用いて制動トルクを発生するために、各制御で必要なブレーキ油圧をホイールシリンダに供給する。
【0038】
AT変速制御装置112は、ATギヤ段変速マップを用いて有段変速部の変速判断を行う。AT変速制御装置112は、必要に応じて有段変速部の変速制御を実行する。ATギヤ段変速マップは、予め実験的にあるいは設計的に求められて記憶された関係、すなわちあらかじめ定められた関係を示す。ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクを変数とする二次元座標上の、有段変速部変速が判断されるための変速線である所定の関係である。ここでは、車速Vの代わりに、出力回転速度Noなどを用いてもよい。また、要求駆動トルクの代わりに、要求駆動力、アクセル開度、またはスロットル弁開度などを用いてもよい。AT変速制御装置112は、有段変速部の変速制御では、有段変速部のATギヤ段を自動的に切り替えるように、ソレノイドバルブによる係合装置の係合開放状態を切り替えるための油圧制御指令信号を油圧制御回路へ出力する。
【0039】
ここではAT車またはハイブリッド自動車は、AT変速制御装置112を備える。一方、MT車は、AT変速制御装置112を備えない。
【0040】
コンピュータ120は、携帯情報端末または固定されたPC(Personal Computer)を用いることができる。携帯情報端末は、携帯キャリア回線、無線LANなどを介して情報を外部とやり取りできる携帯可能な情報端末である。また、コンピュータ120は、機能の一部を、ネットワークを介してサーバ(図示せず)に移転してもよい。
【0041】
コンピュータ120は、異音測定装置121と、演算部122と、FFT(Fast Fourier transform)解析部123と、出力部124と、を備える。
【0042】
異音測定装置121は、異音を含む車内の音を集音するマイクを備える。この異音を含む車内の音が異音を含む入力音である。また、異音測定装置121は、車両の電子制御装置100と通信して、集音したときの車速V、アクセル開度などの情報を受信する。
【0043】
演算部122は、車両から送信された車両状態情報及び入力音に所定の処理を行う。演算部122は、推定異音と推定異音の発生する確率を計算する。推定異音とは、入力音から異音の原因を推定し、その原因により発生する異音である。演算部122は、暗騒音を含まない異音の原因が特定されている音で教師あり機械学習されていることが好ましい。暗騒音とは、異音以外の車内の様々な騒音である。そのような演算部122により、異音の特定が容易になる。
【0044】
FFT解析部123は、車両から送信された入力音に高速フーリエ変換による周波数分析を行う。出力部124は、演算部122による処理結果、FFT解析部123による分析結果などを出力する装置である。すなわち出力部124は、表示装置及びプリンタ、スピーカなどであり、結果がユーザに認識可能になるようにする装置である。出力部124は、推定異音のみを原因の確率に応じて出力することができる。このような出力により、ユーザは、異音を確認できる。また、出力部124は、推定異音を入力音の異音より大きくして出力できる。このため、ユーザは異音を確認しやすくなる。また、出力部124は、推定異音のみを除去した合成入力音を出力することができる。このような出力により、ユーザは、さらに異音を確認できる。
【0045】
コンピュータ120は、ユーザが推定異音の出力により異音を確認しないとき、確率に応じて別の推定異音を出力し、ユーザに確認させる。また、コンピュータ120は、ユーザが推定異音の出力により異音を確認し、合成入力音の出力により異音を確認しないとき、原因を半確定し、ほかに原因があることを示唆する。また、コンピュータ120は、ユーザが推定異音の出力により異音を確認し、合成入力音の出力により異音を確認したとき、原因を確定したと出力する。
【0046】
上記異音解析システムにより、コンピュータが推定異音のみを異音の原因の確率に応じて出力することで、ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくすることができる。
【0047】
(実施の形態にかかる異音解析方法の説明)
図2は、実施の形態にかかる異音解析方法のフローチャートである。
図2を参照しながら、実施の形態にかかる異音解析方法を説明する。
【0048】
まず、異音データを取得する(ステップS201)。異音データは、異音と異音以外の周波数の音である暗騒音を含む入力音である。入力音が暗騒音を含むことで、ユーザは、異音が発生した使用中の状態の異音を確認することができる。この異音データをコンピュータ120に入力する。コンピュータ120は、携帯電話等、携帯情報端末であってもよい。携帯電話は一般に普及するコンピュータであり、音声入出力もできるため都合がよい。
【0049】
異音データを取得できない場合(ステップS201のNoの場合)、処理を終了する。異音データを取得できた場合(ステップS201のYesの場合)、コンピュータ120のFFT解析部123が、入力音を解析する。解析後、演算部122が、異音を推定する(ステップS202)。演算部122は、暗騒音を含まない理想的な状態で機械学習されていることが好ましい。理想的な状態で機械学習されたコンピュータを用いて異音を推定できるためである。
【0050】
次に、演算部122が複数の推定異音の原因を確率順に推定する(ステップS203)。出力部124が確率に応じて推定異音のみを再生し(ステップS204)、ユーザが感じた異音であるかどうか確認する(ステップS205)。最初に原因の確率が最も高い異音を再生することが好ましいが、この順番に限られない。このとき、推定異音の出力を、入力音の異音よりも大きくすることで確認しやすくなる。ここでユーザは、ユーザとともに異音を確認したディーラのメカニックでもよい。上記ステップS205により、コンピュータが推定異音のみを異音の原因の確率に応じて出力することで、ユーザが暗騒音を含む異音を識別しやすくすることができる。
【0051】
ユーザが感じた異音を確認できなかったとき(ステップS205のNoの場合)、確率に応じて別の推定異音を再生する(ステップS204)。確率が高い順番に音を再生することが好ましいが、この順番に限られない。ユーザが感じた異音を確認できたとき(ステップS205のYesの場合)、演算部122は、推定異音のみを削除する(S206)。これにより、推定異音のみを削除した合成入力音が生成される。出力部124が合成入力音をスピーカから出力すると、ユーザは、ユーザが感じた異音が出なくなったか確認する(ステップS207)。上記ステップS207により、ユーザが確認した推定異音のみを除去した合成入力音をユーザが聞いて、さらにユーザが異音を確認することができる。
【0052】
ユーザが感じた異音が出なくなったことを確認しないとき(ステップS207のNoの場合)、異音の原因を半確定(ステップS209)して、ユーザに他の原因があることを示唆して終了する。ユーザが、合成入力音に異音が含まれないことを確認できないとき、原因を半確定にし、別の原因があることが示唆することができる。
【0053】
ユーザが感じた異音が出なくなったことを確認したとき、(ステップS207のYesの場合)、異音の原因を確定(ステップS208)して、異音の原因を表示して終了する。ユーザが、合成入力音に異音が含まれないことを確認できたとき、原因を確定することができる。
【0054】
(実施の形態にかかる異音の説明)
図3は、実施の形態にかかる暗騒音に対する異音の一例の図である。
図4は、実施の形態にかかる異音の発生原因の一例の図である。
図5は、実施の形態にかかる原因Aによる推定異音の一例の図である。
図6は、実施の形態にかかる原因Bによる推定異音の一例の図である。
図7は、実施の形態にかかる原因Aによる異音を除去した合成入力音の一例の図である。
図8は、実施の形態にかかる原因Bによる異音を除去した合成入力音の一例の図である。
図3乃至
図8を参照しながら実施の形態にかかる異音を説明する。
【0055】
図3に暗騒音と異音を示す。
図3の横軸は周波数を示し、縦軸は音の大きさを示す。人間は、暗騒音のレベルに対して突出している音を異音として感じやすい。また突出量が大きい場合及び周波数が単独で存在している場合は、異音の原因を特定しやすいが近接した複数の周波数がある場合は、識別が難しい。
図3は、突出している音がA、B、Cである識別が難しい場合を示す。
図3は、それぞれの周波数の音に原因がある1つの例示である。
【0056】
図4は、異音の発生原因を示している。
図4は、横軸に車速を示し、縦軸にアクセル開度を示している。異音は、車速Vとアクセル開度に従って別個に発生する。したがって、車速Vやアクセル開度を入力し、異音が生じる領域を特定しながら学習すると異音の原因の推定精度が上がる。この車速Vとアクセル開度は、車両状態情報として、車両の電子制御装置100から得られる。
【0057】
図5は、ステップS205の異音確認工程を示したものである。
図5は、横軸に周波数、縦軸に音の大きさを示す。ここでは、コンピュータ120が、A音が異音である確率が最も高いと推定し、A音の周波数に絞った音を出力している。ユーザはこの音を聞き、自分が異音と感じた音と一致するか判断する。雑音である暗騒音及び他の突出音が除去されているので識別しやすい。音の大きさは、コンピュータ120で取得されたときの突出量に相当するが、強調する意味でこれを何倍かの大きさにしてもよい。
【0058】
図6は、ステップS205の異音確認工程の別の音を出力したものである。コンピュータ120が、B音である確率がA音に次いで高いと推定した。A音ではないとの判断に基づき、B音の周波数に絞った音を出力する。ユーザはこの音を聞き、自分が異音と感じた音と一致するか判断する。雑音である暗騒音及び他の突出音が除去されているので識別しやすい。音の大きさは、コンピュータ120で取得されたときの突出量に相当するが、強調する意味でこれを何倍かの大きさにしてもよい。
【0059】
図7は、ステップS207の異音確認工程を示したものである。
図7は、横軸に周波数を示し、縦軸に音の大きさを示す。
図7は、ステップS205でユーザがA音であると判断したので、暗騒音から突出したA音を除いた周波数の音を出力することを示す。ユーザは、この音を聞き、自分が異音と感じた音がないことを確認する。
【0060】
図8は、ステップS207の異音確認工程を示したものである。
図8は、横軸に周波数を示し、縦軸に音の大きさを示す。
図8は、ステップS205でユーザがB音であると判断したので、暗騒音から突出したB音を除いた周波数の音を出力することを示す。ユーザは、この音を聞き、自分が異音と感じた音がないことを確認する。
【0061】
(実施の形態にかかる教師あり機械学習の説明)
図9は、実施の形態にかかる教師あり機械学習の一例の図である。
図9を参照しながら、実施の形態にかかる教師あり機械学習を説明する。
【0062】
図9に示すように、異音を入力とし、異音の原因を出力とする機械学習をしている。機械学習モデルを訓練するための学習用データを準備する。学習用データに含まれる異音は、無響室や実験室で、高精度のマイクを使用して取得されることが好ましい。つまり、無響室等に自動車を設置して、特定の原因の異音のみを発生する。マイクが、この異音を集音する。異音は街中の一般の環境で取得されてもよい。学習用データでは、教師信号(正解ラベル)として、無響室で取得された異音に、異音の原因が付されている。車速V等も入力される。ラベル付きデータとしてこのようなものを用いてディープラーニングなどの機械学習をする。P11~Pi1は、入力層であり、P12~Pj2は、中間層であり、P13~Pk3は出力層である。重み付け値W11~Wi1は、入力層P11~Pi1に対する結合強度、重み付け値W12~Wj2は、中間層P12~Pj2に対する結合強度である。
【0063】
しかしながら、異音は街中の一般の環境で取得される。一般に異音はf特性(周波数特性)として得られる。入力は、車速V、アクセル開度、ブレーキ信号(ON/OFF)など走行に関する信号を有してもよい。また、出力は、異音の原因の他に異音の原因の確率を有してもよい。
【0064】
また、上述したコンピュータ120における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施の形態は、AT車、MT車またはハイブリッド自動車のいずれにも適用できる。また、本実施の形態は、電気自動車にも適用できる。また、コンピュータ120の演算部122とFFT解析部123をサーバに移してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 異音解析システム
100 電子制御装置
101 運転支援設定スイッチ群
102 シフトセンサ
103 ステアリングセンサ
104 自車位置情報検出装置
105 車速センサ
106 アクセル開度センサ
107 表示装置
108 スピーカ・ブザー
109 エンジン制御装置
110 ステアリング制御装置
111 ブレーキ制御装置
112 AT変速制御装置
120 コンピュータ
121 異音測定装置
122 演算部
123 FFT解析部
124 出力部