(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001791
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】壁高欄の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20221226BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
E01D19/10
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102728
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(71)【出願人】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(71)【出願人】
【識別番号】596182209
【氏名又は名称】タカムラ総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 良幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直樹
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059AA21
2D059DD15
(57)【要約】
【課題】壁高欄の施工を含む工期全体の短縮を図ることのできる壁高欄の構築方法を提供する。
【解決手段】壁高欄1の背面側に配置される背面側型枠10を床版2の幅方向外側に設置するとともに、壁面パネル20を壁高欄1の前面側に配置される前面側型枠をなすように支持具40によって床版2の幅方向内側に設置し、背面側型枠10と壁面パネル20との間にコンクリートCを打設して壁面パネル20の背面側をコンクリートCに埋設することによりコンクリートCと一体化させた後、所定のコンクリート養生期間が経過する前に支持具40を撤去し、コンクリート養生期間が経過した後、背面側型枠10を撤去するようにしたので、壁高欄1の施工を含む工期全体の短縮を図ることができる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のコンクリートからなる壁面パネルを用いて床版に壁高欄を構築する壁高欄の構築方法であって、
前記壁高欄の背面側に配置される背面側型枠を床版の幅方向外側に設置するとともに、
前記壁面パネルを壁高欄の前面側に配置される前面側型枠をなすように支持具を用いて床版の幅方向内側に設置し、
背面側型枠と壁面パネルとの間にコンクリートを打設して壁面パネルの背面側をコンクリートに埋設することによりコンクリートと一体化させた後、
所定のコンクリート養生期間が経過する前に前記支持具を撤去し、
コンクリート養生期間が経過した後に背面側型枠を撤去する
ことを特徴とする壁高欄の構築方法。
【請求項2】
前記壁面パネルとして、パネル本体内に網状の補強部材を埋設してなる壁面パネルを用いる
ことを特徴とする請求項1記載の壁高欄の構築方法。
【請求項3】
前記支持具として、壁面パネルの上端側及び下端側を支持する支持部材を備えた支持具を用いる
ことを特徴とする請求項2記載の壁高欄の構築方法。
【請求項4】
前記支持部材として、前記壁面パネルの上端側と背面側型枠とを壁高欄の上方で連結する連結部材を備えた支持具を用いる
ことを特徴とする請求項3記載の壁高欄の構築方法。
【請求項5】
前記支持具によって支持された既設の壁面パネルの幅方向一方に新たな壁面パネルを幅方向に間隔をおいて支持具に仮置きし、
新たな壁面パネルの高さ位置を支持具上で調整した後、
新たな壁面パネルを支持具に対して幅方向にずらして前記既設の壁面パネルの幅方向端部に接着剤を介して接合し、
前記新たな壁面パネルを支持具によって支持する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の壁高欄の構築方法。
【請求項6】
前記壁面パネルとして、互いに隣り合う壁面パネルの幅方向端部の接合面同士が壁面パネルの厚さ方向への移動を規制されるように係合する壁面パネルを用いる
ことを特徴とする請求項5記載の壁高欄の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁の床版に設置される壁高欄の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の床版には、車両や人の落下を防止するために、例えば鉄筋コンクリートからなる壁高欄が設けられている。この壁高欄は、床版側端部の地覆から鉄筋を立ち上げ、壁高欄の背面側に配置される背面側型枠を床版の外側に望む面側に設置するとともに、壁高欄の前面側に配置される前面側型枠を床版の内側に望む面側に設置し、これらの型枠内にコンクリートを打設することによって構築される(例えば、特許文献1参照。)。この場合、背面側型枠と前面側型枠とは複数のセパレータによって間隔を保持された状態で連結され、前面側型枠はアンカーにより床版上に固定されたサポートによって支えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばコンクリート床版を用いた橋梁の架設工事においては、床版のコンクリートへの雨水の浸透を防止するために、床版のコンクリート面に防水層を敷設する床版防水工が施工され、その上にアスファルト等の舗装を施工するのが一般的であるが、床版防水工は壁高欄が構築された後に施工される。
【0005】
しかしながら、従来例のように現場でコンクリートを打設して壁高欄を構築する場合は、コンクリートの養生期間が経過し、型枠を撤去した後でなければ床版防水工の施工を開始することができず、しかも型枠やサポート等の付属物を撤去するための作業時間も床版防水工の施工開始前に必要となり、工期全体が長期化するという問題点があった。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、壁高欄の施工を含む工期全体の短縮を図ることのできる壁高欄の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の壁高欄の構築方法は、前記目的を達成するために、板状のコンクリートからなる壁面パネルを用いて床版に壁高欄を構築する壁高欄の構築方法であって、前記壁高欄の背面側に配置される背面側型枠を床版の幅方向外側に設置するとともに、前記壁面パネルを壁高欄の前面側に配置される前面側型枠をなすように支持具を用いて床版の幅方向内側に設置し、背面側型枠と壁面パネルとの間にコンクリートを打設して壁面パネルの背面側をコンクリートに埋設することによりコンクリートと一体化させた後、所定のコンクリート養生期間が経過する前に前記支持具を撤去し、コンクリート養生期間が経過した後に背面側型枠を撤去するようにしている。
【0008】
これにより、コンクリートの打設が完了してからコンクリート養生期間が経過する前に、壁面パネルの支持具を撤去することにより、コンクリート養生期間の経過を待たずに、支持具を撤去してから背面側型枠を撤去するまでの期間だけ早く後工程の他の施工(例えば、床版防水工)を開始することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、壁高欄のコンクリート養生期間の経過を待たずに、後工程の他の施工(例えば、床版防水工)を開始することができるので、壁高欄の施工を含む工期全体の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図17は本発明の一実施形態を示すもので、例えば橋梁等の床版に設けられる壁高欄の構築方法を示すものである。
【0012】
同図に示す壁高欄1は、鉄筋コンクリート製の高欄からなり、後述する構築方法によって床版2の地覆3上に設けられる。床版2は、例えばプレキャストコンクリート床版からなり、図示しない鋼桁上に架設される。壁高欄1は、背面(床版2の外側に望む面)を垂直に形成され、前面(床版2の内側に望む面)を下方から上方に向かってやや背面側に傾斜(例えば、水平面に対して84°をなすように傾斜)するように形成された、いわゆるフロリダ型の壁高欄からなる。
【0013】
地覆3は床版側端部にコンクリートによって構築され、その背面(床版1の外側に望む面)は垂直に形成され、前面(床版1の内側に望む面)は前下りに傾斜するように形成されている。また、地覆3には上面から上方に立ち上がる壁高欄用の鉄筋4が設けられ、地覆3上面は床版1の内側に向かって若干の下り勾配(例えば2%)をなすように形成されている。
【0014】
本実施形態の壁高欄1の構築には、壁高欄1の背面側に配置される背面側型枠10と、壁高欄1の前面側に配置される壁面パネル20と、壁面パネル20の下端側に配置される下側型枠30と、壁面パネル20及び下側型枠30を支持する支持具40とが用いられ、壁面パネル20は前面側型枠をなす埋設型の型枠として用いられる。また、地覆3の背面側には背面側型枠10を固定するための複数のインサート3aが予め埋設され、地覆3の前面側には支持具40を固定するための複数のインサート3bが予め埋設されている。
【0015】
背面側型枠10は、型枠板11、縦枠材12及び横枠材13によって形成された木製の型枠からなり、その下端側を地覆3の背面に固定されるようになっている。背面側型枠10の背面側には壁高欄1の長手方向(橋軸方向)に延びる複数の単管パイプ14が互いに上下方向に間隔をおいて配置され、各単管パイプ14は固定金具15によって型枠板11及び縦枠材12に組み付けられる。
【0016】
壁面パネル20は、コンクリートからなる板状のパネル本体21と、パネル本体21内に埋設された網状の補強部材22と、パネル本体21と壁高欄1のコンクリートとを結合するための結合部材23とからなり、予め工場等で製作されたものが用いられる。パネル本体21は四角形状に形成され、その上端面は板厚方向前面側半分と板厚方向背面側半分がそれぞれ下り傾斜をなすように断面山形に形成されている。パネル本体21の下端面の板厚方向背面側半分は上り傾斜をなすように形成され、その板厚方向前面側半分はパネル本体21の前面に対して直角な面をなすように形成されている。また、パネル本体21の幅方向一側方の端面及び他側方の他面は隣り合う他の壁面パネル20と接合される接合面21a,21bを形成している。各接合面21a,21bは板厚方向前面側半分がそれぞれ傾斜をなすように形成され、板厚方向背面側はパネル本体21の背面に対して直角な面をなすように形成されている。この場合、各接合面21a,21bの一方の傾斜面は壁面パネル20の内側に向かって傾斜し、他方の傾斜面は壁面パネル20の外側に向かって傾斜するように形成されている。また、図示していないが、パネル本体21の背面には、コンクリートとの付着性を高めるために、例えば箒目状の凹凸が設けられている。
【0017】
補強部材22は、例えば網目が菱形状をなすエキスパンドメタル等のメッシュ状の金属板からなり、その表面には、例えばカチオン電着塗装による防食塗装が施されている。結合部材23は壁面パネル20の背面側に設けられ、縦方向及び横方向に延びる鋼材(例えば溝形鋼材)を四角形の枠状に配置することによって形成されている。結合部材23は補強部材22に接合されており、その厚さ方向略半分がパネル本体21に埋設され、他の半分がパネル本体21の背面から外部に露出している。また、パネル本体21の前面側には複数のインサート24が埋設されており、インサート24はパネル本体21の上部幅方向両側及び下部幅方向両側の4箇所に配置されている。
【0018】
下側型枠30は、例えば長細く形成されたコンクリートパネル等の板状部材からなり、長手方向(橋軸方向)が横方向、厚さ方向が前後方向となるように壁面パネル20の下端側に配置される。
【0019】
支持具40は、壁面パネル20の下端側を地覆3側から支持する第1の支持部材50と、壁面パネル20の上端側を第1の支持部材50側から支持する第2の支持部材60と、壁面パネル20の上端側を背面側型枠10側から支持する第3の支持部材70と、壁面パネル20と第1の支持部材50とを連結する第1の連結部材80と、壁面パネル20と第2及び第3の支持部材60,70とを連結する第2の連結部材90と、第3の支持部材70を背面側型枠10に固定する固定部材100とを備えている。
【0020】
第1の支持部材50は、地覆3の前面に固定される固定部51と、第2の支持部材60が連結される幅方向一対の第1の連結部52と、下側型枠30を支持する第1の支持部53と、壁面パネル20を支持する第2の支持部54と、第1の連結部材80が連結される第2の連結部55とからなる。固定部51は地覆3の前面と等しい角度で傾斜するように形成され、その上下二箇所には固定用のボルト挿通孔51aが設けられている。各第1の連結部52はそれぞれ固定部51の幅方向両端から前方に延びるように形成され、それぞれの上下二箇所には連結用のボルト挿通孔52aが設けられている。第1の支持部53は下側型枠30の下端面及び前面を支持するように略L字状に形成され、下側型枠30の前面を支持する部分は壁高欄1の前面の傾斜と等しい角度で傾斜するように形成されている。第2の支持部54は第1の支持部53の上端から前方に延びるように形成され、上面が幅方向に長い平面をなすように形成されている。第2の連結部55は第2の支持部54の前端から上方に延びるように形成され、その幅方向二箇所には連結用のボルト挿通孔55aが設けられている。また、ボルト挿通孔55aはボルトを上下左右に移動可能な大きさの円形に形成されている。
【0021】
第2の支持部材60は、上下方向に延びる垂直部61と、垂直部61の上端から後方に延びる水平部62とからなり、垂直部61及び水平部62は断面コ字状の部材によって形成されている。垂直部61は水平部62よりも長く形成され、その下端側の幅方向両側面部には、それぞれ上下二箇所ずつ連結用のボルト挿通孔61aが設けられとともに、幅方向両側面部の内面側にはボルト挿通孔61aと連通するナット61bがそれぞれ固着されている。水平部62の後端側の幅方向両側面部には、それぞれ連結用のボルト挿通孔62aが設けられるとともに、幅方向両側面部の内面側にはボルト挿通孔62aと連通するナット62bがそれぞれ固着されている。
【0022】
第3の支持部材70は、前後方向に延びる水平部71と、水平部71の前端から下方に延びる垂直部72とからなり、水平部71及び垂直部72は断面コ字状の部材によって形成されている。水平部71は垂直部72よりも長く形成され、その後端側の底面部には、固定部材100が係合する係合部71aが設けられている。垂直部72の下端側の幅方向両側面部には、それぞれ連結用のボルト挿通孔72aが設けられるとともに、幅方向両側面部の内面側にはボルト挿通孔72aと連通するナット72bがそれぞれ固着されている。
【0023】
第1の連結部材80は、壁面パネル20の前面下部に固定される固定部81と、第1の支持部材50に対する壁面パネル20の高さ位置を調整する高さ調整ボルト82と、調整ボルト82が取り付けられるボルト取付部83と、第1の支持部材50が連結される連結部84とからなる。固定部81は壁面パネル20と平行な面をなすように形成され、その幅方向二箇所には固定用のボルト挿通孔81aが設けられている。ボルト取付部83は固定部81の下端から前方に延びるように形成され、その幅方向二箇所には高さ調整ボルト82を挿通するボルト挿通孔83aが設けられている。ボルト取付部83の下面にはボルト挿通孔83aと連通するナット83bがそれぞれ固着されており、ボルト挿通孔83aを上方から挿通する高さ調整ボルト82がナット83bに螺合するようになっている。連結部84はボルト取付部83の前端から下方に延びるように形成されるとともに、連結用のボルト挿通孔84aを有し、背面側にはボルト挿通孔84aと連通するナット84bが固着されている。
【0024】
第2の連結部材90は、壁面パネル20の前面上部に固定される固定部91と、第2及び第3の支持部材60,70が連結される幅方向一対の連結部92とからなる。固定部91は壁面パネル20と平行な面をなすように形成され、その下端側は前方に向かって略L字状に屈曲している。固定部91の幅方向二箇所には固定用のボルト挿通孔91aが設けられ、各ボルト挿通孔91aは幅方向に延びる長孔状に形成されている。各連結部92は固定部91から垂直に延びるように形成され、互いに幅方向に間隔をおいて各ボルト挿通孔91aの内側に配置されている。各連結部92の上下方向二箇所には連結用のボルト挿通孔92aが設けられ、各ボルト挿通孔92aは上下方向に延びる長孔状に形成されている。
【0025】
固定部材100は、互いに幅方向に間隔をおいて配置されたコ字状の一対の側板101と、各側板101に接合された中間板102と、中間板102に取り付けられた固定ボルト103とからなり、各側板101はコ字状に形成されている。中間板102は各側板101の内側に配置され、その上面部が各側板101の上端側に沿って前方に延びるようにL字状に形成されている。中間板102の上面部には固定ボルト103が上下方向に挿通しており、固定ボルト103は中間板102の上面部の下面に固着されたナット102aに螺合している。固定ボルト103の下端側は各側板101の内側に突出するとともに、第3の支持部材70の係合部71aに係合するようになっており、係合部71aには固定ボルト103の下端側が係合する孔が設けられている。
【0026】
ここで、本実施形態における壁高欄1の構築方法を
図7乃至
図16を参照して説明する。尚、以下の説明では、床版2上に地覆3が形成されるとともに、地覆3に鉄筋4が配筋された状態から壁高欄1を構築する場合を示す。
【0027】
まず、
図7及び
図8に示すように、背面側型枠10の下方の単管パイプ14を固定金具15によって地覆3の背面側のインサート3aに締結することにより、背面側型枠10の下端側を地覆3の背面に固定する。また、支持具40の第1の支持部材50の固定部51をボルト56によって地覆3の前面側のインサート3bに締結することにより、第1の支持部材50を地覆3の前面側に固定する。
【0028】
次に、
図8、
図9及び
図14に示すように、下側型枠30を第1の支持部材50の第1の支持部53によって支持するとともに、壁面パネル20の下端側を第1の支持部材50の第2の支持部54によって支持する。壁面パネル20には予め第1の連結部材80が固定されており、壁面パネル20は第1の連結部材80を介して第2の支持部54に支持される。第1の連結部材80は、固定部81を挿通するボルト85を壁面パネル20の前面下部側のインサート24に螺合することにより、壁面パネル20に固定されている。尚、ボルト85は固定部81の左右のボルト挿通孔81aのうちの何れか一方に挿通される。
【0029】
壁面パネル20を第1の支持部材50によって支持する際、
図14に示すように、幅方向一側方に設置されている既設の壁面パネル20と幅方向に間隔をおいて第1の支持部材50に仮置きする。これにより、第2の支持部54には第1の連結部材80の高さ調整ボルト82の下端が当接し、高さ調整ボルト82によって第1の支持部材50に対する壁面パネル20の高さを調整する。尚、高さ調整ボルト82はボルト取付部83の左右のボルト挿通孔83aのうちの何れか一方に挿通される。
【0030】
この後、
図14及び15に示すように壁面パネル20を幅方向にずらして既設の壁面パネル20に幅方向端部を接合する。その際、
図5(a) に示すように一方の壁面パネル20の幅方向一側方の接合面21aに接着剤S(例えば、ポリウレタン系接着剤)を塗布するとともに、
図5(b) に示すように他方の壁面パネル20の幅方向他側方の接合面21bに突き合わせるように係合する。これにより、各接合面21a,21bの傾斜面がそれぞれ同一方向に傾斜しているので、各壁面パネル20の厚さ方向への相対移動が各接合面21a,21bの傾斜面によって規制される。
【0031】
続いて、第1の支持部材50の第2の連結部55のボルト挿通孔55aを挿通するボルト57を第1の連結部材80の連結部84のナット84bに螺合することにより、第1の連結部材80を第1の支持部材50に連結する。その際、ボルト挿通孔55aはボルト57の外径よりも大きく形成されているので、第1の支持部材50に対する第2の連結部55の上下方向及び幅方向の位置ずれが吸収される。尚、第1の支持部材50は互いに隣り合う壁面パネル20の突き合わせ位置に配置され、各壁面パネル20の第1の連結部材80がそれぞれ一つの第1の支持部材50に連結される。これにより、各第1の連結部材80及び第1の支持部材50によって壁面パネル20同士が連結される。
【0032】
次に、互いに隣り合う壁面パネル20に第2の連結部材90を固定する。第2の連結部材90は、固定部91の幅方向両端側が各壁面パネル20の前面に亘るように配置され、固定部91の各ボルト挿通孔91aを挿通するボルト93を壁面パネル20の前面上部側のインサート24に螺合することにより、各壁面パネル20に固定される。これにより、各第2の連結部材90によって壁面パネル20同士が連結される。
【0033】
次に、
図10及び
図16に示すように第1の支持部材50に第2の支持部材60を取り付け、第2の支持部材60によって壁面パネル20の上端側を支持する。その際、第1の支持部材50の各第1の連結部52のボルト挿通孔51aを挿通するボルト63を第2の支持部材60の下端側のナット61bに螺合することにより、第2の支持部材60の下端側を第1の支持部材50に連結する。また、第2の連結部材90の一方のボルト挿通孔92a(下側)を挿通するボルト64を第2の支持部材60の上端側のナット62bに螺合することにより、第2の支持部材60の上端側を第2の連結部材90に連結する。
【0034】
続いて、
図11及び
図16に示すように背面側型枠10の上端に第3の支持部材70を取り付け、第3の支持部材70によって壁面パネル20の上端側を支持する。その際、背面側型枠10の上部の横枠材13と第3の支持部材70の後端側とを固定部材100によって挟み込み、固定ボルト103を締め付けることにより、背面側型枠10の上端に第3の支持部材70を固定する。また、第2の連結部材90の他方のボルト挿通孔92a(上側)を挿通するボルト73を第3の支持部材70の前端側のナット72bに螺合することにより、第3の支持部材70の前端側を第2の連結部材90に連結する。
【0035】
以上のようにして型枠の設置が完了した後は、
図11に示すように背面側型枠10と壁面パネル20との間の空間にコンクリートCを打設する。その際、壁面パネル20の背面側の結合部材23がコンクリートCに埋設される。この後、
図12に示すように背面側型枠10及び下側型枠30を残して支持具40を撤去する。打設したコンクリートは通常1日程度で強度が発現し、コンクリートCに埋設された壁面パネル20が保持されるので、例えば打設の翌日に支持具40を撤去することも可能である。支持具40が撤去されたことにより、壁高欄1の前方での作業が可能になるので、床版防水工(防水層5の敷設)の施工を開始する。そして、所定のコンクリート養生期間が経過した後、背面側型枠10及び下側型枠30を撤去することにより、
図13に示すように壁高欄1の構築が完了する。その際、壁高欄1の前面は壁面パネル20によって形成され、壁面パネル20が結合部材23によってコンクリートCに埋設されることにより、壁面パネル20がコンクリートCと強固に一体化される。尚、コンクリートの養生期間は、季節(外気温)やコンクリートに使用するセメントなどによって異なるが、例えば普通セメントであれば5日程度である。
【0036】
このように、本実施形態によれば、壁高欄1の背面側に配置される背面側型枠10を床版2の幅方向(橋軸直角方向)外側に設置するとともに、壁面パネル20を壁高欄1の前面側に配置される前面側型枠をなすように支持具40によって床版2の幅方向内側に設置し、背面側型枠10と壁面パネル20との間にコンクリートCを打設して壁面パネル20の背面側(結合部材23)をコンクリートCに埋設することによりコンクリートCと一体化させた後、所定のコンクリート養生期間が経過する前に支持具40を撤去し、コンクリート養生期間が経過した後、背面側型枠10を撤去するようにしたので、壁高欄1の施工を含む工期全体の短縮を図ることができる。
【0037】
即ち、
図17に示すように、壁高欄1の施工は、背面側型枠10の設置、壁面パネル20の設置、コンクリートCの打設、支持具40の撤去、背面側型枠10の撤去が順次行われるが、本実施形態では、コンクリートCの打設が完了してから時間T1 が経過した後、壁面パネル20の支持具40を撤去することにより、コンクリート養生期間T2 の経過を待たずに、支持具40を撤去してから背面側型枠10を撤去するまでの期間T3 だけ早く床版防水工の施工を開始することができる。
【0038】
また、壁面パネル20は、コンクリートからなる板状の型枠本体21内に網状の補強部材22を埋設してなるパネル材が用いられるので、厚さ寸法を小さくしても十分な強度を確保することができる。
【0039】
更に、支持具40は、壁面パネル20の上端側及び下端側を地覆3側から支持する第1及び第2の支持部材50,60を備えているので、従来のように床版上から型枠を支えるサポートを必要とせず、支持構造の簡素化を図ることができる。
【0040】
また、支持具40は、壁面パネル20の上端側を背面側型枠10から支持する第3の支持部材70を備えているので、従来のように背面側型枠と前面側型枠とを連結するセパレータが不要になり、セパレータと鉄筋との干渉を生ずることがないという利点がある。特に、壁高欄1内に通信管が配置される場合は、セパレータと通信管との干渉を生ずることがない点で極めて有利である。
【0041】
更に、支持具40によって支持された既設の壁面パネル20の幅方向一方に新たな壁面パネル20を幅方向に間隔をおいて支持具40に仮置きし、新たな壁面パネル20の高さ位置を高さ調整ボルト82によって支持具40上で調整した後、新たな壁面パネル20を支持具40に対して幅方向にずらして既設の壁面パネル20の幅方向端部に接着剤Sを介して接合し、新たな壁面パネル20を支持具40によって支持するようにしたので、接着剤Sを介して接合する前に壁面パネル20の高さ調整を行うことができ、壁面パネル20の高さ調整作業と接合作業とを効率よく行うことができる。
【0042】
また、壁面パネル20は、互いに隣り合う壁面パネル20の幅方向端部の接合面21a,21b同士が壁面パネル20の厚さ方向への移動を規制可能に係合するように形成されているので、互いに隣り合う壁面パネル20同士を厚さ方向に位置ずれを生ずることなく接合することができる。
【0043】
尚、前記実施形態では、支持具40の第1の支持部材50、第2の支持部材60、第3の支持部材70、第1の連結部材80、第2の連結部材90及び固定部材100をそれぞれ別部品として構成し、現場で組み立てるようにしたものを示したが、これらの部材の少なくとも一部を一体に構成するようにしてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、壁面パネル20が傾斜したフロリダ型の壁高欄を示したが、本発明は、壁面パネルを垂直に設けた直壁型の壁高欄にも適用することができる。
【0045】
尚、前記実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1…壁高欄、2…床版、3…地覆、4…鉄筋、5…防水層、10…背面側型枠、20…壁面パネル、30…下側型枠、40…支持具、50…第1の支持部材、60…第2の支持部材、70…第3の支持部材、80…第1の連結部材、90…第2の連結部材、100…固定部材。