(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179100
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092170
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉利 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】隈川 隆博
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL13
5F044QQ03
5F044QQ04
(57)【要約】
【課題】半導体装置のフリップチップ実装において、金属バンプの変形量を向上させると共に接合強度の低下を抑制する。
【解決手段】半導体装置10は、半導体基板1と、半導体基板1に設けられた第1の電極パッド2と、第1の電極パッド2上に設けられた金属バンプ4とを備える。金属バンプ4は、金属粒子の焼結体からなる。金属バンプ4は、第1の電極パッド2に接する底部に比べて頭頂部が小型化された先鋭形状を有する。金属バンプ4は、底部側に位置する多孔質層と、頭頂部側に位置し、多孔質層よりも空隙の少ない緻密層とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第1の電極パッドと、
前記第1の電極パッド上に設けられた金属バンプとを備え、
前記金属バンプは、金属粒子の焼結体からなり、
前記金属バンプは、前記第1の電極パッドに接する底部に比べて頭頂部が小型化された先鋭形状を有し、
前記金属バンプは、前記底部側に位置する多孔質層と、前記頭頂部側に位置し、前記多孔質層よりも空隙の少ない緻密層とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1の半導体装置において、
前記多孔質層の空隙率は10%以上であり、
前記緻密層の空隙率は3%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に半導体装置において、
前記金属バンプは、前記第1の電極パッドから離れるにつれて細くなるテーパー形状部と、当該テーパー形状部上に設けられた柱状部とを備え、
前記テーパー形状部は、前記多孔質層のみからなるか、又は、前記多孔質層及びその上の前記緻密層からなり、
前記柱状部は、前記緻密層のみからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3の半導体装置において、
前記柱状部の高さは、前記柱状部の幅に対して3倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項3の半導体装置において、
前記柱状部の高さは、前記テーパー形状部の高さの50%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つの半導体装置と、
第2の電極パッドを有する実装用部材とを含み、
前記半導体装置は、前記金属バンプの前記頭頂部が前記第2の電極パッドに接合されることによりフリップチップ実装されていることを特徴とするフリップチップ実装構造。
【請求項7】
実装用部材本体と、
前記実装用部材本体に設けられた第1の電極パッドと、
前記第1の電極パッド上に設けられた金属バンプとを備え、
前記金属バンプは、金属粒子の焼結体からなり、
前記金属バンプは、前記第1の電極パッドに接する底部に比べて頭頂部が小型化された先鋭形状を有し、
前記金属バンプは、前記底部側に位置する多孔質層と、前記頭頂部側に位置し、前記多孔質層よりも空隙の少ない緻密層とを備えることを特徴とする実装用部材。
【請求項8】
第1の電極パッドを備える半導体基板を準備する工程と、
前記半導体基板を覆い且つ前記第1の電極パッド上に開口部を有するレジストを形成し、前記開口部を、前記電極パッドから離れるにつれて細くなるテーパー形状及びその上に繋がる柱形状を含む形状とする工程と、
前記開口部に、少なくとも金属粒子及び有機系溶媒を含むペーストを充填し、乾燥及び焼結して金属バンプを形成する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8の半導体装置の製造方法において、
前記金属バンプを形成する工程は、前記開口部に第1のペーストを充填して乾燥及び焼結を行う第1工程と、第1工程の後に、前記開口部に第2のペーストを充填して乾燥及び焼結を行う第2工程とを含み、
前記第2のペーストは、前記第1のペーストに比べて、金属粒子の粒径が小さく且つ有機系溶媒の比率が高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9の半導体装置の製造方法において、
前記第1のペーストに含まれる前記金属粒子の粒径が、前記柱形状の幅の10分の1以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9の半導体装置の製造方法において、
前記第2のペーストに含まれる金属粒子の粒径は、10nm以下であることをとする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の実装技術の1つとして、フリップチップ実装が知られている。フリップチップ実装では、半導体装置の電極端子上に形成された突起電極と、実装基板の電極パッドとを接続する。実装の際には、突起電極を電極パッドに圧接して加熱することによりバンプ接続を形成する。
【0003】
突起電極としては、はんだバンプが多く採用されて来た。しかし、電極端子の狭ピッチ化に伴い、ブリッジ不良が発生しやすくなる。ブリッジ不良とは、フリップチップ実装時の圧接・加熱の工程において、溶融して変形したはんだバンプが他のはんだバンプと繋がる不良である。
【0004】
そこで、はんだバンプに代えて、例えば銅から成る柱状の微細金属バンプを用いる工法が知られている。この工法では、実装時の圧接・加熱工程において、突起電極(微細金属バンプ)の先端を塑性変形させて、固相拡散により電極パッドに接合する。この際、突起電極を溶融させることはないので、溶融・変形に起因するブリッジ不良は防止される。
【0005】
しかし、半導体装置が高温下及び低温下の両方において繰り返し使用された場合、熱ストレスにより微細金属バンプの根元部分にクラックが入る、断線する等の問題が生じる。この対策として、特許文献1には、微細金属バンプに、柱状部と、その根元側のテーパー部とを設ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フリップチップ実装の際、半導体装置及び実装基板が有する反り、実装装置の精度等により、半導体装置と実装基板との間の距離には数μm程度のバラツキが存在し得る。この結果、金属バンプが電極パッドに接触、接合できない箇所が生じる場合がある。そこで、金属バンプの柱状部を小径化するか又は長くすることにより変形量を大きくして、前記のバラツキを吸収させることが行われる。
【0008】
しかし、微細化の進む金属バンプにおいて、更に柱状部を小型化すると、電極パッドとの接合面積が減少して接合強度が低下してしまう。また、柱状部を長くすると、バンプ倒れ等の新たな問題の原因となる。
【0009】
本開示は、半導体装置のフリップチップ実装において、金属バンプの変形量を向上させると共に接合強度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板に設けられた第1の電極パッドと、第1の電極パッド上に設けられた金属バンプとを備える。金属バンプは、金属粒子の焼結体からなる。金属バンプは、第1の電極パッドに接する底部に比べて頭頂部が小型化された先鋭形状を有する。金属バンプは、底部側に位置する多孔質層と、頭頂部側に位置し、多孔質層よりも空隙の少ない緻密層とを備える。
【0011】
本開示のフリップチップ実装構造は、本開示の半導体装置と、第2の電極パッドを有する実装用部材とを含む。半導体装置は、金属バンプの頭頂部が第2の電極パッドに接合されることによりフリップチップ実装されている。
【0012】
本開示の半導体装置の製造方法は、第1の電極パッドを備える半導体基板を準備する工程と、半導体基板を覆い且つ第1の電極パッド上に開口部を有するレジストを形成し、開口部を、電極パッドから離れるにつれて細くなるテーパー形状及びその上に繋がる柱形状を含む形状とする工程と、開口部に、少なくとも金属粒子及び有機系溶媒を含むペーストを充填し、乾燥及び焼結して金属バンプを形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によると、変形量が大きく且つ電極パッドとの接合強度の低下が抑制された金属バンプが実現され、信頼性の高いフリップチップ実装が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示のフリップチップ実装構造を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のフリップチップ実装構造に用いられる半導体装置を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図1のフリップチップ実装構造に用いられる回路基板を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図1のフリップチップ実装構造の製造方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、
図3の半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、
図3の半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、
図3の半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図9】
図9は、
図3の半導体装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本開示の技術は、以下の実施形態に限定されるものはなく、また、効果を奏する範囲内で適宜変更は可能である。
【0016】
(フリップチップ実装構造の構造)
図1は、本開示の実施形態における例示的なフリップチップ実装構造30を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1において破線にて囲んだIIの範囲を拡大して示す図である。
【0017】
図1に示す通り、フリップチップ実装構造30は、第1の電極パッド2を備えた第1の部材10が、第2の電極パッド6を備えた第2の部材20にフリップチップ実装された構造を有する。
【0018】
第1の部材10及び第2の部材20は、フリップチップ実装に用いられる対象を総称したものであり、特に限定されないが、例えば半導体装置、回路基板、電子部品、フレキシブル配線基板等である。以下では、第1の部材10がフリップチップ実装される半導体装置10であり、第2の部材20が実装用部材としての回路基板20である例として説明する。
【0019】
図3に示すように、半導体装置10は、電子素子等の形成された半導体基板1と、半導体基板1上に形成された第1の電極パッド2と、半導体基板1上を覆い且つ第1の電極パッド2上に開口を有する第1の絶縁膜3と、第1の電極パッド2上に設けられた金属バンプ4とを有する。
【0020】
また、
図4に示すように、回路基板20は、基板本体5(実装用部材本体)と、基板本体5上に設けられた第2の電極パッド6と、基板本体5上を覆い且つ第2の電極パッド6上に開口を有する第2の絶縁膜7とを有する。
【0021】
半導体装置10が、回路基板20の側に向けた金属バンプ4を第2の電極パッド6に接合する形で実装され、
図1のフリップチップ実装構造30が構成される。これにより、第1の電極パッド2と、第2の電極パッド6とは金属バンプ4を介して電気的に接続される。
【0022】
次に、金属バンプ4について、拡大図である
図2を参照して説明する。金属バンプ4は、第1の電極パッド2側のテーパー形状部4aと、当該テーパー形状部4aに接続された柱状部4bとを備える。テーパー形状部4aは、第1の電極パッド2から離れるにつれて細くなる形状である。柱状部4bは、テーパー形状部4aの細くなった部分に対応する幅を有し、概ね幅の変わらない形状である。金属バンプ4全体としては、第1の電極パッド2に接する底部(テーパー形状部4aの底部)に比べて、頭頂部(柱状部4bにおけるテーパー形状部4aの反対側)の方が小型化された先鋭形状となっている。
【0023】
尚、図示はしていないが、テーパー形状部4a及び柱状部4bについて、半導体基板1の表面に平行な断面は円状であっても良い。従って、テーパー形状部4aは円錐台形状、柱状部4bは円柱状であっても良い。
【0024】
金属バンプ4は、金属粒子の焼結体からなる。第1の電極パッド2と接するテーパー形状部4aは多孔質の焼結体からなる多孔質層であり、第2の電極パッド6と接する柱状部4bは緻密な焼結体からなる緻密層である。但し、多孔質層と緻密層との界面が、テーパー形状部4aと柱状部4bとの界面に正確に一致する必要は無い。従って、テーパー形状部4aにおける柱状部4bとの界面近傍については、緻密な焼結体となっていても良い。また、柱状部4bにおけるテーパー形状部4aとの界面近傍については、多孔質の焼結体となっていても良い。
【0025】
緻密な焼結体とは、金属粒子同士の結合が密であり、空隙が少なくバルク金属に近い状態の焼結体を言う。これに対し、多孔質の焼結体とは、金属粒子同士の結合が荒く、空隙が多く残っている状態の焼結体を言う。緻密な焼結体における空隙は、多孔質の焼結体における空隙よりも多い。そのため、緻密な焼結体の硬度は、多孔質の焼結体の硬度よりも大きく、緻密な焼結体の方が多孔質の焼結体よりも変形し難い。
【0026】
柱状部4bは空隙の少ない緻密な焼結体からなるので、多孔質の焼結体からなる場合に比べて、第2の電極パッド6との接合界面にける単位面積あたりの接合面積を確保して接合することができる。これにより、金属バンプ4(柱状部4b)と第2の電極パッド6との接合の信頼性が向上する。従来、この箇所は接合の不良(剥がれ)が生じる可能性が高い。従って、この箇所の接合の信頼性向上は、顕著に有利な効果である。
【0027】
また、柱状部4bは、緻密な焼結体からなるので硬度が高いが、断面積の小さい(細い)構造であるから変形が容易である。これにより、半導体基板1と基板本体5と間の距離に高さバラツキが生じた場合にも、柱状部4bが変形することにより高さバラツキを吸収することができる。更に、第2の電極パッド6の表面粗さに対し、表面粗さを埋めるように塑性変形が可能であり、柱状部4bと第2の電極パッド6との接合が強固になる。
【0028】
柱状部4bを構成する緻密な焼結体について、空隙率は3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましい。これにより、望ましい接合面積を確保し、接合強度を向上することができる。
【0029】
また、テーパー形状部4aについては、断面積が大きい点では変形し難い。しかし、テーパー形状部4aは多孔質の焼結体からなるので硬度が低く、これにより変形を容易にしている。従って、テーパー形状部4aについても、変形して高さバラツキを吸収することができる。
【0030】
テーパー形状部4aを形成する多孔質の焼結体について、空隙率は10%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましい。これにより、望ましい変形量が得られ、高さバラツキの吸収により顕著な効果を発揮する。また、テーパー形状部4aが過度に脆弱化することを避ける観点から、空隙率は25%以下であることが好ましい。
【0031】
尚、多孔質の焼結体は、柱状部4bには進入しないことが好ましい。つまり、柱状部4bについては、緻密な焼結体のみからなることが好ましい。これにより、細い形状の柱状部について、剛性の低い多孔質の焼結体の部分が生じて破断しやすくなることを防止できる。テーパー形状部4aについては、多孔質のみからなるか、又は、多孔質層及びその上の緻密層からなっていても良い。
【0032】
テーパー形状部4a及び柱状部4bは、同一の材料からなる。融点よりも低い温度において焼結が進む(金属間結合が形成される)金属粒子であれば、材料として特に限定されず用いることができる。例えば、銀、銅、金、コバルト、はんだ等の材料からなるナノ金属粒子又はマイクロ金属粒子を用いても良い。
【0033】
また、柱状部4bについて、アスペクト比(幅に対する高さの比)は、3以下であることが好ましい。例えば、柱状部4bの高さが3μmのとき、柱状部4bの幅(円柱状であれば直径)は1μm以上であることが好ましい。また、柱状部4bの高さは、テーパー形状部4aの高さに対して50%以下であることが好ましい。これにより、柱状部4bは望ましい強度を備え、実装時、信頼性試験時等に倒れることを抑制できる。
【0034】
(フリップチップ実装構造の製造方法)
次に、
図3に示す金属バンプ4を備えた半導体装置10及びこれを含むフリップチップ実装構造30の製造方法について説明する。
図5~
図12は、当該製造方法の工程を示す図である。
【0035】
図5に示す工程では、素子等の所定の構造が形成された半導体基板1及び基板本体5を準備する。半導体基板1上に複数の第1の電極パッド2を形成し、更に、半導体基板1上を覆い且つ第1の電極パッド2上に開口を有する第1の絶縁膜3を形成する。同様に、基板本体5上に複数の第2の電極パッドを形成し、更に、基板本体5上を覆い且つ第2の電極パッド6上に開口を有する第2の絶縁膜7を形成する。これには、金属膜、絶縁膜の堆積、フォトリソグラフィを用いたマスクの形成、エッチングによるパターン形成等の一般的な技術を用いることができる。
【0036】
第2の部材20(回路基板20)については、この工程により形成される。第1の部材10(半導体装置10)については、半導体基板1の第1の電極パッド2上に金属バンプ4を形成する方法を以下に説明する。
【0037】
図6の工程では、半導体基板1上の第1の電極パッド2及び第1の絶縁膜3を覆うように、逆テーパーレジスト11を形成する。逆テーパーレジスト11は、後の工程にて除去可能なリフトオフ用のレジスト膜11aからなり、第2の電極パッド6上に形成された孔11bを有している。孔11bは、第2の電極パッド6側が大きくなった逆テーパー形状を有する。
【0038】
逆テーパーレジスト11を形成するには、半導体基板1上にレジスト液の滴下及びスピンコートを行って乾燥し、レジスト膜を形成する。次に、フォトリソグラフィにより孔開けを行う。ここで、レジスト膜の底面側(半導体基板1の側)と表面側とについてレジストの架橋密度に差を設けることにより、底面側の方が現像液によって溶解しやすくすることができる。これを利用すると、逆テーパー形状の孔11bを形成することができる。
【0039】
尚、逆テーパーレジスト11に代えて、孔が形成された金属マスク等の他の手段を用いることもできる。
【0040】
次に、
図7の工程を行う。ここでは、逆テーパーレジスト11の孔11bに対し、低粘度金属ペースト12を充填する。充填の工法としては、真空印刷工法、インジェクション工法等を用いることができる。
【0041】
金属ペーストは、金属粒子の焼結体の材料であり、金属粒子及び有機系溶媒を基本として構成されている。低粘度の金属ペーストを得るためには、金属粒子に対する有機系溶媒の量を多くすること、金属粒子の粒径を大きくすること等が有効である。低粘度金属ペースト12を用いると、充填が困難な逆テーパーレジスト11の孔11bの底部についてもボイドの発生を抑制して充填が可能となる。
【0042】
次に、
図8の工程を行う。ここでは、孔11bに充填した低粘度金属ペースト12について、乾燥及び焼結を行う。このためには、2段階以上のステップ制御を行うのが好ましい。つまり、初めに例えば50~150℃の温度範囲で加熱して乾燥を行い、低粘度金属ペースト12中の有機系溶媒を除去する。続いて、200℃以上の温度に加熱して焼結を行い、金属粒子同士を結合させる。これは、一般に有機系溶媒の沸点が50~150℃であるのに対し、金属粒子の焼結温度は200℃以上であることによる。仮に、ステップ制御を行わず、金属粒子の焼結温度まで急激に加熱した場合、有機系溶媒が沸騰し、金属バンプ形状内において金属粒子量の偏りが発生することがある。このような偏りが生じると、所望の金属バンプの形状が得られない虞がある。前記のステップ制御を行うことで、この問題を抑制することができる。
【0043】
低粘度金属ペースト12は有機系溶媒の量が多いので、乾燥の際に、有機系溶媒の揮発に伴って体積が減少する。この結果、孔11bにおいて第1の電極パッド2側の底部に金属粒子が残る。この状態において焼結を行うことにより、孔11bの底部側に金属粒子の焼結体が形成される。このようにして、金属バンプ4のテーパー形状部4aが形成される。これに伴い、孔11bにおいてテーパー形状部4a上にはスペース13が形成される。
【0044】
また、低粘度金属ペースト12は金属粒子の径が大きいので、形成された焼結体において空隙が残留しやすく、多孔質の焼結体として形成される。
【0045】
次に、
図9の工程を説明する。ここでは、孔11bに形成されたスペース13内に、高粘度金属ペースト14を充填する。高粘度金属ペースト14は、低粘度金属ペースト12と同様に、金属粒子と有機系溶媒とを基本として構成された材料である。但し、高粘度金属ペースト14は、低粘度金属ペースト12に比べて、相対的に粘度が高い。このような高粘度の金属ペーストは、金属粒子に対する有機系溶媒の量を少なくすること、金属粒子の粒径を小さくすることにより実現される。
【0046】
高粘度金属ペースト14は多孔質のテーパー形状部4a上に充填されるが、高粘度であるから、テーパー形状部4aの空隙には侵入しにくい。従って、テーパー形状部4aは多孔質の状態を維持することができる。
【0047】
次に、
図10の工程を説明する。ここでは、高粘度金属ペースト14について加熱して乾燥及び焼結を行い、緻密な焼結体を形成する。これにより、金属バンプ4の柱状部4bが形成される。高粘度金属ペースト14は溶媒量が少ないので、乾燥温度による軟化が抑制されている。従って、この際にも多孔質なテーパー形状部4aの空隙に金属ペーストが侵入することは抑制されている。また、高粘度金属ペースト14の金属粒子は粒径を小さくしているので、空隙の少ない緻密な焼結体として柱状部4bが形成される。
【0048】
尚、高粘度金属ペースト14に用いられる金属粒子の粒径は、柱状部4bの幅(円柱状であれば直径)の10分の1以下であることが好ましい。これにより、高粘度金属ペースト14をスペース13に充填する際の充填性が向上する。この結果、ボイドの無い安定したバンプ形状が実現されやすい。
【0049】
また、当該粒径は、10nm以下であることが好ましい。このようにすると、空隙の少ない緻密な焼結層を実現することができる。
【0050】
次に、
図11の工程を説明する。ここでは、逆テーパーレジスト11をリフトオフして除去し、テーパー形状部4a及び柱状部4bを含む金属バンプ4を形成する。リフトオフは、例えば、アセトン等の溶媒によりレジストを溶解することにより行う。
【0051】
この工程により、半導体基板1上に第1の、第1の絶縁膜3及び金属バンプ4を備えた半導体装置10が形成される。
【0052】
次に、
図12の工程を説明する。ここでは、半導体装置10を反転(フリップチップ)し、金属バンプ4の柱状部4bを回路基板20の第2の電極パッド6に接触させて、接続を行う。接続は、例えば荷重、熱、超音波振動等を加えることにより行う。
【0053】
これにより、回路基板20上に半導体装置10がフリップチップ実装されたフリップチップ実装構造30が形成される。
【0054】
(他の実施形態)
以上では、第1の部材10は半導体装置10であり、第2の部材20は回路基板20である場合を説明したが、先述の通りこれには限らない。
【0055】
その他の例として、第1の部材10及び第2の部材20が共に半導体装置であってもよい。つまり、半導体装置に対し、半導体装置を直接実装する場合について、本開示の技術を適用してもよい。この場合、第2の部材20について、これまでに説明した基板本体5に代えて、電子素子等の形成された半導体基板を用いた半導体装置とする。
【0056】
尚、このようにして半導体装置に他の半導体装置が実装されたフリップチップ実装構造について、更に本開示の技術を利用して、回路基板等に実装することも可能である。
【0057】
また、第1の部材10及び第2の部材を共に回路基板とした構造、つまり、回路基板の積層構造に本開示の構造を適用することもできる。この場合、第1の部材10について、これまでに説明した半導体基板1に代えて基板本体を用いた構造とする。これは、例えば半導体装置がフリップチップ実装された回路基板を更に他の回路基板に積層する場合に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、信頼性の高いフリップチップ実装を実現するために有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 半導体基板
2 第1の電極パッド
3 第1の絶縁膜
4 金属バンプ
4a テーパー形状部
4b 柱状部
5 基板本体
6 第2の電極パッド
7 第2の絶縁膜
10 半導体装置(第1の部材)
11 逆テーパーレジスト
11a レジスト膜
11b 孔
12 低粘度金属ペースト
13 スペース
14 高粘度金属ペースト
20 回路基板(第2の部材)
30 フリップチップ実装構造