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特開2023-179119生産計画作成装置、該方法および該プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179119
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】生産計画作成装置、該方法および該プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092211
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 明久
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊裕
(72)【発明者】
【氏名】吉野 悟
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA01
3C100AA22
3C100BB12
3C100BB13
3C100EE10
(57)【要約】
【課題】本発明は、より短い時間で生産計画を作成できる生産計画作成装置、該方法および該プログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成するものであって、前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備による第1工程と、第2設備による第2工程とを含み、前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、前記第1工程の第1処理時間は、前記第2工程の第2処理時間より長く、前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶し、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する生産計画作成装置であって、
前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、
前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、
前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長く、
前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶する記憶部と、
前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成部とを備え、
前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、
前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である、
生産計画作成装置。
【請求項2】
前記ディスパッチングルールは、さらに、前記第2設備によって前記第2工程を実施した、前記作成対象である複数の製品の各量を平準化することを含む、
請求項1に記載の生産計画作成装置。
【請求項3】
前記作成部は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、前記生産計画を作成し、
前記サイクルを、複数、繰り返して前記生産計画を作成する場合に、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で割り付けられた量が少ない製品ほど優先的に多くなるように、量を割り付ける、
請求項2に記載の生産計画作成装置。
【請求項4】
前記作成部は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、前記生産計画を作成し、
前記ディスパッチングルールは、さらに、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量に対する充填率を最大化することを含む、
請求項2に記載の生産計画作成装置。
【請求項5】
前記作成部は、
前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、生産計画を作成するサイクル処理部と、
前記第1工程を実施した前記第1設備について、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を第1評価値として求める第1評価値演算部と、
前記第1工程を実施した前記第1設備について、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量に対する充填率を第2評価値として求める第2評価値演算部と、
前記作成対象である複数の製品それぞれについて、今回のサイクルの生産計画で割り付けられた量に基づいて、次回のサイクルの生産計画で割り付ける量の優先度を第3評価値として求める第3評価値演算部とを備え、
前記サイクル処理部は、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で前記第3評価値演算部で求められた第3評価値に基づき作成可能な全ての生産計画のパターンそれぞれについて前記第1および第2評価値演算部によって前記第1および第2評価値を求め、前記全ての生産計画のパターンのうち、前記求めた第1および第2評価値に基づいて最も評価の高いパターンの生産計画を、前記今回のサイクルの生産計画とし、前記作成対象である複数の製品の各量がなくなるまで、前記サイクルを繰り返して前記生産計画を作成する、
請求項1に記載の生産計画作成装置。
【請求項6】
コンピュータによって実行され、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する生産計画作成方法であって、
前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、
前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、
前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長く、
前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成ステップとを備え、
前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、
前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である、
生産計画作成方法。
【請求項7】
複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する生産計画作成プログラムであって、
前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、
前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、
前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長く、
コンピュータを、
前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶する記憶部、および、
前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成部として機能させ、
前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、
前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である、
生産計画作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工程を経て製造される製品について、複数の製品を生産する順序を決めた生産計画を作成する生産計画作成装置、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品は、一般に、複数の工程(作業)を経て製造される。製品は、注文(オーダ)を受けてから、その納期に間に合うように製造する必要があるため、通常、複数の製品に対する生産順序が生産計画として作成される。この生産計画の作成に関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された操業計画作成装置は、処理対象物をオーダー単位で並列的に処理する1又は2以上の処理手段よりなる処理工程が2以上接続された操業ラインにおける操業計画を作成する操業計画作成装置において、上記処理対象物の上記オーダー毎の属性を設定するオーダー情報設定手段と、上記各処理手段における操業条件を設定する操業条件設定手段と、上記オーダー情報設定手段で設定された上記オーダー毎の属性と、上記操業条件設定手段で設定された各処理手段における操業条件と、予め設定された所定のルールとに基づいて、上記オーダーの順列及びそれら各オーダーを処理する処理手段とで構成されるオーダー配列を生成するオーダー配列生成手段と、上記オーダー配列生成手段で生成されたオーダー配列に基づいて、上記各処理工程の各処理手段における上記オーダーの処理順序を生成する処理順序生成手段と、上記処理順序生成手段により決定された上記各処理工程の各処理手段における上記オーダーの処理順序に従って上記操業ラインにおける操業状態をシミュレートするシミュレート手段と、上記シミュレート手段によるシミュレート結果に基づいて所定の評価関数による評価値を求める評価値算出手段と、上記評価値算出手段で得られた上記評価値に基づく所定の終了条件が満たされるまで、上記オーダー配列生成手段で生成された上記オーダー配列における上記オーダーの順列及び/若しくはそれら各オーダーを処理する処理手段を変更しながら上記処理順序生成手段、上記シミュレート手段、及び上記評価値算出手段による処理を繰り返す最適化手段とを具備してなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-272748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生産計画を作成する場合、製品やその製品を製造する設備等に応じて様々な制約が存在することがある。例えば、バッチ処理可能な製造工程後に、連続的に実施する製造工程が続く場合、バッチ処理に伴う制約条件とホール処理に伴う制約条件が存在することになる。前記バッチ処理に伴う制約条件は、複数の製品に対し、同時に処理が開始され、同時に処理が完了する制約である。前記ホール処理に伴う制約条件は、前処理のバッチ処理を経た前記複数の製品間でしか当該処理での順序が変更できない制約である。
【0006】
前記特許文献1に開示された操業計画作成装置で、このようなバッチ処理の製造工程後に、ホール処理の製造工程が続く場合について、生産計画を作成すると、最適化により高い生産性を実現する生産計画が立案される可能性があるが、情報処理量が制約条件の個数に指数関数的に増大する前記最適化によって生産計画が立案されるので、その立案に時間がかかってしまうことがある。特に、計画対象の規模(製品の個数や計画期間)が大きくなると、実用的な時間内に計画が立案されない虞がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、より短い時間で生産計画を作成できる生産計画作成装置、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる生産計画作成装置は、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する装置であって、前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長く、前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶する記憶部と、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成部とを備え、前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である。
【0009】
このような生産計画作成装置は、生産計画の作成に、ディスパッチングルールを用い、対象工程に対する数理最適化を用いないので、より短い時間で生産計画を作成できる。上記生産計画作成装置では、複数の第1設備および単数の第2設備という設備に関する制約条件、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間が前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長いという処理時間に関する制約条件、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するというバッチ処理に伴う制約条件およびホール処理に伴う制約条件、ならびに、第1工程を実施する第1設備に応じて第2設備で第2工程を行う量が変わるという、処理量に関する制約条件が存在するため、最適化を用いた生産計画は、情報処理量が多く、実用的な時間内に作成できない虞があるが、上記生産計画作成装置は、ディスパッチングルールを用いるので、生産計画の作成が可能となる。上記生産計画作成装置は、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化するディスパッチングルール(第1ディスパッチングルール)を用いるので、設備を効率的に用いた生産計画の作成が可能となり、作成される生産計画における開始時刻から終了時刻までの時間であるメイクスパンの短縮化が可能となる。
【0010】
他の一態様では、上述の生産計画作成装置において、前記ディスパッチングルールは、さらに、前記第2設備によって前記第2工程を実施した、前記作成対象である複数の製品の各量を平準化することを含む。
【0011】
このような生産計画作成装置は、前記第2設備によって前記第2工程を実施した、前記作成対象である複数の製品の各量を平準化するディスパッチングルール(第3ディスパッチングルール)を用いるので、前記第2工程より下流側の工程の実施を平準化することが可能となり、前記下流側の工程を実施する設備において稼働してない設備が減るから、生産性の向上が可能となる。
【0012】
他の一態様では、上述の生産計画作成装置において、前記作成部は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、前記生産計画を作成し、前記サイクルを、複数、繰り返して前記生産計画を作成する場合に、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で割り付けられた量が少ない製品ほど優先的に多くなるように、量を割り付ける。
【0013】
このような生産計画作成装置は、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で割り付けられた量が少ない製品ほど優先的に多くなるように、量を割り付けるので、前記第2設備によって前記第2工程を実施した、前記作成対象である複数の製品の各量を平準化できる。
【0014】
他の一態様では、上述の生産計画作成装置において、前記作成部は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、前記生産計画を作成し、前記ディスパッチングルールは、さらに、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量に対する充填率を最大化することを含む。
【0015】
このような生産計画作成装置は、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量に対する充填率を最大化するディスパッチングルール(第2ディスパッチングルール)を用いるので、充填率の最大化が可能となる。
【0016】
他の一態様では、上述の生産計画作成装置において、前記作成部は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、生産計画を作成するサイクル処理部と、前記第1工程を実施した前記第1設備について、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を第1評価値として求める第1評価値演算部と、前記第1工程を実施した前記第1設備について、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量に対する充填率を第2評価値として求める第2評価値演算部と、前記作成対象である複数の製品それぞれについて、今回のサイクルの生産計画で割り付けられた量に基づいて、次回のサイクルの生産計画で割り付ける量の優先度を第3評価値として求める第3評価値演算部とを備え、前記サイクル処理部は、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で前記第3評価値演算部で求められた第3評価値に基づき作成可能な全ての生産計画のパターンそれぞれについて前記第1および第2評価値演算部によって前記第1および第2評価値を求め、前記全ての生産計画のパターンのうち、前記求めた第1および第2評価値に基づいて最も評価の高いパターンの生産計画を、前記今回のサイクルの生産計画とし、前記作成対象である複数の製品の各量がなくなるまで、前記サイクルを繰り返して前記生産計画を作成する。
【0017】
このような生産計画作成装置は、前記第1ないし第3評価値に基づいて生産計画を作成するので、前記第1ないし第3ディスパッチングルールに基づく生産計画を作成できる。
【0018】
本発明の他の一態様にかかる生産計画作成方法は、コンピュータによって実行され、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する方法であって、前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長く、前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶部に記憶する記憶ステップと、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成ステップとを備え、前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である。
【0019】
このような生産計画作成方法は、生産計画の作成に、ディスパッチングルールを用い、対象工程に対する数理最適化を用いないので、より短い時間で生産計画を作成できる。前記生産計画作成方法は、設備を効率的に用いた生産計画の作成が可能となり、メイクスパンの短縮化が可能となる。
【0020】
本発明の他の一態様にかかる生産計画作成プログラムは、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成するプログラムであって、前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長く、コンピュータを、前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶する記憶部、および、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成部として機能させ、前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である。
【0021】
このような生産計画作成プログラムは、生産計画の作成に、ディスパッチングルールを用い、対象工程に対する数理最適化を用いないので、より短い時間で生産計画を作成できる。前記生産計画作成プログラムは、設備を効率的に用いた生産計画の作成が可能となり、メイクスパンの短縮化が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる生産計画作成装置、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、より短い時間で生産計画を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態における生産計画作成装置の構成を示すブロック図である。
図2】生産計画を作成する対象の生産プラントを説明するための図である。
図3】バッチ処理に伴う制約条件およびホール処理に伴う制約条件を説明するための図である。
図4】製品情報テーブルの一例を示す図である。
図5】使用設備情報テーブルの一例を示す図である。
図6】処理時間情報テーブルの一例を示す図である。
図7】バッチサイズ情報テーブルを示す図である。
図8】前記生産計画作成装置の動作を示すフローチャートである。
図9】前記生産計画作成装置によって作成された生産計画の一例を示す図である。
図10】一般的なディスパッチルールによって作成された比較例の生産計画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0025】
実施形態における生産計画作成装置は、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する装置である。この生産計画作成装置では、前記複数の工程は、バッチ処理を行う第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含み、前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長い。前記生産計画作成装置は、前記生産計画の作成に関わる所定の情報を生産計画情報として記憶する記憶部と、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成部とを備える。前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化することを含み、前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である。以下、このような生産計画作成装置ならびにこれに実装される生産計画作成方法および生産計画作成プログラムについて、より具体的に説明する。
【0026】
図1は、実施形態における生産計画作成装置の構成を示すブロック図である。図2は、生産計画を作成する対象の生産プラントを説明するための図である。図3は、バッチ処理に伴う制約条件およびホール処理に伴う制約条件を説明するための図である。図4は、製品情報テーブルの一例を示す図である。図5は、使用設備情報テーブルの一例を示す図である。図6は、処理時間情報テーブルの一例を示す図である。図7は、バッチサイズ情報テーブルを示す図である。
【0027】
実施形態における生産計画作成装置Aは、例えば、図1に示すように、入力部1と、出力部2と、インターフェース部(IF部)3と、制御処理部4と、記憶部5とを備え、複数の工程を経て製造される製品を、複数、製造する場合において、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する。
【0028】
生産計画を作成する対象の生産プラントPLは、例えば、図2に示すように、製品を製造するための複数の工程を実施する複数の設備を備える。前記複数の工程は、第1設備によって実施される第1工程と、第2設備によって実施される第2工程とを含む。前記第1設備は、複数であって、前記第2設備は、単数であり、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間は、前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長い。図2に示す例では、第1工程は、3個の第a1ないし第a3設備a1~a3(第ay設備ay、y=1、2、3)で実施され、これら第a1ないし第a3設備a1~a3は、同時に複数の製品を処理でき、バッチ処理する設備であり、適宜、「前設備」と呼称する。第2工程は、1個の第b設備bで実施され、この第b設備bは、同時には1個の製品しか処理できない単処理の設備であり、適宜、「後設備」と呼称する。
【0029】
例えば、アルミ板製品を製造する場合、製造工程は、大略、溶解・鋳造処理の工程、均熱処理の工程、熱延処理の工程、冷延処理の工程および精整処理の工程の5工程に分けられるが、一例では、この均熱処理の工程が第1工程に相当し、熱延処理の工程が第2工程に相当する。均熱工程は、熱延工程を実施するために、実施される工程であるから、この場合、均熱工程(第1工程)と熱延工程(第2工程)とは、図3に示すように、連続して処理する必要があり、均熱工程(第1工程)および熱延工程(第2工程)には、連続処理の制約条件が存在することになる。あるいは、均熱工程と熱延工程とは、テーブルロールで繋がっているプラントも有り得るため、連続して処理する必要がある場合も有り得る。例えば、図3に示すように、アルミ板製品1、2、3は、バッチ処理で同時に均熱処理され、続いて順次に熱延処理され、アルミ板製品4、5、6は、バッチ処理で同時に均熱処理され、続いて順次に熱延処理される。熱延処理の際に、前処理のバッチ処理を経たアルミ板製品1、2、3間では、適宜に熱延処理の順序を変更できるが、アルミ板製品1、2、3間にアルミ板製品4、5、6の全部または一部を挟み込むような順序の変更はできない。このため、均熱工程(第1工程)および熱延工程(第2工程)には、複数の製品に対し、同時に処理(工程)が開始され、同時に処理(工程)が完了する制約であるバッチ処理に伴う制約条件が存在し、前処理(前工程)のバッチ処理を経た前記複数の製品間でしか当該処理での順序が変更できない制約であるホール処理に伴う制約条件が存在する。すなわち、前記ホール処理は、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品を順次に処理し、前記処理の順番を、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品内でのみ変更可能な処理である。
【0030】
図1に戻って、入力部1は、制御処理部4に接続され、例えば、生産計画の作成開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、生産計画の名称や、前記生産計画の作成に関わる所定の情報(生産計画情報)等の、生産計画作成装置Aを動作させる上で必要な各種データを生産計画作成装置Aに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。なお、前記生産計画情報等は、IF部3を介して生産計画作成装置Aに入力されてもよい。出力部2は、制御処理部4に接続され、制御処理部4の制御に従って、入力部1から入力されたコマンドやデータおよび作成した生産計画等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0031】
なお、入力部1および出力部2は、タッチパネルより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部1は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部2は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として生産計画作成装置Aに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い生産計画作成装置Aが提供される。
【0032】
IF部3は、制御処理部4に接続され、制御処理部4の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部3は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であってもよい。
【0033】
記憶部5は、制御処理部4に接続され、制御処理部4の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、生産計画作成装置Aの各部1~3、5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成する作成プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば、前記生産計画の名称や前記生産計画情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部5は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部5は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部4のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部5は、比較的記憶容量の大きいHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等を備えて構成されてもよい。
【0034】
前記生産計画情報は、本実施形態では、例えば、製品情報、使用設備情報、処理時間情報およびバッチサイズ情報等であり、これら製品情報、使用設備情報、処理時間情報およびバッチサイズ情報それぞれを記憶するために、記憶部5は、製品情報記憶部51、使用設備情報記憶部52、処理時間情報記憶部53およびバッチサイズ情報記憶部54を機能的に備える。
【0035】
製品情報記憶部51は、製品に関する所定の情報である製品情報を記憶するものである。前記製品情報は、本実施形態では、製品ごとの要求量Pxおよびサイクル最大量Mxであり、例えばテーブル形式で製品情報記憶部に記憶される。前記要求量Pxは、生産計画を作成する製品Dxの量であり、例えば注文量に応じて設定される。前記サイクル最大量Mxは、1サイクルで処理可能な製品Dxの最大量である。これら要求量Pxおよびサイクル最大量Mxは、生産計画を作成する作成対象である複数の製品Dxそれぞれについて設定される。前記生産計画は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第b設備bによって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、作成される。ここで、前記サイクルにおける製品の種類は、生産計画が、通常、製品の注文ごとに順序を決めて作成されることから、製品自体は同種であっても注文が異なれば、異なる種類の製品として取り扱われる。前記サイクルは、前記作成対象である複数の製品ごと(あるいは注文度ごと)に要素とする集合(1サイクル製品集合S)によって表される。
【0036】
この製品情報をテーブル形式で登録する製品情報テーブルPTは、例えば、図4に示すように、製品IDを登録する製品フィールド211と、要求量Pxを登録する要求量フィールド212と、サイクル最大量Mxを登録するサイクル最大量フィールド213とを備え、製品(あるいは注文品)ごとにレコードを備える。製品IDは、製品を特定し製品を識別するための識別子であり、例えば、注文品ごとに割り当てられる。この例では、製品Dxは、4個の第1ないし第4製品D1~D4である(x=1、2、3、4)。製品D1~D4が上述のアルミ板製品の場合、要求量Pxおよびサイクル最大量Mxの単位は、[本]となる。
【0037】
使用設備情報記憶部52は、製品ごとに、当該製品を当該工程で処理する際に、使用可能な設備を表す情報である使用設備情報を記憶するものである。図2に示す例では、第2工程は、1個の第b設備bが用いられるので、第1工程で使用可能な第ay設備ayを表す情報が製品ごとに使用設備情報として、例えばテーブル形式で使用設備情報記憶部に記憶される。より具体的には、この使用設備情報をテーブル形式で登録する使用設備情報テーブルMTは、例えば、図5に示すように、設備IDを登録する設備フィールド221と、当該製品を第1工程で処理する際に、使用可能な第ay設備ayを登録する使用可能設備フィールド222とを備え、第ay設備ayごとにレコードを備える。設備IDは、設備を特定し設備を識別するための識別子である。使用可能設備フィールド222は、製品ごとにサブフィールド222xを備える。この例では、4個の第1ないし第4製品D1~D4があるので、使用可能設備フィールド222は、4個の第1ないし第4使用可能設備サブフィールド2221~2224を備える。第1使用可能設備サブフィールド2221には、第1製品D1を第1工程で処理する際に、使用可能な第ay設備ayが登録される。図4に示す例では、使用可能な第ay設備ayのレコードに、使用可能であることを表す符号(マーク)「○」が登録され、使用できない第ay設備ayのレコードに、使用できないことを表すために、空欄(Vacant)にされている。図4に示す例では、第1製品D1を第1工程で処理する際に、第a1ないし第a3設備a1~a3が使用可能である。同様に、第2使用可能設備サブフィールド2222には、第2製品D2を第1工程で処理する際に、使用可能な第ay設備ayが登録され、第3使用可能設備サブフィールド2223には、第3製品D3を第1工程で処理する際に、使用可能な第ay設備ayが登録され、第4使用可能設備サブフィールド2224には、第4製品D4を第1工程で処理する際に、使用可能な第ay設備ayが登録される。
【0038】
処理時間情報記憶部53は、製品および設備それぞれごとに、当該製品を当該設備で処理する場合に、処理に要する時間を表す情報である処理時間情報を例えばテーブル形式で記憶するものである。より具体的には、この処理時間情報をテーブル形式で登録する処理時間情報テーブルTTは、例えば、図6に示すように、設備IDを登録する設備フィールド231と、当該製品を当該設備で処理する場合に、処理に要する時間を登録する処理時間フィールド232と、前記処理時間フィールド232に登録された処理時間の単位を登録する単位フィールド233とを備え、設備ごとにレコードを備える。この例では、4個の第1ないし第4製品D1~D4があるので、処理時間フィールド232は、4個の第1ないし第4処理時間サブフィールド2321~2324を備える。第1処理時間サブフィールド2321には、第1製品D1を、設備フィールド231に登録された設備で処理する場合に、処理に要する時間が登録され、第2処理時間サブフィールド2322には、第2製品D2を、設備フィールド231に登録された設備で処理する場合に、処理に要する時間が登録され、第3処理時間サブフィールド2323には、第3製品D3を、設備フィールド231に登録された設備で処理する場合に、処理に要する時間が登録され、第4処理時間サブフィールド2324には、第4製品D4を、設備フィールド231に登録された設備で処理する場合に、処理に要する時間が登録される。例えば、第1製品D1を第a1設備a1で処理する場合、1回の処理に、30[min]を要し、第2製品D2を第a2設備a2で処理する場合、1回の処理に、20[min]を要し、第3製品D3を第a3設備a3で処理する場合、1回の処理に、24[min]を要し、第4製品D4を第b設備bで処理する場合、1本の処理に、2[min]を要する。製品がアルミ板であり、第1工程が均熱処理であり、第2工程が熱延処理である場合、第1工程の均熱処理には、1回の処理に、数時間から1日の処理時間がかかり、第2工程の熱延処理には、1本の処理に、数分の処理時間がかかる。このように第1工程の均熱処理の実施にかかる第1処理時間と第2工程の熱延処理の実施にかかる第2処理時間とは、2桁~3桁で異なる。
【0039】
バッチサイズ情報記憶部54は、バッチ処理する設備において、1回のバッチ処理で処理可能な製品量を表す情報であるバッチサイズ情報を記憶するものである。図2に示す例では、第1工程の第ay設備ayがバッチ処理する設備であるので、第ay設備ayごとに、バッチサイズ情報が例えばテーブル形式でバッチサイズ情報記憶部に記憶される。より具体的には、このバッチサイズ情報をテーブル形式で登録するバッチサイズ情報テーブルBTは、例えば、図7に示すように、設備IDを登録する設備フィールド241と、設備フィールド241に登録された設備において、1回のバッチ処理で処理可能な製品量を登録するバッチサイズフィールド242とを備え、バッチ処理する設備ごとにレコードを備える。製品D1~D4が上述のアルミ板製品の場合、製品量の単位は、[本]となる。
【0040】
制御処理部4は、生産計画作成装置Aの各部1~3、5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、生産計画を作成するための回路である。制御処理部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部4は、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部41および作成部42を機能的に備える。
【0041】
制御部41は、生産計画作成装置Aの各部1~3、5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、生産計画作成装置Aの全体制御を司るものである。
【0042】
作成部42は、前記生産計画情報および所定のディスパッチングルールに基づき、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品の処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するように、前記作成対象である複数の製品に対する生産計画を作成するものである。したがって、生産計画作成装置Dは、最適化手法ではなく、ルールベースで生産計画を作成する。
【0043】
前記ディスパッチングルールは、処理可能な状態にある設備に、着手可能な仕事群(工程群)の中から、次に割り当てる仕事(工程)を決定するために用いられる規則であり、本実施形態では、前記ディスパッチングルールは、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を最小化する第1ディスパッチングルールを含む。本実施形態では、前記ディスパッチングルールは、さらに、前記第2設備によって前記第2工程を実施した、前記作成対象である複数の製品の各量を平準化する第3ディスパッチングルールを含む。本実施形態では、前記ディスパッチングルールは、さらに、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量である前記サイクル最大量に対する充填率を最大化する第2ディスパッチングルールを含む。
【0044】
前記平準化のために、前記作成部42は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、前記生産計画を作成し、前記サイクルを、複数、繰り返して前記生産計画を作成する場合に、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で割り付けられた量が少ない製品ほど優先的に多くなるように、量を割り付ける。
【0045】
より具体的には、前記生産計画情報およびこれら3個の第1ないし第3ディパッチングルールに基づきサイクルごとの生産計画を作成することによって、全体の生産計画を作成するために、作成部42は、本実施形態では、サイクル処理部421、第1評価値演算部422、第2評価値演算部423および第3評価値演算部424を機能的に備える。
【0046】
サイクル処理部421は、前記作成対象である複数の製品を1種類ずつ全て前記第2設備によって前記第2工程を実施するサイクルを1単位として、生産計画を作成するものである。
【0047】
第1評価値演算部422は、前記第1工程を実施した前記第1設備について、一の前記第2工程の実施終了から、次の前記第2工程の実施開始までの空き時間を第1評価値として求めるものである。この第1評価値によって、前記生産計画の作成に、前記第1ディスパッチングルールが考慮される。
【0048】
第2評価値演算部423は、前記第1工程を実施した前記第1設備について、前記作成対象である複数の製品それぞれについて設定された1サイクルで処理可能な最大量に対する充填率を第2評価値として求めるものである。この第2評価値によって、前記生産計画の作成に、前記第2ディスパッチングルールが考慮される。
【0049】
第3評価値演算部424は、前記作成対象である複数の製品それぞれについて、今回のサイクルの生産計画で割り付けられた量に基づいて、次回のサイクルの生産計画で割り付ける量の優先度を第3評価値として求めるものである。この第3評価値によって、前記生産計画の作成に、前記第3ディスパッチングルールが考慮される。
【0050】
そして、前記サイクル処理部421は、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で前記第3評価値演算部で求められた第3評価値に基づき作成可能な全ての生産計画のパターンそれぞれについて前記第1および第2評価値演算部によって前記第1および第2評価値を求め、前記全ての生産計画のパターンのうち、前記求めた第1および第2評価値に基づいて最も評価の高いパターンの生産計画を、前記今回のサイクルの生産計画とし、前記作成対象である複数の製品の各量がなくなるまで、前記サイクルを繰り返して前記生産計画を作成する。
【0051】
これら入力部1、出力部2、IF部3、制御処理部4および記憶部5は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。これら各部1~5を構成するコンピュータは、例えば、生産プラントPLにおけるオペレーションルームに配置され、コンソールに組み込まれてよく(コンソールと兼用されてよく)、あるいは、コンソールと別体であってもよい。
【0052】
次に、本実施形態の動作について説明する。図8は、前記生産計画作成装置の動作を示すフローチャートである。
【0053】
このような構成の生産計画作成装置Aは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部4には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部41および作成部42が機能的に構成され、作成部42には、サイクル処理部421、第1評価値演算部422、第2評価値演算部423および第3評価値演算部424が機能的に構成される。また、記憶部5における製品情報記憶部51、使用設備情報記憶部52、処理時間情報記憶部53およびバッチサイズ情報記憶部54それぞれには、製品情報、使用設備情報、処理時間情報およびバッチサイズ情報それぞれが記憶されているものとする。
【0054】
生産計画の作成開始の指示が入力部1を介して受け付けられると、図8において、生産計画作成装置Aは、まず、制御処理部4の作成部42におけるサイクル処理部421によって、各製品の計画残量P’xを初期設定し、記憶する(S1)。各製品の計画残量P’xは、生産計画(全体の生産計画)に割り付けられていない製品Dxの量である。より具体的には、初期設定なので、図2ないし図7に示す例では、製品情報記憶部51に記憶されている製品情報テーブルPTが参照され、第1ないし第4製品D1~D4それぞれについての各計画残量P’1~P’4に、第1ないし第4製品D1~D4それぞれについての各要求量P1~P4が代入される(P’1←P1、P’2←P2、P’3←P3、P’4←P4)。そして、生産計画作成装置Aは、生産計画の割付け行う起点時刻を表す変数(割付け起点時刻)taz等を必要に応じて初期化する(例えばtaz←0[分])。
【0055】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、1サイクル製品集合Sを定義し、記憶する(S2)。1サイクル製品集合Sは、図2ないし図7に示す例では、第1ないし第4製品D1~D4である(S={D1、D2、D3、D4})。1サイクル製品集合Sは、例えば、ユーザによって入力部1を介して、1サイクル製品集合Sに属する要素の製品が入力され、1サイクル製品集合Sが定義されてよく、あるいは、例えば、製品情報テーブルPTの製品フィールド211を登録されている製品IDを、1サイクル製品集合Sに属する要素の製品として抽出することによって、1サイクル製品集合Sが定義されてよい。
【0056】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、後述の処理S5で仮割り付けする次の製品Dxを1サイクル製品集合Sから選定し、記憶する(S3)。最初の処理S3では、1サイクル製品集合Sから適宜に1個の製品Dx、例えば第1製品D1が選択される。
【0057】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、後述の処理S5で仮割付けする次の第ay設備ayを、処理S3で選定した製品Dxを第1工程で処理する際に使用可能な第ay設備ayの集合Uyから選定し、記憶する(S4)。最初の処理S4では、処理S3で選定した製品Dxを第1工程で処理する際に使用可能な第ay設備ayの集合Uyから適宜に1個の第ay設備ay、例えば第a1設備a1が選択される。なお、図5に示す例では、製品D1を第1工程で処理する際に使用可能な第ay設備ayの集合U1は、{a1、a2、a3}であり(U1={a1、a2、a3})、製品D2を第1工程で処理する際に使用可能な第ay設備ayの集合U2は、{a2、a3}であり(U2={a2、a3})、製品D3を第1工程で処理する際に使用可能な第ay設備ayの集合U3は、{a1、a2、a3}であり(U3={a1、a2、a3})、製品D4を第1工程で処理する際に使用可能な第ay設備ayの集合U4は、{a1、a3}である(U4={a1、a3})。
【0058】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、処理S3で選定した製品Dxを、処理S4で選定した第ay設備ayに、以下に従って仮に割り付け(仮割付けし)、記憶する(S5)。この仮に割り付ける数量は、Min{M’x、Bay}である。ただし、P’x<Min{M’x、Bay}の場合、前記仮に割り付ける数量は、計画残量P’xの全量である。仮に割り付ける起点は、前回のサイクルにおける、前設備の第ay設備ayの最終完了時刻(=今回のサイクルにおける、割り付け可能な最早時刻)を表す変数(前設備ayの最早時刻)tay(=taz)であり、この前設備ayの最早時刻tayから後設備の第b設備bまで、連続処理の制約条件等の制約条件を遵守して仮に割り付けが実行される。ここで、変数(更新サイクル最大量)M’xは、製品Dxにおけるサイクル最大量Mxを、後述のように更新した更新後のサイクル最大量である。なお、この更新サイクル最大量M’xは、前記第3評価値の一例に相当する。サイクル最大量Mxは、製品情報記憶部51に記憶された製品情報から取得される。変数(バッチサイズ)Bayは、第ay設備ayのバッチサイズであり、バッチサイズ情報記憶部54に記憶されたバッチサイズ情報から取得される。Min{α、β}は、αおよびβのうち小さい方を求めて出力する演算子である。
【0059】
次に、生産計画作成装置Aは、制御処理部4の作成部42における第1および第2評価値演算部422、423によって、第1よび第2評価値pay/Mx、Tb-tbを求め、記憶する(S6)。ここで、変数(前設備ayの仮割付け同時処理量)payは、処理S4で選定した第ay設備ayに、処理S5で仮に割り付けられた数量(同時にバッチ処理される数量)である。変数(後設備bの仮割付け開始時刻)Tbは、処理S5で仮に割り付けられた第b設備bの開始時刻であり、前設備ayの最早時刻tayから、前設備ayの仮割付け同時処理量payにその処理時間T(ay、x)を乗算した乗算結果だけ経過した時刻である。処理時間T(ay、x)は、製品Dxを第ay設備ayで処理するために要する時間であり、処理時間情報記憶部53に記憶された処理時間情報から取得される。変数(後設備bの割付け可能最早時刻)tbは、現時点での、後述の処理S9で割り付けられた第b設備bの最終完了時刻(=割付け可能な最早時刻)である。
【0060】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、処理S3で選定した製品Dxにおいて、第1工程で使用可能な全ての第ay設備ayについて処理S4での選定を終了したか否かを判定する(S7)。この判定の結果、全ての選定を終了している場合(Yes)には、生産計画作成装置Aは、次に、処理S8を実行する。一方、前記判定の結果、全ての選定を終了していない場合(No)には、生産計画作成装置Aは、処理を処理S4に戻す。したがって、処理S3で選定した製品Dxにおいて、第1工程で使用可能な全ての第ay設備ayそれぞれについて、処理S4ないし処理S7の各処理が実行される。
【0061】
この処理S8では、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、1サイクル製品集合Sの全ての製品Dxについて処理S3での選定を終了したか否かを判定する。この判定の結果、全ての選定を終了している場合(Yes)には、生産計画作成装置Aは、次に、処理S9を実行する。一方、前記判定の結果、全ての選定を終了していない場合(No)には、生産計画作成装置Aは、処理を処理S3に戻す。したがって、1サイクル製品集合Sの全ての製品Dxそれぞれについて、処理S3ないし処理S7の各処理が実行される。
【0062】
これら各処理によって、1サイクル分の仮の生産計画が計画可能な全てのパターンについて生成され、更新サイクル最大量M’xを考慮した上で、前記全てのパターンそれぞれでの第1および第2評価値pay/Mx、Tb-tbが求められる。
【0063】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、ディスパッチングルールに基づき、所定の基準を満たす製品Dxを第ay設備ayに割り付け、記憶する(S9)。より具体的には、サイクル処理部421は、前記全ての仮の生産計画のパターンのうち、前記求めた第1および第2評価値pay/Mx、Tb-tbに基づいて最も評価の高いパターンの仮の生産計画を、今回のサイクルの生産計画とする。後述の処理S10の説明のために、この処理によって製品Dxが割付け量pazで第az設備azに割り付けられたものとする(z=1、2、3)。例えば、第1評価値が互いに等しい場合には、第2評価値によって最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択される。あるいは、例えば、第2評価値が互いに等しい場合には、第1評価値によって最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択される。あるいは、例えば、第1評価値が第2評価値より優先され、第1評価値によって最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択され、第1評価値が互いに等しい場合には、第2評価値によって最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択される。あるいは、例えば、第2評価値が第1評価値より優先され、第2評価値によって最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択され、第2評価値が互いに等しい場合には、第1評価値によって最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択される。あるいは、例えば、第1評価値と第2評価値との線形和が評価関数とされ、前記評価関数で最も評価の高いパターンの仮の生産計画が選択される。なお、この場合において、第1および第2評価値それぞれに重みが付けられた第1評価値と第2評価値との線形和が評価関数とされてもよい((評価関数)=w1×(第1評価値)+w2×(第2評価値)、w1、w2;重み)。
【0064】
次に、生産計画作成装置Aは、制御処理部4の作成部42におけるサイクル処理部421および第3評価値演算部424によって、各変数taz、tb、M’x、P’x、Sを更新し、記憶する(S10)。より具体的には、サイクル処理部421によって、割付け起点時刻tazは、前設備azの最終完了時刻に更新され(ay=az)、後設備bの割付け可能最早時刻tbは、後設備bの最終完了時刻に更新される。更新サイクル最大量M’xは、第3評価値演算部424によって、現状の更新サイクル最大量M’xに、サイクル最大量Mxを加算し、この加算結果から、処理S9で第az設備azに割り付けた製品Dxの割付け量pazを減算した減算結果に更新される(M’x←M’x+Mx-paz)。サイクル処理部421によって、計画残量P’xは、現状の計画残量P’xから、処理S9で第az設備azに割り付けた製品Dxの割付け量pazを減算した減算結果に更新される(P’x←P’x-paz)。サイクル処理部421によって、1サイクル製品集合Sは、現状の1サイクル製品集合Sから、処理S9で第az設備azに割り付けた製品Dxを削除した削除結果に更新される。
【0065】
次に、生産計画作成装置Aは、サイクル処理部421によって、1サイクル製品集合Sが空集合か否かを判定する(S11)。すなわち、1サイクル製品集合Sに属する製品Dxが無くなったか否かが判定される。この判定の結果、1サイクル製品集合Sに属する製品Dxが無く、1サイクル製品集合Sが空集合である場合(Yes)には、今回のサイクルの生産計画が作成されたので、生産計画作成装置Aは、次に、処理S12を実行する。一方、前記判定の結果、1サイクル製品集合Sに属する製品Dxが有り、1サイクル製品集合Sが空集合ではない場合(No)には、生産計画作成装置Aは、処理を処理S3に戻す。すなわち、1サイクル製品集合Sに属する全ての製品Dxが処理S9で割り付けられるまで、処理S3ないし処理S11の各処理が実行される。
【0066】
この処理S12では、生産計画作成装置Aは、1サイクル製品集合Sに属する全ての製品Dxについての、製品Dxの計画残量P’xの総和ΣP’xが0より大きいか否かを判定する。すなわち、1サイクル製品集合Sに属する各製品Dxの各計画残量P’xが、いずれかの製品Dxについて残っているか否かが判定される。この判定の結果、前記総和ΣP’xが0より大きくない場合(前記総和ΣP’xが0以下である場合、No)には、各製品Dxの各要求量Pxが少なくとも割り付けられ、生産計画が作成されたので、生産計画作成装置Aは、次に、この作成した生産計画(各サイクルの各生産計画を順次に連結した全体の生産計画)を出力部2に出力し(S13)、本処理を終了する。一方、前記判定の結果、前記総和ΣP’xが0より大きい場合(Yes)には、各製品Dxの各要求量Pxで未割付が有るので、生産計画作成装置Aは、処理を処理S2に戻す。すなわち、1サイクル製品集合Sに属する全ての製品Dxについて、各製品Dxの各計画残量P’xが無くなるまで、処理S2ないし処理S12の各処理が実行される。
【0067】
なお、処理S13では、必要に応じて、前記生産計画は、IF部3から外部の機器へ出力されてもよい。
【0068】
以上説明したように、実施形態における生産計画作成装置Aならびにこれに実装された生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、生産計画の作成に、ディスパッチングルールを用い、対象工程に対する数理最適化を用いないので、より短い時間で生産計画を作成できる。上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムでは、複数の第ay設備ayおよび単数の第b設備bという設備に関する制約条件、前記第1工程の実施にかかる第1処理時間が前記第2工程の実施にかかる第2処理時間より長いという処理時間に関する制約条件、前記第1工程でバッチ処理された複数の製品Dxの処理を、前記第1工程の完了後に連続的に続けてホール処理で前記第2工程を実施するというバッチ処理に伴う制約条件およびホール処理に伴う制約条件、ならびに、第1工程を実施する第ay設備ayに応じて第b設備bで第2工程を行う量が変わるという、処理量に関する制約条件が存在するため、最適化を用いた生産計画は、情報処理量が多く、実用的な時間内に作成できない虞があるが、上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、ディスパッチングルールを用いるので、生産計画の作成が可能となる。
【0069】
上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、前記第1ディスパッチングルールを用いるので、設備を効率的に用いた生産計画の作成が可能となり、メイクスパンの短縮化が可能となる。
【0070】
上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、前記第3ディスパッチングルールを用いるので、前記第2工程より下流側の工程の実施を平準化することが可能となり、前記下流側の工程を実施する設備において稼働してない設備が減るから、生産性の向上が可能となる。
【0071】
上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、第3評価値の一例である更新サイクル最大量M’xの更新により(M’x←M’x+(Mx-paz))、今回のサイクルの生産計画を作成する際に、前回のサイクルの生産計画で割り付けられた量が少ない製品ほど優先的に多くなるように、量を割り付けるので、前記第b設備bによって前記第2工程を実施した、前記作成対象である複数の製品の各量を平準化できる。
【0072】
上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、第2ディスパッチングルールを用いるので、充填率の最大化が可能となる。
【0073】
上記生産計画作成装置A、生産計画作成方法および生産計画作成プログラムは、前記第1評価値pay/Mx、第2評価値Tb-tb、および、第3評価値の一例である更新サイクル最大量M’xに基づいて生産計画を作成するので、前記第1ないし第3ディスパッチングルールに基づく生産計画を作成できる。
【0074】
次に、一実施例と比較例について説明する。図9は、前記生産計画作成装置によって作成された生産計画の一例を示す図である。図10は、一般的なディスパッチルールによって作成された比較例の生産計画の一例を示す図である。図10Aは、連続処理の制約条件が無い場合の比較例の生産計画の一例を示し、図10Bは、連続処理の制約条件を満たすように、図10Aに示す生産計画を、前設備の開始タイミングを後ろ倒しすることによって作成した比較例の生産計画の一例を示す。図9および図10において、横軸は、生産計画の開始時刻を0とした時刻(経過時間)であり、縦軸は、設備である。横軸の1目盛りは、1分であり、0分から150分までが図示されている。縦軸の1目盛りは、製品Dxの数量1本であり、第a1設備a1について、0本から6本までが図示され、第a2設備a2について、0本から6本までが図示され、第a3設備a3について、0本から3本までが図示され、第b設備bについて、0本から3本までが図示されている。図9および図10Bでは、第b設備bにおける0本から3本までのうちの1個が用いられている。図9の丸数字は、割り付け順である。相対的に密度の高い複数の点(・)から成るハッチングは、製品D1の生産計画を示し、正面視にて右上がり斜め線(/)のハッチングは、製品D2の生産計画を示し、相対的に密度の低い複数の点(・)から成るハッチングは、製品D3の生産計画を示し、正面視にて右下がり斜め線(\)のハッチングは、製品D4の生産計画を示す。
【0075】
比較例の生産計画作成装置は、実施形態における生産計画作成装置Aに対し、ディスパッチルールのみを変更した装置である。この比較例の生産計画作成装置では、一般的なディスパッチルールとして、前詰めで前設備の充填率およびメイクスパンの短縮化を優先するルールが用いられ、上述した図4ないし図7に示す各データが用いられ、その結果、図10Aに示す生産計画が作成された。図10Aに示す生産計画では、第b設備bの生産計画から分かるように、連続処理の制約条件が満たされていない。そこで、マニュアルで、連続処理の制約条件を満たすように、図10Aに示す生産計画を、前設備ayの開始タイミングを後ろ倒しすることによって、図10Bに示す生産計画が作成された。
【0076】
一方、上述した図4ないし図7に示す各データを用いて実施形態における生産計画作成装置Aによって、図9に示す生産計画が作成された。
【0077】
図9に示す生産計画と図10Bに示す生産計画とを比較すると分かるように、メイクスパンが比較例の150分から、実施形態では、140分に短縮化され、比較例で生じている後設備bにおける無駄な空白時間が、実施形態では減少しており、比較例で生じている、後設備bで製造された製品Dxの偏りが、実施形態では減少して平準化しており、各製品Dxを後設備bで1回ずつ製造する製品Dxのサイクル性が改善されている。
【0078】
また、連続処理の制約条件を含めて最適化手法によりコンピュータによって生産計画を作成すると、計算規模が極端に大きくなり過ぎ、計算が終了しなくなったため生産計画が作成されなかったが、実施形態における生産計画作成装置Aでは、図9に示すように、生産計画が作成できた。
【0079】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0080】
A 生産計画作成装置
4 制御処理部
5 記憶部
41 制御部
42 作成部
51 製品情報記憶部
52 使用設備情報記憶部
53 処理時間情報記憶部
54 バッチサイズ情報記憶部
421 サイクル処理部
422 第1評価値演算部
423 第2評価値演算部
424 第3評価値演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10